2017年10月29日

都有地を五輪選手村用に投げ売り 「都政版森友疑惑」裁判11月17日第1回口頭弁論=橋詰雅博

 東京五輪・パラリンピック選手村建設用地を巡り注目すべき訴訟の第1回口頭弁論が11月17日、東京地裁で開かれる。この裁判は、中央区晴海5丁目の都有地(13・4f)を市場価格の10分の1で、選手村を建てるデベロッパー11社に不当に安く売却したとして、都を相手取り、都民33人が小池百合子知事や舛添要一前都知事、建設業者らに差額分約1209億円を請求するように求めたものだ。国が国有地を約8億円値引きして森友学園に売却した森友疑惑の「都政版」とも言える。都が棄却した住民監査請求に続き裁判でも原告側代理人を務める淵脇みどり弁護士(59)に聞いた。

都が「一人3役」

――監査請求の結論で監視委員の「意見」が付けられていたが、異例ではないか。
 住民監査請求の結論は、行政担当者の反論を追認するケースがほとんどだが、今回、意見が付されたのは異例だと思う。その意見は〈再開発法に基づき、都が地権者、施行者、認可権者の3つの役割を併せ持つことにより土地処分を巡る手続きが,中立的かつ公正な監視や牽制の下で行われないとの懸念を生む状況が生じた〉と指摘。さらに〈今後、重要な決定に当たり、専門家の意見を十分に聞くなどの内部牽制体制を強化し、細やかな対外説明を行うなどにより、これまで以上の透明性の確保に努められたい〉と強調している。
 これは請求棄却と明らかに矛盾しているが、この問題の核心を衝いている。裏を返せば、ひどい形で本件が進んでいるのです。

 ――都のような「1人3役」による市街地再開発事業はほかの自治体であるのか。
 監査委員が聞いた都都市整備局担当者の説明が監査結果に述べられている。自治体が個人の地権者として個人施行の再開発事業を行った事例は5件あるが、都のような「1人3役」の事例はなく、極めて異常であることが鮮明になった。本来の市街地再開発事業の目的や仕組みなどから大きく逸脱している。実態は都による更地の直接売買であり、しかも適正価格の10分の1という廉価でデベロッパー11社に売却した。

背景に官民癒着

――都が東京ドーム3個分にあたる土地を投げ売りした理由は。
 再開発事業の手法を悪用したこんな頭のいいやり方を都だけで考えたわけではないと思う。デベロッパー11社のうち7社に都幹部12人が天下りしている。今回の事業だけでなく、都と民間業者の癒着が恒常的にあるのではないか。デベロッパーにとって再開発事業は建築物の容積率アップの実現や公に地上げができて、自治体から補助金も受け取れ、建てたマンションなどを売却(東京五輪の場合、終了後に選手村にマンションなどが建てられ、デベロッパーが販売)できる。おいしい話です。再開発事業では行政と民間業者は密接な関係になっている。

――そもそも都民が被るデメリットは何か。
 仮に1209億円を回収できれば、都の予算に組み入れられ、福祉や教育などの分野にお金が回され充実する可能性がある。しかし、本来、回収できるお金を回収しないので、財政面で損害が発生し、結局、納税者への公共サービスなどの低下につながる。本件は、国有地を8億円値引きして売った「森友疑惑」と同じ構図です。

聞き手 橋詰雅博
    ☆        ☆
 「都政版森友疑惑」裁判の第1回口頭弁論は11月17日(金)、13時30分から東京地裁419号法廷で開かれる。傍聴に参集を。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年10月25日号
posted by JCJ at 21:59 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【今週の風考計】10.29─ジャーナリスト殺害事件と「産経抄」

去る16日、マルタ島の女性記者ダフネ・カルアナガリチアさんが、移動中の車ごと爆殺された。彼女はタックスヘイブンに関わる「パナマ文書」の調査報道に参加していた。また同国ムスカット首相の妻が、パナマに会社を設け資産を隠していた経緯も追求していた。

この事件を、なんと19日の産経新聞1面コラム「産経抄」が、「日本の新聞記者でよかった、と思わずにはいられない」と書いた。江川紹子さんは、ツイッターで「人でなし、とはこんなものを書く人のことを言うのだろう。人の無残な死を、同業の者として、まずは悼むということが、せめてできないのだろうか」と。同感。

24日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが会見し、同業ジャーナリストが自分に加えた性暴力被害の実態を明かし、日本の司法・社会システムのありかたについて課題を提起した。

ジャーナリストへの脅しや殺害の脅迫、そして暴力は世界中に広がっている。この10年だけでも800人近くが死亡している。7割近くは「銃撃戦や危険な取材活動によって命を落としたのではなく、むしろ政府の腐敗、犯罪、麻薬取引、反体制派の活動を取材した報道内容に対する<報復>として殺害されている」という。かつ犯人は見つからず、見つかっても処罰されず、放置されている。
こうした事態を解決するため、国連は11月2日を「ジャーナリストへの犯罪に対し、不処罰をなくす国際デー」と宣言。今年は4年目となる。世界各地のジャーナリストに安全な環境を整備し、表現の自由を守り人権を前進させ、民主主義を強めるアクションプランを展開している。「産経抄」の筆者も煎じて飲むとよい。(2017/10/29)
posted by JCJ at 11:32 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする