「政局報道より政策報道を」―と言われたのはいつごろからだっただろう? 日本の政治報道が、とかく政治家の動きを追うことに終始して、肝心の「政策」を報じないで、結局、問題を永田町・霞ヶ関・国会‥‥の人間模様に落とし込んでしまっている。マスコミの政治報道へのそんな批判だった。
トランプ大統領が再登場して、改めて「米国第一」を掲げ、自国の覇権のために世界中に無理難題を押しつけている中で、問われているのは「日本国民の生活をどう守るか」に他ならない。深刻に考えている国民に、政治もメディアも国と国民の「指針」を示さなければならない。そんな状況なのに、また「政局」の雲行きだ。私たちはいまメディアに「これでいいのか」と改めて立ち位置を問いかけなければならない。
石破さん、あなたも?
新人8議員に商品券
3月13日、米国がロシアに30日間の停戦を持ちかけ、ウクライナ停戦が実現するかどうかが問われている時期に、朝日、毎日などが「石破首相が今月3日新人議員に対し10万円の商品券を配っていた」と電子版で一斉に報じ大騒ぎになった。ネットによると、朝日は20時24分、毎日は21時03分で、石破首相も23時22分には各社とのインタビューに応じ事実を認めたうえで「違法ではない」と述べたが、一挙に「石破降ろし」がスタートした。
「政治とカネ」は自民党・安倍派の政治資金パーティ裏金問題に始まり、まだ事件も火種も収束していない中で、首相自身が新たな火種を作った形で、メディアに材料を提供した。
昨年秋の総選挙で、過半数割れの敗北を喫した自民党政権は、野党第一党の立憲民主党などとのまともな政策論議を避け、維新や国民民主党が主張する所得税課税の「カベ」や高額医療費問題などで政策修正に応じながら両党を取り込み、通常国会を乗り切るはずだった。ところがこの騒ぎだ。もちろんそれは大問題だが、主食のコメまでも含めた物価高が続き、産業界はトランプ関税への対処で、それどころではない。夏の東京都議選や参院選を控え、不安定な情勢が続いている。
交戦国と共同演習
中国へは「挑発」?
7日の参院予算委で共産党の山添拓議員は、海上自衛隊が紛争当事国のウクライナとの「多国間軍事演習」に参加していた事実と、これを防衛省が公表しなかった問題を追及した。
海上自衛隊は昨年9月、黒海で行われた米国とウクライナが共催した多国間演習「シーブリーズ」に参加。ウクライナ軍などと機雷の水中処分などの訓練をした。自衛隊が紛争当事国ウクライナとの軍事演習に加わること自体、他国から「参戦」と疑われかねない憲法違反行為だが、防衛省はこれを公表せず、中谷防衛相は「艦艇を派遣せず、派遣も少人数にどまったから」と答弁した。
米国が日本に対して、対中国の包囲網へのコミットを求めていることは間違いはないが、3月1日には海自の自衛艦「あきづき」が、2月上旬、単独で台湾海峡を通過していたことも明らかになった。昨年9月、豪州とニュージーランド海軍の艦艇と一緒に通過したのに続く台湾海峡通過で、中国外務省は「日中関係や台湾海峡の平和と安定を乱さないように」と釘を刺した。
日本は「中国への牽制」のつもりだろうが、中国側から見ればこれは「挑発」ということになる。
国会論戦は「軍拡抜き」
高額医療費は基本抜き
今国会の提出の予算案では、防衛費は8兆7000億円。GDPの1・3%余に達している。岸田内閣が「27年度にはGDP2%」を目指し、に、47兆円の防衛費確保を米国に「約束」した路線のもとでの予算編成だが、国会審議ではほとんどこうした論議は行われていなかった。
そんな中で、問題になったのが高額医療費問題だ。この制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が決まった上限額を超えた場合、超えた分の差額を支給する制度 だが、年齢などで制限されている。この上限を切り上げ、支給せずに済まそうとする計画が問題になった。しかし、必要な治療を必要な期間受けて、「健康で文化的な生活」を維持するのは国民の権利だし、これを保障していくのが国の責任であり、それが憲法に定める基本的人権のはずだ。
患者団体の行動などを受けて、石破首相は「見直し」をやめることにしたが、「特殊な一部の人の問題」と思われたのか、大きな論議とはならなかった。だが「生きる権利」は誰でも享受されるべきものだ。必要なのは「制度」を「人権」の面から見直していくことである。
主体性持ち真の国益を
トランプ対応は冷静に
米国大統領に就任したドナルド・トランプの帝国主義的旋風が吹き荒れている。領土・勢力圏拡張、数世紀前の「帝国主義」「植民地主義」を露骨に見せながら、国政を運営、関税を武器に、世界にさまざまな要求を突きつけている。
2月初め訪米した石破首相は、日本企業の巨額な米国投資を首脳会談で表明した。だが「同盟関係」の進展などを約束した日本にも3月12日から、アルミ、鉄鋼などの追加関税が例外なく適用された。
日本は武藤容治経産相が3月10日、ラトニック商務長官らと会談したが、日本を適用外とさせることはできなかった。すでに追加関税では、中国、カナダなどが問題をWTO(世界貿易機関)に提訴したが、4月には自動車についても追加関税を予定しており、「関税を使った国際覇権追求」がどうなっていくかはまだ未知数だが、日本は間違いなく対応を迫られる。
関税を取引のカードとして使いながら、国際世論をも巻き込んでいくトランプの手法に対してやはり重要なのは、日本はあくまで冷静に、そして日本なりに主体的に取り組んでいくことだろう。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年04月18日
【お知らせ】昨年JCJ賞受賞、後藤秀典氏が著書刊行『ルポ司法崩壊』出版記念シンポジウム 5月10日(土)14時から 日本教育会館第二会議室=橋詰雅博
国も東京電力も原発事故の責任なし? 国策に忠実に従い、政府に忖度する「法の番人」最高裁のもと、司法全体の劣化が進む。司法の独立が内側から崩れていく現状を報告。月刊誌『地平』の好評連載を書籍化。
著者の後藤秀典氏の挨拶文です
「4月下旬に、拙著『ルポ司法崩壊』が地平社から出版されることとなりました。この本は、月刊『地平』の創刊号から7回に渡り連載された記事に大幅に加筆したものです。原発関連訴訟を始め、辺野古新基地建設反対訴訟、建設アスベスト訴訟、「いのちのとりで」裁判(生活保護切下げ取消訴訟)など、国策とたたかう訴訟の現状を取り上げた内容です。
出版を記念して、シンポジウムを開催することとなりました。メインは、国策とたたかう最前線にいらっしゃる当事者、弁護士、元裁判官、学者によるリレートークです。これほご多くの方々が一堂に会し、お話しする機会は、きわめてまれなことだと思います。
ひとりでも多くの皆さまにお話を聞いていただければ幸いです。お忙しいこととは存じますが、ぜひ、ご参加ください」
2025年5月10日 13:30会場 14;00開演
日本教育会館第二会議室(アクセスhttps://www.jec.or.jp/access.html)
<発言予定>
岡本早苗 だまっちゃおれん!愛知・岐阜 原告団長
武藤類子 福島原発事故告訴団団長
今野秀則 津島訴訟原告団団長
伊東達也 いわき市民訴訟原告団団長
村田弘 かながわ訴訟原告団長・原発被害者訴訟原告団全国連絡会代表委員
小野寺利孝 福島原発被害弁護団・津島原発訴訟弁護団各共同代表
河合弘之 原発弁護団全国連絡会共同代表
海渡雄一 原発弁護団全国連絡会共同代表
田巻紘子 だまっちゃおれん!愛知・岐阜 弁護団事務局長
白井劍 津島訴訟弁護団事務局長
米倉勉 福島原発被害弁護団幹事長
南雲芳夫 生業訴訟弁護団幹事長
宮腰直子 裁判官弾劾訴追請求団
水口洋介 首都圏建設アスベスト訴訟弁護団共同代表
加藤裕 辺野古沖縄県訴訟沖縄県代理人
尾藤廣喜 いのちのとりで裁判全国アクション共同代表
小久保哲郎 いのちのとりで裁判全国アクション事務局長
竹内浩史 元・津地裁裁判長
大塚正之 元・東京高裁判事・津島原発訴訟弁護団各共同代表
樋口英明 元・福井地裁裁判長
関礼子 ノーモア原発公害市民連絡会代表世話人・立教大学教授
長島光一 帝京大学准教授
熊谷伸一郎 地平社代表
後藤秀典 著者
参加費無料
参加申し込みは x.gd/Jr8ml
問い合わせ先
後藤秀典
TEL:090-2665-4946
E-mail:rinodehi3012@gmail.com
地平社
TEL:03-6260-5480(代)
FAX:03-6260-5482
E-mail:info@chiheisha.co.jp
2025年04月17日
【Bookガイド】4月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)
ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆木村草太『幸福の憲法学』集英社インターナショナル新書 4/7刊 880円
「幸福の憲法学」.jpg 日本国憲法は国民の「幸福を追求する権利」を保障する。しかし、幸福とは個人が自ら追求するものであり、外部から与えられるものではない。では、憲法は幸福に対して、どのような姿勢をとっているのか。気鋭の憲法学者が、同性婚やプライバシー権、選択的夫婦別姓などに絡む問題を、憲法に書かれた言葉と向き合い解きほぐしていく。
著者は1980年神奈川県生まれ。憲法学者、東京都立大学教授。著書に『憲法という希望』(講談社現代新書)、『憲法』(東京大学出版会)など。
◆藤原帰一『世界の炎上─戦争・独裁・帝国』朝日新書 4/11刊 900円
「世界の炎上」.jpg 第2期トランプ政権に戦々恐々とする各国指導者たち。世界各国に一方的な関税を強いるだけでなく、ガザ「所有」やカナダ、メキシコに経済的脅しをかけるなど、トランプ氏の論理は「強者の支配と弱者の従属」でしかない。同盟国をはじめ、日本を含む国際秩序はどう構築されるのか。不確実さに覆われた世界を国際政治学者が読み解く。『朝日新聞』のコラム「時事小言」に執筆してきた文章を再構成してまとめた時宜にかなう新書。
著者は日本の政治学者。順天堂大学特任教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。
◆飯田一史『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか─知られざる戦後書店抗争史』平凡社新書 4/17刊 1200円
「町の本屋は…」.jpg 出版社・取次・書店をめぐる出版流通の基本構造を整理した上で、戦後の書店が歩んだ闘争の歴史をテーマごとにたどる。公正取引委員会との攻防、郊外型複合書店からモール内大型書店への移り変わり、鉄道会社系書店の登場、図書館での新刊書籍の貸出、ネット書店の台頭――。膨大なデータの分析から、書店が直面してきた苦境と、それに抗い続けた闘争の歴史が見えてくる。「書店がつぶれていく」という問題の根幹を明らかにする一冊。
著者は1982年青森県生まれ。中央大学卒。出版社の編集者を経てフリーライターとして独立。著書に『いま、子どもの本が売れる理由』『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。
◆大鶴倫宣『ニッポン縦断 ほろ酔い鉄道紀行』イカロス出版 4/22刊 2000円
「ほろ酔い鉄道紀行」.jpg NHK<六角精児の呑み鉄本線・日本旅>が高視聴率を挙げている。そこには鉄道の旅に潜む楽しさ、魅力があふれているからだろう。せっかく遠くへテツ旅するなら、それだけで帰ってくるのはもったいない。行った先にはさまざまな美味しいもの、旨いお酒がたくさんある。それを味わってこそ、撮る絵柄にもその地域の優しさや厳しさがおのずと表れる。撮って楽しめ乗って極楽、食べて美味しく呑んでホロ酔いな、極上の呑み鉄の旅を紹介する一冊。
著者は1974年福岡県生まれ。立命館大学卒業。会社員を経て、2006年よりフリーカメラマン。鉄道と料理を中心にキャリアを重ねる。隔月刊『旅と鉄道』(イカロス出版)で「鉄道美食旅」を連載中。
◆いとうせいこう『「国境なき医師団」をそれでも見に行く─戦争とバングラデシュ編』講談社 4/24刊 1800円
「国境なき医師団」.jpg マルチクリエイターとして幅広く活動する著者が、「国境なき医師団」に同行して、世界各地の活動現場を訪ねる、『「国境なき医師団」を見に行く』シリーズの最新版! 世界で戦争が続く時代、いっそう困難を増す人道支援の最前線を、バングラデシュにあるアジア最大のロヒンギャ難民キャンプからレポート。作家の目がとらえた世界のリアルと、日本へのメッセージ。群像WEBの好評連載を書籍化。改めて著者の目線の鋭さに気づかされる。
◆前川貴行『ボノボ─最後の類人猿』新日本出版社 4/24刊 1900円
「ボノボ」.jpg アフリカ・コンゴ盆地の熱帯雨林だけに棲むボノボ。新種と認められてから100年も満たない。最後の類人猿と呼ばれる理由だ。密林の奥深く、平和でおだやかな暮らしを営んでいるようだ。いまだ謎に満ちたボノボの生態を紹介する日本初の写真絵本。子供さんと一緒に頁をめくって、ボノボの表情など味わってほしい。、
著者は1969年東京都生まれ。動物写真家。97年より動物写真家・田中光常氏の助手をつとめ、2000年からフリーの動物写真家として活動。著書に『オランウータン 森のさとりびと』、『火の山にすむゴリラ』などがある。
◆萩原 健『ガザ、戦下の人道医療援助』ホーム社 4/25刊 2000円
「ガザ、戦下の人道医療援助」.jpg 国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーターを務める著者が、戦時下のガザで、人道医療援助活動に携わった6週間の貴重な記録を公開。至近距離での空爆、戦車による砲撃、繰り返される退避要求……。集団的懲罰のような状況の中、必死で医療に携わり、少しでも多くの命を救おうとする人々や、疲弊しながらも希望を失わないガザの住民や子どもたちの姿。活動責任者として、スタッフの安全を確保しつつ、地域住民との交渉などにも奔走する著者が、さまざまな背景も交えながら、戦下のガザの現実を活写する。
◆木村草太『幸福の憲法学』集英社インターナショナル新書 4/7刊 880円
「幸福の憲法学」.jpg 日本国憲法は国民の「幸福を追求する権利」を保障する。しかし、幸福とは個人が自ら追求するものであり、外部から与えられるものではない。では、憲法は幸福に対して、どのような姿勢をとっているのか。気鋭の憲法学者が、同性婚やプライバシー権、選択的夫婦別姓などに絡む問題を、憲法に書かれた言葉と向き合い解きほぐしていく。
著者は1980年神奈川県生まれ。憲法学者、東京都立大学教授。著書に『憲法という希望』(講談社現代新書)、『憲法』(東京大学出版会)など。
◆藤原帰一『世界の炎上─戦争・独裁・帝国』朝日新書 4/11刊 900円
「世界の炎上」.jpg 第2期トランプ政権に戦々恐々とする各国指導者たち。世界各国に一方的な関税を強いるだけでなく、ガザ「所有」やカナダ、メキシコに経済的脅しをかけるなど、トランプ氏の論理は「強者の支配と弱者の従属」でしかない。同盟国をはじめ、日本を含む国際秩序はどう構築されるのか。不確実さに覆われた世界を国際政治学者が読み解く。『朝日新聞』のコラム「時事小言」に執筆してきた文章を再構成してまとめた時宜にかなう新書。
著者は日本の政治学者。順天堂大学特任教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。
◆飯田一史『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか─知られざる戦後書店抗争史』平凡社新書 4/17刊 1200円
「町の本屋は…」.jpg 出版社・取次・書店をめぐる出版流通の基本構造を整理した上で、戦後の書店が歩んだ闘争の歴史をテーマごとにたどる。公正取引委員会との攻防、郊外型複合書店からモール内大型書店への移り変わり、鉄道会社系書店の登場、図書館での新刊書籍の貸出、ネット書店の台頭――。膨大なデータの分析から、書店が直面してきた苦境と、それに抗い続けた闘争の歴史が見えてくる。「書店がつぶれていく」という問題の根幹を明らかにする一冊。
著者は1982年青森県生まれ。中央大学卒。出版社の編集者を経てフリーライターとして独立。著書に『いま、子どもの本が売れる理由』『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。
◆大鶴倫宣『ニッポン縦断 ほろ酔い鉄道紀行』イカロス出版 4/22刊 2000円
「ほろ酔い鉄道紀行」.jpg NHK<六角精児の呑み鉄本線・日本旅>が高視聴率を挙げている。そこには鉄道の旅に潜む楽しさ、魅力があふれているからだろう。せっかく遠くへテツ旅するなら、それだけで帰ってくるのはもったいない。行った先にはさまざまな美味しいもの、旨いお酒がたくさんある。それを味わってこそ、撮る絵柄にもその地域の優しさや厳しさがおのずと表れる。撮って楽しめ乗って極楽、食べて美味しく呑んでホロ酔いな、極上の呑み鉄の旅を紹介する一冊。
著者は1974年福岡県生まれ。立命館大学卒業。会社員を経て、2006年よりフリーカメラマン。鉄道と料理を中心にキャリアを重ねる。隔月刊『旅と鉄道』(イカロス出版)で「鉄道美食旅」を連載中。
◆いとうせいこう『「国境なき医師団」をそれでも見に行く─戦争とバングラデシュ編』講談社 4/24刊 1800円
「国境なき医師団」.jpg マルチクリエイターとして幅広く活動する著者が、「国境なき医師団」に同行して、世界各地の活動現場を訪ねる、『「国境なき医師団」を見に行く』シリーズの最新版! 世界で戦争が続く時代、いっそう困難を増す人道支援の最前線を、バングラデシュにあるアジア最大のロヒンギャ難民キャンプからレポート。作家の目がとらえた世界のリアルと、日本へのメッセージ。群像WEBの好評連載を書籍化。改めて著者の目線の鋭さに気づかされる。
◆前川貴行『ボノボ─最後の類人猿』新日本出版社 4/24刊 1900円
「ボノボ」.jpg アフリカ・コンゴ盆地の熱帯雨林だけに棲むボノボ。新種と認められてから100年も満たない。最後の類人猿と呼ばれる理由だ。密林の奥深く、平和でおだやかな暮らしを営んでいるようだ。いまだ謎に満ちたボノボの生態を紹介する日本初の写真絵本。子供さんと一緒に頁をめくって、ボノボの表情など味わってほしい。、
著者は1969年東京都生まれ。動物写真家。97年より動物写真家・田中光常氏の助手をつとめ、2000年からフリーの動物写真家として活動。著書に『オランウータン 森のさとりびと』、『火の山にすむゴリラ』などがある。
◆萩原 健『ガザ、戦下の人道医療援助』ホーム社 4/25刊 2000円
「ガザ、戦下の人道医療援助」.jpg 国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーターを務める著者が、戦時下のガザで、人道医療援助活動に携わった6週間の貴重な記録を公開。至近距離での空爆、戦車による砲撃、繰り返される退避要求……。集団的懲罰のような状況の中、必死で医療に携わり、少しでも多くの命を救おうとする人々や、疲弊しながらも希望を失わないガザの住民や子どもたちの姿。活動責任者として、スタッフの安全を確保しつつ、地域住民との交渉などにも奔走する著者が、さまざまな背景も交えながら、戦下のガザの現実を活写する。
2025年04月16日
【焦点】インボイス実態調査に1万500人超が協力、目標1万を突破 5月下旬に結果公表=橋詰雅博
インボイス制度を考えるフルーランスの会が3月下旬から約2週間行っていたインボイス大規模実態調査は、1万500人超が協力し、目標の1万を突破した。
同会によると「やっと見付けた生きがいを奪わないでほしい」という切実な声が寄せられたのが印象的だったという。「暮らしや仕事、将来の夢を潰すようなインボイス税制は、個人の尊厳を踏みにじるものではないでしょうか。7月の参院選の前に、政治家、国にこの実態を知ってもらわなければなりません」と同会はコメントした。
結果は5月下旬に発表する予定。全国のフリーランスに活用を呼び掛けている。
インボイス制度に反対している政党は立憲民主、国民民主、共産、れいわ新選組、社民の各野党だ。各党の国会議員は2022年11月16日には「インボイス問題検討・超党派議員連盟」設立。同連盟では、インボイス制度の中止を強く訴えた。各党の活動は以下の通り。
立憲民主
インボイス制度を導入しなくても適切な課税ができる政策はあるとして、22年3月30日インボイス制度廃止法案を衆議院に提出。
国民民主
地域支部では意見交換会を実施し、インボイス制度に関する議論を交わしてきた。意見交換会に招いた各種連合会や組合からは、周知不足への指摘や導入後の混乱に対する懸念が寄せられた。インボイス制度は廃業を促す存在との意見もあり、同意する立場を見せた。
共産
22年11月7日に「STOP! インボイス対策チーム」を立ち上げ、インボイス制度の中止を呼びかけている。インボイス制度は個人で活動する、さまざまな業界や人に影響を与えると声を上げてきた。同制度の問題点を訴え、反対の声を取り上げ、中止に向けた世論を高める働きかけをしている。
れいわ新選組
消費税とインボイスの廃止を政策に掲げて活動。また各地で「STOP!インボイス街宣!」を実施し、街頭に設置されたステージで個人が意見を述べ、世論へ訴えかけている。
社会民主
22年10月26日、インボイス制度の反対を訴える集会に党首みずからが参加し、制度導入への反対意見を述べた。また社民党地方議員は22年9月、インボイス制度の中止を求める請願書を作成し、提出している。
同会によると「やっと見付けた生きがいを奪わないでほしい」という切実な声が寄せられたのが印象的だったという。「暮らしや仕事、将来の夢を潰すようなインボイス税制は、個人の尊厳を踏みにじるものではないでしょうか。7月の参院選の前に、政治家、国にこの実態を知ってもらわなければなりません」と同会はコメントした。
結果は5月下旬に発表する予定。全国のフリーランスに活用を呼び掛けている。
インボイス制度に反対している政党は立憲民主、国民民主、共産、れいわ新選組、社民の各野党だ。各党の国会議員は2022年11月16日には「インボイス問題検討・超党派議員連盟」設立。同連盟では、インボイス制度の中止を強く訴えた。各党の活動は以下の通り。
立憲民主
インボイス制度を導入しなくても適切な課税ができる政策はあるとして、22年3月30日インボイス制度廃止法案を衆議院に提出。
国民民主
地域支部では意見交換会を実施し、インボイス制度に関する議論を交わしてきた。意見交換会に招いた各種連合会や組合からは、周知不足への指摘や導入後の混乱に対する懸念が寄せられた。インボイス制度は廃業を促す存在との意見もあり、同意する立場を見せた。
共産
22年11月7日に「STOP! インボイス対策チーム」を立ち上げ、インボイス制度の中止を呼びかけている。インボイス制度は個人で活動する、さまざまな業界や人に影響を与えると声を上げてきた。同制度の問題点を訴え、反対の声を取り上げ、中止に向けた世論を高める働きかけをしている。
れいわ新選組
消費税とインボイスの廃止を政策に掲げて活動。また各地で「STOP!インボイス街宣!」を実施し、街頭に設置されたステージで個人が意見を述べ、世論へ訴えかけている。
社会民主
22年10月26日、インボイス制度の反対を訴える集会に党首みずからが参加し、制度導入への反対意見を述べた。また社民党地方議員は22年9月、インボイス制度の中止を求める請願書を作成し、提出している。
2025年04月15日
【JCJ声明】イスラエルによるガザ記者殺害に抗議する=日本ジャーナリスト会議
戦場で取材するジャーナリストが、かつてない数で殺されている。
3月24日、朝日新聞の記者ムハンマド・マンスール氏がガザ地区でイスラエルのミサイルによって殺害された。同じ日にアルジャジーラの記者ホッサム・シャバット氏も殺害された。ニューヨークを拠点とする国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(CPJ; Committee to Protect Journalists)」は、「二人のジャーナリストが意図的に殺害された可能性」を調査するための国際的な調査を求めた。イスラエルは直ちにこれに応じなくてはならない。
2023年10月から始まったイスラエルによるガザ攻撃で、5万人を超える市民が殺害され、その7割が子供と女性である。イスラエルによって国外のジャーナリストがガザ入りを阻まれる中、ガザのパレスチナ人ジャーナリストがイスラエルのジェノサイドを現場から報じてきた。マンスール記者らはその一員である。
ガザ地区当局によると今年4月1日現在、ガザで死亡したジャーナリストは209人にものぼる。「胸にPRESSと書かれたベストを着用していると、むしろ標的にされやすくなる」という警告もあり、明白な国際法違反である。
どの戦場であっても侵略・加害の側は残虐行為が報じられるのを妨げようとする。
マンスール通信員は殺される直前、傷ついた人々が運びこまれる病院で、医師からこう言われている「イスラエル軍はガザの人たちに安全なところはないと脅かしている。病院も、君ら記者も…」。
侵略者は抵抗する市民を常に「テロリスト」と呼ぶ。記者殺害でも、「彼はハマスの一員だった」と主張する。
それでも世界のジャーナリストは戦場の惨劇から目をそらさない。彼らは、命がけで現場の苦悶を伝えるのは彼らの使命だと信じているからだ。
我々はジャーナリストに対する意図的虐殺行為を決して許さない。
ここにイスラエル政府と軍の記者殺害に抗議し、国際刑事裁判所(ICC)にイスラエル軍の責任の検証を求める。
2025年4月14日 日本ジャーナリスト会議(JCJ)
3月24日、朝日新聞の記者ムハンマド・マンスール氏がガザ地区でイスラエルのミサイルによって殺害された。同じ日にアルジャジーラの記者ホッサム・シャバット氏も殺害された。ニューヨークを拠点とする国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(CPJ; Committee to Protect Journalists)」は、「二人のジャーナリストが意図的に殺害された可能性」を調査するための国際的な調査を求めた。イスラエルは直ちにこれに応じなくてはならない。
2023年10月から始まったイスラエルによるガザ攻撃で、5万人を超える市民が殺害され、その7割が子供と女性である。イスラエルによって国外のジャーナリストがガザ入りを阻まれる中、ガザのパレスチナ人ジャーナリストがイスラエルのジェノサイドを現場から報じてきた。マンスール記者らはその一員である。
ガザ地区当局によると今年4月1日現在、ガザで死亡したジャーナリストは209人にものぼる。「胸にPRESSと書かれたベストを着用していると、むしろ標的にされやすくなる」という警告もあり、明白な国際法違反である。
どの戦場であっても侵略・加害の側は残虐行為が報じられるのを妨げようとする。
マンスール通信員は殺される直前、傷ついた人々が運びこまれる病院で、医師からこう言われている「イスラエル軍はガザの人たちに安全なところはないと脅かしている。病院も、君ら記者も…」。
侵略者は抵抗する市民を常に「テロリスト」と呼ぶ。記者殺害でも、「彼はハマスの一員だった」と主張する。
それでも世界のジャーナリストは戦場の惨劇から目をそらさない。彼らは、命がけで現場の苦悶を伝えるのは彼らの使命だと信じているからだ。
我々はジャーナリストに対する意図的虐殺行為を決して許さない。
ここにイスラエル政府と軍の記者殺害に抗議し、国際刑事裁判所(ICC)にイスラエル軍の責任の検証を求める。
2025年4月14日 日本ジャーナリスト会議(JCJ)
2025年04月14日
【好書耕読】原爆はソ連占領阻止が目的=船津 靖(広島修道大学教授)
「日本の降伏と原爆投下、ソ連参戦の関係では決定版」―米国の著名な研究者からこう聞いたのが長谷川毅著『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』[新版](2023年5月みすず書房)を手にしたきっかけだ。原著は英語。ハーバード大学出版。ロシア語、フランス語、韓国語にも翻訳されている。大戦後80年の今年読むのにふさわしい。
日本占領に向けた米ソ間の駆け引き、米政府内の天皇制容認派と「無条件降伏」強要派の対立、日本の終戦派と本土決戦派の角遂。六百頁を超える大著だが、読み耽った。
原爆が日本降伏の最大の要因とする通説を否定した。原爆投下を正当化する米歴史家から批判されたが、8月6、9日の原爆投下と8日のソ連軍侵攻への天皇・政府首脳の反応を比べれば、日ソ中立条約破棄の衝撃が極めて大きく「国体護持」「皇統維持」のため、共産主義のソ連に占領されるより、ポツダム宣言を受諾して米国の占領に賭けるしかないと決断するに至った過程が無理なく理解できる。
天皇は米軍に打撃を与え有利な終戦条件を得る「一撃和平論」の信奉者だったという。国民を道ずれにした沖縄戦を支えた論理だ。だが本土決戦の前提はソ連の中立。それが突如、崩れ去った。
情報不足で見通しの甘い日本は、対米交渉の仲介をソ連に期待し、日ソ軍協力といった「夢物語」を提案した。ソ連は日本を欺いて時間稼ぎをし、対日開戦準備を急いだ。42
スターリンは原爆で日本がソ連参戦前に降伏するのを心配した。ヤルタ密約の範囲を超え、北海道や東北、東京の分割占領も狙っていた。北方領土の占領完了は9月6日だ。ソ連の野望はトルーマンに阻まれた。原爆投下は米の対日単独占領を確実にするのが主目的だった。52
神がかった国体論やソ連仲介の幻想に惑わされず、早期に終戦していたら数十万人が死なずにすんだろう。
冷酷に国益を追求するプーチン露大統領や異様に対露宥和的なトランプ米大統領を思い浮かべる箇所もあった。
日本占領に向けた米ソ間の駆け引き、米政府内の天皇制容認派と「無条件降伏」強要派の対立、日本の終戦派と本土決戦派の角遂。六百頁を超える大著だが、読み耽った。
原爆が日本降伏の最大の要因とする通説を否定した。原爆投下を正当化する米歴史家から批判されたが、8月6、9日の原爆投下と8日のソ連軍侵攻への天皇・政府首脳の反応を比べれば、日ソ中立条約破棄の衝撃が極めて大きく「国体護持」「皇統維持」のため、共産主義のソ連に占領されるより、ポツダム宣言を受諾して米国の占領に賭けるしかないと決断するに至った過程が無理なく理解できる。
天皇は米軍に打撃を与え有利な終戦条件を得る「一撃和平論」の信奉者だったという。国民を道ずれにした沖縄戦を支えた論理だ。だが本土決戦の前提はソ連の中立。それが突如、崩れ去った。
情報不足で見通しの甘い日本は、対米交渉の仲介をソ連に期待し、日ソ軍協力といった「夢物語」を提案した。ソ連は日本を欺いて時間稼ぎをし、対日開戦準備を急いだ。42
スターリンは原爆で日本がソ連参戦前に降伏するのを心配した。ヤルタ密約の範囲を超え、北海道や東北、東京の分割占領も狙っていた。北方領土の占領完了は9月6日だ。ソ連の野望はトルーマンに阻まれた。原爆投下は米の対日単独占領を確実にするのが主目的だった。52
神がかった国体論やソ連仲介の幻想に惑わされず、早期に終戦していたら数十万人が死なずにすんだろう。
冷酷に国益を追求するプーチン露大統領や異様に対露宥和的なトランプ米大統領を思い浮かべる箇所もあった。
2025年04月13日
【支部リポート】神奈川 新聞博物館で報道写真展 34社の記者 約300点展示=保坂 義久
例年12月に都内のデパートを会場に開かれる報道写真展。東京写真記者協会に所属している34社の記者が撮影した約300点を展示するもので、石破茂総理が会場を訪れたと報じられた。
年が明けてから横浜市にある新聞博物館(ニュースパーク)に巡回した2024年報道写真展に行ってみた。
写真展の展示はいつもどおり、東京写真記者協会賞受賞作品が入り口近くに置かれている。受賞作は能登半島地震で体育館に避難した3人の子が、布団をかぶって絵を描いている写真。写真展のチラシにも掲載されていた『「泣いてもいいんだよ」避難所での母との約束』というタイトルと説明文が添えられている。
順路には、それぞれ国内と海外に分かれた一般ニュース部門 企画部門、スポーツ部門と文化芸能部門の部門賞と奨励賞が展示されている。国内一般ニュースの部門賞「日航機衝突炎上」は、能登半島地震の翌日に起きた羽田空港での事故として忘れられない。
1月から11月まで月別の展示もある。歳時記のような題材もあり、政治・経済のニュースもあり様々だ。9月には「5度目の朝鮮、非願成就」というタイトルの、石破茂氏が自民党総裁室の椅子に笑顔で座っている写真のパネルがあり、10月には当選者の名に花をつける石破氏の写真に「花はつけるも 衆院選・自公過半数割れ」のタイトルが皮肉だ。
昨年はパリオリンピック、パラリンピックが開催された年なので、関連する写真がまとめて展示されている。日本選手団の好調もあってかオリンピック関連の写真は最も展示数が多く60点を超える。
「2024年に大谷翔平選手」の展示数は12点だ。
「令和6年能登半島地震」としてまとめられた=写真=は13点を数える。
この報道写真展の会期は4月20日まで。企画展は無料だが、ニュースパークの入場料(400円)は必要だ。3階の常設展示では、新聞の役割などが歴史資料とともに学べる。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年04月12日
【例会お知らせ】問題あり!開発企業優先で進む旧横j浜市庁舎の跡地利用 4月26日(土)午後2時から4時 かながわ県民センター=JCJ神奈川支部
シックな外観が市民に愛された旧横浜市庁舎。近代建築で有名な村野藤吾氏が設計した歴史的な建造物です。ここを三井不動産に売却して、星野リゾートがホテルとして利用するという計画は大きく報道されました。しかし、関内駅前の一等地が77年間にわたり年2億円で貸し出さること、本来の賃料の相場は5億円を超えることなどは殆ど知られていません。しかも市庁舎の建物費7700万円と15億円以上になる改修費は、賃料から差し引かれます。
また隣には三井不動産が高層ビルを建てています。関内地区は高さ制限31mだったのに制限を変更してしまいました。
疑問をもった市民が2021年3月に住民監査請求をしましたが、横浜市は棄却。納得できない市民は同年5月に住民訴訟を起こしました。原告団代表に話を聞きます。
会場 :かながわ県民センター 304会議室
(横浜駅西口徒歩5分、ヨドバシカメラ裏)
講師 :高田 尚暢 (タカタ ・ナオノブ)さんは 原告86名の旧市庁舎街区住民訴訟「旧市庁舎建物売却・土地貸付契約差し止め」原告団事務局「横浜市民の財産を守る会」代表
現地参加費 :500円(資料代)
*どなたでも参加できます。ぜひお出でください。
*今回はZOOMによるオンラインでも参加できます。
オンラインは申込みが必要です。後で視聴できるURLを連絡します。
申し込み先: 保坂 080−8024−2417 fdhosaca@theia.ocn.ne.jp
主催 :日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部
また隣には三井不動産が高層ビルを建てています。関内地区は高さ制限31mだったのに制限を変更してしまいました。
疑問をもった市民が2021年3月に住民監査請求をしましたが、横浜市は棄却。納得できない市民は同年5月に住民訴訟を起こしました。原告団代表に話を聞きます。
会場 :かながわ県民センター 304会議室
(横浜駅西口徒歩5分、ヨドバシカメラ裏)
講師 :高田 尚暢 (タカタ ・ナオノブ)さんは 原告86名の旧市庁舎街区住民訴訟「旧市庁舎建物売却・土地貸付契約差し止め」原告団事務局「横浜市民の財産を守る会」代表
現地参加費 :500円(資料代)
*どなたでも参加できます。ぜひお出でください。
*今回はZOOMによるオンラインでも参加できます。
オンラインは申込みが必要です。後で視聴できるURLを連絡します。
申し込み先: 保坂 080−8024−2417 fdhosaca@theia.ocn.ne.jp
主催 :日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部
【報告】被団協ノーベル平和賞受賞式 証言の重み伝える責任 取材記者囲み報告集会=田中伸武(広島支部)
参加者が核・平和報道のあり方を意見交換した。
JCJ広島支部は2月24日、広島市内で「ノーベル平和賞 現地取材記者による報告―これからのヒロシマ報道を考える」と題した集会を開いた。日本被団協の授賞式(12月10日・オスロ)に同行した広島の若手新聞・放送記者ら4人が「現地行事を追いながら田中熙巳代表委員のスピーチの重みや報じる責任をかみしめた」などと語った。マスコミ関係者や高校新聞部員を含む約40人が参加。核・平和報道の在り方をめぐっても意見交換し、交流を深めた。
将来へ報道工夫
毎日新聞の安徳祐記者は入社3年目。学生時代に被爆証言を聞いて広島赴任を希望した。
「被団協受賞を知らない人が多かったオスロ市民だが、ロシアと接する国柄か核戦争を身近に感じていた」と国際情勢を実感。「(被爆)証言の力は大きい。今後被爆者がいなくなる世界で報道をどう工夫するかを考える」と話した。
歴史伝える重み
下高充生記者は中国新聞で、被団協の歴史を振り返る連載も担当した30歳。被団協事務局長の木戸季市さんの言葉「核から人間を守る」が印象に残ると語った。
「公式記録がない過去の出来事は当時の新聞記事が頼り。自分の書く記事も将来、審判を受ける」と報道の重みを改めて自覚したという。
若者動かす契機
広島テレビの竹内嘉菜記者は入社3年目。「被爆者が運動に挑む姿と、そこから高校生らが感じたことを意識した」と、授賞式1カ月前からの取材について語った。
「被爆者がいなくなる将来、若者の関心が世界を左右する。若者が平和運動などに一歩踏み出すきっかけとなる番組を作りたい」と表明した。
マスコミの責任
被団協メンバーがオスロで議員朝食会や市民交流会などに参加した3日間を撮影し、ネット発信した中奥岳生さん(広島YMCA)も「ノーモアを叫ぶデモ行進に市民が次々加わった」と特別報告。「国家が戦争受忍を国民に押しつけるのはおかしい。マスコミは問うべきだ」と訴えた。
平和発信の変化
フロア質疑では、崇徳高新聞部員の指摘を基に新聞テレビを見ずSNS浸りの層への伝え方を議論し、ミャンマー留学生の発言からロシアを含めた国際的な核情勢を話し合った。
広島の戦争加害の側面や、広島と長崎の平和発信の違い、近年の平和教育の変化などさまざまな意見が出た。会場の被爆者からは、被爆80年をにらみノーベル委員会が贈賞した意味が強調された。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
JCJ広島支部は2月24日、広島市内で「ノーベル平和賞 現地取材記者による報告―これからのヒロシマ報道を考える」と題した集会を開いた。日本被団協の授賞式(12月10日・オスロ)に同行した広島の若手新聞・放送記者ら4人が「現地行事を追いながら田中熙巳代表委員のスピーチの重みや報じる責任をかみしめた」などと語った。マスコミ関係者や高校新聞部員を含む約40人が参加。核・平和報道の在り方をめぐっても意見交換し、交流を深めた。
将来へ報道工夫
毎日新聞の安徳祐記者は入社3年目。学生時代に被爆証言を聞いて広島赴任を希望した。
「被団協受賞を知らない人が多かったオスロ市民だが、ロシアと接する国柄か核戦争を身近に感じていた」と国際情勢を実感。「(被爆)証言の力は大きい。今後被爆者がいなくなる世界で報道をどう工夫するかを考える」と話した。
歴史伝える重み
下高充生記者は中国新聞で、被団協の歴史を振り返る連載も担当した30歳。被団協事務局長の木戸季市さんの言葉「核から人間を守る」が印象に残ると語った。
「公式記録がない過去の出来事は当時の新聞記事が頼り。自分の書く記事も将来、審判を受ける」と報道の重みを改めて自覚したという。
若者動かす契機
広島テレビの竹内嘉菜記者は入社3年目。「被爆者が運動に挑む姿と、そこから高校生らが感じたことを意識した」と、授賞式1カ月前からの取材について語った。
「被爆者がいなくなる将来、若者の関心が世界を左右する。若者が平和運動などに一歩踏み出すきっかけとなる番組を作りたい」と表明した。
マスコミの責任
被団協メンバーがオスロで議員朝食会や市民交流会などに参加した3日間を撮影し、ネット発信した中奥岳生さん(広島YMCA)も「ノーモアを叫ぶデモ行進に市民が次々加わった」と特別報告。「国家が戦争受忍を国民に押しつけるのはおかしい。マスコミは問うべきだ」と訴えた。
平和発信の変化
フロア質疑では、崇徳高新聞部員の指摘を基に新聞テレビを見ずSNS浸りの層への伝え方を議論し、ミャンマー留学生の発言からロシアを含めた国際的な核情勢を話し合った。
広島の戦争加害の側面や、広島と長崎の平和発信の違い、近年の平和教育の変化などさまざまな意見が出た。会場の被爆者からは、被爆80年をにらみノーベル委員会が贈賞した意味が強調された。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年04月11日
【焦点】トランプ課税で世界はキナ臭さが漂う=橋詰雅博
「投資の神様」と称される著名投資家、米国のウォーレン・バフェット氏(94)は最近のCBSニュースのインタビューで関税は「ある程度の戦争行為」「すぐに血を流すことはないかもしれないが、間違いなく報復を招く侵略行為だ」と語った。
その代表例として共和党のフーヴァー大統領の下で1930年に法制化されたスムートホーリー関税法を上げた。高関税によって国内産業を保護して高賃金を維持することで世界恐慌を克服しようとした。
しかし米国が保護貿易主義に転じたことに対し、英国、フランス、オランダ、スペイン、ベルギーなどヨーロッパ各国も一斉に報復関税を実施。米国への輸出が困難になったヨーロッパ経済の危機は悪化、ドイツの銀行制度は崩壊した。結局、世界恐慌はさらに深刻になるという逆効果に終わった。
長引く世界恐慌は第二次世界大戦の引き金になった。
トランプ関税が世界恐慌を引き起こし、ひいては第三次大戦を誘発しなければよいが‥‥。「徹底的に逆らうなら核使っちゃうよ≠ニ言い出しかねないのがトランプだ。予見不能だから相手は脅威に感じている。これはトランプの強み」―。外交に詳しいベテラン記者の言葉だ。世界はキナ臭くなってきた。
その代表例として共和党のフーヴァー大統領の下で1930年に法制化されたスムートホーリー関税法を上げた。高関税によって国内産業を保護して高賃金を維持することで世界恐慌を克服しようとした。
しかし米国が保護貿易主義に転じたことに対し、英国、フランス、オランダ、スペイン、ベルギーなどヨーロッパ各国も一斉に報復関税を実施。米国への輸出が困難になったヨーロッパ経済の危機は悪化、ドイツの銀行制度は崩壊した。結局、世界恐慌はさらに深刻になるという逆効果に終わった。
長引く世界恐慌は第二次世界大戦の引き金になった。
トランプ関税が世界恐慌を引き起こし、ひいては第三次大戦を誘発しなければよいが‥‥。「徹底的に逆らうなら核使っちゃうよ≠ニ言い出しかねないのがトランプだ。予見不能だから相手は脅威に感じている。これはトランプの強み」―。外交に詳しいベテラン記者の言葉だ。世界はキナ臭くなってきた。
2025年04月10日
【オピニオン】核廃絶こそ「ヒロシマ」の責務だ 安保ただ乗り論再燃 日本の米追従岐路に=難波健治(広島支部)
3月16日朝、テレビの報道番組が速報を伝えた。「米軍がイエメンを空爆。首都サヌアで民間人13人が死亡した」。世界の各地で戦争が続発する時代に入ったのか――そんな不安が頭をよぎった。問題はその約2週間前、ロシアへの対応をめぐるトランプ、ゼレンスキー首脳会談の決裂だ。
ウクライナ侵略後、「核使用」をちらつかせるプーチンを相手に、核超大国2国間主導の「停戦」を持ちかけるトランプの米国。「核廃絶」に背をむける米国の姿勢はトランプ再登場で、新たな局面に突入し、これまでの日本の米国追従が岐路迎え今後どうしていくべきかが改めて問われることとなった。
3月15日、広島では「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」主催の市民シンポジウムが開かれた。シンポは、本紙でも報告してきた2年前の広島G7サミット開催の5月ごろから続く被爆地広島のありようを変質させる一連の出来事の発端に迫り、広島の平和教育を転換させようとする動きの「根っこ」を改めてあぶり出すものとなった。
シンポは広島市の平和教育の副教材『ひろしま平和ノート』の改訂問題を取り上げ、削除された内容と代わりに掲載された文章を比較検討した。
漫画『はだしのゲン』や第五福竜丸事件の記述などが消えた『ひろしま平和ノート』に載ったのは、米国の原爆投下を「許し」、「和解」をすすめる文章だった。
そこから浮かぶ改訂の狙いは、平和学習の課題を「核兵器廃絶」から「核軍縮」に後退させることだ。広島市教委が取り組んだのは、生徒に米国の核抑止政策を受け入れさせる平和教育だったのだ。
そして今、再登場を果たしたトランプ政権は「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は米国を守らなくていい」と、日米安保条約に不満を表明した。
大統領令乱発など、やりたい放題の米国の盟主が蒸し返した持論に、私たちはどう対応すべきなのか。トランプ発言を受け、広島支部の仲間はSNSで発信した。
「石破首相は国会で『日本は米軍に基地を提供する義務を負っており、不平等とは思わない』と述べた。私は、トランプ氏がそこまで言うなら日本の米軍基地をすべて撤去してください、と石破首相には言ってほしかった」
「自宅から20`余りのところに、アジア最大級となった米軍岩国基地がある。戦闘機の騒音が聞こえない日はないくらいだ。米兵が事件を起こしても、基地に逃げ込めば日本の警察は原則手を出せない。女性の性被害も多発している。米軍住宅は日本の平均的な住宅よりも格段に立派で、電気代、水道代はタダ、高速道利用も無料だ。これらの経費はすべて私たちの税金から支出されている。『不平等』と言いたいのはこちらの方だ。トランプさん、今すぐ基地を撤去して米兵を本国に帰してください」
日本が米国言いなりで大軍拡を進める背景には、「中国脅威論」がある。その「脅威」は、現実にどのようなかたちで存在するのか、あるいは存在しないのか。その見極めが欠かせない。このことにも、彼は言及した。
混迷を深め、戦争への足音が日を追って高まりつつある世界にあって、私たちは日々起きる出来事の背景にあるものを浮かび上がらせ、事柄の本質を見極める報道を求めている。平和に向けて進むジャーナリズムの実現が、おそらく「戦争か平和か」の分かれ道だ。私たちは報道現場で活動する記者たちとの連携を深めていく努力を続けたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
ウクライナ侵略後、「核使用」をちらつかせるプーチンを相手に、核超大国2国間主導の「停戦」を持ちかけるトランプの米国。「核廃絶」に背をむける米国の姿勢はトランプ再登場で、新たな局面に突入し、これまでの日本の米国追従が岐路迎え今後どうしていくべきかが改めて問われることとなった。
3月15日、広島では「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」主催の市民シンポジウムが開かれた。シンポは、本紙でも報告してきた2年前の広島G7サミット開催の5月ごろから続く被爆地広島のありようを変質させる一連の出来事の発端に迫り、広島の平和教育を転換させようとする動きの「根っこ」を改めてあぶり出すものとなった。
シンポは広島市の平和教育の副教材『ひろしま平和ノート』の改訂問題を取り上げ、削除された内容と代わりに掲載された文章を比較検討した。
漫画『はだしのゲン』や第五福竜丸事件の記述などが消えた『ひろしま平和ノート』に載ったのは、米国の原爆投下を「許し」、「和解」をすすめる文章だった。
そこから浮かぶ改訂の狙いは、平和学習の課題を「核兵器廃絶」から「核軍縮」に後退させることだ。広島市教委が取り組んだのは、生徒に米国の核抑止政策を受け入れさせる平和教育だったのだ。
そして今、再登場を果たしたトランプ政権は「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は米国を守らなくていい」と、日米安保条約に不満を表明した。
大統領令乱発など、やりたい放題の米国の盟主が蒸し返した持論に、私たちはどう対応すべきなのか。トランプ発言を受け、広島支部の仲間はSNSで発信した。
「石破首相は国会で『日本は米軍に基地を提供する義務を負っており、不平等とは思わない』と述べた。私は、トランプ氏がそこまで言うなら日本の米軍基地をすべて撤去してください、と石破首相には言ってほしかった」
「自宅から20`余りのところに、アジア最大級となった米軍岩国基地がある。戦闘機の騒音が聞こえない日はないくらいだ。米兵が事件を起こしても、基地に逃げ込めば日本の警察は原則手を出せない。女性の性被害も多発している。米軍住宅は日本の平均的な住宅よりも格段に立派で、電気代、水道代はタダ、高速道利用も無料だ。これらの経費はすべて私たちの税金から支出されている。『不平等』と言いたいのはこちらの方だ。トランプさん、今すぐ基地を撤去して米兵を本国に帰してください」
日本が米国言いなりで大軍拡を進める背景には、「中国脅威論」がある。その「脅威」は、現実にどのようなかたちで存在するのか、あるいは存在しないのか。その見極めが欠かせない。このことにも、彼は言及した。
混迷を深め、戦争への足音が日を追って高まりつつある世界にあって、私たちは日々起きる出来事の背景にあるものを浮かび上がらせ、事柄の本質を見極める報道を求めている。平和に向けて進むジャーナリズムの実現が、おそらく「戦争か平和か」の分かれ道だ。私たちは報道現場で活動する記者たちとの連携を深めていく努力を続けたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年04月09日
【アピール】能動的サイバー防御法案─戦争国家への道に=自由法曹団
能動的サイバー防御法案(サイバー先制攻撃法案)は、政府による国民の通信情報の監視を認め、サイバー先制攻撃を認めるもので、戦争国家につながる危険な法律です。
サイバー先制攻撃案では、まず@海外から国内設備を通って海外に送られる通信、A海外から国内への通信、B国内から海外への通信、の各通信情報を政府は把握・分析するとされ、さらに必要がある場合には、これらの通信情報を送受信者の同意なく、取得できるとしています。
政府により取得される通信情報は、IPアドレスやメールアドレスなどの機械的情報に限られ、メールの本文など通信の内容に関わる情報は削除するとしていますが、本当に削除されるのか、その扱いは不透明です。憲法21条で保障された国民の通信の秘密やプライバシーを侵害して、国民を監視下に置く法律です。
また法案では、サイバー攻撃のおそれがある場合などに、警察や自衛隊が「無害化措置」を講じることができます。 無害化措置とは、相手サーバーのプログラムを削除・停止させることで、それ自体がサイバー攻撃に当たり、サイバー上の先制攻撃となります。
サイバー上の攻撃と反撃が過熱して、相手国と戦争に至る危険があります。 また、サイバー上であっても、相手国のインフラ機能などに障害が生じるおそれがあり、憲法9条が禁止する「武力行使」に当たる可能性もあります。
サイバー先制攻撃法案は国民を監視下に置きサイバー先制攻撃を認めるもので、憲法21条と憲法9条に違反しているおそれがあり許されません。
サイバー先制攻撃案では、まず@海外から国内設備を通って海外に送られる通信、A海外から国内への通信、B国内から海外への通信、の各通信情報を政府は把握・分析するとされ、さらに必要がある場合には、これらの通信情報を送受信者の同意なく、取得できるとしています。
政府により取得される通信情報は、IPアドレスやメールアドレスなどの機械的情報に限られ、メールの本文など通信の内容に関わる情報は削除するとしていますが、本当に削除されるのか、その扱いは不透明です。憲法21条で保障された国民の通信の秘密やプライバシーを侵害して、国民を監視下に置く法律です。
また法案では、サイバー攻撃のおそれがある場合などに、警察や自衛隊が「無害化措置」を講じることができます。 無害化措置とは、相手サーバーのプログラムを削除・停止させることで、それ自体がサイバー攻撃に当たり、サイバー上の先制攻撃となります。
サイバー上の攻撃と反撃が過熱して、相手国と戦争に至る危険があります。 また、サイバー上であっても、相手国のインフラ機能などに障害が生じるおそれがあり、憲法9条が禁止する「武力行使」に当たる可能性もあります。
サイバー先制攻撃法案は国民を監視下に置きサイバー先制攻撃を認めるもので、憲法21条と憲法9条に違反しているおそれがあり許されません。
2025年04月08日
【映画の鏡】海外から注目 アカデミー賞候補に『小学校〜それは小さな社会〜』「日本に普通」に世界が感動?=鈴木賀津彦
Cineric Creative/NHK/Pystymets a/Point du Jour
昨年末から劇場公開され話題のドキュメンタリーではあったが、この作品から制作した23分の短編版「Instruments of a Beating Heart」が今年のアカデミー賞「短編ドキュメンタリー映画賞」にノミネートされ注目度は一気に高まった。
3月2日の授賞式では受賞は逃したものの、日本の小学校の日常を捉えたドキュメンタリーに世界中から熱い視線が集まっている。
「イギリス人の父と日本人の母を持ち、日本の公立小学校に通った山崎エマ監督は、海外生活を送る中で気づかされた“自分の強み”は“日本人ゆえ”であり、遡ればそれは、公立小学校で過ごした時間に由来するのではないかとの思いに至り、『小学校を撮りたいと思った』ところからスタートした。コロナ禍の2021年4月から1年、150日、700時間(監督の小学校滞在時間は4000時間)にわたって撮影を行った」(作品の説明文から)という。
作りごとのない普通の小学校の「日常」をありのまま捉えていて、素直に教育現場の様子が伝ってくる。授業だけではなく、みんなで掃除に取り組む姿など、学校が子どもたちの生活全般を育んでいるのだと、カメラは追う。教員たちの奮闘ぶりも、とても素敵な場面が続きそれぞれの個性が光る。
そんな小学校の日常の「どこ」に世界の注目が集まったのだろうと考えながら観ることで、私たちが当たり前だと考えていたことが実は「スゴイ」ことなのだと気付かせてもらえる。「いま、小学校を知ることは、未来の日本を考えること」という映画のメッセージを素直に受け止めた。絶賛上映中。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
昨年末から劇場公開され話題のドキュメンタリーではあったが、この作品から制作した23分の短編版「Instruments of a Beating Heart」が今年のアカデミー賞「短編ドキュメンタリー映画賞」にノミネートされ注目度は一気に高まった。
3月2日の授賞式では受賞は逃したものの、日本の小学校の日常を捉えたドキュメンタリーに世界中から熱い視線が集まっている。
「イギリス人の父と日本人の母を持ち、日本の公立小学校に通った山崎エマ監督は、海外生活を送る中で気づかされた“自分の強み”は“日本人ゆえ”であり、遡ればそれは、公立小学校で過ごした時間に由来するのではないかとの思いに至り、『小学校を撮りたいと思った』ところからスタートした。コロナ禍の2021年4月から1年、150日、700時間(監督の小学校滞在時間は4000時間)にわたって撮影を行った」(作品の説明文から)という。
作りごとのない普通の小学校の「日常」をありのまま捉えていて、素直に教育現場の様子が伝ってくる。授業だけではなく、みんなで掃除に取り組む姿など、学校が子どもたちの生活全般を育んでいるのだと、カメラは追う。教員たちの奮闘ぶりも、とても素敵な場面が続きそれぞれの個性が光る。
そんな小学校の日常の「どこ」に世界の注目が集まったのだろうと考えながら観ることで、私たちが当たり前だと考えていたことが実は「スゴイ」ことなのだと気付かせてもらえる。「いま、小学校を知ることは、未来の日本を考えること」という映画のメッセージを素直に受け止めた。絶賛上映中。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年04月07日
【フォトアングル】「プーチン侵略やめろ」のデモ行進に600人参加=2月24日、東京都千代田区 酒井憲太郎撮影
ロシアのウクライナ侵攻から3年 ウクライナに平和を!核兵器をつかうな、原発に手を出すな集会が開かれた。主催者発表で600人が参加。総がかり行動実行委員会、さようなら原発1000万人アクションの共催で、「ウクライナ民衆連帯募金」は「侵略反対」の横断幕を掲げて合流した。「ロシアプーチンは侵略やめろ」のチラシを掲げたデモ行進では「ロシアはウクライナから撤退せよ」と声を強めた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
2025年04月06日
【沖縄リポート】運動の抑え込みと県指導を無視=浦島悦子
沖縄防衛局は3月4日午前、うるま市平安座島にある沖縄石油基地の民間桟橋から辺野古への埋立土砂搬出を開始した。
同市宮城島からの土砂搬出が突如始まった昨年11月20日(12月号本欄既報)以降、うるま市島ぐるみ会議を中心とする市民らは採石場入口での抗議行動を粘り強く続け=写真=また、同島からの土砂の搬出港である中城湾港(沖縄市)でも沖縄市民らを中心に現場行動が続けられてきた。
またもや突然のルート変更は、辺野古への搬入距離(海路)短縮のためだというが、市民の現場行動封じ込め(民間施設には立ち入れない)の狙いはありありだ。沖縄防衛局は、直前の当日朝、沖縄県に変更を通知。埋立承認時の留意事項違反の可能性があるとする県に対し「変更承認は必要ない」と居直っている。
辺野古新基地建設工事を巡るこの間の防衛局(国)の姿勢は、市民活動の徹底した抑え込みと、沖縄県の指導のあからさまで徹底的な無視だ。昨年6月の安和桟橋での重大死傷事故は、未だに真相究明がされない(重傷を負った市民をはじめ関係者への警察の事情聴取は一度も行われていない)まま、抗議する市民と沖縄県を加害者扱いする言説がふりまかれ、それを口実に現場行動の封じ込め、土砂搬出の拡大が続いている。
国(自公政権)の最大の狙いは、次期沖縄県知事選(来年秋)で玉城デニー知事を引きずり下ろすことだろう。そのためには、たとえ違法であろうと県の指導は一切無視し、「デニー知事は無力だ」と県民に見せつけ、信頼を失墜させること。
県のワシントン事務所を巡り沖縄自民党が、県議会の野党多数に乗じて予算審議を拒否し続けたことも軌を一にしている。
県内市の首長は現在、すべて自公系(うるま市長選挙が4月に行われる)となっており、県議会も野党多数。来年の県知事選で知事の首を挿げ替えれば、あとは国の思うがまま、やりたい放題できる、というのが彼らの目論見だろう。
そんなことを許すわけにはいかない‼
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号