2017年04月23日

【今週の風考計】4.23─NPO「げんきな図書館」が撤退した理由

4月、新入生には図書館が身近になる。学校であれ地域であれ、図書館は知的好奇心や情報サービスを充足させてくれる重要な文化施設。その図書館が危機に見舞われている。とりわけ公立図書館が深刻な事態だという。行政が責任を持つのでなく、運営すべてを民間業者に、安い金額で丸投げする指定管理者制度の導入による弊害が生じている。事業者の利益優先・経費削減が進み、低賃金雇用、知識・経験を備えたスタッフの不足、利用者へのサービス欠如、図書選定の偏りなどなど、本来、図書館が果たすべき役割まで放棄する始末。業務委託の場合でも同じ危機が生まれている。「出版ニュース」4月下旬号に、<NPO 法人げんきな図書館が図書館業務からの撤退を決めたわけ>と題する一文が寄せられている。都内の2つの自治体から5つの図書館業務を委託され、13年も続けてきたが撤退やむなしとなった。理由は、ある自治体が図書館10館の一括業務委託を、プロポーザル方式(提案評価方式)で選考し、委託参考価格は約3億円の内容で公募した。しっかり運営するには、まずスタッフ120人(うち責任者45人)が必要となる。最低賃金の保障・社会保険の支払いなどを計算すると、あまりにも参考価格が安すぎる。しかも今後3年間、初年度の額で据え置き、さらに減額もあるとなれば、人材の確保や育成は無理で、負のスパイラルに陥るだけ。「真面目に、やってられない!」のが正直なところだろう。やるとすれば「安かろう悪かろう」のタテマエで、図書館の果たす尊い使命など、そっちのけ。現に委託を勝ち取った民間会社は、驚くほどの低賃金で働かせている。ああ、図書館が泣いている。(2017/4/23)
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2017年04月22日

天皇「退位」問題の本質は何か=梅田正己

 天皇「退位」の問題が、与野党間で政治問題化している。
 昨年8月のテレビ放送による「天皇メッセージ」は国民の多くの共感を呼んだ。翌9月の朝日新聞の世論調査では、退位の「恒久制度化」を求める声が76%に上り、「今の天皇に限り」というのは17%しかなかった。
 この国民世論に従えば、皇室典範の一部を改正するだけでさしたる問題もなかったはずである。
 しかし政府はそうしなかった。有識者会議なるものを設け、専門家からのヒアリングを重ね、なんとか理屈をつけて退位の「恒久制度化」を阻止しようとしてきた。なんで、だろうか。
 根底にあるのは「一世一元」制の問題である。一人の天皇には一つの元号、譲位は死去によってしか行われず、したがって元号もその際にしか改元しないという、この「一世一元」制が、生前譲位を認めれば崩れてしまうということから、政府は手段を尽くしてその実現を阻もうとしているのである。
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2017年04月16日

【今週の風考計】4.16─<武田氏滅亡>の背後に「あの男」がいた

やっと平山雄『武田氏滅亡』(角川選書)を読み終えた。長篠の戦いから滅亡までの7年間を検証した750ページの大作である。圧巻は九章、木曽義昌の離反から1カ月足らずのうちに一気に崩壊していく過程の、そのスリリングな記述に圧倒された。それにしても武田勝頼は、こうも家臣に裏切られていくのか。穴山梅雪といい、小山田信茂といい、彼らの散々な内通や謀反に翻弄され、滝川一益にまで、勝頼は天正10年3月11日の最期を、献上してしまう始末だ。その背後には、ほぼ80日後、明智光秀の謀反による<本能寺の変>で横死する「あの男」がいた。いまに戻ろう。民進党が離党者の続出・離反に、戦々恐々だ。誰が離党するか疑心暗鬼の状態が続く。都議選では、民進党の公認候補36人のうち10人が離党届を提出している。長島昭久衆院議員まで離党届を出す事態では、さらに都議の離党は加速する。「公認候補はゼロになる。お尻に火がついた」と危機感は募り、「もう都議選は崩壊だ」とまで言われる。民進党の応援部隊「連合東京」まで、小池百合子都知事の率いる地域政党「都民ファーストの会」と政策合意し、支援する方針を決めた。公明党に遅れじと、<小池ヒーバー>に便乗しようというのか。民進党は、離反や野合に翻弄されず、本丸に向かって市民との共闘を進めるべきだ。いま国会では「共謀罪」の導入に向け、安倍政権は強行マル出しの審議を仕掛けてきている。桜の下で呵々大笑している「あの男」を、これ以上、喜ばせてはならない。(2017/4/16)
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2017年04月09日

【今週の風考計】4.9─出版界と愛書家を襲う6つの激動の波

★先日、「出版界の動向を予測する」と題した、星野渉(「文化通信」編集長)氏の講演を拝聴した。とりわけ深刻な問題として6つのポイントを挙げ、詳述された内容に衝撃を受けた。★1つは、出版物流の危機である。運転手不足やマージンの低さがネックとなり、書店やコンビニに本を配送できない事態が生まれている。運賃を2倍の要求に、どう取次や出版社が応えるのか、激しい攻防が予測される。★2つはアマゾンが出版社との直接取引で仕入れた書籍をネット販売し、かつ重版未定の本でもプリント・オンデマンドで、1冊から注文に応ずるなど、書籍流通の見直しが起きている。3つは雑誌の電子化・デジタル化が加速し、コンテンツもネットやイベント、通販などと連携したサービス提供にシフトするという。4つは紙媒体のコミックが激減し、電子版コミックが1460億円(前年比+27%)の売り上げ、急速に伸びている。★5つは書店の統廃合が進行する。トーハン・日販の2大取次による書店系列化のあおりを受け、1万4千軒の本屋さんが半減の7千軒になるといわれる。いま日本全国で2割の自治体が、新刊を扱う書店ゼロだ。町の本屋さんは消えるのみ。★6つは出版社のコングロマリット化・再編に向けた動きが顕在化する。KADOKAWAは、所沢市に図書館・美術館・博物館を融合させた文化コンプレックスを建設する。また蔦屋書店などを経営するCCCグループが、徳間書店を子会社化して、CCCの映像・音楽事業と連携した出版物の刊行を手がける。この激動に愛書家の不安は尽きない。(2017/4/9)
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2017年04月07日

正念場迎える日本の報道機関=吉原 功

 「憲法70年の年明けに、『立憲』の理念をより深く」(朝日)、「歴史の転換、日本の針路は、世界とつながってこそ」(毎日)、「反グローバリズムの拡大防げ、トランプ外交への対応が必要だ」(読売)、「揺れる世界と日本、自由主義の旗守り、活力取り戻せ」(日経)「年のはじめに考える、不戦を誇る国であれ」(東京)、「年のはじめに 自ら日本の活路を開こう」(産経)。東京発行5紙の2017年元旦社説タイトルである。
 米国におけるトランプ政権誕生への戸惑い、危機意識という点で共通している。欧州で表面化してきたポピュリズム・大衆迎合主義が更に加速し、世界経済や自由・民主主義という「普遍的」価値が「排外的ナショナリズム」によって崩壊するかもしれないという危機感だ。

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安倍政権「情報隠し」一段と強化 経産省施錠、メディアの抗議を一蹴 国民の「知る権利」損なう=橋詰雅博

 2月末から「情報管理を徹底する」という名目ですべての執務室の扉を日中でも施錠した経済産業省の異様な措置に、取材が規制されると経済産業記者会は撤回を申し入れた。だが世耕弘成大臣は拒否。メディアの要求を一蹴する安倍政権の情報隠し≠ヘひどくなる一方だ。

◇疑問抱く閣僚も

 執務室を施錠したのは経産省が入る本館と、資源エネルギー庁などが入る別館も含まれる。東京・霞が関の中央省庁の中で、全執務室を施錠したのは経産省だけ。前身の通産省時代を含め経産省は民間人も自由に出入りができるオープンな役所だった。それがガラリと変わったのだ。経産省のやり方を疑問視する閣僚もいる。
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底知れぬ「森友」疑惑 幕引き許さない/問われる首相夫妻の責任

 大阪市の学校法人「森友学園」をめぐる疑惑が国政をゆるがす大問題になっている。>
 「森友学園」は、大阪府豊中市の国有地を2016年6月に購入した。目的は、安倍首相夫人の昭恵氏が名誉校長を務めていた私立小学校「瑞穂の國記念小学院」を設立するためだった。

◇気前よく値引き

 驚くべきは、その購入価格だ。売買契約を担当する財務省近畿財務局と土地を保有する国土交通省大阪航空局は、土地の価格を9億5600万円と鑑定していた。ところが土地に埋設された「ゴミの撤去費用」などとして8億1900万円を気前よく値引きし、1億3400万円という破格の安値となったのだ。

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2017年04月06日

激動の朝鮮半島情勢=伊藤力司

 朝鮮半島情勢が激動している。
 2月13日にマレーシアの首都クアラルンプール空港で、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄金正男氏が毒殺された。3月6日北朝鮮は弾道ミサイル4発を日本海に向け 発射、3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。3月10日韓国の憲法裁判所は、国会で弾劾され職務停止中の朴槿恵大統領を罷免した。
 金正男毒殺事件は化学兵器禁止条約で禁止されているVXガスが使われたこと、マレーシア警察が容疑者と断定した北朝鮮国籍の4人の男が事件後に帰国したことなど から、北朝鮮の独裁者金正恩委員長の命令を受けた国家テロであることは自明の理だ。
 北朝鮮は昨年10月、中距離弾道ミサイルを発射したのを最後に2月中旬まで挑発行為を控え、1月に発足した米トランプ政権との対話を模索していた。3月初めニュ ーヨークで予定されていた米朝非公式協議は、金正男暗殺事件の余波で流れた。毎年行われる米韓合同軍事演習が3月1日に始まったことに対抗して、3月6日のミサイ ル4発発射となった。

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PKO撤収、「なぜ今、発表か」=白垣詔男

 安倍晋三首相は10日夕方、突然、記者の囲み取材に応じて、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)を5月末に撤収させると口早にしゃべり、質問を受け付けずに 立ち去った。撤収理由を「派遣から5年を経て活動に区切りが付いたからだ」。
 この問題を新聞各紙は12〜14日朝刊社説で取り上げた。「『治安悪化』なぜ認めぬ」(朝日)、「不透明さ残る政府説明」(毎日)、「納得できない政府の説明」 (西日本)と3紙は政府の説明を批判。
 それに対し読売「任務の『区切り』の判断は妥当だ」、産経「国際貢献へ不毛議論排せ」は政府発表に批判はもちろん疑問も抱かない。権力監視が大きな役割の「ジャ ーナリズム」を放棄して「政府応援団」と言われ、新聞としてみっともない姿勢だ。

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日本における米軍基地という存在=荒屋敷 宏

 安倍政権を揺るがす学校法人「森友学園」問題に火がついたのは、「フライデー」昨年12月23日号の「安倍昭恵首相夫人が名誉校長になる『愛国主義』小学校の理 念」のスクープが発端だった。その後首相夫人は「名誉校長」を辞任、当の小学校も認可申請を取り下げた。週刊誌の大手柄だ。
 もう一つ、気になる問題は、北朝鮮が3月7日、「在日米軍基地」を標的にしている軍部隊の存在を公然と明らかにしたこと。その後、関連は不明だが、安倍政権が 10日、南スーダンに派兵していた自衛隊の撤退を決定し、米国防総省が13日、米軍横田基地への特殊作戦型CV22オスプレイの配備延期を発表した。いずれも日米 両政府から十分な説明は何一つされていない。

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2017年04月02日

【今週の風考計】4.2─「労基法」を骨抜きにする「働き方改革」

1947年4月7日、労働基準法が公布された。今年は70年を迎える。この記念すべき日の10日前、政府の「働き方改革実現会議」が、「労働法制史上の大改革」と謳う11項目にわたる実行計画を決定した。時間外労働では「月平均80時間以内」、繁忙期は「月100時間未満」、「年720時間」としている。だが休日の労働は除外してしまったため、毎月80時間・年間960時間まで、残業させることができる内容だ。もっとも危惧していた<過労死ライン>を超える残業時間を認めてしまったのだ。しかも自動車運転業務、建設業、医師の3業種は、施行後5年間は残業の上限規制が適用されない。とりわけ過労死の多い運転業務こそ、速やかに厳しい規制をかけるべきだ。長時間残業で注意力・判断力の鈍った運転手の操縦するトラックが、街中を走る危険性を想像してほしい。EUでは、次の始業までの休息時間を連続11時間とする「勤務間インターバル」も、日本では企業の恣意的裁量に委ねるだけ。その一方、「残業代ゼロ」法案については、早期成立を明記する厚かましさだ。肝心の「同一労働同一賃金」は、企業が判断する能力や貢献度に照らし「違いに応じた支給」を是認し、真っ向から退ける。最低賃金は1000円を目指すものの、「年3%程度」アップに傾注し、数年後までにと先送りする。地域格差の是正など視野にない。個人で請け負った仕事を自宅でこなす「非雇用型テレワーク」は、労働法の適用から外れた低賃金就労を加速させると反対の声が大きい。だが政府は促進の旗を振る。ことほどさように全て、改革どころか「労基法」の改悪を狙うものだ。(2017/4/2)
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