那覇からは車で高速道路を使っても、2時間以上かかる沖縄本島北部の静かな村。その中心部から、さらに離れた高江という、わずか150人ほどが住む集落を取り囲むように、6カ所の米軍ヘリパッドが造られた。
静かな住民の暮らしを根底から破壊するもの以外の何物でもない。しかも、あの危険な欠陥機オスプレイの訓練に使用されることすら、住民には事前に説明されなかった。当然、長い反対運動が始まる。
沖縄県民でさえ聞いたこともないような僻地での孤独な闘いに、沖縄の記者たちは通いつめる。そしてそこで見たもの、体験したことこそ、初めて目にするほどの異様な「国家の暴力」だった。
日本全国から投入された機動隊の荒々しさ。記者を拘束し、住民に「土人!」と罵声を浴びせ、抵抗者は逮捕。微罪で5カ月も長期勾留された山城博治さんの事例など、本書は「国家の暴力」そのものを抉りだす。
私は阿部記者とは少し面識がある。冷静沈着で温和なジャーナリストだ。その著者がこれほど檄した文章を紙面に叩きつけざるを得なかったところに、沖縄の怒りと悲しみが見える。圧政とデマと偏見に抗して闘う記者魂に胸が熱くなる。
(朝日新聞出版1400円)
