マスメディアに限らず、情報が溢れている時代において、その流れを「岸辺」でなく、流れの中に入ってでも、観察し記録し分析することは、メディア研究者が避けて通れない道である。また、その困難さを、いかに克服するか、それは共通の課題でもある。
本書は、毎日新聞社でメディアを取材していた著者がフリーになり、安倍首相のメディア戦略を「アベノメディア」と名付けて、2年前に上梓した前著『検証アベノメディア』に続く労作だ。
前著は、2016年ごろまでのデータから問題を検証し、本書は、その後の動きを中心に「闘い」に焦点を当てている。
官邸記者会見の東京新聞・望月衣塑子さん、慰安婦問題の元朝日新聞の植村隆さん、「女たちの戦争と平和資料館」の池田恵里子さん、「メディアで働く女性ネットワーク」の松元千枝さんなどを紹介している。
官邸記者会見問題では新聞労連の抗議声明を機に、運動はもう一回り広がった。植村問題も控訴審が始まった。問題はいまも続いている。
インターネットの発達で、新聞、放送、出版など既成メディアが危機にあるいま、メディアが権力の情報に流されず、ジャーナリズム性を発揮して事実や真実を追究するのは、日本の民主主義にとって不可欠な仕事だ。
これからも著者の「アベノメディア・ウオッチ」を期待してやまない。
(緑風出版2000円)
