2018年09月30日

【今週の風考計】9.30─廃刊に追い込んだ2人の男の経歴と感覚

「新潮45」の実質的な廃刊には、大きな疑問がはらんでいる。まずは問題の引き金となった特集「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という企画の成立過程である。

提案は誰がしたのか、6人の編集部員はどんな議論をし、執筆者7人の選定をどう決めたのか、また編集長は企画を決定した後、執筆者の依頼や担当をどう編集者に振り分けたのか。
さらに担当重役には報告したのか、原稿を入手し一読したのちの対応はどうだったのか、執筆者への問いかけや原稿の手直しはお願いしなかったのか、校閲担当者はどう感じたのか、などなど常識上から見ても、湧く疑問や解明すべきテーマは数多い。

執筆者の一人、小川栄太郎氏の経歴や著作は、つとに知られている。右派だからと言って、ここに文字にするのもはばかれる内容の原稿を一読して、これはダメとは思わなかったのか。
「LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だからである。満員電車に乗った時に女の匂いを嗅いだら手が自動的に動いてしまう、そういう痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。再犯を重ねるのはそれが制御不可能な脳由来の症状だという事を意味する。彼らの触る権利を社会は保障すべきでないのか」─痴漢という犯罪を容認しているのも同じだ。

この御仁、安倍首相<親衛隊>の一人。自著『徹底検証「森友・加計事件」―朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社刊)は、昨年末、自民党本部が約750万円使って5000部ほど“爆買い”してもらい、自民党所属の国会議員へ1冊、自民党・各都道府県連支部へ100冊ずつ送本された。挨拶状には《ご一読いただき、『森友・加計問題』が安倍総理と無関係であるという真相の普及、安倍総理への疑惑払拭にご尽力賜りたい》とある。
これだけではない。2012年発売の自著『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)は、安倍首相の資金管理団体・晋和会によって、総額700万円以上も購入されていた。

さて最後は学研「ムー」の編集部を経て、「新潮45」編集長となった、若杉良作氏の見解だ。新潮社の公式サイトに掲載された一文を、再掲載しておこう。
<編集長から LGBTを利用する野党
 今月号は、特集「『野党』百害」と特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を柱に据えた。前者は主要野党議員の採点表みたいなものだが、当然ながら後者と絡み合ってくる。間もなく秋の臨時国会が始まる。「反安倍」なら道理の通らぬことでも持ち出す野党は、この騒動を奇貨として、杉田氏本人の追及や「LGBT差別解消法案」提出に意気込んでいる。
 杉田論文がいかに誤読され、どのように騒動が作られていったかは、この特別企画の七本の論考でよくわかる。うち二本はLGBT当事者からの寄稿だ。ひとりは元民主党参議院議員でゲイであることをカミングアウトした松浦大悟氏。その記事には、バッシングが一部の当事者とそれを利用しようとする者たちが煽ったものであることや、当事者が切実に欲しているものは何か、などが冷静に綴られている。そして野党のLGBT法案には重大な問題があるとも指摘するのだ。野党は決して当事者を代表しているわけではない。>(「波」2018年10月号より)(2018/9/30)

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2018年09月29日

【訃報】 元JCJ代表委員・橋本 進さんを偲んで=奥田史郎

 橋本進さんが8月5日、91歳で亡くなられた。私が大宅文庫から中央公論社へ移ったのは1959年の秋だった。当時すでに橋本さんは、中央公論社の編集者のみならず、出版労協(出版労連の前身)やJCJでも活躍していて、いつも大きな風呂敷包みを抱えて出入りしていた。
 私の職場は資料室で、そこには新刊の諸雑誌や出版・印刷の業界紙誌があるので、橋本さんは何か面白い資料はないかと立ち寄り、それがきっかけで親しくなった。
 彼は飛び級で進学した秀才で、しかも早生まれだから皆より若く入社した。大人っぽく見せたくてソフト帽を被って出社していたと、古い社員から聞いた。
 労組で意見が紛糾すると、橋本さんが「要求の原点」を根拠に、ていねいに説得する姿を何度も見た。嶋中事件や雑誌「思想の科学」をめぐる<言論の自由>擁護闘争では、理論的中枢として活躍された。
 職場独自の要求作りでは、女性ばかりの交換台や受付の環境改善に尽力し、お人柄もあり女性社員の信頼も厚かった。学生時代に柔道をしたと聞いたが、社交ダンスも好きで社員旅行の時、ホールがあると橋本さんのお相手は退きも切らず現れて、彼は休む間もないほどであった。
 橋本さんの口調をまねれば「ことほど左様に」女性社員に人気があったからか、71年に月刊誌「時代」の編集を目的に、中央公論社を去る際は、出席者は女性ばかりの送別会まで開かれた。
(→続きを読む)
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2018年09月28日

《神奈川支部例会》 若者は今の沖縄をどう見たか

日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部10月例会

若者は今の沖縄をどう見たか
       
 2017年9月、集団自決の悲劇で知られる沖縄・読谷村のチビチリガマが、沖縄の少年たちにより荒らされるという事件が起こった。平和教育に取り組む沖縄でさえ歴史の継承がされないのかと大きな衝撃を与えた。
 東海大学文化社会学部広報メディア学科の羽生浩一教授のゼミでは、17年の12月6日から9日に沖縄を訪れ、平和ガイドや現地の学生などを取材し、その思いを聞いた。また琉球新報の政治部長にもインタビュー、沖縄に向けられたヘイトスピーチの深刻さを学んだ。
 また学生たちは新基地建設工事が強行されている辺野古を訪れ、反対運動に参加する市民の声を取材した。
 羽生ゼミでは、この沖縄取材を映像にまとめて「歴史記憶を伝え続ける難しさ」というDVDを制作した。

 神奈川支部の10月例会は、このDVDを視聴し、取材した大学生や、沖縄の新聞社にインターンシップ(体験入社)した大学生たちに取材や体験を通して感じた“沖縄の今”について語ってもらう。

日時 10月6日(土)午後5時〜7時30分
会場 かながわ県民センター 301会議室
  (横浜駅西口徒歩5分、ヨドバシカメラ裏)
テーマ 「若者は今の沖縄をどう見たか」 
お話と報告 東海大学文化社会学部・羽生浩一教授と羽生ゼミ学生とOB
      沖縄の新聞社にインターンシップ参加の東海大学・専修大学の学生
参加費  500円(学生は無料)

主催  日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部
連絡先 保坂 080−8024−2417
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2018年09月27日

《ワールドウォッチ》アフリカが米中覇権争いの草刈り場=伊藤力司

 去る9月3、4の両日、北京の人民大会堂に53か国のアフリカ首脳を集めて第7回「中国アフリカ協力フォーラム」が開かれた。習近平中国国家主席は開会スピーチで、中国がアフリカ向けに600憶ドル(6兆6千億円)の資金援助を行うと発表して喝さいを浴びた。
 このフォーラムは江沢民時代の2000年に発足、以後3年ごとに北京とアフリカで交互に開かれ、猛スピードで経済大国化した中国のアフリカ進出に大きな役割を果たしてきた。今回は台湾と国交のある旧スワジランドを除く、アフリカ全53か国の首脳が出席した。
 言うまでもなく、国連加盟国193カ国中54か国を占めるアフリカは、地域としては最大グループであり、「アフリカの年」と言われた1960年にブラック・アフリカ諸国が独立して一大グループとなった。

 1960年と言えば日本では安保闘争の年。日米安保に反対する日本の労学市民による巨大な安保反対闘争で日米新安保改約は批准されたものの岸首内閣は退陣。後継の池田内閣の高度経済成長戦略に国民は騙され、日本の対米従属関係は今も続いている。
 そうした1960年、アフリカでは旧宗主国のくびきを外れた国々が様々な困難の中で新しい国造りに励む一方、国連など国際社会の場で反植民地主義の新興グループとして発言力を高めた。米国などもアフリカ勢を無視することはできなくなった。

 米ソ冷戦時代が続く中で、アフリカ諸国は米ソ両陣営から強い働きかけを受けながら、基本的に非同盟路線を貫いた。結果として、そのことが冷戦後21世紀の世界でアフリカ勢がひときわ注目される存在となるに至った要因であろう。
 毛沢東も習近平も「中国は覇権を求めない」と宣言している。しかしアメリカに次ぐ世界第2の経済大国になった中国は、アジアからアフリカ・ヨーロッパに「一帯一路」の通商路を開くことを宣言。そのために南アジアから中東・アフリカに膨大な投資を進めている。
 第2次大戦後世界の覇権を握ってきたアメリカだが、実はその覇権を放棄したいトランプ大統領と事実上アメリカの覇権に挑戦しつつある習近平主席の草刈り場になっているのが、今日のアフリカである。
posted by JCJ at 17:46 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月23日

【今週の風考計】9.23─日本列島に「鷹が舞い降りる」!この現実

◆ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』ではないが、日本列島に<鷹(ミサゴ)が舞い降りる>。まず10月1日、米軍の特殊作戦機CV22オスプレイ(日本名:ミサゴ)5機が、東京・横田基地に舞い降りる。
◆この空軍仕様のCV22オスプレイは、敵地に潜入し人質を奪還するなど特殊作戦に従事する要員の運搬に使われる。日本への配備は初めてだ。沖縄・普天間基地には、米軍海兵隊仕様のMV22オスプレイ24機が配備されているが、このオスプレイと違って、CV22オスプレイは、夜間飛行や地形に沿って低く飛ぶ能力が強化されている。

◆横田基地での低空飛行訓練や小銃・重機関銃の射撃訓練が、繰り返されるのは必至だ。墜落の危険や騒音など、周辺の住民にはたまったものではない。すでに宮城県・王城寺原演習場まで、人口密集地帯の上空を飛ぶオスプレイが目撃されている。しかも横田基地には、6年後までに計10機・要員450人の増強配備が企てられている。

◆日本の自衛隊も負けていない。まず米国からオスプレイ17機をセットにして、総額3600億円で購入。1機あたり約220億円だ。これを佐賀空港へ配備する。かつオスプレイの着陸料として年5億円、20年間で計100億円を支払うというのだから呆れる。まずは購入した5機を、11月には木更津駐屯地に暫定配備する。
◆訓練は米軍と一体で、三沢対地射爆撃場(青森県)や陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)・北富士演習場(山梨県)へと、日本列島上空を飛びまわる。

◆昨年9月末の米軍海兵隊オスプレイMV22の重大事故率は、10万飛行時間あたり3.24という、過去最悪の数字である。米軍海兵隊が使う軍用機全体が起こした重大事故率2.72よりも高いのだ。この実態に目を背けて、どうして住民の安全・安心が守れるのだ。3選後の安倍政権、改憲より先にやることがあるだろう。(2018/9/23)

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2018年09月20日

【映像】8・18 JCJ賞 贈賞式(ノーカット版)

2018年8月18日、東京千代田区・プレスセンタービルにて行われた第61回JCJ賞贈与式。
贈与式の前に、猿田佐世さん(国際弁護士)による記念講演、テーマ「日本メディアと国際報道」があります。

表彰後、受賞者が取材の裏話、苦労話、感動などを話します。

posted by JCJ at 18:56 | 映像(コメント&ニュース) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【映像】7・14集会:安倍政権の末路

7月14日、パリ革命を記念してマスコミ9条の会。日本ジャーナリスト会議共催による集会をFmATVchから独占録画配信。

お話は青木理さん(ジャーナリスト)、杉尾秀哉さん(参議院議員)、司会は砂川浩慶さん(立教大学教授)です。
トーク形式でマスメディア、政治の現状を語っていただきました。

会場は満席、200名を超える聴衆から共感の拍手が沸き起こりました。

posted by JCJ at 18:49 | 映像(コメント&ニュース) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月16日

【今週の風考計】9.16─「鶴彬を二度殺させてはならぬ」に共感!

<手と足をもいだ丸太にしてかへし>(鶴彬)─プロレタリア川柳の代表句である。そう田辺聖子さんは『川柳でんでん太鼓』(講談社文庫)で書いている。
鶴彬は治安維持法に問われて東京・野方署に拘留、そこで罹患した赤痢で1938年9月14日に29歳で死去。今年が没後80年となる。

さて1930年代の日本は、軍靴の音けたたましく、1931年9月18日、日本軍は中国の柳条湖で南満鉄線路を爆破。この柳条湖事件は自作自演というのが真相である。そうまでして満州事変の発端を作った。
そして、つい3年前の9月19日、自衛隊の海外での武力行使につながる「戦争法案」を国会で強行可決。この法案は多くの人びとが「違憲」とし、かつ一人ひとりが自分の「意見」を持ち、「異見」を聞くことも大切にするため、<9・19いけんの日>が、平和への思いを忘れない日として誕生した。大切な日である。

20日は自民党総裁選の投票日だ。国民の声には耳を傾けず、コップの中で9条改憲をわめいている。9条3項に自衛隊明記か、2項(戦力を持たない)削除か、どちらにせよ自衛隊を戦争に参加させたい本音は同じ。またまた「安倍一強」政権による改憲策動に拍車がかかる。
明けて21日は国際平和デーだ。世界で起きている戦争や敵対行為を停止する日である。その日はニューヨーク国連本部ビルの平和の鐘が鳴り響く。なんとこの平和の鐘、日本政府が国連に寄贈したものだ。鐘には「世界絶対平和万歳」と鋳込まれている。

おっとっと9条改憲! 真っ向から違反するじゃないか。核兵器完全禁止条約にも背をむけ、「日本を戦争する国」へもっていく。<鶴彬を二度殺させてはならぬ>(高鶴礼子)。(2018/9/16)
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2018年09月15日

《おすすめ本》ジョン・ミッチェル著 阿部小涼訳『追跡 日米地位協定と基地公害 「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて』─いま現実に沖縄では野放し! 米軍・化学兵器汚染の実態 =島袋夏子(「琉球朝日放送」報道制作部)

 沖縄の返還軍用地が抱える土壌汚染問題を調べていると、「わからないことは惨めだ」と実感する。辺野古や高江を始め、米軍絡みの事件、事故に振り回される沖縄。長く埋もれていた軍用地汚染を表に引きずり出したのは、無名の外国人ジャーナリストだった。本書の著者、ジョン・ミッチェルだ。
 ミッチェルは2012年、沖縄に駐留していた退役米軍人たちが、米国政府を相手に、枯れ葉剤被害を訴えている事実をスクープした。それはフェンス一枚隔てた所で暮らす人々の命と健康も脅かされているという告発だった。

 本書は、米国情報自由法(FOIA)を駆使して入手した1万2千ページもの公文書に基づいている。米軍占領下、演習場近くの中学校で異臭がし、生徒たちが体調不良を訴えた。また本島北部では、牛が突然死した。
 しかし当時は原因が判明せずうやむやに。そんな県民の記憶の片隅に残る奇妙な事件が、実は米軍の化学兵器などに由来していた事実を、本書は指摘する。だが重大なのは、危険が過去のことではない、いま現実にあるということだ。
 日米地位協定4条で、日本は米国に対して、返還軍用地の原状回復義務を免除している。島は今も米軍が汚したい放題の土地なのだ。

 ミッチェルは今、沖縄県民から最も信頼されるジャーナリストの一人となった。彼が突き付けるのは、日米両政府に都合よく使われ、切捨てられる沖縄だ。しかし県民は知っている。本当に惨めで怖いのは、知らないことである。本書を手に取る人たちには、考えてほしい。沖縄に誰が何を押し付けているのかを。
(岩波書店1900円)
「日米地位協定と基地公害」.jpg
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2018年09月09日

【今週の風考計】9.9─今が旬!サンマと鯖≠巡る旨い話

7月8日に解禁された今年のサンマ漁は、8月下旬から9月にかけて漁獲が回復し、水揚げ量は前年同期比140%となった。魚体は脂のノリがよく、去年より10gも重い。
水揚げ回復のおかげで、新サンマ1匹100円の店も現れている。財布を気にせず、秋の味覚が堪能できてうれしい。

有名な「目黒のさんま祭り」は、9日には目黒駅東口で、岩手県宮古漁港のさんまが、16日には西側「田道広場公園」で、宮城県気仙沼漁港のさんまが、それぞれ焼かれ、スダチや大根おろしを添えて、無料で振る舞われる。

青魚のもう一つの代表、鯖にも目を向けたい。サバ缶の人気が急上昇している。国産の大型サバを使う高級ブランド缶詰は、売り上げが前年比150%の伸びを示すという。
サバなどの青魚にはビタミンB12やビタミンD、DHAなどが多く含まれている。健康志向の流れにマッチし、安く購入できて、簡単レシピで美味しく食べられる重宝さが受け、筆者も酒のアテに充てている。

鯖と言えば、神奈川県・三浦観音の先にある地魚店で食べた「松輪サバ」の旨さが忘れられない。今頃から冬にかけて、三浦沖で一本釣りされた鯖は、胴体から尾にかけて黄色い筋が入り、肉づきが良く脂がのっている。炙りと〆のどちらもいける。

つい最近、赤松利市『鯖』(徳間書店)を読み終えたばかり。本書に出てくる「寒鯖のヘシコ」もいい。塩漬けした鯖の半身を、さらに米ヌカや麹・魚汁を入れた木桶で、1年以上も熟成発酵させた、若狭地方や丹後半島の伝統ある保存食である。炙っても切り身でも旨い。さて一気読みした本書、対馬海流に洗われる日本海の孤島を拠点に、鯖の一本釣りに狂奔する荒くれ漁師たちの破天荒な生き様を描いたノアールだ。(2018/9/9)
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2018年09月08日

≪おすすめ本≫ 斎藤貴男『戦争経済大国』─米国の戦争で築いた日本の繁栄 戦後平和の虚妄を鋭く問う=杉本恒如(「しんぶん赤旗」経済部記者)

 日本経済は1955年から73年まで、飛躍的な成長を遂げ、「奇跡」の高度成長と言われた。
 この奇跡は米国の戦争によるものだった。朝鮮戦争特需を足掛かりに、ベトナム戦争特需を跳躍台とし、日本企業は「他国の人々の不幸に乗じて儲けた」のだ。戦争経済の実態を明かし、虚構の戦後論を覆すため、著者は本書を世に問うた。

 歴史の再考を促す熱意は、足を使った取材の分厚さに表れている。ベトナム戦争と日本経済の関係を掘り下げた研究は少ない。著者は企業や官庁の当事者を訪ね歩き、資料を丹念に掘り起こす。
 総合商社の元社員はベトナム戦争に感謝した同僚の発言を回想する。「おかげさまで合成ゴムの全体が儲かる」。米兵の履く熱帯仕様のブーツが日本製だったためだ。貿易政策の中心にいた通商産業省(現経済産業省)の元キャリア官僚も証言する。戦争で「突然マーケットが開いた」と。
 当時「死の商人」を非難した市民団体、労働組合も取材対象にしている。権力による弾圧や謀略もあった。挫折や堕落、過激派の行動にも大きな紙幅を割き、また過ちや後退からも教訓を汲みあげようと努めている。

 著者は「憲法9条を本物にしなければならない」と語る。自身を含む護憲派の思想と行動を、もう一段高める決意が、底流にあるからだ。
「もう戦争する時代じゃない」。米国の戦争で財を成した沖縄企業の元会長が、あっけらかんと発する言葉に、新しい経済への転換に向けたヒントが垣間見える。
(河出書房新社1800円)
「戦争経済大国」.jpg
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2018年09月07日

【日韓学生フォーラム】 原爆と報道を考える場に 広島の式典取材し 中国新聞を訪問=古川英一

 8月6日の広島。地元の人に言わせると、今年は特別暑いとのこと。その暑さの中、私たちは広島で様々な声を聞き、そして発した。「私たち」とは、2回目を迎えた日韓学生フォーラムに参加した学生30人余りと、実行委員で同行したメディアの記者OBら総勢約50人のこと。ジャーナリストを目指す日韓の学生に、様々な現場を見てもらい、相互交流を図る企画だ。

空虚な首相挨拶

8月5日から3泊4日、学生たちは広島市内のゲストハウスで合宿≠オた。戦後73年の原爆の日に、原爆ドームに近い平和記念公園に向かった。

平和記念式典。朝から立っているだけで汗がふき出す。私は会場には入れず、公園の一角でスピーカーから安倍首相の挨拶を聞いた。

昨年の夏、国連で核兵器禁止条約が採択されたこと、さらに秋にICANがノーベル平和賞を受賞したこと、いずれも被爆地・広島の人々にとってはかけがえのない出来事であるはずだ。だが、安倍首相は一言も言及しなかった。

安倍首相が発した言葉は、私が広島で聞いた声の中で最も空虚なものだった。この空虚さに、一瞬途方に暮れた。原爆投下の悲惨さをどう伝え、核廃絶の声をどう国内外に広げていったらよいのか。問いが頭の中をめぐった。

6日午後に、中国新聞本社を訪問し、これらの問題と長年、格闘してきたジャーナリストの話を学生たちと一緒に聞いた。話し手は同紙の江種則貴特別編集委員だ。紙面づくりが一年でも最も忙しい日であるにもかかわらず、快く時間を割いてくれた。編集局の見学もできた。

新しい発見ある

江種氏は、広島には原爆の体験が根づいていること、同時に日常の暮らしと被爆体験が遠くなっていることを指摘した。広島を被害者としてとらえるだけでなく、戦争での日本の加害責任についても報道してきたという。「被爆者に加害責任を語ってもらおうとは思わない。加害責任を踏まえたうえで、広島はまず被爆者の声を伝えるのが役割だ」と語った。

飛び入りで、この場に参加したのは朝日新聞OBで、原爆報道に長年関わってきた岩垂弘さんだ。岩垂さんは「毎年8月6日は広島の地に立つ」ことを決意して実行してきた。「原爆の問題は根が深く、まだほとんど知られていない。広島を49回訪れても新しい発見がある」と話した。

翌7日は、元広島市長の平岡敬さんに講演してもらった=2面参照。中国新聞の記者時代に韓国人被爆者問題に取り組み、埋もれた被害を世にアピールした。この講演会は学生のほか、地元市民も参加できる日韓フォーラム独自の企画として開いた。

平岡さんは90歳を超えても、その内面から発するバイタリティに圧倒される。ソフトな語り口に、思わず引き込まれてしまう。「記者をつき動かしているのは、社会の不正義への怒りだ。そして弱者の立場に立つことが欠かせない。その一つが私にとって韓国人被爆者問題だった」と振り返った。

平岡さんは取材を通して韓国人被爆者の支援運動に関わっていく。迷いながらの行動だった。「ジャーナリストは当事者になってはならない鉄則がある。客観報道をすべきだと。その鉄則を踏み外して救援運動に加わった。当事者となることがいいのかどうか。でもそれは人間として許されるのではないか」。今でも平岡さんの自問は続くという。

学生たちは講演後も、昼食を一緒に取りながら、平岡さんを囲んで質問攻めに。平岡さんは「何のためにジャーナリストになるかが問われる。何でもいいから、自分はこういうことをやるために記者になる、ということを大事にしてほしい」と学生たちに助言した。

教師の像に感動

日韓フォーラムの最後は、参加者が期間中に一番感銘を受けたことを、スマホで撮影した写真を前に語る「マイベストショット」の時間だ。学生たちは夜遅く、未明まで語らい、交流を深めた。それぞれが見たもの、視点、感じ方は千差万別。その声をいくつか紹介したい。

広島県出身の女子学生は、平和記念式典の会場で黙とうの際、そっと亡き父親の遺影を取り出す男性を見た。聞くと被爆2世で、今は語り部の伝承者として活動をしているという。その姿を見て「大切な人を忘れないジャーナリストになりたい」と彼女は語った。

 韓国の女子学生は平和公園にある、教え子を抱きかかえる教師の像の前で、自分より弱い存在を助けようとした教師に感動する。そして被爆者の問題に取り組む日本こそが平和のメッセージを発信してほしいと呼びかけた。

日本、韓国、それに中国からの留学生と何人かで、メッセージを書いた灯ろうを流したという男子学生は「一緒に流した仲間がこれから何になるにせよ、同じ方向を向いて行けたならと淡い希望を感じ、少し幸せな気持ちになった」と話した。

広島で聞いた多くの声、自分たちが発した声はこれからの糧になっていくに違いない。昨年11月にソウルで初めて開催した「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」はまた一つ、大きな収穫を得た。      

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
posted by JCJ at 14:59 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月06日

《リレー時評》翁長氏 民主主義を守る闘い貫いた=與那原良彦(JCJ沖縄世話人)

 8月8日に亡くなった沖縄県知事の翁長雄志氏への取材で、今も鮮明に浮かんでくるのは2013年の「オスプレイ撤回・東京要請行動」の銀座でのデモの時の唇を真一文字に嚙み締めている顔だ。デモの先頭に立つ翁長氏らに街頭から「売国奴」「琉球人は出て行けない」など口汚い罵声が浴びせられた。デモ後に「お疲れさま」と笑顔で声を掛けられたが、目は笑っていなかった。
 その騒ぎに目を向けずに普通に買い物をし素通りをしていく人々に、翁長氏は驚いたという。過重な米軍基地の負担に苦しめられる沖縄に対する無理解と無関心に直面した瞬間だった。

 翁長氏が膵臓ガンに侵されながらも、名護市辺野古への新基地建設反対を貫き、「あらゆる手段」を用い、建設阻止に命を懸けた。最後の切り札とされた埋め立て承認撤回を表明した7月27日の会見には病でやつれた姿で現れ、声を振り絞って「必ず撤回する」と訴えた。その12日後、生きる気力と体力をすべて使い果たし旅立った。理不尽な基地負担を拒否し、命を削るように、政府と対峙し続けた壮絶な人生だった。

 翁長氏を駆り立てたのは何か。「沖縄戦で軍事占領した土地に普天間飛行場を造り、そこが危険になったからほかの土地をよこせ、というのはおかしい」という怒りだ。そのやり方を「日本の政治の堕落ではないか」と迫った。子や孫の世代まで残る新基地建設を拒み、県民に勇気と誇りと自信を持ってもらいたいという使命感があった。沖縄だけではなく、日本の地方自治と民主主義を守る闘いであった。
 基地を抱える市町村長と意見交換した参院議員の1人は「本土が嫌だと言っているんだから、沖縄が受け入れるべきだろう」と発言した。米軍機の相次ぐ事故などが取り上げられた今年1月の衆院本会議の代表質問では、自民党の松本文明・内閣府副大臣(当時)が「それで何人死んだんだ」とやじを飛ばした。

 翁長氏は基地建設を強行する安倍政権だけではなく、本土側の無理解と無関心と闘った。承認取り消しを巡る法廷の場でこう陳述した。
「政府は民意にかかわらず、強行している。米施政権下と何ら変わりない。日本に地方自治や民主主義はあるのか。沖縄のみに負担を強いる安保体制を正常か」

 承認撤回表明後の3日間を調べると、社説で取り上げた全国紙・地方紙は10数社しか確認できなかった。関心が遠のく中、翁長氏の死によって基地問題がクローズアップされることになった。
 翁長氏が亡くなった日に届いたメールの一つには「政府に殺されたようなものだ」とあった。政府の強硬姿勢を許しているのは国民の無理解と無関心だ。その責任の一端は、ジャーナリズムの現場に関わる我々にもある。沖縄だけに基地を押しつける不条理が続くことは、「ジャーナリズムの堕落」といわれかねない。

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2018年09月02日

【今週の風考計】9.2─沖縄はこの国の<民主主義のカナリア>

■8日ナンの日、安保の日、忘れちゃいけない大事な日─今から67年前、1951年9月8日、敗戦国・日本は連合国とサンフランシスコ講和条約を結び日米安保条約に調印した。
■だがそれは対米従属にひた走るスタートの日であった。多くの米軍基地と施設がそのまま残留・存続し、とりわけ沖縄には、日本に復帰した1972年以降も、日本にある米軍基地・専用施設面積の約70%を集中させたままだ。

■「普天間が危険だから、辺野古へ移設だ、危険除去のためには沖縄が負担しろ」これを言っちゃお終いよ。なぜ米国に米軍基地を撤去せよといわないのか。日米地位協定の見直しを提言しないのか。
■それどころか政権は沖縄復興費の支給額を、時の沖縄県知事の基地に対する姿勢で増やしたり減らしたり、傲慢な政治手法を使い「沖縄県民の民意や自己決定権」を踏みにじって恥じない。

■沖縄県が辺野古埋め立ての承認撤回に踏み切ったのは、安倍一強政権が続ける問答無用の「国策」への、痛烈な叛旗である。
■沖縄県民の自由・平等・人権への願いを、本土の私たちが汲みあげねば、「日本の政治の堕落」に加担するのも同じだ。まさに「沖縄はこの国の<民主主義のカナリア>である」(前泊博盛・沖縄国際大学教授)。

■8日から9日にかけて東京・代々木公園では、日中平和友好条約 40 周年を記念するチャイナフェスティバル2018が開催される。9日は朝鮮民主主義人民共和国が誕生して70周年。17日は<日朝ピョンヤン宣言>から16年を迎える。東北アジアの平和友好を視野に入れれば、もう沖縄に米軍基地はいらない。(2018/9/2)

posted by JCJ at 12:23 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【メディアの動き】民放連:CM規制のルールづくりを 公平・公正な国民投票の実現へ 本間龍氏に聞く=河野慎二

 安倍晋三首相は12日、秋の臨時国会に自民党の改憲案を提出する考えを表明した。改憲が発議されると国民投票運動でのテレビCMが大きな問題になる。資金力のある陣営が大量のCMを流し、投票の公平が保てなくなる恐れがある。この問題にどう取り組むべきか。博報堂出身の著述家で、この問題に詳しい本間龍氏に聞いた。

――衆議院の憲法審査会が先月、国民投票運動のテレビCM規制について民放連の意見を聞いた。民放連は慎重な姿勢を示したとされるが。
 民放連内でもの意見は、二分されているようだ。何らかの自主規制策を打ち出すべきだとの意見と、「CM規制はとんでもない。自分たちは注文を受けて流していればいい」との意見に割れている。

民放連と話し合い

――民放連は自主規制ルールを作れるのか。
 民放連が自主規制案をつくり、国会がそれを追認するのが、一番手っ取り早い。民放連への働きかけを強めようと、超党派の議員連盟が今月末に発足する。座長は自民党の船田元(はじめ)衆院議員が就任する予定だ。議連の最初の仕事は民放連との懇談。その際、議連としての案を持って行く。CMの回数などを決めているイギリス方式がいい国民投票法の改正については、議連としても提出する方向で考える。民放連を動かすことと法改正の両輪で動いて行く。

――民放連は、CM規制は「表現の自由」制約につながると懸念するが。
 テレビCMの規制は放映の回数だけで、内容は規制しない。イギリスでは国民投票に使える予算を国が賛成と反対の両派に渡している。その上限は決まっている。テレビCM規制と表現の自由は両立する。
 ただ、国民投票法成立11年後の今日、ネットの力が急増している。ネットは規制の対象外。仮にポータルサイトは規制しても、個人の発信規制は「表現の自由」にリンクしてくる。

護憲勢力は不利に

――米国では、トランプ勝利の一因に、ビッグデータの活用が上げられているが。
 日本では、電通がビッグデータを社内に保有している。「ビッグデータ解析プラットフォーム」という機材、組織を持っているから、当然国民投票に使うだろう。投票の公平性は失われ、護憲派は不利な戦いを強いられる。
 ネットの問題については、早急に研究会などを作って対応する必要がある。

安倍常人ではない

――現状のまま、国民投票を実施すると、大変な事態になる。
 それは目に見えている。世界一の広告代理店、電通がバックについて、準備版万端怠りなくやる。護憲派は何もやっていないから、赤子の手をひねるようなものだ。
 じゃあ、安倍首相が3選されて、年内か年始に国民投票までに持って行けるか、現実的にはかなり難しいと思う。憲法審査会は、与野党合意の上で進めるというのが大前提で、国民投票を実施するまでに、国会の手順としては15回ぐらいの採決が必要とされる。
 否決されたら、各会派が持ち帰り、やり直す。そう見てくると、年内、年初の発議、来年の天皇退位までの国民投票は不可能に近い。
 ただ、安倍首相は常人では計り知れないところがある。国民投票が自己目的化している面がある。普通の考えの持ち主なら、国民投票は出来ませんが、安倍首相は違う。

――国民投票が否決されたら、内閣総辞職ものですね。
 そうです。大差で否決されたら、内閣はブッ飛んで、政権交代が起こるかもしれない。政権を失うかもしれないという覚悟で突っ込んでくるから、そこをしっかり見据えた対応が必要だ。

世論を盛り上げる

――ただ、国民がどう考えるかです。強行突破的なやり方は国民の批判を招くのでは。
 大量の改憲CMをバンバン流しても、強面の態度が国民にどう映るか。強権を発動し、偉そうなことを言うことに、民意は極めて敏感だから、いくら電通がついていても、浮動票が改憲派に大量に流れることはないのではないか。
 超党派議連発足を契機に、議連と民放連との話し合いなどをはじめ、国民投票の問題点の報道をメディアに働きかけ、世論を盛り上げて行きたい。

聞き手 河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
posted by JCJ at 11:51 | 放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月01日

【お知らせ】ジャーナリスト講座「新聞とデジタルーー記者の仕事の行方」

9月30日(日)午後1時半〜5時
テーマ:「新聞とデジタルーー記者の仕事の行方」
講師:沖縄タイムス記者・與那覇里子さん

◇新聞のデジタル化で何ができるか
◇與那覇さんは1年休職して大学院で学んだ
◇沖縄戦の歴史をデジタル技術を使い、記録・表現する試みに挑む
◇沖縄県知事選の投票日に、東京で話をする意味とは
◇與那覇記者の思いを語っていただく

会場:日比谷図書文化館・4階小ホール 東京都千代田区日比谷公園1−4
参加費:1000円(予約が必要)
予約:@氏名A学生は大学名、社会人は職業などB連絡先電話番号Cメールアドレス
――を明記して、メールかファクスでお申し込みください。
メール sukabura7@gmail.com
ファクス 03・3291・6478

主催:日本ジャーナリスト会議 電話03・3291・6475
posted by JCJ at 21:22 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《編集長EYE》 検察は政治資金規正法にうとい=橋詰雅博

 国会議員などの政治資金収支報告書を閲覧できる公益財団法人「政治資金センター」などが企画した「政治と金をどうチェックするのか」と題した集会が都内で7月初旬に開かれた。

 これに出向いた理由はパネラーとして興味深い人物がいたからだ。その人は前田恒彦さん(50)で、元大阪地検特捜部主任検事だ。名前と肩書で思い出された方もいるだろう。郵便不正に絡む厚生労働省の偽証明書発効で逮捕された厚労省元局長の村木厚子事件(2010年)を担当した検事だ。裁判で検察によるデッチ上げが明らかになり、村木さんは無罪が確定した。村木さんを犯罪者に仕立てあげるため前田さんは証拠物件のフロッピーディスクの中身を改ざんし、証拠隠滅罪で懲役1年6カ月の判決を受けた。また法務大臣から懲戒免職で処分された。12年5月に満期出所した。

 大阪・東京特捜部に合計約9年在籍した前田さんは、政治とカネの問題でこう語った。

 「政治資金規正法違反の虚偽報告は、形式犯(うっかりミスで法に触れる犯罪、悪質の度合いは低いとされる)扱いです。被疑者の記帳ミスと裁判所は甘い判断をし、下される判決は執行猶予付きです。これでは労多くして益少なし、大山鳴動してネズミ一匹だ。軽くみているから政治資金規正法の条文を読んでいる検事は極めて少ない。下地がなく、経験不足です。巨額やウラ金がなければ、政治資金規正法違反では踏み込まない」

 ただし脱税が悪質ならば起訴するケースはある。

 「目安は一般的には5000万円です。大バッチ≠キなわち国会議員ならば1億円という暗黙のルールがある。このルールに達していない事案なのに、内偵を進めたら法務省からストップがかかります」(前田さん)

 検察には政治資金収支報告書のデータベースはないそうで、頼るのはメディアだという。

 前田さんは法曹界に戻る意思はない。ブログで刑事司法に関する解説や主張を発信している。

橋詰雅博(JCJ事務局長兼機関紙編集長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
posted by JCJ at 13:28 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする