ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)。
◆武塙麻衣子『酒場の君』書肆侃侃房 9/2刊 1500円
『群像』2024年6月号より小説「西高東低マンション」を連載中の作家である著者が、「私には私だけの酒場白地図が頭の中にあり、好きなお店や何度も行きたいお店、行ってみたいお店などを、日々その地図に少しずつ書き込んでいく」─こうして仕上がった酒場放浪記から浮かび上がる、ホロ酔い観察のすばらしさが、何とも言えない爽快さを呼び起こす。
◆池澤夏樹 編+寄藤文平(絵)『来たよ! なつかしい一冊』毎日新聞出版 9/2刊 1800円
人気作家50人が夢中で読んだ「私だけの一冊」を、イラストと文章で紹介。本が醸し出す密かな楽しい世界へ誘われること間違いなし! 草野仁が選ぶ五味川純平、吉田豪が選ぶアントニオ猪木、山田ルイ53世が選ぶ西村賢太、南沢奈央が選ぶ宮本輝……まずは手に取ってみてください。寄藤文平のイラストも楽しい<とっておきのブックガイド>!
◆トマ・ピケティ『平等についての小さな歴史』(広野和美訳) みすず書房 9/17刊 2500円
『21世紀の資本』が刊行され、日本でピケティブームが起こって10年。だが他の著作も含め、どれも1000頁を超える大作では手が出なかった。ところが本書は、ピケティ自らが格差や平等について分かりやすく凝縮させた、初心者おすすめの1冊となっている。さらに「格差に対処し克服する野心的な計画を提示」し、学ぶところが多い。
◆栗原康『幸徳秋水伝: 無政府主義者宣言』 夜光社 9/18刊 2800円
大杉栄の兄貴分にして元祖日本のアナーキスト・幸徳秋水。自由民権運動に触れた少年時代、中江兆民の書生時代、万朝報での記者生活、堺利彦らとの平民社時代、クロポトキンとの文通、足尾暴動、管野須賀子との恋愛、大逆事件など、波乱万丈の明治時代に生きた幸徳秋水を克明に追い、日本のアナーキズム黎明期とその青春群像を活写した力作。
◆布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』講談社現代新書 9/19刊 980円
いつの間にか日本が米国のミサイル基地になっていた! 米軍が日本全土に対中戦争を想定した、核搭載ミサイルを配備しようとしている! だが日本政府は、こうした米軍の動きを隠し、かつ巧妙な「ウソ」をつき、国民をだまくらかしている。その「ウソ」を、ノンフィクション作品でJCJ賞など多くの賞を受賞した、気鋭のジャーナリストが見破る! 多くの人たちに読んでほしい安全保障を論じた力作。
◆ジェレミー・ドロンフィールド『アウシュヴィッツの父と息子に』(越前敏弥訳) 河出書房新社 9/27刊 2900円
著者は、デビュー作のミステリ『飛蝗の農場』がベストセラーになった。その後2015年からは歴史ノンフィクション作家としても活動し、数多くの著書を刊行している。本書は「アウシュヴィッツに収容された父を追い、家族がいるところに希望があるとして、父を守るため、息子自らがアウシュヴィッツ行きを志願した」─さてそこでの行動は、手に汗握る感動のノンフィクション!
2024年09月09日
2024年09月08日
【鹿児島県警不祥事隠ぺい】札幌でも緊急集会=北海道支部
JCJ北海道支部は7月26日、鹿児島県警の一連の不祥事で、告発文書が郵送された札幌のライター小笠原淳さん=写真=を迎え緊急集会「『事件隠ぺい』内部告発が問うもの」を札幌市内で開いた。
小笠原さんは「県警は『重要な証拠品なので文書を押収したい』と電話で持ち掛けてきた」と、前生活安全部長逮捕の4日後、初めての接触があったことを暴露。「情報源の秘匿」を理由に拒否し、「電話してきた若い捜査員に『押収』とは?と、令状も出さずに文書提出を求める理由を質すと、電話はぷつりと途絶えた」と話した。
小笠原さんは昨年11月、捜査記録の速やかな廃棄を促した内部文書「刑事企画課だより」をハンターで報じていた。内部文書が「なぜ札幌のあなたに届いたのか」とのメディア各社の問いには、「私が選ばれたのではなく、あなたたちが無視されただけではないか」と答える小笠原さんだが、「地元の新聞社やテレビ局に送っても書いてくれないと考えたのではないか」と自身の元に文書が送られた理由を推測。県警の隠ぺい体質は「地元の大手マスコミが育てたのかもしれない」と厳しく指摘した。
大手メディアの報道は、不祥事が明るみに出始めた今年6月になってから。小笠原さんは北海道警によるヤジ排除事件を例に、「ヤジを飛ばした人を、道警はテレビ・新聞のカメラの前で排除した。警察は報道をコントロールできると思っているのではないか」と述べ、警察とメディアの報道姿勢にも疑問を呈した。
鹿児島県警のハンターへの家宅捜索などにメディア関係団体や日本弁護士連合会が相次いで抗議声明を出した。しかし、小笠原さんは「業界団体の日本新聞協会や日本民間放送連盟は出さない。報道が一過性のものに終わってしまうことを心配している」と指摘。、一連の不祥事に関する息の長い報道を求めた。
市民ら約40人が参加した集会の意見交換では「警察を監督すべき公安委員会が形がい化している」(ヤジ排除事件を担当した弁護士)、「取材源の秘匿は職業倫理のレベルではなくメディアの権利として考えるべきだ」(マスコミ論が専門の大学教授)などの発言があった。
2024年09月07日
【映画の鏡】豊かな未来を築く知恵を示す『山里は持続可能な世界だった』効率重視の現代の価値観を問う=鈴木 賀津彦
映画「山里は持続可能な世界だった」製作委員会
高度経済成長以前の農山村の暮らしから現代に生きる私たちが学ぶべきことを提示してくれる。タイトルが「世界だった」と過去形になっているが、決して当時を懐かしむのではなく、これからの社会の構築に必要な価値観を描き出そうと、伝統的林業、炭焼きや養蚕、原木椎茸栽培や鍛冶屋など、かつての生業を受け継いでいる人々を取材し、効率重視の現代的価値観に抗う新たなライフスタイルを模索する。
原村政樹監督は「かつての山里の暮らしを記録した白黒写真をできるだけ多く紹介して、当時の暮らしと生業を克明に伝える」工夫をしている。青少年時代を山里の村で過ごした70代から90代の人たちに写真を見てもらいながら話を聞いてみると、「貧しく厳しい時代だったが張り合いがあった」「子どもや若者が大勢いて家族を超え皆が助け合いながら暮らしていた」など、生き生きと話し始める。スクリーンに紹介される当時の写真に写った人々の表情は、子どもも大人も誰もが明るい。笑顔が輝いてみんなが幸せそうだ。
「持続可能な世界を実現するための知恵が沢山あった」山里の暮らし。題名からしてSDGs(持続可能な開発目標)の作品だと位置付けられそうだが、登場する人たちの言葉からは、そんな軽々しい言い方ではなく、もっと奥深い問い掛けが発せられている。映画のコピーに「かつて村人たちは自然を壊さずに暮らしていた!」とある。そう、山里は人間だけのためにあるのではなく、山の恵みに感謝しながら必要な分だけいただくのだ。
9月6日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町で公開。各地で自主上映も。
高度経済成長以前の農山村の暮らしから現代に生きる私たちが学ぶべきことを提示してくれる。タイトルが「世界だった」と過去形になっているが、決して当時を懐かしむのではなく、これからの社会の構築に必要な価値観を描き出そうと、伝統的林業、炭焼きや養蚕、原木椎茸栽培や鍛冶屋など、かつての生業を受け継いでいる人々を取材し、効率重視の現代的価値観に抗う新たなライフスタイルを模索する。
原村政樹監督は「かつての山里の暮らしを記録した白黒写真をできるだけ多く紹介して、当時の暮らしと生業を克明に伝える」工夫をしている。青少年時代を山里の村で過ごした70代から90代の人たちに写真を見てもらいながら話を聞いてみると、「貧しく厳しい時代だったが張り合いがあった」「子どもや若者が大勢いて家族を超え皆が助け合いながら暮らしていた」など、生き生きと話し始める。スクリーンに紹介される当時の写真に写った人々の表情は、子どもも大人も誰もが明るい。笑顔が輝いてみんなが幸せそうだ。
「持続可能な世界を実現するための知恵が沢山あった」山里の暮らし。題名からしてSDGs(持続可能な開発目標)の作品だと位置付けられそうだが、登場する人たちの言葉からは、そんな軽々しい言い方ではなく、もっと奥深い問い掛けが発せられている。映画のコピーに「かつて村人たちは自然を壊さずに暮らしていた!」とある。そう、山里は人間だけのためにあるのではなく、山の恵みに感謝しながら必要な分だけいただくのだ。
9月6日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町で公開。各地で自主上映も。
2024年09月06日
2024年09月05日
【おすすめ本】山内 貴範『ルポ 書店危機』―地方の小さな本屋の声集めた「なくても困らず」年配者からも=永江 朗(ライター)
書店が激減するなか、書店員が書いた本や書店について書いた本の刊行が相次ぐ。本書の特徴は地方の小さな書店に焦点を当てたところ、そして現地の人びとの声を聞いたところにある。
小さな書店の悩みは販売低迷や顧客の減少などいろいろあるが、なかでも大きいのはベストセラーや話題の本など売れ筋の本が入荷しないことだという。都会の大型書店やネット書店には大量の在庫があるのに、なんとも不条理。著者の故郷、秋田県の書店は、顧客の注文に応えるためにネット書店で購入し、利益ゼロで渡すことも珍しくないそうだ。その額、年間150万円! また、「(書店で開催する)読み聞かせなんてそんなものは意味がない。それよりも売れ筋の本をちゃんと発売日に回してくれ」と話す宮城県の書店主もいる。
だが、苦境にあるのは書店だけではないと、本書を読んで再確認する。地方の小さな町では過疎化と高齢化が進む。かつてにぎわった町の中心部はシャッター通りと化し、中規模都市からの百貨店撤退も進む。つまり「町の本屋」が危機というよりも、書店が立地する「町」そのものが危機なのだ。経産省は書店振興プロジェクトチームをつくったが、書店だけ振興しようとしてもそれは無理だろう。無書店自治体の増加は、地方が疲弊していることのあらわれだ。
ところで、ぼくが最もショックを受けたのは、「書店がなくても困らない」という声が少なくないこと。ネット書店も電子書籍もあるではないか、というのである。若者だけではない。高齢者も「ないと寂しいが、なくても困らない」と話す。
「本屋がなくなると困る」と思っているのは、書店関係者と本好きの一部なのかもしれない。(blueprint bookstore2200円)
小さな書店の悩みは販売低迷や顧客の減少などいろいろあるが、なかでも大きいのはベストセラーや話題の本など売れ筋の本が入荷しないことだという。都会の大型書店やネット書店には大量の在庫があるのに、なんとも不条理。著者の故郷、秋田県の書店は、顧客の注文に応えるためにネット書店で購入し、利益ゼロで渡すことも珍しくないそうだ。その額、年間150万円! また、「(書店で開催する)読み聞かせなんてそんなものは意味がない。それよりも売れ筋の本をちゃんと発売日に回してくれ」と話す宮城県の書店主もいる。
だが、苦境にあるのは書店だけではないと、本書を読んで再確認する。地方の小さな町では過疎化と高齢化が進む。かつてにぎわった町の中心部はシャッター通りと化し、中規模都市からの百貨店撤退も進む。つまり「町の本屋」が危機というよりも、書店が立地する「町」そのものが危機なのだ。経産省は書店振興プロジェクトチームをつくったが、書店だけ振興しようとしてもそれは無理だろう。無書店自治体の増加は、地方が疲弊していることのあらわれだ。
ところで、ぼくが最もショックを受けたのは、「書店がなくても困らない」という声が少なくないこと。ネット書店も電子書籍もあるではないか、というのである。若者だけではない。高齢者も「ないと寂しいが、なくても困らない」と話す。
「本屋がなくなると困る」と思っているのは、書店関係者と本好きの一部なのかもしれない。(blueprint bookstore2200円)
2024年09月04日
【月刊マスコミ評・出版】「終わらない戦争」と「現場の生の声」=荒屋敷 宏
8月ジャーナリズムと嘲笑されても、戦争の惨禍を記録し、記憶し続ける本は書かれるべきだし、率先して読むべきであろう。
『世界』9月号(岩波書店)の特集「癒えない傷、終わらない戦争」は、「社会の荒廃と人間の破壊」である「戦争がもたらす長期的な影響」を直視するよう呼びかけている。
同誌の中村江里氏(上智大学准教授)「戦争のトラウマを可視化する」は、隠されてきた日本軍兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究を紹介している。中村氏が指摘するように、「かつての戦争を正当化する『英雄の物語』や『被害者の物語』に安易に回収されないようにするためにも、被害国の側の語るトラウマと向き合い、対話を重ねていく」ことが重要だ。
ジャーナリストの布施祐仁氏「自衛隊と戦場ストレス」(同誌)にも注目した。イスラエル軍の予備役兵のエリラン・ミズラヒ氏はパレスチナ・ガザ地区の任務に就くように緊急召集令状を受け取った直後、妻と4人の子どもを残して自殺したという。ミズラヒ氏は昨年10月も緊急召集され、遺体の収容作業に従事し、軍事作戦にも工兵として戦闘に加わったそうだ。彼はPTSDと診断されたのに、再召集されたのだ。
布施氏は、10人を超えたというイスラエル軍兵士の自殺について、日本の自衛隊にとっても無縁ではないという。陸上自衛隊のイラク派遣の約2年間で22発のロケット弾や迫撃砲弾が宿営地を狙って撃ち込まれた体験や東日本大震災の災害派遣時の遺体回収など、自衛隊員が過酷な体験を強いられてきたことがわかる。躊躇なく人を殺す訓練などの結果、精神を病んでいくアメリカ軍兵士の体験を紹介しつつ、戦争が人間を破壊していく悲惨を強調している。
一方で、戦争を食い止める叡智を集めるどころか、『Voice』9月号(PHP研究所)は特集「戦後79年目の宿題」で、憲法改正や安全保障、日米地位協定などを挙げ、いわゆる戦後政治の総決算を思い出させる、戦争への道を提唱している。
それでいいのか? 土井敏邦氏『ガザからの報告 現地で何が起きているのか』(岩波ブックレット)は、虐殺されているガザの人々の「現場の生の声」が報道されていないことに警鐘を鳴らしている。土井氏の指摘に学び、戦争を食い止める叡智は、「現場の生の声」に隠されていると考えたい。ジャーナリストの仕事の重要性もそこにある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
『世界』9月号(岩波書店)の特集「癒えない傷、終わらない戦争」は、「社会の荒廃と人間の破壊」である「戦争がもたらす長期的な影響」を直視するよう呼びかけている。
同誌の中村江里氏(上智大学准教授)「戦争のトラウマを可視化する」は、隠されてきた日本軍兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究を紹介している。中村氏が指摘するように、「かつての戦争を正当化する『英雄の物語』や『被害者の物語』に安易に回収されないようにするためにも、被害国の側の語るトラウマと向き合い、対話を重ねていく」ことが重要だ。
ジャーナリストの布施祐仁氏「自衛隊と戦場ストレス」(同誌)にも注目した。イスラエル軍の予備役兵のエリラン・ミズラヒ氏はパレスチナ・ガザ地区の任務に就くように緊急召集令状を受け取った直後、妻と4人の子どもを残して自殺したという。ミズラヒ氏は昨年10月も緊急召集され、遺体の収容作業に従事し、軍事作戦にも工兵として戦闘に加わったそうだ。彼はPTSDと診断されたのに、再召集されたのだ。
布施氏は、10人を超えたというイスラエル軍兵士の自殺について、日本の自衛隊にとっても無縁ではないという。陸上自衛隊のイラク派遣の約2年間で22発のロケット弾や迫撃砲弾が宿営地を狙って撃ち込まれた体験や東日本大震災の災害派遣時の遺体回収など、自衛隊員が過酷な体験を強いられてきたことがわかる。躊躇なく人を殺す訓練などの結果、精神を病んでいくアメリカ軍兵士の体験を紹介しつつ、戦争が人間を破壊していく悲惨を強調している。
一方で、戦争を食い止める叡智を集めるどころか、『Voice』9月号(PHP研究所)は特集「戦後79年目の宿題」で、憲法改正や安全保障、日米地位協定などを挙げ、いわゆる戦後政治の総決算を思い出させる、戦争への道を提唱している。
それでいいのか? 土井敏邦氏『ガザからの報告 現地で何が起きているのか』(岩波ブックレット)は、虐殺されているガザの人々の「現場の生の声」が報道されていないことに警鐘を鳴らしている。土井氏の指摘に学び、戦争を食い止める叡智は、「現場の生の声」に隠されていると考えたい。ジャーナリストの仕事の重要性もそこにある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年09月03日
【就活支援ゼミ】来春 21人が記者に 「報道実務家フォーラム」と共催=新崎盛吾(新聞労連元委員長、共同通信記者)
記者志望の学生の就職活動を支援する「就活支援ゼミ」が、今期の活動を終えつつある。JCJとしては2年目の取り組みで、今期からは「報道実務家フォーラム」との共催となった。
昨年9月からゼミ生の募集を始め、11月から約30人の学生を3班に分けて作文やエントリーシートの書き方、模擬面接などを毎月指導。その合間に、学生同士のオンラインによる自主ゼミも、毎週のように開かれた。
昨年まで講師は私だけだったが、今期は「報道実務家フォーラム」から毎日新聞編集委員の日下部聡さん、共同通信記者の松井健太郎さんらが加わり、2人ずつの講師で各班を指導する形に拡充することができた。
年が明けてから加わった学生も含めて、最終的には37人が参加。今も就活を続けている数人を除き、計23人が来春から記者として、社会人の第一歩を踏み出すことが決まった。就職先は8月時点で、読売新聞と共同通信がそれぞれ4人、日経新聞、朝日新聞、NHKが各2人。時事通信、福島民友新聞、新潟日報、信濃毎日新聞、九州朝日放送などにも進む見通しだ。
近年の新聞・放送業界は、採用活動の開始時期の前倒しに拍車が掛かり、12月には全国紙が内定を出し始める。3月には大手紙の大半が採用活動のピークを迎え、ブロック紙や地方紙が少し遅れて動き始める流れだ。記者志望の学生が減少する中で、複数の内定を得る者も多く、各社が夏から秋にかけて採用辞退者の補充を繰り返す。
春になると、複数の内定を得たゼミ生が就活を終えるほか、他業界から内定を得て記者の道を断念する者も出てくるため、ゼミの参加者は次第に減少する。4月以降は3班態勢から就活を続けるゼミ生を一つの班に再編し、開催日も毎週に増やして6月まで指導を続けた。7月以降じゃ個人対応に移行している。
1人当たりの参加費は5千円だが、ゼミ生が希望する限り支援を続けるため、十分に元は取れると思う。
一方で、今期は記者としての内定を得ながら他業界に進む選択をしたり、大手紙の採用が一段落する春以降、ブロック紙や地方紙を受けずに記者の道を断念したりする学生も目立った。就活を通じて自分の将来について真剣に考えたり、適性を判断したりする機会になっていることを願いたい。
新聞労連の委員長に就任した2014年以降、「新聞労連作文ゼミ」の就活支援で、9年間に約300人の学生を新聞・放送業界に送り出してきた。昨年からJCJに活動の場を移し、今期から「報道実務家フォーラム」との協力態勢も整えることができた。
記者の仕事が逆風にさらされる時代だからこそ、強い思いを持った学生の力を底上げする支援活動の重要性は、さらに増したと思う。初めて会った時には記者に向かないと思った学生が、数か月でたくましく成長することは珍しくない。就活で苦労した学生ほど、離職せずに頑張り続ける傾向もみられる。その後押しをする活動が、将来の新聞・放送業界、ひいては日本のジャーナリズム活動を支えることにつながるはずだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年09月02日
【JCJ オンライン講演会】「ハマスの実像」とパレスチナ現地報告 講師:川上泰徳さん(中東ジャーナリスト)9月21日(土)午後2時から4時
■開催趣旨
元朝日新聞記者の中東情勢に詳しいジャーナリスト・川上泰徳氏は『ハマスの実像』(集英社新書)を8月に出版した。多くの日本人は、昨年10月にイスラエルを奇襲攻撃したことで、イスラム組織ハマスを初めて知ったのではないか。ガザ地区を実行支配するこのハマスは残忍なテロ集団と思われがちだが、それは誤解だとこの本で解き明かす。そして川上氏はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とイスラエルを7月初旬から約1カ月間、取材した。ガザ住民の多くはなぜ支持するのか、何を目指すのかなどハマスの実態や、イスラエル軍から強制立ち退きを迫られるパレスチナ住民、兵役拒否のイスラエルの若者の現状を報告。さらに焦点のガザ戦争はどうなるかを川上氏は冷静に語る。
■講演者プロフィール:川上泰徳 (かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト
元朝日新聞記者。編集委員。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。今年8月に「ハマスの実像」(集英社新書)を刊行した。
■zoomにてオンライン 記録動画の配信有り。
■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0921.peatix.com)で参加費をお支払いください。
■JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に支部名を明記の上お申し込み下さい。
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
03–6272-9781(月水金の13時から18時まで)
https://jcj.gr.jp/
2024年09月01日
【沖縄リポート】ダンプ事故隠す警察、マスコミも?=浦島悦子
前号で触れた安和桟橋(辺野古への埋立土砂の搬出港)でのダンプによる死傷事故(6月28日)からひと月半。重傷を負った市民女性が奇跡的な回復を見せつつあるのが救いだが、時を経るにつれ、この事故を巡る状況の異様さが露わになってきた。
まずは警察の動きが見えないこと。死傷事故を起こしたダンプの運転手は逮捕されず、事故現場にいた人の誰も(怪我をした本人も含め)事情聴取を受けていない。現場検証についても、市民団体が辺野古弁護団の弁護士とともに現場検証したという報道の翌日、ようやく警察が動いた。しかし、未だにこの事故についての警察発表はないままだ。
一方で、SNS等では、抗議市民がダンプの前に飛び出し、それを制止しようとした警備員が犠牲になったという当初の警察発表や、抗議市民を「人殺し」呼ばわりする言説が流布され、沖縄県議会では、先の県議選で多数となった野党・自公勢力が、事故はデニー知事のせいだと吊し上げた。
このようなフェイクニュースに対し事故の真相を伝えようと、オール沖縄会議は7月18日に記者会見を行い、現場検証と目撃者・関係者への聞き取りをもとに作成した現場の図面を添えて見解を発表したが、県内メディアもその内容をほとんど報道していない。真相は国にとって不利なので、警察もマスコミも含めて隠蔽しようとしているのではないかと勘繰りたくなる。
私は、この事故及びそれを巡る状況は、当初から違法・脱法を繰り返し、いわば「治外法権」下で行われてきた辺野古新基地建設事業を象徴する事件だと感じている。つまり、ここでは(国家権力の庇護のもとで)何をやっても許されるということだ。
土砂搬出は現時点ではまだ止まっている。市民らは断続的に安和桟橋前で集会を開き、工事の中止を求めている=写真=。集会では、国が「安全対策」を名目に、機動隊を大動員して市民を現場から排除し、正当な抗議や意思表示を封じ込めようとする可能性についての危惧も表明された。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月31日
【ジャーナリスト講座】9月から7回開催=須貝道雄
メディアの世界をめざす学生向けに、今年もジャーナリスト講座を7回シリーズで開く。沖縄からの報告を除く6回は東京の会場で開催する。予定は次の通り。
▽9月14日午後2時「記者の仕事と昨今のメディア就活事情」、講師は共同通信記者・新崎盛吾さん。築地社会教育会館▽9月29日午後2時「横浜市教育委員会の裁判傍聴妨げ問題にどう迫ったか」、講師は東京新聞横浜支局記者・森田真奈子さんと共同通信文化部記者・團奏帆さん。男女平等センター・ブーケ21▽10月6日午後2時「完璧なエントリーシートが内定への試金石=v(学生限定の講座)、講師は元横浜国立大学教授、元毎日新聞記者・高橋弘司さん。東京の会場を予定(追ってご連絡)▽10月14日午後2時「今、記者に必要なこと――米国・中東取材を踏まえて考える」、講師は毎日新聞編集委員・大治朋子さん。日比谷図書文化館小ホール。。その後も10月26日、11月9日、11月23日と続く。詳細はJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/)をご参照ください。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
▽9月14日午後2時「記者の仕事と昨今のメディア就活事情」、講師は共同通信記者・新崎盛吾さん。築地社会教育会館▽9月29日午後2時「横浜市教育委員会の裁判傍聴妨げ問題にどう迫ったか」、講師は東京新聞横浜支局記者・森田真奈子さんと共同通信文化部記者・團奏帆さん。男女平等センター・ブーケ21▽10月6日午後2時「完璧なエントリーシートが内定への試金石=v(学生限定の講座)、講師は元横浜国立大学教授、元毎日新聞記者・高橋弘司さん。東京の会場を予定(追ってご連絡)▽10月14日午後2時「今、記者に必要なこと――米国・中東取材を踏まえて考える」、講師は毎日新聞編集委員・大治朋子さん。日比谷図書文化館小ホール。。その後も10月26日、11月9日、11月23日と続く。詳細はJCJホームページ(https://jcj.gr.jp/)をご参照ください。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月30日
【リレー時評】どこから生まれる「台湾有事」という思考=金城 正洋(JCJ沖縄世話人)
「なんだかな〜」というため息しか出てこないのはなぜだろう。この言葉はTBS「報道特集」特任キャスターの金平茂紀さんが取材で沖縄に来るたび、泡盛を吞みながら語り合う中で必ずこぼす言葉だ。
取材をして報じても。報じても報じても、底が抜けたこの国の歪みはまるでブラックホール化し、常識を詭弁と権力で踏みつぶす。そして暗闇へ放り投げて都合のいい歴史へと変えていく。いったい何がしたいのかさえ説明しない。だから「なんだかな〜」というため息しか、わたしにも出てこないのはどうしたことだろう。
「台湾有事」という怪しげな造語が跋扈する。中華人民共和国(中国)が中華民国(台湾)に武力介入するはずだから、与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島の自衛隊基地にミサイル攻撃のための装備を整えておきましょうね、と。
「台湾有事」なるものが起きたとして、中国と日本が果たして戦争状態に突入するというのだろうか。どちらも経済連携の互恵関係は切っても切り離せないほどの深度に達しているという現実からしても、どこから「台湾有事」は「即、日本の有事」という、極めて狭い思考が生まれてくるのか、不思議でならない。
コロナ禍を経た世界中の人々が、コロナ禍以前のように国境を越えて観光で交流を取り戻している。沖縄だって例外ではない。那覇空港には中国や韓国、台湾、東南アジア諸国からの便が離発着し、国際通りは外国客であふれている。
スーパーでは中国産の食料品が大半を占め、市民の食卓を潤す。と同時にこの国の食料自給率の低さを、いやが上でも知らされるのだ。
こういった現実社会を直視せずに、「中国が嫌い」だから「台湾有事は日本の有事」だと短絡的思考に陥るのはどうだろうかと考える。
沖縄から見ていると、軍事力増強と排外主義的な風潮が台頭し、この国は戦前、いやそれ以前の「鎖国状態」に還ったのかと、ふと思わずにはいられない。
「なんだかな〜」。
ところがだ、自衛隊は駐屯地(基地)を造った石垣島で、こともあろうに公道で「行軍」を実施した。そして石垣島と宮古島の中間に位置する駐屯地のない多良間島でも公道を使った「行軍」を行った。
与那国島に基地を造る当初は「沿岸警備監視」が名目だった。それがミサイル配備基地になり、今後は与那国空港滑走路の延長、島の南中心部を大幅に掘削して軍港とする計画まで出ている。すべて「有事」のための指定空港・港湾とするためのものである。
駐日米大使の与那国島視察、米軍と自衛隊の机上訓練、石垣市と与那国町の首長による住民避難計画策定要請などは、まさに戦前ではないか。
これは沖縄だけの問題なのか。戦争になればすべてが犠牲者になるのですよ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
取材をして報じても。報じても報じても、底が抜けたこの国の歪みはまるでブラックホール化し、常識を詭弁と権力で踏みつぶす。そして暗闇へ放り投げて都合のいい歴史へと変えていく。いったい何がしたいのかさえ説明しない。だから「なんだかな〜」というため息しか、わたしにも出てこないのはどうしたことだろう。
「台湾有事」という怪しげな造語が跋扈する。中華人民共和国(中国)が中華民国(台湾)に武力介入するはずだから、与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島の自衛隊基地にミサイル攻撃のための装備を整えておきましょうね、と。
「台湾有事」なるものが起きたとして、中国と日本が果たして戦争状態に突入するというのだろうか。どちらも経済連携の互恵関係は切っても切り離せないほどの深度に達しているという現実からしても、どこから「台湾有事」は「即、日本の有事」という、極めて狭い思考が生まれてくるのか、不思議でならない。
コロナ禍を経た世界中の人々が、コロナ禍以前のように国境を越えて観光で交流を取り戻している。沖縄だって例外ではない。那覇空港には中国や韓国、台湾、東南アジア諸国からの便が離発着し、国際通りは外国客であふれている。
スーパーでは中国産の食料品が大半を占め、市民の食卓を潤す。と同時にこの国の食料自給率の低さを、いやが上でも知らされるのだ。
こういった現実社会を直視せずに、「中国が嫌い」だから「台湾有事は日本の有事」だと短絡的思考に陥るのはどうだろうかと考える。
沖縄から見ていると、軍事力増強と排外主義的な風潮が台頭し、この国は戦前、いやそれ以前の「鎖国状態」に還ったのかと、ふと思わずにはいられない。
「なんだかな〜」。
ところがだ、自衛隊は駐屯地(基地)を造った石垣島で、こともあろうに公道で「行軍」を実施した。そして石垣島と宮古島の中間に位置する駐屯地のない多良間島でも公道を使った「行軍」を行った。
与那国島に基地を造る当初は「沿岸警備監視」が名目だった。それがミサイル配備基地になり、今後は与那国空港滑走路の延長、島の南中心部を大幅に掘削して軍港とする計画まで出ている。すべて「有事」のための指定空港・港湾とするためのものである。
駐日米大使の与那国島視察、米軍と自衛隊の机上訓練、石垣市と与那国町の首長による住民避難計画策定要請などは、まさに戦前ではないか。
これは沖縄だけの問題なのか。戦争になればすべてが犠牲者になるのですよ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月29日
【フォトアングル】「平和コンサート」で望月衣塑子さん講演=7月27日・武蔵小金井、伊東良平撮影
9条の会・こがねいなどが母体となる多摩Pacemの会が主催する「平和チャリティコンサートin多摩」が7月27日に小金井宮地楽器ホールで開催された。コーラス「平和を願う歌」に続いて東京新聞の望月衣塑子さんが講演を行い、防衛費の拡大や武器輸出などで戦争容認に突き進んでる、歯止めになる道を選ばないといけないと話し、米大統領選ではZ世代をはじめ新しい動きが始まっているとして、ハリス氏への期待を述べた。また年内に総選挙が行われる可能性にも言及した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月28日
【月刊マスコミ評・新聞】「大本営発表」報道を再来させるな=六光寺 弦
意図的な虚偽ではなくても、伝え方次第で物事の印象は変わる。新聞が公権力の作為を見抜く力を失い、発表通りに報じるだけでは、かつての「大本営発表」報道を再来させかねない。自衛隊の不祥事のことだ。
防衛省は7月12日、大量処分を発表した。翌13日付の東京発行の新聞各紙はおおむね1面トップの扱い。主見出しは「防衛省218人処分」(朝日、毎日、東京)、「防衛省 幹部ら218人処分」(読売)など、そろって処分の規模を強調した。しかし、「218人」は本当に最大のニュースバリューなのか。
対象の不祥事は@特定秘密の違法な取り扱いA潜水手当の不正受給B隊内施設での不正飲食C内局幹部のパワハラ−の4種。@は組織運営上の構造的な要因があり、属人的な不正、不適切行為である。他の3種と質が異なる。処分者も113人と過半を占める
特定秘密保護法は安倍晋三政権下の2013年12月、世論の賛否が二分される中で採決が強行され成立した。自衛隊が米軍と一体で行動するために不可欠とされた。ところが、当の自衛隊でルールを守れない運用が続いていることが露呈した。法の廃止を含めた抜本的な議論が社会に必要であり、それがこのニュースの本質のはずだ。
軍拡を進める岸田文雄政権も防衛省も当然、そんな事態は防ぎたい。特定秘密から何とか目をそらせたいと考えた末の、異質な他の不祥事との抱き合わせの発表ではなかったか。
例えば隊内施設での不正飲食は、ネットで検索しただけでも、過去の事例の報道がいくつも見つかる。すべて現地部隊の発表だ。なぜ今回だけ防衛省の発表なのか。
潜水手当の不正受給では、警務隊が4人を逮捕しながら大臣には報告していなかったことが、大量処分の発表後に発覚。8月になって防衛次官らを追加で処分した。抱き合わせで発表する事例を探すのに大慌てだったとすれば、このお粗末ぶりもよく分かる。
新聞各紙では、特定秘密保護法に焦点を当てた長文の記事もあった。だが、ネットのニュースアプリやSNSでは読めない。新聞を読まない層には「自衛隊はたるんでいる」との、ぼんやりとした受け止めにしかならなかったおそれがある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
防衛省は7月12日、大量処分を発表した。翌13日付の東京発行の新聞各紙はおおむね1面トップの扱い。主見出しは「防衛省218人処分」(朝日、毎日、東京)、「防衛省 幹部ら218人処分」(読売)など、そろって処分の規模を強調した。しかし、「218人」は本当に最大のニュースバリューなのか。
対象の不祥事は@特定秘密の違法な取り扱いA潜水手当の不正受給B隊内施設での不正飲食C内局幹部のパワハラ−の4種。@は組織運営上の構造的な要因があり、属人的な不正、不適切行為である。他の3種と質が異なる。処分者も113人と過半を占める
特定秘密保護法は安倍晋三政権下の2013年12月、世論の賛否が二分される中で採決が強行され成立した。自衛隊が米軍と一体で行動するために不可欠とされた。ところが、当の自衛隊でルールを守れない運用が続いていることが露呈した。法の廃止を含めた抜本的な議論が社会に必要であり、それがこのニュースの本質のはずだ。
軍拡を進める岸田文雄政権も防衛省も当然、そんな事態は防ぎたい。特定秘密から何とか目をそらせたいと考えた末の、異質な他の不祥事との抱き合わせの発表ではなかったか。
例えば隊内施設での不正飲食は、ネットで検索しただけでも、過去の事例の報道がいくつも見つかる。すべて現地部隊の発表だ。なぜ今回だけ防衛省の発表なのか。
潜水手当の不正受給では、警務隊が4人を逮捕しながら大臣には報告していなかったことが、大量処分の発表後に発覚。8月になって防衛次官らを追加で処分した。抱き合わせで発表する事例を探すのに大慌てだったとすれば、このお粗末ぶりもよく分かる。
新聞各紙では、特定秘密保護法に焦点を当てた長文の記事もあった。だが、ネットのニュースアプリやSNSでは読めない。新聞を読まない層には「自衛隊はたるんでいる」との、ぼんやりとした受け止めにしかならなかったおそれがある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月27日
【焦点】都議選 立民2つの誤算業界ボタン≠押さなかった自民 総裁選 進次郎氏が急浮上 現時点で確トラ=@日米政局 激動の秋へ 鮫島浩氏オンライン講演=橋詰雅博
7月17日のJCJオンライン講演には元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏=写真=が登場。鮫島氏は小池百合子氏が3選を果たした7月の都知事選で立憲民主党の蓮舫氏がなぜ惨敗したかを語り、国内政局の最大ヤマ場、9月自民党総裁選の行方、そして世界が大注目する11月の米大統領選はトランプ氏とハリス氏どちらが勝つのかなどを大胆に予測した。
都知事選で東京に選挙基盤がなく「政策の中身もカラッポ」という石丸伸二氏(前広島県安芸高田市長)にも抜かれ3位に転落した立民の蓮舫氏の敗因は、選挙戦略のミスと指摘した鮫島氏はこう解説する。
6月解散阻止
最優先の自公
「衆院補選で3連勝し5月の静岡県知事選でも勝った立憲民主党は、党の顔§@舫氏が都知事選に出馬すれば、アンチ小池の無党派層の票を大量に獲得でき勝てると分析した。しかし立憲民主党が4連勝できたのは、自公両党が手を抜いた選挙活動したのが大きかった。公明の支持母体の創価学会の動きは鈍く、自民党も支援しろという各種業界団体への締め付けが弱かった。業界ボタン≠押さなかった。岸田文雄首相の6月解散総選挙阻止を狙いあえて敗けた。自民党支持者の棄権により投票率は下がり、立憲・共産のコアな支持票が上回ったというのが4つの選挙パターン。それなのに立憲民主党は人気を回復し無党派層を呼び込めると誤解した。戦略ミスの第一です」
候補者の選択も間違った。これが第二のミスだ。
「攻撃力がある蓮舫という政治家に対する都民の反応は好きと嫌いがはっきりと分かれる。60代以上のリベラル派に人気は高いが、50代以下の無党派層に感情的に蓮舫嫌いが多い。案の定、石丸氏に無党派層の票をごっそり持っていかれた。小池を倒すことが目的だから好き嫌いの反応が弱い候補者をたてた方がよかった。立憲民主党の国会議員なら長妻昭とか1回生で朝日新聞後輩、山岸一生。首長経験者や学者もいい。こういうタイプならアンチ小池票をかなり集められたのではないと思う」
蓮舫氏と石丸氏の2位、3位争いが話題の中心になり、裏金自民党のステルス支援を受けた小池氏が楽勝した都知事選だった。
異例の大混戦
小林(鷹)も有力
岸田文雄首相(67)が総裁再選をあきらめた理由は@支持率低迷選挙の顔≠ノならず、来る総選挙では自民党は敗北の恐れがある、A政権生みの親・麻生太郎副総裁(麻生派83)は支持を確約せず見捨てた、Bバイデン米大統領が選挙から撤退し、頼みの綱が消えた―。
事実上首相を決めることになる9月自民党総裁選は大混戦だ。菅義偉元首相(無派閥71)が後ろ盾の石破茂元幹事長(無派閥67)、茂木敏充幹事長(旧茂木派68)、麻生氏が支持する自派閥の河野太郎デジタル相(61)、若手の旧安倍派議員が推す小林鷹之前経済安保相(旧二階派49)、林芳正官房長官(旧岸田派63)が出馬。加藤勝信(旧茂木派68)元官房長官、上川陽子外相(旧岸田派71)、高市早苗経済安保相(無派閥63)、斎藤健経産相(無派閥65)らも出馬に意欲示す。そしてここにきて小泉進次郎元環境相(無派閥43)電撃出馬≠ェ急浮上。
この話が飛び出してきたのは父親・純一郎元首相が心変わりしたという見方がもっぱら。
「純一郎元首相は『50歳までは首相を支えろ』『今は動くな』と自民党の捨て石にしないため進次郎氏の出馬にストップをかけていた。ところが出身派閥旧安倍派の森喜朗元首相から『進次郎しかいない』と言われた純一郎氏は『そこまで言うなら息子が出るというなら反対はしない』と答えた。土壇場で進次郎氏を担ぎ出し、一気に世論の期待を引き寄せる小泉劇場の再来を予想する声が広がり始めた」(鮫島氏)
石破氏に次いで国民人気第二位のうえに党内に敵がいない進次郎氏が総裁総理に駆け上がるかもしれない。
揺れる7州
ハリス嫌い
11月米大統領選は、民主・共和両党の激戦7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバタ、ノースカロライナ、ペンシルべニア、ウィスコンシン)が勝敗を分ける。この「スイングステート(揺れる州)」は選挙のたびに勝利政党が変わる。16年の大統領選では激戦7州のうち6州を制した共和党のトランプ氏が、20年は6州取ったバイデン氏がそれぞれ当選した。
「ラストベルト(錆びた工業地帯)と言われるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州の含む7州は、白人の労働者が多い。人種差別が根強く、リベラルは嫌い。アジア系の黒人女性のハリス氏は、リベラル色が強い。ハリス氏への抵抗感が相当にある激戦州は、トランプ氏が優勢です。現時点では確トラ≠ニ言えます」と鮫島氏は予測した。
自民党総裁選は9月12日告示、27日投開票だ。この総裁選に米大統領選の情勢が、どう影響を与えるのだろうか。
9月から11月に日米政局は激動する。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
2024年08月26日
【JCJ広島支部】2024不戦のつどい 8・6被爆地で何が起きているのか8・9‥‥9月15日(日)午後1時30分から4時30分 ジャーナリスト・高瀬 毅さん講演 ハイブリット開催
■開催趣旨:
原爆投下から79年目。広島市の平和公園は、警察による厳重警備のなかで平和記念式典が営まれました。長崎市では、イスラエルの代表を式典に招待しなかったことに抗議して、米英などG7諸国が大使級の代表を送らない事態になりました。核戦争の危機が現実化しているなかでヒロシマ、ナガサキの運動を妨げようとする動きが露骨になってきたと感じます。
いま何が起きているのか。ジャーナリズムに何が求められているのかーー市民とともに考えます。
多数ご来場ください。オンライン視聴もできます。
■プログラム:
◎基調講演
「ヒロシマ・ナガサキ」を問い直す〜被爆100年に向けて〜
高瀬 毅さん(ジャーナリスト、ノンフィクション作家)
◎市民討論
■講演者プロフィール:高瀬 毅 (たかせ つよし)
1955年長崎市生まれ。被爆二世。ノンフィクション作家。ニッポン放送に入社、記者、ディレクター。82年ラジオ・ドキュメンタリー「通り魔の恐怖」で日本民間放送連盟賞最優秀賞。放送文化基金賞奨励賞。89年よりフリー。『ナガサキ消えたもう一つの「原爆ドーム」』(2009年平凡社・のちに文春文庫)で平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞。『ブラボー隠されたビキニ水爆実験の真実』『東京コンフィデンシャル』など著書多数。ピース・ボート講師として7回乗船。マーシャル諸島、タヒチ諸島の核実験被曝者取材。戦争加害問題で南京取材。
YouTubeニュース解説チャンネル「デモクラシータイムス」で政治学者、白井聡氏と対論する「白井聡のニッポンの正体」が河出書房新社で書籍シリーズ化され、2023年、24年版(共著)を刊行。
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部
■会 場:広島弁護士会館 3階 大会議室(広島市中区上八丁堀2–73 ※広島城の東側)
■開催方式:9月15日(日)13:30〜16:30(会場リアルとzoomでのオンラインのハイブリッド開催。オンラインでの参加者には記録動画の配信有り)
■参加申し込み:会場参加、オンライン参加共に資料代 500円。(会場参加:学生・障がい者は無料)
https://jcj0915.peatix.com
■主催:日本ジャーナリスト会議広島支部(お問い合わせ先:090‑9060-1809(藤元))
https://jcj-hiroshima.jimdo.com/ 日本ジャーナリスト会議広島ホームページ
https://note.com/jcj_hiroshima/ 広島ジャーナリスト通信
■協賛:広島憲法会議、広島県文化団体連絡会議、広島県労働者学習協議会、広島マスコミ九条の会
原爆投下から79年目。広島市の平和公園は、警察による厳重警備のなかで平和記念式典が営まれました。長崎市では、イスラエルの代表を式典に招待しなかったことに抗議して、米英などG7諸国が大使級の代表を送らない事態になりました。核戦争の危機が現実化しているなかでヒロシマ、ナガサキの運動を妨げようとする動きが露骨になってきたと感じます。
いま何が起きているのか。ジャーナリズムに何が求められているのかーー市民とともに考えます。
多数ご来場ください。オンライン視聴もできます。
■プログラム:
◎基調講演
「ヒロシマ・ナガサキ」を問い直す〜被爆100年に向けて〜
高瀬 毅さん(ジャーナリスト、ノンフィクション作家)
◎市民討論
■講演者プロフィール:高瀬 毅 (たかせ つよし)
1955年長崎市生まれ。被爆二世。ノンフィクション作家。ニッポン放送に入社、記者、ディレクター。82年ラジオ・ドキュメンタリー「通り魔の恐怖」で日本民間放送連盟賞最優秀賞。放送文化基金賞奨励賞。89年よりフリー。『ナガサキ消えたもう一つの「原爆ドーム」』(2009年平凡社・のちに文春文庫)で平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞。『ブラボー隠されたビキニ水爆実験の真実』『東京コンフィデンシャル』など著書多数。ピース・ボート講師として7回乗船。マーシャル諸島、タヒチ諸島の核実験被曝者取材。戦争加害問題で南京取材。
YouTubeニュース解説チャンネル「デモクラシータイムス」で政治学者、白井聡氏と対論する「白井聡のニッポンの正体」が河出書房新社で書籍シリーズ化され、2023年、24年版(共著)を刊行。
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部
■会 場:広島弁護士会館 3階 大会議室(広島市中区上八丁堀2–73 ※広島城の東側)
■開催方式:9月15日(日)13:30〜16:30(会場リアルとzoomでのオンラインのハイブリッド開催。オンラインでの参加者には記録動画の配信有り)
■参加申し込み:会場参加、オンライン参加共に資料代 500円。(会場参加:学生・障がい者は無料)
https://jcj0915.peatix.com
■主催:日本ジャーナリスト会議広島支部(お問い合わせ先:090‑9060-1809(藤元))
https://jcj-hiroshima.jimdo.com/ 日本ジャーナリスト会議広島ホームページ
https://note.com/jcj_hiroshima/ 広島ジャーナリスト通信
■協賛:広島憲法会議、広島県文化団体連絡会議、広島県労働者学習協議会、広島マスコミ九条の会