2017年12月31日

【今週の風考計】12.31─ウオッチ・ドッグとして歩んでいきたい

ゆく年くる年、酉が飛び立ち、戌が走ってくる─使い納めとなる年賀52円はがきに、「9条が正念場、懐憲ストップ! 力を合わせよう」と認め、投函する。

このほど組まれた防衛予算を見れば、背筋が寒くなる。なんと5兆2千億、6年連続の増額、過去最高となる。弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入だけではない。射程千キロに及ぶ巡航ミサイルを、ステルス戦闘機に搭載するシステムの予算化まで図る。
加えて護衛艦<いずも>を「攻撃型空母」へ改修する計画だ。空母化すれば米軍のステルス戦闘機F35Bが垂直のまま離着陸できる。まさに「専守防衛」どころか「敵基地攻撃能力」を持つ兵器の導入と活用のオンパレードじゃないか。憲法9条2項「戦力の不保持」を踏みにじる“戦争予算”と言っても過言ではない。

政官歩調を合わせ、南スーダンPKO部隊に派遣された自衛隊の「日報隠し」に始まり、<モリ・カケ>疑惑にはフタをし、「ご意向や忖度」にキュウキュウとする。国会では「共謀罪」法を強行可決し、準備・計画・未遂の行為まで処罰する。政治権力にとって、目障りな人々や組織を監視・処罰する法律に一変するのは必定だ。
あらためてJCJは、「忠犬ポチでなく、ウオッチ・ドッグ」に徹したい。しかも市井に暮らす人びとの心に寄り添い、危険を嗅ぎとったら鋭く吠える役目を果たしたい。

お年玉は、初読みにおすすめの一冊、ボストン・テラン『その犬の歩むところ』(文春文庫)をあげよう。犬も人間も等しく翻弄され過酷な目に遭うが、互いに助け合いながら逆境を克服していく感動の物語だ。(2017/12/31)
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2017年12月30日

≪おすすめ本≫ 新垣毅『沖縄のアイデンティティー』 沖縄メディアで奮闘する記者の情熱と使命感=米倉外昭(「琉球新報」文化部記者)

 「新聞記者をしながら本を書く」ということがどれほど大変なことか、私には、正直なところ実感できていない。今年、2人の畏友がそれを実行した。
 沖縄タイムスの阿部岳『ルポ沖縄 国家の暴力』(朝日新聞出版)が8月に発刊された。そして11月、琉球新報の新垣毅『沖縄のアイデンティティー』(高文研)である。

 阿部は北部支社報道部長として基地問題の最前線を担当。副題は「現場記者が見た『高江165日』の真実」である。全国から機動隊を動員してヘリパッド(オスプレイ発着場)の建設工事が強行された「戒厳令下」の現場を、軍事基地に反対する住民の立場に身を置いてリアルに描写。「政府の暴走を本土の無関心が可能にしている」と指摘する。
 名護市安部海岸のオスプレイ墜落など、大事件が相次ぎ、忙殺されている阿部が本を出したと知った時は驚いた。あとがきに、半年間、休日を全て執筆にあてたとある。日本全国に伝えなければという強い情熱と使命感ゆえであろう。
 ネトウヨの攻撃にもさらされている沖縄メディアには、多くの「本土」出身記者がいる。東京生まれの阿部は「沖縄に対する本土という多数派、加害者の側にいる者として」「責任の果たし方は、これからもずっと問われていくだろう」と記し、本土出身という「十字架」を背負って現場に身を置くことの決意を示した。

 一方、新垣は「沖縄人」としてアイデンティティーを正面から問うた。東京支社報道部長の新垣は、沖縄と「本土」がぶつかり合う第一線である東京で多忙な日々を送る。そんな中で、20年前の修士論文を基に、その後の取材や変化を踏まえて加筆・修正したという。
 記号論、言説(ディスコース)理論、ポストコロニアリズムなどの用語は、ややとっつきにくいが、「うちなーんちゅとは何者か」と自問自答しながら、格闘してきた成果を結実させた。これも情熱あふれる一冊である。
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2017年12月28日

≪リレー時評≫ 最高裁の受信料制度「合憲」判決、公共性が問われるNHK=隅井孝雄

 NHKの現行の受信料制度について、最高裁判所は12月6日「合憲」と認めた。
 放送法は「NHKを受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」としている。一方受信料の支払いは、NHKの内部規約だ。そこでこれまで「受信者はNHKの番組や経営姿勢に同意できない場合には、支払拒否もありうる」という解釈が有力だった。判決は「双方の意思表示の一致は必要だ」としながらも、「受信料は合理性、必要性がある」とした。NHKとっては追い風だ。

 1990年代の初頭、本多勝一『受信料拒否の論理』に触発されて、受信料拒否が注目された。2004年紅白歌合戦の制作費着服の発覚をきっかけに、不払いが広がり、2005年1月海老沢勝次会長が引責辞任した。収納率は低下、2006年度末までには63%まで落ち込んだ。NHKが不払いに対する裁判を始めたのは2006年11月からだった。
 その後、籾井勝人元NHK会長が、「政府が右というものを左とは言えない」と発言(2014年1月)、政府寄りの姿勢を見せたことから、市民の新しい運動形態として「籾井退任まで支払いを保留する」という動きで、一期での退任という結果となった。
 受信料訴訟のほとんどはNHKによる。だが奈良地裁では視聴者が「NHKは放送の公正を守っていない、放送法順守義務違反だ」として46人が集団訴訟している。

 現在、NHKはインターネットへの放送再送信を計画しており、受信料をデジタル機器所有者にも付加するかどうかが論議を呼んでいる。デジタル時代、変化する受信料環境に、最高裁は全く触れなかった。
 私が注目するのは最高裁判決が受信料の役割を述べている部分だ。
(受信料は)「特定の個人、団体、国家機関から支配や影響が及ばないよう、広く負担を求めた」。「憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足する」。

 現実はどうか。安倍第二次政権下で、政府主導のメディア操作、NHK御用化が進んでいる。「公正ではない放送を繰り返せば、免許停止もありうる」発言(高市元総務相、2016年2月)、国谷裕子キャスター退任(2016年3月)、「安倍首相の意向を代弁するレポートばかりだ」と批判される記者、秘密保護法、集団的自衛権、安保法制についてNHK報道が民放に比べて著しく不十分、などなどを視聴者は体験している。
 果たしてNHKは「国家機関からの影響が及ばない」、「知る権利を充足する」公共放送なのか、という疑問が市民、視聴者の間で広がっている。
posted by JCJ at 09:28 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月26日

戦争の危機迫る 自衛隊員の心境は=橋詰雅博

 安倍晋三政権は安保法成立など戦争する国に向かい着々と手を打っている。戦争の最前線に立つことになる自衛官は今、何を思っているのか。東京・練馬区の陸上自衛隊駐屯地を中心に部隊の行動の監視と自衛官への接触を行う練馬平和委員会の坂本茂事務局長(64)に今の自衛官の心境を聞いた。

――安倍政権が戦争する国づくりを進めていることに自衛官はどう感じているのか。
 昨年10月16日に中央観閲式予行訓練が陸上自衛隊朝霞駐屯地訓練場で行われた際、一般向け入場券で駐屯地内に入った。警務隊などが尾行していましたが、「安保法をどう思うか」「8月、家族向けに配布された安保法解説書の感想は」などの質問を自衛官にぶつけた。「安保法は違憲」「入隊する際に署名捺印する『服務の宣誓書』には日本国憲法及び法令を遵守と書かれており、これと矛盾する」「解説書は美辞麗句だらけでインチキ」などと答えた。

20人が答える
 また、PKO(国連平和維持活動)の新任務である駆け付け警護の訓練を経験した自衛官(1曹)は「海外に派遣されたら死ぬかもしれない」ともらした。3年に1回実施される中央観閲式は自衛隊のひのき舞台。予行演習とはいえ、本来は一般の人とのおしゃべりは厳禁です。にもかかわらず直撃インタビューに20人もの自衛官が答えたのは、命が危ういという不安の現れだと思います。

――九条改憲について何か言っていますか。
 九条改憲には口を閉ざしているが、自衛隊のイラク派遣(2003年12月から09年2月)でこんなエピソードがあります。イラクに6カ月間派遣されて帰国した幹部自衛官は、私に「九条があったから生きて帰れた」と話してくれました。憲法改正についてどうなのかと尋ねると「政治問題には答えられない」と言いました。

ドタキャン増加
――志願者の大幅減により自衛官募集も相当減っているそうですが……。
 13年から一般曹候補生(正社員に当たる)募集は毎年2割ペースで激減している。1年を通して募集している非正規雇用に当たる自衛官候補生(陸自2年、海自・空自3年の任期制)も同じペース。
 最近目立つのが試験当日のドタキャンです。母親や祖父などから『紛争地への海外派遣もあり得る。命は一つ。受験は止めなさい』と忠告されて止めるという。ある自衛官募集担当者は「上官から縁故募集も命令されている。わが子は自衛隊以外の仕事に踏み出したので、内心ホッとしている」と話した。若者の自衛隊離れは加速しています。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
posted by JCJ at 17:06 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《おすすめ本》 『亡国の武器輸出』 池内了+青井美帆+杉原浩司編=橋詰雅博

 2014年4月、安倍晋三内閣は「防衛装備移転三原則」を閣議決定。武器輸出三原則が撤廃されて武器の輸出が全面解禁になった。「平和国家」から武器輸出を国家の「成長戦略」として政策が転換されたことで、大物防衛利権フィクサーが再び蠢動している。

 秋山直紀氏だ。秋山氏は防衛利権に絡んだ事件で約1億円の脱税容疑によって11年10月に懲役3年執行猶予5年の有罪判決が確定した人物。彼の復活を印象付けたのは16年5月都内のホテルでの現職の国会議員と防衛官僚による講演会の仕掛け人として名前が挙がったのだ。自ら理事を務める国際平和戦略研究所の代表理事、久間章生元防衛相を呼びかけ人として講演会開催を企画した。ただ、講演会は、直前に中止になった。本書執筆陣の一人であるジャーナリストの田中稔氏は、その理由を有罪になった人物が関係する会合で国会議員らが講演するのはまずいと防衛省などが判断したと指摘する。
 本書は武器輸出の問題点を15人が多面的に摘出した好著。
(合同出版1650円)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
 
posted by JCJ at 16:50 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《編集長EYE》 タックスヘイブン3つの問題点=橋詰雅博

 巨大企業や富裕層、特権層が納税を逃れ秘密裏に資産を増やすために利用するタックスヘイブン(租税回避地)。その正体が明るみに出た昨年の「パナマ文書」に続く第2弾「パラダイス文書」が11月に報道されて世界に再び衝撃を与えた。

 これを受けてEU(欧州連合)の議会組織で開会中だった欧州議会では、タックスヘイブンへの批判が集中した。ベルギーのランバーツ議員は「租税回避は民主主義を掘り崩す行為だ」と強調。モスコヴィシ税制担当委員も「もしこれが合法だと言うのなら、法の方を変えなければならない」とまで言及した。

 12月3日の民間税制調査会(座長・三木義一青山学院大学学長)でパラダイス文書などについて講演した北海道大学法学研究科博士課程の津田久美子さんは、こう述べた。

 「タックスヘイブンの主な問題点は三つあります。不平等の温床、マネ―ロンダリングなど犯罪の助長、過剰なマネー取引による金融危機発生に加担です。独自の対抗策としてEUではマネロンを防ぐ案の検討や多国籍企業への課税強化、タックスヘイブンブラックリストの作成、パナマ文書に対する調査機関の設置などを挙げています」

 特に過剰に生み出されるグローバル・マネーを制御する試みとしてEU金融取引税(FTT)の導入に向けてフランスやドイツを中心とした10国が取り組んでいる点に注目が集まる。

 「当初は11カ国でしたが、経済の効率性が阻害されるとFTTに反対する金融業界などのロビー活動によりエストニアが離脱し、活動が停滞しました。とりわけ株式や債券などで運用する年金基金がFTT導入で損害を受ける可能性が大きな問題になりました。この数年は総論賛成、各論反対で税制の詳細を詰めるプロセスが頓挫していました。しかし、最近はEUの新財源として再び脚光を集めつつあります」(津田さん)

 日米は反対だが、EUのFTT導入への挑戦は注視すべきだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
posted by JCJ at 16:41 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月25日

《支部リポート》前川講演―第3会場まで用意=徃住嘉文(北海道支部)

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「理想のない現実主義はない」「心の中はアナーキスト。振舞いは公務員だが、いかなる権威にも縛られない」。次々と繰り出される言葉に皆、うなずいている。 
しかも、表情が柔らかい。笑顔だ。10月28日、札幌市エルプラザでJCJ北海道支部と「さっぽろ自由学校『遊』」が開いた元文科省事務次官前川喜平さんの講演会。事前の問い合わせが殺到したため、定員350人の会場のほかに、第3会場まで用意し中継を手配した。それでも合計780人であふれ、中継不調などでご迷惑をおかけした。
 これほど関心を呼んだのは、権力を監視すべきマスコミすら「忖度」「自粛」「服従」する安倍晋三政権下で、勇気、正義への渇望が広がっているからではないか。本紙「ジャーナリスト」のインタビューは衝撃的だったが、講演でも前川さんの率直な物言いは変わらない。「私は下村博文文科相のもとで教材『私たちの道徳』を作った責任がある。『自由の価をきちんと書く』よう注文したが、結局『自由には責任が伴う』などと書かれた。『国を愛そう』など集団主義的な価値が強調された」「憲法は教育を受ける権利を保障している。学ばなければ、憲法で享受すべき人権、国の原則は守れない。権力の暴走を許してしまうのは、無知蒙昧な国民。えらい人に従う、プロパガンダに流される国民をつくったのではないかと反省している」
 会場からは「管理的な仕事が増え、子供たちとともに考える時間がない、満足な教育ができない」(現役の教員)「選挙権を得たが主権者教育が足りない」(高校生)などの意見も出た。前川さんは、現実が厳しいことは認めつつ、自分のできる範囲で少しでも変えていこう、と面従腹背の勧めを説いていた。
 私事で恐縮だが、前川さんと、安倍首相、志位和夫共産党委員長、私は学齢が同じ。「同期」として、日本を戦中に戻す安倍首相の復古主義を改めさせる責任がある。言論、運動両面の戦いは、今後も続く。
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2017年12月24日

【今週の風考計】12.24─心残りの<'17読書回顧─おすすめ3冊>

わが機関紙「ジャーナリスト」<書評欄>を担当して10年。今年も掲載できなかった良書は数多い。とりわけ小説や境界領域の本は採用できず、無念の思いがよぎる。

濯ぐ意味もこめ<おすすめ3冊>を挙げておきたい。まずは文藝賞を受賞した若竹千佐子さんの小説「おらおらでひとりいぐも」。東京新聞「本音のコラム」で斉藤美奈子さんの紹介エッセイを記憶し、河出書房新社から刊行されるのを待って購読した。
夫をなくした悲しみを超え、残りの人生は自分なりに生きようと、新たな「老いの境地」を描く。遠野地方の口承文芸にも通じる会話文と地の文章が重なり合う叙述に圧倒された。

実は、このタイトルが、宮沢賢治「永訣の朝」にある<Ora Orade Shitori egumo>に由来しているのを知った。以来、宮沢賢治の詩集を引っ張り出して読み直し。続けて『銀河鉄道の夜』も再読。
そんなところへ門井慶喜『銀河鉄道の父』(講談社)が目に留まり一気読み。人間・宮沢賢治を、父・政次郎の視点から、その家族と紡いだ日常生活を通して描き出す。これまで政次郎について書かれた本は一冊もない。著者がコツコツと調べ続けて完成させた、賢治一家の再発見となる稀有な物語である。

最後は伊沢正名『葉っぱのぐそをはじめよう』(山と渓谷社)。ノグソを続けて43年、「糞土思想」が地球を救うと述べる著者は、ノグソは人が自然と共生する最良の方法だという。その熱い想いが80種以上の葉っぱのカラー写真と共鳴して響き合う。
山に行けば<お花を摘みに行ったり、雉撃ちに行く>のはよくある事。また『うんこ漢字ドリル』(文響社)が累計281万部の時代、決してビロウな本だと忌避してはならない。(2017/12/24)

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2017年12月23日

≪おすすめ本≫ 望月衣塑子『新聞記者』─記者は「傍観者でいいのか」この自問が事実に迫る原動力=斉加尚代(毎日放送報道局ディレクター)

 この時代に生きる新聞記者として「自分にできることは何か」を考え現場に向かう。菅義偉官房長官の会見で「東京新聞、望月です」と切り出し、舌鋒鋭く質問を畳みかけた女性の声を覚えている方は多いだろう。官邸記者の横並び主義に殴り込みをかけた社会部記者。

 その原動力を生い立ちから綴る著者は、ジャーナリスト志望の理由や仕事への思いを率直に記す。
 たとえば滑舌のよい凛とした声は、子ども時代に熱中した演劇で磨いた。徹底的に粘り強く聞く姿勢は東京地検特捜部を担当してスクープを放ち、特捜部から事情聴取を受けても書き続けたスタイルと繋がる。
 彼女にしてみれば積み上げてきた取材スキルを、「総理のご意向」と記された文科省文書に揺れる加計問題で発揮したにすぎないのだが、他の記者たちは彼女を批判、個人攻撃といえる中傷記事を放つ者すらいる現状に、読者は何を思うだろうか。大きな声援と渦巻くバッシング、そのストレスから体調を崩したことも。

 それでも彼女は権力の不正を告発する人々に向き合い、「自分の中で燃え盛ってくる。こうなってくるともう私のペース」と自身を突き動かす。多忙を極める取材と各地での講演、そして2児の子育てを担う姿は、ペンを手にしたアスリートを思い出す場面も多い。
 彼女が追い求めてやまないのは、権力が隠そうとする真実と国民が知るべき事実。傍観者でいいのか?と自らに問いかけ、個の記者の力を信じて現場に立つ望月記者。その思いを全国の記者が共有できたなら、暴走気味のこの国が少しはマシになるのではないかと思えてくる。(角川新書800円)
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《沖縄リポート》県民の批判を受け入れた翁長知事 港の使用を止められるかに注目=浦島悦子

 11月初め、『沖縄タイムス』『琉球新報』両地元紙が、辺野古新基地建設に向けた埋め立て用石材の海上輸送にかかわる岸壁使用を沖縄県が許可していた(6月申請、9月許可)ことを報道、県民に衝撃と動揺が走った。
 辺野古ゲート前での県民の粘り強い座り込みや海上抗議行動によって基地建設作業が大幅に遅れていることに焦った安倍政権は、ダンプトラックによる石材の陸上輸送に加え海上輸送を行う方針を打ち出した。海上輸送では、台船1隻でダンプ2百台分以上が運べる。来年2月の名護市長選を前に作業を加速させ、名護市民・県民のあきらめを誘う狙いもあるだろう。
 そんな中で、「あらゆる手段で新基地を阻止する」と言ってきた翁長県政が、基地建設を加速することが明らかな港の使用許可を出したことに、座り込みの現場でも批判が相次いだ。13日には、県の許可を得た国頭村奥港で、奥区民や区長に何の説明もないまま、機動隊を大量動員して台船への石材積み込みが始まり、抗議する区民や村民ら約百人を機動隊が排除して強行、翌日、約50台分の石材を大浦湾に搬入した。翌日、沖縄県は奥区を訪れ、「申請に法的不備がなければ許可せざるを得なかった」と説明したが、区民らは納得しなかった。
 基地建設に反対する市民や市民団体の間で使用許可の撤回を求める声が高まったのを受けて15日、「基地の県内移設に反対する県民会議」(山城博治共同代表)は県庁で謝花知事公室長と面談、知事の「言行不一致」を厳しく批判し、使用許可の撤回を要請した。
 同日夕方、記者会見した翁長知事が、ダンプの粉じんや騒音などの環境問題を「新たな事態」として使用許可の撤回を検討していると報道され、それははじめからわかっていたことではないかと思いつつも、私はいささか安堵した。何よりも、このまま県や県知事への不信感が強まれば、市民・県民との結束が崩れていく心配があった。県民の批判を受け止めた知事の姿勢を評価したい。
 政府は奥港に続いて本部港塩川地区を海上輸送に使う方針だ。口頭で使用許可を出した本部町に対し県は指導に入ったが、使用を止められるかどうか、県民は固唾を呑んで見つめている。
posted by JCJ at 00:02 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月20日

《スポーツコラム》「レガシー消える東京五輪」=大野晃

1500億円近くをかけて建設中の2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場である新国立競技場が、五輪後は国際的な陸上競技会ができない球技専用の競技場に変わり、様々なイベント会場にすると政府が決めた。しかも、運営権を国立代々木競技場や秩父宮ラグビー場とセットで民間に売り出すことを検討しているという。
 政府や都、組織委員会により東京五輪の会場はレガシー(遺産)として生かすと声高に喧伝されてきたが、箱モノを作って五輪が終われば民間に売り渡すということか。 何がレガシーなのか皆目わからない。
 開発優先で問題の多かった1964年の東京五輪開催だったが、開催後は、国民スポーツ発展のために五輪会場が後利用され、70年代には全国で地方自治体がスポーツ施設を建設するなど国民のスポーツ熱を盛り上げる条件整備が進んだ。
 半世紀を過ぎて、2度目の夏季五輪開催では会場の国民的な後利用はレガシーに言葉を変えてかえりみられず、政府が商品化するという。
 国民全体が手軽に利用できるスポーツ施設として生かす検討を忘れた五輪開催である。露骨な商売五輪と言うしかない。
 国際平和も友好も口先だけで、五輪は見るもので客を集める巨大商業イベントと公言するに等しい。この際、一緒に儲けませんかと国民を煽っているようだ。
 スポーツ基本法を持つ国民にスポーツの恩恵をもたらさない五輪開催で巨額な税金を費消しては負の遺産ばかりになる。
 メダル獲得で国威を示すのが五輪開催の意義とでも言わんばかりのスポーツマスメディアの姿勢が、世界に恥じる政府と日本スポーツをけん引してはいまいか。国民のスポーツする条件は限られる一方で、五輪開催が、さらに悪化させそうだ。
 誰もがスポーツを楽しめるように、収益第一のスポーツ政策を転換することが五輪開催の重要な課題のはずだ。(スポーツジャーナリスト)

posted by JCJ at 16:37 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月17日

【今週の風考計】12.17─いま<第九>が担わされた運命を考える

◆今日はベートーベンの誕生日。1770年12月17日ボンで生まれ、1827年3月26日ウィーンで死去。没後190年を迎える。あの<第九>は、ほぼ耳が聞こえなくなった54歳のときに作曲された。
◆日本では年末になると、<第九>の第4楽章「歓喜の歌」が、よく演奏される。欧米では祝典や歴史的な行事の際に演奏され、年末は関係ない。第二次世界大戦後の1951年7月29日、フルトヴェングラーがバイロイト音楽祭で指揮した記念碑的演奏は、今でもLPやCDのロングセラーになり、筆者も愛聴している。

◆なぜ日本では年末恒例となったのか。それは1943年、東京音楽学校(現在の東京芸術大学)の上野奏楽堂で行われた、12月の学徒壮行音楽会での<第九>演奏といわれる。学徒出陣のため12月に卒業繰り上げとなった学生たちを激励するためであった。戦後も1947年12月30日には、同じ場所で戦没学徒兵を追悼する演奏会を行っている。

◆「レコード芸術」12月号で、等松春夫氏が「大日本帝国と≪第九≫」と題して、時の政局との関係を紹介している。皇紀は2600年の昭和15年(1940年)、大政翼賛会が設立され、愛国精神の高揚を図る数々の大イベントの締めくくりとして、大晦日の午後10時半、ローゼンシュトック指揮・新交響楽団(NHK交響楽団の前身)がスタジオから実況放送をしている。
◆そして「戦時下の3年8カ月の間に<第九>の演奏は全国各地で22回にも上り、多くの青年たちが『歓喜に寄せて』に送られて戦地へ向かい、そして還らなかった。…大日本帝国にとって、<第九>とは『マルスに招かれたミューズ』だったのであろうか。」と結ぶ。

◆いま国会では、まさにローマ神話の軍神「マルス」が徘徊しているだけに、うかうかしてはいられない。(2017/12/17)
posted by JCJ at 12:08 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月11日

《ワールドウォッチ》アメリカ社会の分断=伊藤力司

 トランプ米大統領の支持率は37%と、戦後歴代大統領の最低を記録した。不支持率は59%で最高だった(10月29日〜11月1日実施のワシントン・ポスト紙とABCテレビの世論調査)。
 就任以来10カ月、メキシコ国境への“長城”建設、オバマケア(医療保険法)改廃など重要公約は実現できず、イスラム国からの移民禁止は国内外の反対で立ち往生。
 米国では同じ共和党の前任者、ブッシュ元大統領父子がトランプ大統領を酷評したことが話題になっている。「彼はほら吹きだ」と父が言えば、息子は「彼は大統領でいることの意味が分かっていない」と返したという(CNNニュース)。
 こうした悪評はニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストやCNN、ABC、NBCなどの有力メディアを通じて全米に流れて大統領不支持率を上げているのだが、37%の固いトランプ支持層はこれらの有力メディアを一切視聴しない。
 彼らが見るのは保守系のフォックスTVであり、読むのはブライトバート・ニュースなどの右翼メディアだけだ。また大統領は反トランプのメディアは「フェイク(にせ)ニュースばかりだ」と、耳を貸さない。
 こうしてアメリカ社会は分断された。人種差別を禁じた公民権法が成立して半世紀を過ぎたというのに、KKK団など人種差別団体が公然とデモを行い、これに反対する反差別派と衝突する事件が相次いで起きている。
 トランプ支持派は南部諸州や「ラスト・ベルト(錆びた地方)」つまり中西部の旧工業地帯に住む白人たちだ。20世紀のアメリカを支えた工場は高い人件費を嫌ってメキシコや中国に移転し、中西部は白人失業者の溢れる地域となった。
 かれらはトランプ大統領の「アメリカ第一主義」が雇用を再建してくれるものと信じて歓迎している。
 こうしたトランプ支持者たちは、大西洋岸や太平洋岸の“開けた都会州”の民主党支持者を軽蔑、自分たちこそ「本来のアメリカ人だ」と信じている。
 彼らは中南米系、アジア系、中東系移民と黒人がアメリカの多数派となることを恐れている。移民系は概して多産であり21世紀後半には白人が少数派になることは必至だが。

posted by JCJ at 15:31 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月10日

【今週の風考計】12.10─福島・原発事故が残す尽きない危険!

6年9カ月前、福島第一原発3号機は核爆発を起こし、最大で毎時2千ミリ・シーベルトの放射線量を放出、甚大な被害をもたらした。
いま廃墟となった原子炉建屋内にある貯蔵プールから、使用済み核燃料566本を、来年6月ごろには取り出せるよう準備が進んでいる。ドーム型の屋根が設置され、収納容器を吊り上げ地上までおろすクレーンは長さ約17m・重さ約90トンに及ぶ。

しかし、取り出したはいいが、どこで処理するのか、何も決まっていない。1号機・2号機の使用済み核燃料の取り出しに至っては、「2023年度を目途」にというだけ。タービン建屋内の復水器にたまった高濃度汚染水の抜き取りも、やっと18日に終える。その汚染水の合計1700トン、セシウム137濃度は5億ベクレル/ℓという。貯蔵するタンク850基はもう満杯。しかもそのうち約730基が、あの製品データ改ざん事件を起こした神戸製鋼の部品が使われている。漏れださないとも限らない。

原発事故による汚染など、福島県内の指定廃棄物は17万2千トン。それを埋める最終処分場が富岡町に設けられ、搬入が始まった。今後、6年かけてこの最終処分場に集約される。ただし、県内の除染で出た汚染土や10万ベクレル/sを超える廃棄物については、10月に稼働したコンクリート構造の中間貯蔵施設(双葉町・大熊町)に、最長30年間、保管される。
その後、県外で最終処分する方針だが、具体策は決まっていない。なし崩しに福島県外7県の汚染土47万㎥が持ち込まれてしまうのではないかと、住民の不安は尽きない。(2017/12/10)
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2017年12月05日

《月間マスコミ時評・出版》この国は本当に大丈夫か?=荒屋敷 宏

 「総選挙」後である。ある財務省幹部は安倍内閣の選挙を意識しながらの政権運営について「自転車操業」と評したという(「日経ビジネス」11月13日号で安藤毅氏)。

 「週刊エコノミスト」(毎日新聞出版)11月21日号で寺島実郎氏は、衆院選を総括し、小選挙区制のもとで野党分裂の選挙が与党優位になるのは当然としたうえで、戦後2番目の低投票率(53・68%)と比例代表区での自民党の得票率(33・3%)と絶対得票率(17・9%)に注意を促している。

 寺島氏は「国民は、現在の政治状況が正当なものではないことに気づき始めている。今後は政策を軸にした『リトマス試験紙』のようなものが重要になる」として、「外交や安全保障問題、特に沖縄の基地問題」を挙げる。寺島氏が地方講演に出向いた際に「地元の経済人から『小選挙区は自民に入れざるを得ない。だが、この国は本当に大丈夫か』と危惧する声をたくさん聞く」という。「自転車操業」への不安がマグマとなって臨界点に近づいている。

 「週刊金曜日」11月10日号の「京都・Xバンドレーダー基地と『戦争加担』」(成澤宗男氏)は読み応えがあった。丹後半島の北端、経ケ岬(京丹後市)から西へ約3キロ離れた断崖の上に、北朝鮮から飛来するミサイルをとらえる特殊なレーダー基地がある。米太平洋陸軍の第94防空砲兵コマンド第14ミサイル防衛中隊がいる。

 丹後半島に米軍レーダー基地建設の話が持ち上がったのは2013年2月末。米軍が特定秘密保護法の整備を急がせた理由がわかる。米軍は現在、朝鮮半島における軍事戦略「OPLAN5015」(2015年決定の戦争計画)にもとづいて動いている。日本各地で米軍や自衛隊が危険な訓練をしている。そこから「戦争計画」の実像も見えてくる。成澤氏は朝鮮戦争の被害状況を簡潔に振り返っているが、もしも朝鮮半島で休戦協定が破棄されれば、かつての戦争以上の破滅的惨禍となることは明らかだろう。

 この国の将来を決める鍵言葉は「憲法」だ。「週刊金曜日」11月3日号が「憲法キャンペーン」を開始し、同誌編集長の小林和子氏が「世界」編集長の清宮美稚子氏、「DAYS JAPAN」編集長の丸井春氏とおこなった鼎談が面白い。題して「憲法が危機なら私たちが誌面を通して憲法をとりもどします」。野党共闘の時代に雑誌媒体が「共闘」することも「あり」だろう。3誌のコラボ企画が楽しみだ。
posted by JCJ at 13:28 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月03日

【今週の風考計】12.3─「日本維新の会」と<加計マネー>疑惑

「日本維新の会」の足立康史衆院議員は、11月30日の衆院憲法審査会で、またまた朝日新聞を名指しして「捏造、誤報、偏向のオンパレード」と、何ら具体的な根拠も示さず、誹謗中傷きわまる暴言を吐いた。さらに憲法改正国民投票について、「最近のマスメディアの偏向ぶりを見るにつけ、マスメディアを正すか、信頼度を引き下げることに取り組むことが、国民投票に必要な環境整備だ」とまで述べた。

足立議員は11月12日、朝日新聞の<加計問題>に関連する社説を巡って、ツイッターに「朝日新聞、死ね。」と投稿した御仁。10月23日投票の衆院選で小選挙区では落選したが比例復活して現在3期目。元通産・経産官僚。国会の場でも、加計疑惑を追及する立憲民主党など3党の議員の名前を挙げ、あっせん収賄罪に該当する「犯罪者」とまで発言、謝罪に追い込まれた。

ここにきて、足立議員が所属する「日本維新の会」に、<加計マネー>疑惑が浮上してきた。加計学園の加計孝太郎理事長と息子で副理事長の加計役氏から、片山虎之助・共同代表に政治献金がなされていた事実が、日刊ゲンダイの調べで発覚した。
なるほど、それで「日本維新の会」の各議員は、国会で<加計問題>を追及しないのか。納得。加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部は、愛媛県今治市から37億円の土地を無償譲渡され、その上に県と市から96億の建設補助金まで得て開設される。この財源はすべて税金だ。もし経営破綻したら責任は誰がとるのか。

「認可したから終わり」では済まない。加計理事長以下、関係者を全員、国会に呼んで、徹底して国家戦略特区諮問会議の真相を解明すべきだ。(2017/12/3)
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2017年12月02日

≪おすすめ本≫松宮孝明『「共謀罪」を問う 法の解釈・運用をめぐる問題点』─市民生活の自由と安全を脅かす「戦後最悪の治安立法」の欠陥を暴く=菅原正伯

 「共謀罪」法案は今年6月に自民・公明などによって強行採決されたが、国民の内心を処罰し、監視社会をもたらす違憲立法への抗議は収まらない。本書もその一翼を担って出版された。

 全体の構成は大きく2つに分かれる。前半(T〜X)は、新設された「テロ等準備罪」と過去に廃案になった「共謀罪」とは本質的に同じであり、国連国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を批准するには「テロ対策」の国内法(共謀罪)が必要だという政府の言い分を逐条的に論破している。
 もともとTOC条約の目的自体、テロ対策ではなく、マフィアなどの国際的経済組織犯罪の対策であること、「2人以上の計画(合意)」という罰則要件では、一匹狼(ローンウルフ)型のテロには役に立たないことなども指摘、政府答弁の欺瞞ぶりが浮き彫りにされる。

 後半のハイライトは「共謀罪の解釈」(Y)である。共謀罪の規定である組織犯罪処罰法「6条の2」が徹底的に検証される。「組織的犯罪集団」のあいまいな定義、「共謀罪」の対象犯罪の恣意的な選定、「遂行を2人以上で計画した」時の組織の構成員との関係(構成員でない者も犯罪の主体になる)、正犯と共犯をめぐる予想される解釈上の混乱などである。
 逐条どころか逐語的に、条文の規定のあいまいさ、不備、齟齬を指摘。捜査や裁判の実務においても様々な混乱を生じる「欠陥法」であることを解明している。
 「市民生活の自由と安全が危機にさらされる戦後最悪の治安立法」に、敢然と対峙した入魂の書。
(法律文化社926円)
「共謀罪を問う」.jpg
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