2018年07月15日

【今週の風考計】7.15─米軍ヘリ飛来で1日29回も避難する異常

米軍オスプレイ14機が、16日から2週間、静岡県御殿場・東富士演習場で本格的な訓練を始める。この1カ月半ほど、首都圏で飛行訓練を行ってきたが、8月には東京・横田基地に常駐配備する期日が迫り、仕上げの訓練だという。
38℃という猛暑の上空を、この夏、オスプレイが三沢や岩国、沖縄へと我が物顔に飛ぶ。立てる騒音は65デシベルを超え、かつ低周波音に悩まされる毎日が続くのは目に見えている。

山口県・岩国基地では、米軍の空母艦載機など120機が厚木基地などから移駐してきた。その離着陸訓練がすさまじい。空母艦載機が4機編隊で広島・厳島神社に向けて飛ぶ。大声を出さないと会話が聞き取れない70デシベルの騒音が、昨年1年で894回、前年より268回も増えている。
さらに低空飛行訓練が追い打ちをかける。中国地方には「エリア567」や「ブラウンルート」と呼ばれる低空飛行訓練エリアとルートがある。広島の住宅地を、なんと上空150メートル以下で飛ぶ。その騒音は110デシベル。西日本豪雨で被害に遭われた人々の心胆を寒からしめ、さらに身をすくませる低空飛行、政府は即時禁止を米軍に申し入れよ。

沖縄での米軍機の事故もあとを絶たない。先月11日にもF15戦闘機が那覇市の沖合に墜落した。昨年12月に、米海兵隊CH53E大型輸送ヘリの部品や窓枠が落下した普天間第二小学校では、半年たっても、同型ヘリが騒音をまき散らしながら飛来する。
そのたびに監視員の指示で校庭から校舎に走って避難するという。なんと合計635回、多い時は1日29回。「45分の体育時間に3回も中断があったら授業は成り立たない」(琉球新報)。

米朝首脳会談の実現によって「北朝鮮の脅威」は遠のいた。もはや沖縄に米軍「基地」を置く根拠はない。沖縄を「基地」のくびきから解き放す絶好の時だ。(2018/7/15)
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2018年07月12日

《鳩山元首相インタビュー2》 国交正常化なしでは拉致解決せず 圧力一辺倒外交は破綻 東京五輪を対話のチャンスに=橋詰雅博

――日本人拉致問題の解決法は?

 トランプ大統領や韓国の文在演大統領に頼っていてはダメです。安倍晋三首相と金正恩委員長がお互い心を開く状態にならない限り、本音は出ません。ではどうすればいいのか。金委員長は「いつでも話し合いましょう」と言っているのだから、日朝会談を実現する。会談を通じて国交正常化に向けて話を進め、信頼を高める過程で、拉致問題をきちんと取り上げる。そうすれば明快な方向性が出てきます。

日本に分断の責任

 そもそも朝鮮半島の南北分断は、日本が半島を植民地支配(1910年から45年の35年間)したことに起因している。日本に分断の責任があります。世界はそういう立場から日本を見ている。韓国も北朝鮮も日本のおかげでこうなったという気持ちがある。国家の分断の歴史をつくった日本の責任は重い。お互い過去の歴史を冷静に見ながら拉致問題を話し合う。結局は、日朝国交正常化することが拉致問題の解決につながる。

――安倍首相の外交政策をどう評価していますか。

 安倍首相は、「大日本主義」すなわち日本を強い国家にしたいという願望がある。敵視する中国と北朝鮮の脅威論を高め世論を煽る一方で、日米同盟を強化し、自衛隊の増強と配備を拡大、自衛隊を海外派遣するため安保法制を成立させた。私は安倍首相が描く大日本主義に真っ向から反対です。武力による平和はあり得ない。中国も北朝鮮も日本に侵略する可能性はゼロです。しかし、とくに北朝鮮の脅威がなくなると自衛隊増強の理由などが成り立たないから、北朝鮮を悪者と決めつけ、「対話の時代は終わった」とか「最大限の圧力をかけ続ける」と経済制裁を含む圧力の強化というメッセージを発信している。諸問題を対話路線で解決を目指す世界の潮流から安倍外交はかけ離れている。

 南北首脳会談に端を発し中国、ロシア、アメリカが朝鮮半島の平和のため対話路線にのっている。支持率のアップを狙い拉致問題に取り組んでいるというポーズだけのPRはもう止めて、安倍首相は日朝会談に踏み込むべきです。

日中韓五輪会議を

――提唱する「東アジア共同体」構想にどんなプラスがありますか。

 この地域における経済の発展は重要だが、それ以上に不戦共同体≠構想でイメージしている。今までは北朝鮮はそこから抜けていた。米朝首脳会談によって、北朝鮮が不戦共同体に組み込める環境づくりの第一歩になった。ようやく方向性が見えてきた。

――2月の平昌冬季五輪に南北統一チームが参加し盛り上がった。20年の東京五輪、22年の北京冬季五輪に北朝鮮をどう組み込むか重要になってきますね。

 昨年11月末にヨーロッパでギリシャのパパンドレウ元首相と会ったとき、彼から「来年から4年間でアジアでは3回もオリンピックが開かれる。北朝鮮と対話するチャンス」とアドバイスされた。ギリシャはオリンピック発祥の地ですから五輪への思い入れが強いので、そういう言葉が出てきたのでしょう。私のおじぃちゃんの一郎が文部大臣とき、「スポーツ選手は、なみの外交官よりも外交官だ」と評価していたことをどこかの本で読んだことがある。米中関係の改善につながったピンポン外交=i1971年、名古屋市で開かれた世界卓球選手権に出場した中国選手が米国選手らを自国に招待)や今年の平昌五輪の成功を見ると、そう思います。日中韓の担当者レベル会議を設け、北朝鮮とどう協力するかなどを話し合い、平和の祭典に相応しい五輪にしてほしい。日本政府に動いてもらいたいですね。

人の命奪ったのに

――安倍首相夫妻が深く関与するモリカケ疑惑をどう思いますか。

 誰が見ても安倍首相はウソをついている。自身も分かっているけど、長く総理を続けたいから粘り腰を発揮している。私は失敗した人間だが、総理在任中、ウソは1回もついていない。それだけは言える。しかも森友学園問題では近畿財務局職員が自殺している。自殺者まで出ているのに総理を続けたいのか。人の命を奪ったという厳粛な事実をどう受け止めているのか。私なら、申し訳ないと毎日さいなまれる。潔く、総理を辞めるべきです。そうしないと日本の風土にとってよくない。子どもたちが大きくなっても、平気でウソをついてもいいという感情が頭の中に残ります。

 官僚も立身出世が目標だから官邸のいいなりです。国民不在の政治と行政に成り下がっている。こうした事態に陥らせた責任は、国民の信頼を失いかけているメディアと自己保身に走る与野党にもあります。

聞き手 橋詰雅博 河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年07月10日

《鳩山元首相インタビュー1》 米朝首脳会談 半島非核化へ第一歩 「ディール外交」功を奏す=橋詰雅博

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝会談は、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた具体策がなく、日本人拉致問題の前進もなかった。中身に乏しい会談だったが、歴史的な米朝首脳の対面は思わぬ成果を生み出し、米朝関係は改善に大きく踏み込んだ。東アジアの平和と安定を目指す「東アジア共同体」構想を唱える鳩山友紀夫元首相(71)は、本紙のインタビューに応じ、歴史的な米朝会談などについて語った。(橋詰雅博JCJ事務局長兼機関紙編集長)

米本土に攻撃可能

――米朝首脳会談をどう見ますか。

 会談に向かわせた大きな要因になったのは、北朝鮮が昨年11月に発射した大陸間弾道ミサイル「火星15号」(ICBM)の成功です。

 すでに核実験はうまくいっていたし、これでミサイルもアメリカ本土まで届くということが証明された。今までアメリカの核兵器やミサイルの威力におびえていた北朝鮮は、この成功でアメリカ本土を攻撃できる核弾頭搭載のミサイルを用意できたわけです。本当に届くかどうかわかりませんが、北朝鮮はアメリカと対等に交渉できると考えた。つまり自分たちも非核化を追求するが、アメリカも朝鮮半島から手を引いてほしいという交渉力を持つことで、非核化が現実的な意味をもつ出来事だったと思います。このことで、もしかしたら大きな動きが出てくると予測していたら、北朝鮮は翌年2月の平昌冬季五輪に参加し、アッという間に4月の南北首脳会談まで進展した。

 北朝鮮が金日成時代からほかのことを犠牲にしてまでずっと核・ミサイル開発を進めてきたのは、アメリカとの交渉能力を持つという一点だけだった。

一朝一夕は無理だ

――アメリカの政治状況の変化も要因に?

 戦争を仕掛け利益を求める軍産複合体にのるヒラリーが大統領だったら、米朝首脳は実現しなかったでしょう。トランプ大統領は軍産複合体と距離を置いている。アメリカファーストによって政治面でも経済面でも世界をリードしていくにはディール(取引)が必要とトランプ大統領は考えている。

 得意のディールで史上初の米朝会談をうまく乗り切れば、11月の中間選挙で勝てるし、2020年の大統領選での2期目の勝利を得られるという戦略を立てていたと思う。大統領がトランプだったから、アメリカも歴史的な会談のチャンスをつかむことができた。

――米国の方針「朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は実現できるのでしょうか。

 1回の首脳会談でCVIDの達成は無理です。完全な非核化は一朝一夕に行かない。首脳会談はこの先も開かれる。北朝鮮が対米交渉能力を持ったということは、朝鮮半島を核のない平和な状態にしたいという思いも北朝鮮にあるのは確かだ。アメリカと北朝鮮がどうやって核兵器や武力の両レベルを下げていくかが課題です。交渉は時間かけて段階的にステップを踏んで進めていくべきです。おそらく非核化にメドをつけるには数年かかるでしょう。

《鳩山元首相インタビュー2》(12日付)に続く

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年07月09日

≪お知らせ≫7・13講演会:自衛隊が戦争に征くとき─この危ない実態を抉る─

南スーダンの首都ジュバでは、何が起きていたのか。
隠蔽された活動の記録・日報を詳細にトレースし、
自衛隊のPKO活動が直面した戦場の実態を明かす。
日本を「戦争する国」へと駆り立てる
安倍政権の暴走に警鐘を乱打する!

講師:布施祐仁 氏(ジャーナリスト、「平和新聞」編集長)
略歴:1976年、東京都生まれ。『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)でJCJ賞を受賞。著書に『日報隠蔽─南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(集英社)など。
日時:7月13日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 ☎ 03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2018年07月08日

【今週の風考計】7.8─貿易戦争と「スムート・ホーリー法」の教訓

<貿易戦争>が深刻になっている。トランプ大統領が踏み切った中国に対する制裁関税は、年間で340億ドル(約3.7兆円)、中国も負けじと米国に同規模の報復関税をかける選択に踏み切った。
これだけで済まない。さらにトランプ大統領は、20日ごろを視野に、第2弾の160億ドル(約1.8兆円)分の追加制裁を発動する。ゆくゆくは5000億ドル(約55兆円)規模にまで追加制裁を拡大する方針だ。

こうなれば中国ならずとも、世界各国が反発するのは必定である。WTOルールを無視して制裁に走るトランプ政権の「ディール」外交が、報復が報復を呼び、中国だけでなく、EUやカナダ、ロシアといった国からまで反発され、報復関税に踏み切らざるを得ない誘引剤をバラ撒いている。
11月の中間選挙、2年後の大統領選での再選を視野に、自己チュウ極まりない経済政策は、「自分の足をピストルで撃つ」(寺島実郎)結果になるのは目に見えている。共和党のトランプ大統領は、まず自国の歴史の教訓に学ぶがよい。

浜矩子氏が指摘しているのだが、「スムート・ホーリー法」である。1930年に米国の共和党フーバー政権下で成立した関税法である。1929年に始まった大恐慌にどう対処するか、フーバー大統領は、国内産業保護のため、農作物など2万品目の輸入品に、平均50%引き上げの関税を課した。これに対し多くの国が報復措置として米国商品に高い関税をかけたため、ますます世界貿易が停滞し、あの大恐慌をいっそう深刻化させたのである。
4年後には民主党のルーズベルト大統領が、この法を葬る「互恵通商協定」を成立させた。すなわち相互に市場を開放し、今あるところのWTOルールに従って貿易はしましょう、ということである。

教訓に学ばざる者は、木から落ちる猿の如し。(2018/7/8)
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2018年07月06日

≪リレー時評≫ ひとり出版社から本の大切さを学ぶ=守屋龍一(JCJ代表委員)

  絵本『花ばぁば』(クォン・ユンドク絵/文)が、4月末に出版された。日本軍「慰安婦」にされた韓国人女性シムさんの物語である。彼女の好きだった花を、著者は水彩タッチで描き、全42ページを使って展開する〈恐ろしい話〉の絵の周囲に、今は亡き彼女の霊を癒すように散りばめている。
  声高に叫ぶのでなく、淡い色の滲む絵が、戦時性暴力に対する深い洞察へと昇華されていく。読後、熱き想いに浸された。
 この絵本を出版した、ひとり出版社「ころから」(東京都北区赤羽)を訪ねた。代表の木瀬貴吉さんは、
  「ある出版社でとん挫した翻訳刊行を、うちで手掛けることになったんです。だが多額な製作費の捻出に困り、今年の1月、製作費の一部をクラウド・ファンディングで募ったところ、開始から4日目で目標額95万円を突破、最終的には202人188万円の資金が寄せられた。お蔵入りの危機を救ったのは、日本の良心ある人達でした」
  と、述懐する。

  木瀬さんは、ピーズボードの事務局で15年、その後、出版社で3年修行し、2013年1月に「ころから」を起ちあげた。〈コロから車輪へ〉と発展するよう願っての命名という。
  2014年3月11日刊の加藤直樹『九月、東京の路上で─1923年関東大震災ジェノサイドの残響』が評判となり、今や6刷まできた。
  木瀬さんは「直に介入する官庁がない出版はフェアな業界、まず企画で勝負、資本の大きさではない」と言うものの、「『花ばぁば』を置いてくれる書店が極めて少ない」事態には、眉をしかめる。
  始業して5年、21点刊行、順調に進級している。

  一方、4月末、ひとり出版社「リベルタ出版」(東京都千代田区猿楽町)が、31年の出版活動に幕を下ろした。このほど代表・田悟恒雄さんの慰労を兼ねた卒業式≠ェ、後楽園「涵徳亭」で賑やかに行われた。
  田悟さんは大月書店の編集者を経て、イタリアのマルクス主義思想家アントニオ・グラムシ『獄中ノート』(校訂版)を翻訳刊行したく、1987年9月に創業。社名もイタリア語の自由=リベルタからとっている。
  だが最初に刊行したのは、前年に起きたチェルノブイリ原発事故がテーマの、ウラジーミル・グーバレフ『石棺─チェルノブイリの黙示録』。以後、年間ほぼ6冊、原発・環境・メディアを柱に約210点を刊行してきた。田悟さんは言う。
  「他人に迷惑をかけず、本カバーのPP貼りを止めるなど環境に負荷をかけず、ひとりでどこまでできるか、これを目標にやってきた」。さらに「出版とは自己実現の手段であり、人と人との出会いを媒介する重要な仕事。そこから生み出される豊かな関係は、カネで贖えるものではない」と。
  ひとり出版社の2人の歩みを聞かせていただくと、出版の大切さが身に染みる。
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2018年07月05日

≪おすすめ本≫ 白井 聰『国体論 菊と星条旗 』菊と星条旗の結合を通して戦後の対米隷属・日本の「国体」が誕生=鈴木 耕(編集者)

 正直に言って、私は「国体」など考えたことがなかった。敗戦と同時に消え失せたものとばかり思っていた。天皇が「統帥権」を喪失した段階で、国体は「国民体育大会」の略称に萎んだはずだった。ところが本書を読んで考え込んでしまった。
 現代日本の対米隷属のあまりの惨状を読み解くには、ピッタリな言葉がこれだったのだ。なぜ日本がかくまで星条旗に跪くのか。それを誰も不思議に思わぬばかりか、沖縄の米軍基地強化にみられるように、なぜ次々に貢物を差し出すのか。「天皇」の代替に「米国」を数式に代入してみれば、その疑問は解けていく。だが事は単純じゃない。

 天皇自身が、現在の政権(安倍と言い換えても可)への闘争宣言ともいえる「お言葉」を、なぜ発しなければならなかったか、解読が鮮やかだ。
 明治という近代国家の形成期を過ぎ、天皇と臣民という疑似家族がつくられ、やがてそれは「国体」として絶対服従のシステムの構築に至る。統治機能の絶対化である。
 ところが敗戦により、もろくも崩れ去る。「第四章 菊と星条旗の結合」で、「戦後の国体の起源」という新しい視座が示される。この辺りから、私は目が離せなくなった。

 つまり「アメリカの日本」としての「戦後の国体」という選択こそが、この異様なほどの対米隷属日本の在り様に、そしてついに「発狂した奴隷たち」と、為政側にある人達への痛烈な批判に辿り着く。いま憲法9条と日米安保体制の狭間の矛盾が火を吹きだしている。
(集英社新書940円)
「国体論」.jpg
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2018年07月01日

【今週の風考計】7.1─アンダルシアからカタルーニャを旅して

◆中道左派のサンチェス政権が誕生して間もないスペインを、<キホーテと女サンチョ>さながらに、妻と共に10日ほど旅してまわった。

◆マドリードではソフィア王妃芸術センターで、パブロ・ピカソの「ゲルニカ」に再会した。もう防弾ガラスはない。原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)を思い浮かべ、フランコ将軍の意を汲んだドイツ軍の空爆とニューヨーク9・11同時多発テロ、そして米国のイラク空爆への道筋をたどると、おもわず緊張が走った。決して過去のことではない。

◆足を延ばしてセゴビアへ。ローマ時代に作られた水道橋の精巧さに驚き、アルカサール城に至る道の脇に立つヒマラヤ杉のてっぺんで、コウノトリが子育てに懸命だ。続いてトレドのカテドラルを見学し、サント・トメ教会のエル・グレコ「オルガス伯爵の埋葬」を鑑賞する。
◆ラマンチャ地方を抜けてアンダルシアへ。この地にイスラム帝国が残した文化遺産は計り知れない。コルドバのメスキータにあるアーチ状の柱列、グラナダのアルハンブラ宮殿内に施されたアラベスク模様にはドキモを抜かれた。
◆その途次、渓谷の上にあるロンダの街へも立ち寄った。W杯サッカー・日本対セネガル戦を、ホテルのロビーで観る。引き分けの結果に大満足し、ソコーロ教会の前にある広場へ出かけ、赤ワインを飲みつつ食べたオックステールの煮込みが、これまた格別。

◆バレンシア港での難民受け入れの様子を報ずるTVニュースを見ながら、一足飛びにバルセロナへ。ここでは風も爽やかに連日38℃を超す気温が気にならない。2日かけてガウディが手掛けたカサミラやグエル公園、サグラダ・ファミリアをめぐって歩く。
◆目立つのが通りの街並みに沿って上に伸びる居住階のベランダにかけられた、カタルーニャ独立を標榜する「アスタラーダ」の旗である。黄色いリボンの旗も多い。前ラホイ政権の手によって収監された、カタルーニャ州政府の幹部・活動家を支援するシンボルだという。
◆昨年10月、独立への住民投票を進めた、同州のカルレス・プッチダモン前首相と前閣僚5人は、逮捕を逃れて亡命、あるいはドイツなどで身柄拘束されている。スペインに残った4閣僚は拘留されており、合わせて25人が反乱罪や国家反逆罪などの容疑で起訴されている。<LLIBERTAT PRESOS POLITICS!>「政治犯を解放せよ」と書かれた旗が目立つ。カタルーニャ音楽堂の前の3階ベランダにも掲げられている。

◆この音楽堂、ガウディと同時代に活躍したドメネク・イ・モンタネールが建築した。この地に生まれたパブロ・カザルスも演奏した。現在でもコンサートホールとして使われ、1週間前にはサイモン・ラトルがベルリンフィルを指揮している。近くにピカソ美術館もある。スペイン内戦でくくれば、チリの詩人パブロ・ネルーダを加えて<3人のパブロ>がそろう。
◆そして今日、W杯サッカー決勝トーナメント、スペイン対ロシア戦が始まる。まさにイベリア半島全体が熱狂に包まれている。(2018/7/1)
posted by JCJ at 17:10 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする