2019年01月31日

【シンポジウム】 戦場取材と自己責任論 シリア拘束 安田純平さん語る=編集部

 髭をたくわえ、黒いシャツを着た痩身の男性が、ごく自然体でむしろ飄々とした感じで壇上に上がった。安田純平さん。拘束されていたシリアで3年4カ月ぶりに解放され、去年の10月に帰国したフリージャーナリストだ。      

安田さんを招いて、戦場取材の意義と「自己責任」論について考えるシンポジウムが、去年12月に、東京で開かれた。司会を務めた月刊「創」編集長の篠田博之さんは「ジャーナリストが戦場に行く意義が伝われば、極めて日本的な、自己責任論など出てこないのではないか」と議論の口火を切った。

拘束者いまだ不明

安田さんはまず、なぜ戦場に行くのかについて「対テロ戦争では『テロリスト』と人間を記号にあてはめる。権力やメディアにテロリストと呼ばれた時点で人権がゼロになってしまう。しかしそう呼ばれた人たちは生身の人間であり、それぞれの人生があることを現場で見ておきたかった」と淡々とした口調で語った。また、単独でシリアへ入ったことへの批判や自己責任論に対しては「今になっても誰に拘束されたのか、自分でも分かっていない。批判されるのはかまわないが、事実関係をきちんと知ったうえでしてほしい。ジャーナリズムは事実を明らかにするもの、事実に基づくことの重要性が共有できなければ話ができない」と、この時の口調は強く感じられた。

シンポでは戦地での取材にあたってきたフリーやメディアに属するジャーナリストたちも登場し、各人こう指摘した。

TVキャスターの金平茂紀さんは「政府に従わないなら叩いても当然、今の政権を支持する人たちが声高に叫ぶ、同調圧力をかけてはじき出していこうという風潮だ」と、自己責任論の声が大きくなる背景を分析した。中東ジャーナリストの川上泰徳さんは「なぜ中東に行くのか、戦争が続いているからだ。戦争がどういうものか、想像するのではなく行って、調べて、伝えるのがジャーナリスト。しかし自己責任論が広がると、メディアは委縮してしまう」と指摘した。なぜ危険を冒してまで戦場へ行くのか?この問いにアジアプレスの野中章弘さんは「戦争は我々の世界で起きている最も不条理なことで、そこにジャーナリストが取材する価値がある」と答えた。

先行きはまだ未定

 シンポの中で浮かび上がってきたのは、今の日本で広がっている、外の世界に目を向けない排外主義だ。そこには中東で起きていることがいつ日本で起きるかわからない、という想像力の欠如がある。さらに、若い人たちの多くが、中東だけでなく沖縄や福島で起きていることが全部、自分の外部にあることとして、ジャーナリストと若い人たちとの間で対話が成立しない状況にあるという指摘もあった。

こうした排外主義にどう向き合うのか?一つの問題提起が、次の問題を連鎖的に引き寄せるという、会場の参加者にとっても宿題を与えられた形だ。

それは私たちの想像を絶するような体験をした安田さんが、私たちに気づかせてくれた問いでもあるのだろう。「これからどうするのですか?」―会場からの問いに安田さんは、「これからどこへ行くのか、事前には言えませんし、まだ決めていません」と穏やかな表情で答えていた。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 14:59 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【映画の鏡】 穏やかな家庭で銃撃事件 『ナポリの隣人』  駆けつける父親と娘の葛藤=今井 潤

高齢化社会は世界共通で、映画も「ガンジスに還る」(インド)、「ボケますから、よろしく」(日本)と老人問題を扱った作品が増えている。

この作品もナポリのアパートにひとり住む老弁護士のロレンツオが主人公だ。今は引退し、妻は数年前に亡くなり、法廷通訳をしているシングルマザーの娘とクラブ経営の息子がいるが、関係は良くない。娘は父の女性関係を許せずに来ている。

 そんなある日、アパートの隣にミケーラと夫のファビオと二人の子供が越してきて、バルコニーでつながっているので、隣人の付き合いが始まる。食事に招かれたロレンツオは、まるで本物のお爺ちゃんのように二人の子供と遊び、ミケーラとファビオと楽しく食事をし、おだやかな時間を過ごす。束の間の疑似家族のようだ。

 しかし、事件は起きる。ある雨の夜、ファビオがミケーラと二人の子供を撃ち、最後に自分も自殺したのだった。ロレンツオは重体で病院へ運ばれたミケーラのもとに駆け付ける。ミケーラの父親のふりをして、病棟に入り込んだことがわかり、息子はあきれて帰るが、娘は父親を見つめていた。ミケーラのそばで語り続けるロレンツオだったが、通報されてしまう。ロレンツオと実の娘はわかりあえることが出来るのか?

 映画の中盤で、ロレンツオとファビオがそれぞれナポリの古い石壁と石畳の路地を歩くシーンがカットバックされるが、二人の孤独が象徴化されていて胸に響いてくる。21世紀のネオリアリズムという印象が強く漂っている。

(公開は2月9日(土)から神田・岩波ホール)

今井 潤

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 12:52 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月30日

【市民活動】 高松市「12・8の集い」戦争体験を胸にしまわず話す=刎田鉱造

JCJ香川支部も参加する8・15戦争体験を語りつぐ集い実行委員会が主催した「12・8って何の日?」を、今年も12月8日に高松市で開きました。市の平和資料館がある「たかまつミライエ 」6階でDVD「戦場のタイムテーブル・真珠湾攻撃」、1941年12月8日のドキュメントフィルムを見た後、参加者がグループをつくって話し合いました。

 話し合いは今様のワールドカフェ式です。30人あまりがほぼ5人程度のグループに分かれて、それぞれ自分の戦争に関わる体験や見聞を出し合いました。15分話すごとに別のグループに移動しながら2時間近く費やしました。

 1945年8月までの戦争そのものを語れる人はもう少数です。それでも「私は軍国少女だった」と学校であったこと、教わったことを丁寧に思い出して語る人、「統制と配給で商売がなりたたなくなる。そこへ働き手の父親が召集されて、一家は引っ越し連続で……」など初め口にする物語や、「戦時中、飛行場をつくるときには朝鮮人が働いていて、近くに掘っ建て小屋たててひどい扱いだった」「戦後でも散髪屋さんが『朝鮮人お断り』と書いた紙をはっていた」――そんな話が次々と聞こえました。

 これまでの私たちの取り組みでは、講師の話を聞いて感想、意見を交換することがほとんどで、高松空襲といった特別の日の出来事以外に自分たちの身に起きたこと、見聞きしたことを語ることはほとんどしてきませんでした。それだけに今年の「12・8の集い」は新鮮でした。語るべき何事かを胸にしまって置いてはいけないことを改めて感じました。

刎田鉱造(香川支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 17:46 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月29日

【NHK「天皇 運命の物語」】 「退位・即位番組」がはらむ危うさ 昭和天皇批判なおタブー=戸崎賢二

今年、天皇退位と新天皇の即位に向かって、テレビでは数多くのニュース、番組が放送されるだろう。おそらく「代替わりキャンペーン」とでもいえる様相を呈するに違いない。

その本格的な開始と思われる番組として、昨年12月23日と24日、2回にわたって放送されたNHK「天皇 運命の物語」第1話、第2話を見た。

この番組は4回シリーズで、第3話、4話は3月に放送という。

第1話「敗戦国の皇太子」は、「神の子」として侍従たちに育てられた天皇が、アメリカから教師として招聘されたヴァイニング夫人らの教育によって成長していく過程が辿られた。皇太子としてイギリス、アメリカを訪問し、かつての敵国から歓迎された歴史も組み込まれている。

第2話「いつもふたりで」は、前半で皇太子妃探しの時期から成婚パレードまでの記録、後半は皇太子夫妻として、災害被災者を訪問するなどの「公務」の開始期の記録をたどっている。とくに1975年、初めて沖縄を訪問したときの、火炎びんを投げつけられた事件を含むエピソードが詳しく描かれた。

この2本の番組は事実と証言でできるだけ客観的に描こうとしており、天皇夫妻を過度に賛美するものとは必ずしもなっていない。敬語が基本的に使われていないことでもそのような印象を与えている。

避けられた事実

しかし、この2番組には、注意深く避けられている事実がある。昭和天皇の戦争責任と沖縄との関わりである。

現天皇は、少年の頃から父である昭和天皇の影響を受けて育ったはずだ。

 ぼう大な被害者を生んだ戦争の開始を承認し、国体護持にこだわって降伏を遅らせた昭和天皇、この父の生涯について現天皇はどう考えていたのだろうか。この点は探索されていない。

 沖縄への強い思いから、11回にも及ぶ訪問があったことが番組で紹介された。この行為に、昭和天皇の有名な「沖縄メッセージ」が影響を与えていたかどうかも不明だ。

 昭和天皇は1947年9月、「米国の長期租借による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」というメッセージをアメリカに伝えた。長期にわたる皇室と沖縄の関係を描くなら、この歴史的事実は無視できなかったはずである。

今回の番組でも昭和天皇批判がタブーであることを示した形である。

次代以降が心配

 番組は、皇太子時代の最初の沖縄訪問でのメッセージを紹介した。その内容は「沖縄戦における県民の傷痕を深く省み、……払われた多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人々が長い年月をかけて記憶し、ひとりひとり深い内省の内にあって、この地に心を寄せていくことを置いて考えられません」、というものであった。ここには、自らの訪問も「一時的」なものに過ぎないという内省が見られる。

言葉を発したのが皇太子であるかどうかを超えて、人間としてきわめてまっとうな意思表示であると感じる。

 第3話以降に扱われるだろうが、即位後、毎年の誕生日の記者会見では、

憲法を守ること、過去の歴史に眼を向けることの重要性が一貫して主張されてきた。2013年の会見では、日本国憲法制定時の人々の努力に感謝し、当時の「米国の知日派」の人々への感謝も述べている。

 誠実で善良な人間であればごく自然な発言と思えるが、政治的主張を禁じられた地位にあっては、ぎりぎりの決意を要したはずである。

こうした発言の集積は、当然、安倍政権の憲法にたいする姿勢への対抗軸としてとらえられるという現象を生んだ。

 しかし、天皇の発言を過大に評価し、政治効果を持つものとして期待する風潮には危うさを感じる。現天皇の発言のような内容であれば問題はないかもしれないが、これが次代以降、国粋的、排外主義的な天皇の「お言葉」であったらどうなるか。 

おそらく「代替わりキャンペーン」では、天皇への絶対的敬意を基調に、天皇制への批判はタブーとされるだろう。そうした番組群によって、天皇の地位や発言が重要度を増す空気は、戦前回帰の気配があり、危険である。

現在の象徴天皇制は建て前としては国民主権のもとにある。制度も天皇のあり方も、国民が批判を含めて自由に考えてよいことである。

視聴者は、この原則にしたがって「代替わりキャンぺーン」に冷静に向き合うことが求められる。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 11:11 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月28日

【メディア気象台】 2018年12月から19年1月=編集部

◇民放連、改憲意見CM自粛推奨

民放連は20日、憲法改正の国民投票のテレビCMに関する基本姿勢を発表した。法で制限されていない改憲への意見を表明するCMについても、投票前の14日前から放送しないことを民放各社に推奨する考えを示した。投票を呼び掛ける勧奨CMと、賛否を伝える意見表明CMに分けられ、勧奨CMは主権者が冷静に判断する環境づくりのため、投票日14日前から禁止される。立憲民主党など野党からは、CMが政党などの資金力で左右されないよう、量の規制強化を求める意見が出ている。(「毎日」12月21日付ほか)

◇戦後初の邦字紙面、廃刊へ〜ブラジル「サンパウロ新聞」

世界最大の日系社会がある世界最大のブラジルの邦字紙「サンパウロ新聞」は20日、読者減少のため、廃刊の方針を明らかにした。同紙は1946年に創刊された第二次大戦後初の現地邦字紙、77年には菊池寛賞を受賞していた。週5日発行してきた。だが、世代交代に伴い日本語が読める日系人が減少、発行部数も減っていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇独の著名記者がねつ造記事

ドイツ有力誌シュピーゲルは20日、執筆した複数の記事で虚偽の記述が見つかったとしてクーラス・レロティウス記者(32)を解雇したと発表した。ルポルタージュを得意とする著名記者で、ドイツジャーナリズム界の複数の賞を受賞、米テレビ界からも表彰されていた。レロティウス記者は同誌の調査に「成功すればするほど失敗は許されないと感じるようになった」と動機を語った。同誌によると、2011年以降の記事約60本のうち少なくとも14本に虚偽の記述があった。架空のインタビュー記事を書いたり、ネット上や他の新聞に掲載された写真を自分の記事に使ったりしていた。(「毎日」12月21日付ほか)

◇殺害された記者、再び増加

国際非政府組織(NGO)「国境なき記者団」がまとめた報告書によると、2018年に殺害された職業ジャーナリストは63人となり、17年の55人を上回った。10月にはサウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。強権的な政治指導者による言論弾圧や犯罪組織による暗殺の増加が背景にある。同団体によると死亡数が最も多い国はアフガニスタンで14人だった。武装勢力との戦闘や爆撃に巻き込まれるケースが後を絶たない。麻薬カルテルの抗争が激化するメキシコでは7人、新聞社を狙った銃撃戦が発生した米国では6人が命を落とした。中国やトルコ、エジプトなどで反体制的な論調の記者を拘束する動きも強まっている。18年に投獄されたジャーナリストは170人にのぼる。(「日経」12月22日付ほか)

◇「週刊SPA!」が性的表現で謝罪

扶桑社の男性誌「週刊SPA!」編集部は7日、昨年12月25日号の、女子大生を性的にランク付けした記事中の表現について「扇情的になってしまった」「読者の気分を害する可能性のある特集になってしまった」と、謝罪するコメントを発表した。同号では、特集記事の一環で「ヤレる女子大生RANKING」という順位表を、大学の実名入りで掲載した。この表が「女性差別」だとしてインターネット上で反発の声が高まり、同誌に記事撤回や謝罪を求めるネット上の署名活動に多くの賛同が集まった。(「東京」1月8日付ほか)

◇ロイター記者、二審も実刑

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャへの迫害問題の取材を巡り、国家機密法違反罪に問われたロイター通信のワ・ロン記者(32)とチョー・ソウ・ウー記者(28)の控訴審判決で、最大都市ヤンゴンの高裁は11日、禁固7年の一審判決を支持し、控訴を棄却した。両記者は西部ラカイン州で国軍の兵士らがロヒンギャ10人を殺害した事件を取材していたが、ヤンゴンで治安部隊の極秘資料を警察から入手したとして逮捕された。(「東京」1月12日付ほか)

◇宮古新報労組が会社清算通知撤回など要求

沖縄県宮古島市で日刊紙を発行する「宮古新報」が会社清算と全社員の解雇を同社労働組合に通告したことをめぐり、組合側は11日、宮古市内で記者会見を開いた。「一方的な解雇通知は断じて許すことはできない」とした上で、同社に対し通知の撤回や事業譲渡に向けた交渉手続きを行うよう求めた。(「しんぶん赤旗」1月13日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 13:32 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月27日

【今週の風考計】1.27─鎌倉アルプス山歩きと「実朝暗殺」の縁

ちょうど1週間前、仲間と一緒に鎌倉アルプスを歩いた。北鎌倉駅から建長寺の総門、三門をくぐり仏殿での参拝後、方丈の奥へ進む。
曲折した急な石段を上りきると鎮守府・半僧坊。天狗の像が立ち並び、麓の建長寺のような禅寺とは違う雰囲気を醸し出す。さらに西に張り出すテラスから青空に映える富士山を望む。十王岩から今泉台分岐への山道をたどり大平山の頂上へ。

昼食後、瑞泉寺に向かう。禅宗の高僧・夢窓疎石が開創した瑞泉寺には、鎌倉石の岩盤を巧みに彫った壮大な石庭が広がる。京都の天龍寺や西芳寺(苔寺)の庭も手がけた、日本の中世を代表する禅僧の活躍が思い浮かぶ。残念ながら境内の枝垂れ梅は、いまだ開花せず。
その代わり鳥居わきで河津桜が咲く鎌倉宮に足を延ばし、脇道を通って鶴岡八幡宮へ。夕日に照り映える朱塗りの本宮楼門、そこへと続く石段のわきに、9年前に倒伏した大銀杏のヒコバエから、小さな若芽が芽吹き、今や枝も伸びて参拝客を喜ばせている。

さて1月27日、今から800年前の建保7年1月27日である。鎌倉幕府3代将軍・源実朝が、2尺ほど積もる雪のなかを拝賀に訪れた鶴岡八幡宮で暗殺された。享年28(満26歳)。犯人は自分の兄・頼家の遺児・公暁。八幡宮の石段わきに立つ大銀杏に隠れて機会をうかがっていたと伝わる。

『金槐和歌集』などの歌人として知られていた実朝の死により、京都・朝廷と北条家が執権を握る鎌倉幕府との関係がぎくしゃくし、2年後には「承久の乱」が勃発する。朝廷に君臨する後鳥羽上皇が鎌倉幕府の執権・北条義時を討つべく、兵を挙げる。
しかし敗れた後鳥羽上皇は隠岐に配流され、以後、北条氏一門を中心とする武家勢力の執権政治が100年以上続き、威勢は全国に及ぶことになった。携行していた坂井孝一『承久の乱』(中公新書)を、往復の湘南ライン車内で熟読した。(2019/1/27)
posted by JCJ at 13:58 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【編集長EYE】 あの「ハズキルーペ」永田町で話題に=橋詰雅博

 政党支持率1%台に沈む野党第2党の国民民主党(代表・玉木雄一郎衆院議員)は、第1党の立憲民主党との違いを強調し、支持率浮上に懸命だ。国民投票法改正案を真っ先に公表したのもそのためである。@政党によるテレビCMの禁止A投票運動を行う団体の資金の上限は5億円B国政選挙との重複回避―がその骨子。  

 憲法問題で野党との話し合いが暗礁に乗り上げていた自民党と公明党はこの改正案に乗り気だった。

 「改憲作業を急ぎたい安倍官邸が『改正案をまるのみして、国民民主党を取り込め』と自民党の下村博文憲法改正推進本部長にハッパをかけたのです。しかし、11月の『改憲論議しない野党は職場放棄』の下村発言で野党が反発し、官邸の思惑は頓挫した。だが、改正案の取り込みを官邸はあきらめたわけでない」(国会事情通)

 また、改憲をめぐり永田町では奇妙なウワサが流れている。ウワサの主はメガネ型拡大鏡「ハズキルーペ」の製造販売会社の会長兼CEOの松村謙三氏(60)だ。松村氏は4歳年上の安倍晋三首相と同じく成蹊大出身。今までさまざまな会社を買収して築いた「松村グループ」の総帥で、経済同友会会員だ。安倍友≠ゥは、はっきりしないが……。

 ハズキルーペの何がそんなに心配なのか。国民投票法改正に絡む都内の集会に参加していた広告業界に詳しい著述家の本間龍氏は、こう指摘した。

 「ハズキルーペがメインスポンサーになっているのは43番組。急速に増えていて、情報番組系が70%占めている。発議後の国民投票運動がスタートしたら、ハズキルーペのスポンサー番組のCMの中身が変化するのではないと危惧されている。改憲を打ち出した意見CMなどが流れる可能性がある。スポンサーだからと言って、簡単にCMの中身が変えられるのかという意見もあるが、CM審査を行う考査セクションをパスすれば問題ありません」

 ウワサで終わることを願うのみだ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 11:32 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月26日

【リアル北朝鮮】 「新年の辞」で経済単語38回も 斬新な発表に驚き

 1月1日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、恒例の「新年の辞」を発表した。YouTubeで発表の動画を見ながら、驚いた。こんな感じだ。

 新年午前12時の時報と同時に、朝鮮労働党中央庁舎が映し出される。カメラが建物の内部に入ると、深々とお辞儀をする男性。執事と言われる金昌善氏だ。間もなく金委員長が姿を現し、歩き始める。その後ろを、妹の金与正氏、側近の趙甬元氏、先ほどの金昌善氏が付き従う。

 場面は切り替わり、祖父の金日成氏、父の金正日氏の大きな肖像画などが背後に飾られた執務室と思しき部屋で、金委員長はソファに座り、「新年の辞」を発表した。

 斬新な発表の仕方もさることながら、その内容も例年とは異なっていた。経済問題が大半を占めたのだ。昨年の21回に比べ、「経済」という単語は38回も使われた。逆に防衛分野の言及はほとんどなかった。金委員長自ら、経済建設に全力を尽くす決意を披露したわけだ。

 昨年4月に開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第3回全体会議で、金委員長は核開発と経済建設を同時に推し進める並進路線の勝利を宣言し、経済建設に集中すると語った。自らの核開発の目標は達成できたから、今後は経済建設中心路線でいくというものだった。実際、北朝鮮は17年9月を最後に、核実験を封印した。豊渓里の核実験場も爆破した。

 16年5月の朝鮮労働党第7回大会で金委員長は「国家経済発展5カ年戦略」を提示したが、同戦略は来年が最終年だ。金委員長としては、どうしたって経済問題を解決させなければならない。

 金委員長は7日から10日まで、中国を訪問した。経済技術開発区を視察したという話も伝わってきている。

 新年にあたり自立経済を強調した金委員長だが、改革・開放路線を進めるしか解決の道がないことは十分に分かっているはずだ。中国の経験から学ぼうとしているかもしれない。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 09:56 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月25日

【JCJ沖縄】 2月9日集会 「遅すぎた聖断」上映 各賞合同祝賀会も=編集部 

 2017年2月に結成されたJCJ沖縄は、2月9日(土)に那覇市で集会を開く。結成当時@年1回は講演会やシンポジウムなどを開催A同時に県内メディアが受賞した各賞合同祝賀会を開く―という活動方針案が提示された。今回、それを実現する。

 JCJ沖縄事務局長の米倉外昭さん(琉球新報)によると、集会の中身は3つに分かれる。まず1988年にRBC琉球放送が制作した「遅すぎた聖断〜検証・沖縄戦への道〜」(写真=JCJ賞受賞)をRBCホールで15時から40分間上映する。今年4月に天皇の代替わりが行われることが上映のきっかけになった。番組は、昭和天皇の「聖断」が1945年8月13日ではなく、もっと早くに実施されていたならば、壮絶な沖縄戦の開始もなく、15万人という犠牲者を出すことはなかっただろうと昭和天皇の戦争指導と戦争責任を問う内容だ。

これは近衛文麿元首相が45年2月14日に昭和天皇に早期の「終戦」を進言したが、これに対して「もう一度戦果をあげてからではないと」と昭和天皇が一蹴したエピソードが根拠になっている。上映後、当時番組を制作した人につくったいきさつなどを報告してもらう。

 次に同じ会場で16時から各賞合同報告会が行われる。昨年4月から現在まで受賞した県内のメディアの代表やジャーナリストがあいさつする。17時に終了予定。メディアやJCJの各関係者に声をかけて参加を誘う。入場無料だが、事前に申し込みが必要だ。

 そして18時から県庁前の「花兆萬亀」で合同祝賀会を開催。会費3000円。

 参加する橋詰雅博事務局長らがJCJを紹介したリーフレットやJCJ賞カンパ要請チラシ、月刊機関紙「ジャーナリスト」、東海大と共同制作した冊子「JOURNALISTs」などを会場で配布する。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号

 
posted by JCJ at 10:34 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月20日

【今週の風考計】1.20─「オリオンビール」と「大同江ビール」の味

●創業60年を迎える沖縄の「オリオンビール」が、野村ホールディングスと米国の投資ファンド・カーライルに買収される─との報道に驚いた。
●買収の理由は、カーライルが持つ海外企業との豊富なパイプを生かし、「オリオンビール」の海外展開を本格化するというのだ。買収額は数百億円規模。地元の沖縄県では断トツの売り上げ。18年3月期の売上高は283億円だった。

●沖縄に行けば「オリオンビール」、Tシャツも星3つにOrionのロゴ入りを着る愛飲者にとっては、「あの地ビールが買収されるのは悔しい」としか言いようがない。日本の地ビールが消えてしまう。
●12年前、ベトナムをハノイからホーチミン市へ、国道1号線沿いに旅する途中、飲んだ「333(バーバーバー)」や「ビア・サイゴン」の味も思い浮かぶ。確か355ml瓶で日本円にして100円ぐらいだった。

●昨年12月に刊行された、文聖姫『麦酒とテポドン』(平凡社新書)にある、「大同江ビール」(テドンガンメクチュ)の記述も新鮮だ。故金正日総書記が「人民に良質なビールを届けよう」との号令で始まったプロジェクトが、いまや北朝鮮を代表するブランドに成長した。
●味は中国の「青島ビール」に似るが、連れ立って飲みに行くビアホールは満員。若い女性も7種類の生ビールを味わう。夏には平壌でビール祭りも開かれる。缶ビールも生産され海外への輸出がもくろまれている。

●文聖姫さんは「北朝鮮は核・ミサイルの開発でなく、自慢の大同江ビールを世界中に輸出できる道を選んでほしい」と締めくくる。日本でも大同江ビールが飲めるよう、1日も早い経済交流の再開、日朝国交回復を願ってやまない。(2019/1/20)
posted by JCJ at 13:09 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月13日

【今週の風考計】1.13─巨大地震が日本列島を襲う確率と危険!

年始早々から地震のニュースに身をすくめた。3日18時ごろの熊本地方地震はM5.5、震源の深さ10km。NHK大河ドラマ「いだてん」の主人公・金栗四三の生誕地でもある、和水町(なごみまち)では震度6を観測した。
この地域周辺には佐賀県の玄海原発2機、鹿児島県の川内原発2機が稼働している。11日にオープンした「日本マラソンの父 金栗四三ミュージアム」も、地震だけでなく原発事故に、いつ被災するとも限らない。

74年前の1月13日には、M6.8の三河地震が発生し、死者2306人・家屋全壊7221戸の大きな被害を出した。日本が敗戦に向かう1945年前後には、南海トラフを震源とする「昭和の4大地震」が連続し、死者1,000人を超える被害を出した。三河地震もその一つである。
17日は阪神・淡路大震災の24年目にあたる。活断層のずれによる地震の規模はM7.3、死者6,434人・家屋全壊104,906戸、8年前の東日本大震災に次ぐ甚大な被害となった。原発事故による被害がなかっただけでも、今から思えば不幸中の幸い、また原発の恐ろしさを再認識させられる。

さて巨大地震が日本列島を襲う可能性はどうか。3・11東日本大地震の震源域周辺の東北沖や房総沖は、いまだに地震が起きやすい状況が続いている。さらに北海道東部の千島海溝沿の地震も発生の確率が高い。いつM7クラスの地震が起きてもおかしくない。
西日本も油断はできない。静岡県から九州沖合にかけて伸びる南海トラフは、M8〜9クラスの巨大地震を起こす。その危機は目前に迫っている。九州の火山にも危険な兆候がある。熊本地方地震で活発化した中央構造線の上にある阿蘇山、雲仙普賢岳も注意が必要だ。もはや、日本に安全な場所などない。研究者や専門家は警鐘を鳴らす。(2019/1/13)
posted by JCJ at 11:43 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月09日

【映画の鏡】 ホロコースト逃れた88歳 『家へ帰ろう』 仕立てたスーツを届ける旅=今井 潤

アルゼンチンに住むユダヤ人の仕立て屋アブラハム88歳は自分を施設に入れようとする家族から逃れ、スペイン、フランスを経てポーランドへ向かうための旅に出る。アブラハムの旅の目的は自分が仕立てたスーツを友人に届けることだ。

 友人はホロコーストから逃れたアブラハムを父親とけんかをしてまで匿った命の恩人だ。最終目的地のウッチは第2次大戦中にナチスによってユダヤ人30万人、ポーランド人1万人以上が犠牲になったところだ。

過酷なホロコースト体験からポーランドとドイツという言葉を口にしないアブラハムはゆく先々で人々をてこずらせる。マドリッドのホテルの女主人、パリからドイツを通らずポーランドへ列車で訪れることが出来ないかと四苦八苦するアブラハムを助けるドイツ人

の文化人類学者など、旅の途中で出会う人たちはアブラハムの力になろうと手助けするシーンが続く。

 そしてたどり着いたウッチの街は70年前と同じたたずまいをしていた。アブラハムは親友と再会できるのか、奇跡は起きるのか。

 ブエノスアイレス出身のソラレス監督は自身の祖父の家では「ポーランド」という言葉がタブーであったことから発想を得て、この感動作を完成させた。

 主人公のアブラハムの着ているジャケットの色もエンジやグリーンの立縞で、いつも違うアスコットタイを首に巻いているのは何ともおしゃれで、衣装担当者のセンスが光っている。

(公開は12月15日土曜日から神田岩波ホール)

今井 潤



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 14:43 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 三権分立の視点欠く「徴用工」論調=白垣詔男

 「徴用工訴訟」で韓国最高裁が10月30日と11月29日の2回、いずれも日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。このニュースに対して日本政府は安倍晋三首相、河野太郎外相ともに口を極めて韓国側を非難した。新聞社説も「蓄積を無にせぬ対応を」(10月31日、朝日)、「日韓首脳は率直に協議を」(11月30日、毎日)、「文政権は収拾策を早急に」(11月30日、読売)、「政府は冷静に解決策探れ」(10月31日、西日本)と政府間協議の必要性を訴えた。

 そこには、司法が行政から独立しているという「三権分立」の視点が全くない。日本政府が韓国政府に「抗議」するのは、日本では、司法は行政に忖度した判断ばかりしており、それが当たり前のように政府が考えていることを、安倍、河野氏の発言からうかがい知ることができる。

 しかも、日本では最高裁も政府も1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「個人の請求権は消滅しない」と判断しているが、それさえも無視して、今回、政府も新聞各紙も国家間の問題だけに照準を当てているのは納得できない。さらに、日本政府は賠償請求の当事者の各企業に、韓国最高裁判決に従わないように要請した。この政府の姿勢もおかしい。

 かつて、中国で同じような裁判で三菱マテリアル(戦時中は三菱鉱業)などが判決に従って中国人原告に話し合いを持って補償したが、そのときの日本政府は、その判決に異を唱えなかった。今回とは、どこが違うのだろうか。それなのに今回、新聞各紙は当時の「三菱マテリアルのやり方」を取り上げてもいない。

 「新聞の右傾化」と言ってしまえば、そうなのかもしれないが、少なくとも政府の韓国政府に対する高圧的な物言いについては「三権分立」を踏まえる冷静な判断があるべきだった。

 韓国では、朴槿恵政権の際、「徴用工訴訟」を先送りした最高裁の前判事2人に対してソウル中央地検が職権乱用などの容疑で逮捕状を出した(その後、ソウル中央地裁が棄却)。ソウル中央地検は「政権の意向をくんだ先送り」は犯罪であると主張した。これが「三権分立」の基本ではないか。日本の司法は見習うべきで、マスコミも「三権分立」についてもっと論じるべきだろう。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 13:51 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月07日

【内政】 内乱予備罪で安倍首相を告発 最高検「返戻」に「補充書」で対抗 闘い続ける平野元参院議員=編集部

安倍晋三政権はこの5年半を超す過程で、戦後日本の歩みを支えた現行憲法を踏みにじる行為を次々と繰り返してきた。そして来年には、緊急事態条項を含む条文改憲に踏み込む姿勢を一段と鮮明にしている。こうした日本の民主主義の国家的危機に今年9月7日、安倍首相を内乱予備罪で告発する注目すべき告発状が最高検に提出された。

安倍政治の手法問う

告発は@平成26年7月1日の「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定」A平成29年6月22日に野党が提出した「臨時国会召集要求」を約3ヶ月間も拒否。同年9月28日召集した衆院第194回国会臨時会を審議なしの本会議開催120秒解散行為B平成30年3月2日付朝日新聞報道を契機に表面化した森友国有地売却を巡る財務省決裁公文書改竄への対応の「不作為」行為が柱。これらについて告発は、@憲法統治の基本秩序壊乱を目的とした破憲閣議決定A憲法53条違反行為の国会召集拒否と審議なし解散B改竄事件への対応の不作為行為自体が国の統治機構の破壊と憲法統治の基本秩序を混乱、懐乱する現実の準備行為だと、厳しく指弾した。

大手メディアは黙殺

告発者は元参議院議員の平野貞夫氏と弁護士の山口紀洋氏。平野氏は長く衆議院事務局に勤め、平成7年の刑法改正には法務委員として関わった国会運営、国会法の生き字引。山口氏は45年に渡り水俣病裁判に取り組む経歴の持ち主。告発状提出時には記者会見もあったが、ほとんどの大手メディアは「見ざる聞かざる言わざる」を決め込んだ。そして最高検は「具体的犯罪事実が判然としていない」と、10月10日付で「返戻(ルビ=へん・れい)」を通知し、「受理したくない」姿勢を示した。

だが、両氏は「本件は首相の『憲法破壊』という国家の最重大事件。『返戻』は国民の告発権の侵害で検察の職務義務違反」として、「告発理由補充書」を提出した。闘いは新たな局面に入りさらに続く。

 ちなみに9月7日付告発状には第2次安倍政権成立以後の「破憲犯罪容疑3件」と、報道などで公知の63項目の具体的犯罪事実が証拠として提出されている。「判然としない部分」があるなら、それを明示すべきは検察側だ。

 今年8月1日付東京新聞朝刊は、大島理森・衆議院議長が「民主主義の危機。数々の不祥事に安倍政権は原因を明らかにし、改善策を」と異例の「所感」を表明したことを報じた。

中江兆民の「民主の主の字を解剖すれば、王の頭に釘を打つ」を引くまでもない。主権者である我々が問われている。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 13:16 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月06日

【今週の風考計】1.6─50年前の出来事から新たな気概を汲む!

あけましておめでとうございます。亥年の1年、どうなるかを考えるに、まずは温故知新を旨に、クロニクルを繰った。

50年前の1月16日、チェコスロバキアで、カレル大学の学生ヤン・パラフが、ソ連の軍事介入や「プラハの春」に象徴される改革の後退に抗議し、焼身自殺を図っている。
おなじ50年前の1月18 日、日本では全共闘に占拠・封鎖されていた東大・安田講堂に、機動隊が突入し封鎖解除、ついに東大闘争は潰えた。

一方、和平への動きも加速する。ベトナム戦争終結に向けた交渉が、50年前の1 月 25日からは、アメリカと北ベトナム両代表に加え、南ベトナム政府と南ベトナム解放民族戦線も加わり、4者による拡大和平会談となった。
この年1月20日に就任したニクソン大統領は、こうした状況の下でベトナムからの「名誉ある撤退」を決意した。その下地には「いちご白書」で有名なコロンビア大学の学生闘争のほか、フランス・イタリア・西ドイツ・日本などでのベトナム反戦のスチューデント・パワーがあったのは間違いない。

もう一度、日本にフォーカスしてみよう。50年前の1月6日、沖繩いのちを守る県民共闘会議が、米軍のB52撤去を要求して「2・4ゼネスト」を決定している。9日には国防会議が、自衛隊に配備する次期主力戦闘機F4E(ダグラス社)104機の国産化を決める。
15日、米ロッキード社は児玉誉士夫をトライスター売込みのコンサルタントとして5000万円で契約。7年後の1976年に「ロッキード事件」で明るみにでる。
なんと米国の戦争ビジネスに牛耳られる、今の日本の防衛予算の根源を見る思いだ。歴史に学び事実を明らかにし真実を追求する気概を新たにしている。(2019/1/6)
posted by JCJ at 12:08 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

【支部リポート】 北海道 20代男女を沖縄に派遣 辺野古・高江を3月までに取材=岩井義昭

JCJ本部が2018年度からスタートさせた企画「若い目が見た沖縄」。これは本部が経費を一部負担し、沖縄に若い人を派遣するもの。支部では9月3日の運営委員会で、メディアに募集記事の掲載を要請しようと決めた。資料の配布した中で、北海道新聞が紙面に扱ってくれたこともあって、10月末までに4人の応募があった。

 うれしいことに全員が20歳代だ。男性の社会人1人、女性1人を含む大学生3人である。

 11月19日の運営委員会で竹内章浩氏(社会人)、小村 優氏(大学4年)の2人を選び、派遣することを決めた。志望の理由がいずれもしっかりした内容だったので、1人を追加した。財源があれば全員を派遣したいほどだ。

 2人の特派員は2019年3月までに辺野古・高江を含む取材をして、JCJ機関紙「ジャーナリスト」に記事を掲載することになっている。内容は基地問題に限らないが、「市民特派員」らしい視点を期待している。

 今期、支部は4月29日の望月衣塑子氏、9月28日の野田正彰氏らの講演を主催した。望月氏の講演には250人、野田氏の講演には58人が参加している。会場で「ジャーナリスト」のバックナンバーを配布し、会員勧誘と購読の訴えをしたのだが会員や読者は増えなかった。このままでは組織の拡大に結びつかない。単なる興行の繰り返しに終わりかねない危惧を抱いた。

 望月衣塑子氏のときは、会場の定員を50人以上うわまわる事態を生じた。前年の前川喜平氏のときも定員の2倍の参加者が集まってしまい、さんざん懲りたはずだったが、またもやの失敗≠ナある。

 実は翌日、別の主催者による望月氏の講演が某私大の会場を借りて行われるはずだった。ところが正体不明の連中が、この私大に脅迫まがいの圧力をかけてきたのである。パターンは植村 隆氏を排除せよと恫喝された北星大学の場合とまったく同じでないか。

 前日、支部が主催した望月氏の会場は公的な会場であったので彼らも手が出せなかったに過ぎない。後日の教訓にするつもりである。

岩井善昭

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:42 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月04日

【リアル北朝鮮】 米、金委員長の側近3人を制裁へ 人権問題に絡めて=文聖姫 

「表では両国間の敵対と対決の歴史に終止符を打とうと確約し、裏では対話の相手の尊厳と体制をこき下ろし制裁圧力策動に狂奔する米国の二重基準」

労働新聞2018年12月11日付論評は、米政府が「人身売買被害者保護法」に従った対北朝鮮制裁を続けることを決定(同年11月29日)したことに反発し、こう指摘した。

労働新聞が論評を掲載した前日の10日、米財務省は北朝鮮の人権蹂躙に責任があるとして、3人の北朝鮮幹部を制裁対象とした。崔龍海朝鮮労働党副委員長兼組織指導部長、鄭京沢国家保衛相、朴光浩朝鮮労働党副委員長兼宣伝扇動部長の3人。  

いずれも金正恩朝鮮労働党委員長の側近たちだ。特に崔副委員長は、金永南最高人民会議常任委員会委員長に継ぐナンバー3だが、実質的には金委員長の右腕とされる。

 また、崔副委員長が部長を兼務する組織指導部は、朝鮮労働党内において組織生活指導を担当し、朴副委員長が部長を兼務する宣伝扇動部は思想生活指導を担当する。

この両部署が、幹部を含めた党員の生活全般を統制している。組織指導部は党員の検閲も担当するといわれる。鄭氏が大臣を務める国家保衛省は秘密警察≠ニされ、スパイや反体制派を摘発する部署だ。つまり制裁対象になった3人が長を務める部署は、北朝鮮の人々を統制・監視する機関という共通点がある。

 今回の米財務省の措置に対し中国の陸慷外交部報道官は11日のブリーフィングで、「情勢を緩和するのに助けとなる事をすべきで、むしろ相反する事をしてはいけない」と米側を牽制した。膠着状態に陥っている米朝関係をさらに悪化させることへの懸念を示したものといえる。

 北朝鮮からは12日現在、反応は示されていないが、側近中の側近を制裁対象にされた金委員長が黙っているとは考えにくい。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:25 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月03日

【沖縄リポート】 カミソリの刃がつく有刺鉄線を張る=浦島悦子

 大浦湾は荒れていた。磯に打ち付ける高い波しぶきが見える。12月7日、辺野古埋め立て土砂を積んだ運搬船4隻と陸揚げ用台船1隻が大浦湾に到着。仮桟橋として使われているK9護岸から週明けにも陸揚げされるはずだったが、船は護岸に近づけない。海神≠燗{っているようだ。

 辺野古埋め立ての是非を問う県民投票(2月24日実施)を前に、何としても年内に土砂を投入したい安倍晋三政権は、行政不服審査法を悪用して埋め立て承認撤回を効力停止・工事再開したものの、埋め立て土砂搬出港(本部港塩川地区)が台風で破損し行き詰まった。そこで隣接する名護市安和の民間企業・琉球セメント屋部工場の桟橋の使用を密かに準備し、12月3日朝、土砂搬出を開始した。県民の抗議行動を想定して、事前に剃刀のような刃が付いた有刺鉄線を張り巡らす用意周到さだった。琉球セメントは沖縄県内唯一のセメントメーカーで、かつては宇部興産の子会社だった。

 沖縄県は赤土流出防止条例違反などで搬出停止を求め、同日午後、作業は一時止まったが、政府は搬出方法を変えて5日夕方、作業を再開。運搬船は辺野古へ向かった。

 あらゆる違法・脱法、アクロバット的な「奇策」を弄して民主主義と地方自治を押しつぶそうとするこの政権は、異様としか言いようがない。

 そしてそれは辺野古にとどまらない。作業再開の一報を、私は、与那国・石垣・宮古・伊江島・高江・辺野古の県内6市民団体が上京し、合同で行った「軍事拡大に反対する」防衛省交渉の席で聞いた。各島々でも同様のやり方で米軍・自衛隊基地の建設や強化が進み、住民自治や暮らしが脅かされている。

 防衛省は係長以下の対応で、私たちの要請や質問にまともに答えられず、「沖縄をバカにするな!」と声が飛んだ。しかしそれでも、今回、島々が海を越えて共同の行動を起こした意義は大きい。米日軍事一体化の中、分断支配・個別撃破されるのではなく、住民同士が手をつなぎ、一体となって軍事拡大を止めていきたい。

 14日土砂投入を宣言した政府が「バケツ1杯でも」土砂を入れ、既成事実を作るべく、強行したとしても、そんなことで県民があきらめると思ったら大きな間違いだ。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:48 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月02日

【メディア気象台】 11月から12月=編集部

◇メディア女性主催でセクハラ法規制求める集会

セクシュアルハラスメントの防止に向けた法整備を考える集会が8日、衆議院第一議員会館で開かれた。セクハラ禁止を明記した法律がないため、被害救済が難しい現状が報告され、法規制を求める声が相次いだ。集会は、4月に前財務次官のセクハラ問題をきっかけに発足した「メディア女性ネットワーク」(WiMN)が主催。市民や国会議員ら約170人が参加した。(「東京」11月9日付)

◇ニュース見聞き「民放で」が最多

ニュースを見聞きする頻度が最も高いメディアは「民放テレビ」で、1日の平均視聴時間は36.2分だったことが「新聞通信調査会」の調査で分かった。これによると、ニュースを「読む・見聞きする」と答えた割合は民放91.8%、NHK79.8%、新聞70.1%、インターネット66.5%の順だった。(「しんぶん赤旗」11月11日付ほか)

◇イッテQ「祭り」休止〜やらせ疑惑、日テレ社長謝罪

日本テレビの大久保好男社長は15日、バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」のやらせ疑惑で「疑念や心配を掛ける事態となり、視聴者や出演者など多くの関係者におわび申し上げる」と謝罪した。疑惑が指摘された、海外の祭りに参加する企画は当面休止する。同企画の調査を進めて結果を公表し、責任者を処分する考えも示した。(「毎日」11月16日付ほか)

◇政権寄りTVもCNN支持

米CNNテレビ記者が記者会見での振る舞いを理由に、ホワイトハウスから「出入り禁止」処分を受けた問題で、複数の米メディアは14日、処分撤回を求め提訴したCNNを支持する共同声明を出した。日頃、トランプ政権寄りのFOXニュースも、CNN支持の姿勢を明確にした。共同声明には、AP通信、NBCニュース、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、USAツデー紙などが名を連ねている。報道の自由には「独立したジャーナリストが大統領とその行動にアクセスし、恣意的な理由で拒絶されないことが不可欠」と訴えた。(「しんぶん赤旗」11月16日付ほか)

◇ホワイトハウス、入庁規制を批判〜記者会が文書提出

米CNNテレビが記者のホワイトハウス入庁許可証の回復を求めた訴訟で、ホワイトハウス記者会は15日、大統領には記者の入庁を規制する権限があるとのトランプ大統領の主張は「誤りだ」とする文書を、ワシントンの連邦地裁に提出した。政権の主張を認めれば「危険な判例を作ることになる」と警告した。(「毎日」11月16日付夕刊ほか)

◇サウジ記者殺害、皇太子指示をCIAが断定

サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件で、ワシントン・ポスト紙電子版は16日、複数の関係者の話として、米中央情報局(CIA)がサウジのムハンマド皇太子が暗殺を指示したと断定したと報じた。報道によると、CIAは、皇太子の指示を受けた実弟ハリド駐米大使がカショギ氏にイスタンブールに出向くよう勧めた▽現場責任者が皇太子側近に任務完了と伝えた▽皇太子が権力を掌握する体制―などの情報に基づき、殺害を主導したと結論付けた。(「東京」11月18日付ほか)

◇NHKネット同時配信、法案提出へ

NHKの番組がテレビと同時にネットでも24時間見られる「常時同時配信」の実現に向け、総務省が来年の通常国会に放送法改正案を提出する詰めの調整に入った。NHKは1953年のテレビ放送開始以来、最大の転換点を迎えることになる。「公共放送」ではなくなり、「公共メディア」に生まれ変わるからだ。(「朝日」12月1日付ほか)

◇4K8K放送スタート

超高精細の4K8K衛星放送が1日午前10時、NHKやBS4局などではじまった。現行の放送は2Kで、4Kは4倍、8Kは16倍の画素数を持ち、きめ細かく迫力のある映像が特徴だ。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えた「次世代」の規格として、総務省や放送界が整備を進めてきた。視聴には規格に対応したチューナーやテレビが必要になる。(「神奈川」12月2日付ほか)

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:47 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月01日

【メディアウォッチ】 米朝首脳会談 テレビはどう伝えたか 拉致問題に偏りすぎ 中韓からの視点欠く=古川英一

 「ようやく学校に出てきた不良学生みたいな感じ」「何をするのかわからない怖い国」―大学生が語った、北朝鮮に対するイメージだ。世界を驚かせた6月の米朝首脳会談。この会談をテレビはどのように伝えたのかを検証する公開シンポジウムが12月初め、東京の立教大学で開かれた。メディア社会学科の砂川ゼミ、放送を語る会、JCJ、メディア総合研究所の共催だ。

 まず放送を語る会の戸崎賢二さんが、米朝首脳会談の前後2週間のNHKと民放合わせて12のニュース・情報番組をモニターし、比較検証した結果を報告した。

ポイントは米朝会談の歴史的意義がどのように報道されたのかだとしたうえで、戸崎さんは、全体的に見て@会談の意義を大きな歴史的視点でとらえず、限界を強調するなど否定的に見る傾向が目立ったA圧力一辺倒の政策をとる日本政府に対する批判的な報道が少なかったB国内、世界の世論や識者の意見・見解の紹介が少なく、会談を多面的に捉えるうえで十分とはいえなかった、と指摘した。

さらにキャスターや記者にも政府の立場を反映した感覚が染みついているのではないかと述べ、記者に基礎学力と歴史的教養が備わっているのかどうかと、今のメディアの劣化に対しても疑問を呈した。

 続いてTBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが講演した。日本人の中にある歴史的偏見と過去の清算が未解決であることや、拉致問題や核開発で政府が北朝鮮を仮想敵国化していると前置きし、金平さんは次のように分析した。

「国交がなく戦争も終わっていない米朝が会談をするという、それだけでも驚きの歴史的な首脳会談について日本は歴史的な評価ができない、ある種のバイアスがあるのではないか」

会談当日、金平さんは韓国で取材にしていたが、ソウル駅で市民が一斉に拍手をして喜んでいたのを見て、同じ民族同士の融和の基盤があることを感じ、自分はいままで韓国のことを知らなったと感じたという。

どのように報道するのか、パフォーマンスの裏

側や、真意、何が実質的成果なのか、そこに切り込むには複眼的な思考が必要なのに日本のメディアは拉致問題しか考えず、韓国や中国からの視点でも見るべきだと、指摘した。

シンポは、これだけでは終わらない。後半は金平さんと大学生たちとのパネルディスカッションだ。学生たちと横一列に並びながらの意見交換は、お互いが同じ目線で語り合う親近感を生み出した。

そこで出たのが、冒頭で紹介した学生たちの言葉だった。こうした感想を受けて金平さんは「韓国や北朝鮮については、偏見があり、たとえば慰安婦問題は人間の尊厳に関わるのに、『いい加減にしろよ』と向き合おうとしない、もし逆の立場だったら、なおざりにはできないではないか」と述べた。さらに「若い人たちが活字ではなくネットから情報を取り、ロジカル(論理的)な思考ができなくなっているのではないか」とぴしゃり。締めくくりの一言では学生たちから「ネットではなく足で稼ぐことの大切さを感じた」「北朝鮮について批判するだけではない見方をしていきたい」といった声が。金平さん「5年後にはピョンヤンにもマクドナルドができるのはないか、その日に取材にいければ」……歴史を作り上げいく現場で、私たち一人ひとりが、その証言者なのだと語った。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 14:52 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする