《19年秋のJCJジャーナリスト講座》
「JCJ大賞・東京新聞税を追う<Lャンペーン――いかに取材したか」
★11月29日(金)午後6時半から9時★
講師;東京新聞社会部・鷲野史彦記者
「税を追う」取材班キャップ
東京新聞社会部は2018年10月末から「税を追う」キャンペーンを始めた。米国からの兵器大量買いが日本の防衛予算をいかに歪めているか、危うい実情を明らかにした。沖縄・辺野古の新基地建設、五輪事業費問題にも取材は広がっていった。19年度のJCJ大賞を受賞。鷲野記者は取材班キャップを務めている。
【鷲野史彦記者の略歴】
1971年生まれ。93年に中日新聞に入社。中日スポーツに4年(Jリーグ名古屋グランパス、プロ野球中日ドラゴンズなど取材)、松任支局(石川県・現白山支局)、北陸報道部、東京社会部、さいたま支局を経て、2011年から社会部で警視庁キャップ、原発班、遊軍で東日本大震災の被災地取材などを担当。16年に浜支局デスク、17年8月から東京社会部、18年8月から調査報道班(税を追う取材班)のキャップ。
会場:日比谷図書文化館4階小ホール
(東京・日比谷公園内、最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)
参加費:1000円(定員40人)
□受講ご希望の方へ□
要予約:参加ご希望の方は氏名、受講希望日、大学名(または職業など)、電話番号、メールアドレスを明記して、sukabura7@gmail.com にメールで申し込んでください。
お問い合わせ 日本ジャーナリスト会議・事務所 電話03・3291・6475=月水金の午後対応
2019年11月27日
【内政】 表現の自由侵害の恐怖 安倍政権に同調 自治体へ広がる 民主主義守るため抗う行動を=橋詰雅博
安倍晋三政権がこのところ文化・芸術分野に手を突っ込み民主主義の根幹である表現の自由を脅かしている。加えて自治体も同調圧力を強める。
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金中止はその典型だ。慰安婦を題材にした平和の少女像などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」の騒動を口実にした。萩生田光一文部科学省大臣は「県が、抗議が殺到して展示継続が難しくなる可能性を把握していながら文化庁(文科省の外局)に報告しなかった」と中止の理由を述べた。
後出し処分
しかし、文化庁に提出する補助金申請書類には安全性の心配や展示内容を具体的に書く欄はない。気にくわない企画展(一時中止となったが、再開)を開いたので、トリエンナーレそのものに対して補助金を後出し処分≠ナ中止したのが真相だ。
映画「宮本から君へ」は7月に助成金内定を取り消された。取り消した文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」は、出演者が不祥事を起こし(麻薬取締法違反で有罪のピエール瀧さんが出演)、公益性の観点から助成金交付は適当ではないとした。だが、要綱には公益性の観点から助成金交付を取り消すという文言はなかった。その後、要綱に公益性を入れ変更した。制作会社の河村光庸社長は「映画の内容は薬物とは全く関係なく、公益性という言葉も拡大解釈が可能。表現の自由を侵す行為で、絶対に認められない」と反論した。また、11月8日に文科省前で行われた表現の自由を取り戻す集会に河村社長はこうメッセージを寄せている。
「公益性の概念で助成金を取り消せば、萎縮につながる。日本社会に同調圧力と忖度が広がっている」
表現の自由侵害は自治体でも起きている。川崎市が共催した「しんゆり映画祭」で慰安婦の問題をテーマにしたドキュメンタリー「主戦場」の上映が中止になった。川崎市から登場者が提訴している映画を上映するのはどうなのかと言われた映画祭代表が上映を止めてしまったのだ。幸い、是枝裕和監督や市民らの強い抗議の結果、映画祭最終日に「主戦場」は上映された。ミキ・デザキ監督は「表現の自由の大勝利だ。圧力に負けずにこの映画を守ろうとサポートしてくれた人に感謝します」と語った。
展示を不可
三重県伊勢崎市は、慰安婦を象徴する少女像の写真を片隅にコラージュした作品を市美術展覧会での展示不可にした。市は市民の安全性が担保できないと説明したが、制作者・花井利彦さんは「検閲は憲法違反。訴訟も視野に入れる」と闘う姿勢を見せている。
オーストリアのウィーンにも飛び火≠オた。芸術展「ジャパン・アンリミテッド」で展示されていた安倍政権や福島原発事故を批判的に扱った作品などが問題視されたとして外務省は、日本との国交150年記念事業にふさわしくないと公認を撤回した。自民党国会議員が口出しする動きもあり、外務省が忖度した。芸術展の学芸員は「欧州では問題にならない作品。日本で検閲≠ェ強まっていると感じた」という。
さいたま市の公民館だよりへの「九条俳句」不掲載訴訟の支援者で、「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」世話人代表の武内暁さんはこう言う。
「こうした一連の出来事は市民感覚では検閲です。『9条俳句』裁判で勝訴(2018年12月)した後、安保法制反対など安倍政権を批判するチラシを検閲なし≠ナ公民館や図書館に置けるようになった。表現の自由が侵害されるようなことが起きたら、抗議の声を上げる。そうしないと萎縮や忖度が広がり、民主主義の基盤は揺らぎます」
あきらめて黙っていてはダメだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金中止はその典型だ。慰安婦を題材にした平和の少女像などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」の騒動を口実にした。萩生田光一文部科学省大臣は「県が、抗議が殺到して展示継続が難しくなる可能性を把握していながら文化庁(文科省の外局)に報告しなかった」と中止の理由を述べた。
後出し処分
しかし、文化庁に提出する補助金申請書類には安全性の心配や展示内容を具体的に書く欄はない。気にくわない企画展(一時中止となったが、再開)を開いたので、トリエンナーレそのものに対して補助金を後出し処分≠ナ中止したのが真相だ。
映画「宮本から君へ」は7月に助成金内定を取り消された。取り消した文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」は、出演者が不祥事を起こし(麻薬取締法違反で有罪のピエール瀧さんが出演)、公益性の観点から助成金交付は適当ではないとした。だが、要綱には公益性の観点から助成金交付を取り消すという文言はなかった。その後、要綱に公益性を入れ変更した。制作会社の河村光庸社長は「映画の内容は薬物とは全く関係なく、公益性という言葉も拡大解釈が可能。表現の自由を侵す行為で、絶対に認められない」と反論した。また、11月8日に文科省前で行われた表現の自由を取り戻す集会に河村社長はこうメッセージを寄せている。
「公益性の概念で助成金を取り消せば、萎縮につながる。日本社会に同調圧力と忖度が広がっている」
表現の自由侵害は自治体でも起きている。川崎市が共催した「しんゆり映画祭」で慰安婦の問題をテーマにしたドキュメンタリー「主戦場」の上映が中止になった。川崎市から登場者が提訴している映画を上映するのはどうなのかと言われた映画祭代表が上映を止めてしまったのだ。幸い、是枝裕和監督や市民らの強い抗議の結果、映画祭最終日に「主戦場」は上映された。ミキ・デザキ監督は「表現の自由の大勝利だ。圧力に負けずにこの映画を守ろうとサポートしてくれた人に感謝します」と語った。
展示を不可
三重県伊勢崎市は、慰安婦を象徴する少女像の写真を片隅にコラージュした作品を市美術展覧会での展示不可にした。市は市民の安全性が担保できないと説明したが、制作者・花井利彦さんは「検閲は憲法違反。訴訟も視野に入れる」と闘う姿勢を見せている。
オーストリアのウィーンにも飛び火≠オた。芸術展「ジャパン・アンリミテッド」で展示されていた安倍政権や福島原発事故を批判的に扱った作品などが問題視されたとして外務省は、日本との国交150年記念事業にふさわしくないと公認を撤回した。自民党国会議員が口出しする動きもあり、外務省が忖度した。芸術展の学芸員は「欧州では問題にならない作品。日本で検閲≠ェ強まっていると感じた」という。
さいたま市の公民館だよりへの「九条俳句」不掲載訴訟の支援者で、「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」世話人代表の武内暁さんはこう言う。
「こうした一連の出来事は市民感覚では検閲です。『9条俳句』裁判で勝訴(2018年12月)した後、安保法制反対など安倍政権を批判するチラシを検閲なし≠ナ公民館や図書館に置けるようになった。表現の自由が侵害されるようなことが起きたら、抗議の声を上げる。そうしないと萎縮や忖度が広がり、民主主義の基盤は揺らぎます」
あきらめて黙っていてはダメだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
2019年11月26日
【編集長EYE】 フリー置き去り ハラスメント指針案=橋詰雅博
厚生労働省によると、2018年度に寄せられた個別労働相談のうちパワーハラスメントなどの「いじめ・嫌がらせ」は8万件超に上り過去最多。相談内容別でも25・6%を占めて7年連続トップだ。
増え続けるハラスメントに関し、正社員より立場が弱いフリーランスの実態を日本俳優連合とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会、フリーランス協会の3団体が調査し、9月末に公表している。1218人がアンケートに答えた中で具体的なケースはこんな内容だ。
・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されレイプされた(女性40代、映像制作者)
・元大学教授の財団理事長からヒヤリングの場所を日帰りが難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる(女性40代、研究職)
・社長から打ち合わせの後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました(女性20代、脚本家)
・ファックスで送れば自宅でできる仕事なのに、夜中にわざわざ自宅から2時間もかかるオフィスに来るように強要された(女性50代、編集者)
・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた(女性20代、女優)
問題はこのようなフリーランスが5月に成立したハラスメント規制法の対象外になっていることだ。厚労省が10月末に労働政策審議会に提示した同法指針素案では、企業は注意を払って欲しいにとどまっている。これでは横行するフリーランスを取り巻くハラスメント状況は、一向に改善されないだろう。
6月に採択されたハラスメント禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い指針案は、フリーランスを置き去りにしようとしている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
増え続けるハラスメントに関し、正社員より立場が弱いフリーランスの実態を日本俳優連合とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会、フリーランス協会の3団体が調査し、9月末に公表している。1218人がアンケートに答えた中で具体的なケースはこんな内容だ。
・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されレイプされた(女性40代、映像制作者)
・元大学教授の財団理事長からヒヤリングの場所を日帰りが難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる(女性40代、研究職)
・社長から打ち合わせの後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました(女性20代、脚本家)
・ファックスで送れば自宅でできる仕事なのに、夜中にわざわざ自宅から2時間もかかるオフィスに来るように強要された(女性50代、編集者)
・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた(女性20代、女優)
問題はこのようなフリーランスが5月に成立したハラスメント規制法の対象外になっていることだ。厚労省が10月末に労働政策審議会に提示した同法指針素案では、企業は注意を払って欲しいにとどまっている。これでは横行するフリーランスを取り巻くハラスメント状況は、一向に改善されないだろう。
6月に採択されたハラスメント禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い指針案は、フリーランスを置き去りにしようとしている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
2019年11月25日
【月刊マスコミ評・新聞】 安倍一強ぐらつく 私物化へ批判=山田明
この秋も列島各地が相次ぐ災害に見舞われた。災害多発時代にどう備えるか。政治の最重要課題であり、「国土強靭化」政策と予算の検証が求められる。
政治が大きく揺れ動いている。「1強」とも言われた安倍政権の求心力が急激に低下してきた。1週間で重要閣僚が2人も辞める異常事態。日経11月1日社説も「相次ぐ閣僚辞任が映す長期政権の緩み」と批判する。安倍首相は任命責任を繰り返すが、国会審議の場で自席から低劣なヤジを飛ばすなど、反省が全く見られない。
問題は閣僚辞任にとどまらない。萩生田文科相が英語民間試験について「身の丈に合わせて」と発言。この問題発言に高校生をはじめ抗議の声が広がり、試験見送りとなった。民間試験導入は安倍首相主導の教育再生会議提言にさかのぼる。
今回の入試騒動は、発端も見送りも政治判断であった。東京2日「こちら特報部」は、背景に競争促す「新自由主義」があると。大学入試、教育が安倍政権により振り回されている。受験生を悩ます共通テスト問題は、国語や数学の記述式問題に広がる。採点はベネッセの子会社。入試の肝である採点をめぐり、大学関係者などから懸念の声が続出。毎日13日社説も記述式試験「延期するしかないのでは」と指摘する。
さらに安倍政権を直撃したのが、首相主催の桜を見る会である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員の鋭い追及により、「公的行事の私物化」疑惑が明らかにされた。野党が結束して追及チームを発足させると、マスコミも大きく報道するようになり、事態は急展開する。
毎日13日社説は公金私物化の疑問が募ると批判。朝日も首相の私物化許されぬと問題を投げかける。「首相に近しい者が特別な便宜を受けたのではないか。森友・加計問題でも指摘された、政治の公平・公正に関わる問題であると、首相は深刻に受け止めるべきだ。」
安倍首相への批判が高まる中で、政府は14日、桜を見る会を来年は中止と即断した。概算要求後の異例の見直しだ。政権を揺るがす事態に、これで幕引きを図るつもりのようだが、問題は来年の花見ではない。ことは安倍首相周辺の公職選挙法にも関わる疑惑である。国会での徹底した追及と、安倍首相の説明責任を求めたい。
山田明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
政治が大きく揺れ動いている。「1強」とも言われた安倍政権の求心力が急激に低下してきた。1週間で重要閣僚が2人も辞める異常事態。日経11月1日社説も「相次ぐ閣僚辞任が映す長期政権の緩み」と批判する。安倍首相は任命責任を繰り返すが、国会審議の場で自席から低劣なヤジを飛ばすなど、反省が全く見られない。
問題は閣僚辞任にとどまらない。萩生田文科相が英語民間試験について「身の丈に合わせて」と発言。この問題発言に高校生をはじめ抗議の声が広がり、試験見送りとなった。民間試験導入は安倍首相主導の教育再生会議提言にさかのぼる。
今回の入試騒動は、発端も見送りも政治判断であった。東京2日「こちら特報部」は、背景に競争促す「新自由主義」があると。大学入試、教育が安倍政権により振り回されている。受験生を悩ます共通テスト問題は、国語や数学の記述式問題に広がる。採点はベネッセの子会社。入試の肝である採点をめぐり、大学関係者などから懸念の声が続出。毎日13日社説も記述式試験「延期するしかないのでは」と指摘する。
さらに安倍政権を直撃したのが、首相主催の桜を見る会である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員の鋭い追及により、「公的行事の私物化」疑惑が明らかにされた。野党が結束して追及チームを発足させると、マスコミも大きく報道するようになり、事態は急展開する。
毎日13日社説は公金私物化の疑問が募ると批判。朝日も首相の私物化許されぬと問題を投げかける。「首相に近しい者が特別な便宜を受けたのではないか。森友・加計問題でも指摘された、政治の公平・公正に関わる問題であると、首相は深刻に受け止めるべきだ。」
安倍首相への批判が高まる中で、政府は14日、桜を見る会を来年は中止と即断した。概算要求後の異例の見直しだ。政権を揺るがす事態に、これで幕引きを図るつもりのようだが、問題は来年の花見ではない。ことは安倍首相周辺の公職選挙法にも関わる疑惑である。国会での徹底した追及と、安倍首相の説明責任を求めたい。
山田明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
2019年11月24日
【今週の風考計】11.24─またも沖縄に配備の米軍弾道ミサイル!
●先週、沖縄県宮古島市の海岸で、「ウランペレット(核燃料棒)」と記されたプラスチック製の筒状容器が発見された。すぐ自衛隊が出動し放射線量を測定したが検知されなかった。ホッと一安心。
その後、メルカリに「教育用燃料見本キット」が出品されていて、それと類似しているのが分かった。イタズラでやったとしたらトンデモナイことだ。
●ただでさえ沖縄には、返還時の「核抜き」合意が反故にされ、米軍の「核弾頭」貯蔵への疑念も、いまだに払拭されていない。
あまつさえ米国と中国との緊張は続き、この2、3年のうちに日本が実効支配している尖閣諸島付近で、米中間での艦船攻撃など、紛争が起きると想定されている。そのため米国は沖縄の米軍基地を強化する対策を急いでいると、琉球新報(10/3付)が報じている。その概要について補足を加え紹介しよう。
●この8月、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。その結果、中距離弾道ミサイルの開発・製造禁止のタガがなくなり、米中ロによる開発競争が始まった。いま新たな緊張状態が生まれている。とくに米国は2020年末から21年にかけて、新鋭ミサイルを沖縄や北海道など日本本土に大量配備する計画を立てている。
●米国が開発中の弾道および巡航ミサイルには、車載移動式ミサイルと潜水艦搭載用新型トマホークがある。いずれも「核弾頭」装備が可能だ。威力は10〜50キロトン、最低でも広島に投下された原爆12キロトン級の威力がある。発射すれば数分で目標に到達し、迎撃は困難を極める。純然たる先制攻撃用の兵器だ。
●こうした能力がある地上発射型の中距離弾道ミサイルを日本に配備するとなったら、すでにPAC3が配備されている嘉手納基地はうってつけ、すぐにも配備したいのが本音だ。さらには新型トマホーク搭載の原子力潜水艦も、沖縄うるま市・ホワイトビーチに寄港させたいのは明らかだ。
●先月18日、玉城デニー沖縄県知事は、米軍高官に対して、沖縄への新型ミサイル配備について問い質したところ、「開発にまだ時間がかかり、どこに配備するか発表できる段階ではない」と、述べたという。
だが、沖縄へのオスプレイ配備の際には、日米両政府は直前まで秘匿していた経緯があり、どこまで信用できるか油断はできない。
●すでに日本の陸上自衛隊は、奄美大島に地対艦ミサイルを配備し、さらに宮古島や石垣島でも導入を進め、米軍の作戦に主体的に関与している。ますます米国の核弾頭搭載ミサイルによって引き起こされる「核戦争」に巻き込まれる危険が増す。
●沖縄だけではない。近いうちにイージス・アショアの配備が予定される秋田市・新屋演習場、山口県・むつみ演習場にも中距離弾道ミサイルが追加配備されるだろう。新型トマホーク搭載の原潜も神奈川県・横須賀、長崎県・佐世保などへ、頻繁に寄港するだろう。
まさに「日米安保条約」が文字通り「核戦争同盟」へと全面的に転換しかねない事態だ。(2019/11/24)
その後、メルカリに「教育用燃料見本キット」が出品されていて、それと類似しているのが分かった。イタズラでやったとしたらトンデモナイことだ。
●ただでさえ沖縄には、返還時の「核抜き」合意が反故にされ、米軍の「核弾頭」貯蔵への疑念も、いまだに払拭されていない。
あまつさえ米国と中国との緊張は続き、この2、3年のうちに日本が実効支配している尖閣諸島付近で、米中間での艦船攻撃など、紛争が起きると想定されている。そのため米国は沖縄の米軍基地を強化する対策を急いでいると、琉球新報(10/3付)が報じている。その概要について補足を加え紹介しよう。
●この8月、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。その結果、中距離弾道ミサイルの開発・製造禁止のタガがなくなり、米中ロによる開発競争が始まった。いま新たな緊張状態が生まれている。とくに米国は2020年末から21年にかけて、新鋭ミサイルを沖縄や北海道など日本本土に大量配備する計画を立てている。
●米国が開発中の弾道および巡航ミサイルには、車載移動式ミサイルと潜水艦搭載用新型トマホークがある。いずれも「核弾頭」装備が可能だ。威力は10〜50キロトン、最低でも広島に投下された原爆12キロトン級の威力がある。発射すれば数分で目標に到達し、迎撃は困難を極める。純然たる先制攻撃用の兵器だ。
●こうした能力がある地上発射型の中距離弾道ミサイルを日本に配備するとなったら、すでにPAC3が配備されている嘉手納基地はうってつけ、すぐにも配備したいのが本音だ。さらには新型トマホーク搭載の原子力潜水艦も、沖縄うるま市・ホワイトビーチに寄港させたいのは明らかだ。
●先月18日、玉城デニー沖縄県知事は、米軍高官に対して、沖縄への新型ミサイル配備について問い質したところ、「開発にまだ時間がかかり、どこに配備するか発表できる段階ではない」と、述べたという。
だが、沖縄へのオスプレイ配備の際には、日米両政府は直前まで秘匿していた経緯があり、どこまで信用できるか油断はできない。
●すでに日本の陸上自衛隊は、奄美大島に地対艦ミサイルを配備し、さらに宮古島や石垣島でも導入を進め、米軍の作戦に主体的に関与している。ますます米国の核弾頭搭載ミサイルによって引き起こされる「核戦争」に巻き込まれる危険が増す。
●沖縄だけではない。近いうちにイージス・アショアの配備が予定される秋田市・新屋演習場、山口県・むつみ演習場にも中距離弾道ミサイルが追加配備されるだろう。新型トマホーク搭載の原潜も神奈川県・横須賀、長崎県・佐世保などへ、頻繁に寄港するだろう。
まさに「日米安保条約」が文字通り「核戦争同盟」へと全面的に転換しかねない事態だ。(2019/11/24)
2019年11月23日
【メディア気象台】 11月中旬=編集部
信頼度、新聞が初のトップ
公益財団法人「新聞通信調査会」は1日、メディアに関する全国世論調査の結果を発表した。2008年度の調査開始から、初めて信頼度で新聞が1位になった。昨年まで11年連続NHKがトップだったが、新聞が逆転。調査会は「NHKを批判する『NHKから国民を守る党』の影響もあるのかもしれない」としている。信頼度を100点満点で尋ねたところ、新聞は68.9点で前年よりも0.7点低下したが、メディアの中で最も高かった。
次いで前年から2.3点低下したNHK(68.5点)、順に民放テレビ(62.9点)、ラジオ(56.2点)、インターネット(48.6点)だった。この1年で新聞への信頼感が高くなった人に理由を尋ねると、「情報が正確だから」(37%)、「公正・中立な立場で報道しているから」(24%)が多かった。一方で信頼感が低くなった人の理由は「特定の勢力に偏った報道をしているから」が54%で最多だった。(「朝日」11月2日付)
朝ドラ脚本家、異例の交代
NHKは5日、来春放送開始の連続テレビ小説「エール」について、脚本家を告知予定していた林宏司さんから、清水友佳子さん、島田うれ葉さんと、演出の番組スタッフに交代すると発表した。脚本家の交代は異例。NHK広報局は「制作上の都合」としており、具体的な理由については「制作過程の詳細については答えを控える」としている。(「朝日」11月6日付ほか)
経営委員長辞任求める署名提出
かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK番組を巡り、日本郵政グループの抗議に同調したNHK経営委員会が上田良一会長を厳重注意した問題で、各地の市民団体が5日、石原進経営委員長の辞任を求める約5500人分の署名簿をNHKに共同提出した。署名は「NHKとメディアを考える会(兵庫)」などが呼び掛け、計18団体が参加した。昨年10月の経営委の厳重注意は「放送法が禁じる個別の番組への干渉であり、報道の自由を侵すことで国民の知る権利を侵害する」として、委員長の辞任を求めた。(「毎日」11月6日付ほか)
総務相、NHK同時配信を留保
高市早苗総務相は8日の閣議後の記者会見で、NHKから認可申請があったテレビ番組のインターネット同時配信に関連して、NHKに受信料の在り方や業務の縮小、効率化を検討するよう要請したと明らかにした。NHKは認可を経て2019年度中の同時配信を予定していたが、総務省は業務拡大が事業支出の増加につながるとして、現状では認可の適否を示さなかった。NHKは計画の修正が不可避となりそうだ。(「東京」11月9日付ほか)
「動画見放題」混雑時制限
スマートフォンで特定の動画サイトなどを無制限で視聴できる「ゼロレーティングサービス」について、総務省は通信制限も含めたルールを作る。大勢がスマホでネットに接続して回線が混雑する際に通信量の多い利用者から順に制限する。このサービスには携帯電話各社が相次ぎ参入しているが、アプリやコンテンツを提供する中小事業者の排除につながったり、回線が混雑したりする懸念も出ている。近く指針案を公表し、年内にも実施に移す。(「毎日」11月10日付)
編集部
公益財団法人「新聞通信調査会」は1日、メディアに関する全国世論調査の結果を発表した。2008年度の調査開始から、初めて信頼度で新聞が1位になった。昨年まで11年連続NHKがトップだったが、新聞が逆転。調査会は「NHKを批判する『NHKから国民を守る党』の影響もあるのかもしれない」としている。信頼度を100点満点で尋ねたところ、新聞は68.9点で前年よりも0.7点低下したが、メディアの中で最も高かった。
次いで前年から2.3点低下したNHK(68.5点)、順に民放テレビ(62.9点)、ラジオ(56.2点)、インターネット(48.6点)だった。この1年で新聞への信頼感が高くなった人に理由を尋ねると、「情報が正確だから」(37%)、「公正・中立な立場で報道しているから」(24%)が多かった。一方で信頼感が低くなった人の理由は「特定の勢力に偏った報道をしているから」が54%で最多だった。(「朝日」11月2日付)
朝ドラ脚本家、異例の交代
NHKは5日、来春放送開始の連続テレビ小説「エール」について、脚本家を告知予定していた林宏司さんから、清水友佳子さん、島田うれ葉さんと、演出の番組スタッフに交代すると発表した。脚本家の交代は異例。NHK広報局は「制作上の都合」としており、具体的な理由については「制作過程の詳細については答えを控える」としている。(「朝日」11月6日付ほか)
経営委員長辞任求める署名提出
かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK番組を巡り、日本郵政グループの抗議に同調したNHK経営委員会が上田良一会長を厳重注意した問題で、各地の市民団体が5日、石原進経営委員長の辞任を求める約5500人分の署名簿をNHKに共同提出した。署名は「NHKとメディアを考える会(兵庫)」などが呼び掛け、計18団体が参加した。昨年10月の経営委の厳重注意は「放送法が禁じる個別の番組への干渉であり、報道の自由を侵すことで国民の知る権利を侵害する」として、委員長の辞任を求めた。(「毎日」11月6日付ほか)
総務相、NHK同時配信を留保
高市早苗総務相は8日の閣議後の記者会見で、NHKから認可申請があったテレビ番組のインターネット同時配信に関連して、NHKに受信料の在り方や業務の縮小、効率化を検討するよう要請したと明らかにした。NHKは認可を経て2019年度中の同時配信を予定していたが、総務省は業務拡大が事業支出の増加につながるとして、現状では認可の適否を示さなかった。NHKは計画の修正が不可避となりそうだ。(「東京」11月9日付ほか)
「動画見放題」混雑時制限
スマートフォンで特定の動画サイトなどを無制限で視聴できる「ゼロレーティングサービス」について、総務省は通信制限も含めたルールを作る。大勢がスマホでネットに接続して回線が混雑する際に通信量の多い利用者から順に制限する。このサービスには携帯電話各社が相次ぎ参入しているが、アプリやコンテンツを提供する中小事業者の排除につながったり、回線が混雑したりする懸念も出ている。近く指針案を公表し、年内にも実施に移す。(「毎日」11月10日付)
編集部
2019年11月17日
【今週の風考計】11.17─160年前の「日米通商条約」の轍を踏む!
◆低山ハイクを楽しむ仲間と、伊豆半島・下田にある寝姿山を歩いた。黒船見張所跡や復元された大砲を確かめ、ついた山頂から大島や利島を望む。眼下の下田港に黒船サスケハナ号が入ってくる。
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。
◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!
◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。
◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。
◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向け、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。
◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!
◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。
◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。
◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向け、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
2019年11月15日
【おすすめ本】斎藤貴男『驕る権力、煽るメディア』─市民の主権者意識がジャーナリズムを育てる基盤=河野慎二
著者は、2015年4月から4年間のメディアと安倍政権の動きを、報道内容を中心に辿って見すえ、どうすればよいのかを、読者と共に考えようと本書をまとめた。
この時期、驕り高ぶった安倍政権は安全保障関連法(戦争法)の成立をはじめ、森友・加計問題での文書改ざんや隠蔽など、悪政を恣(ほしいまま)にした。
著者の疑問は、09年に自民党を下野させた有権者が、なぜ「呆れるほど従順」になったのかという点だ。疑問を解くカギはメディアの劣化にある。新聞に対する消費税軽減税率適用がメディア劣化の一因と指摘。新聞協会は政権への陳情(オネダリ)を重ね、軽減税率の適用を手に入れた。
「借りを返せ」と恫喝された新聞界の対応が無残。「消費税の報道は絶望の極み。オネダリの見返りとしてのプロパガンダを報道とは呼ばない」と、大手紙の報道を痛烈に批判する。
劣化は新聞だけではない。雑誌ジャーナリズムも、反権力・反拝金の姿勢が攻撃される中で劣化し、このままでは「確実に滅びる。新聞も、単行本も」と警鐘を鳴らす。
その上で「知性の灯を絶やすな」として「オール出版界による『ノンフィクション再生プロジェクト』の立ち上げ」を提唱する。
著者は、ジャーナリズムは滅んではならないと強調する。ジャーナリズムが機能しなければ、民主主義は成立しないからだ。「ペンは剣よりも強し」は市民の主権者意識があってこそ成り立つ。
最終ページに森友文書改ざんをスクープした朝日の写真を掲載している。ジャーナリズムを滅ぼしてはならないという著者の信念と気概が伝わってくる。(新日本出版社1900円)
この時期、驕り高ぶった安倍政権は安全保障関連法(戦争法)の成立をはじめ、森友・加計問題での文書改ざんや隠蔽など、悪政を恣(ほしいまま)にした。
著者の疑問は、09年に自民党を下野させた有権者が、なぜ「呆れるほど従順」になったのかという点だ。疑問を解くカギはメディアの劣化にある。新聞に対する消費税軽減税率適用がメディア劣化の一因と指摘。新聞協会は政権への陳情(オネダリ)を重ね、軽減税率の適用を手に入れた。
「借りを返せ」と恫喝された新聞界の対応が無残。「消費税の報道は絶望の極み。オネダリの見返りとしてのプロパガンダを報道とは呼ばない」と、大手紙の報道を痛烈に批判する。
劣化は新聞だけではない。雑誌ジャーナリズムも、反権力・反拝金の姿勢が攻撃される中で劣化し、このままでは「確実に滅びる。新聞も、単行本も」と警鐘を鳴らす。
その上で「知性の灯を絶やすな」として「オール出版界による『ノンフィクション再生プロジェクト』の立ち上げ」を提唱する。
著者は、ジャーナリズムは滅んではならないと強調する。ジャーナリズムが機能しなければ、民主主義は成立しないからだ。「ペンは剣よりも強し」は市民の主権者意識があってこそ成り立つ。
最終ページに森友文書改ざんをスクープした朝日の写真を掲載している。ジャーナリズムを滅ぼしてはならないという著者の信念と気概が伝わってくる。(新日本出版社1900円)
2019年11月10日
【今週の風考計】11.10─ますます深まる「桜を見る会」への疑惑
■大臣の連続辞任に続いて、河井案里・参議院議員が広島県議へ配った現金疑惑など、政治スキャンダルが相次ぐなか、安倍首相が主催する「桜を見る会」への疑惑が浮上した。安倍首相自らが先頭にたち、公的行事・税金を私物化している疑惑である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員が追究して明らかとなった。
■「桜を見る会」の参加者数・支出額は、安倍首相になってから年々増え続け、主催して8回目となる今年4月13日の参加者数は18,200人、支出額は5,518万円、予算額の3倍。参加者一人当たり、飲食・お土産・警備などの費用を含む3,000円の税金が使われている。
■参加資格は「功労・功績のある方を各府省が推薦する」とある。議員の後援会員や支持者は、招待範囲に含まれていない。税金が使われる公的行事である以上、当然だ。だが、自民党は党内で役職ごとに後援会や支援者の招待枠を割り振り、各議員は名簿を提出し、内閣府から各人へ招待状が届いている。
■稲田朋美、世耕弘成、松本純、萩生田光一議員らの後援会ニュースや議会報告には、<地元後援会や女性支援グループの皆さん、選挙のうぐいす嬢の皆様、後援会の中の常任幹事などと、思いで深い「桜を見る会」となった>の記載があるという。
■とりわけ安倍首相の地元・山口県の友田有県議のブログでは、<“後援会女性部の7人と同行”“ホテルから貸し切りバスで会場に移動”>と記され、安倍事務所が取りまとめ役になって前日「下関からは毎年数百人が上京する」との証言まである。こうした事実から、「桜を見る会が『安倍首相後援会・桜を見る会前夜祭』とセットになっている」と、田村議員は追及した。
■さらに重大なのは、「新宿御苑で一般招待客は並んで手荷物検査がある。しかし“下関組”はバスの駐車場がある“裏口”から入るのが恒例だ」「(新宿御苑に)到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席をまわって、入場のための受付票を回収する。その秘書が受け付けを済ませ、参加者用のリボンを配る。まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった」という。安倍後援会の約850人がスルーで入園していたことになる。
■当日の「首相動静」欄には<午前7時48分、東京・内藤町の新宿御苑着。午前7時49分から同8時31分まで、昭恵夫人とともに前田晋太郎山口県下関市長、地元の後援会関係者らと写真撮影>─まぎれもない証拠がある。
「桜を見る会」の開門・受付開始は午前8時30分なのに、30分も前に安倍首相が地元後援会の人と、新宿御苑内で記念撮影をしている。田村議員の追究に「セキュリティー」を持ち出して、答弁を拒否し続けてきた安倍首相、自らが「セキュリティー」を犯している事態に、噴飯ものだとの声が挙がる。
■ちなみに850人が、<バスの駐車場がある新宿御苑の“裏口”から入る>としたら、大型観光バスで17台にもなる。新宿御苑の“裏口”にあたる大木戸駐車場には、大型車は全長5m、重量2.5トンなどの駐車条件があり、かつ予約はできない。これらの条件を、どうやってクリアーしたのだろうか。(2019/11/10)
■「桜を見る会」の参加者数・支出額は、安倍首相になってから年々増え続け、主催して8回目となる今年4月13日の参加者数は18,200人、支出額は5,518万円、予算額の3倍。参加者一人当たり、飲食・お土産・警備などの費用を含む3,000円の税金が使われている。
■参加資格は「功労・功績のある方を各府省が推薦する」とある。議員の後援会員や支持者は、招待範囲に含まれていない。税金が使われる公的行事である以上、当然だ。だが、自民党は党内で役職ごとに後援会や支援者の招待枠を割り振り、各議員は名簿を提出し、内閣府から各人へ招待状が届いている。
■稲田朋美、世耕弘成、松本純、萩生田光一議員らの後援会ニュースや議会報告には、<地元後援会や女性支援グループの皆さん、選挙のうぐいす嬢の皆様、後援会の中の常任幹事などと、思いで深い「桜を見る会」となった>の記載があるという。
■とりわけ安倍首相の地元・山口県の友田有県議のブログでは、<“後援会女性部の7人と同行”“ホテルから貸し切りバスで会場に移動”>と記され、安倍事務所が取りまとめ役になって前日「下関からは毎年数百人が上京する」との証言まである。こうした事実から、「桜を見る会が『安倍首相後援会・桜を見る会前夜祭』とセットになっている」と、田村議員は追及した。
■さらに重大なのは、「新宿御苑で一般招待客は並んで手荷物検査がある。しかし“下関組”はバスの駐車場がある“裏口”から入るのが恒例だ」「(新宿御苑に)到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席をまわって、入場のための受付票を回収する。その秘書が受け付けを済ませ、参加者用のリボンを配る。まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった」という。安倍後援会の約850人がスルーで入園していたことになる。
■当日の「首相動静」欄には<午前7時48分、東京・内藤町の新宿御苑着。午前7時49分から同8時31分まで、昭恵夫人とともに前田晋太郎山口県下関市長、地元の後援会関係者らと写真撮影>─まぎれもない証拠がある。
「桜を見る会」の開門・受付開始は午前8時30分なのに、30分も前に安倍首相が地元後援会の人と、新宿御苑内で記念撮影をしている。田村議員の追究に「セキュリティー」を持ち出して、答弁を拒否し続けてきた安倍首相、自らが「セキュリティー」を犯している事態に、噴飯ものだとの声が挙がる。
■ちなみに850人が、<バスの駐車場がある新宿御苑の“裏口”から入る>としたら、大型観光バスで17台にもなる。新宿御苑の“裏口”にあたる大木戸駐車場には、大型車は全長5m、重量2.5トンなどの駐車条件があり、かつ予約はできない。これらの条件を、どうやってクリアーしたのだろうか。(2019/11/10)
2019年11月08日
吉田博二さんを悼む 音響技術の名手 元民法労連役員=茂木章子
吉田博二さん死亡の一報を受け、私は驚愕と疑問そして失望に打ちのめされた。一年ほど前から病気の症状に適合する薬を探す治験のため突き一回近所の大病院に通院していると聞いていた。JCJに来るのは以前より減少していたが、いつも変わらず寡黙な笑顔で作業に集中、時にはきつい冗談を発しみんなの笑いを誘っていた。現役時代は会社も異なり職場も違うので彼との付き合いはなかった。少し伝わっていたのは組合の委員長時代の労務要件獲得と賃金アップの華々しい成果と武勇伝は喧伝されていた。
博二さんが年々ごろJCJの会員になったか私の記憶は不確かだ。彼によるとJCJか民放組合の主催による沖縄支援に旅行会で私に拉致され有無を言わせず入会させられたと、あの笑顔で放言していたようだ。
几帳面で正確性高くきれい好きの彼は、常に手を動かし機材の手入れもよく行い、零細運営社員の見本のようであった。JCJ本部の何個もある白いテーブルも、汚れはもちろんのことボールペンの傷も消しゴムや消毒液で黙々と吹いていた。この性格は飲み会でも発揮され、一定量のむとどんなに座がにぎわっていても、お先にと多めの支払いをして帰宅する。メディアの人達は良く飲み議論をし座を沸かせる種族といわれるが、彼はどんな席でも笑顔でうるさい連中の話を聞いていた。
これからも集会・講演・小森チャンネル等の取材は絶えないが、吉田さんの音響の仕事は外部に依頼し、その都度出費となり頭の痛いことである。
とにかく安心して一つの物事を任せ続けてきた吉田さんの存在感の大きさにあらためて感謝したい。
茂木章子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
博二さんが年々ごろJCJの会員になったか私の記憶は不確かだ。彼によるとJCJか民放組合の主催による沖縄支援に旅行会で私に拉致され有無を言わせず入会させられたと、あの笑顔で放言していたようだ。
几帳面で正確性高くきれい好きの彼は、常に手を動かし機材の手入れもよく行い、零細運営社員の見本のようであった。JCJ本部の何個もある白いテーブルも、汚れはもちろんのことボールペンの傷も消しゴムや消毒液で黙々と吹いていた。この性格は飲み会でも発揮され、一定量のむとどんなに座がにぎわっていても、お先にと多めの支払いをして帰宅する。メディアの人達は良く飲み議論をし座を沸かせる種族といわれるが、彼はどんな席でも笑顔でうるさい連中の話を聞いていた。
これからも集会・講演・小森チャンネル等の取材は絶えないが、吉田さんの音響の仕事は外部に依頼し、その都度出費となり頭の痛いことである。
とにかく安心して一つの物事を任せ続けてきた吉田さんの存在感の大きさにあらためて感謝したい。
茂木章子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年11月07日
【国際情勢】 中南米報道これでいいのか 革命40周年のニカラグアで考えた 人権弾圧無縁の国=吉原功
日本の報道ではベネズエラやニカラグアなど中南米は、独裁政権下で大混乱しているように伝えられている。しかし本当にそうか。 JCJ代表委員の吉原功・明治学院大学名誉教授は、7月中旬、革命40周年の式展に招待され、ニカラグアを訪問した。以下は、吉原代表委員のリポート。(写真も)
【詩の工房】
十五歳のマリアは /銃でこづかれ犯された /
ロセンドのおばあさんは / ガーゼで首をしめられた /
ファンは殺菌剤を飲まされ / 呪いながら死んでいった /
国家警備兵に何度もレイプされマリ―ナは流産した
☆
1979年7月19日、中米ニカラグアでサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を中心とする長く苦しい民族自決運動が勝利し、米国の傀儡ソモサ独裁体制が崩壊した。革命政府は複数政党制、混合経済、非同盟の国家再建を目指す。国外逃亡した旧軍残党を中心とし米国の支援を受けた反革命コントラの攻撃にも対処しつつ、民衆の文化運動にも力をいれる。 各地に作られた「詩の工房」はその一つだ。農民、労働者、老若男女を対象に識字運動の一環として作詩をうながし生徒同士に意見交換させて最後に詩人が形を整えタイプし作品を残すというものだ。冒頭の詩はその運動から生まれた作品で『ニカラグアの詩の工房のアンソロジー』に収められている。ソモサ体制下で民衆がいかに悲惨な目にあわされていたかを端的に表現している。
街は平穏、報道ウソ
本年は、サンディニスタ革命の40周年にあたり7月19日に記念式典が挙行され、筆者は偶然にもその記念式典に参加する機会をえた。メキシコ経由でニカラグアの首都マナグアに入ると猛暑の日本より過ごしやすい気候だった。街々は近代的な豊かさにはほど遠いが、静かで平穏だった。昨年春、サンディニスタ政権打倒を叫ぶ大暴動事件が全国に吹き荒れ、欧米と日本のメディアが「政府に抗議する市民運動を徹底的に弾圧する独裁国家」と書き立てたのとは全く異なる風情だった。式典当日を含め警備の警官や軍隊はほとんど目に入ってこなかった。
式典の2日前、ニカラグア国民自律大学を訪れ、学長の話をきいた。経済学、医学、教育学、人類学、工学などの学部を要するニカラグア有数の大学だ。昨年の大暴動では学内が破壊され1500万ドルの物的損害に加え精神的被害も受け苦悩しているが、学問研究の向上に努めると同時に、社会事業、ボランティア、地方の青年向けの農業講座などにも力を入れ市民に受け入れられるような大学に発展するよう努力していると話してくれた。
その日の夜、FSLN本部で中心的に活動しているフォンセカとの会食が準備されていた。彼はサンディニスタ創設者の一人で革命運動中斃れたカルロス・アマドール・フォンセカの子息で、式典でのオルテガ大統領のスピーチと重なる貴重な話を聞くことができた。
翌日、大暴動の動画映像を見たが解説してくれたのはかれだった。冒頭の詩を映像化したような凄惨場面がこれでもかこれでもかと続いた。
革命式典に20万人
19日、式典会場は人々で溢れていた。会衆は20万人を超えていたと思われる。私たち外国からの参加者約500人は観覧席のような席に案内されたが人垣に遮られて全体は見えない。スピーチの最後にオルテガ大統領が立った。革命を勝利に導いたリーダーの一人だ。静かにはじまり次第に情熱をこめて概要つぎのようなことを会衆に呼び掛けた。「貧困と失業を根絶しよう。憎しみは混乱や戦争を生む。貧困を解消するには平和が絶対条件、愛こそは平和な社会の確立につながる。寛容が必要」。式典のテーマ「愛と平和」にピッタリの内容だ。
愛と平和、それに寛容はサンディニスタの哲学だという。拷問、放火、火炙りをほしいままにした前年の大暴動参加者たちも恩赦によって解放されたという。
勝利の暁には寛容を
フォンセカとともにサンディニスタを設立し、初期革命政府の内務大臣を務めたトマス・ボルヘは1980年、「われわれは彼らの生命を尊重しよう。復讐とは、彼らにいささかの憤りも抱かず、彼らがわれわれを処したより、比較できぬほどずっとよく彼らを処することだ。戦闘にあたっては妥協せず勝利のあかつきには寛容たれというわれわれの銘を実行することである」と述べた。40年後もそれが実行されているようだ。
こうした国を米合衆国は、キューバ、ベネズエラとともに「人権弾圧の独裁国家」として制裁を加えている。メディアは米政府の言うことをそのまま事実と報道する。ニューヨーク・タイムスやワシントン・ポストなども例外ではない。日本メディアはそれを横流ししている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
【詩の工房】
十五歳のマリアは /銃でこづかれ犯された /
ロセンドのおばあさんは / ガーゼで首をしめられた /
ファンは殺菌剤を飲まされ / 呪いながら死んでいった /
国家警備兵に何度もレイプされマリ―ナは流産した
☆
1979年7月19日、中米ニカラグアでサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を中心とする長く苦しい民族自決運動が勝利し、米国の傀儡ソモサ独裁体制が崩壊した。革命政府は複数政党制、混合経済、非同盟の国家再建を目指す。国外逃亡した旧軍残党を中心とし米国の支援を受けた反革命コントラの攻撃にも対処しつつ、民衆の文化運動にも力をいれる。 各地に作られた「詩の工房」はその一つだ。農民、労働者、老若男女を対象に識字運動の一環として作詩をうながし生徒同士に意見交換させて最後に詩人が形を整えタイプし作品を残すというものだ。冒頭の詩はその運動から生まれた作品で『ニカラグアの詩の工房のアンソロジー』に収められている。ソモサ体制下で民衆がいかに悲惨な目にあわされていたかを端的に表現している。
街は平穏、報道ウソ
本年は、サンディニスタ革命の40周年にあたり7月19日に記念式典が挙行され、筆者は偶然にもその記念式典に参加する機会をえた。メキシコ経由でニカラグアの首都マナグアに入ると猛暑の日本より過ごしやすい気候だった。街々は近代的な豊かさにはほど遠いが、静かで平穏だった。昨年春、サンディニスタ政権打倒を叫ぶ大暴動事件が全国に吹き荒れ、欧米と日本のメディアが「政府に抗議する市民運動を徹底的に弾圧する独裁国家」と書き立てたのとは全く異なる風情だった。式典当日を含め警備の警官や軍隊はほとんど目に入ってこなかった。
式典の2日前、ニカラグア国民自律大学を訪れ、学長の話をきいた。経済学、医学、教育学、人類学、工学などの学部を要するニカラグア有数の大学だ。昨年の大暴動では学内が破壊され1500万ドルの物的損害に加え精神的被害も受け苦悩しているが、学問研究の向上に努めると同時に、社会事業、ボランティア、地方の青年向けの農業講座などにも力を入れ市民に受け入れられるような大学に発展するよう努力していると話してくれた。
その日の夜、FSLN本部で中心的に活動しているフォンセカとの会食が準備されていた。彼はサンディニスタ創設者の一人で革命運動中斃れたカルロス・アマドール・フォンセカの子息で、式典でのオルテガ大統領のスピーチと重なる貴重な話を聞くことができた。
翌日、大暴動の動画映像を見たが解説してくれたのはかれだった。冒頭の詩を映像化したような凄惨場面がこれでもかこれでもかと続いた。
革命式典に20万人
19日、式典会場は人々で溢れていた。会衆は20万人を超えていたと思われる。私たち外国からの参加者約500人は観覧席のような席に案内されたが人垣に遮られて全体は見えない。スピーチの最後にオルテガ大統領が立った。革命を勝利に導いたリーダーの一人だ。静かにはじまり次第に情熱をこめて概要つぎのようなことを会衆に呼び掛けた。「貧困と失業を根絶しよう。憎しみは混乱や戦争を生む。貧困を解消するには平和が絶対条件、愛こそは平和な社会の確立につながる。寛容が必要」。式典のテーマ「愛と平和」にピッタリの内容だ。
愛と平和、それに寛容はサンディニスタの哲学だという。拷問、放火、火炙りをほしいままにした前年の大暴動参加者たちも恩赦によって解放されたという。
勝利の暁には寛容を
フォンセカとともにサンディニスタを設立し、初期革命政府の内務大臣を務めたトマス・ボルヘは1980年、「われわれは彼らの生命を尊重しよう。復讐とは、彼らにいささかの憤りも抱かず、彼らがわれわれを処したより、比較できぬほどずっとよく彼らを処することだ。戦闘にあたっては妥協せず勝利のあかつきには寛容たれというわれわれの銘を実行することである」と述べた。40年後もそれが実行されているようだ。
こうした国を米合衆国は、キューバ、ベネズエラとともに「人権弾圧の独裁国家」として制裁を加えている。メディアは米政府の言うことをそのまま事実と報道する。ニューヨーク・タイムスやワシントン・ポストなども例外ではない。日本メディアはそれを横流ししている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年11月06日
【月刊マスコミ評・新聞】 芸術祭、政治関与の有無検証を=徳山喜雄
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が紆余曲折の末、終わった。開幕からわずか3日で中止となっていた企画展「表現の不自由展・その後」が閉幕直前に再開されるなど、「表現の自由」をめぐってさまざまな議論がなされた。
不自由展は慰安婦をテーマにした少女像や昭和天皇の肖像をバーナーで燃やす映像作品などが展示され、「反日的だ」などとして匿名の抗議が相次いだ。萩生田光一・文部科学相は9月、採択を決めていた補助金全額を交付しないと発表。不交付の理由について「展示内容」ではなく、「手続きの不備」をあげた。
不交付の発表を受け、在京紙では朝日、毎日、産経の3紙が9月27日朝刊に社説を掲載。朝日は「表現行為や芸術活動への理解を欠く誤った決定である。社会全体に萎縮効果を及ぼし、国際的にも日本の文化行政に対する不信と軽蔑を招きかねない。ただちに撤回すべきだ」と強いトーンで批判し、毎日は「結果的に今回の措置は、自分たちと意見を異にする言論や表現を暴力的な脅しで排除しようとする行為を、後押しすることにつながる。/さらに、そういった風潮が社会に広がっていくことにも強い危機感を覚える」と疑問を呈した。
一方、産経は「日本国の象徴である天皇や日本人へのヘイト(憎悪)を表したとしかいえない展示だ。それへの反省を伴う全面的な見直しなくして企画展の再開などとんでもない」「そもそも、左右どちらの陣営であれ、ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない。当然の常識を弁えるべきである」と、朝日や毎日とは正反対の見方を示した。
不自由展の再開合意を報じる10月1日朝刊の在京紙をみる。朝日と毎日が1面を含む複数面で、東京も2社面で大きく報じ、読売と産経は2社面に事実関係を伝える小振りの記事を入れた。不自由展をめぐっての報道各社の立ち位置がよく分かる紙面扱いだ。
10月14日に芸術祭は閉幕。朝日や東京は16日朝刊で文化庁の宮田亮平長官の「不交付決定を見直す必要はない」とする参院予算委員会での答弁を取り上げた。宮田氏は決済に関わっていなかったともいうが、政治の関与はなかったのか。ここは閉幕で終わるのではなく、突っ込んだ取材を続けてほしい。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
不自由展は慰安婦をテーマにした少女像や昭和天皇の肖像をバーナーで燃やす映像作品などが展示され、「反日的だ」などとして匿名の抗議が相次いだ。萩生田光一・文部科学相は9月、採択を決めていた補助金全額を交付しないと発表。不交付の理由について「展示内容」ではなく、「手続きの不備」をあげた。
不交付の発表を受け、在京紙では朝日、毎日、産経の3紙が9月27日朝刊に社説を掲載。朝日は「表現行為や芸術活動への理解を欠く誤った決定である。社会全体に萎縮効果を及ぼし、国際的にも日本の文化行政に対する不信と軽蔑を招きかねない。ただちに撤回すべきだ」と強いトーンで批判し、毎日は「結果的に今回の措置は、自分たちと意見を異にする言論や表現を暴力的な脅しで排除しようとする行為を、後押しすることにつながる。/さらに、そういった風潮が社会に広がっていくことにも強い危機感を覚える」と疑問を呈した。
一方、産経は「日本国の象徴である天皇や日本人へのヘイト(憎悪)を表したとしかいえない展示だ。それへの反省を伴う全面的な見直しなくして企画展の再開などとんでもない」「そもそも、左右どちらの陣営であれ、ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない。当然の常識を弁えるべきである」と、朝日や毎日とは正反対の見方を示した。
不自由展の再開合意を報じる10月1日朝刊の在京紙をみる。朝日と毎日が1面を含む複数面で、東京も2社面で大きく報じ、読売と産経は2社面に事実関係を伝える小振りの記事を入れた。不自由展をめぐっての報道各社の立ち位置がよく分かる紙面扱いだ。
10月14日に芸術祭は閉幕。朝日や東京は16日朝刊で文化庁の宮田亮平長官の「不交付決定を見直す必要はない」とする参院予算委員会での答弁を取り上げた。宮田氏は決済に関わっていなかったともいうが、政治の関与はなかったのか。ここは閉幕で終わるのではなく、突っ込んだ取材を続けてほしい。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年11月05日
【リアル北朝鮮】 白頭山登頂で決断? 金委員長自立繁栄を強調=文 聖姫
「敵がいくら執拗にあがいても、我々は我々の力でいくらでも良い暮らしができ、我々式で発展と繁栄の道を切り開いていけるというのが、試練と困難を踏みしめ奇跡と遺勲でより飛躍した2019年の総括」
金正恩・朝鮮労働党委員長は中朝国境の三池淵郡を訪れた際、意味深な発言を行った。冒頭はそのひとつだ。16日発の朝鮮中央通信が伝えたが、訪問の日時は明らかにしていない。
この視察で金委員長はこうも述べた。「米国を首位とする反共和国敵対勢力が朝鮮人民に強要してきた苦痛は、もはや苦痛ではなく、それがそのまま憤怒に変わった」。
6月の金委員長とトランプ米大統領による電撃的板門店対面では米朝の実務者協議を開催することで合意、10月5日にストックホルムで実現したが、不発に終わった。協議には北朝鮮の金明吉首席代表と米国のスティーヴン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が参加した。金首席代表は、「アメリカは、我々を大いに失望させた。アメリカは自分たちの古い立場や姿勢を手放さないようだ」と述べ(BBCニュース電子版2019年10月7日)、米国側は「アメリカは、創造的なアイデアを提示し、北朝鮮側と良い話し合いを行った」(モーガン・オーテイガス国務省報道官声明、前述のBBCニュース)と表明。双方食い違いを見せている。
金委員長の三池淵での発言は、この米朝協議後になされたものとして注目される。もはや米国との対話には期待しないとも受け取れるからだ。
金委員長は、自力更生、自力富強、自力繁栄などの言葉を連発し、(制裁という)圧力に屈せず、自力で道を開いていかねばならないと強調した。
同じ16日発の朝鮮中央通信は、金委員長が白頭山頂に登ったことを、白馬にまたがった金委員長の写真とともに報じた。金委員長が白頭山に登るときは何かを決断する時であることが多い。金委員長の意味深な発言とともに注目される動きだ。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
金正恩・朝鮮労働党委員長は中朝国境の三池淵郡を訪れた際、意味深な発言を行った。冒頭はそのひとつだ。16日発の朝鮮中央通信が伝えたが、訪問の日時は明らかにしていない。
この視察で金委員長はこうも述べた。「米国を首位とする反共和国敵対勢力が朝鮮人民に強要してきた苦痛は、もはや苦痛ではなく、それがそのまま憤怒に変わった」。
6月の金委員長とトランプ米大統領による電撃的板門店対面では米朝の実務者協議を開催することで合意、10月5日にストックホルムで実現したが、不発に終わった。協議には北朝鮮の金明吉首席代表と米国のスティーヴン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が参加した。金首席代表は、「アメリカは、我々を大いに失望させた。アメリカは自分たちの古い立場や姿勢を手放さないようだ」と述べ(BBCニュース電子版2019年10月7日)、米国側は「アメリカは、創造的なアイデアを提示し、北朝鮮側と良い話し合いを行った」(モーガン・オーテイガス国務省報道官声明、前述のBBCニュース)と表明。双方食い違いを見せている。
金委員長の三池淵での発言は、この米朝協議後になされたものとして注目される。もはや米国との対話には期待しないとも受け取れるからだ。
金委員長は、自力更生、自力富強、自力繁栄などの言葉を連発し、(制裁という)圧力に屈せず、自力で道を開いていかねばならないと強調した。
同じ16日発の朝鮮中央通信は、金委員長が白頭山頂に登ったことを、白馬にまたがった金委員長の写真とともに報じた。金委員長が白頭山に登るときは何かを決断する時であることが多い。金委員長の意味深な発言とともに注目される動きだ。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年11月04日
【メディア気象台】 10月初旬から中旬=編集部
メディア過労自殺、20代集中
厚生労働省は1日、2019年度の「過労死等防止対策白書」を公表した。過労防止大綱で重点業種・職種と位置付けられた建設、メディアの両業種を分析し、建設は現場監督、メディアは若い世代に過労自殺が集中していると指摘した。10年1月〜15年3月に労災認定された脳・心臓疾患と精神障害の事例から、建設の311件とメディアの52件を分析した。メディアの52件を細かく見ると、業種別では広告が26件と最多で、放送17件、出版6件、新聞3件と続いた。職種別では営業が10件、メディア制作とディレクターが7件だった。精神障害が認められた30件のうち、19件が20〜30代の若い世代で、過労自殺した4人は全員が20代だった。背景にあるストレスは、長時間労働や仕事量・質の変化、上司とのトラブルが多かったという。過労死弁護士連絡会議幹事長の川人博弁護士は「東京五輪に向け、報道が過熱し、過重な労働が広がる恐れがあると認識すべきだ」と話している。(「朝日」10月2日付ほか)
「共謀罪 言論を萎縮」市民団体が廃止署名提出
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を求める市民団体が7日、衆院第二議員会館前の路上で「言論を萎縮させ、自由が脅かされている」などと訴え、衆参両院議長あての署名約1万6800人分を野党議員に手渡した。既に提出した分と合わせると約27万4500人分に上るという。(「東京」10月8日付)
韓国法相、容疑者集団取材の場廃止案
韓国のチョグク法相は8日、検察がメディアに対し、出頭した捜査中の容疑者らに集団取材できる場を設けてきた慣行の廃止などを含む検察改革案を発表した。「誤った捜査慣行」として、今後は規則で禁じるという。チョグク法相の妻らが絡む不正疑惑の捜査中でもあり、野党からは批判の声が上がっている。韓国では、検察がメディアに対し、事情聴取で出頭を求めた国会議員や官僚、大企業幹部らに集団取材の便宜を図ってきた。庁舎前に取材エリアを設定し、議員らを立ち止まらせる方式だった。ただ、社会の注目が集まる事件では対象が一般人にも広がり、法曹界からは「推定無罪の原則に反する」「先進国では異例の人格殺人だ」などの反発が起きていた。(「朝日」10月9日付ほか)
マイナンバー原告180人控訴
マイナンバー制度は憲法が保障するプライバシー権を侵害し違憲だとして、神奈川県内の住民ら230人が個人番号の収集・利用の差し止めを国に求めた訴訟で、原告のうち180人が9日、請求を棄却した横浜地裁判決を不服として控訴した。原告側弁護団は「横浜地裁判決は憲法13条で保障されているプライバシー権を極めて狭くとらえており、現代社会におけるプライバシーの重要性に背を向けたものだ」とのコメントを発表した。9月26日の判決では、憲法13条は「個人情報をみだりに第三者に開示、公表されない自由」と指摘した上で、「制度やシステム技術の不備から個人情報が公表される具体的な危険が生じているとは言えない」として、違法性を認めなかった。(「毎日」10月11日付ほか)
東宝「天気の子」で最高益
東宝は11日、2020年2月期の連結純利益が前期に比べて14%増の345億円になる見通しと発表した。従来予想から30億円引き上げ、2期ぶりに最高益を更新する。同社が出資して自社配信するアニメ映画「天気の子」をはじめヒット作が収益を押し上げる。(「日経」10月12日付)
シンガポール、甘い飲み物の広告ダメ
シンガポール政府は、砂糖の含有量が一定量を超える飲料水の広告を全面的に禁じる方針を発表した。同国が「健康危機」と位置付ける糖尿病対策の一環。具体的な実施方針は来年に打ち出すといい、実現すれば世界初の取り組みになる。(「朝日」10月12日付ほか)
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
厚生労働省は1日、2019年度の「過労死等防止対策白書」を公表した。過労防止大綱で重点業種・職種と位置付けられた建設、メディアの両業種を分析し、建設は現場監督、メディアは若い世代に過労自殺が集中していると指摘した。10年1月〜15年3月に労災認定された脳・心臓疾患と精神障害の事例から、建設の311件とメディアの52件を分析した。メディアの52件を細かく見ると、業種別では広告が26件と最多で、放送17件、出版6件、新聞3件と続いた。職種別では営業が10件、メディア制作とディレクターが7件だった。精神障害が認められた30件のうち、19件が20〜30代の若い世代で、過労自殺した4人は全員が20代だった。背景にあるストレスは、長時間労働や仕事量・質の変化、上司とのトラブルが多かったという。過労死弁護士連絡会議幹事長の川人博弁護士は「東京五輪に向け、報道が過熱し、過重な労働が広がる恐れがあると認識すべきだ」と話している。(「朝日」10月2日付ほか)
「共謀罪 言論を萎縮」市民団体が廃止署名提出
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を求める市民団体が7日、衆院第二議員会館前の路上で「言論を萎縮させ、自由が脅かされている」などと訴え、衆参両院議長あての署名約1万6800人分を野党議員に手渡した。既に提出した分と合わせると約27万4500人分に上るという。(「東京」10月8日付)
韓国法相、容疑者集団取材の場廃止案
韓国のチョグク法相は8日、検察がメディアに対し、出頭した捜査中の容疑者らに集団取材できる場を設けてきた慣行の廃止などを含む検察改革案を発表した。「誤った捜査慣行」として、今後は規則で禁じるという。チョグク法相の妻らが絡む不正疑惑の捜査中でもあり、野党からは批判の声が上がっている。韓国では、検察がメディアに対し、事情聴取で出頭を求めた国会議員や官僚、大企業幹部らに集団取材の便宜を図ってきた。庁舎前に取材エリアを設定し、議員らを立ち止まらせる方式だった。ただ、社会の注目が集まる事件では対象が一般人にも広がり、法曹界からは「推定無罪の原則に反する」「先進国では異例の人格殺人だ」などの反発が起きていた。(「朝日」10月9日付ほか)
マイナンバー原告180人控訴
マイナンバー制度は憲法が保障するプライバシー権を侵害し違憲だとして、神奈川県内の住民ら230人が個人番号の収集・利用の差し止めを国に求めた訴訟で、原告のうち180人が9日、請求を棄却した横浜地裁判決を不服として控訴した。原告側弁護団は「横浜地裁判決は憲法13条で保障されているプライバシー権を極めて狭くとらえており、現代社会におけるプライバシーの重要性に背を向けたものだ」とのコメントを発表した。9月26日の判決では、憲法13条は「個人情報をみだりに第三者に開示、公表されない自由」と指摘した上で、「制度やシステム技術の不備から個人情報が公表される具体的な危険が生じているとは言えない」として、違法性を認めなかった。(「毎日」10月11日付ほか)
東宝「天気の子」で最高益
東宝は11日、2020年2月期の連結純利益が前期に比べて14%増の345億円になる見通しと発表した。従来予想から30億円引き上げ、2期ぶりに最高益を更新する。同社が出資して自社配信するアニメ映画「天気の子」をはじめヒット作が収益を押し上げる。(「日経」10月12日付)
シンガポール、甘い飲み物の広告ダメ
シンガポール政府は、砂糖の含有量が一定量を超える飲料水の広告を全面的に禁じる方針を発表した。同国が「健康危機」と位置付ける糖尿病対策の一環。具体的な実施方針は来年に打ち出すといい、実現すれば世界初の取り組みになる。(「朝日」10月12日付ほか)
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年11月03日
【今週の風考計】11.3─W杯ラグビーの後味と東京五輪の酷暑
●先月末の秋晴れの日、東京・調布にある神代植物園のバラを見たあと、深大寺へと散策した。境内に入り「達磨まつり」で有名な元三大師堂や国宝の本堂を拝観し、山門へと辿る途中で、ラグビーのユニホームが飾られた堂宇に目がいった。
●にわかラグビー・フアンとなっていた筆者には、興味津々、なんとオーストラリア代表チーム「ワラビーズ」の全員がサインしたユニホームだ。達磨の<七転び八起き>がラグビー精神につながるとの縁で、祈願した際に贈呈されたという。
●くしくも翌日、調布にある東京スタジアムで、ニュージーランド対ウェールズの3位決定戦、もうテレビにかじりついた。そして昨日2日、イングランド対南アフリカの決勝戦、テレビの前で「行けー、押せ…」と声が出てしまう。結果はご承知の通り、南アフリカが32−12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を果たした。
●44日間・170万人の観客を動員し、テレビ視聴率は最高53.7%を記録したW杯ラグビー。秋篠宮さまや安倍首相、日本ラグビー協会の名誉会長でもある森喜朗元首相も出席し、大会を締めくくる閉会・表彰式で、後味の悪いシーンが演じられた。
●イングランドの選手が2位の銀メダルを首にかけられることを嫌がり、さらには授与された直後に銀メダルを首から外す選手まで続出。<ラグビー発祥の地>の選手たちが、ノーサイド精神を踏みにじる行為に走るとは、内外からブーイングが起きている。
●さて東京五輪。組織委員会会長である森喜朗さん、前日の1日、マラソン・競歩の札幌への変更を決定した。絶大なる権限を持つIOCには逆らえず、東京も「合意なき決定」に従った。しかし、森喜朗さん、「日本が世界にウソをつき続けた結果、今回の事態を招いた」という責任は免れない。
●JOCがオリンピック招致の際に作った「立候補ファイル」の、「2020年東京大会の理想的な日程」という項目に、こう書かれている。
〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉
●なんとなんと、日本みずからが蒔いた種なのだ。2013年IOC総会の最終プレゼンでも、福島原発事故問題に触れて、安倍首相は「アンダー・コントロール」との恐るべき言葉を発したが、天気までウソをついていたとは呆れかえる。もう「任命責任」なんて言葉も、取りもしないのに軽々しく言うな。(2019/11/3)
●にわかラグビー・フアンとなっていた筆者には、興味津々、なんとオーストラリア代表チーム「ワラビーズ」の全員がサインしたユニホームだ。達磨の<七転び八起き>がラグビー精神につながるとの縁で、祈願した際に贈呈されたという。
●くしくも翌日、調布にある東京スタジアムで、ニュージーランド対ウェールズの3位決定戦、もうテレビにかじりついた。そして昨日2日、イングランド対南アフリカの決勝戦、テレビの前で「行けー、押せ…」と声が出てしまう。結果はご承知の通り、南アフリカが32−12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を果たした。
●44日間・170万人の観客を動員し、テレビ視聴率は最高53.7%を記録したW杯ラグビー。秋篠宮さまや安倍首相、日本ラグビー協会の名誉会長でもある森喜朗元首相も出席し、大会を締めくくる閉会・表彰式で、後味の悪いシーンが演じられた。
●イングランドの選手が2位の銀メダルを首にかけられることを嫌がり、さらには授与された直後に銀メダルを首から外す選手まで続出。<ラグビー発祥の地>の選手たちが、ノーサイド精神を踏みにじる行為に走るとは、内外からブーイングが起きている。
●さて東京五輪。組織委員会会長である森喜朗さん、前日の1日、マラソン・競歩の札幌への変更を決定した。絶大なる権限を持つIOCには逆らえず、東京も「合意なき決定」に従った。しかし、森喜朗さん、「日本が世界にウソをつき続けた結果、今回の事態を招いた」という責任は免れない。
●JOCがオリンピック招致の際に作った「立候補ファイル」の、「2020年東京大会の理想的な日程」という項目に、こう書かれている。
〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉
●なんとなんと、日本みずからが蒔いた種なのだ。2013年IOC総会の最終プレゼンでも、福島原発事故問題に触れて、安倍首相は「アンダー・コントロール」との恐るべき言葉を発したが、天気までウソをついていたとは呆れかえる。もう「任命責任」なんて言葉も、取りもしないのに軽々しく言うな。(2019/11/3)
【沖縄リポート】 軟弱地盤改良で米国が危惧=浦島悦子
沖縄島北部・本部半島の採石場から連日、運搬船16隻体制(1日当たり4〜5隻)で大浦湾に運ばれ、投入される埋め立て土砂。毎日朝・昼・午後の3回、基地ゲートから資機材を搬入するダンプやコンクリートミキサー車―。辺野古新基地建設工事は「順調に」進んでいるように見える。そして政府は、国民・県民、そして何よりも米国にそれをアピールしたがっている。
しかし実際はそうでないことが、現場にいるとよくわかる。運搬船に土砂を運ぶダンプの1台当たりの積載量を荷台の底板が見えるほど減らしたり、埋め立て用護岸の前面に、必要性に疑問符のつく巨大なテトラポットを多数設置したり、時間稼ぎとしか思われない現状がある。昨年12月14日から始まった埋め立て土砂投入は、10カ月経った現時点で達成率は約1%にすぎない。
事業者である沖縄防衛局が一番頭を悩ませているのが、大浦湾の埋め立て区域の広大な「マヨネーズ状」と言われる超軟弱地盤だ。防衛局はあくまで改良工事は可能とし、9月6日に「有識者」による「技術検討委員会(委員8人)」を発足させた。運輸省港湾技術研究所出身で辺野古工事の関連会社取締役でもある清宮理・早稲田大学名誉教授を委員長とし、「国の立場」の委員が大半を占める「御用機関」。それでも初会合では、大浦湾の軟弱地盤は羽田空港や関西国際空港とは異なる特有のものであり、完成後の沈下を懸念する声が出たという。
10月5日、辺野古ゲート前で開催された県民集会で発言した土木技師の北上田毅さんは、防衛局が地盤改良工事の設計のために発注した委託業務を情報公開請求で入手し、「これまでにない内容に驚いた」と話した。業務の実施に当たって当初から完成まで4回にわたる米軍との協議を義務付けているという。「これは、地盤改良工事を日本政府に任せておくことはできず、米軍が直接指揮監督するということだ。軟弱地盤に対する米軍の危惧がいかに大きいかがわかる」「来年初めに防衛局は沖縄県に対し(地盤改良工事を含む)設計概要変更申請を出すと報道されている。県が不承認すれば工事は止まる。展望に確信を持って現場に結集しよう」と呼びかけた。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
しかし実際はそうでないことが、現場にいるとよくわかる。運搬船に土砂を運ぶダンプの1台当たりの積載量を荷台の底板が見えるほど減らしたり、埋め立て用護岸の前面に、必要性に疑問符のつく巨大なテトラポットを多数設置したり、時間稼ぎとしか思われない現状がある。昨年12月14日から始まった埋め立て土砂投入は、10カ月経った現時点で達成率は約1%にすぎない。
事業者である沖縄防衛局が一番頭を悩ませているのが、大浦湾の埋め立て区域の広大な「マヨネーズ状」と言われる超軟弱地盤だ。防衛局はあくまで改良工事は可能とし、9月6日に「有識者」による「技術検討委員会(委員8人)」を発足させた。運輸省港湾技術研究所出身で辺野古工事の関連会社取締役でもある清宮理・早稲田大学名誉教授を委員長とし、「国の立場」の委員が大半を占める「御用機関」。それでも初会合では、大浦湾の軟弱地盤は羽田空港や関西国際空港とは異なる特有のものであり、完成後の沈下を懸念する声が出たという。
10月5日、辺野古ゲート前で開催された県民集会で発言した土木技師の北上田毅さんは、防衛局が地盤改良工事の設計のために発注した委託業務を情報公開請求で入手し、「これまでにない内容に驚いた」と話した。業務の実施に当たって当初から完成まで4回にわたる米軍との協議を義務付けているという。「これは、地盤改良工事を日本政府に任せておくことはできず、米軍が直接指揮監督するということだ。軟弱地盤に対する米軍の危惧がいかに大きいかがわかる」「来年初めに防衛局は沖縄県に対し(地盤改良工事を含む)設計概要変更申請を出すと報道されている。県が不承認すれば工事は止まる。展望に確信を持って現場に結集しよう」と呼びかけた。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年11月01日
【リレー時評】ネット情報への対応と新聞報道の危機=黒島美奈子(JCJ沖縄世話人)
新聞はインターネットの情報とどう向き合うべきか。既存メディアにとって現代の命題とも言えるテーマに取り組んだ本が9月、沖縄県内2紙から相次いで出版された。
沖縄タイムス社編集局著『幻想のメディア〜SNSから見える沖縄』と琉球新報社編集局著『琉球新報が挑んだファクトチェック』(ともに高文研)。どちらも2018年9月の県知事選を巡る「フェイクニュース」の背景を取材し、その軌跡をまとめたものだ。
取材を担当した両紙記者によるトークショーが10月、那覇市内であった。そこで司会者にフェイクニュース問題を取材した理由を聞かれた両紙の記者が口にしたのが、県内の選挙報道で感じた危機感だった。
県内では県知事選の7カ月前、同年2月の名護市長選からネット上にフェイクニュースがあふれ、あきらかにこれまでの選挙と違った様相を呈していた。「名護市が長年誘致してきたプロ野球キャンプを、市長選候補者の1人である現職が止めようとしている」。そんな情報がSNSを中心に広がりはじめたのは名護市長選の告示からまもなくのことだ。
2月の選挙の争点は名護市辺野古への新基地建設の是非。20年前と変わらないが、大きな変化もあった。県内の首長選挙として初めて「18歳選挙権」が行使され注目を浴びていたのだ。
その選挙で「若者の間でデマが拡散されている」とのうわさが市長選取材班の耳に届くようになったのは、選挙戦も中盤にさしかかったころだった。告示直後の有権者調査で大幅なリードが報じられた現職だが、このころになると劣勢がささやかれるようになった。そして迎えた投開票日。報道各社の当初予想を上回る票差で新人が勝利。
この選挙を通して県内2紙をかつてない危機感が襲った。「有権者に正しい情報を届ける責任を、新聞は果たせていないのでは」。選挙後に沖縄タイムスの市長選取材班が寄せた検証記事にはいくつも「新聞の敗北」を語る言葉が並ぶ。名護市長選は、県内の多くの記者が選挙報道を見直すきっかけとなった。
とはいえ長年培ってきた報道の在り方を変えるのは難しい。迎えた県知事選で沖縄タイムス編集局は部をまたいだ「SNSチェック班」を結成し、毎日決まった時間、デマやうその情報発信を監視した。
ただ、その後の県民投票(2019年2月)や参院選(同年7月)では班を立ちあげず、ネット情報の監視は記者個人の「やる気」に頼っているのが現状だ。参院選では初めてネット上の情報の分析図を作成したが、従来的な選挙報道が解消されたとは言い難い。
情報発信の在り方やツールは加速度的に変化している。本気で「正しい情報」を届けたいなら、新聞はもっと焦らなければならない。
沖縄タイムス社編集局著『幻想のメディア〜SNSから見える沖縄』と琉球新報社編集局著『琉球新報が挑んだファクトチェック』(ともに高文研)。どちらも2018年9月の県知事選を巡る「フェイクニュース」の背景を取材し、その軌跡をまとめたものだ。
取材を担当した両紙記者によるトークショーが10月、那覇市内であった。そこで司会者にフェイクニュース問題を取材した理由を聞かれた両紙の記者が口にしたのが、県内の選挙報道で感じた危機感だった。
県内では県知事選の7カ月前、同年2月の名護市長選からネット上にフェイクニュースがあふれ、あきらかにこれまでの選挙と違った様相を呈していた。「名護市が長年誘致してきたプロ野球キャンプを、市長選候補者の1人である現職が止めようとしている」。そんな情報がSNSを中心に広がりはじめたのは名護市長選の告示からまもなくのことだ。
2月の選挙の争点は名護市辺野古への新基地建設の是非。20年前と変わらないが、大きな変化もあった。県内の首長選挙として初めて「18歳選挙権」が行使され注目を浴びていたのだ。
その選挙で「若者の間でデマが拡散されている」とのうわさが市長選取材班の耳に届くようになったのは、選挙戦も中盤にさしかかったころだった。告示直後の有権者調査で大幅なリードが報じられた現職だが、このころになると劣勢がささやかれるようになった。そして迎えた投開票日。報道各社の当初予想を上回る票差で新人が勝利。
この選挙を通して県内2紙をかつてない危機感が襲った。「有権者に正しい情報を届ける責任を、新聞は果たせていないのでは」。選挙後に沖縄タイムスの市長選取材班が寄せた検証記事にはいくつも「新聞の敗北」を語る言葉が並ぶ。名護市長選は、県内の多くの記者が選挙報道を見直すきっかけとなった。
とはいえ長年培ってきた報道の在り方を変えるのは難しい。迎えた県知事選で沖縄タイムス編集局は部をまたいだ「SNSチェック班」を結成し、毎日決まった時間、デマやうその情報発信を監視した。
ただ、その後の県民投票(2019年2月)や参院選(同年7月)では班を立ちあげず、ネット情報の監視は記者個人の「やる気」に頼っているのが現状だ。参院選では初めてネット上の情報の分析図を作成したが、従来的な選挙報道が解消されたとは言い難い。
情報発信の在り方やツールは加速度的に変化している。本気で「正しい情報」を届けたいなら、新聞はもっと焦らなければならない。
2019年10月30日
「反ヘイト」対「ヘイト」裁判 差別報じた記事を名誉棄損で 神奈川新聞・石橋記者 報道委縮が狙い
ヘイトスピーチを批判する記事を書いてきた神奈川新聞の石橋学記者(48)が差別主義者に訴えられた民事訴訟が9月24日、横浜地裁川崎支部で始まった。虚偽の発言を「デマ」と断じ、差別的言動を「ヘイトスピーチ」と非難した記事によって名誉を傷つけられたとして損害賠償を求めるもので、石橋記者と弁護団は「差別を自由に続けたい『ヘイト』対『反ヘイト』の主戦場」と位置づける。石橋記者は「裁判が報道を萎縮させる目的であるのは明らか。メディアこそが先頭に立って反差別の記事を書くべきで、彼らの言動がヘイトスピーチであると判決の中で認定させたい」と話している。
正当な論評だ
裁判を起こしたのは今年4月の川崎市議選に立候補した佐久間吾一氏(53)。自身が主催した講演会を「差別言動繰り返し」との見出しを掲げて批判した2月15日付けの神奈川新聞の記事を問題にした。
署名入りの記事で石橋記者は、講演会のあいさつに立った佐久間氏が川崎市川崎区池上町の在日コリアン集住地区について「いわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領している」「共産革命の拠点が築かれ、いまも闘いが続いている」などと発言したことを取り上げ、在日コリアンに対する「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と断じた。
佐久間氏は「在特会」から生まれた極右政治団体「日本第一党」の瀬戸弘幸最高顧問と行動を共にし、選挙でも瀬戸氏をはじめとするレイシストの応援を受けた人物。記事は、佐久間氏や日本第一党が川崎市内で続けるヘイト活動の実態を踏まえたものだが、佐久間氏は「根拠なくかき立て統一地方選候補予定者である原告の名誉を著しく傷つけた」と主張する。対する石橋記者側は第1回口頭弁論で、佐久間氏の発言は差別をあおるためのデマで「記事には公益目的があり、新聞記者として正当な論評をした」と述べ、名誉毀損には当たらないと反論した。
弁護団は石橋記者の無罪を証明するだけでなく、佐久間氏や瀬戸氏ら日本第一党の活動がヘイトスピーチであり、人権侵害であることを判決の中で認定させることを目指す。裁判には約50席の傍聴席からあふれる市民が詰めかけ、メディアを支える市民運動の姿勢を示した。
沖タイ1面で
取材には朝日、毎日、共同通信社、沖縄タイムス、琉球新報、RKB毎日放送などが駆け付けた。特筆すべきは沖縄タイムスで、本記を1面に掲載し、解説記事と池上町のルポを社会面で展開。筆者の阿部岳編集委員は石橋記者の「メディアこそが差別をなくす闘いの先頭に立つべきだと考えて書いてきた」との発言を引用。「だからこそ石橋記者個人も狙われた。もし石橋記者が敗訴すれば、差別的言動は差別というレッテルから逃れ、自由になり、再び爆発的に拡大するだろう」と警鐘を鳴らした。基地反対運動を標的にした沖縄ヘイトに対する問題意識に基づく報道で、裁判の行方の重要性を浮き彫りにした。
次回の口頭弁論は12月10日。石橋記者は「ヘイトが横行する現状はメディアが役割を果たしてこなかった結果だという思いがある。無罪判決を勝ち取り、差別を批判する報道の正しさを証明したい」と話している。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
正当な論評だ
裁判を起こしたのは今年4月の川崎市議選に立候補した佐久間吾一氏(53)。自身が主催した講演会を「差別言動繰り返し」との見出しを掲げて批判した2月15日付けの神奈川新聞の記事を問題にした。
署名入りの記事で石橋記者は、講演会のあいさつに立った佐久間氏が川崎市川崎区池上町の在日コリアン集住地区について「いわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領している」「共産革命の拠点が築かれ、いまも闘いが続いている」などと発言したことを取り上げ、在日コリアンに対する「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と断じた。
佐久間氏は「在特会」から生まれた極右政治団体「日本第一党」の瀬戸弘幸最高顧問と行動を共にし、選挙でも瀬戸氏をはじめとするレイシストの応援を受けた人物。記事は、佐久間氏や日本第一党が川崎市内で続けるヘイト活動の実態を踏まえたものだが、佐久間氏は「根拠なくかき立て統一地方選候補予定者である原告の名誉を著しく傷つけた」と主張する。対する石橋記者側は第1回口頭弁論で、佐久間氏の発言は差別をあおるためのデマで「記事には公益目的があり、新聞記者として正当な論評をした」と述べ、名誉毀損には当たらないと反論した。
弁護団は石橋記者の無罪を証明するだけでなく、佐久間氏や瀬戸氏ら日本第一党の活動がヘイトスピーチであり、人権侵害であることを判決の中で認定させることを目指す。裁判には約50席の傍聴席からあふれる市民が詰めかけ、メディアを支える市民運動の姿勢を示した。
沖タイ1面で
取材には朝日、毎日、共同通信社、沖縄タイムス、琉球新報、RKB毎日放送などが駆け付けた。特筆すべきは沖縄タイムスで、本記を1面に掲載し、解説記事と池上町のルポを社会面で展開。筆者の阿部岳編集委員は石橋記者の「メディアこそが差別をなくす闘いの先頭に立つべきだと考えて書いてきた」との発言を引用。「だからこそ石橋記者個人も狙われた。もし石橋記者が敗訴すれば、差別的言動は差別というレッテルから逃れ、自由になり、再び爆発的に拡大するだろう」と警鐘を鳴らした。基地反対運動を標的にした沖縄ヘイトに対する問題意識に基づく報道で、裁判の行方の重要性を浮き彫りにした。
次回の口頭弁論は12月10日。石橋記者は「ヘイトが横行する現状はメディアが役割を果たしてこなかった結果だという思いがある。無罪判決を勝ち取り、差別を批判する報道の正しさを証明したい」と話している。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年10月29日
【映画の鏡】『ゆうやけ子どもクラブ!』 =今井潤
障害ある子の放課後支援
『ゆうやけ子どもクラブ!』
長回しカメラで成長を活写

この作品は2011年冤罪として無罪になった布川事件を扱った「ショージとタカオ」の井手洋子監督の最新作だ。
40年前の1978年、東京小平市にできた「ゆうやけ子どもクラブ」は障害のある子どもの放課後を支援する施設で、全国でも草分け的な存在である。
知的障害、発達障害、自閉症など小学生から高校生までの子どもたちが遊びや生活を通して成長していく姿をカメ?は丁寧にとらえていく。
積み木に夢中になって子どもたちの輪に入ることができないヒカリくん。音に敏感すぎるカンちゃんはずっと給湯室にこもっている。
小学5年のガクくんは散歩の途中指導員におんぶを要求した。ガクくんの年齢の子どもなら、普通はおんぶはしないだろうが、指導員は彼の要求を受け入れていた。夏の暑いさかりで、カメラはついていくのが精一杯。おんぶされたガクくんは単に甘えているのでなく、セミの声を聞き、風を感じていたのだ。長時間のおんぶを厭わない指導員、どれだけエネルギーがあるのか。
今全国に障害のある子どもの放課後活動の場は1・3千カ所、利用者は20万人にのぼる。2012年に「放課後デイサービス」という事業所が爆発的に増え、活動の質が問題になっている。
井手監督は「最初は子どもが自由すぎて困った。しかし子どもと一緒に飛んでいくんだといわれ、カメラマンに長回しを頼んだ。ドキュメンタリーを編集するときは発見があるんだが、今回は子どもの成長を感じた」と述べている。
上映は 東京:ポレポレ東中野 11月16日土〜3週間 毎日12時〜上映 横浜:ジャック&ベティ 11月30日土〜2週間 名古屋:シネマスコーレ 11月30日土〜2週間 毎日10時半〜上映 他全国順次上映
『ゆうやけ子どもクラブ!』
長回しカメラで成長を活写
この作品は2011年冤罪として無罪になった布川事件を扱った「ショージとタカオ」の井手洋子監督の最新作だ。
40年前の1978年、東京小平市にできた「ゆうやけ子どもクラブ」は障害のある子どもの放課後を支援する施設で、全国でも草分け的な存在である。
知的障害、発達障害、自閉症など小学生から高校生までの子どもたちが遊びや生活を通して成長していく姿をカメ?は丁寧にとらえていく。
積み木に夢中になって子どもたちの輪に入ることができないヒカリくん。音に敏感すぎるカンちゃんはずっと給湯室にこもっている。
小学5年のガクくんは散歩の途中指導員におんぶを要求した。ガクくんの年齢の子どもなら、普通はおんぶはしないだろうが、指導員は彼の要求を受け入れていた。夏の暑いさかりで、カメラはついていくのが精一杯。おんぶされたガクくんは単に甘えているのでなく、セミの声を聞き、風を感じていたのだ。長時間のおんぶを厭わない指導員、どれだけエネルギーがあるのか。
今全国に障害のある子どもの放課後活動の場は1・3千カ所、利用者は20万人にのぼる。2012年に「放課後デイサービス」という事業所が爆発的に増え、活動の質が問題になっている。
井手監督は「最初は子どもが自由すぎて困った。しかし子どもと一緒に飛んでいくんだといわれ、カメラマンに長回しを頼んだ。ドキュメンタリーを編集するときは発見があるんだが、今回は子どもの成長を感じた」と述べている。
上映は 東京:ポレポレ東中野 11月16日土〜3週間 毎日12時〜上映 横浜:ジャック&ベティ 11月30日土〜2週間 名古屋:シネマスコーレ 11月30日土〜2週間 毎日10時半〜上映 他全国順次上映
2019年10月28日
【植村東京控訴審】決定的「新証拠」提出 音声テープが「捏造」はウソ裏付け=神原元
経緯
91年に最初に名乗り出た従軍慰安婦・金学順さんの記事を書いたのは当時の朝日新聞・大阪社会部の植村隆記者であった。とりわけ97年頃から「慰安婦否定」歴史修正主義者の暗躍が強くなり当該記事を「捏造だ」とする攻撃が始まり、2014年1月「捏造」攻撃の先頭に立っていた西岡力氏のコメントが週刊文春の嫌韓特集に掲載されたことから「植村バッシング」が激しくなり、当時非常勤講師を務めていた大学には誹謗中傷のメールやファックスが殺到し、学生や植村氏の家族への危害を宣言する脅迫状も届いた。植村氏が自己の名誉を回復し家族の命を守るため、西岡力と文藝春秋社を相手取って東京地裁に訴訟を提起したのは2015年1月9日であった。
2019年6月26日、東京地裁(原克也裁判長)は、植村氏の請求を棄却する判決を下した。判決は植村氏が「金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事に記載しなかったという意味において、意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」、「義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」については真実相当性(そのように信じるにつき正当な理由があったこと)を認め、植村氏が「意図的に、金学順が女子挺身隊として日本軍によって戦場に強制連行されたとの、事実と異なる記事を書いたとの事実」については真実であると認める、極めて不当な判決であった。弁護団は直ちにこれに控訴した。
発見
ところで、控訴審段階にはいって、記事が捏造ではない、新たな、そして決定的な証拠が発見された。金学順氏の「証言テープ」である。
この証言テープは、1991年11月25日、植村氏が金学順氏に対する弁護団の聞き取りに立ち会った際、金学順氏の証言を録音したテープである。植村氏が執筆した同年12月25日付け記事の冒頭には「その証言テープを再現する」とあるが、そこにいう「証言テープ」が今回発見されたテープである。
「証言テープ」には「妓生に身売りされた」という証言がない。すなわち、記事に「金学順氏は妓生に身売りされた」との記載がないのは、金学順氏がそのように証言しなかったためなのである。一般社会通念から考えて、取材相手が話さなかった事実を記事に記載しなかったからといって、「捏造」(ないことをあるかのように偽って作ること)といえるはずがない。今回発見された新証拠が明らかにしたとおり、植村氏は事実を「捏造」して記事を書いた事実はなく、植村氏が「金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事に記載しなかった」とか、「義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」とかいうのは、いかなる意味においても事実に反している。
立証
弁護団は、上記「証言テープ」とともに、そもそも「妓生=売春婦」「売春婦=従軍慰安婦」等ということは歴史的事実に反し、したがって、仮に植村氏が妓生について記事に書かなかったとしても全く問題がないこと等を詳細に立証する予定である。
控訴審の裁判官が、これらの新証拠と主張に真摯に受け止め、事実と誠実に向き合うことが求められている。
神原元(かんばらはじめ)弁護士
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
91年に最初に名乗り出た従軍慰安婦・金学順さんの記事を書いたのは当時の朝日新聞・大阪社会部の植村隆記者であった。とりわけ97年頃から「慰安婦否定」歴史修正主義者の暗躍が強くなり当該記事を「捏造だ」とする攻撃が始まり、2014年1月「捏造」攻撃の先頭に立っていた西岡力氏のコメントが週刊文春の嫌韓特集に掲載されたことから「植村バッシング」が激しくなり、当時非常勤講師を務めていた大学には誹謗中傷のメールやファックスが殺到し、学生や植村氏の家族への危害を宣言する脅迫状も届いた。植村氏が自己の名誉を回復し家族の命を守るため、西岡力と文藝春秋社を相手取って東京地裁に訴訟を提起したのは2015年1月9日であった。
2019年6月26日、東京地裁(原克也裁判長)は、植村氏の請求を棄却する判決を下した。判決は植村氏が「金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事に記載しなかったという意味において、意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」、「義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」については真実相当性(そのように信じるにつき正当な理由があったこと)を認め、植村氏が「意図的に、金学順が女子挺身隊として日本軍によって戦場に強制連行されたとの、事実と異なる記事を書いたとの事実」については真実であると認める、極めて不当な判決であった。弁護団は直ちにこれに控訴した。
発見
ところで、控訴審段階にはいって、記事が捏造ではない、新たな、そして決定的な証拠が発見された。金学順氏の「証言テープ」である。
この証言テープは、1991年11月25日、植村氏が金学順氏に対する弁護団の聞き取りに立ち会った際、金学順氏の証言を録音したテープである。植村氏が執筆した同年12月25日付け記事の冒頭には「その証言テープを再現する」とあるが、そこにいう「証言テープ」が今回発見されたテープである。
「証言テープ」には「妓生に身売りされた」という証言がない。すなわち、記事に「金学順氏は妓生に身売りされた」との記載がないのは、金学順氏がそのように証言しなかったためなのである。一般社会通念から考えて、取材相手が話さなかった事実を記事に記載しなかったからといって、「捏造」(ないことをあるかのように偽って作ること)といえるはずがない。今回発見された新証拠が明らかにしたとおり、植村氏は事実を「捏造」して記事を書いた事実はなく、植村氏が「金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事に記載しなかった」とか、「義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」とかいうのは、いかなる意味においても事実に反している。
立証
弁護団は、上記「証言テープ」とともに、そもそも「妓生=売春婦」「売春婦=従軍慰安婦」等ということは歴史的事実に反し、したがって、仮に植村氏が妓生について記事に書かなかったとしても全く問題がないこと等を詳細に立証する予定である。
控訴審の裁判官が、これらの新証拠と主張に真摯に受け止め、事実と誠実に向き合うことが求められている。
神原元(かんばらはじめ)弁護士
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年10月27日
氾濫する嫌韓情報 不健全のバロメーター メディア間で批判起こらず 画一の内容 危険な道=李 洪千
2万165分。7月から9月10日まで、韓国を扱った放送時間の合計である。そのうち文在寅大統領に関しては1万399分放送された。徴用工は2669分、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)は、3614分放送された。韓国の者国法相任命を巡る国会の聴聞会報道は1649分だった。
韓国関連については6324件が放送された。文大統領に関するニュースは1955件であり、徴用工は659件、GSOMIAは739件、聴聞会は280件となる
偏った過剰報道
テレビで放送された時間だけを見ても韓国については、情報過剰の状態である。問題は放送時間の長さだけではなく、内容における偏りにある。ある民放の情報番組は、韓国で政治的スキャンダルとして政治的対立の原因になっている者法相関連のテーマに30分以上の時間を割り当てている。その内容を紹介すると、法相の親族を巡り法曹界が大混乱。親族の捜査状況、司法の分断が国民の分断へ飛び火、法相をめぐり国民が二分、文大統領の支持率は、対日姿勢の変化は?など細かく事件に関する情報を提供している。
これらの放送内容の大部分は韓国の保守的立場をそのまま引用しているおり、イデオロギー的バランスが取れていない。30分も放送するなら反対の立場も紹介できる時間はあったはずなのに、放送内容やコメンテーターの発言から反対の言い分が紹介されることはなかった。
また、引用されている韓国のメディアは朝鮮日報や中央日報のような保守紙一色である。これらの新聞は文政権に批判的な立場を取っている。特に者法相の任命を巡る一連の流れを紹介する情報はありすぎている。
クリッピングサービスELNETで検索してみると7月1日から10月17日までに「者国」では1257件が検索された。「文在寅」で検索すると4802件が検出される。
他に類例がない
隣国について関心が多いのは当然のことであろう。関心の過剰はメディアの信頼を損なうことになる。例えば8月27日に行われたTBSのゴゴスマでの武田邦彦中部大教授の発言は、メディアの社会的責任が問われることとなった。彼は生放送で日本人女性が韓国人の男性に暴行を受けた事件に関し「これは日本男子も韓国女性が入って来たら暴行せにゃいかんやかどね」と発言した。
「韓国なんでいらない」という特集を組んだ週刊ポスト(9月13日号)はメディアの役割を自ら否定するに等しい内容だ。
特定の国を軽蔑し、嫌悪感を煽る情報が容認されることは、世界で類を見ることはない。嫌韓情報が容認されることは、日本のメディアと社会が健全ではないことを示すバロメーターである。
もっと危険なのは増悪を煽る報道・放送に対するメディア間の相互牽制・批判が働かないことだ。相互批判がないのは、メディア内容の画一性を助長し、社会を危険な道に導かせる。
今の状況はまさに危険を知らせるシグナルであることに早く気付くべきだ。
李 洪千(東京都市大学准教授)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
韓国関連については6324件が放送された。文大統領に関するニュースは1955件であり、徴用工は659件、GSOMIAは739件、聴聞会は280件となる
偏った過剰報道
テレビで放送された時間だけを見ても韓国については、情報過剰の状態である。問題は放送時間の長さだけではなく、内容における偏りにある。ある民放の情報番組は、韓国で政治的スキャンダルとして政治的対立の原因になっている者法相関連のテーマに30分以上の時間を割り当てている。その内容を紹介すると、法相の親族を巡り法曹界が大混乱。親族の捜査状況、司法の分断が国民の分断へ飛び火、法相をめぐり国民が二分、文大統領の支持率は、対日姿勢の変化は?など細かく事件に関する情報を提供している。
これらの放送内容の大部分は韓国の保守的立場をそのまま引用しているおり、イデオロギー的バランスが取れていない。30分も放送するなら反対の立場も紹介できる時間はあったはずなのに、放送内容やコメンテーターの発言から反対の言い分が紹介されることはなかった。
また、引用されている韓国のメディアは朝鮮日報や中央日報のような保守紙一色である。これらの新聞は文政権に批判的な立場を取っている。特に者法相の任命を巡る一連の流れを紹介する情報はありすぎている。
クリッピングサービスELNETで検索してみると7月1日から10月17日までに「者国」では1257件が検索された。「文在寅」で検索すると4802件が検出される。
他に類例がない
隣国について関心が多いのは当然のことであろう。関心の過剰はメディアの信頼を損なうことになる。例えば8月27日に行われたTBSのゴゴスマでの武田邦彦中部大教授の発言は、メディアの社会的責任が問われることとなった。彼は生放送で日本人女性が韓国人の男性に暴行を受けた事件に関し「これは日本男子も韓国女性が入って来たら暴行せにゃいかんやかどね」と発言した。
「韓国なんでいらない」という特集を組んだ週刊ポスト(9月13日号)はメディアの役割を自ら否定するに等しい内容だ。
特定の国を軽蔑し、嫌悪感を煽る情報が容認されることは、世界で類を見ることはない。嫌韓情報が容認されることは、日本のメディアと社会が健全ではないことを示すバロメーターである。
もっと危険なのは増悪を煽る報道・放送に対するメディア間の相互牽制・批判が働かないことだ。相互批判がないのは、メディア内容の画一性を助長し、社会を危険な道に導かせる。
今の状況はまさに危険を知らせるシグナルであることに早く気付くべきだ。
李 洪千(東京都市大学准教授)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
【今週の風考計】10.27─<ビブリオバトル>で読みたくなった本
■秋の読書週間が始まった。「本の街」東京・神保町では、ブックフェスティバルや古本祭りなど、数多くのイベントが展開されている。その一つ<大学生によるビブリオバトル>の会場を訪問し、その様子を見学した。
■いま大学生の半分は、1日の読書時間ゼロ、読書習慣がないという。そうした中で大学生バトラー5人が、みんなに読んでほしい本を1冊取りあげ、いかに魅力的で読み甲斐があるかを、持ち時間5分でアピールする。会場からの質問タイムもあり、最後に40人ほどの観戦者が挙手をして「チャンプ本」を決める。
■それぞれ工夫しての説明を聞きながら、惹きつけられたのは、千葉大学4年生が推す坂口恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)だった。路上生活者の姿を克明に追ってきた著者が、衣食住もタダで手に入れ、生活する方法を克明に描いていることを、大学生の若い視点からとらえて、とつとつと述べる。その語り口がまたいい。
■多くの支持を得て優勝した。読みたくなって、後で調べたら、刊行されたのは9年前の本。彼はどこでこの本に出会ったのか。芦田愛菜『まなの本棚』(小学館)にある、「気づいたら出会ってしまう」本だったのだろう。ちなみに単行本は入手しがたいが、幸い角川文庫に収められている。
■もう一つのイベント<青空古本市>、秋晴れにも恵まれ、靖国通りに面して500メートルに及ぶ「本の回廊」は、歩くのが困難なほど大賑わい。すずらん通りでは本のワゴンセールのかたわら、焼き鳥・ビールなどの出店コーナーまである。
■さすがこの賑わいの中を、時間をかけて稀覯本や掘り出し本を探しまわる気力はなかったが、とにかく古本屋の意気込みや熱気が、ひしひしと伝わってくる。内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)を、思い浮かべた。イタリア・トスカーナ州のモンテレッジォという山村では、毎夏、本祭りが開かれている。そこからカゴいっぱいの本をかついで、イタリアじゅうを旅して本を商う人たちの足跡をたどる物語。
帰りに新刊だが、門井慶喜『定価のない本』(東京創元社)を買い、まずは神保町の古書業界の歩みなどをつかむことにした。(2019/10/27)
■いま大学生の半分は、1日の読書時間ゼロ、読書習慣がないという。そうした中で大学生バトラー5人が、みんなに読んでほしい本を1冊取りあげ、いかに魅力的で読み甲斐があるかを、持ち時間5分でアピールする。会場からの質問タイムもあり、最後に40人ほどの観戦者が挙手をして「チャンプ本」を決める。
■それぞれ工夫しての説明を聞きながら、惹きつけられたのは、千葉大学4年生が推す坂口恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)だった。路上生活者の姿を克明に追ってきた著者が、衣食住もタダで手に入れ、生活する方法を克明に描いていることを、大学生の若い視点からとらえて、とつとつと述べる。その語り口がまたいい。
■多くの支持を得て優勝した。読みたくなって、後で調べたら、刊行されたのは9年前の本。彼はどこでこの本に出会ったのか。芦田愛菜『まなの本棚』(小学館)にある、「気づいたら出会ってしまう」本だったのだろう。ちなみに単行本は入手しがたいが、幸い角川文庫に収められている。
■もう一つのイベント<青空古本市>、秋晴れにも恵まれ、靖国通りに面して500メートルに及ぶ「本の回廊」は、歩くのが困難なほど大賑わい。すずらん通りでは本のワゴンセールのかたわら、焼き鳥・ビールなどの出店コーナーまである。
■さすがこの賑わいの中を、時間をかけて稀覯本や掘り出し本を探しまわる気力はなかったが、とにかく古本屋の意気込みや熱気が、ひしひしと伝わってくる。内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)を、思い浮かべた。イタリア・トスカーナ州のモンテレッジォという山村では、毎夏、本祭りが開かれている。そこからカゴいっぱいの本をかついで、イタリアじゅうを旅して本を商う人たちの足跡をたどる物語。
帰りに新刊だが、門井慶喜『定価のない本』(東京創元社)を買い、まずは神保町の古書業界の歩みなどをつかむことにした。(2019/10/27)
2019年10月26日
【かんぽ不正報道】 郵政圧力に屈したNHK経営委 続編制作の現場無視の罪は深く思い 石原経営委委員長は辞任を=戸崎賢二
NHK経営委員会が会長に「厳重注意」したことが報じられて以来、驚くべき事実が次々に明らかになっている。
18年4月24日の「クローズアップ現代+」「郵便局が保険の押し売り!?」に対して郵政グループから執拗な抗議があり、NHKは8月10日に予定していた「続編」の放送を「延期」した。その間、NHK幹部が「会長は番組制作に関与しない」と説明したのに対し、郵政側はNHKのガバナンス(統治)の検証を求める文書を経営委員会に送り、経営委員会はこれを受け入れて会長に厳重注意処分を行った。
放送中止事件だ
われわれはいったい何を目撃しているのだろうか。
NHKの自律を揺るがす経営委の対応は重大だったが、その一方、筆者の直感は、放送史上数多い「放送中止・打ち切り事件」に新しいケースが一つ加わった、というものだった。再びかんぽ不正問題を「クロ現」が取り上げたのは1年3カ月後の今年7月である。これを「延期」の末の「続編」とは言えない。昨年8月の「延期」は事実上「中止」というべきではないか。
「続編」放送予定直前、郵政側が取材拒否を通告した。これが「取材が尽せたかどうか判断する要素になった」と理事の一人が説明したとされる(毎日新聞10月4日付)。企業犯罪を追及する報道で、その企業が取材拒否をしたからといって放送を断念するのか、という話である。現場は続編中止に納得していなかったはずだ。
日放労放送系列(放送現場の組合員で構成される支部)は、今年9月末の交渉で「昨年秋、現場が納得していない点を問い質した」とし、「制作現場を無視した動きが番組に影響を与えていたとすれば憤りを感じる」と述べたと聞く。
社会で起こっている事実を取材し、現場が番組やニュースに結実させていくことは、報道機関を成立させる基本の営みである。NHKが郵政グループの圧力に屈してこれを毀損した罪は深く重い。
見識欠く経営委
NHKが郵政に「番組制作に会長は関与しない」と説明したのは、むしろ実態を正確に反映していた。誤りとまでは言えない。補足説明すれば済むようなことだった。
これをとらえて郵政側が経営委に要求した「ガバナンスの検証」は、番組に対する会長以下の「統治」を強めるよう事実上要求したものと言ってよい。
これが番組への別の手段による抗議だったことは明白で、かんぽ不正を告発するような「困った番組が出ないように監督せよ」というのが真意だろう。
しかし、経営委はこれを受け入れ、郵政側への説明が不十分だとして会長に注意し、郵政側に謝罪させた。番組制作の自主自律というNHKの最高の倫理にたいして大きく見識を欠く行為というべきである。あきれるほかない。「厳重注意」の時期は最初の放送から半年経っている。それまで取材を継続してきたなら、その頃でも「続編」は簡単に放送できたはずである。被害の拡大も防げたかもしれない。しかし、会長が経営委から注意されたような状況では「かんぽ不正」の放送などできなかったと思われる。
署名運動始まる
放送法は第3条で、「番組は何人からも干渉、規律されることがない」と定め、経営委員会に3条に抵触する行為を禁じている(第32条)、事実の流れからみて、経営委員会の行為は番組制作過程への実質的干渉というべきで、法に違反する疑いがきわめて強い。
われわれは安倍総理が任命した経営委員会がいかなるものか、改めて認識することになった。この経営委が間もなく次期会長を選ぼうとしている。いま関西の視聴者団体の呼びかけで、石原進経営委員長の辞任を求める署名運動が始まっている。何としてもこの運動を成功させなければならない。
戸崎賢二(元NHKディレクター)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
18年4月24日の「クローズアップ現代+」「郵便局が保険の押し売り!?」に対して郵政グループから執拗な抗議があり、NHKは8月10日に予定していた「続編」の放送を「延期」した。その間、NHK幹部が「会長は番組制作に関与しない」と説明したのに対し、郵政側はNHKのガバナンス(統治)の検証を求める文書を経営委員会に送り、経営委員会はこれを受け入れて会長に厳重注意処分を行った。
放送中止事件だ
われわれはいったい何を目撃しているのだろうか。
NHKの自律を揺るがす経営委の対応は重大だったが、その一方、筆者の直感は、放送史上数多い「放送中止・打ち切り事件」に新しいケースが一つ加わった、というものだった。再びかんぽ不正問題を「クロ現」が取り上げたのは1年3カ月後の今年7月である。これを「延期」の末の「続編」とは言えない。昨年8月の「延期」は事実上「中止」というべきではないか。
「続編」放送予定直前、郵政側が取材拒否を通告した。これが「取材が尽せたかどうか判断する要素になった」と理事の一人が説明したとされる(毎日新聞10月4日付)。企業犯罪を追及する報道で、その企業が取材拒否をしたからといって放送を断念するのか、という話である。現場は続編中止に納得していなかったはずだ。
日放労放送系列(放送現場の組合員で構成される支部)は、今年9月末の交渉で「昨年秋、現場が納得していない点を問い質した」とし、「制作現場を無視した動きが番組に影響を与えていたとすれば憤りを感じる」と述べたと聞く。
社会で起こっている事実を取材し、現場が番組やニュースに結実させていくことは、報道機関を成立させる基本の営みである。NHKが郵政グループの圧力に屈してこれを毀損した罪は深く重い。
見識欠く経営委
NHKが郵政に「番組制作に会長は関与しない」と説明したのは、むしろ実態を正確に反映していた。誤りとまでは言えない。補足説明すれば済むようなことだった。
これをとらえて郵政側が経営委に要求した「ガバナンスの検証」は、番組に対する会長以下の「統治」を強めるよう事実上要求したものと言ってよい。
これが番組への別の手段による抗議だったことは明白で、かんぽ不正を告発するような「困った番組が出ないように監督せよ」というのが真意だろう。
しかし、経営委はこれを受け入れ、郵政側への説明が不十分だとして会長に注意し、郵政側に謝罪させた。番組制作の自主自律というNHKの最高の倫理にたいして大きく見識を欠く行為というべきである。あきれるほかない。「厳重注意」の時期は最初の放送から半年経っている。それまで取材を継続してきたなら、その頃でも「続編」は簡単に放送できたはずである。被害の拡大も防げたかもしれない。しかし、会長が経営委から注意されたような状況では「かんぽ不正」の放送などできなかったと思われる。
署名運動始まる
放送法は第3条で、「番組は何人からも干渉、規律されることがない」と定め、経営委員会に3条に抵触する行為を禁じている(第32条)、事実の流れからみて、経営委員会の行為は番組制作過程への実質的干渉というべきで、法に違反する疑いがきわめて強い。
われわれは安倍総理が任命した経営委員会がいかなるものか、改めて認識することになった。この経営委が間もなく次期会長を選ぼうとしている。いま関西の視聴者団体の呼びかけで、石原進経営委員長の辞任を求める署名運動が始まっている。何としてもこの運動を成功させなければならない。
戸崎賢二(元NHKディレクター)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
2019年10月25日
不自由展「検閲」の爪痕 なお残る歴史認識、女性蔑視、民族差別… 公権力介入で芸術の力失う=古川美佳
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の一つ「表現の不自由展・その後」(以下、「不自由展」)が、脅迫やテロ予告を含む抗議(電凸)によって開催3日目で中止となるも、66日ぶりに全面再開、そして10月14日会期を終えた。入場者数は過去最高の65万人を記録したが、それは皮肉にもこの国の「表現の不自由さ」があらわになって、人びとの関心を呼んだからであろう。
ふりかえれば、「不自由展」中止後直ちに識者やジャーナリスト、市民らから抗議の声明や署名がわき起こり、参加アーティストたちのステートメントやボイコットも生まれた。さらに、再開を求める連日の市民運動、アーティストたちによる対話の試み「Re Freedom」、そして何より「不自由展」実行委員会による「仮処分」申し立てが、「検証委員会」まで立ち上げた大村秀章知事と津田大介芸術監督が主張する「リスク管理」とまがりなりにもかみ合って、一時中止を復活させたといえよう。
とはいえ、抽選による観客制限や荷物検査、撮影禁止等条件付き再開、文化庁によるトリエンナーレへの補助金不交付や河村たかし名古屋市長による不自由展再開抗議の座り込み等、公権力と文化行政の関係は疑問視されたままだ。
表現のタブー暗示
「不自由展」を中止に追い込んだ批判や脅迫の標的となったのが日本軍「慰安婦」問題を表した〈平和の少女像〉(以下、〈少女像〉)と大浦信行の映像作品〈遠近を抱えて PartU〉だ。この事件がメディアで報じられるたびに〈少女像〉はたびたびTV画面に登場した。しかし大浦の作品は、「昭和天皇の肖像を燃やした」としてSNS上で作者の意図とはかけ離れた言説となって独り歩きし、作品そのものの画像や図版が取り上げられることはなかった。これまでも「反日」の象徴とばかり喧伝されてきた〈少女像〉の露出と、隠ぺいされる天皇の肖像という二つのアンビバレントは、令和の時代の「表現のタブー」を暗示している。
ところで、〈少女像〉の制作者キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻は、1970~80年代韓国の民主化運動と呼応して生まれた民衆美術の作家だ。植民地、南北分断、独裁政権と続く歴史の激動にあって、民衆美術家たちは表現することで社会変革を試み、弾圧された。
今回の「不自由展」をめぐっては、「芸術かプロパガンダか?」などの議論が上がった。
だが、逼迫した政治状況を強いられてきた韓国では、「政治と美術はともにある」。〈少女像〉もこうした文脈で生まれ、若い世代にとっては今やMeToo運動の先駆けとして女性の人権を象徴するアイコンとなっている。「反日」のプロパガンダだと見なしたいのは、見る側の欲望ではないか。
核心問題はここだ
現代社会を反映する優れた作品が数多く散見された今回のトリエンナーレの中でも、少女像と天皇の肖像から問題の核心が透かし見えてくる。すなわち、表現の自由を脅かした「検閲」の背後にあるのは、天皇や日本軍「慰安婦」、徴用工や沖縄米軍基地等をめぐる歴史認識、女性蔑視、民族差別問題なのである。
8月2日の菅義偉官房長官の補助金交付に関わる発言、その後の文化庁の補助金不交付こそ、これらの問題に対する政府公権力の政治的イデオロギーのあらわれである。近隣アジア諸国との記憶闘争、そしていまなお日本人を巣食う「天皇タブー」に自覚的にならない限り、私たちは権力の奴隷と化し、国家を内破する芸術の力を失うことになるだろう。トリエンナーレは終わってなどいないのだ。
古川美佳(朝鮮美術文化研究者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
ふりかえれば、「不自由展」中止後直ちに識者やジャーナリスト、市民らから抗議の声明や署名がわき起こり、参加アーティストたちのステートメントやボイコットも生まれた。さらに、再開を求める連日の市民運動、アーティストたちによる対話の試み「Re Freedom」、そして何より「不自由展」実行委員会による「仮処分」申し立てが、「検証委員会」まで立ち上げた大村秀章知事と津田大介芸術監督が主張する「リスク管理」とまがりなりにもかみ合って、一時中止を復活させたといえよう。
とはいえ、抽選による観客制限や荷物検査、撮影禁止等条件付き再開、文化庁によるトリエンナーレへの補助金不交付や河村たかし名古屋市長による不自由展再開抗議の座り込み等、公権力と文化行政の関係は疑問視されたままだ。
表現のタブー暗示
「不自由展」を中止に追い込んだ批判や脅迫の標的となったのが日本軍「慰安婦」問題を表した〈平和の少女像〉(以下、〈少女像〉)と大浦信行の映像作品〈遠近を抱えて PartU〉だ。この事件がメディアで報じられるたびに〈少女像〉はたびたびTV画面に登場した。しかし大浦の作品は、「昭和天皇の肖像を燃やした」としてSNS上で作者の意図とはかけ離れた言説となって独り歩きし、作品そのものの画像や図版が取り上げられることはなかった。これまでも「反日」の象徴とばかり喧伝されてきた〈少女像〉の露出と、隠ぺいされる天皇の肖像という二つのアンビバレントは、令和の時代の「表現のタブー」を暗示している。
ところで、〈少女像〉の制作者キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻は、1970~80年代韓国の民主化運動と呼応して生まれた民衆美術の作家だ。植民地、南北分断、独裁政権と続く歴史の激動にあって、民衆美術家たちは表現することで社会変革を試み、弾圧された。
今回の「不自由展」をめぐっては、「芸術かプロパガンダか?」などの議論が上がった。
だが、逼迫した政治状況を強いられてきた韓国では、「政治と美術はともにある」。〈少女像〉もこうした文脈で生まれ、若い世代にとっては今やMeToo運動の先駆けとして女性の人権を象徴するアイコンとなっている。「反日」のプロパガンダだと見なしたいのは、見る側の欲望ではないか。
核心問題はここだ
現代社会を反映する優れた作品が数多く散見された今回のトリエンナーレの中でも、少女像と天皇の肖像から問題の核心が透かし見えてくる。すなわち、表現の自由を脅かした「検閲」の背後にあるのは、天皇や日本軍「慰安婦」、徴用工や沖縄米軍基地等をめぐる歴史認識、女性蔑視、民族差別問題なのである。
8月2日の菅義偉官房長官の補助金交付に関わる発言、その後の文化庁の補助金不交付こそ、これらの問題に対する政府公権力の政治的イデオロギーのあらわれである。近隣アジア諸国との記憶闘争、そしていまなお日本人を巣食う「天皇タブー」に自覚的にならない限り、私たちは権力の奴隷と化し、国家を内破する芸術の力を失うことになるだろう。トリエンナーレは終わってなどいないのだ。
古川美佳(朝鮮美術文化研究者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
2019年10月24日
【おすすめ本】田島泰彦『表現の自由とメディアの現代史 統制される言論とジャーナリズムから遠ざかるメディア』─浮かび上がるメディアの劣化と民主主義の衰退=丸山重威(ジャーナリズム研究者)
「この国の表現の自由はどこまで来ていて、これから先どこに向かうか。メディアはその任務と役割どう果たし、どこに進もうとするのか」―。
冒頭にある通り、研究者の立場で、常にメディアの実態に関わりながら発言を続けてきた著者の2007年以来の論考である。その時々、法律雑誌や「週刊金曜日」「世界」などの寄稿原稿を元に、編年的にたどり、問題点を指摘している。
時代をともにし、メディアのあるべき姿とジャーナリズムを考えてきた立場から言えば、まさに「継続は力」で、新しい状況が展開しているだけに、その都度、問題を落とさず記録することの意味は非常に大きい。
例えば、私たちも著者も一緒に取り組んだ個人情報保護法の問題は、その後マイナンバー制度が生まれ、最近では企業が就活生の個人情報を材料に、リクナビの閲覧履歴などで人工知能による辞退率が取得される仕組みが生まれ、厚労省が「指導」した。
表題の「表現の自由」は、「表現の不自由展」の中止が大問題になっている。こうした「現在史」は過去の問題ではなく、「今の問題」そのものだ。
この間、露骨に進んだのが、メディアの「劣化」であり、民主主義の「衰退」。本当に日本は大丈夫なのだろうか。
昔、メディアへの圧力や干渉について取り上げると、「知りたいのは、メディアへの『被害届』ではなく、どうしたら問題が起きないようにするかだ」と、よく言われた。
しかし、昔も今も、「特効薬」はないだろう。大事なのは、一つ一つの問題をごまかさないで、忘れないで、問題提起していくこと。それが、民主主義社会のジャーナリズムの基礎だろうと思う。
(日本評論社2200円)

冒頭にある通り、研究者の立場で、常にメディアの実態に関わりながら発言を続けてきた著者の2007年以来の論考である。その時々、法律雑誌や「週刊金曜日」「世界」などの寄稿原稿を元に、編年的にたどり、問題点を指摘している。
時代をともにし、メディアのあるべき姿とジャーナリズムを考えてきた立場から言えば、まさに「継続は力」で、新しい状況が展開しているだけに、その都度、問題を落とさず記録することの意味は非常に大きい。
例えば、私たちも著者も一緒に取り組んだ個人情報保護法の問題は、その後マイナンバー制度が生まれ、最近では企業が就活生の個人情報を材料に、リクナビの閲覧履歴などで人工知能による辞退率が取得される仕組みが生まれ、厚労省が「指導」した。
表題の「表現の自由」は、「表現の不自由展」の中止が大問題になっている。こうした「現在史」は過去の問題ではなく、「今の問題」そのものだ。
この間、露骨に進んだのが、メディアの「劣化」であり、民主主義の「衰退」。本当に日本は大丈夫なのだろうか。
昔、メディアへの圧力や干渉について取り上げると、「知りたいのは、メディアへの『被害届』ではなく、どうしたら問題が起きないようにするかだ」と、よく言われた。
しかし、昔も今も、「特効薬」はないだろう。大事なのは、一つ一つの問題をごまかさないで、忘れないで、問題提起していくこと。それが、民主主義社会のジャーナリズムの基礎だろうと思う。
(日本評論社2200円)
2019年10月20日
【今週の風考計】10.20─即位パレードの延期と日本各地の秋祭り
◆22日の天皇陛下即位に伴う「祝賀御列の儀」、いわゆる祝賀パレードを、11月10日午後3時からに延期した。台風19号の被害を踏まえ、国民感情に配慮したためだという。だが「即位礼正殿の儀」や「饗宴の儀」、さらに安倍首相夫妻が主催する晩餐会は、予定通り22日に行う。当日は今年限りの祝日とすることにも変更なし。はてさて、これで被災者の気持ちを汲んだことになるのだろうか。
◆IOCは「東京五輪」のマラソンや競歩種目を、札幌に変更して開催すると、びっくり仰天の宣告。戸惑いが広がる。同じように突然の「即位パレード」の変更にも、何かモヤモヤ感が残る。
◆政府は26年ぶりに政令恩赦を22日に実施する。罪種は絞らず、対象者は約55万人。被害に遭った人々の感情を配慮すれば、犯罪者を審査せずに一律に政令恩赦を実施する閣議決定に、批判の声が挙がる。
海外では恩赦は限りなく縮小され、かつ対象人物の名前や罪状、量刑などが公開されている。日本の恩赦の基準や運用のいい加減さは、いたずらに社会不安をもたらすだけだ。
◆さらに天皇「即位の礼」と結びつけて恩赦を行うことになれば、天皇は<国政に関する権能を有しない>という憲法第4条とのかかわりで、天皇の政治利用につながる大きな問題が出てくる。
◆毎年10月22日に開催される京都の「時代祭」が延期された。約2千人が各時代の衣装を着て京都市街を行列して歩く。京都に都が移されて1100年を記念し、1895(明治28)年から始まった。今年で124回を迎える。みな楽しみにしている平安神宮の例大祭である。
◆ところが今年は、天皇陛下即位に伴う儀式や即位パレードがあるため、異例だが「時代祭」の開催を26日に延期した。その配慮も実らず、即位パレードそのものが延期されてしまった。「覆水盆に返らず」。来年は元に戻そう。
◆京都三大奇祭の一つ「鞍馬の火祭」も、22日に開催。だがこれは変更なしのようだ。家の前に積まれた松明にかがり火が灯され、火のついた松明を掲げ「サイレイ、サイリョウ」の掛け声とともに町内を練り歩く。
◆こうして20日以降は日本列島各地が、お祭りでにぎわう。とりわけ京都では市街いたるところで祭りのオンパレード。20日だけでも恵比須神社の「ゑびす講」をはじめ斎宮行列、繁昌大国秋祭、笠懸神事、天門祭、餅祭りと軒並み。
◆神無月には日本中の神様が出雲大社に行ってしまう。その間、留守番をする「ゑびす様」に感謝し、五穀豊穣、商売繁盛などを祈願する。右手で釣竿を持ち、左手には大きな鯛を持つ「えべっさん」は、日本各地で人々から敬われ、親しまれる日本の土着の神様だ。(2019/10/20)
◆IOCは「東京五輪」のマラソンや競歩種目を、札幌に変更して開催すると、びっくり仰天の宣告。戸惑いが広がる。同じように突然の「即位パレード」の変更にも、何かモヤモヤ感が残る。
◆政府は26年ぶりに政令恩赦を22日に実施する。罪種は絞らず、対象者は約55万人。被害に遭った人々の感情を配慮すれば、犯罪者を審査せずに一律に政令恩赦を実施する閣議決定に、批判の声が挙がる。
海外では恩赦は限りなく縮小され、かつ対象人物の名前や罪状、量刑などが公開されている。日本の恩赦の基準や運用のいい加減さは、いたずらに社会不安をもたらすだけだ。
◆さらに天皇「即位の礼」と結びつけて恩赦を行うことになれば、天皇は<国政に関する権能を有しない>という憲法第4条とのかかわりで、天皇の政治利用につながる大きな問題が出てくる。
◆毎年10月22日に開催される京都の「時代祭」が延期された。約2千人が各時代の衣装を着て京都市街を行列して歩く。京都に都が移されて1100年を記念し、1895(明治28)年から始まった。今年で124回を迎える。みな楽しみにしている平安神宮の例大祭である。
◆ところが今年は、天皇陛下即位に伴う儀式や即位パレードがあるため、異例だが「時代祭」の開催を26日に延期した。その配慮も実らず、即位パレードそのものが延期されてしまった。「覆水盆に返らず」。来年は元に戻そう。
◆京都三大奇祭の一つ「鞍馬の火祭」も、22日に開催。だがこれは変更なしのようだ。家の前に積まれた松明にかがり火が灯され、火のついた松明を掲げ「サイレイ、サイリョウ」の掛け声とともに町内を練り歩く。
◆こうして20日以降は日本列島各地が、お祭りでにぎわう。とりわけ京都では市街いたるところで祭りのオンパレード。20日だけでも恵比須神社の「ゑびす講」をはじめ斎宮行列、繁昌大国秋祭、笠懸神事、天門祭、餅祭りと軒並み。
◆神無月には日本中の神様が出雲大社に行ってしまう。その間、留守番をする「ゑびす様」に感謝し、五穀豊穣、商売繁盛などを祈願する。右手で釣竿を持ち、左手には大きな鯛を持つ「えべっさん」は、日本各地で人々から敬われ、親しまれる日本の土着の神様だ。(2019/10/20)
2019年10月13日
【JCJ賞講評】 受賞逸した9作品を紹介 重大問題に切り込む=伊藤洋子選考委員
本欄では最終選考に残った14件中受賞した5作品を除く9作品を紹介する。
「奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態」花伝社 巣内尚子
ベトナム政府の労働力輸出政策と日本政府の労働力輸入政策が生じた「技能実習制度」により、多額の借金と長時間・低賃金に縛られる奴隷労働を生みだした。その実態を140人余りの人々の声からあぶり出した労作である。
「未和 NHK記者はなぜ過労死したのか」岩波書店 尾崎孝史
31歳で急死したNHK報道記者の事件は過労死認定されるが、NHKは死後4年間隠蔽する。取材から浮かび上がるのは巨大組織の理不尽さであり、安倍晋三政権による働き方改革の空しい実態である。
「紛争地の看護師」小学館 白川優子
「国境なき医師団」の一員として紛争地へ派遣され、被害者たちが抱える怒りを「私がそれを伝えなければ」と、自らの経験を記録。一時はジャーナリストを志した筆者は、見事なルポでその役割を果たした。
「安保法制下で進む! 先制攻撃できる自衛隊」あけび書房 半田滋
戦争ができる国固めを推し進めてきた安倍政権の狙いが活写される。中核となる18大綱が導く日本とは「政治主導による軍事国家という未体験ゾーンに突入しつつある」ものと鋭く分かりやすい。
「捜査当局の顧客情報取得」を巡る一連の報道 共同通信社社会部取材班 共同通信社
個人情報を網羅するポイントカードやクレジットカード情報が警察や検察の「捜査関係事項照会」なる内部手続きで日常的に取得され、捜査にフル活用されているという一連の報道は「監視社会化」への恐るべき警鐘である。
「公文書クライス〜ずさんな公文書管理の追求キャンペーン」毎日新聞社
公用メールが官僚の恣意的判断で破棄され、メモをとるな、議事録を残すな、首相の面談記録は「不存在」とするなど公文書の扱いに独自の取材を重ねる中で、秘密国家への横行が明らかになっていく。
「行ってみれば戦場〜葬られたミサイル攻撃」名古屋テレビ放送
湾岸戦争直前、米政権から自衛隊派遣要請を受けた日本政府は、民間貨物船を中東派遣船に。現地は戦場そのもの、実情を綴った船長報告書は無期限極秘文書とされた。この文書の発見をきっかけとして取り組んだ本作は当面する課題を突き付ける。
「法と恨(はん) 朝鮮女子挺身隊の戦後」北日本放送
戦時中軍需工場だった富山市の不二越は朝鮮からの少女たちが働いていた。過酷な労働を経て、帰国しても誤解と偏見に悩まされ苦しみ続けてきた訴えに“もう一つの徴用工問題”が浮かび上がる。
首相官邸の情報隠しと取材拒否、記者攻撃に対する毅然としたジャーナリズム活動と、それを支えた新聞社 受賞対象:望月衣塑子記者と東京新聞編集局
東京新聞の望月記者の取材活動はいまや誰もが認めるところだが、ご本人が取材班の一員である「税を追う」キャンペーンを大賞として顕彰することにより、記者活動の成果を讃えることとした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
「奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態」花伝社 巣内尚子
ベトナム政府の労働力輸出政策と日本政府の労働力輸入政策が生じた「技能実習制度」により、多額の借金と長時間・低賃金に縛られる奴隷労働を生みだした。その実態を140人余りの人々の声からあぶり出した労作である。
「未和 NHK記者はなぜ過労死したのか」岩波書店 尾崎孝史
31歳で急死したNHK報道記者の事件は過労死認定されるが、NHKは死後4年間隠蔽する。取材から浮かび上がるのは巨大組織の理不尽さであり、安倍晋三政権による働き方改革の空しい実態である。
「紛争地の看護師」小学館 白川優子
「国境なき医師団」の一員として紛争地へ派遣され、被害者たちが抱える怒りを「私がそれを伝えなければ」と、自らの経験を記録。一時はジャーナリストを志した筆者は、見事なルポでその役割を果たした。
「安保法制下で進む! 先制攻撃できる自衛隊」あけび書房 半田滋
戦争ができる国固めを推し進めてきた安倍政権の狙いが活写される。中核となる18大綱が導く日本とは「政治主導による軍事国家という未体験ゾーンに突入しつつある」ものと鋭く分かりやすい。
「捜査当局の顧客情報取得」を巡る一連の報道 共同通信社社会部取材班 共同通信社
個人情報を網羅するポイントカードやクレジットカード情報が警察や検察の「捜査関係事項照会」なる内部手続きで日常的に取得され、捜査にフル活用されているという一連の報道は「監視社会化」への恐るべき警鐘である。
「公文書クライス〜ずさんな公文書管理の追求キャンペーン」毎日新聞社
公用メールが官僚の恣意的判断で破棄され、メモをとるな、議事録を残すな、首相の面談記録は「不存在」とするなど公文書の扱いに独自の取材を重ねる中で、秘密国家への横行が明らかになっていく。
「行ってみれば戦場〜葬られたミサイル攻撃」名古屋テレビ放送
湾岸戦争直前、米政権から自衛隊派遣要請を受けた日本政府は、民間貨物船を中東派遣船に。現地は戦場そのもの、実情を綴った船長報告書は無期限極秘文書とされた。この文書の発見をきっかけとして取り組んだ本作は当面する課題を突き付ける。
「法と恨(はん) 朝鮮女子挺身隊の戦後」北日本放送
戦時中軍需工場だった富山市の不二越は朝鮮からの少女たちが働いていた。過酷な労働を経て、帰国しても誤解と偏見に悩まされ苦しみ続けてきた訴えに“もう一つの徴用工問題”が浮かび上がる。
首相官邸の情報隠しと取材拒否、記者攻撃に対する毅然としたジャーナリズム活動と、それを支えた新聞社 受賞対象:望月衣塑子記者と東京新聞編集局
東京新聞の望月記者の取材活動はいまや誰もが認めるところだが、ご本人が取材班の一員である「税を追う」キャンペーンを大賞として顕彰することにより、記者活動の成果を讃えることとした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
【今週の風考計】10.13─台風19号から気候レジリエンスへ!
●太平洋を北上した台風19号は、第2の「狩野川台風」を思わせるほど、強い勢力を保ったまま上陸した。伊豆半島・天城山から関東山地を経て越後山脈へと、24時間で800ミリという観測史上初の大雨を長時間降らせ、河川の氾濫や土砂崩れなど、広範囲にわたる大災害をもたらした。
●河川の氾濫は、東京の多摩川から長野の千曲川、栃木の秋山川、新潟の阿賀野川、福島・宮城の阿武隈川など、東日本全体に及ぶ。テレビから流れる映像を見るにつけ、被災に遭遇した住民の皆さんの苦しさは、いかばかりかと心が痛む。
●1都6県に大雨特別警報、11都県460万人以上に避難指示・勧告が出された。停電は関東-東北で約42万軒。台風が過ぎ去っても、災害からの復旧には、膨大な労力と時間が必要になる。国からのバックアップは不可欠だ。早急に対策を講じてほしい。
●台風一過の今日13日は、国際防災の日でもある。1989年より毎年10月の第2水曜日に定められていたが、2009年の国連総会で10月13日に変更された。自然災害の軽減に向け世界の国々が防災行動を強める国際デーである。国連事務総長のアントニオ・グテーレスさんが、11日にメッセージを寄せた。
●<私は気候緊急事態が脆弱なコミュニティーに及ぼす壊滅的で人生を一変させるような影響を目の当たりにしてきました。災害は恐ろしい苦痛を与え、何十年もかけて積み上げられてきた開発の成果を一瞬にして無にする恐れがあります。(中略) 今こそ気候レジリエンス(気候変動への対応能力)への投資が、雇用を創出し、人間の苦難を緩和・予防できると確信します。私は世界に対し、2020年までに投資を増大させるとともに、防災を「行動の10年」の中心に据えるよう呼びかけます>
●日本でも、来月9日から12日まで、「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台2019」が開催される。(2019/10/13)
●河川の氾濫は、東京の多摩川から長野の千曲川、栃木の秋山川、新潟の阿賀野川、福島・宮城の阿武隈川など、東日本全体に及ぶ。テレビから流れる映像を見るにつけ、被災に遭遇した住民の皆さんの苦しさは、いかばかりかと心が痛む。
●1都6県に大雨特別警報、11都県460万人以上に避難指示・勧告が出された。停電は関東-東北で約42万軒。台風が過ぎ去っても、災害からの復旧には、膨大な労力と時間が必要になる。国からのバックアップは不可欠だ。早急に対策を講じてほしい。
●台風一過の今日13日は、国際防災の日でもある。1989年より毎年10月の第2水曜日に定められていたが、2009年の国連総会で10月13日に変更された。自然災害の軽減に向け世界の国々が防災行動を強める国際デーである。国連事務総長のアントニオ・グテーレスさんが、11日にメッセージを寄せた。
●<私は気候緊急事態が脆弱なコミュニティーに及ぼす壊滅的で人生を一変させるような影響を目の当たりにしてきました。災害は恐ろしい苦痛を与え、何十年もかけて積み上げられてきた開発の成果を一瞬にして無にする恐れがあります。(中略) 今こそ気候レジリエンス(気候変動への対応能力)への投資が、雇用を創出し、人間の苦難を緩和・予防できると確信します。私は世界に対し、2020年までに投資を増大させるとともに、防災を「行動の10年」の中心に据えるよう呼びかけます>
●日本でも、来月9日から12日まで、「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台2019」が開催される。(2019/10/13)
2019年10月12日
【JCJ賞受賞者挨拶】 福島原発事故直後の医師らの奔走と苦悩 NHK 鍋島塑峰ディレクター 教訓を生かせるか見たい
受賞にあたり、取材に応じて下さった医療関係者、諸先輩の顔が浮かび、番組作りに一緒に携わってくださった方々に感謝します。
私はディレクターとして2015年から3年間、福島局に勤務しました。福島で自分は何をテーマにし、取材するのか。その時、原発事故で避難する際、入院していた方々のうち亡くなった方が多くいることを知りました。事故直後に住民がどのように避難し、どうして命を救えなかったのか、国の被爆医療態勢はどうだったのか。それを最前線に飛び込んでいった医療者の目線で描こうと思いました。そして企画から放送まで3年がかかりました。
現場に入った医師たちは鮮明に記憶していて、そこに体温を感じました。医師たちは学会でその体験を発表し、その中で泣かれる人もいたし、もっとできたのではないかと後悔の念を持つ人もいました。原子力安全神話の中で十分な準備はなく、そして自分のことではなく他人事だと思っていたのです。医師たちは、過去ではなく、今にも通じる問題としての認識を深め、国の医療態勢の充実を訴えています。
番組の伝え方としては、医師たちが現場でスマホなどで撮影した3000枚の映像を元に時系列で伝える方法を取りました。事故直後には大手メディアは避難し、現地の記録はあまり残っていません。これに対し医療者は直後の映像を残していて、それは、歴史的にも価値があります。3000枚の一枚一枚に、そこから匂いが立ち上るような・・・それぞれの医師たちの記憶がこめられている写真をもとに、同じ時間、どこで何が起きていたのか、いわば横串にすることで、立体的に番組化していきました。
国策としての原子力政策、国の責任は一体どこにあるのか。事故の教訓をどういかしていくのかを見続け、問い続けていきます。
10年、20年、50年後にも、原発事故の直後に医療の最前線で何が起きていたのか、教訓としてくみ取れるような記録を残していきたいという思いで番組を作りましたJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
私はディレクターとして2015年から3年間、福島局に勤務しました。福島で自分は何をテーマにし、取材するのか。その時、原発事故で避難する際、入院していた方々のうち亡くなった方が多くいることを知りました。事故直後に住民がどのように避難し、どうして命を救えなかったのか、国の被爆医療態勢はどうだったのか。それを最前線に飛び込んでいった医療者の目線で描こうと思いました。そして企画から放送まで3年がかかりました。
現場に入った医師たちは鮮明に記憶していて、そこに体温を感じました。医師たちは学会でその体験を発表し、その中で泣かれる人もいたし、もっとできたのではないかと後悔の念を持つ人もいました。原子力安全神話の中で十分な準備はなく、そして自分のことではなく他人事だと思っていたのです。医師たちは、過去ではなく、今にも通じる問題としての認識を深め、国の医療態勢の充実を訴えています。
番組の伝え方としては、医師たちが現場でスマホなどで撮影した3000枚の映像を元に時系列で伝える方法を取りました。事故直後には大手メディアは避難し、現地の記録はあまり残っていません。これに対し医療者は直後の映像を残していて、それは、歴史的にも価値があります。3000枚の一枚一枚に、そこから匂いが立ち上るような・・・それぞれの医師たちの記憶がこめられている写真をもとに、同じ時間、どこで何が起きていたのか、いわば横串にすることで、立体的に番組化していきました。
国策としての原子力政策、国の責任は一体どこにあるのか。事故の教訓をどういかしていくのかを見続け、問い続けていきます。
10年、20年、50年後にも、原発事故の直後に医療の最前線で何が起きていたのか、教訓としてくみ取れるような記録を残していきたいという思いで番組を作りましたJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
2019年10月11日
【JCJ賞受賞者挨拶】 「想画」と治安維持法にスポット 山形放送・伊藤清隆報道制作局長 児童文学者の教育を活写
2017年、「共謀罪法」が成立しました。戦前の治安維持法に似ていると言われます。
山形県の小学校で昭和初期、後の児童文学者国分一太郎が青年教師として想画と綴り方教育を実践しました。子供たちは貧困の中で生きる自分たちの暮らしを、豊かな表現力で描きました。
ところが、この教育が治安維持法に違反するとして、国分は逮捕、投獄され、有罪判決を受けました。私たちはこの事実に光を当てれば、治安維持法と共謀罪法の関係を伝えることが出来ると考え、番組作りを始めました。国分の教育実践をどう映像化するかが課題でした。「民放なのに、良くこんなテーマを選んだね」と言われましたが、何とか骨太の番組にしようと取り組みました。
私たちは、国分の教え子を訪ねて、取材しました。皆さんは90歳を超えていましたが、「素晴らしい先生に巡り合えた」と、国分の教育を昨日のことのように克明に記憶し、嬉しそうに語ってくれました。国分先生が突然教壇を追われことへの疑問を、今も胸に刻んでいます。
共謀罪成立をきっかけに始めた番組制作は、今思えばギリギリのタイミングだったと考えます。この番組を放送したからと言ってテーマが終わった訳ではありません。共謀罪がどう運用されるかを、見落としてはなりません。
ここプレスセンターは、ジャーナリズムの殿堂です。企画書では、忖度とか息苦しい時代の中で、伸び伸びと明るい表現の未来に向けて、ある歌を思いながら「釘を一本打ち込みたい」と書きました。その歌は、与謝野晶子の和歌です。「劫初(ごうしょ)より 造り営む 殿堂に 我も黄金の 釘ひとつ打つ」。
「劫初」とは、「人間の営みの初め」という意味です。これからも、2本、3本と、釘を打ち続けたいと考えています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
山形県の小学校で昭和初期、後の児童文学者国分一太郎が青年教師として想画と綴り方教育を実践しました。子供たちは貧困の中で生きる自分たちの暮らしを、豊かな表現力で描きました。
ところが、この教育が治安維持法に違反するとして、国分は逮捕、投獄され、有罪判決を受けました。私たちはこの事実に光を当てれば、治安維持法と共謀罪法の関係を伝えることが出来ると考え、番組作りを始めました。国分の教育実践をどう映像化するかが課題でした。「民放なのに、良くこんなテーマを選んだね」と言われましたが、何とか骨太の番組にしようと取り組みました。
私たちは、国分の教え子を訪ねて、取材しました。皆さんは90歳を超えていましたが、「素晴らしい先生に巡り合えた」と、国分の教育を昨日のことのように克明に記憶し、嬉しそうに語ってくれました。国分先生が突然教壇を追われことへの疑問を、今も胸に刻んでいます。
共謀罪成立をきっかけに始めた番組制作は、今思えばギリギリのタイミングだったと考えます。この番組を放送したからと言ってテーマが終わった訳ではありません。共謀罪がどう運用されるかを、見落としてはなりません。
ここプレスセンターは、ジャーナリズムの殿堂です。企画書では、忖度とか息苦しい時代の中で、伸び伸びと明るい表現の未来に向けて、ある歌を思いながら「釘を一本打ち込みたい」と書きました。その歌は、与謝野晶子の和歌です。「劫初(ごうしょ)より 造り営む 殿堂に 我も黄金の 釘ひとつ打つ」。
「劫初」とは、「人間の営みの初め」という意味です。これからも、2本、3本と、釘を打ち続けたいと考えています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号

