2020年10月24日

【おすすめ本】 山田朗『帝銀事件と日本の秘密戦』―事件捜査の裏で軍の「秘密戦」を隠蔽=菅原正伯 

 冤罪事件として知られる帝銀事件だが、では、12人もの銀行員たちを青酸化合物で毒殺した真犯人は誰だったのか。犯人の手際のよい毒薬の取り扱いや慣れた殺害のやり口から、捜査本部は旧軍関係者の関与を疑った。
  本書は、その捜査本部の全報告を克明に記録した警視庁捜査第一課・甲斐係長の膨大なメモ(甲斐手記)を整理・分析し、捜査過程を検証した。
 その結果、旧軍には陸軍を中心に毒物を扱う20以上の秘密戦を行う軍機関・部隊が存在し、戦時中、中国大陸で生きた人間(捕虜や住民)を細菌や毒物の実験材料にしていたこと等が、地を這う捜査で明らかとなる。
 だが警察の捜査は大きな壁に直面する。捜査と同時進行で、GHQと旧軍関係者の間で、秘密戦部隊の元隊員を戦犯にしないとの交換条件で、秘密戦の詳細データを米軍に提供する隠蔽工作が進められたからだった。
 隊員たちの口止め工作を先導したのは、秘密戦の総元締め・参謀本部の有末精三中将と七三一部隊の石井四郎部隊長。著者は捜査の焦点をそらす彼らの証言を歴史学者の目で冷静に指摘する。
 捜査が難航したもう一つの壁は、意外にも捜査陣の通常捜査の「盲点」だった。物証が少ないなか「年齢五〇歳前後」「白毛まじりの短髪」という目撃情報が、一人歩きし た。秘密戦の隊員にとって、「変装」は必須の技 術であり、年配者に化けるのは容易だった。これは著者独自の指摘。
 戦後史の深い闇を垣間見せる検証結果の内容だが、事件後、ほどなく日本は再軍備への逆コースに向かう。(新日本出版社2000円)
帝銀事件.jpg
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2020年10月23日

【スポーツ】 競技者に負担強いる国際大会強行に疑問=大野晃

 国際体操連盟が11月8日に東京で国際大会を開催するという。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で2020年東京五輪1年延期決定後、国内で初めての五輪競技の国際大会である。
  体操の強豪だが、感染が拡大した中国、ロシア、米国の代表が参加して日本代表と競い2000人までの観客を見込んでいる。
 外国代表は72時間以内のウイルス陰性証明書を持参し、入国時にも検査。入国後2週間の待機は免除されるが、公共交通機関を使わずにホテルと競技場の往復などに行動が制限され、毎日検査を受けるとしている。
 出入国制限している国からの入国を特例で認めるが、延期された東京五輪運営の試験とされていることが気になる。
 東京五輪開催の不安を表面的に消すための政治的色彩が強い。競技者の人体実験とまでは言わないが、強引に安全宣伝するのは、GOTOキャンペーンとどこか似ている。
 五輪開催へ向けて、政府や組織委員会の強引さが目立ち始めている。各国代表を検査漬けにして、五輪開催を強行する腹づもりなのだろうか。国際交流が制約されてトップ競技者が悩んでいるのは、世界中で全競技に共通しているが、安心、安全を犠牲にできない。
 五輪の意義は、世界の競技者が競技を通じて交流し、友好連帯を強めることで世界平和につなげることにある。
 開催国や都市の運営能力や競技力を誇示する場ではない。五輪の観衆が求めているのは、競技者の高い技能や仲間とともに競技に取り組む姿勢を目の当たりにして、人類の到達点や国際協調の重要性を再認識することだろう。
 焦らず、入念に、それらの条件を十分に整えることこそ、五輪開催都市の使命である。
 「アスリート・ファースト」を軽々しく口にして、競技者に負担を強いる強引な開催を目指すのは、感染拡大対策に動かずに、自助を強調する政治姿勢に通じる。厳しい監視が必要だろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年10月21日

【オンライン講演】 会見は記者の主戦場 南彰新聞労連委員長が語る=須貝道雄

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 「記者会見は現代の主戦場だ」――新聞労連の南彰委員長(朝日新聞記者=写真=)は8月23日、オンライン講演会「メディアは今、何が問題か」で首相・官房長官会見を取り上げ「政治家の言いっ放し、宣伝の場にしてはならない」と語った。
 政治取材では自宅への夜回りやオフレコ取材が重視され、報道側は「表の場」である記者会見に力を入れない傾向があった。南氏はその転換を訴えた。
政治家はツイッターなどのSNSやネットで市民に直接情報を発信し「やってる感」を演出するようになった。一方で記者会見の無力化、形骸化を狙っていると話した。
 実際に2017年以降、官房長官会見では「公務があるのであと1問」と官邸側が発し、質問制限が露骨になった。その結果、会見は長くても10分か15分で終わっている。
今年8月6日、広島市であった安倍晋三首相の会見では、質問を求めた朝日新聞記者に対し、官邸報道室の職員が「ダメだよ。終わり」と腕をつかんで妨害した。明らかな知る権利の侵害だった。
 記者会見がネット中継され、可視化される中で「記者は質問を通じて、市民の期待に応え、報道への信頼を勝ち取っていくことが大事。その意味で会見 は主戦場だ」と南氏は繰り返した。
官房長官会見は元々、時間制限無しがルールだったという。菅義偉官房長官のもとで制限が生まれた。「官房長官が代わったら、時間制限無しのルールに戻す必要がある」と呼び掛けた。
 「桜を見る会」をめぐり安倍首相への疑惑が深まった19年11月、報道各社の官邸キャップは首相と中華料理店で懇談をした。その後も総理番、ベテラン記者と懇談が続いた。世間からは「正式な会見を要求すべきだ」と批判の声があがった。
 南氏はこの事態を「官邸側の作戦勝ち」と見ている。懇談の日程は官邸側が設定する。「この時期に懇談をすればメディアを共犯者にできるし、メディア不信もかき立てることができる」と分析。報道側はその意図を見抜き、「作戦」に乗らず、記者会見を機能させていくことが大事だと強調。「会見を、ある意味で記者の怖さ≠伝えていく場にしていくことが重要だ」と語った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
 
  

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2020年10月20日

【お知らせ】被災から10年目―福島とつながるZoom交流会 11月7日(土) 午後2時から4時

  2011年3月の東日本大震災から9年7カ月が過ぎた。原発の炉心溶融という大事故は地域住民に甚大な被害を与えた。もう、あの素朴で美しい福島の農村は戻ってこないのだろうか。文明が破壊される様を目撃した私たちは何をどう考え、行動したらよいのか。様々な迷いと疑問が交錯する。
 その中で、被ばくした牛の命を断ってはならないと、一念発起した女性がいる。福島原発で危険な作業をする人々をずっと追いかけてきた新聞記者がいる。現場を知るお二人から率直なお話をうかがい、被災10年を間もなく迎える福島のこれからをともに考えていきたい。

お話をする方
谷さつきさん(ふるさとと心を守る友の会代表)
片山夏子さん(東京新聞・福島特別支局記者)

参加ご希望の方はPeatixを通じて参加費500円をお支払いください。
(1)http://ptix.at/Nf0V3Kをクリックする(2)チケットを申し込むをクリック。参加券の枚数を選ぶ=金額の確定(3)支払いに進む。初めてPeatixを利用する人はここでアカウントを作成。名前、メルアド、自分独自のパスワードを入力し、ログインする(4)次に移ると、カードかコンビニかなど、支払い手段の選択。支払いを終える(5)交流会のZoomの配信URLは前日11月6日にメールでご連絡

◎お二人の略歴
◆谷咲月(たに・さつき):静岡出身。津田塾大学卒業後、海外で国際紛争について学ぶ。東京で第1〜第3セクターの仕事を転々とする中、2011年4月旧警戒区域内の被災農家からの依頼を受け、福島へ。そのままだと荒れてしまう田畑に柵を作り、飼い主を探して放浪していた牛を誘導して入れ、草木を食べてもらうエコ草刈りを支援。2012年非営利一般社団法人ふるさとと心を守る友の会設立。
 2013年〜大熊町帰還困難区域内で、依頼のあった計8haの農地を牛力で回復・保全。2017年ふくしま復興塾第5期グランプリ、2018年日本トルコ文化交流会日本復興の光大賞受賞。2019年自給率100%を目指し、冬季の飼料(保存草)作りスタート。2020年もーもーガーデン那須オープン、耕作放棄地を解消。牛と作物の実証研究とIoT化を進め、災害にも強い「人・動物・その他自然」が共存共栄する里山モデルを構築中。

◆片山夏子(かたやま・なつこ):中日新聞東京本社(東京新聞)の福島特別支局の記者。大学卒業後、化粧品会社の営業、ニートを経て、埼玉新聞で主に埼玉県警を担当。出生前診断の連載「いのち生まれる時に」でファルマシア・アップジョン医学記事賞の特別賞受賞。中日新聞入社後、東京社会部遊軍や警視庁などを担当。特別報道部では修復腎(病気腎)移植など臓器移植問題や原発作業員の労災問題を取材。名古屋社会部の時に、東日本大震災が起きる。
 震災翌日から東京電力や原子力安全・保安院などを取材。同年8月から東京社会部原発班で、作業員の日常や収束作業、家族への思いなどを綴った「ふくしま作業員日誌」を連載中。同連載が2020年2月、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞を受賞。連載や9年間の福島第一の作業、国の動き、作業員一人一人の人間物語をまとめた書籍『ふくしま原発作業員日誌〜イチエフの真実、9年間の記録〜』(朝日新聞出版)が講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

◎交流会はビデオ会議システムZoomを使って開きます。参加費をお支払いいただいた方に前日の11月6日、配信URLをメールでお送りします。受け取ったURLを当日、パソコン画面でクリックすると、自働的にZoomの画面が出てきて、参加できます。

◎主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101-0061東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
電話03・6272・9781 ファクス03・6272・9782
メールoffice@jcj.sakura.ne.jp ブログhttp://jcj-daily.seesaa.net/
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2020年10月19日

【月刊マスコミ評・出版】 戦争阻止こそジャーナリズムの本道=荒屋敷 宏

 菅義偉首相の疑惑が早くも浮上している。「週刊文春」9月24日号「徹底取材 新総理で誰が笑うのか 菅義偉『親密企業』がGoToイート受注」。または「週刊新潮」同の「菅総理」の裏街道―「河井案里」に1億5000万円投下の首謀者=\などなど。
 「『助言したらパッと採用』経済ブレーンは竹中平蔵」と、菅首相と竹中平蔵パソナグループ会長との親密ぶりに迫った「文春砲」が鋭い。同誌で某政治部デスクは「菅氏が『絶対にやる』と力を込めているのが、省庁の縦割りを打破するためのデジタル庁の新設。…竹中氏がロイター通信の取材で『デジタル庁みたいなものを期限付きで作ればいい』と語っているのです」と指摘している。
 菅首相と竹中会長との関係は、2005年の小泉政権時代、竹中総務相(当時)に菅氏が副大臣として仕えた時期にまでさかのぼるという。安倍政権がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用で、国債から株式主体の運用に舵を切った背景には、竹中会長から菅官房長官(当時)への助言があったという。
 この暗部を最近まで口外しなかった政治部デスクの役割とは何なのだろうか。確かに、菅首相誕生で明るみに出す意義は強まった。スクープ記者には、ネタを温める作法がある。しかし、株価下落による年金損失に心を痛める国民からすれば、政策立案過程の隠ぺいにマスコミが加担したように見えてしまう。報道各社が新宿御苑で「桜を見る会」を取材しながら、当初は、「しんぶん赤旗」日曜版編集部以外に疑問を持たなかった構図と似通ったものを感じてしまう。
 戦争阻止は、ジャーナリストとしての最高の役割であるはずだ。見過ごせないのは、日本政府が相手国の領土内の施設(敵基地)を攻撃する能力、いわゆる「敵基地攻撃能力」保有の検討へ動きだしたことだ。菅首相は16日の組閣後、安倍談話を踏まえて、岸信夫防衛相に「敵基地攻撃能力」など安全保障政策の方針を年末までに策定するよう指示した。
 「世界」10月号(岩波書店)の特集「攻撃する自衛隊」は、重要な論点を提出している。半田滋氏は、自衛隊が現時点で「敵基地攻撃能力」を保有し、「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を受けて、防衛省が長射程のミサイル導入を始めたことを指摘している。政治部デスクの机の中で記者のメモが温められているうちに、戦争に突入していたという悪夢を現実化しないように警鐘を乱打すべき時だ。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
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2020年10月18日

【今週の風考計】10.18─菅政権1カ月:<2人の杉田>が象徴する監視・差別の怖さ

首相動静によると、朝は6時45分から官邸内を散歩。1時間後には永田町のホテル内レストランで首相好みの有識者と朝食懇談。そして昼も夜も連日、赤坂や紀尾井町の料理店で政官財の関係者と会食。午後9時前後には議員宿舎に帰宅。
 会食や面会で確認された民間人は70人を超えるという。だが9月16日の就任会見から、1カ月たっても記者会見は開かず、所信表明すらない。18日からはコロナ感染者が日本の4倍35万人もいるインドネシアなど、4日間も外遊する。

この間にやることがエゲツナイ。日本学術会議が推薦した名簿を「見ていない」のに、6人を任命拒否。政府方針に異を唱えた学者を排除し、憲法が保障する「学問の自由」を侵害する暴挙に手を染める。
 首相は「総合的、俯瞰的に決めた」と、説明にもならぬ説明ではぐらかす。あげくに自民党は「任命拒否」から目をそらすため、学術会議の制度見直しに論議をすり替える。
 政権の意に沿えば重用し、盾突けば冷や飯を食わせる―安倍政権下での強権的な手法まで、菅首相は「継承」する。森友問題の再調査は拒否。桜を見る会は中止する一方、サクラ疑惑にはフタをする。

その陰で動く、官邸内に君臨するもう一人の人物の存在がクローズアップされた。杉田和博官房副長官である。学術会議105人の推薦名簿から排除する6人を選別、任命拒否の筋書きを用意し、決裁前に菅首相に報告、名前は確認されていたことが明らかとなった。
杉田官房副長官は、東大法学部卒、警察庁で警備・公安畑を歩み警備局長を務めた“公安のドン”といわれるエリート。2012年の第2次安倍内閣が誕生と同時に官房副長官として官邸入り。菅政権誕生後も引き続き同ポストを務めている。
官房長官時代から官僚支配に力を注いできた菅首相だが、その中心的役割を担ったのが、杉田官房副長官である。2017年からは官僚人事を掌握する内閣人事局の局長も兼務。これまでに公安警察を使って官僚を監視下に置いてきた。
 さらには政権と敵対するメディアや政権批判の学者・知識人にも、介入の隙を伺い監視の目を光らせている。代表的なのがNHK「クローズアップ現代」のキャスター降板事件だ。また東京新聞の望月衣塑子記者の身辺を、公安が探っていたというのも有名な話。

さてもう一人、杉田姓を持つ人物がいる。自民党の杉田水脈・衆議院議員である。女性の身でありながら、女性への性暴力に関連し「女性はいくらでもウソをつける」と発言し、総スカンを食らっている。
 これまでにも性的少数者のカップルに「生産性がないから問題だ」などの差別発言や伊藤詩織さんへのバッシングを繰り返してきた。
 杉田議員は、17年総選挙に際し安倍首相の推薦で「維新」から自民党に鞍替えし、比例中国ブロック単独候補に格上げして当選。
「性暴力の根絶」を掲げる菅政権・自民党にもかかわらず、女性への差別発言を繰り返す自党の議員に、厳しい対応するどころか、「本人の言葉づかい」の問題と矮小化する。
 さらには「フラワーデモ」主催団体が13日、杉田議員の議員辞職などを求める13万6000筆の署名すら、受け取りを拒否する始末。
 <2人の杉田>が示す、国民に対する監視と差別を放任する仕組みは、はからずも菅政権の本質をあぶりだしている。(2020/10/18)
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2020年10月17日

大阪都構想 七つの大罪 オンライン学習講演会=大原 真

幸田泉さん(ジャーナリスト).jpg  大阪都構想七つの大罪・パソコンの画面.jpg  
 大阪市をなくして四つの特別区に分割する「住民投票」が11月1日に行われる。それを進める維新の実態や「都構想」の中身を全国の皆さんに知ってもらうため、学習講演会が9月13日にオンラインで開催された。
 JCJの須貝道雄事務局長から「コロナ禍のもとでネットを使った企画は4度目になる。大阪の2人の講師からしっかり学んでほしい」と開会あいさつがあった。
最初にジャーナリストの幸田泉さん(写真)が「大阪都構想七つの大罪」のテーマで講演をした。「(罪の数は)七つどころではないが、絞り込んだ。維新は大阪市をなくし、四つの特別区という半人前の自治体をつくり、大阪市のお金と権限をむしり取ろうとしている」と指摘。@民主主義のつまみ食いA不都合な真実の隠蔽B役所の形がいびつになるC市民サービス維持を偽装D科学的データのでっち上げE財産目当ての結婚Fイメージ戦略――の七点について一つ一つ解き明かした。
 そして最後に、今回評価できるのは投票用紙に「大阪市の廃止」が明記されたことだと語り、「吉村人気」や維新への期待もあるが、この事実を伝えれば大阪市を守ることができると訴えた。
 次に、大阪市をよくする会の事務局次長の中山直和さんから「維新の歴史と大阪のたたかい」をテーマに講演があった。維新が掲げる「都構想」による成長戦略もコロナ禍で破綻してきたが、彼らの綱領の中心は「都構想」実現であり執念を燃やしている。維新はわずかな実績を作りながら、嘘とフェイクを垂れ流して府民を惑わしてきたと現状を分析した。
 一例をあげれば、高校授業料無償化を行う一方で、私学助成金を削減し、公立高校の統廃合を進めている。住民には授業料無償化以外は見えにくい。高齢者の中には「自分はいいが、子や孫のために(維新に)頑張ってほしい」などの声が少なくない。
 吉村人気は高いが、大阪市を廃止することとは別だ。前回も多くの市民が足を運んで67%の投票率で勝利した。勝手連的に市民がビラをつくり運動に参加した。今回もそうした状況を作れば必ず勝つと信じていると締めくくった。
 その後、大阪のメディア状況などの質疑応答があり終了した。 
 大原 真(大阪都構想ストップ共同闘争本部事務局長)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
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2020年10月16日

【月刊マスコミ評・新聞】 安倍政治の「総括」なき新内閣=白垣詔男

 9月16日、「菅義偉新首相」が誕生した。一部で「アベノママ内閣」と言われる。実質的に首相が決まる9月14日の自民党総裁選は党大会を開かず両院議員総会で決めた。「石破氏有利な党大会は開きたくない」という安倍首相の感情論を最優先にして全国自民党員の投票の権利をないがしろにしたものだ。
 17日の朝刊各紙社説は「新内閣に望む」一色。その中で好対照だったのが西日本「まずコロナ対策に万全を」と「カネより命」に重点を置いていたのに対し読売は「経済復活へ困難な課題に挑め」と「命よりカネ」を力説していた。朝日は「安倍政治の焼き直しはご免だ」、毎日「まず強引な手法の転換を」と、いずれも「アベノママ内閣」の否定を求めた。
 社説としては自民党総裁が決まった翌15日のほうが各社の姿勢がはっきりしており読み応えがあった。
 朝日「総括なき圧勝の危うさ」、西日本「『総括なき継承』の危うさ」、毎日「継承ありきの異様な圧勝」と新総裁に対して「危うさ」「異様さ」を指摘、疑問を投げかけた。もちろん、「安倍首相の負の遺産、モリ、カケ、桜」など解明しなければならない諸問題にも言及する。
 対して「政府広報紙」の読売は「社会に安心感を取り戻したい」と、新型コロナウイルス問題に対する安倍前首相を「後手に回った」と指摘はするが、「負の遺産」は不問。「安倍首相信奉者」産経は「危機に立つ首相の自覚を 派閥にとらわれぬ人事を貫け」の見出しで、中朝脅威論を強調。両紙とも総裁が変わっても、政権に耳の痛いことは素通り。
 産経は「安倍氏をねぎらいたい」の小見出しで「憲政史上最長の在任で、身を削るようにして国の舵(かじ)取りを担った楼をねぎらいたい」と、政治的成果がほとんどなく「長いだけがレガシー(遺産)」安倍氏を最大級に持ち上げているのはいかがなものか。
 菅発言で非常に危険な内容を含んでいるのが13日のテレビ番組で「政策の方向性に反対する幹部は移動してもらう」だ。14日の毎日夕刊「近事片々」に「菅氏。政府方針に反対の官僚は異動させると強調。忖度しろよ、とでも」。菅氏が「安倍の負の遺産をそのまま継承する」と声高に叫んだものと指摘した。安倍氏以上の独裁政権になる恐れがある。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
 
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2020年10月15日

【焦点】 デジタル庁こそが監視社会の司令塔だ=橋詰雅博

 菅義偉首相の肝いりで来年新設のデジタル庁は、国や地方の行政データのデジタル化を進め、それを一元管理する。狙いはいまだ2割にとどまるマイナンバーカードの普及に加えてもう一つスーパーシティ計画の推進だ。この計画は国家戦略特区にまるごと未来都市をつくる≠ニふれ込む政官民学あげての大型プロジェクト。しかし、その半面では、役所に蓄積された個人情報はもとよりIT企業のビックデータまでもデジタル庁に集められ、監視社会が強化される危険性がある。
     ◆
 街中を自動運転の乗り物がスイスイと走り、遠隔による医療・教育が受けられ、スマホ決済で現金不要、ドローンが配送、行政手続きがスマホで済ませられる―。政府はAI(人工知能)など最先端技術を活用したスーパーシティのイメージをこんな風に喧伝している。
竹中平蔵が旗振り役
 本格的な実現は2030年ごろとするこの未来都市の旗振り役は、東洋大の竹中平蔵教授だ。竹中教授は小泉純一郎内閣時代の総務相で、菅首相はその時、総務省副大臣だった。竹中氏は現在、首相の経済ブレーンである。竹中教授は「(5月に成立のスーパーシティ法)が早く成立していれば、コロナ危機への対応が違っていただろう」とツイッターに投稿している。ただ、具体的な対応は何も示さなかった。
 計画進める民間側を束ねる三菱UFJリサーチ&コンサルティングの村林聡社長は、9月8日の「アフターコロナを考える」Webライブセミナーで、デジタル庁創設にふれている。
 「昨年暮れ『デジタル・ガバメント実行計画』(行政サービスが最初から最後までデジタルで完結される行政サービスの100%デジタル化の実現)が閣議決定されました。これを進めるためには『デジタル庁』といった権限のある組織をつくり、司令塔にする。国のリーダーシップが必要です」
全個人データを入手
 政府側もスーパーシティ計画に入れ込む。6月末のオンライン特別セミナーに登場した内閣府地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は、こう語った。
 「中国のアリババ系列会社が行政と連携する杭州市では、交通違反や渋滞対策にAIを活用し、無人コンビニで顔認証でのキャッシュレス支払いを実施している。ものすごい勢いで技術を使いこんで熟度をあげて、それを広げている。日本にも必要な技術はほぼそろっているが、街で住民を相手に複合サービスを実施した実績がない。関わる事業者が利益を得られるビジネスモデルを構築するためにも早く実践する場が欲しい」
 デジタル庁が中核となるスーパーシティ計画だが、大きな問題がある。スーパーシティ実現には個人情報が必須だ。国家戦略特区では民間事業者が国や地方の個人情報の提供を受ける。事業者もビジネスで得た個人情報などからなるビックデータを持っている。 
 デジタル庁は特区の事業者の全個人情報の入手可能となる。事業者が得られた個人情報をビジネスに不正利用するかもしれないし、なによりデジタル庁が個人情報の管理をどういう風にするのか、特区住民とどう合意にするのかがあいまいのままだ。知らぬ間にプライバシーを侵害された上に、積み上げられた個人データをもとに政府から監視を強化されかねない。
トロントは計画中止
 中国を始め欧米ではスーパーシティと同じような未来都市の実証実験がスタートしているが、住民の反対で計画が中止に追い込まれた都市がある。カナダのトロント市だ。
 未来都市を運営するグーグルの子会社は、データ収集のため街中に多くの監視カメラを設置するなどを市や住民に提案した。
 しかし、プライバー侵害発生時の対応計画や個人データ保管に関する明確な方法の必要性について、住民への説明が不十分だった。このため住民の同意が得られなかった。また、コロナ禍の影響で都市への人の流入が減少し、利益が見込めないとグーグルは判断。こうしたことで5月に撤退した。運営会社が身を引いたことでトロント市は計画を断念せざるを得なかった。
 カギを握る個人データの管理について、村林社長は「個人データの扱い方では、誰が何のためにデータを使うのか説明し、本人の了解を得て進めるのが原則だ。(日本が手本とする)エストニアは誰がいつ自分の情報を使ったか、住民が請求すれば公開している。日本でもそういう対策をする必要がある」と指摘する。
 だが、その前に欧州と比べて不十分な国民のプライバシーが守られる規制・ルールづくりをすべきだろう。これをないがしろにして、スーパーシティ計画を隠れ蓑に監視社会が進められ、築かれようとしている。
 来年3月ごろには国家戦略特区に指定されて、スーパーシティの実証実験が行われる5自治体が決まる見込みだ。
橋詰雅博
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