そんな声がいずれ世界から沸き起こるだろうと、本書を読んで確信した。日本はまさに「偽装の被爆国」である。「唯一の被爆国」という仮面の下で、安倍政権が核不拡散に逆行する行動を取っている実態を、綿密な取材をもとに論証する。
米国の「核先制不使用」に対する反対表明、核兵器禁止条約交渉への不参加、安易な原発の再稼働、47トンというプルトニウムの蓄積量、インドとの原子力協定、これらは一体何を意味するのか。世界が日本の核武装を警戒するのも当然である。
すべては「核の傘」や「核抑止」という日本政府が固執する幻想から始まる。「核を持てば強くなる」「核を持てば侵略の意図を抑止できる」という幻想である。
「核戦略」は、「相手も自分と同じように考える」─その前提をもとに成立する。「相互確証破壊」が良い例だ。しかし「同じように考えない」主体が核を持てば成立しなくなる。失うものがない勢力に「核の傘」や「核抑止」は通用しない。「核の傘」は「破れ傘」という「幻想」となる。
私の父は広島で原爆投下の惨状を、高射砲部隊の一員として目の当たりにした。しかし自分の見たことを一言も語らず、6年前に他界した。「非人道的」な核の惨状に、言葉を失ったからであろう。
「核戦力を背景にした恫喝と威嚇を続けるトランプに同調し、下手をすると、その強硬路線に加勢しているように映る」
著書の懸念に、私は完全に同調する。核の緊張が高まる今こそ、日本は仮面を脱ぎ捨てる時が来た。
(岩波書店1700円)
