2019年05月31日

【若い目が見た沖縄】 米兵との「共存」に苦しむ女性 北海道支部・小村優さん報告

JCJは、30歳以下の若者を沖縄に派遣し、自由なテーマで取材してもらう「沖縄特派員」を今春、始めた。北海道支部の公募で選ばれた札幌の大学4年小村優さん(4月から赤旗記者)と北広島市の通訳、竹内章浩さんの報告を2回に分けてお届けする。
            ☆
新聞で沖縄と言えば基地問題だ。しかし、厚労省や沖縄県によると、沖縄の離婚率は2・59%と14年連続全国1位。全世帯に対する母子世帯出現率は5.46%で全国平均の2倍だ。ジェンダーの視点からは「強くなければ生きていけない」沖縄の女の問題が胸を衝く。

地元紙で驚いたのはお悔やみ欄だ。喪主だけでなく家族全員の氏名や、独立したとみられる子や孫、その配偶者、ひ孫、県外や海外の親類、友人代表まで載る。「長男嫁」「孫婿」などの続柄もつく。新聞社に「プライベートをさらし過ぎでは」と尋ねると「親しいのに名前を出さない方が失礼になる」との答えが返ってきた。故人と面識がなくても知人の親戚ならお参りする。おくやみ欄は、地域コミュニティの強さ、それを構成する「家」を重視する沖縄社会を象徴しているようだ。

その「家」で、位牌の継承には@父系の長男が引き継ぐA女性が引き継いではいけない、などの「決まり」がある(波平エリ子著「トートーメーの民俗学講座」)。家父長制の典型で、女性は、家とコミュニティを守る「土台」として、ひたすら働くことを求められる。火事、育児、仕立て屋の内職をこなしてきた那覇市内の親泊嘉子さん(84)は、家庭で男性のサポートは「期待薄」で「女の人は働いて、子供を産んで育てて。とにかく働き者でないとだめ」と話す。長男秀尚さん(56)も「基本、男は働かないからー」。

喜納育江琉球大学教授は「沖縄の女は強い、強くなければ沖縄の女ではないという前近代的な価値観が沖縄の女性を苦しめている」と見る。過重な家事労働やDX等から「家」を去る女性は少なくない。それが、離婚率などの高さに現れている。

しかし、待ち受けているのは貧困だ。非正規雇用率は全国で最も高い43,1%(2017年)で、その6割が女性。一人当たりの県民所得(15年)も216万6000円で最下位だ。観光中心の産業構造で、より高い収入を求めて水商売、風俗などで働く女性も多い。若年出産の多さはその反映でもある。

家やコミュニティから守られなくなった女性は、米軍基地と向き合うことになる。人を殺傷する訓練と実戦を続けている兵士との「共存」は沖縄の女性を否応なしに苦しめる。

「家の恥じ」をおそれ、表面化しない米兵による性暴力被害は少なくないといわれる。「日本の安全保障」と、二重の重荷を沖縄の女性たちは負わされている。

自分が無知と無関心という名の加害者であることを、思い知らされた特派員取材だった。

小村優

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月30日

【「令和」狂騒報道】 放送 恐るべき礼賛横並び 制度批判の言論伝えず=戸崎賢二 

 4月30日、5月1日の退位・即位の日、おびただしい量のテレビ報道があった。
印象を端的に言えば、恐るべき同一性ということだろうか。
 新天皇即位の日のテレビ報道は、前夜のカウントダウン、各地の「令和」奉祝行事、新生児が並ぶ産院の取材、それに、新天皇の過去の事績の歴史資料映像といった内容に終始し、ここに例外なく「おことば」を読み解く解説が加わる。
 日中のワイドショーはもちろん、5月1日のNHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」テレビ朝日「報道ステーション」TBS「NEWS23」などを視聴したが、どの局も判で押したように似た内容だった。
 こうした一連の報道がはらむ問題は何か。二つの点を指摘したい。

憲法違反の疑い
 第一の問題は、代替わりの儀式に憲法上の疑義があるという批判があるのに、その議論の存在が全く伝えられず、放送全体が奉祝の基調に蔽われていたことだ。
 即位の儀式は、天照大神から授かったとされる三種の神器の継承を核としている。これは、天皇が神の子孫であることを主張する宗教的行事であって、このような皇室祭祀を国家的行事とすることは、憲法の政教分離の原則に明らかに反する。
 また続いて行われた「朝見の儀」は、本来は「天皇が群臣を召して勅語を賜う儀式」(広辞苑)である。一段高ところに立った天皇に議員らが臣下のごとく拝謁するという形の儀式は、天皇の地位が国民の総意に基づくという憲法の精神とは相容れない。

 ニュース制作者は、こうした論点を知っていて意図的に避けたのだろうか。そうであればまだしも救いがある。
 筆者の推測にすぎないが、放送現場には、このような憲法の知識がそもそも不在であり、憲法や天皇制の起源に関する無知・無教養が蔓延しているのではないか。このほうがことは深刻である。
 4月18日、明仁天皇が伊勢神宮を参拝したとき、NHK「ニュースウオッチ9」のアナウンスは、伊勢神宮について「皇室の祖先の天照大神がまつられています」と留保抜きで紹介した。天皇の祖先が神であると明言した形である。
 こうした報道もまた無知を露呈するものだった。

天皇制批判排除
 もう一つの問題は、テレビでは、天皇制そのものに対する批判的言論が抹殺されたかのようにほとんど伝えられなかったことだ。
 ある特定の家柄に生まれたことで特別に高い地位に就く、という制度は、どう考えても憲法の原理には反する。しかも日本人は過去、その地位への尊崇と服従を強制され、戦争の惨禍を経験している。こうしたことから、天皇制に疑念を抱く国民が少数とはいえ、確実に存在するはずである。
 しかし、退位・即位関連番組は制度批判の言論をほとんど伝えていない。

 新天皇即位の「おことば」のなかに、注目すべき文言がある。
「…歴代の天皇のなされようを心にとどめ、自己の研鑽に励む」と新天皇は述べた。「歴代天皇」の中には当然昭和天皇が含まれるだろう。ここには昭和天皇の名によって遂行された戦争の時代から現行憲法の時代への転換の認識が見られない。各局ニュースは「おことば」を必ず解説したが、この点を指摘した解説は見当たらなかった。
 5月3日の「NEWS23」は、当日の毎日新聞の天皇制についての世論調査で、「天皇制は廃止すべき」とする意見が7パーセントあったと伝えた。象徴天皇制でよい、とする意見74パーセントに比べれば圧倒的に少数だが、100人の国民がいればそのうち7人が天皇制反対ということになる。決して少ない数ではない。
 代替わりの時期は、国民が天皇制とは何かを考える絶好の機会であるはずだった。少数意見の存在もまた報じられてしかるべきではなかったか。

同調圧力の増大
 憲法は「天皇の地位は国民の総意に基づく」と定めている。しかし、総意など関係なく、天皇を敬愛するのが当然と言わんばかりの報道があふれ天皇制は尊重すべきという空気がテレビ報道全体を覆っていた。
 こうした報道による同調圧力の増大は、日本をどこへ導くだろうか。
 たとえば将来、安保法の下で、自衛隊員が海外で大規模な戦争に参加し、戦死者が出るなどという「国家の非常事態」が生まれた場合、テレビメディアが、愛国心をあおる横並び一斉報道を展開し、国民の判断を誤らせるかもしれない。
 今回の代替わり報道はそうした懸念を身に迫るものとして感じさせた。
 テレビ報道に従事する人びとには、代替わり報道が本当にこれでよかったのか、という自省と批判精神の回復を求めたい。

戸崎賢二(元NHKディレクター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月29日

6月5日ジャーナリスト講座=少年事件の闇に迫った毎日新聞、山寺香記者

<少年はなぜ? 闇の日々に迫る――見過ごせなかった祖父母刺殺事件>

2014年3月、埼玉県川口市で当時17歳の少年が祖父母を殺害して金を奪う事件が起きた。裁判では、被告の少年が小学5年から学校に通わせてもらえず母親と義父から虐待を受けて育ち、事件に追い込まれていたことが明らかになった。
途中、公的機関や周囲の大人と接点があったにも関わらず、助け出されることはなかった。この事件の背景にあった虐待や貧困について考え、こうした子どもたちを生み出さないために私たち市民に何ができるのか、また、報道に携わる者として何ができるのかを考えたい。

日時=6月5日=午後6時半から9時半
会場=日比谷図書文化館4階小ホール=定員50人
東京都千代田区日比谷公園1−4
最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅
講師=毎日新聞・くらし医療部 山寺香記者
参加費:1000円=予約が必要です。
予約=参加希望日と氏名、大学名またはご職業、電話番号、メールアドレスを明記し、下記にメールかファクスでお申し込みください。講義内容はメディア志望の学生向けですが、社会人の方の参加も歓迎します。
メール sukabura7@gmail.com ファクス 03・3291・6478

□学生パスのお知らせ=夏6月の講座を4回以上受ける学生向けに3500円の学生パスを出します。会場で一括払いしていただければ5回すべてを自由に受講できます。
◎山寺香記者の略歴=毎日新聞「くらし医療部」記者。2003年、毎日新聞社入社。仙台支局、東京本社夕刊編集部、同生活報道部、さいたま支局を経て、19年5月から現職。これまでに、犯罪被害者支援や自殺対策、子どもの貧困・虐待、などを取材。著書に「誰もボクを見ていない〜なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか〜」=ポプラ社。一児の母。
主催:日本ジャーナリスト会議=略称JCJ 電話03・3291・6475=月水金の午後
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2019年05月28日

【内政】日米地位協定改定で世論盛り上がる 全国知事会・地方議会が動く 国内法適用で「主権確立を」=吉田敏浩

 米軍優位の不平等な日米地位協定の問題が注目されている。地位協定は米軍に、基地の運営などに「必要なすべての措置をとれる」強力な排他的管理権を認めている。米軍機墜落事故でも米軍が現場を封鎖し、日本側は現場検証も事情聴取もできない。米軍は事故原因の究明は二の次で訓練飛行を再開し、日本政府は容認してばかりいる。

 基地周辺の住民による米軍機騒音訴訟で、騒音公害として違法性と損害賠償は認められるが、飛行差し止めは認められない。米軍の活動に日本政府の規制は及ばないため差し止めはできないと裁判所は判断する。米軍の活動に対し日本の行政権も司法権も及ばないのが実態だ。危険な低空飛行訓練も野放しである。

 米軍という外国軍隊により主権が侵害され、そして憲法で保障された人権も侵害されている。こうした現状に対し、昨年7月、各都道府県の知事からなる全国知事会は、初めて地位協定の抜本的見直しを求める提言を、全会一致で採択し、政府にも要請した。その「米軍基地負担に関する提言」では、地位協定は「国内法の適用や自治体の基地立入権がない」など、日本にとって主権の確立が「十分とは言えない現況」だと指摘した上で、こう求めている。

「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること」

 米軍に対し必要な規制をかけて人権侵害などを防ぐためには、地位協定を抜本的に改定し、米軍への国内法の原則適用を明記する必要がある。しかし、政府は改定に後ろ向きだ。「運用の改善」と称する小手先の対応ばかりで、米軍の特権を見直そうとする姿勢はない。しかも、駐留外国軍隊には特別の取決めがない限り受入れ国の法令は適用されない、との見解を示す。

 しかし、駐留外国軍隊への国内法の原則適用は、実は国際的な常識である。沖縄県がドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスに調査団を送り、日米地位協定と比較してまとめた「他国地位協定調査報告書(欧州編)」によると、各国では米軍に対し航空法や環境法令、騒音に関する法令など国内法を原則適用している。低空飛行訓練も高度、飛行時間、訓練区域などに規制をかけている。横田空域のような米軍が航空管制を一手に握る空域もない(8面参照)。基地の排他的管理権も認めず、受入れ国の軍や自治体などの当局者の立入り権も保障される。日本とは異なり、「自国の法律や規則を米軍にも適用させることで自国の主権を確立、米軍の活動をコントロール」しているのだ。

 報告書は沖縄県のホームページに載っており、より広く知られてほしい。それは地位協定の抜本的改定に向けた世論の広がりにもつながるだろう。前述の全国知事会の提言を受けて、地方議会にも地位協定の改定などを求める意見書が出され、今年4月半ばの時点で、北海道・岩手など7つの道県議会と札幌市・長野市など122の市町村議会で決議された(「しんぶん赤旗」4月27日)。こうした取り組みの広がりも重要だ。
 ジャーナリズムが地位協定の問題点をさらに掘り下げ、米軍の特権を認める密約なども暴露し、改定の必要性を訴えることも望まれる。

吉田敏浩(ジャーナリスト・2017年「日米合同委員会の研究」でJCJ賞)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月27日

【リアル北朝鮮】米韓軍事演習の反発か「飛翔体」2回発射=文聖姫

 2017年11月29日の大陸間弾道ミサイル「火星15」発射以来、ミサイル発射を控えてきた北朝鮮だが、5月に入り、立て続けに2回、金正恩朝鮮労働党委員長指導のもと、火力攻撃訓練を行った。

 一つは4日に東海海上で前線および東部戦線防御部隊が行ったもので、二つ目は9日に西部戦線防御部隊が行ったものだ。  北朝鮮は8日、北南将領級軍事会談代表団報道官が朝鮮中央通信社の記者に答える形で、4日の訓練は「正常な訓練計画にのっとって我々の領海圏内で行われた」ものだと強調した。だから、米国も日本も「約束違反ではないとの立場を表明した」とも主張した。

 一方、米国防総省は9日、北朝鮮がこの日発射した「飛翔体」を弾道ミサイルと断定した。10日には岩屋毅防衛大臣も「短距離弾道ミサイルを発射」と記者会見で述べた。トランプ大統領は、「極めて深刻に見ている」(9日)と不快感を示している。

 北朝鮮はなぜ、ここへ来て立て続けに「飛翔体」を発射したのか。2月の米朝首脳会談が物別れに終わった後、米朝協議は進展していない。そうしたなかでの動きだけに気になるところだ。

 国営・朝鮮中央通信は、4月の段階で興味深い論評を配信していた。27日発の論評で、米韓が3月に実施した「同盟19―1」訓練と8月に実施予定の「同盟19―2」訓練を、「歴史的な北南、朝米首脳会談で実現した合意に対する違反」「朝鮮半島の平和雰囲気をつぶす挑発」だと非難していた。米韓が軍事訓練を行うなら、我々が通常の訓練をして何が悪いのか、ということなのだろうか。

 西部戦線で火力攻撃訓練が行われた9日、米司法省は石炭を輸送していた北朝鮮船籍の貨物船を差し押さえたことを発表した。北朝鮮外務省報道官は14日、談話を発表し、差し押さえが「新たな朝米関係樹立を公約した6・12朝米共同声明の基本精神を否定するもの」だと非難した。

 文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
posted by JCJ at 10:35 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月26日

【今週の風考計】5.26─15日夜、首相官邸から出た車の駐車場所

新聞に掲載の「首相動静」欄は、しっかり目を通したほうがよい。とりわけ最終行、18時頃からの面会・会食の相手には注意がカンジンだ。
その一例が5月15日の当該欄である。安倍首相は<午後7時30分、公邸、末延吉正東海大教授らと食事。10時6分末延氏ら出る。>と記されている。

末延吉正東海大教授といえば、山口県出身、建設業の御曹司。若い時から安倍晋三と面識があった。1979年に早大卒業後、テレビ朝日に入社。政治部長の時、部下に対する暴力事件で2004年に退職。
 現在はテレビ朝日の<大下容子ワイド!スクランブル>などでコメンテーターを務め、安倍首相を擁護しまくっている、典型的なマスコミ内の政権応援団の一人だ。

だが、ここに名前の載らない人物がいたという。幻冬舎の社長・見城徹氏が同席していた、という告発である。
「本と雑誌の知を再発見する」と謳うニュースサイト<LITERA>の編集部が、2019.05.21 10:55付けでWEBに公開している。
 その追撃取材によると、15日夜10時6分、首相公邸から出てきた車「黒いアルファード」が、渋谷区千駄ヶ谷にある幻冬舎本社の駐車場に停めてあったのを確認し、かつ官邸詰め記者が控えていた車のナンバーと照合したところ、一致したというのである。
首相公邸での15日夜7時30分からの会食に、同席していたもう一人の人物は、見城氏であるのは明らかだという。
 なぜ見城氏の名前だけが「首相動静」から隠されているのか。2014年7月から、彼の名は完全に秘密扱いになっている。その理由の解明が待たれる。

この15日前後は、見城氏にとって<嵐の1週間>となっていた。順に辿ってみたい。
 12日には、映画「空母いぶき」(5月24日公開)に総理大臣役で出演の俳優・佐藤浩市のコメントは、安倍首相を揶揄したものであり、「これは酷い。見過ごせない。」と、見城社長がツイッターで攻撃した。これに百田尚樹氏や阿比留瑠比氏ら安倍応援団と一緒になって、佐藤発言を歪曲して騒ぎが拡大。
4月に幻冬舎から刊行する津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫版を、突然、出版中止。その背景には、百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)を、コピペ疑惑や事実誤認などについて指摘した津原泰水氏への対抗処置があるとされ、批判が起きていた。15日当日、対応は<訴訟するしかなくなる>と強気のツイートを投稿。
16日、幻冬舎で刊行した津原氏2作品の実売部数までツイッターで公表し、著名な作家たちから、厳しい批判の声が嵐のように巻き起こり、猛抗議を受けていた。
 高橋源一郎氏は、「出版社の社長が、<こいつは売れない作家だ>とばかりに部数をさらしあげるなんていうのは、出版人の風上にもおけない行為である」と、痛烈な苦言を呈した。
17日、テレビ朝日の600回「番組審議会」に委員長として出席。19日、見城社長は深夜にツイッターを閉鎖。20日には、テレビ朝日と藤田晋氏のサイバーエージェントが共同出資して始めたAbemaTVの「徹の部屋」に出演し、「お詫び申し上げます」と謝罪、同番組の終了を宣言した。
 同番組は、見城社長がホストを務める2時間生放送のトーク番組。これまで安倍晋三首相や百田尚樹氏、有本香氏などのメンバーが出演してきた。
23日、幻冬舎の見城徹社長と社員一同の名前で、改めて津原泰水氏へのお詫びを、自社のホームページに掲載した。

しかし、幻冬舎は作家の“実売部数さらし”は謝罪したが、文庫本の刊行中止については、言及も謝罪もない。「表現や出版の自由」を擁護し出版文化を担うはずの出版社が、中止の理由に口を閉ざすのであれば、自ら「表現や出版の自由」を抑圧・封殺したと、批判されてもいたしかたない。

さて、15日の夜7時30分から10時6分までの2時間36分、見城氏は安倍首相と末延吉正氏を交えた会食で、何を話し合ったのか。<謀は密なるを以って良し>を決めこみ、<藪の中>にしていいのだろうか。(2019/5/26)
posted by JCJ at 10:04 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月25日

【編集長EYE】 欧州では外国軍占有空域はゼロ=橋詰雅博

 日本弁護士連合会(日弁連)が主催した「日米地位協定を検証する〜ドイツ・イタリアと比較して〜」と題するシンポジウムが5月11日に弁護士会館2階講堂で開かれた。当日は定員280人の講堂に約400人が参加。日弁連は「こんなに大勢くるとは予想していなかた」とうれしい悲鳴を上げていた。

 パネリストとして琉球新報の島袋良太記者や日弁連基地問題担当の福田護弁護士、沖縄弁護士会の松崎暁史弁護士らと共に沖縄県の池田竹州知事公室長も出席した。沖縄県は駐留米軍活動を対象としたドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス4カ国の地位協定などを調査した報告書を4月に発表した。各国の取材をした池田さんは報告書作成の中心メンバーだ。

 欧州各国への調査動機について池田さんはこう語った。

 「2016年末の名護市でのオスプレイ墜落事故に続き翌年10月には東村高江でヘリ不時着炎上事故が起きた。しかし、日米地位協定により米軍が現場を封鎖し、県の事故調査は阻まれた。当時の翁長雄志知時が『日本の米軍専用施設は沖縄に70%集中しているが、残る30%は本土にある。米軍機事故は日本全体の問題。外国はどう対応しているか調査したい』と言ったのがきっかけでした。2年前から調査を開始した」

 日本では米軍が管制業務を行う空域があり、特に横田基地管制官が担当する横田空域は有名。新潟県から静岡県まで1都9県に及ぶ広大なエリアだ。欧州の事情はどうなっているのか。

 「航空関係機関のヒアリング調査では、横田空域のような外国軍が占有する空域の存在は確認できませんでした」(池田さん)

 池田さんによると、横田空域や沖縄周辺の20カ所に広がる米軍訓練空域の話を航空関係者にしたら「日本は本当に主権を回復しているのか」と驚いていたという。

 しかも4カ国とも、駐留米軍の活動に対して国内法を適用している。国内法が適用されない日本とは雲泥の差だ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
posted by JCJ at 12:33 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月22日

【おすすめ本】臺 宏士『アベノメディアに抗う』─「恫喝」と「懐柔」で操るマスコミ支配に抗する人々の奮闘を克明に追う=丸山重威(ジャーナリズム研究者)

 メディアを使って独裁支配を進めようとしている安倍政権に、メディアはどう対峙しているか、それとも迎合したままなのか。
マスメディアに限らず、情報が溢れている時代において、その流れを「岸辺」でなく、流れの中に入ってでも、観察し記録し分析することは、メディア研究者が避けて通れない道である。また、その困難さを、いかに克服するか、それは共通の課題でもある。
 本書は、毎日新聞社でメディアを取材していた著者がフリーになり、安倍首相のメディア戦略を「アベノメディア」と名付けて、2年前に上梓した前著『検証アベノメディア』に続く労作だ。
前著は、2016年ごろまでのデータから問題を検証し、本書は、その後の動きを中心に「闘い」に焦点を当てている。
官邸記者会見の東京新聞・望月衣塑子さん、慰安婦問題の元朝日新聞の植村隆さん、「女たちの戦争と平和資料館」の池田恵里子さん、「メディアで働く女性ネットワーク」の松元千枝さんなどを紹介している。
 官邸記者会見問題では新聞労連の抗議声明を機に、運動はもう一回り広がった。植村問題も控訴審が始まった。問題はいまも続いている。
 インターネットの発達で、新聞、放送、出版など既成メディアが危機にあるいま、メディアが権力の情報に流されず、ジャーナリズム性を発揮して事実や真実を追究するのは、日本の民主主義にとって不可欠な仕事だ。
これからも著者の「アベノメディア・ウオッチ」を期待してやまない。
(緑風出版2000円)
「アベノメディアに抗う」.jpg
posted by JCJ at 09:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月19日

【今週の風考計】5.19─市民感覚からズレる裁判官の「常識」

女性に対する“性暴力”への無罪判決が相次いでいる。父親からの性的虐待や泥酔させての準強姦事件などに、どう裁判官は向き合ったのか。市民感覚からのズレの大きさには呆れる。

21日は裁判員裁判が始まって10年になる。9万人という多くの市民が、重大な刑事事件を扱う裁判員裁判に参加してきた。20歳以上の有権者から抽選で選ばれた裁判員6人が裁判官3人と合議で審理にあたる。
もし強姦致傷罪に当たる事件を、裁判員裁判で担当したら、「防御・抵抗することは可能であった」などの理由で、無罪判決が出せただろうか。職業裁判官ならではの矜持、詭弁を弄した法解釈と訴訟テクニック、さらには上昇志向からくる行政への配慮・忖度などが、審理では働きがちである。

そんなことは気にせず、新鮮な気持ちで裁判に向き合える市民の参加は意義が大きい。これまでの書面中心の審理から法廷での証言が重視され、社会常識とかけ離れた判決を出させないうえで、裁判員制度は刑事裁判に大改革をもたらした。
こうした経過を踏まえるとき、元朝鮮人慰安婦をめぐる「植村裁判」についても、触れざるを得ない。いま捏造記者とバッシングされた元朝日新聞記者・植村隆さんの名誉棄損回復裁判は、札幌地裁での不当判決に抗し、札幌高裁で控訴審が行われている。

先月末の第1回口頭弁論で、植村裁判弁護団は、
<櫻井よしこ氏は、1992年ごろ元慰安婦の強制連行体験や境遇に、心を寄せた記事を書きながら、突然22年後になって、明確な根拠を示さずに「人身売買説」を主張し、植村バッシングを始めた。しかも櫻井氏は植村氏への裏付け取材を怠り、また資料の引用や理解で誤りを繰り返している。なのに「捏造」と思いこむ「真実相当性」があるから、名誉棄損に当たらないとする免責判断は、あまりにも公正さを欠き、歴史に残る不当判決だ>
と訴えている。

少なくとも櫻井氏がジャーナリストを標榜する以上、テーマが重大であればあるほど、論評や記事の裏付け取材は、常識も常識。裁判官がこの社会常識すら無視して判決を下すなら、非常識も極まる。(2019/5/19)
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2019年05月18日

伊藤詩織さんにスラップ訴訟 山口氏側 1億3千万賠償を求める=編集部

レイプ疑惑事件で民事係争中の伊藤詩織さんと山口敬之・元ТBSワシントン支局長の訴訟で、被告山口氏側が1億3千万円の損害賠償と謝罪広告掲載などを求め、伊藤さんを反訴したことが明らかとなった。事件後、伊藤さんは様々なバッシングにさらされてきた。その中身はイギリスのBBCドキュメンタリー「日本の隠された恥」に余すところなく描かれた。反訴は明らかなスラップ訴訟。「恥を知れ」としか言いようがない。

 事件発生は2015年春。伊藤さんは数日後に準強姦容疑で告訴。翌16年6月に逮捕状も出たが山口氏逮捕は中村格警視庁刑事部長(当時)の執行停止命令で見送られた。同年7月、東京地検が嫌疑不十分で不起訴処分。伊藤さんの検察審査会への不服申し立ても17年秋、不起訴相当とされた。

刑事裁判での真相解明の道を閉ざされた伊藤さんは「望まない性行為」への民事訴訟を提起。同年暮れから民事に舞台が移ったが、第1回口頭弁論以降は弁論準備で非公開が続く中、今年2月に山口氏側の反訴が提起された。この反訴を受け、4月、市民らが立ち上がり、伊藤さんを「支援する会」も発足。事件の全容解明に迫る取り組みが再び燃え上がろうとしている。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月16日

【植村東京訴訟】 異例 5月10日再び口頭弁論 札幌では控訴審始まる=編集部

 慰安婦記事を「捏造」したとされた元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復を求める東京訴訟の行方が大きく揺れ動いている。昨年11月28日の最終弁論で結審し、3月20日判決の予定が原克也裁判長らの公正を妨げる異例の訴訟指揮で大幅に変更されたためだ。地裁は判決の1カ月半前に突然「弁論を再開する」と言い出し、被告の西岡力氏、文芸春秋社側に新証拠「吉田清治証言」関連証拠(朝日新聞社第三者委員会報告書全文)の提出を指示し、3月20日の期日を延期。新たに5月10日に弁論が再開されることとなった。

「捏造」はどっちだ
 地裁が新証拠とする「吉田清治証言」とそれを報じた朝日新聞記事と植村さんは何の関係もない。全く関わってもいないのだ。だからこそ、この4年間にわたる法廷で「吉田証言」は争点にすらなってこなかった。改めて確認すれば植村東京訴訟は、植村さんが1991年に執筆した記事を巡ってのものだ。それは@元従軍慰安婦の経歴をもつ韓国人女性が初めて名乗りを上げ、自分の体験を証言し始めたことAその証言テープを入手し、内容を報じたものだった。被告西岡氏は、その記事を「意図的な捏造」等と誹謗中傷する言説を文芸春秋社出版物で繰り返してきた。そして、審理の中で争われたのも「(のちに自ら名前も明らかにした金学順さんが)『挺身隊の名で連行された』と証言したかどうか」であり、その過程で明らかにされたのは、植村さんを「捏造記者」と決めつけ、誹謗中傷した被告西岡氏自身が、自ら論拠とした金さんの訴状や証言、それを報じた韓国紙記事を引用する際、実際にはない記述を書き加えたり、その重要部分を無視するなどの「捏造」と言っても過言ではない行為を繰り返していたという事実だった(それらは本紙過去記事で具体的に参照できる)。

なぜ今「吉田証言」
 ではなぜ今、「吉田清治証言」なのか。我々は、植村さんの名誉が毀損された事実を認め、西岡被告の「論」に丸乗りして櫻井よしこ被告が展開した「人身売買」説を「真実と認めることは困難」と判示しながらなお、争点の「捏造」を問わず、「慰安婦問題に関する朝日新聞の報道姿勢や…記事を執筆した原告批判」には「公益性が認められる」とした昨年11月の札幌地裁不当判決を想起せざるを得ない。歴史や事実に基づかず、今の流行におもねったあの「ネトウヨ」判決の論理が浮かびあがる。

沈黙は報道の自死
 植村さんの記事は記者として当たり前の取材をし書かれたものだ。にもかかわらず、のちのご都合主義的判断基準で一方的に誹謗中傷され断罪されるとしたら報道は成立しない。ジャーナリズムは死滅する。沈黙している現役記者のみんなに言おう。札幌地裁判決を「是」としたら、植村さんとその家族が受けた被害は明日、我が身に降りかかってくるのだということを。

 今回の東京地裁原克也裁判長の訴訟指揮について植村弁護団は「当事者の攻撃防御権を著しく侵害するもので、訴訟法の根本理念に反し、裁判の公正を著しく妨げるものだ。そうした手続きが裁判所主導で進行している点もまた異常だ」と言う。2月の再開以来、弁護団による忌避申し立てで中断していた植村東京訴訟の口頭弁論は5月10日午後3時から、地裁706号法廷で開かれるが、再結審、判決日指定も予想され予断を許さない。一方、札幌では4月25日午後2時半、札幌高裁で植村裁判控訴審がいよいよスタートした。植村訴訟への引き続きの支援と裁判への傍聴を呼びかける。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月14日

【メディア気象台】 3月〜4月=編集部

◇「森友」黒塗り開示違法、国に賠償命令〜大阪地裁
学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、小学校設置趣意書の情報公開請求に対し、財務省近畿財務局が当初ほぼ黒塗りで開示したのは違法だとして、上脇博之神戸学院大教授が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は14日「黒塗りには合理的な根拠がなく、誤った判断だ」と違法性を認め、非開示の精神的苦痛による慰謝料など5万5千円の支払いを命じた。(「神奈川」3月15日付ほか)

◇危険にさらされている記者、公表
AP通信やロイター通信、米誌タイムなど世界の大手報道機関11社が、15日、危険にさらされている世界各地の記者リストを公表し、今後1カ月に1度ずつ更新を続けると発表した。記者数は10人程度とし、「真実の追求」をしたことで攻撃されている記者らを守るのが目的としている。第一回のリストに入ったのは、フィリピンのドゥテルテ政権に批判的な報道を続けて逮捕されたレッサ氏や、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ迫害問題の取材を巡り国家機密法違反の罪に問われたロイターの記者2人など。(「東京」3月17日付ほか)

◇「偽ニュース禁止」成立〜露政権批判、規制の恐れ
ロシアのプーチン大統領は18日、議会上下両院が可決したインターネット上の偽ニュースを禁止する法案に署名、法律は成立した。大統領の諮問機関「市民社会発展・人権評議会」が「権力による恣意的な利用」の恐れを指摘、プーチン氏に署名しないよう求めていた。政権批判があふれているネット空間の言論が、今後「偽ニュース」を理由に規制される恐れが指摘されている。マスメディアは対象外。検察が情報の真偽を調べ、偽ニュースと判断すればネット規制を当局に通報、当該のホームページや会員制交流サイト(SNS)への接続ができなくなる。(「毎日」3月20日付ほか)

◇民放連、改憲国民投票CMに指針
日本民間放送連盟は20日、憲法改正の賛否を問う国民投票の際に政党などが流すテレビ・ラジオCMについて、内容などに問題がないか放送前にチェックする「考査」の具体的な留意点がまとめたガイドラインを公表した。特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して流れることがないよう留意することなどが盛り込まれた。(「朝日」3月21日付ほか)

◇フェイスブック、ターゲット広告の差別禁止へ
米交流サイト大手フェイスブック(FB)は19日、広告の配信先を絞り込むターゲット広告で、差別的な慣行を見直すと発表した。住宅や求人、貸し付けの広告を出稿する広告主が、年齢や性別、郵便番号のデータを使って、広告を配信する消費者を絞り込むのを禁じる。(「東京」3月21日付ほか)

◇川端康成文学賞、休止
優れた短編小説に贈られる川端康成文学賞について、主催の川端康成記念会は25日、今年の選考を休止すると発表した。川端が死去した1972年にノーベル文学賞の賞金を中心とした基金を作り、創設された文学賞。新潮社の協力を得て、これまで44回の選考を行ってきた。運営基金が危うい状態にあることなどが、休止の理由という。(「朝日」3月26日付ほか)

◇韓国人教授、送り付け被害〜「言論抑圧」警視庁が捜査
テレビ番組で日韓関係を中心にコメントしている韓国人大学教授の男性宛てに、本人が注文していない健康食品などが通信販売の代引きで大量に送り付けられていることが5日、分かった。警視庁が偽計業務妨害の疑いで捜査しており、教授は「言論を抑圧しようとするテロで、許せない」と話している。(「神奈川」4月6日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月12日

【今週の風考計】5.12─追加関税25%が世界経済にもたらす弊害

米中での関税制裁をめぐる激しい攻防は、チキンレースの様相を呈してきた。米国は昨年7月以降、中国製品2500億ドル(約27兆円)に対する追加関税を、3回にわたって発動している。10日には、昨年9月、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に課した10%の追加関税率を、さらに税率25%へ引き上げる「制裁第3弾」を発動した。

その制裁に加え、トランプ大統領は、立て続けに過酷な中国への関税制裁を拡大し、まだ制裁対象になっていない3000億ドル(約33兆円)規模の製品にも、追加関税を課す準備を始めた。この「制裁第4弾」まで発動されれば、中国からの輸入品には全て追加関税が課されることになる。
米国の市民に身近なハイテク製品、スマホやノートパソコン、デジカメ、玩具などにも25%の関税が上乗せされる。値上がりは必至、生活を直撃する。これらのハイテク製品は、いずれも世界中から部品を調達し、中国で組み立てている。米国アップルが25%の追加関税を小売価格に転嫁した場合、主力モデルのアイホンは160ドル(約1万7600円)の値上げになると試算している。

日本や韓国、台湾などアジアに広がるサプライチェーンへの影響も避けられない。ユニクロも中国の工場から米国市場に衣類などを輸出している。主力の衣類が25%関税の対象となれば、大きな影響を受けるのは避けられない。中国での自動車やスマホ需要、ハイテク製品の輸出が縮小すれば、日本の電子部品や工作機械の受注も、「リーマン・ショック級」の打撃をこうむりかねない。

米中の貿易戦争が激しくなればなるほど、両国が排他的な「ブロック経済圏」を築き、世界経済が混乱する事態に追い込まれる。とりわけトランプ大統領が、国際的な枠組みからの「離脱」、そして「制裁」に走り、この2年ほどの間に<TPP、パリ協定、イランとの核合意、ユネスコ>の全てから離脱した。最悪のWTO離脱までささやかれる始末。自らの覇権のために世界を巻き込むことは許されない。(2019/5/12)
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2019年05月09日

《ワールドウォッチ》イラン 米を「テロ支援国家」と認定=伊藤力司

 トランプ米政権は4月8日、イランの軍事組織「革命防衛隊」をテロ組織に指定した。これを受けてイラン最高安全保障委員会は即日米国を「テロ支援国家」と認定し、中東地域を統括する米中央軍や関連組織を「テロ組織」に指定したと発表した。シリアの戦乱が収まったのに、米・イランの敵対関係激化で中東は新たな危機を迎えようとしている。
 革命防衛隊は1979年のイラン革命を主導した故ホメイニ師らイスラム聖職者による政権を守護するために創設された軍隊で、イラン正規軍とは別に陸海空軍12万5千人の兵力を持つ。シリアのアサド政権やアフガニスタンの反政府勢力タリバン、イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシ派を積極的に支援してきた。
 トランプ政権は昨年5月、米欧など6か国がイランと結んだ核合意から一方的に離脱し、外国にイランとの石油取引を禁止するなどの厳しい対イラン制裁に踏み切った。しかしシリア内戦でイランとロシアが支援したアサド政権が勝ち残り、欧米が支援した反政府側が敗れた結果、イランは中東における勢力圏を大幅に拡大した。その結果、アメリカの友邦イスラエルはこれまで以上にイランの脅威を意識するようになった。トランプ大統領としては、盟友ネタニヤフ・イスラエル首相の危機を放置するわけにはいかない。イランの脅威を世界に呼びかけたわけだ。
 一方、イラン側では革命防衛隊幹部が「米軍に対して(過激派)『イスラム国』(IS)と同列に対処する」と警告。イランは射程2千キロの弾道ミサイルを持っているとして「米軍はイランから2千キロ離れる必要がある」と指摘、軍事力行使を辞さない構えを示した。
 またイラン最高安全保障委員会の声明は、米国の決定に対し「根拠がなく、地域の平和への脅威だ。明白な国際法違反だ」と非難。「テロ掃討を担う革命防衛隊は国民の尊敬を得ている」と強調、また「今回の決定がもたらす『危険な事態』の責任は米国にある」と訴えた。双方の言い分はともかく、緊張の絶えない中東はなまたしても危険の度を強めている。


 JCJ月間機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月08日

【沖縄リポート】 ジュゴンの死 環境省危機感のなさに唖然=浦島悦子

 3月18日、沖縄島北部西海岸の今帰仁村運天港にジュゴンの死体が漂着した。

 世界の分布の北限であり絶滅に瀕した沖縄のジュゴンは現在、辺野古新基地建設に伴って沖縄防衛局が行った環境アセスメントで3頭(A・B・C)が確認されている。基地建設工事の進捗とともに2015年6月以降、大浦湾(東海岸)を主な餌場としていた個体C(雌雄不明)が行方不明となり、また、少なくとも過去20年間、大浦湾に隣接する嘉陽海域に定住していた個体A(雄)も昨年10月以降、食み跡や姿が見えなくなった。

私もメンバーの一人である地元のジュゴン保護市民グループ(北限のジュゴン調査チーム・ザン、ジュゴンネットワーク沖縄)は沖縄ジュゴンの最大の危機と捉え、地元の活動を終始バックアップしてきた日本自然保護協会と連名で3月5日、「沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える緊急声明」を発し、基地建設の中止と広域調査の緊急実施を求めたばかりだった。

その時点で唯一確認され、繁殖の希望もあった個体B(雌。個体Cの母親であり、西海岸の古宇利島周辺を主な生息域とする)の死というあまりにもショックな出来事を受けて、私たちは4月16日、ジュゴンの保護に向けた緊急院内集会と環境省及び防衛省交渉を行った。

この20年来、地元でジュゴンの食み跡・食性調査を続けてきたジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎さんは、市民調査や防衛局によるアセス調査のデータを解析しながら、個体ごとの経緯や基地建設工事の影響は明らかであることを詳細に説明したが、防衛省は、A・Cの行方不明は「工事による影響とは言えない」、環境省は、基地建設工事による影響について「環境省としては把握していない」と、事前に提出した各8項目の質問に対してほぼゼロ回答。とりわけ、国の天然記念物でもあるジュゴン保護の責務を負うべき環境省のあまりの危機感のなさ、当事者意識の欠如には唖然とさせられた。

これまで3回にわたって、日米両政府に対し沖縄ジュゴンの保全勧告を行ってきたIUCN(国際自然保護連合)がこの状況を見過ごすはずはない。

3頭以外の未確認情報も少なからずある中で、環境省は琉球諸島全域の調査に早急に取り組むべきだ。    

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月07日

【メディアウォッチ】 弱体すぎる出版団体 アピールも情報提供も少ない 文化通信・星野編集長が講演=土居秀夫

業界の「定点観測」をテーマとした出版部会例会が、「文化通信」編集長の星野渉氏を招いて、4月6日、JCJ事務所で開催された。

 星野氏は冒頭、取次崩壊とか書店減少とかいわれるが、本は残るという点で自分は楽観している。今は情勢が大きく変化した後の次の段階だ、と前置きして、まずコミックと雑誌の動向を解説した。



拡大する電子版

 昨年、コミック市場は回復し、電子版が拡大した。回復の原因は海賊版サイト「漫画村」の閉鎖、中堅作品のヒット、講談社など大手の定価値上げなどで、値上げしても売り上げは減らなかった。

 出版業界で進むデジタル化については、ファッション誌、経済誌などでは電子版と紙媒体の2本立てとなり、「ニューズピックス」のように紙媒体を創刊したところもある。紙媒体にはブランドの維持やプロモーションの役割を持たせ、デジタルで稼ぐという傾向になっているという。

 そして、中国の都市部では、本を読むことがトレンドとなっている。若い時期にある程度長い文章を読む経験が必要で、書店がないと本好きは育たないと語った。

 この数年激しく変貌した取次業界について、トーハン、日本出版販売(日販)とも取次部門は赤字で、出版社に対する正味(仕入れ値)などの条件交渉、書店事業の収益化、両社の協業化が進んでいる。トーハンは344店、日販は271店もの直営書店を抱えた日本屈指の書店チェーンとなり、両社の中期経営計画ではそれらを統合・法人化していくようだ。書店が注文しないものを送らない「事前発注」を増やすことで、仕入れの量と点数は減るだろう。出版社は、刊行情報の早期提供、正味の低減、書店への事前発注に注力などが必要になると分析した。



書店大きく変貌



 経営が厳しさを増す書店の現状では、雑貨部門を造った米子市の今井書店や居酒屋も併設した有隣堂のミッドタウン日比谷での取り組み、日本進出を図る台湾の誠品書店が「動的」な空間を目指していることを紹介。昨年の新規出店数は84店と過去最低で、全国8000店の書店は、このままでは5000店くらいになるだろうとの見通しを示し、書店は今後、仕入れ機能の強化、キャッシュレスへの対応が求められることを指摘した。

 世界的に従来型の書店はなくなりつつあり、アメリカではアマゾンの影響で大型書店が減った一方、独立系の書店が増えた。ドイツでも書店数は減っているが、新しいタイプの書店が出てきていること、従来型の書店がほぼ消えた中国では、新業態の書店が2017年には1000店も出店したことを取り上げた。

 最後に、トーハンがモデルとするドイツの出版流通事情に関連して、ドイツ図書流通連盟には出版社、取次、書店のほとんどが加盟し、40名もいる事務局は活発なロビー活動を行っていることを紹介した。それに比べて書協9名、取協3名、日書連6名など事務局の人数をあげて、外部へのアピールも情報提供もしない日本の出版業界団体が弱体すぎることを指摘して、講演を締めくくった。

 質疑応答の中で星野氏が、書店を守るためには再販制は必要だ、と強調したのが印象的だった。


土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月05日

【今週の風考計】5.5─見えぬ<ネット・ゼロ・エミッション>の姿

フランス本土の広さを持つ南極最大のロス棚氷が、これまでの3倍近い速度で融解している。昨年夏、世界を襲った異常気象は、北半球の上空1万メートル付近を吹くジェット気流の変化が原因─科学者の国際グループが、相次いでショッキングな見解を発表した。まさに地球温暖化による気候変動、海水と大気の温暖化が原因だと指摘している。

8日から気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会が、「京都議定書」誕生の地・京都で開かれる。2015年に採択されたパリ協定の実現に向け、シンポジウムをはじめ各種の討議が12日まで重ねられる。
特に昨年10月、IPCCが2050年までに「地球の気温上昇を1.5℃までに抑える」<ネット・ゼロ・エミッション>という目標を提起した。これは人間活動による温室効果ガスの排出量を、実質的にゼロにする目標であり、脱化石燃料へと舵を切る大々的な経済・社会の抜本的転換が必要となる。

ところが日本政府は、大規模排出国の一員であるにもかかわらず、石炭火力の廃止について明言せず、石炭火力発電所を国内の各地に新設する計画まで打ち出した。かつ途上国の火力発電建設には、莫大な融資を続けている。こうした措置は世界から厳しく批判されている。
あげくには「低炭素電源」の要になるとして、原発の活用まで声高に唱えている。脱炭素経済へ移行するうえで核となる炭素税と排出量取引についても、取り組みは不十分だ。現行の日本の炭素税率は、世界と比較して非常に低く、排出1トン当たり289円でしかない。フランスは5600円だ。世界レベルの炭素税を導入しなければ、温室効果ガスの抑制にはつながらない。

6月28日から大阪で開かれるG20では、日本政府としての「2050年への長期戦略」を、どのような内容で明らかにするのか、提出が義務付けられているだけに、G20議長国となる日本の真価が問われる。
9月23日にはニューヨークで国連気候変動サミット、11月にはチリで気候変動枠組条約・締約国会議COP25が開催される。もう待ったなしの日程が迫っている。(2019/5/5)
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2019年05月04日

【支部リポート】 関西 女性中学教師が教育現場語る 行政による不当介入が強まる=阿部裕一

3月の関西支部の2019年度総会では、大阪府吹田市内の中学校教師・平井美津子さんを招き、自身の授業を掲載した新聞記事を巡る教育現場への行政介入について語ってもらった。

私が1997年に制作・放送したNNNドキュメント「許そうしかし忘れまい〜戦争と教科書」で紹介させていただいた平井さんは、近現代の歴史教育に力を入れておられ、数々の著書もある。今回の出来事は、去年8月に取材を受けた共同通信の配信記事が10月愛媛新聞(写真)で掲載されたことに端を発した。記事は「憲法マイストーリー」という表題で、2年社会科の授業を取り上げている。平井さんは、戦争のあらゆる面を生徒に伝え、特に性暴力かつ女性差別でもある慰安婦問題を熱心に教えているという内容だ。授業そのものも事実に基づいていて、抗議を受けるようなものではない。

ところがこの記事がネット上で拡散され、府教育庁が「記事にある授業が事実なら不適切」と回答。これを受け、吹田市教委が調査に乗り出した。その際、校長の許可を得ず校内で取材を受けたことは問題とされたが、授業の内容は「適切」と判断された。さらに大阪府教育委員会も聴取を行った。当日の記者とのやりとりだけでなく、本来関係のない平井さんの著作についての質問や過去30年もさかのぼるような質問もあったそうだ。これで事態は沈静化すると思われたが、今年1月12日、京都新聞に同様の記事が掲載されたことで再燃した。

2月、府教委から平井さんに再度聴取要請があったが、学校内で同席した校長からの質問に市教委が立ち会うという形で聴取に応じた。これは教育現場への行政の介入が強まっていることをうかがわせる恐ろしい実態だ。歴史にきちんと向き合う教育が脅かされる昨今、再び、戦前の教育が繰り返されないよう注視していく必要があることを痛感させる話だった。

なお平井さんは訓告処分を受けた(履歴に残らず)が、府教委は、授業の内容は「不適切ではなかった」と述べ、府教育庁も「事実誤認はない」としている。       

阿部裕一 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月03日

【定時総会】 来年度 新事務局長が組織を束ねる クラウドファンディング利用も検討=編集部

 JCJは3月30日、東京・水道橋のYMCAアジア青少年センター会議室で、2019年度定時総会を開いた。総会に先立ち昨年に物故された郡島恒昭、大西五郎、坂本陸郎の各氏に黙とうをささげた。

 まず南彰・日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)議長が来賓挨拶。MIC主催で3月14日に官邸前で行った「知る権利守れ」の行動について南さんは、メディアや企業で働く人だけではなく、市民も参加し、支援の広がりがあったと語った。

 総会では橋詰雅博事務局長からの18年度の本部活動報告に続き、神奈川、埼玉、東海、関西、広島、香川、福岡など各支部が報告した。

 埼玉は、これまで埼玉新聞支部として活動してきたが、枠を広げて「埼玉支部」として活動する方針を明らかにした。

 香川からは全県の水道を一本化して民営化する動きが進んでいると問題提起された。 

 福岡は新入会員の西嶋真司さんが出席。彼が制作している植村隆裁判のドキュメンタリーの1部を上映した。

 広島は、支部が市民運動の中心になっており、広島市長選への候補者擁立に取り組んだと述べた。

 17年2月に結成された沖縄は2カ月に1回定例会を開くなどの活動を続けていると語った。

 その後、出版部会は10年前に比べ書籍・雑誌の売り上げが半減した状況とアマゾンの影響力について、放送部会は民放の人手不足の現状を、広告部会はネット広告が急伸している状況などをそれぞれ報告した。

 自由討議では、隅井孝雄代表委員がAMラジオは廃止の動きがあること、改憲国民投票のCMについて民放連がガイドラインを出したが、その点検が必要と指摘した。JCJ賞資金カンパ集めに関してクラウドファンディングの利用を検討することに。

最後に決算案、19年度予算案・活動方針案・人事案を承認。来年度は新事務局長が組織を束ねる。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年05月01日

JCJ夏のジャーナリスト講座のお知らせ=須貝

◎JCJ夏のジャーナリスト講座・全5回のお知らせ◎

メディアの世界をめざす若い人向けに、日本ジャーナリスト会議
は毎年、ジャーナリスト講座を開いています。何のために取材し、報道するのか。現場の第一線で活躍するジャーナリストをお招きして、その問題意識を語っていただくと同時に、仕事の面白さ、魅力などにも触れます。記者の仕事につくにはどうしたらいいか、助言も受けられます。どうぞご参加ください。

■6月5日午後6時半から9時半
☆少年はなぜ?闇の日々に迫る――見過ごせなかった祖父母刺殺事件

講師:毎日新聞・くらし医療部 山寺香記者 参加費・千円

■6月13日午後6時半から9時半

☆過労社会を取材する――社会部記者の視点 参加費・千円

講師:東京新聞社会部 中澤誠記者

■6月18日午後6時半〜9時半=学生向け

☆テレビ記者疑似体験! その厳しさ、面白さ 参加費千円

講師:元TBSキャスター・下村健一さん=令和メディア研究所主宰/白鴎大学特任教授/インターネットメディア協会理事/元内閣広報室審議官

■6月22日午後1時半から5時

☆新聞記者とは――警察取材から原発事故追跡まで 参加費・千円

講師:朝日新聞社会部 青木美希記者

■6月24日午後6時半〜9時半=学生向け

☆テレビ局エントリー動画で学ぶ、映像リポート実習 参加費・千円

講師:元TBSキャスター・下村健一さん

□会場:いずれも日比谷図書文化館4階小ホール=定員50人

東京都千代田区日比谷公園1−4

最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅

□要予約:参加希望日と氏名、大学名
またはご職業、電話番号、メールアドレスを明記し、下記にメールかファクスでお申し込みください。講義内容はメディア志望の学生向けです。6月18日・24
日は学生限定ですが6月5日・13日・22日の講座は社会人の方の参加も歓迎します。

メール sukabura7@gmail.com

ファクス 03・3291・6478

□学生パスのお知らせ:夏6月の講座を4回以上受ける学生向けに3500円の学生パスを出します。会場で一括払いしていただければ全5回を自由に受講できます。

主催:日本ジャーナリスト会議=JCJ 電話03・3291・6475=月水金の午後
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