2019年03月21日

【おすすめ本】植村裁判取材チーム編『慰安婦報道「捏造」の真実 検証・植村裁判』─明かされた右派の杜撰・欺瞞ロジック=安田浩一(ジャーナリスト)

「捏造」したのは誰か─元朝日新聞記者・植村隆さんは、訴え続けている。「捏造記者」のレッテルを張られ、誹謗中傷を受けてきた。「植村裁判」は、植村さんの尊厳をかけた闘いだ。
 裁判の傍聴に通う中で私もまた問われているのだと感じた。不正義を前に沈黙は許されるのか、植村さんの叫びは、メディアに携わるすべての者に向けられる。

 27年前、元慰安婦だった女性が韓国で名乗り出た。植村さんは必要な裏どりを重ね、記事にした結果のスクープ。人権を蹂躙された女性の悲痛な叫びが初めて報じられた。
 だが、これを「捏造」だとしたのが、櫻井よしこ氏や西岡力氏をはじめとする右派系の文化人・メディアだった。様々な悪罵がぶつけられた。それらが原因となって、植村さんは職場を追われ、本人も、さらには家族も殺害予告などの脅迫を受けてきた。
 
 本書は、これら一連の経緯と、櫻井・西岡両氏、出版社を相手取って起こした名誉棄損訴訟を、ジャーナリストたちからなる「取材チーム」が徹底検証したものだ。一方的に植村さんの「捏造」を叫んでいた者たちの杜撰なロジックが暴かれる。
「取材チーム」のひとり、長谷川綾さんは「資料をつまみ食いし、細部の齟齬で全体を否定する。その手法は<ガス室はなかった>と主張するホロコースト否定派を思わせる」と喝破する。そう、「植村裁判」は、日本社会を覆いつつあるヘイトな空気感との闘いでもあるのだ。
 詳細な検証記録によって、ようやく「真実」が浮かび上がってきた。
(花伝社1000円)
『慰安婦報道「捏造」の真実』.jpg
posted by JCJ at 09:30 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月18日

《月間マスコミ評・放送》話題呼んだ「さよならテレビ」=岩崎貞明

 昨年来、テレビ業界で大きな話題を呼んでいる番組がある。中京地区(愛知・岐阜・三重)の夕方のローカル枠で一回放送されただけなのに、番組の録画が各地に出回って、放送関係者たちの間で賛否両論を巻き起こしている。
 名古屋市の東海テレビ放送が「開局60周年記念」として放送したその番組は『さよならテレビ』。90分枠で全編ノーナレーション、氏名を表示した登場人物は三人だけという、今どき珍しい作りのドキュメンタリーだ。
 番組の舞台は、東海テレビ報道部そのもの。デスク周辺やスタジオ、取材現場などでスタッフが交わす会話がリアルに収録されている。
 主人公の一人は正社員アナウンサーで、ニュース番組のメインキャスターに抜擢される。
 彼は東日本大震災が発生した七年前、ローカルの情報番組のキャスターを務めていたが、岩手県産のコメを番組プレゼントとしたコーナーで、当選者を紹介する画面に「怪しいお米 セシウムさん」などとスタッフがふざけて書いたダミーのテロップがなぜか放送され、批判を浴びて番組打ち切りになった経験があった。ネットの掲示板でも叩かれた彼は、キャスターなのに前面に出るのを恐れるというトラウマを抱えている。不適切テロップ問題で会社は例年、放送倫理を考える全社集会を開催している。
 二人目は番組制作会社から来た若い男性。凡ミスの多い不器用な性質で、一年間の契約だけで切られてしまう。彼は局社員の残業を減らす目的で導入された派遣労働者だったが、ニュースで「派遣切り」の問題を取り上げながら、裏では放送局自らが派遣切りをしているという矛盾が現れる。
 三人目はベテランの契約記者。権力監視がメディアの使命と考える正義漢だが、押しが弱い面もある。犯罪の実行行為がなくても罪に問うという「共謀罪」が成立したが、彼はこれを人権問題だとして企画ニュースを提案、自ら取材して放送にこぎつける。しかし報道局幹部の判断で「共謀罪」という呼称は使えず、政府の説明通り「テロ等準備罪」という表現に書き換えられてしまう――。 
 視聴率競争や「やらせ」など、今のテレビが抱える問題点を鋭く突いたこの番組には、視聴者から「テレビはこれだけ裸になれるんですね」という評価もあったという。
 劇場用映画版も制作されているようだが、社内でも議論があることから公開のめどはまだ立っていない。

 JCJ機関紙「ジャーナリスト」2019年2月号掲載
posted by JCJ at 17:34 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月15日

【今週の風考計】3.17─世界で頻発する大統領包囲の民衆デモ

南アメリカのベネズエラが未曾有の危機に立たされている。2013年に就任したマドゥロ大統領は、死去したチャベスの後継者とされ、酪農やコーヒー・肥料・靴などの生産、スーパーマーケット事業などを相次ぎ国営化した。
しかし米国などからの経済制裁に加え、原油価格が下落して事態は悪化。天然資源も人的資源も豊富なこの国が崩壊寸前の状態に陥っている。2015年の選挙で野党が多数派になった国会の権限を無効化し、批判勢力を暴力的に抑圧・弾圧した責任も免れない。
野党連合出身のグアイド国会議長は、自ら暫定大統領就任を宣言し、数千人規模の反政府デモを組織して立ち上がっている。だが米ロなどの大国が軍事介入し、さらなる混乱を招く暴挙は慎まねばならぬ。

隣国のブラジルでは、今年の元旦に就任したボルソナロ大統領の言動も要注意。「ブラジルのトランプ」と評されるが、政界汚職を一掃できるか、犯罪組織による暴力が激化する“殺人大国”の汚名を返上できるか、極めつけの右翼であるだけに軍部と二人三脚での独裁政治に走らないか、不安が広がっている。

転じて北アフリカに目を向けると、アルジェリアではブーテフリカ大統領の立候補に反発する数万人規模のデモが起きている。なんと82歳になる彼は、4期20年の長期政権を率いてきた。6年前に脳卒中を患って以降、公の場にほとんど姿を見せず、健康不安が囁かれているのに、4月18日の大統領選挙へ5選をめざして立候補を表明したからたまらない。
野党勢力が結集して「空前の反乱」を呼びかけている。経済成長率は1.4%まで落ち込み、とりわけ若年層の高い失業率への反発は増大している。

アルジェリアの動きを気にしているのが、エジプトのシシ大統領だ。2014年に就任し、現在2期目・64歳の彼は2022年で任期満了の予定だった。だがシシ大統領を支持する議員が提出した、任期をさらに2期12年に延ばす改正案は、2034年までの在職(20年間)を可能とする内容。
 なんと8割の賛成多数で承認されてしまった。5月の国民投票にかけられ、過半数が同意すれば憲法改正が成立する。日本の永田町でも、安倍首相4選などの発言が飛び出している。
 シシ大統領に戻れば、人権活動家・ジャーナリストの拘束など、彼の強権姿勢は際立っており、「エジプトは記者にとって世界有数の監獄」と評されている御仁だ。

2018年に再選されたトルコのエルドアン大統領も、デモ禁止など国民への弾圧と取り締まりが激しい。仲間優先の縁故主義や独裁主義がはびこり、政治的な迫害や司法制度・法治への不信感、ビジネス環境の悪化などが、怒りに拍車をかけている。経済はぐらつき、通貨リラは急落。ついにトルコ国民も、17年には42%増の25万人超が外国へ逃げ出している。
 いま世界は大統領の言動を包囲する、怒りの民衆ネットワークを作り出している。(2019/3/17)
posted by JCJ at 16:13 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月12日

《月間マスコミ評・新聞》カジノ万博の追及は遠慮がち=山田明 

 厚生労働省の毎月勤労統計の偽装から始まり、統計不正問題は拡大するばかりだ。政府基幹統計の信頼が揺らぎ、国民生活、研究教育への影響は計りしれない。国会で疑惑の解明が求められるが、安倍政権は後ろ向きの姿勢が目立つ。
 安倍首相の嘘と居直りとともに、麻生副総理兼財務相の暴言にも呆れてしまう。「産まなかったほうが問題」発言だ。こうした暴言の確信犯、常習犯であり、発言撤回で済む話ではない。
 首相官邸が記者質問を問題視し、制限したことも重大な問題だ。新聞労連が抗議の声明文を出し、朝日などが社説で取りあげている。取材妨害に対して、内閣記者会、メディア全体で毅然と対応してもらいたい。
 沖縄では「妨害」をはねのけ、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票が全県で実施されることになった。「2・24県民投票」を注視したい。辺野古の海は、沖縄の民意を無視して米軍新基地建設の埋め立て工事が続く。政府は軟弱地盤の改良工事のため、設計変更するという。政府もマヨネーズ並み≠ニ言われる軟弱地盤を3年前に把握していたが、埋め立てを強行した。こんな杜撰な基地建設、公共事業はあり得ない。ただちに埋め立てをやめ、沖縄県と協議すべきだ。
 来年の東京五輪とともに、2025年に誘致が決まった大阪・関西万博にも注目したい。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪湾の人工島「夢洲」を舞台に開催する計画である。
 産業廃棄物などで埋め立て中の夢洲は、災害のリスクが懸念され、アクセスなどで巨額の地元負担をもたらす。大阪府・市は夢洲で万博1年前にIR=カジノを開業させようと躍起だ。ギャンブル依存症と隣り合わせのブラックユーモアのような「カジノ万博」だが、地元メディアの追及は遠慮がちだ。
 二度目の大阪万博は夢洲とカジノに固執すると、2005年愛知万博以上に迷走するだろう。大阪万博は、愛知万博の会場変更の教訓から学べ、と言いたい。  
 大阪では、維新が大阪市を廃止する「都構想」を強引に推し進めている。大阪はカジノや万博、「都構想」などより、防災や暮らしに目を向けるべきだ。政策の優先順位が問われている。
 春の統一地方選、夏の参院選に向け、足もとからのシビアな報道を期待したい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
 
posted by JCJ at 14:07 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月10日

【今週の風考計】3.10─「ダブル選挙」など、やってる場合か!

■東に「トーケイ不正」の隠蔽あれば、西に「トーリ党略選挙」が現れる。なんと大阪維新の会の府・市両首長は、<大阪都構想>のゴリ押しを狙い、同じ穴のムジナよろしく、府知事・市長を入れ替えて、ダブル選の「党利党略・住民不在・私物化」選挙の奇策に打って出た。
■4月7日に投開票される議会選に合わせて、前倒し実施する。それぞれが同じポストでの出直し選挙では、半年の任期しかないが、ポストを変えてのダブル選で勝てば新たに任期4年が確保でき、<大阪都構想>の再住民投票に向けた、コズルイ作戦が仕組める。

■この<大阪都構想>─すでに4年前、「府と市を合わせてもフシアワセ」と、住民投票で否決されたシロモノ。なのに大阪人らしくもなく、ウダウダとしがみつく。安倍政権も貴重な「改憲勢力」である維新の代表・松井一郎氏の立場を擁護し、ダブル選を容認している。
■だが地元の自民党・大阪府連は怒り心頭だ。ついに対抗馬として俳優の辰巳琢郎氏を知事選候補として擁立する最終調整に入った。

■いま大阪は、6月28〜29日のG20開催、さらには大阪万博の会場建設やその内容をめぐって、大きな関心と議論が沸き起こっている。とりわけ2025年5月3日から6カ月間、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催される大阪万博は、会場建設費1250億に運営費830億の経費を要する。「地盤沈下」の激しい大阪経済にとって、その財政負担に耐えられるのか、懸念されている。
■しかも万博会場に併設されるIR複合リゾート施設の内容が問題だ。巨大なカジノ建設が計画されている。このカジノ売り上げ、いわば賭博のテラ銭(客の負ける金額)を年間3800億と見込み、IR全体の年間売り上げ4800億の8割を賄うとしている。
 かつカジノ客の75%は日本人と想定しているから恐ろしい。まさに万博に必要なインフラ整備をカジノ事業者が行う図式が成り立つ。これこそカンジンの問題。(2019/3/10)
posted by JCJ at 11:48 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月09日

【国内政治】 地に落ちた統計の信用 企業・大学などに悪影響計り知れず 政治的思惑か忖度か=岡田敏明

 国の統計をめぐる問題が注目を集めている。
 いったい何が起きているのか。厚生労働省が、毎月勤労統計を不正な方法で調査していた。全数調査すべきところを抽出調査していたが、いきなり全数調査に近づける補正が行われたことから名目賃金が異常に上昇。補正は2018年から行われたが、17年以前分は補正されなかったため対比ができなくなった。

基幹の4割に問題
 毎勤統計の不正を調査する特別監査委員会の報告書問題もあったほか、不正は厚生労働省だけではなく、政府の基幹統計全体のなんと4割に問題が見つかっている。政府は新年度予算案を修正、閣議決定をし直す異例の事態に追い込まれた。雇用保険などを過少給付されていた対象者はさらに拡大する可能性がある。
 さらに毎勤統計の調査対象の入れ替えでは、首相秘書官が「問題意識」を伝え、その結果賃金の伸び率が上ぶれしたことなども明らかになった。
 単なる行政ミスが重なったわけではない。政治的な思惑か、官僚サイドでの忖度が働いたのか。不正の隠蔽と虚偽報告等々、疑惑は広がっている。
 日本の統計の信用は、地に落ちた、というべきだろう。

統計委員会の役割
 政府は「世界に冠たる日本の統計」などと自賛し、国際協力として途上国への援助もしてきた。その統計が揺らぎ、国の信用が毀損している。
 今回の一連の報道で統計委員会という存在を知った人も多いと思う。実は、2007年5月に新統計法が成立、60年ぶりに統計の基本法が改正された。この法律で統計委員会が設置された。
 旧統計法は、戦前から戦中にかけての経験に対する反省を踏まえ、積極的に統計体系の整備を図るために、各種統計調査に共通することを規定。指定統計調査および届出統計調査に関する事項等を規定していた。

 旧法は本文23条という小さな法律だったが、世論調査・意識調査などを法の範囲外として意見や意識という面にまで国が入り込むことを避けたという特徴があった。新法は本文64条からなるが旧法の精神を継承し、公的機関が作成する統計全般を対象とした法律に改編された。これまで官庁統計とか政府統計と呼ばれていたものを「公的統計」という名前に統一し、併せて統計データの二次利用促進を明記している。

 最近は、統計を「社会の情報基盤」という言い方をする。新統計法は、社会に必要とされる公的統計が効率的に、しかも人々に役立つように作るためのルールを定める。公的統計の作成、提供の手続、 統計調査で集めた個人や会社の秘密の保護、 全体としてムダなく効率的に統計を整備していくための仕組みなどを規定する。
 5年に一度行われる国勢調査のように国の基本となる特に重要な統計を作るための調査を 「基幹統計調査」というが、 その作成から結果公表に至るまで、 調査を実施する機関は厳しく規制される。統計の数字を都合良く変えたり、 公表前に結果を漏らしたりすることも禁止されている。毎勤統計も56ある基幹統計の一つである。

 西村芿彦統計委員長は「統計委員会では、統計技術的観点から毎月勤労統計及び毎月勤労統計調査の精度向上に多くの審議時間を費やし、厚生労働省にその改善を促してきており本事案は極めて残念である」と厳しく指摘した。事態は深刻だ。
 統計法は基幹統計調査に関して調査対象になった人や会社に回答の義務を定める。回答拒否や虚偽回答には罰則もある。
 国の重要な統計が正確に作れなければ、国や自治体だけでなく、民間企業や大学、統計データを使うすべての人々への影響は計り知れない。国民生活に直結する。
 かつてマルクスが資本主義研究を「資本論」に結実させたのは統計があって可能だったし、最近のトマ・ピケティの「21世紀の資本」も統計あってこそ成し遂げられたことは記憶に新しい。

役所に分散が問題
 この統計不正問題の背景として考えておかなければならないのは、統計部門が「行政改革」の名によるリストラの対象になったことである。04年当時6247人居た統計職員が18年4月には1940人と3分の1以下にまで大幅に減らされている。そして関連予算が削減されていた。統計に対する思想的退廃が見て取れる。
不正の意図は、長年まかり通っていたのはなぜか。―全貌を明らかにするのは重要課題である。 同時に、日本の公的な統計が各府省で分散されているという問題がある。この分散型の統計制度に対し、統計委員会を設置することで「司令塔」としての役割が期待されたのであるが、この制度で十分かも検討すべきである。統計を統合した中央官庁を新たに設置することも重要な選択肢であることを指摘しておきたい。

岡田俊明(元青山学院大学招聘教授・税理士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年03月06日

【リレー時評】日本のメディアは連帯感が不十分だ=隅井孝雄(JCJ代表委員)

 昨年12月26日の内閣官房長官記者会見で東京新聞望月衣塑子記者が「辺野古に赤土が投入されているのは、埋め立てが適法に進んでいないことを意味するのではないか、政府としてどう対処するのか」と質問したことに対し、「事実誤認だ。埋め立ては適法だ」との官房長官答弁が行われた。その2日後、12月28日、上村秀紀官邸報道室長名の要請書が内閣記者会に対して発せられた。
「東京新聞の特定記者による事実誤認の質問や問題行動が繰り返されている、官房長官会見の意義が損なわれる」として、自粛を要望した。記者会側は「記者の質問は制限できない」と応じたという。

 特定の記者とは望月記者であることは明白であり、彼女の質問の封殺と、官邸記者クラブからの排除を意図したとみられる。これまでにも望月記者の質問に際して官邸報道室長が数秒ごとに、「簡潔にお願いします」と制止することが常態だった。
 この事実が重大な問題をはらんでいるとみた新聞労連が「首相官邸の質問制限に抗議する声明」(2/5)を発表したことで、官邸による言論封殺の動きが初めて明らかとなった。声明は「会見において質問をぶつけ、為政者の見解をただすことは、記者の責務であり、こうした営みを通じて、国民の“知る権利”は保障される」と表明している。声明をきっかけに朝日新聞、毎日新聞、共同通信、琉球新報、赤旗などが次々に記事にして問題が広がった。

 一連の報道を読んで私が思い起こすのは、昨年11月の米トランプ大統領とCNNジム・アコスタ記者の確執だ。昨年11月7日の会見で移民問題やロシア疑惑を追求しようとしたアコスタ記者から、トランプ大統領はマイクを取り上げて質問を封じ、記者証をも取り上げて、ホワイトハウスへの立ち入りを禁じた。
 CNNは「記者証取り上げに異議を唱えなければ公職者を取材する記者の熱意をくじくことになる」と表明した。アメリカの主要メディア(一部ネットメディアも含む)13社がCNN支持に立ち上がったが、その中には、トランプ政権支持の論調を持つFoxニュースが含まれていた。Foxニュース 社長ジェイ・ウォレス氏は「記者証を攻撃の武器とすることは認められない。自由な報道へのアクセス、開かれた意見交換を支持する」(2018.11.15)との声明を発表した。そして9日後、18年11月16日、ワシントン連邦地裁はアコスタ記者への記者証返還を命じた。

 官邸報道室長の内閣記者会への「要望書」は18年12月28日に出されたが、明らかになるまでに一か月以上かかった。また安倍政権寄りと見られている読売新聞、産経新聞は報道していない。アメリカと比べると、言論の自由、知る権利について、日本のメディアの連帯感が不十分であるために、いま一歩鋭さに欠けているのは残念だ。 
posted by JCJ at 11:44 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月05日

《スポーツコラム》楕円球が生むW杯の絶妙な空気=大野晃

 ラグビーのワールドカップ(W杯)開幕まで半年に迫った。全国12会場では施設整備が完成を迎え、9回目で初めてアジアの日本で開催される4年に1度の世界一決定戦への意気込みを示している。過去8回の大会を現地で目の当たりにしてきたがスポーツの原点を見つめ直す好機である。
 
 ラグビーの魅力は、気まぐれに転がる楕円球を集団で制御して前へ運ぶことにある。阻むものとの不測の激突を結束して乗り越え、かわし、つなぐ。鍛えられた体と知恵と技術、そして精神力で結束を持続する。総合的人間力の競い合いだ。安全を求めてルール改変が進められたが、対戦者同士の協力とフェアプレーがなければケガが続出する危険な競技でもある。 
 競技者はもちろん観戦者もその全体を楽しむ。
 最高峰のプレーが集中するW杯には人間の営みに熱中する空気がある。 
 観戦者たちが自然に溶け込んでゲームの余韻に浸るのも特徴だった。国代表の勝利を喜び大騒ぎするが、排他的でないのは熱中したことの満足感があったからだろう。
 
 過去の大会では、南アフリカ・マンデラ政権の政治利用やテレビ放映権をめぐる商業主義的利用が目立つようになり、興行化が進んだが、競技者と観戦者が醸し出すW杯の空気に大きな変化はなかった。日本代表候補たちが夢の舞台へ懸命な努力を続けているのは、W杯の空気に浸りたいからに違いない。 
 会場の自治体などは外国人観光客の誘致期待が先行しているようだがW杯の空気が、人と人との根源的なつながりを再認識させそうだ。  
 大会興行の負担対策や巨大化した施設の大会後の有効利用策など難問山積だが、W杯の空気と人のつながりを重視した対応が求められる。
 興行が終わったら遺産処分では、W杯の空気は引き継がれない。
 マスメディアには日本の躍進を追うばかりでなくW杯の空気を伝える努力が不可欠だ。(スポーツジャーナリスト)
posted by JCJ at 18:32 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【内政】 天皇の戦争指導・責任を追及 88年JCJ賞受賞番組「遅すぎた聖断」上映 JCJ沖縄2月集会=杉山正隆

 JCJ沖縄2月集会「『遅すぎた聖断』学習会、ジャーナリズム各賞合同報告会・交流会」が9日、那覇市のRBCホールで開かれた。県内や、東京、北九州のメディア関係者30人が参加。沖縄戦がなぜ戦われたか、客観的な史料に基づき天皇の戦争責任などを考える「遅すぎた聖断 〜検証・沖縄戦への道〜」(1988年、RBC=琉球放送、40分)を上映。その後、番組を制作した仲里雅之ディレクター(当時)と大盛伸二カメラマン(同)から制作の狙いなどを聞き、質疑や討論が活発に行われた。

天皇制温存のため
 この番組にJCJ賞を贈呈したことを報じる88年8月25日付機関紙「ジャーナリスト」には、「ビデオを見た各委員はいずれもうなった。テレビでこれほど正面から天皇の戦争責任に迫り得た作品はこれが初めてではないか。日本軍による住民虐殺、20万に及ぶ戦没者をもたらした沖縄戦は、ただ国体護持=天皇制の温存のために戦われたのだ」と。また、「この番組を通じて『天皇の戦争責任』との言葉は一言も出て来ない。だが、積み重ねられた事実は、ものの見事に天皇・天皇制の責任を明らかにしている」と記されている。
 昭和が終わろうとする当時、天皇や君が代、日の丸などの問題をきちんと伝えなければ、との強い危機感が番組制作につながり、県内はもちろん、JCJ賞を受賞するなど県外でも反響が大きかった。

 メディア関係者からは、どんな苦労があったのか、タイトルを決定した経緯などの質問や、どう現役記者にバトンタッチしていけば良いのかアドバイスを求める声が上がった。
 仲里さんは「番組では事実を淡々と伝えていこうと思った。もちろん、どう受け止められるのか不安もあった。古本屋をまわり資料を探した」などと当時を振り返った。「沖縄では戦時中、皇民化教育が強くなされた。小さい頃からすり込まれた。それは皇族の結婚話を見ると、同じようなことが今もあるように感じる。最近の天皇の沖縄訪問の際に、戦時中と同じように『天皇陛下、万歳』の声が湧き上がり、提灯行列があった」とも。
 大盛カメラマンは「実は『遅すぎた聖断』に新しい事実は全く無かった。史実に、研究者の声などを丹念に組み合わせただけ。だから特に何も言ってないのだが、実は伝えたいことはしっかり言っている。ちゃんとしたメッセージを世に出したと今、見てあらためて感じる」と話した。

今の方が状況悪い
 参加者からは「番組を制作した30年前より今は悪くなっている点が少なくない」との危機感や、「沖縄のジャーナリズムを未来につないでいきたい」「沖縄ではきちんと伝えるべきニュースは報道されている。本土でのジャーナリストも工夫しつつ出来ることをすれば良い」「JCJの今後の取り組みに期待したい」などの声が上がった。
 各賞合同報告会では、沖縄タイムスが昨年のJCJ賞を、琉球新報が新聞労連大賞を、またラジオ沖縄や沖縄テレビ放送、FM沖縄などが主要ジャーナリズム賞を受賞するなど、昨年4月から現在までの13分野での受賞が報告された。各受賞者の代表からあいさつがあり、沖縄のジャーナリストの目覚ましい活躍に改めて感動した。

杉山正隆(JCJ運営委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
posted by JCJ at 18:24 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

【メディアウォッチ】 菅官房長官の報道恫喝 官邸になめられた大メディアと記者会 明らかな言論弾圧だ 委縮・自己規制はね返せ=編集部

 「取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ」。菅義偉官房長官は2月12日の衆院予算委員会で、語気を強め「東京新聞の特定記者」の質問をこう断定した。会見はネット動画で配信されており「事実に基づかない質問は、誤った事実認識を拡散される恐れがある」と、首相官邸の内閣記者会への申し入れの正統性を強調したのだ。国民民主党の奥野総一郎氏が質問で「民主主義国家としてあってはいけない」と追及したのに答えたものだが、記者会見の質問を封じる恣意的で言いたい放題の発言が、国会で平気でまかり通ってしまうこと自体を深刻に受け止めるべきだ。

 ところが今回も、政権による言論弾圧と言っても過言ではない発言が国会でなされたにもかかわらず、マスメディアの反応はとても鈍かった。官房長官答弁を正面から批判はせず、むしろ東京新聞に「9回ほど抗議した」という菅氏の言い分を伝えるにとどまる。こうした当事者意識の薄いメディアの報道姿勢の積み重ねが、今回の事態を招いていると言えよう。

 首相官邸報道室長名で内閣記者会に、東京新聞の特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、文書で申し入れたのは昨年12月28日。特定記者とは、官房長官会見でこの間しつこく質問してきた望月衣塑子記者のことで、記者会は「つっぱねた」とされるが、こうした不当な申し入れがあったことは直ぐには報じられず、2月1日になってから情報誌「選択」が電子版などで伝えたのが初報だ。その後、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が抗議声明を出したのをきっかけに、新聞やテレビで報道され始めた。JCJも8日に報道の自由の保障を求める声明を発表した。

 国民の「知る権利」に支えられて取材活動をする記者たちが、世論に訴えることなく、この間の「一強化する権力」と各社がばらばらに対峙するだけでは、官邸になめられるのも必然ではないのか。2014年末の衆院選の際に、自民党が解散前日に在京テレビ各局に「報道の公平性確保」を求める文書を出した時も同じだった。テレビ各局は受け取った時点で報道しなかった。各局の対応に疑問や、あまりに鈍感だと批判も出たが、それ以来、権力側からのさまざまな圧力にメディア側が自粛する傾向が徐々に強くなってきている。

 東京新聞とて、官房長官が言っている「9回」もの抗議を報じることなく、静観してきていることは問題だ。気に入らない質問者を排除しようとする政権の狙いを甘く見ずに、不当な対応ぶりをその都度批判的に報じていくことが求められている。
 さらにひどくなった報道現場の委縮、忖度、自己規制をはね返し、会社の枠を超えた地道な取り組みをしていきたい。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年03月03日

【今週の風考計】3.3─<サ行変格活用>で日本と世界を見通す

春はあけぼの。陽はサンサン。スタートした3月にちなんで、今週は<サ行変格活用>で見通してみたい。

まず─4日は「三線(さんしん)の日」、琉球に古くから伝わる伝統楽器「三線」を皆で弾いて、その音色を響き渡らせる。うるま市民芸術劇場で開かれる「ゆかる日まさる日さんしんの日」は第27回を迎える。
 5日は「サンゴの日」、沖縄の美ら海に生きるサンゴ礁が危機に瀕している。恩納村では「サンゴの村宣言」を発し、サンゴ礁の保全・再生へのプロジェクトを推進している。
は7日の「消防記念日」、今から71年前に消防組織法が制定された日にちなむ。春の火災予防運動の締めくくりの日でもある。
は9日の「スロバキア大統領選挙」─1993年にチェコと分離独立したスロバキア共和国はEUに加盟、人口450万、首都はブラチスラヴァ、国家元首は任期5年の大統領アンドレイ・キスカが務める。今度の選挙には出馬しない。15人が立候補、激戦の結果はどうなるか。

は5日の「山本宣治暗殺の日」─ちょうど90年前だ。「やません」と呼ばれ親しまれた労農党の衆議院議員が、国会から帰ってきた神田神保町の宿舎「光榮館」で、右翼に刺殺された。反戦平和を貫き、治安維持法の害悪と官憲の拷問を追及してきた。
 暗殺前日の3月4日には、全国農民組合大会で、「山宣ひとり(反対の)孤塁を守る。だが、背後には多くの大衆が支持している」と演説。翌日、国会で論陣を張るつもりだった。それもかなわず39歳の生涯を閉じた。

最後は─「曽我梅林」、実は陽気にほだされ、2日は梅見に出かけた。御殿場線・下曽我駅から徒歩10分。曽我物語の十郎・五郎の史跡や、梅やみかんの産地として知られる曽我の郷。
 箱根連山を背景に延々と広がる田園風景の中に、十郎や白加賀、紅や白の枝垂れ梅が満開だ。梅が枝に下がる短冊に「白梅に触れて老人光りけり─秋光」の句あり。あいにく富士山は雲に隠れて望めず。素朴な梅香うどんで腹を満たす。満足の一日だった。(2019/3/3)
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2019年03月02日

《沖縄リポート》「辺野古利権」が自然を破壊 =浦島悦子 


 2月9日の沖縄地元2紙は1面トップで、辺野古新基地建設のための埋め立て工事で、政府は大浦湾側の超軟弱地盤改良工事に、浅瀬も含め約7万7千本の砂杭を打つ予定だと報道した。これまで報道されていた4万本、6万本をさらに上回る規模に県民は絶句した。軟弱地盤の最深部は水深90mにも及び、専門家によると作業できる船は日本にはないという。

 埋め立て工事の先行きは全く目途が立たないことがますます明白になった。にもかかわらず、政府は、現在、土砂投入している工区の隣接工区に土砂投入を3月25日に開始すると発表した。さらに、埋め立て土砂の陸揚げをスピードアップするために新たな護岸の建設にも着手した。
沖縄の民意も県の指導も一切無視し、違法・不法の限りを尽くしてここまで強行するのはなぜなのか、不思議でならない。安倍晋三政権がいくら米国に忠実だとしても、自然条件が許さないから工事は無理だと伝えれば面子を潰さずにすむ。血税を湯水のように使う(「4万本」の段階で2兆5500億円と沖縄県は試算)この計画を、「国の威信」を保ったままやめることのできる絶好のチャンスだと思うのだが…。

 考えられるのはこの巨大工事にまつわる利権だ。沖縄防衛局のHPで辺野古側浅瀬埋め立て工事の落札状況を見ると、安藤・間、大成建設、五洋建設、大林組、東洋建設等々国内大手ゼネコンの名前がずらりと並ぶ。工事が途中で頓挫しようが、その間に儲ければいいということか。沖縄に残るのは破壊された自然だけ。

 2月24日に行われる県民投票は、そんな未来にさせないための行動でもある。市長が実施を拒否した5市の市民らの「投票権を奪うな!」という声が市政を揺るがすほどに高まり、「『辺野古』県民投票の会」の元山仁士郎代表の「全県実施」を求めるハンガーストライキが大きな反響を呼び、公明党も自民党も支持者の声を無視できなくなった。「賛成・反対」の2択に「どちらでもない」を加えた3択という変則的な形ではあれ、全県実地にこぎつけたのはひとえに市民活動の成果だ。その過程は苦難に満ちていたが、民主主義の実践でもあった。それを投票に活かし、圧倒的「反対」の民意を示したい。

 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年03月01日

【リアル北朝鮮】 米朝再会談を意識 「建軍節」例年とは違い静か=文聖姫

 2月8日は北朝鮮人民軍が創建された日だ。北朝鮮では「建軍節」と呼ぶ。実は、2017年までは4月25日が「建軍節」だった。この日は、金日成主席が朝鮮人民革命軍(抗日遊撃隊)を結成した日とされる。朝鮮人民軍は朝鮮人民革命軍の伝統を受け継いでいるから、朝鮮人民軍を結成した日が軍の創建日になるというのが、北朝鮮側の説明だった。
 しかし、歴史をさかのぼれば、当初は2月8日を「建軍節」としていた。それが前述のような理屈で4月25日に変わったのは1978年だった。そして、昨年、北朝鮮は従来の2月8日に「建軍節」を戻した。

 前置きが長くなったが、今年の「建軍節」は興味深かった。イベントを小規模化したのだ。昨年は建軍70周年だとして軍事パレードも行われた。だが今年は、慶祝公演とパーティーのみ。静かな建軍節だった。
 建軍節当日、金正恩朝鮮労働党委員長は人民武力省(防衛省)を訪問し、演説した。演説では、核やミサイルに関する言及はなかった。米国を非難する言葉も見当たらなかった。
 背景として考えられるのは、今月末にベトナム・ハノイで米朝首脳会談が開催されるという点だ。米国を刺激することを極力避けようとする北朝鮮指導部の意図がうかがえる。何もしないという選択肢は、北朝鮮の世論があるから考えられない。宴会や慶祝公演なら、ソフトなイメージが出せる。金委員長が人民武力省を訪れたのも絶妙な演出だった。

 さて、米朝首脳会談はどうなるのか。金委員長は今年元旦の新年の辞でこう語った。
「我々の主動的かつ先制的な努力に対し、米国が信頼性ある措置を取って相応の実践的行動で答えるなら、両国関係はより確実で画期的な措置を取っていく過程を通じて速いスピードで前進するでしょう」
 要するに我々も行動するから、米国も行動せよということだ。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月28日

【メディアウォッチ】宮古新報労組・伊佐次郎委員長が寄稿「新日刊紙」2月スタート 解雇拒否の社員一丸で発行継続

 今年1月10日、沖縄県宮古島市で日刊新聞を発行していた宮古新報社の座喜味弘二社長が全社員に解雇を通知した。解雇通知書には「業績不振により赤字経営が続いていたところ、資金繰りの目途が絶たなく事業閉鎖のやむなきに至った」とあったが、長年のパワハラやセクハラを続けていた座喜味社長に退任を迫った社員への報復だった。突然の解雇通知であり、「このまま解雇を受け入れるのか」、あるいは「受け入れず新聞発行を続けるのか」の選択を迫られた。動揺と不安が押し寄せるなか選択したのは新聞発行を続けることだった。残った社員10人は8・10ページから4ページの紙面縮小で発行。発行を続けるということは考えていた以上に大変なことだったが、社員一丸となって挑んだ新聞発行が2月1日からの新しい経営者の下でのスタートにつながった。

 解雇通知を受けた日は朝早くから取材があり、会社には午前10時頃に出勤した。座喜味社長ではなく事務員から解雇通知書を受け取った。前日に代理人の弁護士から口頭で「あす通知書を出す」と聞いてはいたが、実際に手にしたときは「本当にきたんだ」という感じだった。

地域の使命果たす
 実は弁護士が口頭で通知した後、(組合員の社員は)話し合いを持ち、その日の結論は解雇通知を受け入れることだった。昨年11月2日に座喜味社長に退任を迫り、その後の会議の連続で臨んだ団体交渉に顔を見せない座喜味社長に代わり出席した弁護士ののらりくらりの対応や年末に「事業譲渡の交渉を行っている」と言っておきながら突然の解雇通知のダメージは大きく、あきらめムードが漂った。

 9日の夜には緊急会議が持たれた。スカイプで宮古新報労働組合執行部4人と宮古連絡会、沖縄県マスコミ労働組合協議会、日本新聞労働組合連合(新聞労連)を交え、今後の対応をどうするかで話し合った。「解雇通知を受け入れるか」、それとも「受け入れず、新聞発行を続けていく」の二つの選択を迫られた。時間がない中で答えを出さなくてはいけないという難しさがあり答えは割れた。
 その中、東京で新聞労連が10日に緊急会見を行うことを決定。答えが見つからないまま時間が流れるなか「大事なことは当事者がどうしたいのか」の問い掛けが気持ちに刺さった。「そうだ。自分たちに投げかけられている問題であり生活が掛かっている。なにより創刊51年、『地域に根ざし、地域とともに歩む新聞としての使命を果たす』という理念のもと新聞を発行してきた。社長の独断で新聞発行を止めることは出来ない。宮古新報の新聞を待っている読者のためにも作り続けていきたい」。
 そんな思いが割れていた気持ちを一つにさせ、「これからも新聞を発行していく」との思いでまとまった。

明るくなった社内
 11日に記者会見し、社員の解雇撤回の要求と新聞発行継続を強調した。その日から3週間、社員は一丸となって新聞を作り続けた。紙面縮小の4ページで購読者に十分な情報が届けられないというもどかしさがあるが、「出し続けることが大事」と自分に言い聞かせ、疲れた心と体を奮い立たせている。この間多くの仲間の支援を受け、全国から電話やメールで激励を受けた。とても感謝であり元気が出る。
 取材先では「新聞は2社ないと駄目だ。頑張れ、応援しているぞ」などの声があり胸が熱くなった。自分の気持ちに寄り添い支えてくれる家族の存在は心強く、知人や友人からの電話には勇気が湧いた。恩師からは「きついと思うが、今の頑張りが将来にきっと生きてくる。何もできないが新聞を購読したい」との言葉がありがたかった。

 新聞発行を続けてきたことが事業譲渡につながった。新しい経営者は法人登記の手続きが済み次第、正式に発表すると言っている。座喜味社長に退任を迫り、慣れない団体交渉末の解雇通知に「受け入れない」と新聞を作り続けてきた。強い気持ちの一方、この先どうなるのだろうかという不安もあり、事業譲渡決定は「暗いトンネル」を抜けたような明るい希望を与えた。だが社員の人員不足による紙面縮小など依然厳しい状況。購読者に支えられ、新聞労連や県マスコミ労協、宮連会の支援を受けた紙面作りはまだ続きそうだ。

 今言えるのは創刊51年の歴史ある新聞社を守り、新たなスタート地点に立ったことだ。小さな新聞社だが地域に果たしてきた役割は大きく、改めて存在の大きさを感じた。社内には明るい雰囲気が漂うようになった。新しい経営者と社員が一丸となり、これからも「宮古新報」の新聞を作り購読者に提供していきたい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月27日

【メディア気象台】 1月〜2月 

国内の映画公開本数、過去最多
日本映画製作者連盟(会長・岡田裕介東映グループ会長)は29日、2018年の全国映画概況を発表した。年間総興行収入は2225億1100万円(前年比97.3%)と微減だったものの、00年以降では17年に次いで3番目の成績だった。入場人員は1億6921万人(同97%)、総興行のうち、邦画が占める割合は54.8%。公開本数は1192本(邦画613本、洋画579本)で、過去最多を更新した。洋画の「ボヘミアン・ラプソディ」が104億円、邦画では「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ救急救命」「名探偵コナン ゼロの執行人」が共に90億円を超えるなど、期待以上の作品が相次いだ。製作費300万円という「カメラを止めるな!」は31.2億円と邦画の7位に食い込んだ。(「毎日」1月30日付ほか)

2時間ドラマ枠消滅
2時間ドラマを放送している「月曜名作劇場」(月曜午後8時)が、3月で終了することになった。31日、同局関係者が取材者に対し明らかにした。民放キー局の夜の番組から、2時間ドラマのレギュラー枠が消えることになる。同局関係者によると、若年層への波及効果などを検討した結果、4月の番組改編に合わせて放送を終えることになった。2時間ドラマは事件などを主な題材として、長らく各局で盛んに放送されてきた。(「朝日」2月1日付ほか)

アマゾン、書籍買い切りへ
ネット通販大手のアマゾンジャパンは31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表した。同社は同日の記者会見で。「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示した。同社によると、買い切る書籍について出版社と協議して決定。一定期間は出版社が設定した価格で販売するが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するという。出版業界に詳しいフリーライターの永江朗さんは「出版社と書店との力関係が大きく変わるのではないか。電子書籍同様、本の値引きが進む可能性もある」と話している。(「毎日」2月1日付ほか)

ミャンマーロイター記者、最高裁に上訴
ミャンマーで少数派のイスラム教徒ロヒンギャ2を軍の兵士が殺害した事件を取材していたロイター通信のミャンマー人記者2人が国家機密法違反罪に問われ、禁固7年の判決を受けた事件で、2人は1日、一審判決を支持した高等裁判所の判断を不服として最高裁に上訴した。(「朝日」2月2日付ほか)

長崎新聞社長が部下へ性的言動
長崎新聞社は2日、徳永英彦社長(59)が部下の女性らに性的な言動をした問題を受けて臨時取締役会を開き、徳永氏の役員報酬3か月分の自主返上や、ハラスメント防止策強化などの方針を了承した。徳永氏は「品位を欠いた言動で多大の迷惑をおかけしたことを改めておわびします。ハラスメント防止策の先頭に立ち、社員と共に推進します」とのコメントを出した。(「東京」2月3日付ほか)

ドローン規制拡大「反対」〜新聞協会
日本新聞協会は8日、政府が小型無人機ドローンによるテロへの対策として今国会に提出予定のドローン規制法改正案に、自衛隊や在日米軍施設上空の飛行禁止を盛り込む方針に反対する意見書を菅官房長官宛てに提出した。「取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害する」と訴えた。意見書は「その時々の防衛相の恣意的な判断や自衛隊員の拡大解釈で、禁止区域が不適切に拡大し、不当な取り締まりが行われることが懸念される」と批判。「行き過ぎたテロ対策によって取材・報道の自由が阻害されることのないよう求める」と注文した。(「東京」2月9日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月26日

【行動要請】 3月9日 東海道五十三次いっせい行動 安倍改憲阻止で各地の九条の会参加=三枝和仁

 安倍晋三政権と自民党は執念をもって9条改憲を今国会で実施しようと狙っている。しかし、従来の講演会などでは関心の薄い層には届かない。何をなすべきか。昨年来「マスコミ九条の会」では、この論議を重ねてきた。

 当初、京都から東京への宣伝キャラバン≠考えた。車とクルーで東海道を上り、各地の九条の会と一緒に街頭宣伝を行うことだ。だが、いまのマスコミ九条の現状では組織面や資金面などで無理だと気付く。

 次善の策として何を。そこで浮かんだのか東海道五十三次いっせい9条改憲阻止宣伝だ。

行動日を決め、京都から東京まで五十三次(イラスト)で宣伝を行う。メディアも乗ってくれるのではとなった。昨年末に各地に「ご相談」の手紙を出し参加の呼びかけを行った。年明けから「やろう、やりたい」の連絡が入り、35を越える参加が見込まれている。

 実施は3月9日、統一のチラシで宣伝すること。時間などそれ以外は各地の事情に任せた。

 30以上の参加をマスコミ九条の会は高く評価している。皆、同じ気持ち、何かをやらねばならないが一致した。安倍政権は9条改憲に猪突猛進するだろう。それを阻止し、政権を打倒するには関心の薄い層へつながりを広げることだ。そのハシリとなればと願っている。

三枝和仁(マスコミ九条の会)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月25日

【編集長EYE】 東欧の陸上イージスの経費は米国が負担=橋詰雅博

 米国務省は1月末に安倍晋三政権が購入を決めている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基などの売却を承認し、米議会に通知した。売却額は21億5千万j(約2350億円)。当初は一基約800億円と算出されていたが、米国による価格つり上げで大幅にアップ。しかも30年間の維持・運用経費などを含めると合計6千億円にも跳ね上がる。

 安倍政権が爆買い≠オた陸上イージスは、強力なレーダー波の発生による電磁波問題がかねてから指摘されている。イージス艦のレーダー作動時では、乗員の甲板活動が禁じられるほどシステムが発する電磁波は強力だ。日本での配備予定地である秋田市と山口県萩市阿武町の地元でも、電磁波が健康や医療機器、防災無線、テレビ放送などに悪影響を与える恐れがあると配備反対運動は広がっている。阿武町在住の女性グループは有事の際、標的になる可能性があるので身の安全が心配だと計画撤回を求めている。

 地元住民の反対の声に押されて菅義偉官房長官はレーダーの電磁波影響調査の実施を明言。現在、防衛省は秋田と山口の両県で陸上自衛隊の対空レーダー装置を使った電磁波の影響調査を行っており、結果を4月以降に地元で説明する。しかし、そのレーダーは実際に陸上イージスに搭載される米ロッキード・マーチン社製ではない。代替品≠使った影響調査であるから結果に疑問が生じる。

 陸上イージスは2016年にルーマニアに配備され、ポーランドへの配備も近い。米国を狙うイランの弾道ミサイルを撃ち落とすためだから米国がコストを負担。日本の2基も米軍ハワイとグアムの両基地を狙う北朝鮮ミサイルに対処するためだが、コストは日本が負担する。住民を軽視した上に多額の血税を使い米国を守るというわけだ。今月末に2回目の米朝首脳会談がある。米朝関係は好転している。陸上イージスは無用の長物になるかも。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月24日

【今週の風考計】2.24─「三・一独立運動」から米朝会談への歩み

今週は、沖縄・辺野古埋め立ての是非を問う県民投票、東京・半蔵門の国立劇場で開催の「天皇在位30年記念式典」、さらには27日からベトナム・ハノイで始まる米朝首脳会談、そして韓国・ソウルや北朝鮮・平壌での「三・一独立運動100周年記念」行事の共同開催など、あわただしい内外の動きに目が離せない。

とりわけ「三・一独立運動」の内容など知らず、日本とは関係ないと思っている人々が多い。とんでもない。ちょうど100年前の1919年3月1日、朝鮮の学生や民衆5千人が、日本の植民地支配からの独立を目指し、京城のパゴダ公園に集まり「朝鮮独立万歳」を叫んだ。さらに動きは全土へと拡がるに及んで、日本の朝鮮総督府は武力を行使して弾圧、死者6千人・逮捕者5万人の悲劇を生みだしたのである。

「三・一独立運動」の1カ月前、1919年2月8日、 東京でも朝鮮からの留学生たちが、当時にして30年ぶりの大雪に見舞われるなか、東京西神田小川町の朝鮮YMCA会館に集まり、早稲田大学学生だった李光洙(当時26歳)が起草した<朝鮮青年団独立宣言>を採択し、日本政府・各国大使館・朝鮮総督府などへ送付している。
だが「朝鮮独立」はかなわず、その後も日本の植民地支配は1945年まで続いた。さらに5年後には朝鮮戦争が勃発し、朝鮮半島の分断は150年に及ぶ。

こうした歴史に翻弄されてきた韓国・北朝鮮の両国が、27日からの米朝会談によって朝鮮戦争の終戦宣言など、朝鮮半島の統一した平和づくりに向けて、新たな地平に踏み出す道が切り拓かれようとしている。

ひるがえって日本は、どうか。いまだ朝鮮に対する植民地支配や慰安婦・徴用工問題など、侵略の被害にあった朝鮮の人々への心のこもった深い謝罪や清算をしていない。いっそう日韓関係は悪化する中で、安倍政権は「明治150年」を礼賛するだけで、東北アジアの平和構築に背を向けている。(2019/2/24)
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2019年02月18日

【お知らせ】JCJ2・22講演会:高須次郎<出版崩壊とアマゾン>

出版崩壊とアマゾン
─どう再生への道を拓くか─
いま出版界は存続の瀬戸際に立たされている。
値引き販売・取次外しなどのアマゾン商法″が席巻!
電子書籍の価格は自由、再販制度はズタズタ。
日本の書店・取次の倒産が続く─その出口を探る。

講演:高須次郎氏(緑風出版代表・前出版協会長)
日時:2月22日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎ 03-3233-0611
JR「水道橋」駅東口下車、白山通りを神保町方面へ徒歩5分
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(JCJ会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会

JCJ出版部会2・22講演会チラシ(高須次郎氏).pdfJCJ出版部会2・22講演会チラシ
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2019年02月17日

【今週の風考計】2.17─小惑星「リュウグウ」についての一夜漬け

5年前に打ち上げられた小惑星探査機<はやぶさ2>が、地球から3億キロ先にある小惑星「リュウグウ」に、22日の朝8時15分ごろ着地する。パネルを広げれば14畳にもなる探査機<はやぶさ2>を、どう着地させるのか、ハラハラドキドキする。

直径900メートルほどの小惑星「リュウグウ」は、周辺温度は100度を超える上に、岩だらけ。そこに「ピンポイントタッチダウン」方式で、岩が少ない6メートル四方の地点を選んで接地し、弾丸を発射。飛び散った表面物質を探査機の採集装置に取り込み、わずか数秒間に0.1グラムのサンプルを採取した後、すぐ離脱するという。そしてホームポジションへ向かった後、今年の12月ごろ地球へ向けて出発し20年末に地球に帰還する計画だ。

老いた身では、寒い夜空を見上げる勇気はないが、太陽系誕生の謎を解き明かす、約290億円かけた壮大なプロジェクト。小惑星「リュウグウ」について、恥ずかしながら、さらに勉強させていただいた。

20年前に発見され、日本で「リュウグウ」と名付けられたソロバン玉に近い形状の小惑星は、地球に接近する軌道を持つ小惑星群のひとつだそうだ。しかも「リュウグウ」は太陽に近い軌道をめぐり、地球の約3倍もの速さで自転しているという。
かつ太陽系が作られたころの有機物や炭素を含む化合物、また水が多く存在し、太陽系の起源や生命誕生の秘密に迫ることが期待されている。まさに貴重な小惑星なのだ。

だが一方、地球に衝突する可能性が大きく、かつ衝突時に地球に与える影響が大きい潜在的に危険な小惑星にも分類されている。孫に教えるための勉強の一文となり、どうぞご容赦を!(2019/2/17)
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2019年02月15日

【国際情勢】 「辺野古を守れ」署名21万筆 呼びかけた日系4世 ワシントンで訴え 民主主義踏みにじる=津山恵子・NY在住

ハワイ在住の日系4世の音楽家、ロバート梶原さん(32)がホワイトハウスに向けて始めた、沖縄・辺野古への土砂投入停止を訴える請願署名が、21万に届こうとしている(米東部時間1月17日現在208,691)。

 梶原さんは昨年12月8日、米ホワイトハウスが設ける請願サイト「ウィ・ザ・ピープル(We The People)」を利用し、新基地の是非を問う今年2月24日の県民投票まで、工事停止を検討するように、トランプ米大統領に求める署名を集め始めた。サイトは、署名開始から30日以内に10万署名が集まればホワイトハウスで請願を検討、60日以内に回答が来る仕組み。このため、請願内容は、ホワイトハウス内で再検討され、「不適切な影響がある」と判断された場合を除き、署名者全員にホワイトハウスがeメールで回答を送るという。

沖縄中城は私の血

梶原氏は、母方が沖縄県中城(なかぐすく)村出身の日系4世。子供の頃から祖父母から沖縄の文化と歴史を教えられ、沖縄の血を自分のアイデンティティーの一つととらえている。辺野古にも何度も訪れ、ウチナーグチ(沖縄の方言)を話し、琉球舞踊も踊る。

「12月上旬の工事開始の日が近づくにつれて、不安も増す一方で、希望も失せていた。日米政府は、沖縄の人々と、玉城デニー知事の声を無視した。でも、工事反対のデモを毎日している人々のことを考えると何もしないわけには行かず、少しでも彼らのことを知ってもらえればと、ほとんどやけくそで始めた」と、署名運動を始めた理由を話す。

英語のサイトにいかに署名するか、SNSを使って、日本語で説明する人も表れ、世界中に拡散し、沖縄県民や世界に住む沖縄出身の日系人が署名。わずか10日で目標の10万を達成した。タレントのローラさんや、クィーンの伝説ギタリスト、ブライアン・メイさんが、ツイッターを使って署名を訴えた。

ネットで中継流す

これをきっかけに、署名開始から30日の1月7日には、梶原氏が首都ワシントンDCを訪れ、米市民や沖縄県人会のメンバーなど30人が集まって、集会を開いた。梶原さんはこう訴えた。

「辺野古新基地は、日本と沖縄だけでなく、米国とアジア太平洋地域にとってマイナス

基地には、米国民の税金が使われるだけでなく、アジアの緊張を高める」

「沖縄の民主主義を無視することは米国が世界に誇る民主主義を踏みにじることです」

 参加者らは「トランプ大統領、私たちに答えてください!請願署名は19万以上集まりました!沖縄・辺野古の新米軍基地建設にNO!」などという垂れ幕を掲げ、梶原さんは集会の様子をライブでインターネットに流した。

辺野古の問題を米国メディアが報じることはあまりないが、防衛省の辺野古への土砂投入は、AP通信の記事をワシントン・ポストなどが素早くサイトに掲載した。

請願は市民の権利

梶原さんは市民運動家として、「ウィ・ザ・ピープル」については、以前から知っていたという。サイトによると、表現や報道の自由を保証するアメリカ合衆国憲法修正第1条は、「議会は、表現の自由、あるいは報道の自由を制限することや、人々の平和的集会の権利、政府に苦情救済のために請願する権利を制限することはできない」とし、国民が政府に直接請願する権利についても「市民の基本的権利」だとしている。

 梶原さんは、ワシントンの集会の最後に「チバリヨ(がんばれ)」と沖縄県民を激励。「決してあきらめない、というのが沖縄の生き方。平和的に、民主的に、というのも、沖縄のやり方だ。辺野古の新基地建設反対を引き続き、訴えていく」と、記者らに話した。

 梶原さんは、その後も毎日、基地建設反対を訴えるYouTubeビデオをアップし、SNSでシェア。トランプ大統領と閣僚、上院議員などに、署名の進展を伝える書簡とeメールを100通以上送った。ホワイトハウスからは、受信の確認メールが来たという。

 辺野古の是非を問う県民投票の波は、世界に広がっている。

津山恵子(ニューヨーク在住・ジャーナリスト)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年02月13日

【若い目が見た沖縄】 平和集会に参加 中2のリポート 戦争できる国止めなければ=北村めぐみ・長妻萌

 平和や社会問題について学び交流する「高校生平和ゼミナール」主催の全国高校生平和集会が昨年12月22〜24日、沖縄で開かれ、広島から私が引率して中2と小6の姉妹が参加した。
 各地から小中高生58人が参加。南部戦跡を見学、辺野古ゲート前や米軍ヘリが墜落した沖縄国際大で学習した。グループ討議で、沖縄・広島以外の生徒から「米軍基地容認論」や「米軍基地本土引き取り論」が出たのにはショックを受けたが、これが日本社会の縮図に思えた。姉の長妻萌さんのリポートを紹介する。

北村めぐみ(広島支部)

 私がこの集会に参加したのは、広島は被爆地で学校でも平和について学ぶけど、沖縄戦については学んだことがないので、この機会に知ってみたいと思ったからです。

 一日目は、轟の壕とひめゆり平和祈念資料館と白梅之塔を見学した後、沖縄戦体験者の中山キクさんの話を聞きました。轟の壕に入り灯りを全て消すととても暗く、ここで過ごすのは大変だったと思いました。ひめゆり資料館では沖縄戦体験者の証言を読み、戦争は本当に悲惨なものだったと知りました。中山さんの話から、当時の様子がリアルに伝わってきてよく知ることができました。

 二日目は、辺野古ゲート前に行き、前市長の稲嶺進さんと島袋文子さんの話を聞きました。その後2004年に米軍のヘリコプターが墜落した沖縄国際大学で当時の話を聞き、屋上から普天間基地を見て、前泊博盛教授の話を聞いた後、教室で「基地問題について考える」というテーマでグループ討議をしました。

 島袋さんは、沖縄戦で家族を守るために苦労された時のことを思い出して話すのは辛いはずなのに、次世代の私たちの事を考えてくれていることにとても感動しました。島袋さんたちが、基地を造るのをやめさせようと毎日座り込みをしていてとても努力をされていることを知りました。

 沖縄戦について詳しく知ることができ、あらためて戦争の悲惨さを知りました。今の日本は戦争のできる国にしようとしているので私たちの世代が戦争を体験した人たちの気持ちも踏まえて、戦争をしようとする人達を止めていかなければならないと思いました。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年02月12日

【支部リポート】 広島 講演会を主催・共催・協力 白井聡、相澤冬樹、本間龍の各氏話す=難波健治

 広島支部は、昨年秋から年末にかけて、広島市内で3つの講演会[o1] を主催、共催、協力し、一つのアピールを出した。

 毎年9月2日前後に催す恒例の「不戦のつどい」。本年度は、京都精華大学講師の白井聡さんに「平成の終わりと『戦後の国体』の終焉」と題して講演してもらった。若者たちの間でも広く読まれている『国体論 菊と星条旗』の著者が被爆地広島で何を語るのか、と市民の関心も高く、会場は141人の聴衆で埋まった。

 11月19日には、政府から独立したNHKをめざす広島の会(略称・NHKを考える広島の会)設立4周年のつどいを、広島マスコミ九条の会とともに共催。NHKを8月末に退職し大阪日日新聞に移籍した相澤冬樹氏を呼んで「森友事件の本質と移籍の思い」を語ってもらった。その後の相澤氏の活躍はご存知の通りだが、当時はまだ「関西圏の外に出て講演するのはこれが初めて」と言い、抑制のきいた話し方でNHK大阪での報道の実態を明らかにした。狭い会場からあふれるほどの105人が参加した。

 そして12月2日。JCJ広島のメンバーの多くが世話人として参加し、事務局長も務めている市民団体・ヒロシマ総がかり行動が主催する、「国民投票法」を学習する講演会があった。地元の山田延廣弁護士が法の仕組みと問題点を解説、広告代理店・博報堂に18年間勤務したジャーナリストの本間龍さんが「電通の広報戦略を暴く」というテーマで話した。市民約150人が集まった。

 そして12月13日には「市民の願いにこたえる広島市長を誕生させよう」とのアピールを、広島マスコミ九条の会、NHKを考える広島の会との3者連名で出した。11月に広島に里帰りしたカナダ在住の被爆者サーロー節子さんが「核兵器廃絶のために具体的な行動を起こそう」「広島からもっと発信を」と訴えたことに反応した動きでもある。いまこの呼びかけは4月の市長選挙を前に、市民の間にさまざまな動きを呼び起こしつつある。

難波健治

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年02月11日

【JCJ声明】 ウソとごまかしの政権に抗議し、「報道の自由」の保障を求める  

 日本ジャーナリスト会議は、官邸記者クラブ攻撃をはじめとする安倍政権の「報道の自由」「取材の自由」への干渉、攻撃と、あらゆる問題でみられる説明拒否・ウソとごまかしの姿勢に抗議し、国民の「知る権利」を代表して活動するメディアと記者に心からの激励を送ります。

 首相官邸は昨年12月28日、東京新聞の記者の質問について、「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、「問題意識の共有」を求める申し入れをおこないました。
 この行為は、森友・加計学園問題、自衛隊の日報問題から、決裁文書の偽造・変造、労働統計の偽造まで、国政の重要問題でウソとごまかしに終始してきた官邸が、記者を狙い撃ちして報道規制を図ろうとしたもので、およそ民主主義社会では許されないことです。
 主権在民の民主主義社会では、政権担当者は、常に国民の意見を聞き、民意に沿った政治が進められていかなければなりません。そのためには、社会状況がどうなっているか、政権がどう判断しているかを含め、あらゆる情報が開示され、国民の判断に役立つ状態にあることが必要です。
 国民の「知る権利」とはまさにそのことであり、為政者には国民に対する 「知らせる義務」 があり、メディアは、その状況を逐一報道する責任を負っています。

 内閣記者会と首相官邸の間には、政治家・官僚とメディア・記者の間で積み上げられた古くからの約束や慣行がありました。しかし安倍内閣は、第2次政権以降、勝手にこれを破り、自分たちに都合がいい形に作り替えようとしています。
 首相がメディアを選別する新聞インタビューやテレビ出演、特定のテーマで一方的にPRするためのぶら下がり取材を続けることと並んで、菅官房長官の記者会見では特定の社の記者の質問中に、官邸報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と妨害し、質問の内容が「事実誤認」と誹謗・中傷するような申し入れをするなど個人攻撃と思われる行為をしている。
 これは単に当該の社や記者に対するものではなく、「報道の自由」「取材の自由」と国民の「知る権利」に対する攻撃です。

 既に国会では、森友、加計学園問題での首相や政府側答弁のウソとごまかしが大きな問題になっています。同様に、官邸の記者会見では、重要な指摘に対し、「そんなことありません」「いま答えた通りです」などとまともに答えず、国民に対して問題を解明し、説明しようという真摯な姿勢は全く見られない状況が続いています。
 記者の質問が当たっていないのなら、なおのこと、ひとつひとつ時間を掛けて説明し理解を求めるのが、本来のあり方であり、説明もしないで、「誤り」と決めつけ、取材行為を制限し、妨害する行為は、ジャーナリズムと国民の「知る権利」に対する卑劣な攻撃です。
 日本のジャーナリズムは、かつて、「真実」を報道させない報道規制と、言い換えやごまかしから、やがて全くの偽りに至った「大本営発表」によって、国民の判断を誤らせ、泥沼の戦争に率いられていった痛恨の歴史を持っています。

 私たち、日本ジャーナリスト会議は、安倍政権が憲法の諸原則や立憲主義の基本を捨て、かつての戦争への道をたどりかねない状況にあることを恐れ、「報道の自由」「取材の自由」と「知る権利」への攻撃に改めて抗議し、官邸の猛省を促すとともに、広く国民のみなさまが、現状を理解し、私たちとともに声を上げていただくよう訴えます。

 2019年2月8日
                               
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
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2019年02月10日

【今週の風考計】2.10─官邸の報道規制と基地へのドローン規制

★昨年末、首相官邸は東京新聞の記者が、沖縄・辺野古基地の埋め立て区域に「赤土が広がっている」状況について質問したところ、その質問を「事実誤認」と断定し、内閣記者会に記者の質問権を制限するような申し入れを行っていた。
★年が明けて、その内容が明らかになるにつれ、市民団体でも抗議の署名活動が進み、新聞労連も抗議声明を発表、続いてJCJも抗議声明を発表した。

★記者が質問中に、官邸報道室長は数秒おきに「簡潔にお願いします」と繰り返して妨害し、質問内容が事実誤認であるかのような誹謗中傷に近い内容を記した申し入れは、記者への個人攻撃につながる行為であると指摘。報道の自由、取材の自由、国民の「知る権利」に対する攻撃であり、その危険な狙いを糾弾している。
★内閣記者会の毅然とした対応が求められる。だが、動きは鈍い。そこには安倍政権に与する「産経」も所属するので、なかなかまとまらないのか心配でならない。

★10日付の「琉球新報」が<基地にドローン規制 沖縄を狙った報道弾圧だ>と題する社説を掲載している。今国会での成立を目指すドローン規制法改正案について、新聞協会が「自衛隊や在日米軍基地上空のドローン飛行禁止に反対する」旨の意見書を政府に提出したことに賛同しつつ、米軍基地が飛行禁止対象施設に加えられると、最も影響を受けるのは、在日米軍の専用施設の約70%が集中する沖縄の報道機関であることを指摘している。
★立ち入ることのできない米軍基地内で、たびたび起きる米軍機の重大な事故を取材するには、小型無人機ドローンを使っての撮影取材は欠かせない。ドローンの「飛行禁止は沖縄を狙い撃ちにした報道弾圧だ。米軍基地を対象施設に加えてはならない」と。(2019/2/10)
posted by JCJ at 12:19 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月08日

【JCJ賞資金カンパ】 300万円超えた=大場幸夫

1月9日現在、カンパ額は300万円を超えました。この到達は会員・読者の皆さんの奮闘のおかげです。カンパを2回も3回も振り込んでいただいた会員・読者もいます。JCJ賞を受賞した方を訪問したり、お手紙を差し上げたりしたところ、カンパに快く応えていただきました。事務局長の訴えもあり、支部員のつながりを生かして周りの方に訴えて2ケタのカンパを送ってきた支部もあります。JCJ資金強化委員会にとってもJCJ賞活動の重要な意義を実感する日々になりました。

今800万目標の37%まで来ています。いままでの取り組みを振り返りながら、今年8月集会に向けて支援の輪をさらに広げましょう。必要なツールもお送りできます。ご意見をお寄せください。

    大場幸夫
     

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年02月07日

これでいいのか、代替わり〜憲法・象徴天皇制・メディア〜

 神奈川支部は2月9日の午後2時30分から、横浜市中区の横浜市開港記念会館7号室で例会を開く。テーマは「これでいいのか、代替わり〜憲法・象徴天皇制・メディア」
 現天皇が4月末日に退位、5月1日に皇太子が即位する。新元号の発表は4月1日、施行は5月1日とされた。
 代替わりの儀式については異例な皇族の発言があり、改元発表に関して自民党内の意見対立も報じられた。しかし今の憲法の下での天皇制のありかたを考える論調は少なく、メディアの問題意識が問われている。
 例会では昭和から平成への移行期の日本社会を取材した経験がある、朝日新聞社会部の豊秀一論説委員を講師に迎え、憲法や報道の問題も視野に入れながら代替わりを考える。
 参加費は500円、問い合わせは神奈川支部・保坂080−8024−2417。
posted by JCJ at 00:04 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月06日

《マスコミ評・出版》安倍政権への不満が噴き出した=荒屋敷 宏

 通常国会冒頭解散のうわさも出るなか、「平成最後」と日本でしか通用しない話題でお茶をにごす去年今年。安倍政権にたいする「反乱」が静かに始まっている。

「文芸春秋」1月号「トランプの言いなりで兵器を買うな」と主張したのは、元陸将・千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏だ。日本政府は前の「中期防衛力整備計画」(2014〜18年度)で米国の最新鋭ステルス戦闘機F35Aを42機も購入した。うち38機は日本企業が下請けとして参画する。「機体に日本の部品を使うこと条件としたため価格が上昇し、一機百七億円だったものが百八十六億円まで膨れ上がった」(山下氏)という。
 
 アメリカに価格決定権があるFMS(有償軍事援助)制度でトランプ言いなりの価格で「殺人兵器」を購入する。新たな中期防(19〜23年度)でもF35AとF35Bを合計45機購入する。防衛省は最終的に147機態勢にする予定だが、その購入費・維持費の総額は6・2兆円を超えるという(しんぶん赤旗1月10日付)。
 
 同じ「文芸春秋」1月号で消費税反対論者ではないセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏が消費増税に怒りをぶちまけている。現在のような景気の状況で消費増税をおこなえば「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」と述べている。
 
 批判のホコ先は、政治家にも向かう。「そもそも政治は、人間の心理を考えずに行なうことは不可能であるはずです。本来、政治家は国民から直接選挙で選ばれているわけですから、国民の心理を一番よく分かっていなくてはいけない存在です。ところが、いつからか、有権者の心理を理解できない政治家が多くなってしまいました」。鈴木氏は、10%引き上げの時期や軽減税率にも苦言を呈している。
 
 さらに安倍政権の「成長戦略」と位置づけられていた「原発輸出」も総崩れとなっている。「文芸春秋」2月号「丸の内コンフィデンシャル」欄の「英政府揺さぶる日立」に注目した。日立製作所が英国で進める原発建設計画の凍結(1月17日)発表前の話だが、総事業費が3兆円となるなか、安倍政権の顔を立てようとして失敗した日立側の裏事情を伝えている。
 
 安倍政権を応援する側にも不満が噴き出し始めている。 

posted by JCJ at 00:22 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月05日

【全国交流集会東京報告会】 災害大国なのに手薄い「公助」 防衛費の増強で置き去り=古川英一

 「戦闘機を100機も購入するという、へんな時代に。バランスが悪すぎるのでは」―来年度の防衛費について、去年12月のJCJ全国交流集会の東京報告会で出た声だ。
 全国交流集会についてはすでに本紙でも報告(11月25日号)したが、去年10月に2泊3日で熊本地震・九州北部豪雨の被災地を回り、被災者や医療、メディア関係者から話を聞いた。その体験を一過性にせず、参加者が追体験し、共有し合うため2カ月後に東京で報告会が開かれた。

復興とはほど遠い
 交流集会を企画した北九州支部のジャーナリスト兼歯科医師の杉山正隆さんが今回、問題提起したのは安倍政権下での「自助・共助・公助」論に、どのような対抗軸を示していけるか、であった。それを災害という本来ならば国が一番責任をもって支援しなければならない場において検証していこうというのが、交流集会で被災地を回った狙いでもあった。
 報告会では杉山さんが被災地を回った3日間を映像と共に振り返った後、参加者が各自感想や意見を出し合った。それによって安倍政権のもとで進行する「自助・共助・公助」による政治のひずみが改めて浮き彫りになった。というのも、私たちが訪れた被災地は、熊本地震からは2年半、九州北部豪雨からは1年3カ月余りが経っていたのに「復興」とはほど遠く感じられたからだ。杉山さんは「災害の被害が過疎地で大きくなる傾向があり、その場合、地域の力だけでは財政面などから立ち直りは難しい」と指摘した。  
 意見交換では医療関係の参加者からジャーナリズムの側にとって、気づきとなる意見が多く出された。北九州市の看護師の女性は「出身地が台風に見舞われるので、災害には太刀打ちできないという実感で、それを埋めるのが国の支援ではないか」と述べた
 保険医を束ねる全国保険医団体連合会の男性は、九州北部豪雨の時に医療活動にあたった医師が、被災者の投薬代を自己負担したことを聞き、支援が現場の人たちの倫理観に支えられていることに驚いたとして「人の生死が関わる場所では薄氷を踏むような状態であることを感じた。自助・共助・公助というとするりと聞き流してしまうが、災害時の国の支援の薄さを感じた」と憤りをこめて語った。

国に粘り強く発信
 また、阪神淡路大震災以後、全国各地の被災地の支援を続けている兵庫保険医協会の男性は「行政は復興と言いながら被災者に向き合っていないと感じた。それが取り組みの原点で、一人ひとりの暮らしを取り戻すことを政府に向き合わせなければ」と述べた。
 さらに「防衛費の増強の一方で被災地の問題がある。それを権力に対して粘り強く発信していかなければならない。そして記録し続けること、記録しなければ忘却するし、記録することも抵抗ではないか」と呼びかた。
 そういえば、この報告会も、被災地を巡った交流会をまさに記録するものではないか。そして災害の多い日本で、災害対策や被災地の支援に時の政権がどのように向き合っているのかが、政権を測るリトマス試験紙≠ナはないだろうか。そのリトマス試験紙の色を絶えず確かめていくことが、私たちジャーナリズムに課せられているのである。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 13:10 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月04日

《月間マスコミ評・新聞》ゴーン事件 捜査監視の報道弱い=六光寺 弦

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が1月11日、私的な損失の日産への付け替えを巡る特別背任罪などで追起訴された。長期の勾留や弁護士の立ち会いがない取り調べが海外から批判を受けているが、制度面はともかく、検察の捜査を監視すべき新聞は踏み込みが足りない。
 
 一例として、1月12日付の朝日新聞1面の解説記事を見てみる。
 
 「特別背任罪での再逮捕は、虚偽記載罪での勾留延長を退けた裁判所に反発し、生煮えのまま突っ込んだ危うさが否めない」「今回の捜査はただでさえ『日産内部の権力闘争に加担し、司法取引で不意打ちで逮捕した』との疑念が一部にある」と指摘してはいる。
 
 だが結論は「単なる有罪立証にとどまらず、綿密な証拠に基づいて公平公正な捜査をしたという証明が求められている」と、他人事のように課題を挙げているだけだ。
 
 それでも朝日はましかもしれない。他紙は、前会長側が容疑を否認して、東京地検特捜部と激しく争っているとの“客観報道”にとどまった。産経新聞に至っては、捜査に幅広い支持を得るために、検察は進んで事件の意義を語るべきだと進言する始末。検察の応援団を自認しているのか。
 
 昨年11月の前会長逮捕の時、検察は発表で容疑の内容について、隠蔽したとする役員報酬が未払いであることを伏せていた。逮捕するには容疑が弱い、との批判が出ることを自覚していたのではなかったか。代わって、積極的な情報発信で「金に汚いゴーン」との印象を広めたのは日産だ。迅速な解任は前会長の逮捕なしには不可能だったが、容疑にかかわる重要な事実を、検察がなぜ伏せたのかを追求した記事は見当たらない。
 
 特別背任の立件にしても、検察は困難な捜査に挑んだとの評価を目にするが、ならば、森友事件で財務省の組織的な文書改ざんに対しても、同じように困難を乗り越え、立件すべきではなかったか。そのことを問う記事も見かけない。
 
 特捜検察は2010年の大阪地検の証拠改ざん・隠蔽事件で極限まで堕落した。その責任の一端は「最強の捜査機関」「巨悪を眠らせない」などと、無批判に特捜検察をもてはやしてきた新聞にある。同じ愚を繰り返してはならない。
posted by JCJ at 01:48 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする