2017年08月20日

【今週の風考計】8.20─共謀罪の導入と「エックスキースコア」

19日に行われたJCJ賞贈賞式の記念講演で、小笠原みどり氏は「監視社会とメディア」と題し、衝撃的な報告をされた。その内容を多くの人と共有したい。米空軍横田基地で09年から2年間勤務していたエドワード・スノーデンが暴いた文書の中身である。アメリカ国家安全保障局(NSA)は、60年以上にわたり違法な監視システムを、日本にも秘密裏に導入し、私たちの日常生活に関わる全ての情報や通信を盗聴し収集してきた事実である。

しかも日本政府は、これら米国の施設や運用を財政的に支援するため、膨大な金額を負担してきた。その見返りにNSAは、ネット上の電子情報を幅広く収集・検索できる「エックスキースコア」、別名<スパイのグーグル>といわれるシステムを、防衛省情報本部電波部に提供している。東京の米軍横田基地に諜報活動の通信機器を修理・製造する施設を造る際、7億円の建設費を日本側が負担したという。ここで製造されたアンテナなどの機器は「アフガニスタンでのアルカイダ攻撃を支えた」と記載されている。

また沖縄にある米軍の諜報・通信施設「象のオリ」を、キャンプ・ハンセンに移設する600億円の費用も、日本は全額負担している。しかもスノーデンは「秘密保護法は実はアメリカがデザインした」と証言しているように、共謀罪法を始め、安倍政権の異常ともいえる数々の監視法制の強行は、日米両政府の共通目標なのだ。不都合な真実を消そうとする権力、それに抗う声をつぶすための監視─メディアに携わる私たちは、秘密を暴露し真実を知らせる作業を強めねばならない。(2017/8/20)
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2017年08月17日

08・19 JCJ賞贈賞式・記念講演のお知らせ

2017年のJCJ賞受賞者・作品は以下の通りです。贈賞式の前に、恒例の記念講演を行います。元CIAのエドワード・スノーデン氏に単独インタビューした小笠原みどり(元朝日新聞記者)さんに、「日本や世界に広がる監視社会の恐怖」(仮題)を語っていただきます。

講演および贈賞式
日時:8月19日(土)13:00〜
会場:日本プレスセンター・ホール(東京・内幸町)
アクセス http://www.presscenter.co.jp/access.html

<2017年度JCJ大賞、JCJ賞>
◇JCJ大賞 朝日新聞取材班
 「森友学園」への国有地売却と「加計学園」獣医学部新設をめぐるスクープと一連の報道
◇JCJ賞 吉田敏浩(よしだとしひろ)
 著書『「日米合同委員会」の研究─謎の権力構造の正体に迫る』創元社に結実した研究成果
◇JCJ賞 「沖縄タイムス」高江・辺野古取材班
 高江・辺野古の基地建設強行を問う一連の報道
◇JCJ賞 北日本新聞
 政務活動費不正のスクープと地方議会改革の一連のキャンペーン
◇JCJ賞 チューリップテレビ
 富山市議会における政務活動費の不正を明らかにした調査報道



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2017年08月13日

【今週の風考計】8.13─「ノーザン・ヴァイパー」が狙う危険な企み

◆今日13日は、普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落してから13年。普天間基地の返還が実現されるどころか、ちょうど8カ月前の13日には、同基地所属のオスプレイが名護市の海岸に墜落。◆その後もオスプレイは低空・夜間飛行訓練、物資つり下げ訓練を繰り返し、ますます傍若無人に沖縄の空を飛び回る。県民の怒りは限界を超え、基地撤去の決意は高まっている。

◆目を北に向ければ、北海道では「ノーザン・ヴァイパー」が展開中だ。10日から始まったアメリカ海兵隊2000人と陸上自衛隊1300人が参加する日米共同の実動訓練である。ここにもオスプレイが参加する。◆5日、オーストラリア沖で沖縄・普天間基地所属のオスプレイが墜落事故を起こしたにもかかわらず、わずか6日後にはオスプレイ4機が普天間基地を出発、青森・米軍三沢基地に着陸した。「ノーザン・ヴァイパー」に参加するのは明白だ。

◆かつ怖いのは、陸上自衛隊の海兵隊化を図り、離島奪還のみならず世界のあらゆるところへ殴り込み・侵略に向けて、オスプレイと一緒に即応機動する陸上自衛隊づくりを、大目的にしていることだ。◆72回目の終戦記念日が来る。だが日本の上空は昼夜・所かまわず、いまだにオスプレイを始め米軍機が我が物顔に飛び交っている。日本の主権を主張するどころか、米軍の横暴を追認して恥じない安倍首相、どこの国の総理か。(2017/8/13)
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2017年08月12日

《焦点》 新聞社の「押し紙」問題を追及して20年に及ぶJCJ会員の黒薮哲哉さん=橋詰雅博

 JCJ会員でフリージャーナリストの黒薮哲哉さん(59)は、販売店が注文した部数を大きく超えて新聞社が搬入する、読まれることのない新聞紙、いわゆる「押し紙」問題を追及して20年に及ぶ。この押し紙を含む新聞経営の諸問題を扱った7冊目の著書「新聞の凋落と『押し紙』」(花伝社)を5月末に出版した。新聞社を取材対象とした週刊業界紙の記者時代に押し紙の実態を知ったのが取材のきっかけ。近著では日本新聞協会が押し紙を隠すため姑息(こそく)な手段を使ったことを問題にしている。

 「日本新聞協会の販売委員会とも言える『地区新聞公正取引協議会』は、配達中に新聞が雨などで破損したときに使われる予備紙の割合を搬入部数の2%と定めていた。公正取引委員会も販売店の注文部数は、予備紙を加えたものと定義しています。それをオーバーした部数は押し紙になります。公取委は2009年に新聞特殊指定改訂に際し、予備紙を含む注文部数以外で新聞を買い取らせることはできないとしました。目的は押し紙の取り締まりでした。ところが改訂版施行前に、新聞協会は予備紙2%ルールを廃止した。ルールがあると、2%を超える予備紙は押し紙になるが、これがなければ、残紙はすべて予備紙であり、押し紙ではないという詭弁(きべん)が成り立つ。改訂版施行後、残紙を予備紙と呼んでいる新聞社もある。販売店では予備紙が搬入部数の20%から30%にもなっている」

 3月末に国会で35年ぶりに押し紙問題が取り上げられたが、「安倍晋三内閣はメディアをコントロールする材料に使うため問題を放置している」と批判する。

橋詰雅博(JCJ事務局長兼機関紙編集長)
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《築地市場問題2》 小池都知事、説明責任果たさず=橋詰雅博



 8月11日に掲載したのに続き東京中央卸売市場組合長の中澤誠さんのインタビュー記事パート2を載せました。

 ☆    ☆

――そもそも併存方針は現実的か。

 現場から出てきた話ではなく、うまくいかないだろう。80年代、手狭になった築地の機能を大井市場に分散させる案が出たが、現在の取扱数量はピークの半分。分散させる必要性はなく、分散となるとコストが嵩みメリットがない。経済の合理性を追求する資本主義のワクから外れる行為。両市場を統合するのならわかるが、分散する話が出てくるのはおかしい。年間100億円の赤字が出て、ムダに広く物流が非効率でコストが大幅に増える豊洲よりも、営業しながらリフォームできる築地の方が合理的です。豊洲移転によって、人件費や物流コストがどれだけ増えるのかがいまだに不明だし、買いにきてくれる人が増えるのかもわかない。むしろ食の安心・安全が揺らぐ豊洲市場を嫌いお客が減ってしまう可能性が高い。こうした不安要因を抱える一方で、大きな投資を強いられるから鮮魚を扱う仲卸を中心とした事業者の多くは移転に反対です。

――中澤さんらはこの先、どんな活動をしていくのか。

 小池知事は基本方針を説明した先月の記者会見では、記者との質疑をわずか5分で打ち切った。説明責任を果たしていない。石原慎太郎元知事のように頭ごなしで基本方針を強引に進めるのか、それともさまざまな人の意見を聞いて合意形成し大きく基本方針を転換させるのかを見極めたい。知事の姿勢を見てから次の行動を考えます。

聞き手 橋詰雅博

(JCJ事務局長兼機関紙編集長)

※JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年7月25日号
posted by JCJ at 13:55 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月11日

《築地市場問題1》 「豊洲移転、最速で19年5月」=橋詰雅博

 東京都議会選挙で支持勢力の圧勝を受けて小池百合子都知事は、豊洲に市場を移し、築地を5年後に再開発する基本方針が「信任を得た」と選挙後の記者会見で述べた。両市場の併存は本当に実現できるのか。築地市場の現在地再整備を訴え続ける東京中央市場労働組合委員長の中澤誠さん(52)に、本紙4月25日号でのインタビューに続き再び築地市場移転問題で聞いた。

   ☆      ☆

――小池都知事の併存方針をどう思うか。

 まず都議会選挙で自民党が公約に掲げた豊洲市場への早期移転は、自民党を惨敗に追い込んだ都民が拒否した。これはよかった。併存方針は移転推進派と反対派の両方にいい顔をしたどっちつかずの案。マスコミ関係者によると、知事は築地再整備案あるいは豊洲に一時移転後に再び戻る案に傾いていたが、知事が代表を務めた地域政党・都民ファーストの会と選挙協力した公明党の了承を得られなかったそうだ。内容が整理できないままああいう基本方針を告示直前に発表せざるを得なかったという話を聞いた。

豊洲無害化困難

――来年5月をメドに豊洲に移転させると知事は言っているが、本当にできるのか。

 専門家会議は豊洲の土壌汚染を無害化するための追加対策として2つ挙げた。一つ目は水位が一向に下がらない地下水を下げるため揚水するポンプの増設です。当初は「水位を海抜1・8bで管理する」が目標でしたが、場所によっては海抜4bに達していて、目標を1度も実現していない。原因がわからないままポンプだけ増設しても水位が下がる保障はない。地層に穴が空いている可能性がある。原因究明が先ですよ。

 水銀ガス濃度の上昇を抑えるため地下空間の床面にコンクリートを敷くが2つ目の対策だ。一級建築士ら専門家の話を総合すると、現在の建物自体は耐震基準内だが、地層に30数bまで打ち込んだ杭にコンクリートをくっつけると重くなり耐震基準を満たすことができない。つまり違法建築になる。杭にくっつけずにコンクリートを置くだけの形になるが、どういう風に施工するのかが問題。ゼネコンなどが知恵を絞るのだろうが、大丈夫なのかと心配になる。こうした問題を解決しなければ豊洲の土壌汚染の無害化は達成できない。来年5月移転に向けたハードルはとても高い。

基本方針撤回を

――では移転はどうなるのか。

 選挙後に小池知事と業界6団体が話し合ったとき、移転推進派の築地市場協会の伊藤裕康会長も、同じく推進派の築地東京青果物商業協同組合の泉未紀夫理事長も、来年5月の移転はムリと言っている。土壌汚染対策などがある程度メドが立たないと、トラックを集めるなど本格的な準備に入れません。私は最速でも移転は再来年の5月、すなわち2019年5月と見ています。1年後に東京オリンピック・パラリンピックが控えている。五輪のため築地の跡地に環状2号を通す、選手らを運ぶバスなどの駐車場として跡地を活用する計画だが、実現は厳しい。このままでは五輪への影響は必至です。五輪と築地市場移転は切り離して考えるべきだ。知事選は3年後だし、ここで選挙ファーストの提案だったと認めて基本方針を撤回し、計画を練り直した方がいい。

聞き手 橋詰雅博(JCJ事務局長兼機関紙編集長)

※JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年7月25日号
posted by JCJ at 16:48 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《焦点》 国民投票の費用はどのくらい


 不信感高まる「森友」「加計」両疑惑、自民党が惨敗した都議選、急落する内閣支持率、盛り上がる政権退陣を求めるデモと、安倍首相への風当たりが激しくなってきた。今まで国民の声を無視してきたしっぺ返しをくらっているが、ただし憲法九条を中心とした改憲の意欲は衰えていない。自民党は11月上旬までに改憲原案をまとめ、臨時国会に提出する予定。18年6月に改憲案を発議し、国民に改憲の是非を問う国民投票を実施しようとしている。
 スケジュール通りに行くかどうかはともかく、現実味を帯びてきた国民投票はお金がどのくらいかかるのだろうか。

 10年前の2007年、衆院法制局による試算では、経費は約850億円。内訳は、投票所・開票所の設営・賃貸料が493億円、不在者投票や投票所入場券の郵送費などが224億円、公報発行費66億円、各政党に割り当てられる無料広告肩代わり費18億3000万円などの順だ。

 ところで国民投票の場合、発議後、投票前14日間の有料テレビCM禁止を除く期間は、改憲派と反対派は自由に各メディアに広告を出せる。広告費の上限は国民投票法で定められていない。宣伝効果が大きいテレビCMをメインとしたこの費用は―。「国民投票のルール改善を考え求める会」のメンバーで著述業(元博報堂社員)の本間龍さんがこう言う。

「衆参の両選挙で各政党などがメディアに投じる広告費は約500億円。国民投票では発議後、60日から180日以内に投票が実施される。運動期間によるが、少なくとも500億円の4〜5倍、場合によっては10倍以上の広告費が使われる。資金が豊富な改憲派は絶対有利。だから国民投票のテレビCMを法規制したいが、民放の業界団体は反対。その理由はこの特需≠当て込んでいるからです」

 税金で賄われる経費と、この巨額な広告宣伝費を合わせると膨大な金が国民投票で使われる。国民投票の実施は必要なのか。

橋詰雅博
posted by JCJ at 12:10 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《JCJ要請》10日、野田総務相に緊急申し入れ書提出

野田聖子総務相への緊急申し入れ書

政府による放送への介入、干渉を即刻止め、放送の自由と独立を保障する政策を進めるよう求めます

2017年8月10日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)


 第3次安倍改造内閣で総務相に就任された貴職が放送行政を進めるにあたり、政府の介入、干渉により、放送の自由が脅かされている問題について認識を新たにし、放送の自由と独立を保障する政策を進めるよう申し入れます。

 2012年12月に第2次安倍政権が発足して以降、政権及び政権与党による放送への干渉、介入は目に余るものがあり、放送の自由は危機に瀕しています。その最たるものは、貴職前任者の高市早苗前総務相が2016年2月、放送局が政治的な公平性を欠く番組を繰り返し放送した場合、電波停止を命じる可能性に言及した発言です。放送法3条は「放送番組は、法律に定める権限に基づくばあいでなければ、何人からも干渉されない」と定めており、高市氏の発言はこの規定に明確に反します。
 
 政権与党である自民党も、放送局への介入、干渉などを強めています。2014年の衆議院総選挙直前には、自民党が在京テレビキー局に対し選挙報道について「公平中立、公正の確保」を求める文書を直接手交し、圧力をかけました。2015年4月には、自民党-がNHKとテレビ朝日の首脳を党本部に呼びつけ、「クローズアップ現代」(NHK)と「報道ステーション」(テレビ朝日)について、事情聴取を行いました。政権党が個別番組で局首脳を呼び出すのは前代未聞のことで、その萎縮効果ははかりしれません。
 
 こうした異常な事態の下で放送行政の最高責任者に就任した貴職に対し、まず何よりも放送における表現の自由を守る決意を鮮明にすることを求めます。言論と表現の自由を保障することが、民主主義社会を発展させる基本です。貴職は、放送法が1条3項で「放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」と定めていることを心に刻みつけ、放送行政を進めていただきたい。
 
 とりわけ、行政による、あるいは政権党による放送の自由への介入、干渉は、民主主義を掘り崩し劣化させる最悪の行為です。貴職は、放送法の精神を逸脱した高市前総務相の発言を取り消すべきです。言論・表現の自由を定めた憲法とは真逆の、誤った行政判断が継続されることは許されません。
 
 放送の在り方を律する放送法、電波法は、放送局の自律と独立を前提にしています。貴職におかれては、放送の自由と独立を確保する政策に専念し、放送番組内容の問題については、BPO(放送倫理番組向上機構)に委ね、政府、政権党の介入、干渉は厳に慎むよう求めます。
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2017年08月08日

≪緑陰図書─私のおすすめ≫ 岩真 千『「旅する蝶」のように ある原発離散家族の物語』原発の恐ろしさと沖縄の悲しみ─ふたつを背負って苦闘する家族の重い記録=鈴木耕(編集者)

 ウェブサイト「マガジン9」に連載のコラムを、書籍化した一冊。こうしてまとまり精読するにつれ、そのインパクトの強さに圧倒される。
 サブタイトルに「ある原発離散家族の物語」とあるように、福島原発事故の放射能汚染を避けようと、勤務地の宇都宮を離れ、沖縄に逃れた家族の物語だ。とにかく子どもを放射能から守りたいという一念。だが、著者は大学教員の仕事を継続するため妻子を残して勤務地へ戻り、一家は離散家族となる。
 そこからが切ない。沖縄には著者の母と義理の父(米人)が暮らしている。ともあれ、一家はそこへ身を寄せる。しかし、妻はなかなか沖縄の地になじめない。そこから生じる夫婦間の軋轢。読むのが辛くなる部分だ。

 私は、原発にこだわり本も書いた。沖縄を何度も訪ね沖縄本も上梓した。だから、原発の恐ろしさも沖縄の悲しみも、自分なりに受け止めているつもりだ。だがそれは、あくまで自分の選択。
 ところが著者は、原発事故により、そのふたつの切なさを、自己の責任とは関係なく背負わされることになってしまった。過酷な運命というしかない。

 宇都宮で、いつしか壊れていった人間関係。それを補えるほどの他人との関わりを、残念ながら沖縄では持つことができない。住まいというより、他者との関わりを失っていくことの疎外感。
 そこから必然的に生まれる夫婦関係の崩壊。間で苦しむ子どもへの愛惜。沖縄という米軍が居座る島の現実に怯む。ひとりの人間が背負うには重すぎる現実を、著者は必死に切り抜けようと、ひたすら記録する。
 本書は記録文学の輝かしい到達点だと思う。

(リベルタ出版1700円)
posted by JCJ at 10:03 | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月06日

【今週の風考計】8.6─日本列島に響くカネの音と踊りの熱気

夏の祭りが熱気を拡散しながら、日本列島を南下している。まず東北3大祭りが、2日の青森ねぶた祭り、3日の秋田竿灯まつり、7日の仙台七夕祭と続き、夏の夜空をいろどった。そして地上では山形花笠まつりだ。「ヤッショ マカショ」の掛け声に合わせて踊りのパレードが繰り広げられている。11日からは江戸三大祭りのひとつ、水かけ「深川八幡祭り」。120基の町神輿が練り歩く。中部地方では、13日から郡上おどり。浴衣姿の数万人が、次々に演奏される囃子歌に合わせ、身振り手振りを変えながら明け方まで踊り抜く。オッと忘れちゃいけない。よさこい祭りが9日から始まる。鮮やかなメイクと衣装の個性豊かな2万人の踊り子が鳴子を鳴らし、高知の夏を盛りあげる。そして12日からは「踊る阿呆に見る阿呆…」の阿波踊り、ヤットサーヤットサーという掛け声とともに、徳島一円が踊り一色に染まる。賑やかさとは無縁な、古式ゆかしい小さな島の盆踊りもいい。岡山県笠岡港の沖合16kmの瀬戸内海に浮かぶ白石島の「白石踊り」、13日から3日間、ひとつの音頭に合わせて、女性が紫の頭巾をかぶり金と銀の扇子を翻しながら踊るなど、男踊も加え十数種類ものバリエーションを舞う。さて最後は14日から始まる、長崎県平戸市に伝わる念仏踊り「平戸のジャンガラ」。造花で飾った華やかな菅笠をかぶり、浴衣姿の腰に小さな太鼓を付けて踊る。豊作と雨乞いを祈願する伝統行事であり、かつ先祖供養の盆踊りも兼ねる。おはやしのカネの音・ジヤンに加え、太鼓の音・グワラに由来するといわれる。とにかく祭り好きには熱い1週間だ。(2017/8/6)
posted by JCJ at 13:25 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月04日

「愛国」おしつける安倍政権の遠謀=清水正文

 小学校の学習指導要領が改訂され、2020年度から、全国一斉に実施される。さらに、来年度からは、初めて「道徳」が小学校で教科に加えられ、授業が必修になる。
 改訂された学習指導要領は、一時期、言われた「ゆとり教育」とは、対極にある「つめこみ教育」を目指す内容となっている。現行の指導要領は、そのまま内容を維持し、さらに小学3・4年生では外国語活動を、5・6年生では教科としての外国語授業を増やしている。

 4年生の授業は、なんと年間1015時間となり、学校6日制であった1989年と同じ時数となっている。今の週5日制で、これを実施すれば、毎日6時間の授業となり、子どもにかかる負担増は、はかりしれない。
 英語教育を早期に行うという方針も、外国語教育の専門家からは、ことごとく反対の声が挙がっている。しかも、小学校で英語教育の免許を持っている教師は、わずか5%でしかない。この実態を踏まえると、「無免許運転」にならざるを得ないとも言われている。

 教育と学校に対する管理強化が進み、幼稚園の教育要領や保育指針にまで、「国歌に親しむ」ことがうたわれ、中学の体育では、相手の喉元や心臓をねらって突く「銃剣道」を取り入れるカリキュラムまで組まれている。あのアジア太平洋戦争での軍事教練を、彷彿とさせる。
 「道徳」の教科化をめぐっては、メディアで報道されてもいるが、呆れた検定が批判を浴びている。その検定の一つ、「パン屋さんを和菓子屋さんに書き換えよ」など、考えられない事態が進んでいる。

    また、安倍内閣は「憲法や教育基本法などに反しないような形で教育勅語を教材として用いることまでは否定されることはない」と、教育勅語容認の立場を明らかにする閣議決定を行った。
 すでに「道徳」の教科書が検定され、8社66点が合格している。このうち教育出版が発行する「道徳」教科書について、触れておかねばならない。

 たとえば小学2年生で学ぶ「国旗・国歌」に関しての記述が、他社と比べて異常に大きく、偏った取り上げ方になっている。5年生の「下町ボブスレー」という教材には、わざわざ安倍首相の写真まで載せている。
 なぜこのような記述・内容の教科書になったのか。これまで育鵬社の中学社会科の教科書を編集してきた「日本教育再生機構(八木秀次理事長)」の道徳教育の中心メンバーが、編集執筆者に名を連ね、かつその流れをくむ貝塚茂樹氏(武蔵野大学教授)と柳沼良太氏(岐阜大学大学院准教授)が、この教育出版の「道徳」教科書を監修しているからである。
 育鵬社版のダミーともいうべき教科書が採択され、子どもたちの道徳教育が行われないよう、反対の世論を広げていく必要がある。

(JCJ代表委員)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年7月25日号

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