2020年02月27日

【植村札幌控訴審不当判決2】 判決文 悪意と蔑視に満ちる 被告こそ捏造者 真の民主主義守るため闘い続く=編集部

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 また、高裁判決は「各資料は、金学順氏の述べる出来事が一致しておらず、脚色・誇張が介在していることが疑われる」としたうえ、「日本軍が強制的に金学順氏を慰安婦にしたのではなく(金さんを)慰安婦にすることにより日本軍人から金銭を得ようとした継父に騙されて慰安婦になったと読み取ることが可能である」と、日本軍の関与を必死で薄めようと試みた。
単なる慰安婦とは
 極め付きは判決文の中で、植村記事を掲載した朝日新聞は「慰安婦狩り」の吉田証言を報じていたから「その一人がやっと具体的に名乗り出たというのであれば日本の戦争責任に関わる報道として価値が高い反面、単なる慰安婦が名乗り出たにすぎないというのであれば、報道価値が半減する」と断言したことだ。
 つまり高裁は、櫻井氏の持論である「慰安婦問題は朝日の捏造」「植村記事は挺身隊と強制連行を結び付ける意図だ」との主張を露骨に正当化したのである。
 法の番人である3人の裁判官が合議のうえ、判決文で「単なる慰安婦」という言葉を言い放つとは一体どういうことなのか。これほど「悪意と蔑視」に満ちた判決文を堂々と出して恥じない。これが歪んだ司法の現実であり、櫻井氏が歓迎する「報道の自由、言論の自由」の中身だ。そしてそれが植村訴訟で暴かれた現在の日本の民主主義のありようだ。
 だが、闘いの成果もあった。札幌、東京の植村訴訟一審、控訴審の闘いを通じて櫻井氏、西岡氏こそが「捏造者」であり、植村さんは「捏造記者」でないことが証明された。いま、2人は「口をつぐんでいる」。騒いでいるのは2人の口車に煽られた一部の人々だけだ。
 従軍慰安婦問題をめぐるバッシングは2014年、朝日新聞が吉田清治証言関係記事を「誤報」として取り消したことから巻き起こった。それは2007年、米ワシントン・ポスト紙に「日本軍に配置された『慰安婦』は『性奴隷』でなく公娼制度下の売春婦だ」と意見広告を出すなどした櫻井氏らが「慰安婦問題をなかったものにしよう」と仕掛けてきた「歴史戦」だと言えよう。
 だが、「いわゆる『従軍慰安婦』とは、かつての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのこと」であり、慰安婦犠牲者は日本軍に「性的慰安」の奉仕を強制され、被害と苦痛を訴える人々である。これが日本の政府公式見解であることを私たちは忘れない。日本ジャーナリスト会議は植村訴訟を今後も闘い抜いていくことを呼びかける。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月26日

【植村札幌控訴審不当判決1】 歪んだ司法を露呈 強引な「論評」認定で櫻井免責 「慰安婦」政府見解ふまえず=編集部 

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 元従軍慰安婦の証言を伝えた1991年の記事を、2014年に「捏造」と攻撃された元朝日新聞記者の植村隆さんが、「捏造記者」バッシングを煽ったジャーナリスト・櫻井よしこ氏や出版社3社を相手取った名誉棄損訴訟の札幌控訴審は2月6日、一審判決を支持して植村さんの訴えを棄却した。植村さんは判決後の記者会見で「不当判決であり、絶対に容認できない」と、上告の意向を表明した。
真実相当性どこに
 高裁判決は一審と同様に、3社の週刊誌などに載った櫻井氏の記事が植村さんの社会的評価を低下させたと認定する一方で、「櫻井氏が捏造と信じたことは公共の利害に関することで、理由がある」と名誉毀損の法理を捻じ曲げて真実相当性を認め、櫻井氏が裏付け取材すらせずに植村さんを「捏造記者」ときめつけ、バッシングを煽ったことを再び免責した。櫻井氏はこれを「報道の自由、言論の自由が守られた」と言うが、本当は何が守られたのか。
 一審判決は、櫻井記事によって植村さんの社会的評価が低下したと認め、櫻井記事の一部が事実でないことを認めたうえで植村さんの請求を退ける根拠として「櫻井氏が(植村)批判記事の内容を真実と信じる相当性はあった」とした。問題は書く側が「本当に取材や確認を尽くしたか」だ。記事は内容によっては人を傷つける。
 だからこそジャーナリスト、ジャーナリズムには報じることの公共性、公益性に加え、取材、確認を尽くすという「基本動作」が求められる。だが、冨田一彦裁判長、目代真理、宮崎純一郎の札幌高裁3裁判官は「資料などから十分に確認できる場合は本人への取材や確認を必ずしも必要としない」として櫻井記事の真実相当性を認定した。
櫻井が流布した嘘
 櫻井氏は、植村バッシング記事で@植村は義母の裁判に便宜を図るため記事を書いたA慰安婦と挺身隊を結び付けたB金学順さんの経歴を隠した、という3つの嘘を流布し、植村さんへの攻撃を煽った。植村さんや家族、北星学園に殺到した「殺す」「爆破する」などの脅迫や「売国奴」「国賊」などの罵倒がこの嘘によって引き起こされたことを我々は忘れない。そして札幌高裁は櫻井記事の@の嘘を事実の適示ではなく「論評である」とすり替えた。
 札幌高裁判決の特筆すべき点は、「ネトウヨ判決」と批判された一審ですら認定した「適示事実」のことごとくを「論評」と判断をすり替え「真実相当性」認定で「ジャーナリスト」櫻井氏を免責したことにある。これは名誉棄損の法理無視に加え司法が積み上げてきた真実相当性判断の枠組みをも大きく逸脱した、誤った判決と言わねばならない。
 その極致はわずか20ページの判決文の半分を占めた「真実相当性」についての裁判所判断の記述に凝縮されている。
本人取材「不要」と
 櫻井氏が植村批判の論拠とした資料は@91年8月15日付のハンギョレ新聞記事A金学順さんの91年の訴状B月刊「宝石」92年2月号掲載の臼杵敬子さん執筆の記事の3資料だが、高裁はこれを「推論の基礎となる資料が十分ある」と評価し、植村さん本人への取材の必要はないとした。
 だが、櫻井氏は3資料を自分に都合よくつまんで使っており@のハンギョレ新聞の記者やBの臼杵敬子さんに、陳述書で「櫻井氏は慰安婦の被害を伝える内容を曲解し、逆に使った」と批判を受けた。またAの金学順さんの訴状には櫻井氏主張の記述などなく、櫻井氏は植村さんの指摘で産経新聞と雑誌WiLLで訂正に追い込まれた。高裁判決は、櫻井免責の根拠とするためこの事実や経緯を無視した。
 高裁判決は櫻井氏の杜撰な「取材」を不問にしたことに加え、「慰安婦」や「強制連行」の定義や見解を随所で捻じ曲げた。「挺身隊」という言葉についても「91年当時、一義的に慰安婦の意味に用いられていたとは認められない」と判断した。だが本当にそうか。
 植村記事が書かれた91年頃は、韓国だけでなく日本でもマスメディアが「挺身隊の名のもとに」などと従軍慰安婦を表現するのは一般的だった。朝日だけでなく産経、読売など全マスコミが普通に使っていた。もちろん櫻井氏も例外ではなかった。「女子挺身勤労令」の規定する「挺身隊」の研究が本格化し始めたのもほぼ同時期であり、高裁の断定にはいささか無理があることを指摘しておく。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月25日

【編集長EYE】 特例法ある限り新聞社に希望ない=橋詰雅博

 米国の大手新聞が再編に突入している。全国紙USAトゥデーなどを発行する新聞大手ガネットは、日刊紙を含む450紙を傘下に持つ投資会社ニューメディア・インベストメント・グループによって昨年末に買収された。ガネットの社名は残るが、投資ファンドが600紙を束ねる全米トップの新聞社を誕生させた。
 74紙を抱えるトリビューン・パブリッシングも、ニューヨークのファンドが運営し、133紙を持つMNGエンタープライジズが求めた株式32%取得に応じた。合併は必至とみられている。再編を主導する投資ファンドは、合併で読者数が増えれば広告収入が上がると見込んでいる。
 7年前には米ワシントン・ポスト紙は、アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾスが買収した。ベゾスが紙媒体のデジタル化を推進した結果、100万を超す有料デジタル版読者を得て業績は回復した。
 質の高い報道と効率的な経営をどう両立させるかが課題だが、米大手新聞社は外部から資金を受け入れ経営不振を乗り切ろうと躍起だ。
 日本の新聞業界も部数激減に伴い業績は落ち込む一方である。19年の部数は3781万で、10年前と比べて1254万減った。売り上げも18年度1兆6600億円と04年度より7178億円失った。
 日本の新聞社も米国のように外部から資金を調達し経営を立て直すことができないのだろうか。
 1月下旬に都内で講演した「2025年のメディア」(文藝春秋)の著者の下山進さんは、こう解説した。
 「それを阻んでいるのは日刊新聞法です。1951年にできたこの特例法は、株式の譲渡を制限している。とはいっても事実上、株式の譲渡はダメというのが現実です。従って買収もされない。読売新聞グループ本社の山口寿一社長は日刊新聞法のおかげで報道の自由が守られていると主張するが、私は変化を阻んでいると思います」
 日本の新聞社はこのままではもたない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月24日

【映画の鏡】名作の舞台 今や犯罪地帯に化す「レ・ミゼラブル」移民少年と警察との衝突が思わぬ方向へ=今井潤

 この作品は冒頭から最後まで息をつく間もない緊張の連続する104分の問題作だ。去年のカンヌ映画祭で、韓国の「パラサイト」と最高賞パルムドールを競い、コンペ最大のショックと称賛を受けたのだ。
 ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台ともなったパリ郊外の団地は60年代にミドルクラス向けの住宅として建設された。しかし、高速道路が中止となり、陸の孤島の住宅は貧困化が進み、90年代以降は警察と若者の衝突が相次ぐようになった。今や移民や低所得者層が多く住む危険な犯罪地域と化している。
 団地の治安を取り締まるメンバーに配属されたのは北フランスから来たステファンだ。白人のリーダーは人種差別主義者、もうひとりの黒人警察官の3人でパトロールすることになった。
 ある日イッサという少年がロマのサーカス団からライオンの子どもを盗んだことが原因で、街のギャング同士が一触即発の騒動に発展してしまう。
 治安警察と少年グループはもみ合いになり、黒人警察官がイッサに発砲し、さらに追跡していくが、その一部始終が何者かのドローンで撮影されてしまう。混沌とした事態を収束したい治安警察だが、少年グループをめぐる騒動は思わぬ方向に進んでいく。
 それにしても、この作品に出てくる街のギャングの面構えはハリウッドの映画の役者を超え、グルジアかセルビアの役者の風貌を思い起させた。
(公開は2月28日(金)新宿武蔵野館、渋谷ルシネマほか)   
今井 潤


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2020年02月23日

【今週の風考計】2.23─千利休と古田織部が辿った数奇な運命

4年に一度の閏日の前日28日は「利休忌」でもあり、また「織部の日」でもある。まず「利休忌」で偲ばれる千利休は、武野紹鴎らに茶の湯を学び、信長、秀吉に仕えながら茶道の基となる「わび茶」を完成させ、<茶聖>とも称された。
 秀吉に理不尽な切腹を命じられ、天正19(1591)年2月28日自刃、享年70。今でも切腹は歴史的事実として流布している。

だが、1年前に読んだ中村修也『千利休─切腹と晩年の真実』(朝日新書)では、利休は切腹していないとの新説を打ち出している。というのも利休没後とされる1592年の秀吉の書状に、肥前・名護屋城(現在の佐賀県唐津市)で利休の茶を飲んだと書いてあるのを根拠に、利休は九州にかくまわれたのではないかという。
 秀吉が「朝鮮征伐」のために築いた名護屋城跡から、茶室の遺構が発見されている。しかも見つかった茶室は素朴でつつましく、利休が好んだ茶室にそっくりだったと推測されている。
2年前だったか、この名護屋城跡を見学したとき、高台から見晴らす玄界灘の沖には、青い海のかなたに対馬から釜山まで見通すことができた。こうした展望のある居室に座す秀吉は、思わしくない朝鮮の戦況に心鎮めるため、利休の点てる「わび茶」を喫したとの想像は、否が応でも真実味を帯びて広がってくる。
思えば千利休に魅せられて、唐木順三『千利休』(筑摩叢書)、野上弥生子『秀吉と利休』(新潮文庫)、井上靖『本覚坊遺文』(講談社文庫)、さらには山本兼一『利休にたずねよ』(PHP文芸文庫)など渉猟してきたが、中村修也さんの新説には驚かされた。

さて「織部の日」だが、千利休亡き後、秀吉の茶頭となった古田織部が、慶長4(1599)年、自分で焼いた茶器を用いて京都・伏見で茶会を開いた日に当たる。今から33年前に岐阜県土岐市が「織部の日」と制定した。
 ともあれ安土桃山時代に活躍した「へうげもの(瓢軽者)」戦国武将が、後に茶の湯の“天下一の宗匠”となるのだから驚く。だが織部は<大阪冬の陣>頃から徳川方の軍議秘密を豊臣側に漏らしたとして捕らえられ、慶長20(1615)年に切腹、享年72。流布されている千利休の運命と、くしくも同じ道を辿った。
興味津々、最新刊の伊東潤『茶聖』(幻冬舎)は、千利休をどう描いているのだろうか。利休と秀吉、二畳の茶室でどんな会話や駆け引きが展開されたのだろうか、さっそく読んでみよう。(2020/2/23)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月22日

【リアル北朝鮮】 国家存亡の問題と必死 新型肺炎の徹底予防=文聖姫

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。中国や韓国と接している北朝鮮も予防対策に必死だ。薬品や医療設備が不足していることもあって、まずは自国に感染者が入らないようにするための対策が講じられている。
 労働新聞1月29日付は、新型コロナウイルスの流行を防ぐ事業を「国家存亡と関わる重大な政治的問題」だと強調した。「すべての人々が新型コロナウイルス感染症と危険性、流行の深刻さを認識」すべきで、「徹底的に防ぐ」ようにと述べている。
 同紙によれば、各クラスの非常防疫指揮所や衛生防疫機関、治療予防機関、医学研究機関などで行う住民を対象とした医学的監視と診断、治療薬物の開発と関連した研究を積極的に後押しするのが課題だ。
 また、個人に対してはマスクの着用、手洗いの徹底、野生動物との接触回避、体を鍛えて抵抗力をつけることなどを奨励している。
 2003年、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、北朝鮮に長期滞在していた。その際もSARSの感染を防ぐための対策が徹底的に講じられていた。海外渡航者や国外からの出張帰りの人々は症状のあるなしにかかわらず、すべて10日間程度隔離された。症状が出ないことを確認して、やっと平壌に入ることができたほどだ。
 当時滞在していたホテルは閑散としていた。いつもなら5月の連休を利用してやってくる訪問団でにぎわうのに、一人も来なかった。
 今回もおそらく予防対策に必死だろう。「国家存亡と関わる」というほど深刻に受け止めていることは容易に推察できる。10日発朝鮮中央通信によれば、医療チームが毎日のように担当区域を回って教育や予防治療を行っているという。
 とにかく、北朝鮮としては「我が国に新型コロナウイルス感染症が絶対に入ってこないようにする」(労働新聞)ことが、何より重視されていると思う。
  文聖姫(ジャーナリスト・博士)


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2020年02月21日

【リレー時評】気候変動に鈍感きわまりない小泉環境相=中村梧郎

 パリの地球温暖化防止会議。「化石賞」は再び日本に来た。小泉進次郎の演説は「具体性のかけらもない」と嘲笑された。
 小泉大臣は1月末、ベトナムでの石炭火力発電に反対だと突然ブチあげた。CO2問題で世界が日本を批判するからと。
 だがその真相に驚く。三菱商事によるブンアン石炭火力発電所計画は日本が融資するが、建設は中国や米国の企業が担うから(ウマ味がない)というだけのことなのだ。
 ベトナムは、福島を教訓に日本の原発を拒んだ。ならば石炭火力発電がお得だと、三菱、丸紅、住友が5か所の建設計画を進めた。温暖化批判に応えるというのなら日本はその全てを撤回すべきなのだ。インドネシアへの輸出もやめるしかない。
 より容易なのは進次郎氏の地元、横須賀での石炭火力計画をまずは止めること。そのうえで国内13基の停止、25か所で進む計画の破棄だ。
 ベトナムは日本の原発予定地だったニントゥアンを、太陽光と風力発電のメッカに変えている。

 おりしも1月17日、広島高裁は伊方原発3号機の運転禁止を命じた。原子力規制委員会の判断は誤りと。判決は、瀬戸内の中央構造線や阿蘇噴火の危険想定が過小だとした。伊方3号機は1月末、電源ミスで冷却が43分間止まる重大事故を起こした。12日には制御棒1体が7時間も炉から抜かれていたりもした。
 伊方原発は愛媛県・佐多岬にある。事故は真夜中でも起こり得る。電気のない暗闇で5千余の岬の住民は逃げ場がない。高齢者や病人はどうなるのか。福島では強い放射能で自衛隊が出動を躊躇、双葉病院の患者50人が死亡した。伊方は廃炉にするしかないのだ。
 アメリカの規制委は住民の避難路が不十分、となれば稼働を禁止する。一方、日本の規制委は「それは自治体の責任。住民避難には関知しない」という。再稼働を認めるだけの規制委。‶寄生∴マだとの揶揄も囁かれる。
 今後30年以内に80%の確率で発生する南海トラフ地震。首都直下地震もある。まさに地震大国日本なのに、3・11の苦痛を教訓としない。
 昨年、大飯や玄海、川内原発の稼働が先送りされた。対テロ施設である送水ポンプが未完成だから、との理由だった。だがこれも子供だましだ。テロリストの兵器は今や無人攻撃機。米軍はアフガンなどでの殺戮をこれで続けた。イランのソレイマニ司令官殺害も無人機のロケット弾だ。
 無人機を量産輸出するのは中国である。SIPRIによれば中国は世界第二の武器輸出国。中国航空工業集団がその主役だ。テロリストが無人機を入手して原発を狙えば核爆発を誘発しうる。「送水ポンプで安全」というのはほぼ幻想である。
 核兵器と原発、CO2は地球環境を危機に曝している。だが小泉環境相は事態を無視したままパフォーマンスばかり。それ結婚だ、妊娠だ、育休だ、にはもうウンザリなのだ。
中村梧郎

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2020年02月20日

【沖縄リポート】 元少年兵が語る日本軍への怖さ=浦島悦子

 やんばる(沖縄島北部)の山々が緋寒桜のピンクに染まる2月1日、私は大宜味村の山間にある上原集落へと車を走らせた。
 75年前の沖縄戦時、15〜16歳のやんばるの少年たちが駆り出された「護郷隊」(遊撃隊)の元隊員で、同集落に住む瑞慶山良光さん(91歳)が、戦死した69人の戦友を偲んで自宅の裏山に植え育てた桜を「観る会」、及び、瑞慶山さんも出演するドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」(三上智恵・大矢英代共同監督、2018年公開。文化庁映画賞など8つの賞を受賞)の上映(上原公民館にて)などが行われた。
 翌2日には、瑞慶山さんら3人の元隊員とともに、第二護郷隊が配置された恩納岳の激戦地を巡るフィールドワークと「伝えたい第二護郷隊少年兵の体験」シンポジウム(進行:三上監督。恩納村博物館にて)が開催され、沖縄内外の100人余が参加した。
 スパイやゲリラを強要され、爆撃で友人の体が吹き飛び、病気で動けない友人が上官に処置(殺害)されるのを目前にした少年たちの体験はあまりにも壮絶かつ過酷だ。瑞慶山さんは帰郷して2〜3年後に戦争PTSDを発症(戦時と同じ精神状態で匍匐前進したり大声を上げて暴れる)、「兵隊幽霊」と呼ばれて自宅内の「牢屋」や精神病院に閉じ込められたという。今の穏やかな笑顔からは想像もつかないが、底なし沼のような心の闇を乗り越えてきた長い道のりがあったのだ。
 同じく元隊員の宮城清助さん(国頭村出身、92歳)は「自分たちは騙されていた。軍隊は住民を守らない。軍隊は軍隊しか守らないというのが戦争の教訓だ」と語った。
 三上監督は映画公開後、さらに取材を重ねて発行した新刊『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書。2月発行)の冒頭で次のように述べる。「軍隊が来れば必ず情報機関が入り込み、住民を巻き込んだ『秘密戦』が始まる」。彼女が映画や本で世に問うたのは、「陰惨な秘密戦」=「スパイリスト」による住民虐殺など、敵軍より怖い自国軍の実態だ。当時の日本軍は同様の戦争を全国で行う準備を進めていた。
宮古・八重山に自衛隊基地が次々に造られていくいま、「私が戦慄する危機(同著)」はやがて全国に及ぶだろう。その警鐘を聞いてほしい。
浦島悦子

posted by JCJ at 10:27 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月19日

【メディア気象台】1月下旬から2月初旬=編集部

◇NHK、まとめサイトを提訴
京都アニメーションの放火殺人事件をめぐり、ネット上の情報をまとめたサイトが虚偽の情報・拡散したとして、NHKは24日、サイトの編集長を相手取り700万円と同サイトでの謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。問題のサイトは「LH MAGAZINE」。事件発生後まもなく、NHKのディレクターが容疑者の遺留品を回収しているかのように加工されたNHKニュース映像の画像を掲載し、「なんで警察が来る前に勝手に回収してんだよ」などの投稿を引用し拡散した。(「朝日」1月25日付ほか)
◇紙と電子合わせた出版、前年比増
出版科学研究所は24日、2019年の出版市場(紙と電子の合算)が前年比0.2%増の1兆5432億円だったと発表した。14年に紙と電子を合算した出版市場統計を開始して以来、初めて前年比プラス成長となった。(「毎日」1月25日付ほか)
◇「写真から黒人を削除」批判
スイス・ダボス会議で24日に閉幕した世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」に参加した若者の環境活動家5人の集合写真をめぐり、黒人女性でウガンダ出身のバネッサ・ナカテさん(23)だけトリミングして配信した米通信社APに「人種差別的」と批判が集まっている。APは英メディアに「あくまで構図の問題だった」と主張し、ナカテさんの後ろに建物が写り込んでいたため、締め切り時間が迫る中でトリミングしたと釈明している。(「東京」1月26日付ほか)
◇NHK受信料の追加値下げ要請〜総務相意見書
高市早苗総務相は5日、NHKに受信料の追加値下げなどを求める意見書をまとめた。受信料は2020年度までに、値下げや支払い免除対象拡大などで、18年度受信料収入の6%を還元することが決まっている。総務相意見書では、NHKの19年度末の繰越金見通しが1千億円に上ることなどから「6%相当の還元にとどまらず、受信料の在り方について不断に検討する必要がある」と指摘している。(「しんぶん赤旗」2月7日付ほか)
◇遺族意向で氏名非公表〜黒岩神奈川県知事
黒岩祐治神奈川県知事は6日、斜面崩落事故で亡くなった女子生徒の氏名が公表されていないことについて、「ご家族が公表を望まない気持ちが強いと聞いており、発表を差し控えている」と述べた。知事は個人的な考えと断った上で「情報は正しく出していくことが基本。本来はただちに(氏名を)発表すべきだ」と強調。一方で「国の統一的な公表基準がまだできていない」と理解を求めた。(「神奈川」2月7日付ほか)
◇ヘイト犯罪対策求め、NGOが政府に署名提出
在日コリアンの虐殺宣言に爆破予告と、川崎市の多文化交流施設「市ふれあい館」を標的にヘイトクライム(差別に基づく犯罪)が立て続けに起きている問題で、人種差別撤廃に取り組む非政府組織(NGO)「外国人人権法連絡会」は6日、さらなる差別と犯罪の抑止のため早急なヘイトクライム対策を求める署名を政府に提出した。同会の師岡康子弁護士は、相次ぐ脅迫は明白かつ危険なヘイトスピーチだと指摘。政府には人種差別撤廃条約とヘイトスピーチ解消法に基づき非難声明を出し、継続しているヘイトクライムを終了させる義務があると強調した。(「神奈川」2月7日付)
編集部

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2020年02月17日

「桜」疑惑深まる 醜態さらす官僚 国民の「知る権利」守れ=編集部

 「疑惑」発覚のたび「丁寧な説明をしてまいりたい」と述べてきた安倍首相は、「桜を見る会」疑惑でも、「丁寧な」説明も対応も果たさずに臨時国会閉会で幕引きを図った。だが追及は越年し、年明けの1月14日、憲法学者ら13人が安倍首相を背任の疑いで東京地検に告発。16日には23回目の野党合同追及本部のヒアリングが開かれ、20日には通常国会が始まった。改めて問題を整理しておこう。
 桜を見る会と前夜祭の後援会員ら大量招待と供応は、公職選挙法違反(買収)疑惑をはらむ。前夜祭には、実際の費用と会費5千円との差額の問題があり、安倍事務所が差額を負担なら公選法(寄付行為)違反、ホテル(ニューオータニ)側が差額を負担なら贈収賄だ。
 安倍首相は「安倍事務所が一人5千円を集金してホテル名義の領収書を渡し、集金した現金はその場でホテルに渡した」(11月15日)と説明した。だが参加者の「領収書はもらっていない」との声もある「ホテル名義の領収書発行」は代金の事前支払いが大前提だが、安倍事務所の政治資金収支報告書に「支払い」の記載はない。政治資金規正法違反(不記載)疑惑だ。
 「桜を見る会」は公的行事。19年度の予算は1767万円だが、実際の支出は5519万円と約3倍だ。首相の立場を利用した不正支出が疑われ、公的行事の私物化疑惑もある。
「昭恵枠」は、公私混同の象徴だ。安倍政権は森友事件に続き、「昭恵夫人は私人」と閣議決定したが、共産党の調査によると「昭恵枠の招待者は7年間の累計で143人」に及ぶ。会の招待状も同様だ。安倍事務所は2月中に後援者らに案内状を送っていたが、政府の招待状発送は3月。会当日の開門前から園内で記念撮影させる安倍夫妻の後援者優遇も公私混同だ。
 新年を迎え内閣府が公文書管理法に違反して、13〜17年度の招待者名簿を「行政文書ファイル管理簿」に記載せず、廃棄簿への記載や手続きを無視した名簿廃棄が判明。安倍政権の支えは、内閣府などの忖度官僚の法を無視した公文書管理と、証拠の公文書廃棄や改竄であることが明るみに出た。違反を認めてなお逃げ切りを図る安倍政権追及の核心は国民の「知る権利」を守る闘いだ。 
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

posted by JCJ at 13:12 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月16日

【今週の風考計】2.16─新型肝炎とフェイクが作り出す「現実」

新型コロナウイルスによる肺炎は、クルーズ船内での感染者285人に加え、北海道から沖縄まで日本国内を縦断し11都道府県の各地で感染者53人、死者1人まで出ている。世界でも中国に続く第2位の338人という感染者数だ。もう水際作戦どころか、「国内感染の大流行」を想定し、緊急対策に全力を挙げるときだ。

ところが加藤勝信・厚労相は、国内感染の広がりを否定し続けている。この間、安倍政権は何をしてきたか。正確な情報を公開せず、クルーズ船の乗客を事実上の監禁状態に置き、船内感染を拡大させてきた。
 2週間たって、やっと政府は船内乗客のPCR検査を順次に実施し、70歳以上の高齢者は陰性なら下船を許可したが、多くの人は不安な状態のまま放置・監禁されている。
国内でも、これまで政府はPCR検査キットが高価なうえ検査機関が足りないという理由で、中国渡航歴がある人に限定して検査してきた。だが実際は「万単位の検査を1週間で可能」という証言まで、民間診療機関や医薬業界から出てきている。やっと検査の限定条件は外したが、判断は自治体任せ、保険適用も検討せず、感染した労働者の休業補償もなし。

さらに感染者の人数を隠ぺいするため、政府は「日本の感染者数からクルーズ船の乗客を除くよう」WHOに提案までしている。WHOのテドロス事務局長は、<WHOが主導する新型コロナウイルス対策に1000万ドルを拠出してくれた日本に感謝>とツイートしているから、人数減らし工作の効果が透けて見える。
 1000万ドル(11億円)も拠出できるのなら、まず先に日本国民のPCR検査や医療・治療体制の補充に充てるべきではないか。国民を愚弄するのもいいかげんにしろ。
この1カ月、安倍首相は「桜を見る会」など、都合の悪い事実やデータは隠滅し、違法行為を消してしまう「フェイク」手法を続けてきた。いまや新型コロナ肺炎への対応にまで持ち込み、事態を隠し民間からの協力を妨げてきたと言わざるを得ない。
 <鯛は頭から腐る>の例え通り、トップがそうだから、他にも改ざん隠ぺいがはびこっている。防衛相まで辺野古沖にある「マヨネーズ以下の絹豆腐並み」の埋め立て軟弱地盤データを隠ぺいする。さらに日本原発は敦賀原発2号炉の建屋直下にある断層が「活断層の可能性がある」という調査資料を改ざん。もう「フェイク」の拡がりは底なしだ。

山腰修三さんの<メディア私評>(朝日2/14付)が指摘しているが、こうした隠ぺい・改ざんによる「フェイク」は、「フェイク」に沿った新たな「現実」を、能動的に作りだす恐ろしさである。
 例えば「反社会的勢力」の参加が問われると、「反社は定義困難」と閣議決定される。質問通告後に対象とされた文書がシュレッダーにかけられる。「桜を見る会」に参加したとされる人々が自分のブログ記事を削除する。
 これこそ事実・真実を抹消してしまう「ポスト真実」の恐怖である。政治家・官僚だけの問題ではない。メディアを含め、私たち一人ひとりに関わる深刻な問題である。(2020/2/16)
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2020年02月13日

自民 新ポスターで改憲PR 首相「任期中」強調 市民団体 発議反対署名スタート=丸山重威

 2020年を迎えた政局は、「桜を見る会」問題のほかに「カジノ疑獄」「前法相夫妻の公選法違反」に火がつき、自衛隊派遣に踏み切った中東情勢も予断を許さない事態だ。しかし、安倍首相は、新春所感、伊勢記者会見で、改めて「任期中の改憲」を叫び、自民党は「改憲ポスター」を作成、改憲ムードを駆り立てるのに躍起だ。
 一方、憲法審査会を動かさなかった野党と市民は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「九条の会」など4団体による「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけて、新たに「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」の署名を開始。改憲勢力と地域で全面対決している。
国民の声と強弁
 首相の年頭所感では、「未来をしっかりと見据えながらこの国の形に関わる大きな改革を進めていく。その先にあるのが憲法改正」と表明した。
 第2次政権での年頭所感は8回目だが、憲法改正に言及するのは14年以来2回目で、自民党総裁任期が21年9月と迫る中、改憲姿勢を改めて鮮明にした。6日の伊勢神宮での記者会見でも「私自身の手で成し遂げていく考えには全く揺らぎはない」と強調。「参院選や最近の世論調査でも国民の声は改憲議論を前に進めよということ」「国会議員として改憲への国民的意識の高まりを無視することはできない」などと強弁した。
 さらに首相は、12日のNHK番組で、衆院解散・総選挙に関して「今は考えていない」としながら「解散すべき時が来たと思えば解散に躊躇はない」と発言。「補正予算を上げたあと、野党の準備が整わないうちに解散するのではないか」との観測も浮かんでいる。
国会は問題山積
 自民党が憲法改正を訴えるポスターを作るのは初めてで、キャッチコピーはともに「憲法改正の主役は、あなたです」。草原を背景にしたものと男女のイラストを配したものの2種類で、草原のポスターでは「話し合おう!考えよう!」、イラストのポスターは、「さあ、みんなで考えよう」と訴え、各4万枚を作り1月末から自民党の憲法集会などで活用する。
 平沢勝栄広報本部長は「一般の国民の理解をいただくには、もっとムードを盛り上げていく必要がある」と語り、安倍首相を起用しなかった理由を「憲法改正は首相がやるというより、国民がやることだ」と説明した。
丸山重威
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月12日

【イベント案内】永江朗氏・講演会のお知らせ

なぜヘイト本が作られ売られるのか
─出版倫理と人権─

人格を傷つけ‶憎悪≠あおるヘイト本─なぜ本屋に並ぶのか!
書き手・出版社・取次・書店の現場を取材し、
「売れればいい」で通る出版産業の欠陥を炙りだす。
あらためて〈出版倫理と人権〉について鋭く問う。

講演:永江 朗
1958年生まれ。ライター。最新刊『私は本屋が好きでした─あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス)

日時:2月21日 (金) 18:30開会(18:15〜開場)
場所:YMCAアジア青少年センター
東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎03-3233-0611
アクセス地図 https://www.confetti-web.com/site_map.php?site_code=2356
参加費:800円(会員・学生500円)
チラシPDF版出版部会2・21永江 朗氏講演会チラシ(完全版).pdf

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2020年02月11日

【リレー時評】 「サンデーモーニング」新春特集は出色=吉原功

 1月5日、TBSサンデーモーニングは時間を延長して特集「幸せになれない時代―分断と格差 深まる世界」を放映。お笑いやオリンピック企画の多い新春番組の中で、現代社会を深く見つめた硬派番組として出色だった。
 特集は、チリ、フランス、メキシコ、香港などの大規模な街頭デモの様子を流したあと、「国民所得が上がっているのに幸福度は低下」している米国を、街頭インタビューを交えながら紹介。
そのなかで保守系ラジオのDJ A・ジョーンズの場面は衝撃的だ。「私は25年間、情報戦争で闘い、叫んできた」という彼の叫びはSNSやケーブルTVでも流れ、数百万人の視聴者がいるという。「トランプ大統領には民主党を脅かす独裁者になってほしい」「彼の番組は人生を変えてくれます。真実を教えてくれるからです」との声を拾う。
「情報戦争」という用語は日本右翼の「歴史戦」を彷彿とさせる。いずれも事実や真実は問題ではなく「勝つ」ことが目的。
 ドイツで急激に支持を広げている、経済格差に苦しむ旧東独に基礎をおく右翼政党AfDも同じく衝撃的だ。「ヒトラーは絶対悪ではない」と、かつて発言した党首は「我々が国境を守らなければ歴史的に価値の高い文化が破壊される」という。
 哲学者内山節氏は「どう展開するか解らない混沌の時代へ歴史は向かっている」という。番組はその主な要因に次の5点をあげる。
 「経済格差」「移民と難民」「人種差別」「民主化要求」「温暖化問題への対応」。これを受けコメンテーターの寺島実郎が<冷静終了後30年、民族・宗教・格差問題が吹き荒れている。とりわけトランプ政権下で株価が4割上がったが、金融経済の肥大化で、実質GDPの4倍を超すマネーゲームが展開され、その恩恵を受ける人と全く関係のない人のギャップが格差を生んでいる>
と核心をつく。
 資産上位26人の資産総計150兆円が世界の下位38億人の総資産に相当(オックスファム、2019年)するという、目の眩むような格差を生んだのはアメリカ起源の新自由主義と番組は指摘、トリクルダウンという喧伝はウソだったと指摘、このようなシステムを変えなければいけないと結論する。
 さらに、S・フロイトやE・フロムの「成長欲求」と「退行欲求」の葛藤理論を紹介しつつ、「いままでの成長の流れから退行の流れに歴史の逆行が始まった」「今は成熟拒否の世界」という加藤諦三氏の言を紹介し、さらに次のようなコメントを結論的に示す。「アメリカ・ファースト」も「EU離脱」も「軍事力拡大」も、「フェイク・暴言」も無意識の退行であり幼児化である。
 この特集は世界各地に取材し、街頭の人々にもインタビューしてその声を拾っている。番組制作費が削減されている民放局作としても評価できよう。NHKにのみ放送予算が集中している現在の構造を再編すべきときではなかろうか。
吉原功
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

posted by JCJ at 11:13 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月10日

【リアル北朝鮮】 今年最初の視察は肥料工場 金委員長「食料」アピールか=文聖姫

 新年早々、イラン・イスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官が米軍のドローン攻撃によって殺害されたとの衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。イランは報復措置としてイラクにある米軍拠点を攻撃したが、米政府は軍事力を行使せず、寸でのところで軍事衝突は回避された。北朝鮮はこの事態をどう見ているのか。
 国営・朝鮮中央通信は11日、ソレイマニ殺害からイランの米軍基地攻撃に至るまでの出来事を客観的に報じたが、いまのところ北朝鮮政府の見解などは発表していない。米国をあからさまに非難することもしていない。
 また、潜伏して表に出てこないのでは?という大方の予想を裏切って、金正恩・朝鮮労働党委員長はソレイマニ殺害後に公の場に堂々と姿を現した。7日発朝鮮中央通信が、金委員長の肥料工場建設現場の視察を報じたのである。
 昨年12月28〜31日、北朝鮮の平壌では朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会が開かれた。事前に「重大な問題を決定する」と予告していた総会では、金委員長が「世界は遠からず朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新たな戦略兵器を目撃することになる」と宣言した。新たな戦略兵器とは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を指すのではないかと言われている。
 安保面ばかりが注目されたが、実はこの総会は、米国との交渉膠着が長引くことを予想して、制裁下でいかに難関を突破するかを協議する場であったと筆者はみている。結論的に言うと、金委員長は「正面突破戦」で難関を克服するよう全国民に呼び掛けた。
 そして、今年最初に視察する場所として選んだのが肥料工場の建設現場だった。最高指導者が食料問題解決のためにいかに尽力しているかをアピールする面もあろう。
 国の状況が目に見える形で悪くなっていると、総会で率直に語った金委員長。北朝鮮は今年、どう動くのか。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号


posted by JCJ at 09:52 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月09日

【今週の風考計】2.9─いまも思いだす石牟礼道子さんのオーラ

◆『苦海浄土─わが水俣病』(講談社)の出版から50年、著者の石牟礼道子さんが90歳で亡くなって、この10日で丸2年になる。石牟礼さんは、チッソという会社が熊本不知火の海″を有機水銀で汚し、人間と自然を破壊した水俣病のおぞましさを告発し続けてきた。かつ苦しむ人々に寄り添い、一緒に悶えながら、見捨てられた魂の救済に生涯をささげてきた。
◆8日に開かれた講演会<石牟礼道子の世界>に参加し、語る米本浩二さんの話に聴き入りながら、あらためて「人間の尊厳とは、命の回復とは、…」考えこまざるを得なかった。
 水俣病の発生が公式に確認されたのが1956年5月、いまから64年前だ。『苦海浄土』の第三章<ゆき女きき書き>の「もう一ぺん人間に」と題された掌作の中に、次のような「ゆき」がつぶやく叙述がある。

◆<人間な死ねばまた人間に生まれてくっとじゃろうか。うちゃやっぱり、ほかのもんに生まれ替わらず、人間に生まれ替わってきたがよか。うちゃもういっぺん、じいちゃんと舟で海にゆこうたる。うちがワキ櫓ば漕いで、じいちゃんがトモ櫓ば漕いで二丁櫓で。漁師の嫁御になって天草から渡ってきたんじゃもん。>

◆「ゆき」が語る、この「じいちゃん」茂平も、そして不知火の海″沿岸の住民も、長い間なにも知らされずに、サワラやコノシロなどの魚を朝昼晩とわず食べてきた。それが猫の狂い死にから漁民の手足の痺れへと広がり、ついには足腰が立たず、目も弱くなり、言葉ももつれるようになった。まさに神経系疾患を発症し「水俣死民」を誕生させたのだ。
◆他人の苦しみに深く感応し、見過ごせない石牟礼さんは「悶え神」として患者に寄り添い、漆黒ののぼり旗に白抜きで「怨」の文字を刻み、水俣病闘争に「加勢」する。
<水俣病事件の全様相は、…公害問題あるいは環境問題という概念ではくくりきれない様相をもって、この国の近代の肉質がそこでは根底的に問われている>
との認識に立ち、3年にわたって水俣―東京間を往復し、座り込みや「死民」のゼッケンをつけての街頭行進に投入する。しかし金銭的解決に矮小化されていく道筋に、満たされぬ石牟礼さんの「魂」は、新たな地平に向けて歩みだす。

◆さて『苦海浄土』が講談社文庫に収載・刊行されたのは、1972年12月15日。「水俣病闘争」の激しい時期だ。この文庫化作業にあたった女性編集者から、「石牟礼さんは、原本に赤字をいっぱい入れてきた。それを整理して送り返すと、またも赤字を入れてくる」苦労を聞いた。それだけ文字に「魂」を、入れ込もうとしていたことが分かる。
◆その後、彼女から引き継いで担当することになり、重版の連絡や読者からの問い合わせなど、電話や手紙でコンタクトしていたが、1990年代中頃だったか、石牟礼さんが講演で上京した折、お会いすることになった。短い時間、何を話したかなど問題でなく、石牟礼さんの体から、何かオーラのような光が発しているのを感じてしまい、身がすくんだことが、今でも忘れられない。(2020/2/9)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月08日

2020年核廃絶へ正念場 初のNY原水禁世界大会 核禁止条約発効できるか=松村真澄

賞状授与.jpg
 日本のメディアは、五輪で大騒ぎしているが、2020年は、広島・長崎への原爆投下から75年の節目。在京紙では、唯一、東京新聞の連載、「2020年 核廃絶の『期限』」が目立った。このタイトル「期限」の由来は、03年、平和市長会議が「2020年ビジョン」を決議、「被爆者が存命のうちに核なき世界の達成」と訴えたのに基づく。1982年設立した同会議は、163カ国・地域、7861都市が参加している。
高まる国際世論
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は2017年のノーベル平和賞を受賞。これは核兵器禁止への国際世論の高まりを象徴していた。
 条約は、「核兵器の開発、実験、生産、製造、使用、保有」に加え「使用するとの脅威」をも禁止。50カ国が批准すれば発効するが、現在34カ国が批准しており、ICANなどは五輪期間中の発効を目指して各国に働きかけている。
 原水禁世界大会は今年初めてニューヨークで開催されることになった。呼びかけたのは、日本の原水協、原水禁、日本被団協の3団体のほか、米国のフレンズ奉仕委員会、英国の核軍縮キャンペーン、国際平和ビューロー、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)など。核不拡散条約(NPT)再検討会議の開催に合わせ、4月24日から26日まで、マンハッタンで大会を開き、集会やデモ、「ヒバクシャ国際署名」提出などを行う。  日本国内ではすでに代表の派遣運動が始まっている。
情勢はきびしい
 しかし、NPT発効50年といいながら、世界の核情勢は極めて厳しい。昨年5月の準備委員会では、イスラエルの核保有をめぐり米国が拒否、本年の本会議も前回15年会議同様、決裂の危険性が高いといわれている。
 米国、ロシアは新型核兵器を開発し、中国、インド、パキスタンは核兵器を増強、北朝鮮も核の力を強化しつつある。
 全ての加盟国に誠実に核軍縮交渉を義務づけたNPT6条に基づく中距離核戦力(INF)全廃条約は昨年失効、包括的核実験禁止条約(CTBT)は成立から20年を経て今も未発効だ。
 核保有国と非保有国との溝が深まる中、日本政府は「両者の橋渡しをする」と言いながら、核兵器禁止条約に反対し、唯一の戦争被爆国としての責任を放棄している。
 昨年日本を訪れたローマ教皇フランシスコは、核兵器禁止条約発効の必要性を述べ、被爆者と時間をかけて言葉を交わし、「核兵器使用と同様、保有も道義に反する」と語った。教皇は「被爆者の預言的な声が何よりも次世代への警告として役立つ」とも強調した。
 今年8月の原爆投下75年の広島の式典には国連グテレス事務総長が参加、IOCのバッハ会長も聖火リレーに合わせ5月に広島を訪問するという。ローマ教皇がつないだ平和のメッセージ・リレーは、2020年にも引き継がれる。
 日本政府も昨年の国連総会には「未来指向型の対話」を提案、核軍縮賢人会議の議長レポートは核兵器廃絶のための「困難な問題」への検討と対話を呼びかけた。日本の市民社会は政府に、この立場を更に前進させ、実効的に具体化するよう求めなければならない。
「核の傘」は戦争の「抑止」ではなく、相手国の胸元に突きつけた刃であり、相手国の軍拡を促すことだ。
 2020年は、核廃絶へ向けての正念場だ。
松村真澄(ピースボート国際担当)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月07日

植村札幌控訴審 司法の歪みここまで不当判決に抗議 日本ジャーナリスト会議声明

 韓国で初めて名乗り出た従軍慰安婦の証言を1991年に記事にした元朝日新聞記者植村隆さんが、自身を「捏造」記者と攻撃した櫻井よしこ氏と週刊新潮、週刊ダイヤモンド、月刊WiLLを発行するワックの出版3社を訴え、名誉回復を求めた植村訴訟控訴審で札幌高裁(冨田一彦裁判長)は2月6日、植村さんの訴えを退ける不当判決を言い渡した。
 植村さんへのいわれのないバッシングは記事執筆から四半世紀後の2014年、朝日新聞が「韓国・済州島で慰安婦狩りをした」との吉田清治証言関係記事を「誤報」として取り消したことから巻き起こった。櫻井氏らはこれを「朝日新聞が慰安婦問題を捏造した」とすり替え、「慰安婦問題はなかった」と歴史的事実をゆがめ、歴史認識を書き変える手段として植村さんへの個人攻撃を展開した。その結果、植村さんは「慰安婦問題捏造記者」とレッテルを貼られ「家族を殺す」などの脅迫をはじめとする卑劣な攻撃にさらされて本件提訴に至った。
 だが、櫻井氏らの主張は真実か。慰安婦についての日本政府の公式定義は「いわゆる『従軍慰安婦』とは、かつての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのこと」であり、慰安婦犠牲者は日本軍に「性的慰安」の奉仕を強制され、被害と苦痛を訴える人々である。だからこそ日本政府は被害者に橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の各総理大臣が署名した手紙を送り、「おわびと反省の気持ち」を表明したのである。
 一方、櫻井氏らは2007年、米紙ワシントン・ポストに「日本軍に配置された『慰安婦』は『性奴隷』でなく公娼制度の下で働いていた『売春婦』だ」との意見広告を掲載している。もちろん櫻井氏らがそういう意見を持つのは「自由」だが、裁判所が国の公式見解も歴史認識も踏まえず、名誉棄損の法理すら無視した「真実相当性」の認定で櫻井氏らを免責するのは根本的な誤りであり、司法の歪みと言わざるをえない。
 このような判決がまかり通れば、言論の自由、ジャーナリズムはおろか日本の民主主義が死滅する。札幌高裁の不当判決に強く抗議するとともに、日本ジャーナリスト会議は今後も植村さんを支援し、歴史修正主義と闘っていく。
                                       2020年2月7日
                                 日本ジャーナリスト会議(JCJ)

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2020年02月06日

【映画の鏡】 カンヌで韓国初の最高賞パルムドール『パラサイト 半地下の家族』 貧者と金持ちの衝突で起きた亀裂=今井潤

 ソウルの半地下住宅に住む貧しい4人家族。父はたびたび事業に失敗するが、楽天的な性格、元ハンマー投げ選手の母、大学受験に落ち続ける息子、美大を目指すが、予備校に通う金もない妹。
 半地下の家は暮らしにくい。窓を開ければ路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が弱い。家族全員、ただ普通の暮らしがしたいと思っている。
 そんな時、有名大学生の息子の友人が訪ねてきて、「僕の代わりに家庭教師をしないか」と留学中の代役を頼む。息子が向かったのは高台の大豪邸、IT企業の社長の自宅だった。若く美しい妻が娘の部屋に案内する。
 偽造した大学在学証明書を警戒することもなく、母と娘の心をつかんでいく。「もう一人紹介したい家庭教師がいるんです」と妹を紹介、末っ子の教師となり、恐るべき速さで手なずけていく。
 こうして、父は自家用車のドライバーに、母は家政婦としてこの大豪邸で働くことになり、物語は波瀾万丈の展開となる。
 父を演ずるソン-ガンホは「殺人の記憶」、「グエルム漢江の怪物」に出演、最近の話題作「タクシ―運転手〜約束は海を越えて〜」の韓国の人気スターだ。
 昨年カンヌで韓国初のパルムドールを受賞したこの作品は血なまぐさい、荒唐無稽な結末へ向かうが、筆者は現代社会を表すための監督の表現とみている。
 ポン・ジュノ監督は「今日の資本主義社会には、目に見えない階級やカーストがあります。本作はますます二極化のすすむ社会の中で、二つの階級がぶつかり合う時に生ずる、避けられない亀裂を描いているのです」と述べている。
(公開は1月10日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか)
今井 潤
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

posted by JCJ at 13:30 | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月05日

【月刊マスコミ評・出版】 ルポ「コンビニ絶望経営」に注目=荒屋敷 宏

 第2次以降安倍内閣は、わずか7年間に消費税率5%から8%に、さらに10%への2度にわたる増税で合計13兆円もの大増税を強行した。2020年の日本経済は、「令和不況」の足音が早くも聞こえてきている。
 ジャーナリストの斎藤貴男氏が「世界」(岩波書店)1月号と2月号に発表したルポ「コンビニ絶望経営」(上・下)に注目した。「セブン−イレブン」東日本橋一丁目店のオーナー店長の死の謎を追うところから始まる。店長は、「9年間、365日24時間営業の店を年中無休で切り盛りし、多額の借金を背負った挙げ句、最愛の息子を失い、ついには縁もゆかりもない土地で、非業の死を遂げた」という。
 コンビニ経営の実情は、悲惨である。コンビニオーナーの死亡率が他の業種に比べて異常に高いという。妻が朝7時から夜10時、夫が夕方6時から翌朝8時、長男や次男も駆り出す家族経営となり、「家族全員が販売期限の切れた廃棄弁当を食べ、仕事の合間を縫っては、バックヤードに敷いた段ボールで仮眠をとった」との実情は、すさまじい。
 コンビニの本部社員が商品発注の締め切り時間ギリギリにやってきて、恵方巻などを「無断発注」し、大量仕入れを強要する等々。今年も予想される恵方巻の大量廃棄を生み出しているのは、コンビニ本部なのだ。加盟店の向かいに加盟店を出店させて、「共食い」を生み出すのもコンビニ本部。斎藤氏は、コンビニ店主が消費税の納税額分を回転資金に流用してしまいがちであることを指摘している。
 フランチャイズ契約とは、斎藤氏の言葉を借りれば、「本部による加盟店の一方的な搾取」「奴隷契約」だ。斎藤氏は、「日本にはフランチャイズ契約をきちんと規制する法整備がなされていない現実をご存じか」と提起している。本部に反乱を起こしたオーナーや普通の小売業と異なる「コンビニ会計」の話は、「世界」2月号に登場する。
 ほかに、読み応えがあったのは、「週刊朝日」1月17日号、元文部科学事務次官の前川喜平氏と作家の桐野夏生氏の対談「若者荒廃に危機感 現代の深層に何が?」だった。なぜ荒廃しているのか。桐野氏が「一つの大きなほころびの中で、若い女性も男性もあがいているような感じがするんですよ」と言えば、前川氏は「私が非常に危機感を抱いているのが、国全体として人を大切にしない政治がずっと続いていることです」と語る。現実をいかにリアルに見るか。課題は、そこにあると思う。
 荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月04日

【沖縄リポート】 総工費などの試算変更 防衛省に焦り=浦島悦子

 昨年12月27日の地元紙1面トップに「新基地土砂全て県内調達」という衝撃的な見出しが躍った。防衛省がこれまで、3分の2以上を県外から運び込むとしていた辺野古新基地建設のための埋め立て土砂(岩ズリ)や、海底の軟弱地盤改良のための海砂を、沖縄県内で全量調達する方向で検討しているというのだ。
 とっさに、沖縄の山も海も滅茶苦茶に破壊される!という危機感で背筋が寒くなった。日々、土砂搬出されている本部半島の採石場は既に惨憺たる光景をさらしているし、私の住む地域でも以前から、海砂採取による海岸の浸食や、海底地形が変化し魚が獲れなくなったという嘆きの声がある。そもそも、当初、県内調達予定だった土砂や海砂が県外調達になったのは、あまりにも深刻な自然破壊の予測に県民の大反発が起こったからだった。
 それが再び県内調達に回帰するのは言語道断だが、見方を変えれば、前回報告したような、県外土砂搬出予定地の人々による「辺野古に土砂を送らない」運動の広がりや、県外土砂による外来種侵入を規制する沖縄県土砂条例の制定などが、政府を追い込んだ「成果」とも言えるだろう。
 むろん、このような無謀な計画変更を沖縄県が承認するはずもないし、土木技師の北上田毅さんも、「量的には県内調達可能だが、運搬船が狭い海域に集中して作業できないだろう」と、全量県内調達は無理だとする。
 防衛省は同時に、辺野古新基地の総工費を9300億円(5年前に示した金額の2.7倍)、工期を、計画変更に対する沖縄県の承認から12年とする試算を示した。「工費2兆5500億円、工期13年以上」とした沖縄県の試算を否定していた防衛省自らが、このような試算を出さざるを得なくなったのは、追い込まれている証拠だ。大浦湾の軟弱地盤改良は技術的に不可能との見方も多い。どこから見ても無理無謀な工事をやめないのは、一度始めた公共工事を止めるわけにいかないという面子なのか、はたまたゼネコンの圧力か…?
一触即発の中東情勢に、米軍基地と隣り合わせに暮らす沖縄県民は不安を募らせている。軍事基地は内にも外にも不幸しか生まない。新基地建設を断念する「勇気」を政府に強く求めたい。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

posted by JCJ at 16:23 | 九州・沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月03日

【月刊マスコミ評・新聞】 障害者殺傷公判 匿名審理正しいか=徳山喜雄

 障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺害され、26人が負傷した事件の裁判員裁判が始まった。植松聖被告の「障害者は生きていても仕方がない」という言葉が改めて衝撃をもたらし、匿名審理を巡っても議論が巻き起こった。
 裁判では横浜地裁が被害者の名前を法廷で明らかにせず、「甲A」「乙B」といった記号で呼ぶことになった。しかし、19歳の娘を失った母親がこのことに違和感を覚え、名前を公表した。
 名前は美帆さん。毎日が1月8日朝刊の1面トップにし、社会面でも大きな受け記事を掲載、手厚く報じた。遺族提供の4枚の美帆さんの写真が目を引く。「美帆は一生懸命生きていました。その証を残したいと思います。美帆の名前を覚えていてほしいです。……娘は甲でも乙でもなく美帆です」とする手記(要旨)も読ませた。
 法廷の様子も通常の裁判とは違ってくる。84席ある傍聴席の3分の1が被害者遺族や負傷者の家族に割り当てられ、遮蔽板を置いて他の傍聴人からは見えないようにした。日経は「匿名審理 揺れる遺族」との連載記事で、匿名化について掘り下げた(1月7日朝刊)。
「最高裁によると、09〜18年で(刑事訴訟法が定める)秘匿制度の適用が認められた被害者は約3万8900人に上る。認められなかったケースは約560人にとどまる。法廷での『匿名』は珍しい光景ではなくなっている」とする一方で、「一人ひとりの命の重み、事件の悲惨さを具体的に知ってほしいとの願いから、実名での審理を望む犯罪被害者遺族もいる」と読み解いた。
 さらに日経連載は「匿名のままでは事件の風化につながる恐れがある」とし、読売も初公判を報じる記事(1月9日朝刊)のなかで「匿名化により社会の関心から遠ざかる」という声を伝えた。
産経(1月9日朝刊)は、「全国知的障害者施設家族会連合会」(神戸市)理事長の「社会にはいまだに障害者への根強い差別感情がある。今回、司法がこういう決定をしたことで、差別意識を助長することにならないか心配だ」とする談話を紹介した。匿名審理が「差別意識の助長に繋がる」との視点も見逃せない。
 被害者の実名をどう報じていくのか。さらなる議論が求められる。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月02日

【今週の風考計】2.2─危ない! 「豚コレラ」に「ピーファス汚染」

新型肺炎に対するWHOの動きにヤキモキしていたが、ついに30日「緊急事態宣言」を発した。だが遅きに失したとの批判は免れない。
 この1週間ほどで中国国内での感染者は1万3700人を超え、死者も304人と幾何級数的に増大し、国外でも26カ国・地域に拡大している。
日本では感染者20人、人から人への感染が確認されている。やっと政府は「指定感染症」と定め、入国時には診察検査を行い、従わないときは罰則も課すこととなった。さらに強制的な入院や一定期間の休業指示も可能になる。合わせて感染予防と受け入れ態勢、診療・医療へのフォローが、きわめて緊急になっている。

「新型コロナウイルス」だけではない。遅きに失しないよう、緊急にとり組まねばならぬウイルス対策は他にもある。群馬・岐阜・沖縄など、日本で広がる「豚コレラ」(CSF)への対処だ。先月末に成立した家畜伝染病予防法によって、「豚コレラ」の蔓延を防ぐ「予防的殺処分」が可能になった。
 いまアジア地域に広がる「アフリカ豚コレラ」の侵入は、有効なワクチンが存在しないだけに、なんとしても防がねばならない。

もっと深刻なのは、後手に回っている「ピーファス(PFAS)汚染」への対策である。日本の米軍基地から高濃度の有害物質がダダ洩れし、地下水の汚染や飲料水に深刻な影響をもたらしている。
 これまで指摘されてきた沖縄の米軍基地周辺で深刻化する有機フッ素化合物「ピーファス」(PFAS)による地下水の水質汚染が、東京の横田基地周辺でも確認されたのだ。
 東京都は昨年1月、横田基地に近い4カ所の井戸を調査。立川市の井戸では、米国の飲料水の適正値から超えること、19倍という数値が検出された。これを受け都は飲料水の水源を、地下水から川の水などに切り替え、「ピーファス」濃度を下げる措置を取った。
有機フッ素化合物「ピーファス」は、耐熱・撥水に優れ、紙皿や調理道具のテフロン加工材として、また軍事訓練や防災訓練での消火剤としても使われてきた。「ピーファス」は数千年もの間、分解されずに水中や空気中を漂う。摂取すれば体内に「永遠の化学物質」として残る。しかも人体への影響が研究され、がん、肝機能障害、甲状腺疾患、発達障害との関連性が明らかとなってきた。
横田の米軍基地では「ピーファス」を含む泡消火剤を、2010年から7年間で、総計3161リットルも使用している。これが地下水に流れ込み、汚染を招いたとの疑念はぬぐえない。
 現に沖縄では、7つの市町村45万人の水が「ピーファス」で汚染され、その源は基地内から漏出する真っ白な泡の消火剤にあるといわれている。

「日米地位協定」に阻まれ、米軍基地内で調査ができない以上、すでに沖縄県が実施しているように、横田基地周辺を包囲する形で、井戸水のモニタリング調査をし、汚染源を特定し、被害状況や今後の影響を予測するのは不可欠だ。
 WHOでも「ピーファス」の人体への影響をとらえ、国際的に製造や使用の禁止が謳われている。だが遅れに遅れる日本の厚労省は、やっと「ピーファス」汚染を防ぐためのガイドライン値までは、この春、出すまでになった。一刻も早く製造・使用の禁止へ踏み出せ。(2020/2/2)
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2020年02月01日

カジノ疑獄 整備計画に変化 外資が群がる構図せん明に 横浜の反対集会に2千人=藤森研

雨の中のカジノ.JPG 
 安倍政権が成長戦略の柱として推進する、カジノ導入などのIR(統合型リゾート)計画に暗雲が広がり始めた。IR担当副大臣だった秋元司衆院議員が、事業参入を狙う中国企業からの収賄容疑で逮捕された。横浜市民らからは以前より誘致反対の声が挙がっており、計画が修正される可能性もありえよう。これを機に立ち止まって、ギャンブル依存症の日本の実態についても一度きちんと考えてみたい。
 秋元議員は否認しているようだが、贈賄側の供述や職務権限などから東京地検は強制捜査に踏み切った。事件の構図は、日本でのカジノに外国資本がよだれを垂らして群がって来るありさまを浮かび上がらせた。
横浜情緒を破壊
 横浜市民らによるカジノ誘致反対運動は至って活発である。昨年12月22日には氷雨にもかかわらず、横浜・山下公園に主催者発表で2千人もの市民が集まり、「カジノはいらない 勝手に決めるな」と声を挙げた。同市では、市長選で「白紙」を強調しながら、突然誘致を言い出した林文子市長への不信、風紀の乱れなど横浜情緒の破壊などへの反発も強いが、やはり大きいのはギャンブル依存症への不安だろう。集会でも、「ギャンブル依存症対策を取ると言うが、最大の依存症対策はカジノをつくらせないこと」「金が欲しいからと誘致する林市長こそカジノ依存症だ」などの発言が相次いだ。
 実は、日本は今すでに「ギャンブル依存症大国」である。厚生労働省の研究班が2014年に公表した調査結果によると、「ギャンブル依存症の疑いあり」が4・8%にのぼった。人口では536万人になる。同様の調査で諸外国は人口の1〜2%にとどまっていた。
「有病率」高い
 同省が2017年に発表した1万人面接調査によっても、生涯のうちに一度でもギャンブル依存症だった疑いのある人は推計3・6%、人口換算で約320万人。同じ判定基準で調査した海外各国は1〜2%以下の国が多く、日本の「有病率」は明らかに高い。
 主な原因は、パチンコ・パチスロの蔓延である。患者家族らの会の2015〜16年の調査では、パチンコ・パチスロが依存の対象として最も多く(92%)、ついで競馬(19%)、競艇(6%)などだった。
 最新データによると、世界中で合法的に導入されているゲーミングマシンは約740万台。うち半数以上の約430万台が日本にある。パチンコ・パチスロだ。日本はすでに「ギャンブル大国」でもある。それが高い依存症率を生んでいる事実を直視しなければならない。
 カジノを誘致する前に、政府もマスメディアも、すでにある日本のギャンブル依存状態に対し、きちんとメスを入れるべきだ
藤森研(神奈川支部代表)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月31日

【イベント案内】日本初!川崎市ヘイト禁止条例の意味=神奈川支部

JCJ神奈川支部2月例会
日本初!川崎市ヘイト禁止条例の意味
 〜神奈川新聞石橋学記者に聞く〜

 昨年12月、川崎市議会は「差別のない人権尊重のまちづくり条例」を全会一致で成立させた。今年7月には全面施行される。日本で初の、ヘイトに対して罰則を科す条例の制定である。朝鮮半島出身の人々が集住する川崎市では近年、「朝鮮人は日本から出ていけ」などのヘイトスピーチをまき散らすデモが行われ、市民の人権を脅かしてきた。条例制定の意義は大きい。講師は、神奈川新聞でヘイトスピーチを鋭く批判してきた石橋学記者。条例制定の意味を聞く。
 
 また石橋氏は、昨年2月にヘイト団体が川崎市の会館で開いた集会での、「実は旧日本鋼管でいわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領しているんですけれども」などのヘイトスピーチを、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と厳しく批判し報じたところ、ヘイト発言者は石橋氏を名誉棄損で訴えてきた。裁判は現在、横浜地裁川崎支部で審理が進められている。その裁判についても話をうかがう。

日 時  2020年2月1日(土)午後2時〜午後4時
会 場  横浜市開港記念会館6号室
     横浜市中区本町1−6 TEL045−201−0708
講 師  石橋 学(神奈川新聞記者)
参加費  500円 
主 催  JCJ神奈川支部
問合せ 保坂 080−8024−2417
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2020年01月30日

ズサン調査スクープから半年 陸上イージス配備計画見直しなるか 秋田魁記者・最新リポート

新屋演習場と住宅街.jpg
 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を秋田市に配備する計画は、昨年6月に秋田魁新報が防衛省調査のずさんさをスクープして以降、大きく揺れ動き続けている。防衛省は配備候補地を「ゼロベース」で見直すとして再調査を実施中。住宅地に隣接した陸上自衛隊新屋演習場への配備計画が見直されるかどうかが今後の焦点だ。
官邸サイドが動く
 「『住宅地との距離も考慮して評価するよう防衛省に指示した』と、官房長官からそういう話を伺った」。昨年11月20日、首相官邸で菅義偉官房長官と面会した佐竹敬久秋田県知事は、直前のやりとりを報道陣にこう明かした。
 防衛省は、新屋演習場が配備に適しているかに関する調査のずさんさが秋田魁新報のスクープで明らかになって以降、「ゼロベースでの再調査」を掲げ、新屋演習場を含む青森、秋田、山形3県の国有地20カ所を対象に配備の適否を再検討する作業を進めている。そうした中で、省庁に大きな影響力を持つ菅氏が「住宅地との距離」を考慮要素に挙げた発言は大きな意味を持つ。住宅地に近い新屋演習場が大きなマイナスポイントを抱えることになるのは明らかであり、佐竹知事は5日後の会見で「初めてそういう具体的な発言が官房長官からあったということは、当然官邸サイドでも動いているということだと思う」と述べ、配備候補地見直しへの期待感をにじませた。
17議会が「反対」
 防衛省調査のずさんさが明らかになって以降、秋田では「反新屋」のムードが高まる一方だ。
 7月の参院選では、配備反対を訴えた野党統一候補の新人が、自民現職に勝利。8月には、秋田市を地盤とする冨樫博之衆院議員(秋田1区)が「新屋への配備はもう無理」という考えを防衛省に伝えたことを明らかにした。
 配備反対の請願や陳情を市町村議会が採択する動きも広がり、12月議会までに県内25市町村のうち17市町村の議会が採択した。
 昨年12月10日には、共同通信が「政府が新屋演習場への配備計画を見直す方向で検討に入った」とする記事を配信し、翌日付の秋田魁新報など全国の地方紙・ブロック紙が掲載。他の通信社や全国紙も同趣旨の報道で続いた。
「新屋」拒否は不変
自民、公明の県組織は新屋配備反対を公式には唱えていないが、12月20日には、自民党県連青年局が「人口密集地にあまりに近く、県民の不安が大きすぎる。適地であるとはとても言えない」とする意見をフェイスブックで公表するという動きもあった。
 こうした中、配備計画が浮上した当初は配備の是非についてあいまいな発言を繰り返していた佐竹知事や穂積志秋田市長の発言も様変わりした。「住宅地との近さが一番重要な視点。後戻りするかもしれないけれども、賢明な判断を求めたい」(10月21日の会見で佐竹知事)、「(新屋配備について)市民の理解を得るのは難しいと、河野太郎防衛相にはっきり伝える」(1月9日、秋田市新屋地区の新年会で穂積市長)。こうした発言は、住民の間でおおむね好感を持って受けいれられている。
 防衛省が行っている再調査の期限は3月20日。得られたデータを基に、3県20カ所の国有地を「ゼロベース」で見比べて配備候補地を決めるというのが、防衛省の示しているシナリオだ。
 再調査の結果、防衛省が再び新屋演習場への配備方針を打ち出したとしても、地元の理解を得られる可能性は限りなく低いのが、秋田県内の現状といえる。
松川敦志(秋田魁新報社編集委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年01月29日

判決「うれしい誤算」 責任とらせるまで追及続ける 森友疑惑情報開示 木村真市議寄稿

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 昨年12月17日、私が原告となって国を相手に争っていた森友裁判で、大阪高裁が原告側請求を全面的に認める判決を下した(国は上告せず、判決確定)。
2017年2月8日。私は、前年9月に豊中市内の国有地を森友学園に払い下げた売買契約書を公開請求したところ、売買金額や一部条文などが黒塗り・非公開とされたことは不当だとして、国を相手に裁判を起こした。この提訴をきっかけに売買金額が1億3千万円余という極端な低額であったことが分かった。安倍首相が「私や妻が関与していたなら、総理大臣も国会議員も辞める」と述べたことで、政局を揺るがす一大疑惑に発展した。その森友問題の発火点となった裁判で、国が全面敗訴したのである。
 昨年5月の大阪地裁判決では、金額を隠したことは違法とする一方、地下埋設物があることが記載された条文を非公開としたことについては適法とする、原告一部勝訴だった。こちらが控訴した高裁では弁論1回で結審した。間違いなく控訴棄却・原審維持だろうと思った。「忖度判決 恥を知れ!」というプラカードを20枚作成して傍聴者が手分けして法廷内に持ち込み、裁判長が「控訴を棄却する」という主文を読み上げた瞬間、私の「お前なんか裁判官辞めてまえ!」というヤジを合図に一斉に掲げるという段取りをしていた。
国は早期終結狙う
 ところが裁判長は「原審を変更する」。えっ?!「被控訴人(国)は控訴人(木村)に対し、(請求そのままの)11万円を支払え」。思わず隣の当方代理人弁護士さんに「勝ったってことですか」と尋ねると「全面勝訴や!」。傍聴席へ向かって「勝ったみたい」と声をかけると歓声が上がった。用意した抗議のプラカードは出番なし、「勝訴」の垂れ幕も用意しておらず(「不当判決」だけ持ち込んだ)、大阪弁護士会がノベルティ用につくった「勝訴」と書かれたタオルを持っている傍聴者がいたのでこれを拝借し、裁判所前で記念撮影した。
「嬉しい誤算」判決となったわけだが、喜んでばかりはいられない。情報公開訴訟として始めた裁判だが、その後すでに非公開部分の黒塗りは外れており、この勝訴で初めて明らかになることなど何もない。敗訴しても国は痛くもかゆくもないわけで、むしろ裁判を早期に終結させ、森友問題を「過去の問題」として片づけてしまおうということではないか。だから上告しなかったのだろうし、そもそも地裁判決後も、国は控訴しなかった。となると意外な判決ではないのかもしれない。
 しかし、この勝訴を弾みとして、森友問題の追及を続けていく。「お友だち優遇」「ウソと隠ぺい」「ごまかしと開き直り」は、森友問題だけに限ったことではなく、安倍政権の「体質」であることは、「桜を見る会」の一件からも明らか。森友問題をこのまま幕引きさせてしまえば、「桜」も「カケ」も、全てうやむやにされてしまうだろう。それはつまり、「権力さえ握っていれば、何をやっても構わない」ことを許してしまうことに他ならない。
流れ変わってきた
 翌日の18日には、東京地裁が、伊藤詩織さん準強姦事件で山口敬之氏に対して損害賠償を命じる判決を下した。民事とはいえ、「アベ友記者」をいわば「断罪」したわけだ。東西で2日続けての「嬉しい誤算」判決は、いよいよ流れが変わりつつあるのでは、とも思える。特別な力などない私たちができることは、しぶとく、しつこく、粘り強く食らいつくことだけ。しかるべき人物に、しかるべき形で責任を取らせるまで森友問題は終わらせない。つかんだ尻尾は放さない!
(大阪府豊中市議)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号


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2020年01月28日

性犯罪に甘い日本社会に一撃 同意ないと認定 伊藤詩織さん 他の被害者勇気づける判決

伊藤詩織写真.jpg
 海外からの注目も集めた判決が昨年12月、東京地裁で言い渡された。ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏から受けた性暴力被害を訴えた民事訴訟で、伊藤さんに「全面勝訴」の軍配が上がったのだ。裁判では伊藤さんが性行為に同意していたかどうかが争点となり、判決は「被告が酩酊状態にあり、意識のない原告に対して同意がないまま本件行為に及んだ」「(同意があったとする山口氏の主張には)不合理な変遷があり、信用性に疑念がある」などとして、同意はなかったと認定。山口氏に330万円の賠償を命じ、同時に山口氏が名誉毀損などを理由に巨額賠償と謝罪広告を求めた反訴を棄却した。
「公表内容は真実」
 伊藤さんが負った心身の傷を思えば十分な賠償とは呼べない。だが、この判決が画期的だったのは、伊藤さんが記者会見や自著で被害を訴えたことを「公表内容は真実」「性犯罪を取り巻く法的、社会的状況を改善しようとした。公共性および公的目的がある」と評価したことだ。
 日本社会には性被害を甘く見る土壌がある。加害者は責任が問われず、被害者の方が落ち度を責められる二次被害も起きる。伊藤さんも2017年に被害を公表して以降、ネットで根拠のない「ハニートラップ説」が流されるなどした。だから、被害の訴えを正面から受け止めた判決は、他の性被害者をも勇気づけたと思う。一人の女性は「被害者にとって、社会に居場所があることを意味する」と話してくれた。
こうなると、この事件はやっぱりおかしい。伊藤さんが酩酊状態で意に反する性行為を強要されたのが明らかなら、なぜ準強姦の刑事事件として起訴されなかったのか。
 性被害を巡る日本の刑事司法は冷たい。理由は刑法の規定にある。17年の改正で罪名を変えた強制性交罪(旧強姦罪)、準強制性交罪は「同意なし」だけでは成立しない。被害者が抵抗できなくなるほどの暴行・脅迫があったか、抵抗できない状態にあったかなどの要件が必要になる。
 伊藤さんは15年春、就職先を紹介してもらおうと山口氏と懇談の後、ホテルで「性暴力を受けた」と訴えた。伊藤さんは刑事処分を求めたが、検察は起訴せず、その判断の妥当性を審査する検察審査会も「起訴しないことが相当」と伊藤さんの申し立てを退けた。
国策の匂い拭えず
 刑事事件にならず、真相に近づきたいと民事訴訟に訴えた結果が今回の判決だ。確かに民事は、被告が無罪推定を受ける刑事裁判とは異なり、当事者同士が争い、相手よりも主張が勝ればいい。しかし、だからと言って真実性が低いわけではない。また伊藤さんの事件には、こんな一般論では解けない「国策」のにおいもぬぐえないのだ。
 山口氏は政権に近い人物とされ、捜査に圧力がかかったのではとの見方もある。「捜査関係者から、上層部の判断で逮捕を止められたと聞いたことがある」。伊藤さんは勝訴後の会見でこう語り、自著でもそう記した。その真偽はひとまずおいても、性犯罪に甘い日本では刑事司法当局も例外ではないのだ。米ワシントンポスト紙が「時代後れの保守派に運営されている国」「日本人女性の権利の勝利」と判決を報じたように、事件は徹頭徹尾、日本社会の後進性を表していた。判決を不服とした山口氏は控訴を宣言した記者会見で「性被害者は会見の場で笑ったりしない」と言った。伊藤さんの人格を貶め、被害者を「型」にはめた、まさに後進的な考え方が示されたのだ。
 日本社会が性犯罪に対する認識を変えていけるのか。控訴審の行方もまた、世界から注目されることになる。
佐藤直子
(東京新聞記者、メディアで働く女性ネットワーク会員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年01月27日

韓国メディアに広がるファクトチェック 17年大統領選がきっかけ ソウル大研究者と労組幹部が報告=橋詰雅博

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 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と韓国の全国言論労働組合(言論労組)が14年ぶりに交流を復活させて、共同でファクトチェックができないかの検討を始めると本紙12月号で報じた。その言論労組首席副委員長のソン・ヒョンジュンさんと、国立ソウル大(SNU)ファクトチェックセンター所長のチョン・ウンリョンさんが日本のファクト・イニシアティブの招きで来日し、1月11日に早稲田大学で講演した。
ソンさんは公共放送のKBS、チョンさんは東亜日報、どちらも記者出身だ。日本の先を行く韓国メディアの活発なファクトチェックを二人が語った。
27メディアが加盟
 SNUファクトチェックセンターの概要をチョンさんは、こう説明した。現在、新聞やテレビ、ネットの27メディアが加盟する同センターの設立のきっかけは、現大統領の文在寅らが出馬した2017年の大統領選だった。国内世論の後押しもあって各候補者の発言や主張が正しいかそうでないかのチェックが必要ということで、政治的中立性を保てる大学内に発足した。この17年が韓国ファクトチェックの元年と位置づけられている。3月下旬から5月初旬にかけて各メディアが検証を行った約180件のうち、半数が誤りと判定された。同センターは各社から提供される検証記事を集約するプラットフォームの役割を果たしている。運営費は韓国を代表するポータルサイト「ネイバー(NAVER)」が提供。ネイバー上で流されたニュースの広告収入の30%をセンターが受け取っている。今年が3年契約の最終年で、契約更新の有無はまだ決まっていない。
JTBCが先駆け
ソンさんは韓国放送界を中心にファクトチェックの現状を報告した。
 放送や新聞などでファクトチェックが広がった大きな理由は、2つある。14年のセウォル号事件で事実と異なる報道により主要メディアの信頼が地に落ちたためメディア間で挽回の機運が高まったのが一つの理由。もう一つは中央日報系の新興テレビ局JTBCが14年から設けたファクトチェックコーナーが人気を呼んだことだ。こうしたことで、KBSやMBC、SBSなどの各局がファクトチェックコーナーを次々に設けた。朝鮮日報、韓国日報、中央日報、韓国経済といった新聞や連合ニュースなどの通信社、ノーカットニュースなどのネットメディアもファクトチェックに乗り出した。
 ソンさんの出身メディアKBSは、放送で流したニュース記事、ホームページに掲載した記事、ユーチューブに上げた動画をそれぞれファクトチェックしている。
 にもかかわらず国民のメディアへの信頼はまだ回復していない。デジタルニュースレポートによれば、国別ランキングでは17年は36カ国中36位、18年が37国中37位、19年は38国中38位と3年連続で最下位だ。ファクトチェックは政治的に利用されるリスクを伴うが、国民の信頼を得るには「ファクトチェックジャーナリズムは韓国メディアにとって最低限の仕事」と認識されている。
 メディアに対する評価のレベルが高くなっている国民と共にファクトチェックを軸とした「メディア改革」の世論形成とその拡大がこれからの課題だと指摘した。
 日韓による共同ファクトチェック作業については「議論がまだ深まっていない」そうだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月26日

【今週の風考計】1.26─‶武漢肺炎"阻止にWHOと日本は全力を

猛威を振るっている「新型コロナウイルス」による肺炎は、昨年12月8日、中国の湖北省・武漢で最初の感染者が出て以降、いまや中国全土に広がり、感染者は1300人、死者は50人を超える。日本国内でも3人目の患者が確認されている。さらに東南アジアや米仏諸国へ14カ国・地域に広がる。

肺炎を起こす「新型コロナウイルス」は、タケネズミやヘビなどの動物に寄宿している。中国での発生源は武漢の海鮮市場だが、この海鮮市場では他にもアナグマ、ハクビシン、キツネ、野ウサギ、クジャク、サソリ、ワニなど100種以上の動物が「食品」として日常的に売られている。
 しかも目の前で殺して、調理もしない生肉を売っている。ここの価格表には生きたタケネズミ1匹85元(約1400円)、クジャク1羽500元(約8000円)、シカ1頭6千元(約9万6千円)などと記されている。
野生動物の捕獲や売買、摂取を取り締る法律はあるが、その法をかいくぐってでも、「机と飛行機以外は、なんでも食べる」中国人の食生活に加え、あえて野生動物を食べる「野味」という習慣も関係している。
 タケネズミやヘビを食べて感染したのは間違いない。しかも武漢市当局は、感染の事実を中央政府に報告せず隠ぺいしたため、ますます感染者は広がり、さらに23日の武漢「封鎖令」が出る直前には、いち早く武漢を脱出した者が数千人とも数万人とも言われる。

今回の「新型コロナウイルス」は、2002年に中国南部の広東省から広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)のコロナウイルスに近い。世界30カ国8,422人が感染、916人が死亡した。また2012年の中東呼吸器症候群(MERS)も、このコロナウイルスが関係し、中東諸国や韓国など2,070人が感染し712人が死亡した。
 この二例とも感染源はコウモリ、かつコウモリを捕食した野生のヘビが第2次感染源となっている。武漢市の海鮮市場ではヘビも売られていたから、コウモリからヘビに感染した「新型コロナウイルス」が人へとうつり、今回の流行を引き起こした可能性が高い。

恐ろしいのは「新型コロナウイルス」には効く薬がないことだ。感染を防ぐワクチンもない。感染した場合は、安静にして熱・せきを和らげる「対症療法」しかない。
 しかも「新型コロナウイルス」には、すでに「スーパー・スプレッダー」が存在しているといわれる。すなわち多くの人への感染拡大の源となった患者からの「アウトブレイク」(集団感染)が起きている危険である。
1月25日の「春節」を挟むおよそ40日間、中国では延べ約30億人が国内のみならず世界中を大移動する。「新型コロナウイルス」による“武漢肺炎”の拡大は、SARSの再来を招きかねない。
 今のところ死亡率がSARSより低いことが救いだが、感染拡大を封じ込めないと、「新型コロナウイルス」に変異が生じて、さらに毒性が強くなるかもしれない。
 日本とWHO は検疫体制を強化し、各国共同の水際作戦で感染拡大を阻止しなければならない。(2020/1/26)
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