2018年02月28日

〈月間マスコミ評・出版〉格差拡大を放置し今や階級社会に=荒屋敷 宏

 英国在住の保育士・ライター・コラムニストのブレイディみかこ氏の「ブロークン・ブリテンに聞け」という新連載が文芸誌「群像」3月号(講談社)で始まった。ブレイディ氏は「子どもたちの階級闘争」(みすず書房)、「労働者階級の反乱」(光文社新書)などでも脚光を浴びつつある。
 「群像」編集部が作成した目次いわく「階級が分断され、貧困が蔓延(はびこ)る『壊れた英国』で人々はどう生きるのか。『一億総中流社会』が崩壊した日本の未来/現実はここにある――。」
 ブレイディ氏は、生理中に使用するタンポンやナプキンが買えない貧困層の女性たちを意味する「生理貧困」(ピリオド・ポヴァティ)という聞きなれない言葉を切り口に、18歳の女性たちが「スティグマ」(恥の意識)を乗り越えて立ち上がる英国の姿を紹介している。
 「日本でもこの問題はけっして他人事ではないはずである。/生活保護の生活扶助費引き下げという、まるで英国のような緊縮政策が数カ月前に発表されたばかりではなかったか」とブレイディ氏は締めくくる。
 まさしく、他人事ではない。「賃金と社会保障」1月号(旬報社)の特集「さらなる生活保護引下げ」が便利である。同誌編集部によると、「厚労省の今回の(生活扶助費)引下げ案の考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準と比較し、生活扶助基準が上回っているので引き下げるというもの」という。「一般低所得世帯」の消費支出にあわせて生活扶助基準を変更するという、恐るべき安倍政権の政策である。
 柏木ハルコ氏の漫画「健康で文化的な最低限度の生活」(「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中)が新人ケースワーカーの視点から生活保護を描いて注目されているが、衆院予算委員会でも日本共産党の志位和夫氏が、生活保護は憲法25条(生存権)にもとづく国民の権利であるとして、削減計画の撤回を求め、生活保護法の名称を改めて「生活保障法」とするなどの提案をおこなった。
 橋本健二氏は「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)で、1980年前後から始まった「格差拡大」は40年近くも放置され、「一億総中流」はもはや遠い昔と指摘した上で「現代の日本社会は、もはや『格差社会』などという生ぬるい言葉で形容すべきものではない。それは明らかに、『階級社会』なのである」と書いている。大注目の論点であろう。 
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≪おすすめ本≫ DAYS JAPAN 1月増刊号「日本列島の全原発が危ない! 広瀬隆 白熱授業 」─いつ原発を襲う大地震が起きても不思議でない日本沿岸のプレート=藍原寛子(ジャーナリスト)

 次なる原発事故、核災害の予言の書。福島県沖から九州と日本列島を縦断する1千キロの巨大活断層「中央構造線」が地震激動期に入った。加えて津波、活火山、そしてテロの危険が迫る。原発や核燃料再処理工場の大惨事が日本のどこで起きても不思議でない時代。

 著者は10年前に岩手・宮城内陸地震が「日本に原発を建設・運転できる適地はないことを知らしめ」たと指摘。国の原発政策、事業者の問題を挙げ、破局を避けるには原発を再稼働せず停止・廃炉にした上、応急処置として高レベル廃棄物を含んだ使用済み核燃料の乾式貯蔵をと説く。
 何もしなければ、最悪のシナリオ―施設爆発で高レベル廃液が全量放出され、「日本とアジア全土が世界地図から消える」と、センセーショナルな宣告をする。

 これまで予測が当たってきた理由を尋ねると「内心の恐怖と、地球規模で問題を見ているからだ」と著者はいう。九州の群発地震、台湾大地震が続いた。昨年9月に中南米で連続した地震と海底マグマの噴出は、日本の地震に影響を与える地球内部のマントルの動きであり、日本沿岸のプレートは、いつ大地震が起きてもおかしくない状態だとみなしている。
 福島第一原発事故から7年。高度な科学技術が容易に凶器になり得る現代、人間は生き残りをかけて、どんな直感と叡智で行動するのか。福島原発事故の避難者の存在が無視され、次の核災害まで避難の妥当性を認めないとしたら遅すぎる。あとがきの「重罪弾劾」は圧巻。「広瀬節」は絶好調。
(デイズジャパン2150円)
「日本列島の全原発が危ない」.jpg
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2018年02月25日

《編集長EYE》 ICAN、金融機関にアプローチ=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に貢献したことで、昨年、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)。その事務局長のベアトリス・フィンさん(スウェーデン出身)は1月来日し、広島、長崎、東京で講演した。 

 フィン事務局長は「格兵器を持つことが力の象徴ではなく、恥の象徴だと認識させて、核兵器を持つ国に悪の烙印を押すことができれば、核保有国ももっと理にかなった考え方をするようになる」と訴えた。

 核保有国は「恥だ」という認識を世界に定着させるためICANは、さまざまな活動を展開する。1月初旬に本紙のインタビューを受けた(1月25日号に既報)ICAN国際運営委員の川崎哲さんは、その活動を4つに分ける。第一は核禁止条約の署名・批准を世界的に促進するため広島と長崎の被爆者による証言活動とメッセージ発信だ。第二が核武装国の「核の傘」の下にある日本のような協力国の核政策見直しを求める積極的なロビー活動。第三は将来の核武装国の核禁止条約参加を視野に入れて、核武装廃棄や検証措置をさらに精緻する議論を行う。第四が民間の金融機関などへの働きかけだ。核禁止条約が発効されれば、核兵器は国際法上、非人道兵器として認定される。そのような兵器の製造に関わる企業に融資することは社会的な責任を欠いたものと見なされる。対人地雷もクラスター爆弾も禁止条約発効(地雷は99年3月、爆弾は2010年8月)で、企業への融資が引き上げられて兵器の生産や貿易が大幅に縮小した。

 川崎さんはこう語った。

 「三菱UFJファイナンシャルグループは、『非人道兵器』のクラスター爆弾を製造する企業に対して今後、その資金使途にかかわらず、融資しない方針を昨年12月に発表した。例えば三菱UFJに核兵器の製造では、どう考えているのか≠ニいったアプローチは重要です」

 企業が相手ならば方針の転換は期待できそうだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年2月25日号
posted by JCJ at 16:54 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【今週の風考計】2.25─あらためて<築地でええじゃないか!>

「築地は守る、築地の後は築地」と言明してきた小池百合子都知事が、「築地に市場をつくる考えはない」と仰天発言。
これまで都知事は、築地には<セリ>などの市場機能を残し、豊洲には流通センターの役割を担ってもらう─両市場“併存”構想を声高に語ってきた。その約束を反故にする、まさにチャブダイ返しの暴言である。

豊洲移転に反対する<築地女将さん会>の一員である鈴木理英子さんをガイドに、このほどJCJ会員メンバーは「築地」を実地見学した。建物の6階屋上から一望すると、隅田川へ扇子を広げたように昭和モダンの棟屋が伸びる。その湾曲したカーブは鉄道の引き込み線に対応し、トラック輸送にも便利だったという。

地上に降りると、セリも終わり仲卸の人たちが買荷保管所へ荷物を運ぶターレが勢いよく行きかう。仲卸は約500社、目利きの技を支えに、現物を見てもらい値段を決める建値市場の魅力。健全な価格が形成され、漁師や農業生産者への利益還元と品質向上に結びつくという。ちなみに鹿児島県産のアカヤガラがキロ1700円、千葉県産キンメがキロ3600円。
さらに場内・場外を回わる首都圏からの買出人は、毎日1万人を超える。加えて海外からの観光客が場内の市場メシや場外の御鮨に長蛇の列をなす。築地ブランドここにあり。<築地でええじゃないか!>。わざわざ10月11日、なぜ豊洲へ移転させるの? 

いま豊洲では、ベンゼン・シアン・水銀などの有害物質がしみこむ地下水のコントロールに躍起だ。海抜より1.8メートルまでの水位に抑えないと、汚染物質の漏出も大地震による液状化現象も防げない。現実は地下水の水位は、最高で海抜より4.6メートル。地下水を抜き取るポンプの稼働費用は巨額になるのは必定だ。
40ヘクタールもの広大で、かつ複雑に入り組んだ土地の地下水を、1.8メートル以下に管理すること自体が至難の業。“安全宣言”が出せなければ移転はとん挫。危ない橋を渡るより、築地を守るほうがずっといい。(2018/2/25)
posted by JCJ at 15:52 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

≪リレー時評≫再び「住民投票」にひた走る維新の会=清水正文

 2015年5月、維新の会は「大阪都」構想の是非を問う住民投票を32億円もの市税を投じ、5億円ともいわれる宣伝費をかけて行ったが、大阪市民から「ノー」の意思が示され、法的にも明瞭な決着をみた。
 ところが、松井大阪府知事、吉村大阪市長は「副首都構想」と装いを変え、「総合区」も議論するからと公明党を抱き込んで、昨年大阪府・市に「特別区設置協議会=法定協議会」を設置し、今年の秋に再び「住民投票」を行おうとしている。

 しかし、新たな「特別区」案なるものは、否決された「5区案」を「4区または6区案」にするというだけで、本質的には何の違いも打ち出せていない。前回の「二重行政の解消」や「財政効果額」の大義や道理は消え、万博誘致を利用した「IR」(カジノ)などを進める以外に「都構想」のメリットを示すことができず、矛盾が広がっている。
 「法定協議会」では、「現行法では都区調整財源に地方交付税は使えない」「財政シミュレーションを出さないのは、メリットがないからではないのか」などの異論や疑問が維新以外の政党から出されている。

 昨年9月の堺市長選挙では、4年前に続き「大阪都構想」反対を掲げる竹山市長が「堺は一つ、堺のことは堺で決める」と主張し、「堺市つぶし」を狙う維新の候補に勝利した。世論調査でも、大阪市民の「都構想」反対は1年間で5ポイント増えて47%に、賛成は10ポイント減って37%(「読売」)となっている。
 「総合区」とは大阪市を存続させたうえで、行政区の権限を強化するために、単独あるいはいくつかの区を合わせて設置しようとするもので、地方自治法に基づき市議会で決定すれば「住民投票」など不要であり、変更・解消も市議会の権限になっている。

posted by JCJ at 15:26 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月18日

【今週の風考計】2.18─幕山ハイクと羽生の金メダルと3・11

友達6人と湯河原梅林を見ながら、幕山ハイクを楽しんだ。快晴の空に浮かぶ梅4千本。「紅千鳥」や「白加賀」などの梅が、香りを漂わせながら、もう一杯に赤や白の花弁を広げて咲きほこる。

梅の散策路を過ぎ登山道に入ると、きつい傾斜の木の階段が続く。つづら折りに伸びる山道に、ハーハー息が出る。五郎神社とある標識を超え、しばらく行くと大きな岩に出会う。その平らな面に、「追悼 2011年3月11日 東日本大地震 落石」と記されている。7年目の3・11が近いと思いながら、岩のわきを抜ける。
パッと展望が開ける。眼下に湯河原の街、春霞にけぶる相模灘、初島、ぼんやり大島まで見える。さらに登る。やっと標高625mの頂上。真鶴半島が真下に突き出ている。おにぎりの旨いこと。

帰りは一瀉千里、転ばぬようバランスを保つのが精いっぱい。湯河原駅近くの湯場で汗を流す。その湯上りロビーにあるテレビが、羽生結弦選手の快挙を映している。ソチ五輪に続き、平昌五輪でも金メダル獲得、66年ぶりの連覇だ。数々の試練を乗り越え、今や伝説のスケーターになった。
2011年3月11日、彼は東北高校1年・16歳の時、東日本大震災に遭遇した。被災した自分の家族の苦労と合わせ、「ガスや、電気、水道も止まって大変でした。それ以上に、苦しんだ人たちがたくさんいて、特に津波、原発事故の被害にあった地に行って思った」と、多くの被災者への思いも口にしている。ジーンと胸が熱くなった。(2018/2/18)
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2018年02月17日

【マスコミ評・放送】DHC、確信犯として沖縄を揶揄=岩崎貞明

 昨年12月、NHKと民放が設置する放送の自主規制機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が、昨年1月に東京都のローカル局、東京メトロポリタンテレビジョン(MX)が放送した番組『ニュース女子』の沖縄特集が「重大な放送倫理違反」だったとの意見を公表した。

 番組は、沖縄の「基地反対派」は「過激派で危険」「日当をもらっている」などという根拠のないデマ情報をレポートし、米軍基地建設反対を訴えて工事現場付近で座り込みの抗議行動を続けている地元の人々を笑い者にするものだった。化粧品製造・販売のディーエイチシーの関連会社が番組を制作し、スポンサー料も付けて放送させるという「持ち込み番組」のスタイルだった。

 BPO放送倫理検証委は、この番組が放送局において適正な考査が行われたかどうかを検証したが、それは沖縄の現地に赴いて関係者に聴き取り調査を行うなど精緻な検証作業を試みたものだった。
 その結果として同委員会は、MXに対して「抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった」「『救急車を止めた』との放送内容の裏付けを確認しなかった」「『日当』という表現の裏付けを確認しなかった」「『基地の外の』とのスーパーを放置した」「侮蔑的表現のチェックを怠った」「完パケでの考査を行わなかった」という六つの点を指摘し「本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があった」と断じている。

 問題は、直接番組制作に携わったディーエイチシー側が、反省どころか開き直りの態度を改めないことだ。基地反対派の取材をしていないことについては「言い分を聞く必要はないと考えます」などと一方的な主張に終始して、まさに確信犯として沖縄の人々を揶揄している。ネット上に蔓延する「沖縄ヘイトスピーチ」は深刻な問題だ。

 この番組をめぐってはもう一件、BPOの放送人権委員会にも人権侵害救済の申し立てが行われている。人権問題であるからには、こちらのほうこそ早急な対応が待たれているはずだ。いずれにせよ、決定を受けたMXの態度が懸念される。
posted by JCJ at 01:14 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月11日

【今週の風考計】2.11─籠池夫妻を6カ月も拘留する不可解な理由

■「マンデラ・ルール」とは? 監獄に収容された人たちへの拷問や非人道的な取り扱いを禁じ、定期的に家族や友人との連絡を保障する国際基準である。不条理で苛酷な27年もの長期投獄に屈せず、南アフリカ大統領となった故ネルソン・マンデラさんを讃えて名づけられたという。

■参議院議員の山本太郎さんが、このルールを国会質問で取りあげ、安倍首相に迫る内容が喝采を浴び、広く知られるようになった。「籠池氏と奥様は半年以上にもわたり独房で長期間拘束。総理ご自身が口封じのために長期拘留を指示したなんてありませんよね?」という質問だ。
■これまで安倍首相が「この籠池さん、真っ赤な嘘、嘘八百ではありませんか」と誹謗し、「詐欺を働く人物」とこき下ろす、あの森友学園の前理事長・籠池泰典さんと妻の諄子さんの事態が深刻なのだ。夫妻の勾留が、なんと6カ月に及んでいる。

■検察は証拠品を押収し関係者の聴取を終えたが、完全黙秘を続けている以上、さらに証拠隠滅の恐れがあるという理由で、起訴後も拘留を続けている。いま大阪拘置所に収監されている籠池泰典さんは、窓のない新館の独居房に入れられ、諄子さんは窓はあってもエアコンがない旧館に収容されている。家族との接見もできない。まさに「マンデラ・ルール」に違反しているではないか。
■ひるがえって、森友への国有地売却の橋渡し役を務めたとされる昭恵夫人は平然と海外を経めぐる。しかも音声データがあるにもかかわらず、「私こそ真実を知りたい」と言いつくろい、偽証罪に問われかねない証人喚問に応じない。

■財務省は破棄したはずの資料を、1年近くたってポロりポロりと出してくる。佐川宣寿・前理財局長の国会出席に踏み切り、累を昭恵夫人に及ばさないための戦術との声も挙がる。国民を馬鹿にするな。(2018/2/11)
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2018年02月08日

リニア事件 JR東海は共犯者 「三位一体」で国民だます 関島保雄弁護士に聞く=橋詰雅博

 リニア中央新幹線の沿線住民738人が16年5月に品川―名古屋間の工事認可取り消しを国に求めた行政訴訟は、東京地裁で8回の口頭弁論が行われている。原告弁護団共同代表の関島保雄弁護士(70)に、リニア談合事件をどう見ているのかなどを聞いた。

――談合事件への感想は。
 大手ゼネコン4社が工事受注前に談合を当然やっていると思っていました。リニア新幹線はJR東海が全額自己資金で建設すると07年に表明。だから国も国会も国民も民間事業だから口を挟めないという流れできました。

「民間事業」口実に
――しかし、リニア新幹線は公益事業を対象とした全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づいて建設されています。
 全幹法の場合、用地買収や建設残土の処分などで自治体を協力させることができて、環境アセスメント前に提出する工事計画などはアバウトです。環境アセスはおおざっぱなものにならざるを得ません。全幹法の適用はJR東海にとってメリットは大きいのです。それでいて民間事業を口実にJR東海はいろいろな問題から逃げています。背後に政治的な動きがあったとしか思えません。

――そのうえ安倍晋三首相は16年6月に財政投融資による支援を打ち出しました。
 総事業費約9兆円のうち3兆円を財投で賄っています。しかも超低金利で、30年間返済据え置きです。
これを実現するため安倍政権は独立行政法人「鉄道・運輸施設整備支援機構」の法改正を行い、財投資金よってリニア新幹線の工事を発注できるようにしました。全幹法を適用、さらに財投という名の税金が投入されたリニア新幹線は、今や国家的プロジェクト。国が様変わりさせておきながら民間事業のイメージを維持し、国民をだましています。

9兆円の利権隠す
 9兆円という大きな利権を隠すため国、JR東海、大手ゼネコンが三位一体となってリニア新幹線建設を進めてきています。談合によって工事費がはね上がったのだから発注元のJR東海は本来ならば被害者だが、共犯者と言っても過言ではありません。JR東海の葛西敬之・取締役名誉会長は安倍首相の財界応援団の有力メンバー。ここでも首相に近い民間人が有利になるよう政策がねじ曲げられていると思います。

――裁判への影響はありますか。
 ストレートに影響するとは言えないでしょう。しかし、この事件は、談合のような違法行為がさまざまな場面で起きているにもかかわらず強引に建設が進められている実態を裏付けるいい材料になります。原告側の主張に説得力の厚みが増します。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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ICANのノーベル賞受賞と被爆者運動への目─第五福竜丸展示館を訪ねて=木下壽國(ライター)

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が昨年、ノーベル平和賞を受賞した。メディアはこぞって、このニュースを大きく取り上げた。
 メディアが受賞に沸き立つ中、私は何十年ぶりかで東京都江東区の夢の島にある第五福竜丸展示館を訪れた。核兵器問題についてささやかながらも自分自身でなにかを感じてみたいと思ったからだ。訪ねたのは平日で、閉館時間に近かったこともあり、展示を見ている人は少なかった。

 館内では特別展<この船を描こう>というイベントをやっていて、小中学生の描いた第五福竜丸の絵がたくさん展示されていた。それを見た私はちょっとした感動を覚えた。船の姿をそのまま描いているのだろうと半ば見下していたのだが、なかなかどうして。想像力が豊かなのだ。
 中学2年生による「朝日を告げる福竜丸」などは、海をドーッ、ドーッと流れる川のように表現し、ちょっとした迫力を与える。そのほかの作品もそれぞれの想像力の中に船を自由に遊ばせていた。
 第五福竜丸の船体に沿って左回りに歩みを進めていくと、水爆ブラボー実験で汚染された太平洋の海域を赤丸などで表示するパネルがあった。一瞥して、改めて汚染地域の広さとひどさに驚いた。
(→続きを読む)
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2018年02月07日

≪おすすめ本≫ 太田昌克『偽装の被爆国 核を捨てられない日本』─「核の傘」という「幻想」にすがり、<唯一の被爆国>がかぶる仮面=倉澤治雄(科学ジャーナリスト)

 「『唯一の被爆国』をアピールして被害者面するな」
 そんな声がいずれ世界から沸き起こるだろうと、本書を読んで確信した。日本はまさに「偽装の被爆国」である。「唯一の被爆国」という仮面の下で、安倍政権が核不拡散に逆行する行動を取っている実態を、綿密な取材をもとに論証する。

 米国の「核先制不使用」に対する反対表明、核兵器禁止条約交渉への不参加、安易な原発の再稼働、47トンというプルトニウムの蓄積量、インドとの原子力協定、これらは一体何を意味するのか。世界が日本の核武装を警戒するのも当然である。
 すべては「核の傘」や「核抑止」という日本政府が固執する幻想から始まる。「核を持てば強くなる」「核を持てば侵略の意図を抑止できる」という幻想である。
 「核戦略」は、「相手も自分と同じように考える」─その前提をもとに成立する。「相互確証破壊」が良い例だ。しかし「同じように考えない」主体が核を持てば成立しなくなる。失うものがない勢力に「核の傘」や「核抑止」は通用しない。「核の傘」は「破れ傘」という「幻想」となる。

 私の父は広島で原爆投下の惨状を、高射砲部隊の一員として目の当たりにした。しかし自分の見たことを一言も語らず、6年前に他界した。「非人道的」な核の惨状に、言葉を失ったからであろう。
 「核戦力を背景にした恫喝と威嚇を続けるトランプに同調し、下手をすると、その強硬路線に加勢しているように映る」
 著書の懸念に、私は完全に同調する。核の緊張が高まる今こそ、日本は仮面を脱ぎ捨てる時が来た。
(岩波書店1700円)
「偽装の被爆国」.png
posted by JCJ at 10:19 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

【今週の風考計】2.4─「使える核」を高く評価する日本政府の感覚

「炎と怒り」に駆られたトランプ大統領は、<脱オバマ>なら何でもあり、ついには「核なき世界」を目指すオバマ宣言まで廃棄した。
「柔軟な核オプションを拡大する」ために、敵国の重要施設を、ピンポイント攻撃できる態勢づくりに向け、使いやすい核の開発に全力を挙げるというのだ。

長崎に投下した原爆の爆発力を、ほぼ4分の1に抑えた小型核弾頭を開発し、水上艦・潜水艦を問わず、搭載した弾道ミサイルに装着する企てだ。核兵器を使う基準についても「国民やインフラ、核施設などへの通常兵器による重大かつ戦略的な攻撃も含まれる」と記し、核が使える機会を拡大させた。
この約20年で世界が保有の核弾頭7万発を、1.5万発まで削減してきた。にもかかわらず「核弾頭を格納庫から運び出し、改良を加え最新モデルにして使う」とは。ICANがノーベル平和賞を受賞するほど、核兵器廃絶の流れは世界に広がる。それに逆らう蛮行そのもの。

驚くのは世界で唯一の戦争核による被爆国・日本政府の態度だ。事前に米国から説明を受けるや、世界のトップを切って「高く評価する」とは、なにごとだ。被爆者・平和団体は「悪魔に魂を売り渡した」と、怒りの声を挙げている。「トランプ大統領は核被害に無知・無関心だ。広島・長崎に来て被爆者の話を聞き、核の恐ろしさを実感すべきだ」と話す。

先月末、人類が滅亡する「地球最後の日」へ残り2分、30秒早める宣告が出された。午前0時と定めた「終末時計」の残り時間は、どんどん短くなり、過去最短となっている。さらにトランプと日本が早めたのは間違いない。(2018/2/4)

posted by JCJ at 12:02 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月02日

核禁止条約反対「ムダな抵抗」 ノーベル平和賞のICAN国際運営委・川崎哲さんへのインタビュー=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」へのノーベル平和賞は昨年、世界に深い感銘を与えた。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は条約を黙殺=B日本の多くの国民はもとより世界の人々も安倍晋三首相の冷たい態度に落胆、失望した。安倍首相はICANに対してそっぽを向くが、どこまでも「核兵器なき世界」を追求するICAN国際運営委員でNGOピースボート共同代表の川崎哲さん(49)が本紙のインタビューに応じた。条約発効の見通し、将来日本の参加はあり得るのかなどに答えた。

 ☆     ☆

――核兵器禁止条約に署名した国は56カ国で、批准は3カ国(ガイアナ、バチカン、タイ)ですが、どう思いますか。

 まず核兵器禁止条約は反核運動として理想に近いもので、核兵器廃絶への道筋ができた。

メキシコ批准済み

 条約の批准に関してメキシコは昨年12月に議会で批准している。ただ、国連への文書提出が遅れている。正確に言えば批准国は4カ国。しかし、条約発効に必要な50カ国には遠く及ばす、国連で122カ国が条約に賛成したにもかかわらず署名は56カ国にとどまっている。

――署名・批准が進まない理由は何ですか。

 2つ挙げられる。一つはどこの国も政治課題を抱えていて、そちらを優先しているので署名・批准には時間がかかる。単純な理由です。もう一つは米国など核武装国(9)が「役に立たない条約だ」とネガティブキャンペーンを打って、「署名・批准するな」と言っているからだ。2つの理由でいまのような状態になっている。私は前者の理由が大きいと思う。

 昨年末、早期に禁止条約の署名・批准を求める国連決議に120カ国以上が賛成している。署名・批准へ各国の世論が盛り上がれば、批准国は増えるはず。決して核武装国の圧力に屈服してはいません。条約の署名・批准案を国会で審議する順位をより高めるため世論喚起が必要です。

――それにはどうすればいいですか。

 ICANの今年の課題だが、ピースボートの場合、いままでやってきた広島・長崎の被ばく者の方を海外にお連れして核兵器廃絶を訴えてもらう取り組みを継続させて発展させることです。生き残った被ばく者の話は、地元メディアが大きく報じるし、高いレベルの政治家にも被ばく者は会える。気運を高めれば、必ず批准は実現できる。

協力国を揺さぶる

――格武装国と、米国の核の傘に依存する日本のような核武装協力国(約30)をどう攻略≠キるのか。

 核兵器武装国の条約への参加は当面、望み薄。条約を速く発効させれば、武装国も無視できなくなる。これに力点を置く。このため格武装協力国を揺さぶる。私が見るところ、これらの国は一枚岩ではない。核兵器を受け入れる積極派とお付き合い程度の消極派に分かれる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発に向きあう日本と韓国、ロシアの核兵器に脅威を抱くバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やドイツ、オランダ、ベルギー、トルコ、ポーランドなどの積極派を落すにはやはり時間を要する。このため消極派にターゲットを絞る。NATO(北大西洋条約機構、29カ国で構成)に加盟するノルウェーは議会で政府に条約加盟への可能性を検討するよう求める決議が可決される。同じくNATO加盟のアイスランドは自国の軍隊がなく、NATO駐留軍もいない。格兵器を受け入れる気持ちはさらさらない。米国の核兵器を配備して積極派と見られるイタリアでも、議会は、禁止条約に参加できるかどうか政府に求める動議を可決している。

 また、欧州では自治州の力が強い。条約賛成の自治州が中央政府にプレッシャーをかけると効果は大きい。消極派の国々や自治州などを落すのがICANの次の戦略だ。

条約は防衛に貢献

――日本が条約に署名・批准する可能性は。

 どんな総理大臣でも毎年8月に被爆地で核兵器廃絶を求める演説を行う。それなのに核兵器禁止条約に参加していない。先だって民放で核問題の特集番組を放送していたが、その実態を知らされた若いタレントは「えー」と驚いていた。多くの国民もこのタレントと同じで、それをよく知りません。日本は被爆国でありながら禁止条約に参加しないという二重性≠フ側面を持っている。このことを常識化させて、国民的な議論を巻き起こす。「条約にコミットしないのは被爆国として理解しがたい、おかしい」という声が大きくなると、日本政府の政策が転換する可能性がある。

 122カ国の賛成を得た禁止条約はいずれ発効する。格武装国と格武装協力国はムダな抵抗を止めるべきだ。条約は、核武装廃棄や国際的査察を義務付けるなども盛り込んでいる。自国防衛のためにも条約を役立てることをめざして知恵を絞ることが日本には重要です。

聞き手 橋詰雅博


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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2018年02月01日

≪リレー時評≫ 沖縄の私たちは、この国の姿を問い続ける=金城正洋(「JCJ沖縄」代表世話人)

 昨年2月の「JCJ沖縄」立ち上げから、やがて1年。年末に「リレー時評」の依頼があった。さっそく正月3日に、この稿を起こす。沖縄では年の初めに手掛けることを初興し(ハチウクシ)と言う。縁起ものですのでどうかよろしく。
 と書いたところで新年早々縁起でもないことが起きた。6日、伊計島の民家の数十メートル先に米軍ヘリが緊急不時着。8日には読谷村のリゾートホテル近くに別の米軍ヘリが緊急不時着した。

 米軍機の事故は枚挙にいとまがない。一昨年暮れ名護市の東海岸にオスプレイが墜落大破。オーストラリア沖で墜落した普天間基地所属のオスプレイは、その後も岩国基地や大分、奄美、石垣などの民間空港に緊急着陸。衆議院選公示翌日には高江の民間地で大型ヘリが墜落炎上している。
 去年暮れには普天間基地周辺の保育園にヘリの部品が落下。さらに近くの小学校校庭で体育の授業をしていた児童たちの十数メートル先に重さ約8キロの米軍ヘリの窓が落下し、衝撃で飛んだ小石で児童が軽傷を負った。

 それだけではない。米軍関係者による殺人事件や飲酒運転死亡事故も起きた。米軍も日本政府も沖縄を戦争の訓練場としか見ていない。1945年から憲法の蚊帳の外に放置され、時計の針が止まったままだと言っても過言ではあるまい。
 昨年1月、東京地方放送局の番組「ニュース女子」に端を発する「沖縄ヘイト」が表面化。BPOが問題視して審議入り。「重大な放送倫理違反があった」と異例の決定を下した。
 だが沖縄ヘイトは止まらない。「部品落下は作り話」と誹謗中傷が後を絶たない。米軍が非を認め謝罪したにもだ。正体を隠し暗闇から弓を放つこの国の人々。沖縄だからどんなに叩いても許されると言うのか。無知無理解無関心なのか、憎悪に満ちた確信犯なのか、「嫌沖縄」の底が抜けてしまったようだ。
 辺野古の海と陸では基地建設に抗議する人々に対して国家権力が暴力的に排除し、逮捕行為にまで及んでいる。

 沖縄は11月の知事選を頂点とした統一地方選の年。2月4日は辺野古新基地建設を争点とした名護市長選だ。基地建設に反対する現職対自公維新が推す基地容認派の新人の争い。自民は党と政府挙げてなだれ込む。「辺野古反対は堅持する」という公明は基地容認候補を担ぐ矛盾を露呈。実質基地押し付け役に回る。
 昨年2月のJCJ機関紙に米大統領と対峙する「ロイター」編集主幹の言葉があった。「われわれは最善を尽くして記者たちを擁護し、ニュース活動を続ける」「報道の現状を悲観してはならない」。その通りだ。

 私たちは悲観しない。沖縄の歴史に立てば、権力に踏みつけられた者の視点で民衆の声をすくい上げる努力を怠りはしない。沖縄の現実を発信し、沖縄から見えるこの国の姿を問い続けていく。

posted by JCJ at 10:51 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする