2018年08月30日

名古屋マンション建設反対で無罪確定 国に賠償求め提訴=加藤剛

 名古屋市瑞穂区白竜町のマンション建設反対運動で現場監督に暴力をふるったとして逮捕・起訴され、裁判で無罪が確定した同町の薬剤師奥田恭正(やすまさ)さんが7月24日、国・検察庁と愛知県(警察本部)に計1100万円の賠償を求めるともに、捜査で得た指紋やDNAなど個人情報の抹消を要求する訴訟を名古屋地方裁判所に起した。
 奥田さんは同時に現場監督や建設会社に対しても「あいまいな証言などで犯人扱いされ迷惑を蒙った」として計1100万円の損害賠償を求めて民事訴訟も提起した。

 奥田さんはマンション建設に反対する住民運動の代表で、一昨年10月「現場監督を両手で突き飛ばした」という暴行の容疑で逮捕・起訴された。
 しかし名古屋地裁は今年2月「防犯カメラの映像など警察側の証拠でも暴力行為は立証されず、現場監督の証言も二転三転あいまいで信用できない」として奥田さんに無罪を言い渡し、検察は控訴せず無罪判決が確定した。

 奥田さんは訴状の中で国家賠償を請求する理由として、警察が防犯カメラの動画を見せずに「映像に暴力場面が写っている」と言って自白を強要したこと、逃亡の恐れがないのに十五日間も勾留したことなどの不当な捜査を指摘し、無罪確定までの一年四か月の間容疑者・被告人の立場に立たされ「物心両面で多大な損害をこうむった」と主張した。

 奥田さんは訴状を提出したあと司法記者クラブで記者会見し次のように語った。
「無罪は確定したがこのままでは納得できない。高層マンションの建設に反対し抗議しに行ったら逮捕され、薬局が家宅捜索された。その後も拘留が続き、一年余の長期にわたり容疑者、被告の立場に立たされ辛い思いをした。無罪が確定したあとも警察は『あれは正当な捜査だった』と言い、謝罪の一言もない。現場監督は『このままでは自分がウソをついたことになるから控訴してほしい』と言って検察庁に控訴の要請まで行った。無実の市民を犯人に仕立てるデッチ上げは許されない」
 奥田さんは提訴の理由をこのように説明し、最後に「裁判をしている間に工事は進み一五階建てのマンションは出来てしまった。しかし環境を守る運動はこれからが本番だ」と強調した。

加藤 剛(東海支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
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2018年08月29日

《お知らせ》 JCJ全国交流集会 10月に 熊本、大分、福岡の被災地まわる=杉山正隆

 今年7月の西日本豪雨で岡山、広島、愛媛、福岡の各県などで大きな被害が出た災害列島・日本。東海・東南海・南海大地震が想定されているが、予想を超えた豪雨や巨大台風などにいつ襲われてもおかしくない時代だ。

 熊本・大分大地震の爪痕が残る熊本県益城町や南阿蘇村、大分県日田市。そして、集中豪雨で山肌が滑り流れ多くの住民が犠牲になった福岡県朝倉市や東峰村などを直接視て住民や医師・歯科医師、地元記者たちと交流する全国交流集会を企画した(変更の可能性あり)。

被災地住民ら交流
 日常生活がもろくも崩れ去った背景には「脆弱な社会保障」という現実があり、とりわけ平成の大合併などで見捨てられた「過疎地」の地域では被害が拡大した。

 安倍政権は「自助・公助・公助」論を強調する。これは、「できるだけ自分で頑張り、どうしてもダメな場合は地域で助けろ。それでも難しい場合は公が助けるが、国の援助は最低限に」とのものだ。せっかく立てたマイホームのローンが残っているのに、さらに金を借りざるを得ない「二重ローン」など、「自助」では立ち直れないケースが多い。災害こそ、「公助」が力を発揮すべきだ。熊本では今も3万人が不自由な仮説住宅での生活を余儀なくされる。

 今年度の交流集会では、激しい揺れで地面に巨大なひびが入った阿蘇周辺や強行されつつある「立野ダム」建設予定地などを地域住民とともに取材するほか、地域医療や生活の大きな柱となってきた阿蘇立野病院や阿蘇医療センターでも震災当時から今までの奮闘ぶりを院長から話してもらう。

 また、日田市では同市から東峰村に至るまで広く地域医療に奮闘する明治45年開業の「井上鶴川堂」の院長から話を聞くほか、東峰村では、村民がディレクター、アナウンサーを務め、豪雨災害の際も被害状況や住民情報をきめ細かく報道し命を守った「東峰テレビ」の岸本晃総合プロデューサーから紹介してもらう。

地元記者の裏話も
 宿舎の南阿蘇村グリーンピア南阿蘇と原鶴温泉ビューホテル平成はどちらも天然温泉と地元の食材が自慢。熊本県民テレビの城戸涼子ディレクター、毎日新聞熊本支局の福岡賢正記者や、松本久医師、山口彩子、月股博通歯科医師らとも交流。阪神大震災に自らも被災し東日本大震災や西日本豪雨などでも活躍した兵庫県の広川恵一医師からも助言してもらう。

10月19日(金)午前11時ころJR熊本駅、正午ころ熊本空港のいずれかで集合。益城町〜被害現場・仮設住宅等〜阿蘇立野病院〜南阿蘇村。グリーンピア南阿蘇で記者や医師らと交流。
20日(土)阿蘇医療センター〜阿蘇神社〜日田市「井上鶴川堂」〜東峰テレビ〜朝倉市。原鶴温泉ビューホテル平成。
21日(日)朝食後、原鶴温泉で解散、の2泊3日。最寄りバス停まで送迎。(博多駅や福岡空港までバスで1時間)
費用:夕朝食込み予価3万7000円。飲み物代等は別。

杉山正隆

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
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2018年08月28日

《リアル北朝鮮》 「拉致中毒」と日本を非難 過去の謝罪や賠償など要求=文聖姫

 日本人男性が北朝鮮で拘束されたとのニュースが伝えられたのは11日未明だ。男性は滋賀県出身の30代で職業は映像クリエーターだとされる。欧州系の旅行会社が組んだツアーで北朝鮮に入国したらしい。西海岸の南浦(ナムポ)を訪れていて拘束された模様だ。スパイ容疑をかけられた可能性もあると複数のマスコミが伝えている。

 菅義偉官房長官は15日、閣議後の記者会見で「事柄の性質上、答えることは控えたい。いずれにせよ日本としては、拉致問題を含む北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的解決に向けて主体的に取り組んでいかなければならないとの立場は変わっていない」と述べた。NHKの報道によると、政府は情報の確認を急ぐとともに、早期の解放を求めている模様だ。だが、いまのところ北朝鮮側からの発表は何もない。

 米朝、南北、中朝の各首脳会談が実現し、朝鮮半島を取り巻く情勢が大きく転換するなか、「蚊帳の外」に置かれた感のある日本は、日朝首脳会談を模索するが、進展はない。そんななかで起きた日本人拘束。日朝関係はさらに不透明さを増している。

 そうした中、北朝鮮のマスコミは14日と15日、立て続けに日本を非難する論評を出した。特に労働新聞15日付は、「すでにすべてが解決済みの拉致問題について騒いでいる」と指摘。「拉致中毒」「拉致内閣」などの言葉を使って、拉致問題解決に向けた日朝会談を模索する日本政府をけん制している。論評は、日本がすべきは、過去の謝罪と賠償、そして過ちを二度と繰り返さないことを約束し実践に移すことだとも主張している。

 時期を同じくして14日には、日本軍慰安婦問題や強制連行問題を追及する団体が調査報告書を発表し、戦前日本軍「慰安所」があったとする日本人女性の証言を入手し、北部の羅先(ラソン)市先鋒(ソンボン)地区で調査を実施したと明らかにした。

文聖姫(ジャーナリスト・博士[東大])

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
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2018年08月26日

【今週の風考計】8.26─放射性物質トリチウム水90万トンの放流

福島第2原発の停止中4基も、すべて廃炉とする決定がなされて2カ月半が経つ。事故を起こした福島第1原発の全6基と合わせ、これで10基すべてが廃炉となる。
いよいよ溶け落ちたデブリの取り出しや汚染水の処理、廃棄物の受け入れ先など、緊急で困難な課題に立ち向かわなければならない。

福島第1原発では約106万トンの汚染水がタンクに保管され、もはや限界に近い。そのうち90万トンは放射性物質の濃度を下げる処理が進み、その放射性物質トリチウムを含む水を、さらに希釈して海への放流、水蒸気放出、地下層への注入など、5つの方法で処理したいと検討している。
その公聴会が今月末、福島・郡山・東京で開かれる。国の基準では1リットルあたり6万ベクレルの濃度に薄めれば海に流すことができる。いまも稼働している日本の原発や再処理工場から、現実に排出されている。原子力規制委員会は健康への影響を含め、海洋放出に問題はないという。

だがトリチウムは放射性物質であるのは紛れもない。にもかかわらず人間と生物への影響が過小評価され続けてきたのではないか。福島県漁連は「トリチウム水の海洋放出には断固反対する」と抗議、海洋放出を絶対に行わないよう強く求めている。
未曾有の被害をもたらした福島原発事故、いまだ「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。くわえて多くの住民が避難生活を強いられ、放射能汚染による長期的な低線量被曝にさらされている。

政府と東電はトリチウム水を海に放流し、空いたタンクの跡地に、取り出したデブリを保管する場所を確保したいと考えている。10月には福島県知事選がある。様子見が続く。(2018/8/26)

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2018年08月25日

《JCJ沖縄声明》差別と人権侵害許さず 辛淑玉さんと連帯する

 2017年1月、東京MX テレビで放送された「ニュース女子」問題は、放送という公共資財を使った人権侵害発言や事実に基づかない報道、ヘイトスピーチの影響の大きさ、被害の甚大さを浮き彫りにした。

 放送倫理・番組向上機構(BPO)は、この番組による東村高江の米軍ヘリパッド建設抗議活動の報じ方について「重大な放送倫理違反があった」とし、また、人権団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉さんへの名誉棄損を認めた。にもかかわらず同番組を制作するDHCテレビジョンは、同問題について何ら反省することなく問題発覚後も一部の地方局やインターネット上で放送が続いている。重大な放送上の問題が指摘された放送回も、今この瞬間ネット上で動画再生され続けている。

 BPO の指摘を受け、放送した東京MX は2018年7月20日ようやく、辛淑玉さんへ謝罪したが、制作会社のDHC 側が問題を認めないまま放送を続けているという現状をみれば、「ニュース女子」問題はまだ終わっていない。

 同番組の放送以降、ネット上には辛淑玉さんの誹謗中傷が広がり、「殺せ」などの発言が飛び交っている。辛淑玉さんは放送後、命の危険を感じ、「事実上の亡命」としてドイツに移住を余儀なくされた。差別やヘイト思想は常に連鎖することで、過激さを増していく。その種をまいた同番組の責任は重い。

 それにもかかわらず、DHC 側は、これまで番組の正当性に終始。また、番組内で辛淑玉さん差別的な発言を繰り返したジャーナリストやコメンテーターもこの問題について沈黙したまま、同番組やほかの公共放送に出演を続けている。その結果、「ニュース女子」が社会に投げた差別とヘイトは、拡散され続けているのである。

 辛淑玉さんは7月31日、「ニュース女子」における人権侵害について、制作したDHC テレビジョンと司会の長谷川幸洋元東京新聞論説委員を名誉棄損で提訴した。DHC 側が今も垂れ流し続ける、人権侵害が認定された放送回の差し止め、謝罪広告の掲載を求めた。提訴は、辛淑玉さん自身の名誉回復と生活を取り戻すための闘いであると同時に、同番組によって同じく傷つけられ辱められたヘリパッド建設に抗議する沖縄の住民ら、在日コリアンや中国人の人権を回復する闘いでもある。

 新聞とテレビ報道に携わる者として、私たちももはや、放送の責任を放置し続けるDHC 側の態度を看過できない。辛淑玉さんの勇気ある告発に連なり、共に名誉と人権の回復を取り戻すため闘うことをここに表明する。

 2018年8月1日
日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ 沖縄)
世話人 米倉 外昭
松元 剛
与那原 良彦
黒島 美奈子
金城 正洋
次呂久 勲

posted by JCJ at 11:13 | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月19日

【今週の風考計】8.19─「トルコ危機」を通して日銀政策を問う!

23 日にトランプ政権は中国への制裁関税(160 億ドル・1兆7600億円規模)を発動する。第2弾である。中国も対抗して報復関税措置に踏み切る。米中貿易戦争は激化する一方だ。
1週間ほど前に、トランプ政権はトルコに経済制裁を加えた。トルコは米国製品に関税をかける報復措置を取り、泥沼化し始めている。

いま米国の労働市況は好調を続け、インフレ率は上昇、7回実施したドル金利引き上げも、さらに年末に向けて順調なテンポですすめる方針だという。
その余波が新興国を襲い、トルコを始めアルゼンチンや南アランドでのドル売り・資本流出が止まず、自国通貨の急激な値下がりを招いている。原因は新興国に流れ込んだ大量のドルが引き揚げられ、今度は投資マネーとなって米国へ還流しているところにある。
とりわけ「トルコ通貨危機」は深刻である。トルコリラは年初から40%の下落、物価は4カ月足らずで5・6%も上昇した。世界経済への悪い連鎖波及が懸念されている。

その激動のさなか、23日から米国ワイオミング州で「ジャクソンホール会議」が開催される。主要国の中央銀行総裁らが、世界の金融政策について討議する。米国のパウエルFRB議長や日銀の黒田東彦総裁も参加する。はたして黒田総裁は、日本の金融政策について、どのような発言をするのか。
日銀が保有する国債残高は420兆円、全体に占める割合は44%でトップ。さらに市場から上場投資信託(ETF)を年間6兆円の枠で買い入れている。まさに株価を下支えしているのだ。日銀管理そのものだ。これが進めば進むほど、市場経済の健全な発展は見通せなくなり、疲弊していく。

異次元の金融緩和政策の破たんは、もう明白だ。しかし金利引き上げを図れば、保有国債の利息受け取り分が減り、当座預金の利息支払費いが増える “逆ざや”になりかねない。仮に1%の利上げをすれば、数年で日銀の自己資本8兆円を食い潰してしまう。このジレンマ、いかに「出口」を見つけるか、世界が注目している。(2018/8/19)

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2018年08月16日

《支部リポート》 関西 6・18大阪北部地震 女児の死はやりきれない=井上喜雄

6月18日朝7時53分 どんと突き上げるような振動を伴う揺れが起こり直後にあちこちの携帯電話に緊急警報が流れ、緊急放送も地震を告げた。直下型地震のため揺れは事前に観測できず、警報は揺れの後だった。緊急警報も直下型の場合、役に立たない。

京阪神の在住者は1995年の阪神大震災の大きな揺れを経験している。今回はその時と比べれば揺れも小さく時間も短く感じた。(事実マグニチュードの数値は低かった)怖かったという感想もあまり聞かない。

ただ震源地は大阪北部(高槻・茨木市)で、このあたりにはいくつも断層帯が存在するとされており、熊本のようにこの地震の影響で近接する断層が連動したらとの小さな恐怖が1週間ほど続いた。

市民の多くが出勤前という時間帯のため大阪市内での人的被害は極めて少なく、壁に亀裂が入った、食器棚や本棚が倒れるなどの被害はあった。

死者は大阪市と震源に近い高槻市および茨木市で発生しており、ブロック塀の倒壊や家具が倒れたことによる圧死だった。高いブロック塀の危険性が、犠牲になった女子児童の死によって告発されたのがやりきれない。

結局、死者5名、負傷者は近畿2府5県で423名(うち重傷者10名)、住家の全壊3棟、半壊19棟、一部破損10,802棟だった。火災発生件数は大阪府と兵庫県で8件と少なく、阪神大震災のような直後に大出火の二の舞は避けられた。

JR在来線や私鉄各線、大阪地下鉄など鉄道は8時間以上ストップし帰宅時間帯までの復旧がならず、帰宅困難者が多く発生した。新淀川大橋を徒歩で渡り帰宅する人達の途切れない様子がTV中継され、物的損害以外の時間的被害の膨大さが浮き彫りにされた。

鉄道各社は自動改札の普及など以前と比べると大幅に人員が減っており災害が起こると復旧するにはかなりの時間を要する様子だ。

揺れの大きかった地域のスーパーやコンビニから水、パン、インスタント麺などがあっという間になくなっていたのは説明するまでもない。

井上喜雄(のぶお)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
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2018年08月15日

《リアル北朝鮮》 金委員長 経済停滞に激怒 幹部の責任を追及=文聖姫

  最近、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は機嫌が悪い。

 国営・朝鮮中央通信が17日に伝えたところによると、咸鏡北道の清津カバン工場や漁郎川発電所建設現場を現地指導した際、生産が滞っている状況や建設が進んでいない状況を厳しく叱責している。

 たとえば、漁郎川発電所では、内閣の責任者がここ何年間ダム建設現場に一度も現れていないとの報告を受けて激怒。「発電所建設をする気があるのかないのか」「なぜここに至るまで内閣は何の対策も取らなかったのか」「現場に来なければ実態が分からないし、実態が分からなければ対策を立てようがないだろう」などと内閣の態度を批判した。

 清津カバン工場でも怒りが爆発。「道党委員会は形式的に働いている」「党の方針を受け止め執行する態度がなっていない」「党の政策を貫徹するために懸命に取り組んで闘うという仕事の姿勢がなっていない」などと指摘した。

 金日成、金正日時代にも指導者が現場の状況を厳しく叱責した場面はあっただろう。ただ、このように表に出てくることはあまりなかった。こうした報道は労働新聞などを通じて国内の人々に浸透するだけでなく、朝鮮中央通信などを通じて海外の人々にも広く知れ渡る。金委員長はそのことも想定して、こうした報道を流させているのではないか。党中央委員会宣伝扇動部で第一副部長を務める妹の金与正氏の指示かもしれない。

 金委員長は、内閣や道党委員会の責任を追及していくことも明言した。漁郎川発電所では、「党中央委員会は内閣と省、中央機関の無責任で無能力な活動態度を厳しい目で注視してい

る」と警告。  

清津カバン工場では、カバン工場を建設した当時に道党委員長だった人物と党中央委員会の当該部署の活動を全面検討し、厳しく問責し調査するよう指示した。

文聖姫(ジャーナリスト・博士[東大])

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
posted by JCJ at 14:54 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《ワールドウォッチ》米覇権の放棄目指すトランプ=伊藤力司

 1年半前の就任以来トランプ米大統領の対外政策展開は世界を驚かせ、反発を呼んできた。同大統領は就任早々、TPP(環太平洋連携協定)や地球温暖化防止のパリ協定から米国を離脱させ、今年5月には安保理常任理事国ら6カ国が苦心の末に結んだイランとの核合意から米国を一方的に離脱させた。
 
 これらの行いの目的は何か?それは第2次大戦後アメリカが担ってきた世界的覇権を放棄することではあるまいか。東西冷戦時代に米覇権の及ぶ範囲は自由世界だけだったが、1991年のソ連崩壊以後その範囲は全世界に及んだ。以来27年、世界一の軍事大国であり世界一の経済大国であるアメリカも、世界的覇権の維持にくたびれてきたようだ。
 
 今世紀初頭の8年間を担ったブッシュ政権がアフガン戦争とイラク戦争を始めたのは、彼らなりに覇権を護るためだったろうが、結果的にはアメリカの覇権を大きく傷つけた。
 
 アメリカの覇権は「自由」と「民主主義」を表看板にしてきたが、アフガン戦争とイラク戦争、それにシリア内戦介入がもたらした膨大な殺戮と破壊は「自由」と「民主主義」の美名を大きく傷つけた。
 
 トランプ大統領としては、化けの皮がはがれてきた「アメリカの覇権」より、彼の篤い支持層である白人労働者たちの「俺たちにまともな職と賃金を」という訴えを重視する。こうしたトランプ流反覇権政策に反対しているのが民主党と共和党の旧主流派である。
 
 NYタイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビなどリベラル系メディアは総じて大統領に批判的だ。CIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)、司法省など旧来の権力機関もそうだ。アメリカ権力の中枢と言われる軍産複合体やウォール街の金融資本も反対だ。
 
 だからトランプ流の脱覇権政策もジグザグ・コースをたどらざるを得ない。この間、世界的覇権をひそかに狙っているのが中国だ。毛沢東主席はかつて「中国は覇権を求めない」と宣言、現在の習近平主席も同じセリフを発している。しかし世界第2の経済大国であり、年々2桁の国防予算増額を続けている中国は、遠からずアメリカを追い越す。とすれば、やがては中国が世界の覇権を握る日が来るかもしれないのだ。

posted by JCJ at 14:32 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月12日

【今週の風考計】8.12─沖縄の民意を一蹴する安倍三選亡者たち

翁長雄志・沖縄県知事のご逝去を悼み、心からご冥福をお祈りします。11日の新基地建設反対に集まった7万人の参加者とともに、その遺志を本土でも受け継ぎたい。
それにしても、先週の1週間、安倍首相の言動や振る舞いには、首をかしげるどころか、思考回路まで疑いたくなることばかりだ。

6日、5万人が参列した広島の平和祈念式典で、「唯一の戦争被曝国」である日本の安倍首相は、世界の願いである核兵器禁止条約には一言もふれず、核保有国と非核保有国の「橋渡し役」を務めると、従来の言葉を繰り返し、被爆者の願いを一蹴した。

8日には、俳優の津川雅彦氏が今月4日、心不全のため亡くなったのを受けて、わざわざ夜に官邸で会見を開き、極めて異例な “お悔やみ”を表明した。彼の業績を天まで持ちあげ、かつ会見の様子を首相官邸のHPに動画で公開するほどだ。
総理大臣として“お悔やみ”のコメントを首相官邸HPで公表するのは、国内外の災害・テロ発生時や、海外の元首・首相などの要人、国内の総理経験者の逝去時に限られる。津川氏は該当しないが、芸能界きっての安倍応援団のひとり。かつ特攻隊礼賛や侵略戦争の美化、徴兵制の復活などを主張してきた。
こうした自分の“お友だち”の死には、特別なかたちで弔意を表する異常さ。そんな総理大臣が、かつていただろうか。

9日、「原爆の日」を迎えた長崎市の平和式典で、田上富久市長は、日本政府に核兵器禁止条約に賛同し、世界を非核化に導く道義的責任を果たすことを求める<長崎平和宣言>を読みあげた。アントニオ・グテレス国連総長も賛同している。しかし安倍首相は、ほとんど広島のスピーチを“コピペ”した、空疎な使い回し原稿を読みあげただけ。

その午後、前日8日に急逝した沖縄の翁長知事に対し「沖縄発展のために尽くされた貢献に対し、敬意を表したい」と述べ、辺野古の新基地建設については触れず、そっけない“お悔やみ”でお茶を濁す。“お友だち”でないと、こうも粗末な扱いか。
安室奈美恵さんがホームページに綴った翁長さんへの弔意は、多くの人の心を打つ。Kiroroの金城綾乃さんや宮本亜門さんもツイッターで、沖縄の人々のために最期まで尽くした翁長知事の仕事に感謝の言葉を書いている。この落差を見るにつけ、意見の異なる人であれ、その人へのリスペクトを持たない安倍首相─その総裁3選に向け雪崩を打つ政治家たちの屈服ぶりには呆れる。

11日、沖縄での市民集会など目もくれず、またも安倍首相は昭恵夫人ともども、全日、地元の山口県を回り三選の票固めに躍起。9月21日投票での圧勝を画策する。翁長知事の急逝で知事選の投票日も23日ごろといわれる。安倍三選などどうでもいい。まず翁長知事の遺志を継ぐ知事を当選させたい。(2018/8/12)
posted by JCJ at 14:48 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月09日

≪おすすめ本≫ 本間龍・南部義典『広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM』─自民党と電通の密接な関係が、「改憲」への起爆材となる危険!=坂本陸郎(JCJ広告支部)

 改憲を目指す「国民投票法」の欠陥が、対談によって暴かれる。南部氏は、かつて民主党の議員秘書として国民投票法の作成に深く関わってきた。本間氏はプロパガンダ広告に詳しい。

 「国民投票法」をめぐる二人の対話が興味深い。当時、民主党は「闊達な言論空間」の創成を主張した。できあがったのが「投票日前14日以後のCM」のみを禁止するという国民投票法だった。
 それも「私は賛成(反対)します」などのCMは規制外にする抜け道を残していた。これでは公平どころか政党助成金で潤う自民党の宣伝が、他を圧してテレビ画面を埋め尽くすことにもなりかねない。

 多くのヨーロッパ諸国では、国民投票の際のCMは禁止している。本間氏も国民投票発議後のCM禁止を提案している。
 本著のメインテーマは自民党と電通との密接な関係である。自民党の広告を一手に扱う電通にとって、国民投票はまたとない儲け口であり、その広告宣伝費は膨大な企業収益となる。
 一手受注となれば、あらゆる媒体で「電通専用枠」がものを言う。とりわけ地方局に対する電通の支配力は圧倒的である。自民党がスポンサーとなれば、メデイア各社ではいっそう営業優先となり政権批判の報道は手控えられるだろう。

 今国会では国民投票法の上程が見送られたとはいえ、9条改憲は自民党結党以来の党是である。2000年に向けて、燃やす並々ならぬ執念は軽視できない。本著は数々の事例を挙げて警鐘を鳴らす。広告に依存するメデイアの経営が、ジャーナリズムに与える影響に注目したい。
(集英社新書720円)
「広告が憲法を殺す日」.png
posted by JCJ at 11:34 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月05日

【今週の風考計】8.5─<命の美ら海>に米軍滑走路はいらない

いま辺野古シュワブの海岸には、これまでにもまして高い怒りの波が、打ち寄せている。4日には抗議船8隻・カヌー約40艇が、海上から<美ら海を殺すな>の声をあげている。

沖縄県・翁長知事が、シュワブ沿岸の軟弱地盤や活断層の存在を指摘し、また環境保全の対策が十分でないことを挙げ「辺野古埋め立て承認を撤回する」と表明した。すみやかに沖縄防衛局に「聴聞」を申し入れ、9日後の日程を示したにもかかわらず、「1カ月程度の準備期間が必要、9月3日以降に変更してほしい」と申し出たからだ。

3年前は聴聞期日に異議を唱えず、かつ承認取り消しへの反論陳述書を、通知の翌日、準備期間1日で提出している。今回の対応は異様だ。魂胆が透けて見える。延期要求は、本格的な埋め立て工事に着手する時間稼ぎに他ならない。
現に埋め立て予定区域の護岸には、被覆ブロックや袋詰めされた砕石が積み上げられ、予定通り17日には土砂投入を行う、その段取りが整っている。これまでも防衛局は協議すらせず工事着手を強行してきた。政府は動かず、防衛局任せにして突っ走る。いい加減にしろ!

11日には、那覇市の奥武山公園内の陸上競技場で、<土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会>が開かれる。まさに本土から、熱い暑い、連帯のエールを贈りたい!
2日後の13日、今から14年前、米軍ヘリが沖縄国際大学敷地内に墜落し炎上した。墜落事故で焼けた校内のアカギの木は、日本全体の70%に及ぶ広大な面積の米軍施設・基地が、わずか国土面積0.6%の狭い沖縄県にある─その現実を告発している。何度でも言う。沖縄に米軍基地はいらない!(2018/8/5)
posted by JCJ at 12:27 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月04日

《編集長EYE》 捜査中止 小金井署「疑惑の事件」=橋詰雅博

 安倍改憲に反対する署名活動をしていた東京・小金井の市民3人が「住居侵入罪」の口実で小金井警察署に連行された3月末の事件(本紙5月25日号で既報)が解決した。

 5月30日に小金井署は3人の市民の弁護人に対し、電話で「これ以上の捜査は行わない。捜査を終結し、検察庁への書類送検もやらない。また刑事訴訟法上の微罪処分(軽微な犯罪で公訴提起を必要としない事件を警察段階で終結させる)でもない」と言ってきた。警察は捜査を断念・中止したのだ。市民3人の連行は不当だったことを警察自らが認めたのである。

 7月5日に市内で「不当連行事件 勝利報告」集会が行われた。

 改憲反対の署名活動を委縮させる狙いだった警察は、強引な捜査を行った。集会で弁護人の長尾宜行弁護士は、この事件の特異性をこう説明した。

 「トラブルは何も発生していないのに3人は強制連行された。権限の濫用を戒めた警察法2条2項に違反している。任意同行しか求められない状況下での強制連行は、刑事手続き上、重大な違法行為だ。事情聴取された3人とも、所属団体や署名活動の目的、いつ、どこで誰と相談したかなどを取調官から聞かれている。思想表現の自由、政治活動の自由を侵害するような取調です。

 警察権力の横暴さをむき出しにした戦慄すべき事件でした。その捜査を中止させた。民主主義が警察権力の牙をへし折った画期的な勝利です」

 小金井署を出る際、私服警察官から「もう一回、署に来てもらい調書に署名してもらう」と告げられた81歳の男性は 「精神的につらく、長い2カ月間でした。勝利によって民主主義が守られたと実感しています」と胸をなでおろした。

 3人が署名活動を行った出入り自由な問題のマンション(全18室)は警察が民間から建物を借りている「警察専用官舎」だった。共産党都議団の情報開示請求で分かった。警察によるつくられた「疑惑の事件」だった可能性が残る。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
posted by JCJ at 14:06 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月03日

≪リレー時評≫ NHKが12月から4K、8K放送の開始、さらに巨大化の怖れ=隅井孝雄

 今年12月1日から、新しい衛星テレビ放送、スーパーハイビジョン(4K・8K)が始まる。6月1日「新放送開始まであと半年」というセレモニーイベントが開かれた。
 4Kは現在のハイビジョン放送の4倍、8Kは16倍の鮮明度になる。先頭で推進しているのはNHKだ。2年前から全国の放送会館に巨大スクリーンを設置、上映してきた。上田良一会長は「超一流のコンテンツを用意している、2020年の東京オリンピックには世界に先駆けたい」と言っている。

販売中の4K、8K受像機では放送は受信できない?
 大型電機店には、4K、8Kをうたう受像機がずらりと並ぶが、専用チューナーをつなげないと放送は受信できないことが問題となっていた。
ようやく6月に東芝が4K内蔵テレビを発売したが価格は55インチで20万円前後する。各メーカーのチューナーや内蔵型の発売は秋ごろになるという。BSアンテナ受信者は対応アンテナに切り替える必要もある。新テレビを見ようとすればかなりの支出になる。
 一般市民の認知度は低い。12月放送開始を知っている12.2%、専用チューナーが必要だと知っている34.4%、購入したい17.1%に止まる(5/31放送高度化推進協調査)。

受信料の流用は許されるか?
 NHKはスーパーハイビジョンの開発、番組制作に2014年以降4年間で309億円つぎ込んできた。2018(平成30年度)の関連予算は320億円、東京オリンピックの2020年までにさらに317億円をつぎ込む(日経6/1)。開局日には南極から4K、イタリアから8Kで生中継をするほか、ウイーンフィル新春コンサート8Kなど、大型の紀行、文化、音楽番組を計画している。
 NHKは放送法で「あまねく受信できるように努める」義務がある。4K,8Kに多額の受信料をつぎ込んでいいのかどうか問題だ。
民放キー局はあまり熱が入っていない。「画面がきれいだからと言って、スポンサーがお金を出してくれるわけではないし」とはある民放幹部のつぶやきだ。
 なお、WOWOW(有料)、スカパー、映画チャンネル(有料)、QVC(ショッピング)、なども新放送4Kの割り当てを受けて、2020年から4K放送を始めると予定している。

NHKの巨大化に歯止めがかからない
 NHKだけが4Kにプラスして8Kも放送する。インターネット放送も解禁されれば、合計すると7チャンネルにまで巨大化する。
 安倍内閣はインターネットと地上波テレビ、衛星テレビの「融合」という名目でテレビ放送の規制撤廃を計画中。4K, 8Kもその一環だ。
 新しい技術を取り入れ、チャンネルが増えるのはいいが、番組の質の向上がすすむのかどうか、公平な放送ジャーナリズムが保たれるのか。十分な討論なしに新放送がスタートすることに危惧を覚える。

posted by JCJ at 10:08 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月01日

<月間マスコミ評・新聞>オウム報道「闇」の強調には疑問=六光路弦

 一連のオウム真理教事件で死刑が確定していた教団幹部13人のうち、松本智津夫(教祖名・麻原彰晃)ら7人の刑が7月6日、執行された。教祖の公判は1審で終結し、無差別テロを起こした理由や動機を自ら法廷で語ることはなかった。だからだろう、新聞各紙の報道には多かれ少なかれ「闇」や「謎」を強調するトーンが目についた。7日付朝刊で東京新聞は1面トップに「オウム真相 闇残し」と取り、朝日新聞は社説で「根源の疑問解けぬまま」と掲げる、といった具合だ。
 
 本当にそうだろうか。教祖は口を閉ざしたかもしれないが、教団幹部の中には洗脳が解け、悔悟の念とともに知りうる限りのことを話した者も少なくない。「闇」や「謎」と呼ぶほどのものは残っていないとも思える。
 
 地下鉄サリン事件からでも23年もの時間が経ち、直接事件を知らない世代が増えている。「闇」ばかりが強調されると、いずれは「事件は国家権力による謀略だった」などという陰謀論が広まらないとも限らない。メディアは今後、何が分かっていないかを強調するよりも、分かっていることを語り継ぎ、再発防止につなげるべきだ。
 
 「闇の中」なのは大量処刑の方だ。13人のうちなぜこの7人なのか、なぜこの時期なのか。記者会見した法相は回答を拒否。国民に知らせる必要はないと言わんばかりだ。死刑は究極の国家の強権発動であることを見せつけた。執行の内幕を暴くは報道の課題だ。
 
 各紙とも事件を振りかえる特集記事も掲載したが、捜査のありようを再検証する視点が乏しいように感じた。地下鉄サリン事件の発生で、後手に回った警察当局の捜査は「オウム狩り」とも呼ぶべき苛烈さだった。教団信者なら、マンション駐車場に車を止めれば「住居侵入」、カッターナイフ所持なら「銃刀法違反」で現行犯逮捕。平時なら批判を免れない手法に、新聞も社会も表立って異議を唱えなかった。
 
 今日、「オウム真理教」の代わりに「工作員」でも何でもいい。「社会が攻撃を受ける」と喧伝されれば、同じように人権侵害が起きないだろうか。教祖らの死刑執行は、当時の自らの報道も含めて総括を試みるいい機会だったが、そうした記事が見受けられなかったのは残念だ。次の機会に期待したい。   
posted by JCJ at 21:19 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする