2021年12月03日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】子どもだましの岸田発言にメディア批判せず=隅井孝雄

                          
2111 Cop26での岸田首相演、石炭使用に固執.jpg
  
 石炭火力の削減か廃止かをめぐってもめ続けたCOP26は、13日夜(日本時間14日早朝)石炭火力発電を「段階的に削減する」文書、「グラスゴー気候合意を」採択、ようやく閉幕に至った。
 グラスゴーで岸田文雄首相(写真)は次のように発言した(11/2)。
「日本だけでなくアジア全体で、化石燃料と同様に水素とアンモニアを燃料としてゼロ・エミッション化を推し進める」。
石炭燃焼を燃焼する際、CO2の濃度を低めるアンモニアを混ぜて排出を抑え、火力発電から出るCO2を回収し地中に埋めて再利用する技術をしてゼロ・エミッションと称する。本格的な解決策にはならないことは明らかだ。この発言に対し「化石賞」が与えられた。
 「石炭火力全廃」を盛り込んだ当初案に対しインド、中国などが強硬に反対して合意文書は「段階的削減」となったことに日本も責任がある。日本政府は石炭火力全廃の46カ国の声明に加わらなかったどころか火力発電を維持、アジア諸国の石炭の継続使用を後押ししている。
 議長国イギリスのアロク・シャーマCOP26議長は「この展開について謝ります」と全体会議で謝罪、声を詰まらせ涙ぐんだ。この報道をBBCなど多くメディアが映像も含め取り上げ、「涙」が欧米ニュースで大きな話題となった。
 日本の報道は、政府が石炭火力の依存を進めていることをほとんど批判しなかった。
NHKニュースでは中国の石炭火力維持発言を「途上国を考慮すべき点で評価できる」(11/15)と解説。気候変動問題を扱ったNHKスペシャル「グレートリセット〜脱炭素社会 最前線を追う」(11/7日)では石油への依存、電気自動車、風力発電などは扱われているが、石炭を使用する火力の問題にはほとんど触れかった。
 日本のメディアは“子供だまし”のような岸田発言を批判しなかった。アンモニアを混ぜてもCO2が減るわけでもなく、またCO2を地中に埋める技術は確立されていない。
 日本政府はCOP26の石炭火力問題で中国、インドなどの片棒を担いだと言えよう。日本のメディアもまた岸田首相の「グラスゴー」演説に対する批判を避けている。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2021年12月02日

JCJ12月集会=オンライン・シンポジウム◇「入管行政の闇」――失踪・暴力・医療放置はなぜ?12月12日(日)午後7時から(Zoom利用)

「技能実習」の名で使い捨てにされ、失踪する人が少なくない。外国人労働者が置かれたそんな厳しい境遇が、ようやく広く注目され始めた。3月には、名古屋入管に収容されたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが、医療放置の末に痛ましい死を遂げた。市民の間に人権軽視の日本の入管行政への批判が高まり、問題を正視しようとしない入管法改正案は採決見送りに追い込まれた。
 今年のJCJ12月集会は、「入管行政の闇」をテーマに、オンラインでシンポジウムを開きます。 パネリストは、技能実習生の失踪の構造を暴いた信濃毎日新聞連載「五色のメビウス」を率いた報道部次長の牛山健一さん、暴力、医療放置が横行する入管施設内の実態を暴き、新書『ルポ入管』にまとめた共同通信記者の平野雄吾さん、若い仲間たちと入管の人権侵害への抗議行動を始めた国際基督教大学1年生の宮島ヨハナさんの3人です。
◎パネリスト
         
信濃毎日新聞報道部次長     
牛山健一さん

共同通信エルサレム支局長
平野雄吾さん

国際基督教大学
宮島ヨハナさん

◎司会・進行 藤森研(JCJ代表委員・元朝日新聞論説委員)

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 
電話03・6272・9781(月水金の午後1時から6時まで)
メール office@jcj.sakura.ne.jp   ホームページ http://www.jcj.sakura.ne.jp/
◇参加費500円(学生は無料)
参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
学生の方もPeatixで学生無料券をお求めください。
(1) https://nyukanyami.peatix.com/ をクリックする
(2) 参加券を求める(一般か学生かを選ぶ)
(3) 支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ(学生は不要)
(4) 初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方(無料参加の学生も含む)に講演前日・12月11日までにZoomで視聴できるURLをメールでお送りします。

◎パネリストの略歴
牛山健一さん
 1969年長野県生まれ。早稲田大学卒。信濃毎日新聞に入社、佐久、飯山、伊那各支社局、東京支社などを経て、編集局報道部県政キャップを務め、主に政治、自治、交通、環境を取材。2014年から報道部デスク。若者の政治・社会参加の連載を手掛けたほか、外国人労働者らを追った連載「五色のメビウス」の取材班代表・デスクとして2021年JCJ大賞を受けた。現在報道部次長・部長待遇。

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平野雄吾さん
 1981年東京都生まれ、一橋大学大学院経済学研究科修了。共同通信記者。前橋、神戸、福島、仙台の各支社局、カイロ支局、特別報道室、外信部を経て、現在エルサレム支局長。著書『ルポ入管ーー絶望の外国人収容施設』で2021年JCJ大賞を受けた。共著に『労働再審2ーー越境する労働と〈移民〉』『東日本大震災復興への道ーー神戸からの提言』などがある。


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宮島ヨハナさん
 2002年静岡県生まれ。国際基督教大学1年生。牧師の父が支援する外国人仮放免者らと幼時から接した。高校の卒論調査で入管施設内の人権侵害を知る。名古屋入管で起きたウィシュマさん死亡事件の「真相究明を求める学生・市民の会」に参加、#Justice for Wishmaのハッシュタグをつくり抗議行動を呼びかけた。学内で難民・移民支援サークル「IRIS」を立ち上げ、共同代表に。

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2021年11月30日

【おすすめ本】北川成史『ミャンマー政変 クーデターの深層を探る』─少数民族への丹念な取材が光るルポ=藤川大樹(「東京新聞」外報部)

今から10年前、ミャンマーは半世紀に及ぶ軍事政権に終わりを告げ、民主化への道を歩き始め た。2015年の総選挙では「建国の英雄」の娘・アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が大勝した。民主 化は必然の流れだと思われた。
 だが、今年2月の国軍クーデターにより、ミャンマーは再び暗い時代に引き戻され、人々がようやく手に入れた自由は奪い去られた。本書では、クーデターの背景や国軍の利権構造、市民らの抵抗運動の軌跡を描く。

 政情は「国軍」対「民主派」という単純な構図では語れない。ミャンマーには、中央政府が認定するだけで135に上る少数民族がいる。独自の歴史と生活を持ち、利害も複雑に絡む。国民的な人気を誇るアウンサンスーチー氏に対する温度差もある。
 著者は社会部畑が長い記者だけに、現場を丹念に歩き、市井の声に耳を傾ける。少数民族地域や難民キャンプにも足繁く通い、人々の本音を引き出している。特に中央政府や国軍も自由に立ち入れない事実上の独立国、ワ自治管区の実情を知らせる報告は見事だ。

 クーデターから8カ月が過ぎた。民主派は少数民族との連携を模索しながら、抵抗運動を続けるものの、国軍の力任せの支配は固まりつつあるように見える。
 人々は再び自由と民主主義を取り戻すことができるのだろうか。著者は「自由の価値を知った以上、理不尽な束縛など到底受け入れられない」と前置きした上で、抵抗運動は「必ず実を結ぶ」と 断言する。(ちくま新書 840円)
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2021年11月29日

【スポーツ】個性尊重の指導が求められている=大野晃

 エンゼルスの大谷翔平投手が、米大リーグで最高のア・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれた。投げて9勝、156奪三振。打って46本塁打、100打点。走って26盗塁。チームは優勝に遠かったが、投打の二刀流で申し分ない見事な成績だった。
  日本人としてイチロー外野手以来の20年ぶり2人目の栄誉だが、伝説的なベーブ・ルースに挑んだ27歳の若きヒーロー誕生で、コロナ禍の米国ファンの夢を育んだ。
 テレビ観戦がほとんどの日本人ファンも歓喜した。パワフルな豪速球を投げ込み、三振を恐れずに豪快に振り抜く。ライナーでスタンドに突き刺さる本塁打は本場ファンの度肝を抜いた。
 笑顔を絶やさず、生真面目で、しかも、楽しそうにプレーする姿は、さわやかで大らかな青年の魅力を振りまいた。その裏で、体を鍛え抜いてケガを克服し、研究熱心な努力家でもある。
 高校野球ならエースで4番はあっても、プロ野球では、投打二刀流は理想であり、憧れであっても、現実的ではないと思われてきた。しかし、193aの恵まれた体格と高い潜在能力を見込まれて、日本ハム時代から大きく育てることに、指導者が十分に留意し、渡米後も継続されて開花したが「米国の方が、二刀流を受け入れてもらえた」と言う。うれしい挑戦の場があったということだろう。

 ともすれば、日本野球は、勝利至上で競技者を型にはめて、個人プレーの評価を狭くする傾向があり、大きな飛躍の障害となるケースが少なくなかった。だから、奇跡の幸運児でもある。
  多くの競技で、大型の外国人に匹敵する日本人離れした体形の少年が育っている。鍛え方しだいでは、大きく能力を伸ばす可能性を秘めている。
 大谷の躍進は、保守的な日本的指導法に新たな問題を投げかけた。イチローの活躍以来、個性を尊重する指導の必要性が訴えられた。
  しかし、多くの指導者が改革には尻込みしがちである。第二、第三の大谷登場を見逃してはいないだろうか。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年11月28日

【今週の風考計】11.28─冬の「オリオン座」から「ランニングマン星雲」へ

日の暮れるのが早い。所用で出かけた帰り道、寒風が吹く冬の夜空を見上げれば、オリオン座がひときわ明るく目に入る。
 その巨人オリオンのベルトあたりに並ぶ三ツ星を軸に、肩のあたりにベテルギウス、左足にはリゲルが輝く。そのベテルギウスとおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンを結んだ「冬の大三角」が、大きく頭上を覆う。
オリオン座流星群が、東の空を飛び交ったのは10月22日〜23日。ハレー彗星が軌道上でまき散らしたチリの帯に、地球が近づいたため、そのチリが地球の上空100km前後で発光して、オリオン座流星群となる。早いもので、もう1カ月になる。

足を止めて、よくよくオリオン座を見ると、巨人オリオンのベルトあたりに並ぶ三つ星のすぐ南に、小さくタテに3つ並ぶ星列がある。そのあたりがモヤモヤした雲みたいなベールがかかっている。いつも気なっていた。
 改めて調べてみると、この星列を「小三ツ星」というそうだ。しかも真ん中のものは星ではなく、鳥が翼を広げたような形の「オリオン座大星雲」と呼ばれ、全体が淡いピンク色をおび、天体望遠鏡で見れば目のさめるような美しさだという。地球からおよそ1500光年先にある。
「オリオン座大星雲」のすぐ隣に、いま注目されている「ランニングマン星雲」があると分かった。星雲の暗い部分の形が、走る人物の姿にも見えることから名づけられている。
 この「ランニングマン」の姿は、電離した水素原子が発する赤い輝きによって描き出され、その周辺は青っぽい恒星の光を反射するガスに覆われているそうだ。

だが「ランニングマン星雲」は、まだまだ解明されていない問題が多い。
 先日、米航空宇宙局(NASA)が、「ランニングマン星雲」から、高温のガスを噴き出しながら、周囲にあるガスと塵の雲に秒速数百kmもの速度で衝突し、明るい衝撃波を生み出す様子をとらえた画像を公開した。
視野全体に漂う雲の中央付近から右上と左下に向かって、間欠的に噴き出すジェットのような構造が写っている。これが生まれて間もない若い“ハービッグ・ハロー天体”だといわれる。
 天文学には知識のない筆者にとっては、星や天体の生まれる経緯が、この映像などを通して、さらに解明されていくことを願うばかりだ。

肉眼で見える「オリオン座」に戻ろう。今日28日の夜明け前、年内最後の「オリオン座流星群」が見られたのだが、寝坊の筆者には無理。
 残されるのは「ふたご座流星群」。「オリオン座」の左に、同じ明るさの星カストルとポルックスが2つ並んでいる。それが「ふたご座」。12月14日ごろを中心に夜半過ぎまで、月から離れた方向を広く見渡せば、たくさんの流れ星が飛ぶという。(2021/11/28)
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2021年11月27日

【焦点】五輪選手村訴訟 12月30日に東京地裁で判決 官製談合の是非に注目=橋詰雅博

                            
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都有地の東京五輪選手村用地を晴海の周辺地価と比べ10分の1以下の約130億円で大手デベロッパー11社に売却したのは違法だとして都民33人が都に対し、損害賠償約1500億円を小池百合子都知事らに請求するよう求めた裁判は、12月23日(木)午後3時、東京地裁103号法廷で判決が言い渡される。
 筆者は4年前の第1回口頭弁論前に原告代理人の淵脇みどり弁護士にインタビューし、JCJ機関紙2017年10月25日号に記事を掲載した(写真下)。そして裁判の傍聴を続けてきた。
 この住民訴訟の問題の核心は東京都が「一人三役」の役割を務めたこと。どういうことかと言えば、地権者と個人施行者、許認可業者の3つを都が併せ持つという異様な構図をつくったのだ。都都市整備局によると、自治体が個人の地権者として個人施行の再開発事業を行った事例は5件あるが、都のような「一人三役」のケースはない。
 通常の都市計画事業という形態ならば、公聴会・縦覧・意見書の提出に加えて都市計画審議会での議決という一連の手続きが必要。また都議会や財産価格審議会にも諮らなければならい。「一人三役」はこうした面倒なことを省くことができる。実質、直接売買を可能にしたのだ。
 なぜ都はこうしたカラクリを編み出したのか。それは選手村を建てる大手デベロッパーに破格の安さで土地を売却するためだ。デベロッパーは五輪終了後に選手村建物を活用して手直し、新築マンションとして販売するので、入手する土地は安ければ安いほどいい。一方、晴海という好立地の物件ならば、高く売れる。利幅が大きくなる。
 都とデベロッパーはこの五輪村用地の売却を巡り数年前から協議を重ねてきた。こうした官民の癒着の「官製談合」によって土地のたたき売りを実現させた。カラクリはそれをスムーズに運ぶための方法だった。ちなみにデベロッパー11社のうち7社に都幹部職員12人が天下りしている。
 もしも正常な価格で売却していたら、裁判もなく財政面でプラスになり納税者への公共サービス向上につながったのではないか。
 橋詰雅博
                       
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2021年11月26日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】学術会議問題スクープ 問題意識が生んだ報道 いんぶん赤旗編集局長 小木曽陽司さん

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 受賞発表の9月3日は菅首相が政権を投げ出した日。昨年の「桜を見る会、私物化疑惑」報道のスクープの大賞受賞も安倍さんの退陣表明直後でした。安倍さんは病気、菅さんはコロナ対策に専念するというのが表向きの理由ですが、権力トップの違法行為を暴いて退陣に追い込むスクープを2年連続でやったのは初めてです。
 最初は昨年10月1日付の1面トップ「菅首相、学術会議人事に介入、推薦候補任命せず」のスクープ記事。日本学術会議法は、学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が候補を任命すると定めており、3年ごとに半分が交代する。ところが菅首相は法に反し、学術会議が推薦した6人の任命を拒否した。すべてが安保法制や共謀罪に反論した学者でした。当日は学術会議の総会で、各社が一斉に報道しました。
  私たちは単独スクープになるとは思っていませんでした。きっかけは公開情報だったからです。任命拒否された刑法学者の松宮孝明立命館大学教授が、推薦名簿には名前があったのに、任命名簿にはなかったとSNS、フェイスブックで暴露したのが、9月29日の午後5時40分頃。これが色々な方に共有、拡散された。私たちも重大情報に遭遇し、すぐに体制を整えて取材、報道しました。

  なぜ、大手メディアでなく赤旗の単独スクープになったのか。「ご飯論法」で知られる法政大学教授の上西充子さんは「安倍政権の時代から表現の自由や学問の自由が制限される流れは続いており、赤旗編集局に問題意識があった」と指摘。また、政府の言い分を含めた「両論併記」でなく、赤旗は一歩踏み込んで重大問題だと提示し、深刻さが伝わったと。
  実際、私たちは、菅首相の人事をテコにした権力支配、強権政治は科学の分野にまできたかと強烈な危機感を持ちました。民主主義を揺るがし、社会を萎縮させる。だからこそ違憲・違法の任命拒否は撤回せよと続報、キャンペーンをずっと続けました。
 桜のスクープは「権力の私物化」と捉えた視点の違いが評価されましたが、今回は民主主義の危機への問題意識、感度が問われたとの指摘です。この問題は首相が任命拒否を撤回しない限り解決しない。絶対に曖昧にせず、撤回で決着をつける。そうでなければ政権交代を実現するしかない、との決意でおります。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月25日

【21年度JCJ賞贈賞式記念講演】「私と沖縄」矛盾しわ寄せの島 TBS報道局 佐古忠彦さん

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2017年から沖縄のドキュメンタリー映画を3本続けて作りました。TVの世界で長くやってきましたが、TVとは違った古くて新しい世界が映画にはあると感じています。
なぜ、沖縄なのか、私が沖縄に通い続けて四半世紀を超えています。TBSのニュース23、かつて筑紫哲也さんがキャスターをしていた番組に私も参加していました。筑紫さんは記者として沖縄への眼差しを持ち続けた人で、「沖縄から日本が見える、その矛盾がつまっている」と話していました。米軍が起こした交通事故で息子を失った父親が日米地位協定の壁に立ち向かい訴訟を起こした問題を取材したことなどから、私も沖縄へ深く関わるようになりました。そしてなぜ沖縄の今があるのか、という意識からどんどん過去の歴史を遡っていくようになりました。安全保障の問題は、イデオロギーになりがちですが、実は生活の問題で、主権国家としての振る舞いが問われている、その矛盾が一番押しつけられているのが沖縄です。
米軍統治下の政治家・瀬長亀次郎、カメジローの不屈の闘いを描いた番組は最初深夜の時間帯に放送されました。翌朝、視聴者からの反応の大きさに驚きました。今度は違った形で全国に届けたいと映画化に踏みきりました。映画館に多くの人が集まってくれたのを見て、涙が出そうになりました。

2作目はカメジローの230冊の日記をもとに、主権を取り戻して日本に還るための奮闘を描きました。辺野古への基地移転問題など、政府は、今も沖縄の民意に向き合おうとしていません。最近も埋め立ての土砂を、沖縄戦の犠牲者の遺骨が眠る南部から運ぼうとしています。戦時中最後の知事として送り込まれた島田叡についての映画は、その沖縄戦に立ち返った作品です。内務官僚として軍とともにする立場にあった島田が、最後に「個」として「人間」として何をしたのかを描きたかったのです。島田は全体主義に「個」が押しやられる中で、最後に「個」に自らが向き合うことができたのではないか。この映画をリーダー論としても見ていだだけると思います。
そしてカメジローもまた「個」の大切さを訴え、「個」の力が積み上げられて沖縄ができていた、と信じていたのです。民主主義とはどういうものか、沖縄がそれを示しているのではないか、私はこれまでと変わらない視点を持って、やっていきたいと思います。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月23日

自民圧勝、立憲惨敗の衆院選は「二大政党政治の終わり」のはじまりだった〜11.28JCJオンライン講演会で今後の政治を読み解きます!=鮫島浩

                                                     
 菅政権の退陣表明から自民党総裁選、岸田政権発足、そして衆院選での自民党圧勝と立憲民主党惨敗。9〜10月の政治の展開は速かった。SAMEJIMA TIMES(2021年11月22日付)はこの動きを逐次追い、先行きを展望してきたつもりである。
 しかし、政治の流れがあまりに急速だったため、いったい何が起きて、今後どうなっていくのか、俯瞰的に総括するタイミングがなかった。来年夏の参院選に向けて政治の行方をじっくり展望する機会があればと思っていたところ、日本ジャーナリスト会議(JCJ)にオンライン講演会の機会をいただいた。
 11月28日(日)14時から16時までのJCJ オンライン講演会「政治を読み解く〜与野党激突の総選挙後の行方」である。参加費500円。申し込みはネットで(こちらをクリック)。時間をかけてたっぷりお話ししたいと思っている。ご関心のある方はぜひ視聴してほしい。
 今日はこの講演のレジュメのつもりで、簡潔に論点を書き記したい。
 憲政史上最長の安倍政権とそれに続く菅政権を倒したのは、間違いなくコロナ危機だった。「モリカケサクラ」に象徴される権力私物化とそれら疑惑の隠蔽工作が次々に発覚しても倒れなかった政権は、すべての人々の命に直結するコロナ危機が襲来し、それにまったく対応できない行政崩壊の現実が露呈したことで、瞬く間に倒れたのである。
 自分たちの暮らしに直接かかわらない疑惑の数々に鈍感な世論も、自分たちの命に直結する危機に直面した途端に一気に沸騰するーーそんな民主主義の現実を私たちは目の当たりにしたのだった。

 これはこの国の民主主義の未成熟さを映し出すものかもしれないし、あるいは、民主主義とは本来そういうものかもしれない。ひとつ言えることは、このような脆弱な政治や行政が続けば、コロナ危機が去ったとしても、この国は来るべき人口減社会を乗り越えることはできないという現実である。コロナ危機が私たちにその現実を知らしめたことは間違いない。
 ところが、自公政権はこのような深刻な「政治の危機」を、首相の首をすげかえるというその場しのぎの対策で切り抜けた。菅義偉首相にコロナ対策の失態をすべて負わせ、岸田文雄首相に差し替えることで、4年ぶりの政権選択の機会である衆院選をいとも簡単に切り抜けてしまったのである。
 コロナ危機が一時的に収束したことで世論の怒りは鎮静化し、自民党の「小手先改革」を容認したといえるかもしれない。
 見逃してはいけないのは、衆院選の投票率は戦後三番目に低い55.93%にとどまったことである。自民党は選挙には圧勝したが、世論に圧倒的に支持されたわけではない。低投票率のなかで組織票を固めて逃げ切ったのだ。政治を根本的に改める政権交代の機運はまったく高まらなかった。
 自公政権の腐敗を許し、政治に閉塞感を漂わせている最大の原因は、「政権交代の受け皿」となって世論の期待を集めるべき野党にその力が欠如していることにある。

 なぜ野党は「政権交代の受け皿」になれないのか。日本の政治が長いトンネルから抜け出すには、この命題を解決しなければならない。
 戦後日本は万年与党の自民党と万年野党の社会党による自社体制のもとで政治は安定し、経済発展に傾注してきた。米ソ冷戦とバブル経済が崩壊した1990年代に入り、自社体制は崩壊。政権交代可能な二大政党政治をめざして小選挙区制度が導入された。紆余曲折を経て、自民党vs民主党の二大政党政治が定着し、2009年衆院選ではついに政権交代が実現して民主党政権が誕生したのである。
 一連の改革は米国の共和党vs民主党、英国の保守党vs労働党の二大政党政治にならったものだった。その本質は、政権交代可能な二大政党が競いあうことで、政治の緊張感を維持して腐敗を防ぐことにある。政権与党が失敗したら、野党が世論の支持を集めて政権を奪い、政治を浄化する。ここにこそ、二大政党政治の意義がある。

 日本でも2009年の政権交代が実現する前、自公政権は不祥事が相次ぎ、一年ごとに首相が目まぐるしく交代する事態に追い込まれていた。「自民党の失敗」が「民主党への期待」を生み、民主党政権を誕生させたのだ。その意味で二大政党政治は機能していたといえるだろう。
ところが、世論の圧倒的な期待を背負って誕生した民主党政権は大迷走した。マニフェストに掲げていなかった消費税増税を打ち上げて2010年参院選に惨敗したあげく、党内権力闘争が勃発し、自滅したのである。
 2012年に政権復帰した安倍自民党は、数々の権力私物化疑惑を重ねながらも、「民主党政権の悪夢」を強調するだけで6回の衆参選挙に圧勝し、憲政史上最長の政権となった。
 ここで注目すべきは、政権交代を実現させた2009年衆院選の投票率が69%だったのに対し、それ以降の衆参選挙いずれも50%台に低迷したことである。多くの有権者が「民主党政権の失敗」で政治をあきらめ、投票所から離れていったことが、自公政権を継続させる最大の要因となったのだ。

 その構図は今回の衆院選でも繰り返された。政権与党が権力私物化の疑惑に加え、コロナ危機で政権担当能力に重大な疑念が生じたにもかかわらず、野党があまりに不甲斐ないゆえに、政権に居座り続けている。
 この現実は、二大政党政治が機能不全に陥ったことを如実に映し出している。政権交代のリアリズムを欠いた「万年与党の自民と万年野党の立憲民主」という見せかけの二大政党政治は、自民党の派閥同士が牽制しあったかつての自社体制よりも「権力集中」が進んで「政治腐敗」を招くという意味で、より悪い政治状況を生んでいるといえるのではないか。
 今回の衆院選で野党が採用した唯一の戦略は「小選挙区における野党候補の一本化」だった。「与党vs野党」の一騎打ちの構図を作り出し、「二者択一の消去法」の選択を有権者に迫り、「与党がダメなら野党へ」と呼びかけることで政権交代を実現させる「二大政党政治のオーソドックスな戦略」といっていい。

 それはそれなりに機能し、接戦の選挙区をたくさんつくった。一方で、それだけでは政権交代の機運は高まらず、投票率は伸びなかった。「二者択一の消去法」を迫られた有権者の多くは「与党も野党もダメ」「投票先が見当たらない」とあきらめ、政治から目をそむけ、投票所へ足を運ばなかったのである。
 野党第一党の立憲民主党が魅力的で政権交代の受け皿となっていれば、民主党政権の悪夢がなければ、結果は違っていたーーそういう指摘もあろう。たしかにそうかもしれない。

 しかし、私は見解を異にしている。そもそも「二者択一の消去法」の選択を有権者に迫る二大政党政治のあり方が、デジタル化で価値観が多様化する現代社会の感覚にマッチしていないのではないか。(→続きを読む)

(→続きを読む)
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2021年11月22日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】ETV特集「原発事故最悪のシナリオ=v事故の教訓化終わらず NHKディレクター・石原大史さん

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 JCJ贈賞式にお招きを受けるのは、今回で3度目です。最初は2011年原発事故の年で、ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」がJCJ大賞。2度目は2013年NHKスペシャル「空白の初期被ばく〜消えたヨウ素131を追う〜」がJCJ賞を受賞しました。
 今回の番組の企画意図は「原発事故を危機管理の側面から検証したらどうなるか」というもので、そのキーワードになったのが「最悪のシナリオ」でした。通常「最悪のシナリオ」は、事故の初動のタイミングで必要と言われ、事故防止戦略の道具として事前に必要なはずなのに、今回の場合(4つの原子炉が損傷し)事故の最悪のタイミングである3月15日からさらに一週間以上も経って官邸に届きました。「これは変だ」ということで取材を始めました。
 「最悪のシナリオ」はアメリカ政府・軍、防衛省・自衛隊、東京電力も、それぞれ別個に作っていて、それぞれが違います。そのこと自体が危機管理が混乱した要因のひとつでした。
 制作での苦労はまず第一に、キーパーソンの誰にどうやって話してもらえるか、です。ローラー作戦で仲間たちで一人ひとり口説いていく作業が大変でした。
 第二は、これまで公の場で話したことのない内容を「テレビカメラの前で話してください。対話形式で2、3時間話してほしい」と要求したので、嫌がられました。

 では、なぜ応じてくれたのか。事故対応した人の多くは「あれで良かったのか」と反問、自己反省を繰り返していました。事故後10年を取材する側とのタイミングが合ったのではないか。幸運で有難いことでした。
 第三は、番組にどういうメッセージを込めるかが、最も苦労した点です。あらかじめ、結論やメッセージが決まっていた訳ではなく、取材から見えてきたもので終わろうと決めていましたが、難しかった。最後は「日本人は危機そのものを直視せず、根拠のない楽観論に陥りやすい」などと指摘する元自衛隊統合幕僚幹部や元首相補佐官のインタビューに番組のメッセージを込めました。
 私たちの社会が、事故からどういう教訓を引き出し、何を学ぶかは、未だ全然終わっていません。引き続き、番組制作を続けたいと考えています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月21日

【今週の風考計】11.21─「ヤマサクラ81」と「オリエント・シールド21」

◆季節外れだが、優しい名前のつく「ヤマサクラ81」が始まる。実はこれ、過去最大規模の日米共同軍事演習の別称なのだ。兵庫県伊丹市の陸上自衛隊・伊丹駐屯地に、臨時に大規模な施設を設置し、12月中旬まで行われる。
 在日米陸軍のシンボルである富士山の「山」と、陸上自衛隊のシンボルである「桜」を合わせて付けたもので、1982年から始まり、年2回、実施されている。
◆すでに今年は2月7日から15日まで、熊本市にある陸上自衛隊の健軍駐屯地で、離島防衛をテーマに「ヤマサクラ」図上演習が実施されている。陸自から約4千人、米側から約千人が参加した。

◆「ヤマサクラ」は、実践的な<戦争ゲーム>を通して、現場の指揮官クラスの状況判断や指揮の力量を向上させ、司令官レベルでの自衛隊・米軍の統合的指揮・統制力を高めることを狙いとした大規模な軍事演習だ。
◆伊丹駐屯地で始まる「ヤマサクラ81」は、陸自の各方面隊と米陸軍の司令部が、対中国を視野に、日本を拠点とする軍事戦略を日米共同して練り上げる。
 10月4日の米英3空母も参加した台湾周辺での6カ国演習に続き、30年ぶりの全陸自部隊が参加する史上最大の演習になる。
◆すでに伊丹駐屯地では、「指揮所に使用する建物と配電設備の建築・レンタル・解体業者を、東京・横田基地の米空軍第374契約中隊が募集。大阪府内の建設業者が9月21日に約1億6700万円で受注」(赤旗11/5付け)と、報じられている。

◆さらに北海道では、陸上自衛隊・矢臼別演習場など5カ所で、初めて米軍オスプレイとの日米共同軍事訓練が、12月5日から17日まで行われる。とりわけ酪農家たちの間では、オスプレイの騒音で乳牛がパニックに陥るのではないかと、不安が広がっている。
 それも当然、6月末には矢臼別演習場で、米陸軍と共同して国内初のロケット砲・実射戦闘訓練「オリエント・シールド21」が行われ、その砲声にびっくりしたばかりだ。
◆「オリエント・シールド21」なるもの、<東洋の盾>とのことだが、これまた陸上自衛隊と米陸軍が共同で実施する、対中国を視野に入れた戦争実動訓練の別称だ。今年は6月18日〜7月11日の期間、奄美駐屯地、伊丹駐屯地、矢臼別演習場など、7カ所で実施された。
 奄美駐屯地では、米陸軍ペトリオット部隊が奄美大島に初展開し、陸上自衛隊の中距離地対空ミサイルを活用しての共同対空戦闘訓練に取り組んだ。陸自から約1400人、米軍から約1600人、合わせて約3000人が参加。

◆政府は「沖縄の基地負担の軽減」を理由に、これら本土各地での日米共同演習を正当化している。しかし実態は、まさに北海道から奄美・沖縄まで日本列島を覆う、日米共同軍事ネットワークを完成させ、日本全体を日米共同管理の軍事基地化へ地ならしをしているのだ。
◆いわゆる「沖縄の基地を本土に引き取る」論があるが、その是非以前に、本土そのものが沖縄化している実態は、見過ごすわけにはいかない。(2011/11/21)
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2021年11月20日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】大賞「五色(いつついろ)のメビウス」分断とは対極の社会を 信濃毎日新聞報道部次長 牛山健一さん

                           
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私たちの報道は、外国人のキャンペーンで始まったわけではありません。新型コロナの影響で苦しんでいる人たち、命の分岐点に立っている人たちの取材をしていく中、外国人が最も歪みの影響を受けていると感じ集中した。なので全くこの問題の専門家でもなく、素人集団で始まった。だからこそ執拗に取材できたのかもしれない。
昨年の夏から秋にかけ二つの大きな出来事があった。一つは浅間山の麓、小諸市のサニーレタス畑で起きた落雷事故。なぜ雷雨の中、農作業を強いられていたのか、死亡した2人は在留期限を超えて滞在していた。それから南牧村の農家で、ベトナム人の元技能実習生と元留学生が傷つけあう傷害事件が起きた。2人は大阪市の会社が国の許可を得ずに派遣した失踪外国人だった。この会社は佐久地方のレタス、白菜の農家に、県外で失踪した技能実習生ら230人を違法に派遣していたことが判明した。若者たちはなぜ元々の職場を逃げ出し、佐久地方に送り込まれたのか疑問は膨んだ。農業だけでなく、建設、製造業、食品加工、介護、私たちの便利な暮らし、手ごろで新鮮な食べ物、高齢者の福祉サービスは外国人労働者の働きなくしてはありない。

新型コロナの影響による出入国制限のため海外渡航しての取材は断念した。でも、ベトナムなどの送り出す派遣会社などの関係者の証言を集め、S N Sやウェブ会議システムを使って現地への取材にも成功し、日本企業・団体への裏金やキックバック、違法な手数料の実態も明らかに。地道な従来型の取材と、ネットも使った若い記者の踏ん張りも闇を暴くことにつながった。
新たな受け入れ制度である特定技能でも、外国人が違法な手数料を支払わされている実態を突き止めた。新型コロナウイルスに感染した外国人住民の苦労、入管法の改悪問題についても早くから取り上げてきた。
「五色(いつついろ)のメビウス」はどういう意味か。五色には多種多様の意味がある。五大陸をイメージし世界の意味を込めた。表が裏になり、裏が表になるメビウスの輪。循環するイメージから無限の可能性も意味する。私たちと世界の関係も同じ、多様な国々をルーツとする人々と一緒に築く社会、分断とは対極の社会を目指したい。少しでも近づけるよう引き続き、掘り下げて伝えていきたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月19日

【スポーツ】感染激減で正常化に焦り=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染者激減で、プロ野球やJリーグは、来シーズンからの正常化を実現する意気込みだ。
 観客制限が続いたプロ野球の今シーズンの観客数は、より規制の厳しかった昨シーズンからの緩和を政府に要望したこともあって、6割増しになったとはいえ、感染拡大前の2年前のシーズンの3分の1にすぎなかった。 正常化は切実だが、日本シリーズでは延長戦を復活させるなど焦りも感じられる。
 高校部活動の大会や対外試合は2年連続して規制下に置かれ、在学中に正常な活動を経験できないまま卒業する悲劇的な競技生活の恐れもある。まして市民スポーツレベルでは、正常化の見通しが立たず、グループの解散、縮小の危機に直面している。
 スポーツ庁は競技団体経営の効率化を訴えるばかりで、国民の競技環境改善の方途を示さない。強調されてきた東京五輪の国民スポーツへの遺産は、巨額を投じた競技会場の維持難という負の遺産だけなのか。
 メダル獲りを煽った民放テレビは、相変わらず五輪メダリストの番組タレント化を狙い、卓球の銀メダリストが大ケガをする事故まで起こした。

 11月に入って晴天が多かったため、公園で運動不足解消のマスクをしたランニング姿を多く見かけたが、国民の欲求不満は高まるばかりらしい。 しかし、日本スポーツ協会は知らんふりである。政府の無策ぶりが伝染して、公的なスポーツ振興機関の怠慢が、スポーツ関係者の焦りを生んでいるようだ。
 WITHコロナのスポーツライフは、屋内で個人的に、ということか。オンラインでゲームに取り組めばいいとでも言わんばかりだ。コロナ禍で、国民のスポーツ権無視が目に余る。
 政府が経済活動活性化に集中して、会食や旅行の規制緩和に動いても、国民の生活再建は見通せない。
  マスメディアは、多方面からの安全、安心な再建策を提示する努力が必要だろう。
   大野晃(スポーツジャーナリスト)

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