2018年01月04日

《月間マスコミ評》NHK記者過労死、当確報道に疑問=諸川麻衣

 2013年7月24日、NHK首都圏放送センターで都議選、参院選取材に当たってきた佐戸未和記者が、月159時間余の時間外労働の末に31歳の若さで過労死した。4年後の今年11月20日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀 過労死と闘い、命を守る」では、冒頭で生前の佐戸さんの活躍や今のご両親の声を紹介、過労死問題は「この番組を作るNHKにとっても大きな課題です」と述べた。
 調べてみると実はNHKは06年度に既に、年間総労働時間2100Hを指標に各職場で働き方を見直すという「働き方総点検」を始めていた。さらに12年度にはこれを「働き方改革」に発展させ、「業務の棚卸し」を課題とした。13年度には、全経営業務量に見合う要員数(約一万)の枠内で各職場の「歪み」を解消するため、要員再配置や業務の調整=「全体最適」に乗り出した。
 翌14年5月に佐戸さんの過労死が認定されたが、この年は改革の重点事項に「過重労働防止による健康確保」を掲げ、記者の勤務制度の議論、「専任職」を労働時間を管理する一般職に移行する、三六協定の上限を超えた勤務を「限度越え」として報告するよう労組が呼びかける、などの動きが見られた。
 その後、番組の編集期間に休日を設けるなども行われ、16年度には全部局で年間総労働時間平均が前年度を下回り、全体最適も達成されたという(ただし「限度越え」報告は14年度以降一貫して増え続けているらしい)。
 そして今年度には記者の「専門業務型裁量労働制」が発足、10月に佐戸さんの過労死がやっと公表された。また12月7日には、NHKグループ全体として「長時間労働に頼らない組織風土をつくります」と宣言した。
 このように、NHKが過重労働問題にまったく無策だったとは言えない。ただし、佐戸さんの件は当初、職場集会参加者に口頭で報告されただけで、一斉周知はされなかったという。「過労死の事実をしっかり伝え、再発防止に役立ててほしい」とのご両親の気持ちは裏切られていたのである。「できるだけ早く当確を打つ」という意義不明な目標のために人材を集中投入する選挙報道のあり方への根本的な見直しも、ほとんど見られない。
 一方で佐戸さんの過労死はメディアの他社でも反響を呼び、選挙取材期間の勤務管理のあり方を見直す動きが出ているという。三年後、五年後、放送の現場が「以前よりは働き方がまともになってきた」と実感できるようになれば、報道人として志半ばで斃れた佐戸さんの無念は少しは晴れるだろうか? 
      
posted by JCJ at 17:24 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする