2019年06月30日

【今週の風考計】6.30─「捏造」を免罪する植村裁判 その忖度判決

「植村裁判」とは何か。元朝日新聞記者・植村隆さんが執筆の紹介記事「元朝鮮人従軍慰安婦/重い口開く」(「朝日」大阪版1991年8月11日付)に対し、23年も経過した2014年2月6日号「週刊文春」で、西岡力氏が「事実を捏造して書いた記事」だと執拗に誹謗したのを機に、植村さんへの執拗なバッシングが集中し、かつ家族の命まで危険に晒されたため、やむを得ず2015年1月、法的手段に訴えた事案である。

その「植村裁判」の判決が、26日、言い渡された。傍聴していて、東京地裁103号法廷に響く女性裁判長の<相当性とか真実性とか公益性>とかいう言葉に、何度も首を傾げざるを得なかった。

異動した原克也裁判長に代わって、判決主文を代読しているのだが、被告西岡力氏と文藝春秋の表現と記事は「名誉毀損に該当する」が、その責任は免ぜられるとして請求を棄却したのである。
「理由の要旨」は、<各表現は、公益性を考えて行われ、意見論評の前提としている摘示事実には真実性があり、また真実であると信ずる相当の理由がある、かつ意見ないし論評の域を逸脱したものでもないから、被告は免責される>というのだ。

待てよ、「○○性」の連発だが、その判断はどういう基準でなされたのか。市民感覚からして、納得がいかないモヤモヤ感が堆積していた。その後、植村訴訟東京弁護団や原告・植村隆さんの声明を読んで、疑問が晴れると同時に事の本質について、理解を深めるのに役立った。ここにまとめておきたい。
相手を「捏造」などの激しい表現で非難した場合、その表現や論述に妥当性があり、かつ公益性や真実相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要である。これが、これまでの判決の前提である。
 だが本件の判決には、そのような根拠・資料がないばかりか、植村さんの執筆意図などについて確認取材すらせず、「捏造」と表現した西岡氏の記事を免責する。何事か。
 かつ西岡氏自身が、自ら名乗り出た元慰安婦の金学順氏の証言を、勝手に創作して自説を補強していたという。まさに自ら「捏造」行為をしていたことも、法廷で明らかとなった。

なのに、なぜか免責する。「慰安婦問題は解決済み」という政権の姿勢を忖度した判決としか言いようがない。(2019/6/30)
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【内政】 新基地問題「他人ごと」か 玉城知事「自分ごととして考えて」 沖縄キャラバン開始=鈴木賀津彦

 全国の人たちに「自分ごと」として考えてほしい|。沖縄県の玉城デニー知事は6月日、東京都千代田区のホテルで開かれた、名護市辺野古の新基地建設の見直しを訴える全国キャラバンの第1弾となるシンポジウムで講演し、こう強調した。沖縄県は今後、全国の主要都市を行脚するトークキャラバンを展開し、県の考えを説明していく方針。県民投票や知事選で示された建設反対の民意にもかかわらず、なぜ工事が強行されるのか、基地負担が集中する沖縄の現実を正確に伝え、日本の安全保障について全国的な議論を呼び起こす狙いだ。

 この日も沖縄防衛局がこれまでとは別の護岸も利用し土砂の陸揚げを始めたことに、玉城氏は、この護岸利用は当初計画にはないため、県は工事中止を求めて行政指導したことを説明、「法令順守の意識を欠いている」と強く批判した。下矢印1 辺野古工事のあり方について、「法律の解釈のねじ曲げが続くと、日本の民主主義も地方自治も成り立たない。そういう大きな問題として、自分ごととして考えてほしいと全国に伝えたい」と玉城氏は思いを述べた。

 政府が「辺野古が唯一の解決策」だというが、「どこと比べて唯一なのか、沖縄県民は説明を受けたことがない。唯一という理由、理屈が成り立っていないから、説明を求めている。説明できないものを実行するわけにはいかない」とし、工事の強硬は「国民のためではなく、アメリカのためだ。日本政府は自分たちもちゃんと動いているとアメリカに見せたいからだ」と説明した。

 全国キャラバンは県の主催で開催。既に愛知県や熊本県の市民団体から開催依頼があるほか、7月日には新潟県の苗場スキー場で開かれるフジロックフェスティバルにもアーティストとして招かれているという。

 今回は「We Love OKINAWA デニー知事・キックオフシンポジウム|沖縄の声を聞き、皆で考えてみませんか?」と題して開催、約200人が参加した。辺野古県民投票の会代表の元山仁士郎氏や、米シンクタンク「憂慮する科学者同盟」上級アナリストのグレゴリー・カラツキー氏らが登壇、弁護士で新外交イニシアティブ代表の猿田佐世氏の進行で、日米地位協定の問題や自衛隊の配備の状況など、沖縄が直面する課題を多角的に議論した。

 沖縄の現実を大きく伝えている本土のメディアが少ない一方で、SNSなどのネットメディアでは正確な情報に基づかないフェイクニュースや沖縄ヘイトが流れている。このため「沖縄の経済は基地が支えている」「辺野古移設に反対すると、普天間飛行場の危険が放置される」などの誤った認識も多く存在することから、知事を先頭に各地に出向き、正しい情報を届け、リアルに対話を広げていきたいという。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月28日

幻冬舎・見城社長の変身 「安倍応援団」中心メンバー 権力にすり寄る、その先は……=編集部

幻冬舎は見城徹社長と社員一同の名前で、作家・津原泰水氏へのお詫びを5月末に自社ホームページに掲載(写真)した。津原氏著作の実売部数さらし≠謝罪したのだ。

しかし、彼の文庫本の刊行中止について言及も謝罪もない。「著作者の自由と権利を守り、制圧または干渉には排除する」という出版倫理綱領に反しているのに、その経緯を明かさない幻冬舎の責任は、厳しく問われるべきだ。

ベストセラーづくりの名物編集者・見城氏が、なぜか安倍晋三首相が第一次政権を放り出した07年以降、安倍応援団≠買って出る。12年9月の自民党総裁選の20日前には、小川榮太郎氏の『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)を刊行、大々的に新聞広告を打って安倍を援護射撃した。

「首相動静」から消失

さらに自分の知人・友人を安倍首相に引き合わせている。テレビ朝日の早河洋会長(75歳)もその一人。13年3月22日に続き、翌年の7月4日には早河会長、吉田純一社長、見城氏の3人で安倍首相と2時間会食している。

その見城氏は、07年7月からテレビ朝日の番組審議会委員になり、14年4月には委員長のポストに座る。途端に「首相動静」に見城氏の名前が載らなくなった。時の権力者とべったりの人物が番組審議会委員長となれば、「報道の自由」など守れないという批判への対応に他ならない。

代わりに16年3月にテレビ朝日が40%出資し、開設したネット放送局AbemaTVを活用する。見城氏が司会する「徹の部屋」(現在、番組中止)を7月に立ち上げる。17年衆院選公示2日前の10月8日の「徹の部屋」に、安倍首相を生出演させた。

見城氏自ら「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」「ハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔ですよ」などと太鼓持ち発言≠連発。出版社のトップが総選挙公示直前に安倍ヨイショ≠するのは前代未聞だ。

「アベ友」著作続々

幻冬舎の出版物に話を戻そう。16年参院選を控えた6月10日、山口敬之氏の『総理』の出版広告が、新聞に大きく掲載された。官邸筋に頼んでレイプ事件をもみ消したアベ友記者≠フ本だ。それ以降、百田尚樹『日本国紀』など、安倍応援団の著書がタイミングよく出版され、安倍政権をバックアップしている。

恩返しか、安倍首相は昨年末のフェイスブックで〈年末年始はゴルフ、映画鑑賞、読書とゆっくり栄養補給したいと思います。購入したのはこの三冊〉と書き込み、『日本国紀』の画像をアップし、PRに一役買った。

どうする出版界

出版社が権力者にすり寄ればどうなるか。戦前を思い出してほしい。満州事変勃発を機に、日中戦争に入るや、大政翼賛会による国家総動員体制下で、出版界は「言論・表現の自由」を奪われ、戦意高揚へ全面協力させられた。苦い教訓を持っているからこそ出版人は「権力からの自立」をめざし努力を重ねてきた。

にもかかわらず、1950年生まれで「平和憲法」のもとで育ったはずの出版人が、「戦争する国」に突っ走る安倍政権に、これほどまでに擦り寄るとは、恐るべき事態だ。

この危機的状況にどう立ち向かうか、出版界は問われている。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 11:32 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月27日

【編集長EYE】 「38度線」大自然と人との共存計画進行=橋詰雅博

 北緯38度線は朝鮮半島を南北に分断する停戦ラインだ。このラインから南北2`bずつ帯状のエリアは非武装地帯(DMZ=248`b)と呼ばれる緩衝地帯になっている。1953年の停戦後に軍事活動は許されなかったが、300万個ともいわれる地雷が埋められている。このため65年もの長きにわたり人が立ち入れることがなかった。皮肉にも今ではツキノワグマなど101種の絶滅危惧種を含む5057種の生き物がすむ豊かな大地に生まれ変わっている。

 戦争によって生み出されたこの豊かな生態系を守り、後世に手渡そうというプロジェクトがあることはあまり知られていない。そのプロジェクトは「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト) 」で、2014年からスタートしている。立ち上げたのは53年にソウルで生まれた崔在銀さんだ。76年に来日し、東京で華道を学び、草月流と出会う。3代目の家元であり、映画監督の勅使河原宏のアシスタントを務め映画制作など日本で活動した。崔さんは多くの野生動物が生息するDMZの自然と人間との共存をめざし、世界の美術家や建築家などにアイデアを求めてきた。

 それを可視化した展示会「自然の王国」が東京・品川区の原美術館で開かれている。

 同美術館担当者は目玉作品をこう説明する。

 「空中庭園の設置を日本の建築家・坂茂さんが提案しています。DMZに東西南北合わせ全長20`bに及ぶ巨大な計画です。竹のパサージュ(小道)≠設け人の自然への介入を防ぎ、地雷から人を守ります。2分の1サイズの模型を提示しています。韓国のチョウミンスクさんは発見されたトンネルを活用し、植物の種子や本、フィルムを保存する貯蔵庫のアイデアを公開しています」

 崔さん自身はDMZで使われていた鉄条網を溶かした鉄板を出展した。憎しみは雪のように溶けるという意味を込めている。7月28日まで。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 08:25 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月25日

【メディア気象台】 5月〜6月=編集部

NHK受信料、支払率8割に
NHKは28日、2018年度末の受信料の世帯支払率(推計)が81.2%だったと発表した。17年度末から1.8㌽上昇し、公表の始まった11年度以降、最高。初めて80%を超えた。都道府県別では最も高かったのは秋田の98.3%。最も低かったのが沖縄で51.0%だったが、公表以来、初めて50%を超えたという。(「朝日」5月29日付ほか)

菅長官、記者に「指しません」
菅義偉官房長官は29日の会見で、東京新聞記者の質問に対して「その発言だったら指しません」と述べた。政府のスポークスマンによる特定記者の質問排除につながりかねない発言だ。会見進行役の官邸報道室長が特定の記者の質問中に「簡潔にお願いします」と述べることに関して、東京新聞記者が質問。菅氏は「そうしたことを質問するところではなく、記者会主催でありますから、記者会に申し入れてください」などと答えていたが、この記者がさらに質問しようとしたところ「その発言だったら指しません」と述べた。(「朝日」5月30日付)

日販、19年ぶり赤字
出版不況が深刻化するなか、出版取次大手の日本出版販売グループ(日販)は29日、2018年度の決算が19年ぶりの赤字になった、と発表した。雑誌の販売不振や配送コストの増大などが響いた。売上高は前年比で5.8%減って6457億円。純損益は2億円の赤字だった。売上高の約9割を占める取次事業で3億円の営業赤字を出した。(「朝日」5月30日付ほか)

米新聞大手が合併交渉〜実現なら部数首位
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は5月30日、米全国紙USAトゥデーを傘下に持つ米新聞大手ガネットと同業のゲートハウスメディアが合併交渉を行ったと報じた。実現すれば発行部数のほか、保有する新聞が日刊紙で250を超え、全米首位の新聞チェーンが誕生することになる。(「東京」6月1日付)

日本の報道独立性懸念〜国連特別報告書
国連のデービッド・ケイ特別報告者が、日本メディアの独立性に懸念を示す新たな報告書をまとめたことが5日、分かった。放送番組の政治的公平性を定めた放送法4条の撤廃などを求めた2017年の勧告について、履行されていないと指摘している。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、報告書について「極めて遺憾。記述は不正確かつ根拠不明のものを含んでおり、受け入れられない」と反論した。(「しんぶん赤旗」6月7日付ほか)

公的文書、西暦も記入を〜憲法学者ら訴え
官公庁など公的機関の文書で年月日表示が元号だけなのは不便として、学者やジャーナリストらでつくる「西暦併用を求める会」が6日、都内で記者会見し、西暦を併記するよう求める声明を発表した。声明では元号が国内でしか通じないことや、連続性がないことを問題視。データ管理などさまざまな場面で西暦との換算を強いているとし、「国民主権の下にある公的機関ならば、実用性に優れる西暦も併記するべきだ」と訴えた。(「東京」6月7日付ほか)

特定秘密、手続きせず廃棄〜海自、公文書コピー100件
海上自衛隊が公文書管理法に基づく手続きをしないまま、特定秘密に指定されているコピーの文書100件を廃棄していたことが7日、政府が閣議決定した2018年の特定秘密保護法の運用状況に関する報告書で明らかになった。防衛相はイラク派遣部隊の日報隠ぺい問題でずさんな対応が批判されたが、公文書管理に対する意識の低さが改めて浮き彫りになった。(「東京」6月8日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 16:57 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月23日

【今週の風考計】6.23─G20大阪サミット<会議は踊る されど>

★28日からのG20大阪サミットを始め、今週は世界各地で国際会議が開かれる。

★25日はアラビア半島の東側・ペルシア湾内にある33の島からなる国バーレーンで、中東和平国際会議が開催される。イスラエルがゴラン高原を<トランプ高原>と改名し、さらに緊張を増長させているパレスチナとの和平をめぐる駆け引きが注目だ。
 またホルムズ海峡近くのオマーン湾で、タンカー2隻に加えられた爆撃に関連し、米国とイランの間で軍事行動へエスカレートしかねない危機が募る。会議の行方に世界の眼が集まる。

★26日にはベルギー・ブリュッセルでNATO国防相会議。加盟国のトルコが、ロシア製ミサイル防衛システムの導入を計画している事態に、米国が制裁を科すと警告している。この会議もまた紛糾しそうだ。
★27日、大阪で米中首脳会談が持たれる。米中貿易戦争の行方が占われる。トランプ大統領は、会談で貿易協議が進展しなければ、中国からの輸入品に追加関税を課すと表明。いっぽう中国は、米国のハイテク製品に不可欠なレアアースの輸出を、制限するとまでほのめかしている。米国はレアアースの供給を中国に依存しているだけに、頭の痛いアキレス腱となる。

★さて28日、初めて日本が議長国になるG20大阪サミット、「最高のおもてなしでお迎えしましょう」とハッパをかけるが、果たして肝心の世界経済に関する課題や貿易・投資・地球環境・気候・エネルギーなどのテーマについて、どれだけの成果が得られるのか。
★「自由貿易の重要性や貿易摩擦の緩和」に背を向け、保護主義に突っ走る米国トランプ大統領に、NOと言えず、シッポを振るだけの安倍政権では、<会議は踊る、されど進まず>が、正直な結果になるだろう。(2019/6/23)
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2019年06月19日

【お知らせ】出版部会6・28講演会:清田義昭さん大いに語る! ぜひ参加を!

「出版ニュース」 編集50年
─いま出版界に大切なこと─


75 年の歴史を持つ「出版ニュース」が、休刊の秋を迎えた。
出版界の動きを総合的に捉え、的確な分析や提言など、
出版関係者や愛書家には貴重な雑誌!
編集長・清田義昭さんが、歩んだ軌跡と出版界への思いを語る。

講師 清田義昭 氏 (「出版ニュース」編集長)
日時 6月28日(金) 18時30分開会(18時15分開場)
場所 YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 Tel : 03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費 800円(JCJ会員・学生500円)
チラシPDF版出版部会6・28清田義昭氏の講演会チラシ(完全版).pdf

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2019年06月16日

6月29日・シンポジウム「安倍政権とメディア 攻防7年」

シンポジウム「安倍政権とメディア 攻防7年」=第3回報道の自由フォーラム・パート2
日時:6月29日土曜 午後2時から6時
会場:法政大学・市ヶ谷キャンパスの外濠校舎S405教室
東京都千代田区富士見2−17−1
最寄りは飯田橋駅 か市ヶ谷駅
参加費:1000円=学生と法政大学教職員は無料
発言者は次の通り
★元朝日新聞記者・植村隆さん=週刊金曜日発行人
★元NHK記者・相澤冬樹さん=大阪日日新聞論説委員
★東京新聞社会部記者・柏崎智子さん=メディアで働く女性ネットワーク会員
★科学ジャーナリスト・林勝彦さん=元NHKプロデューサー
★沖縄タイムス編集委員・阿部岳さん
★コーディネーター:ジャーナリストの竹信三恵子さん=和光大学名誉教授、元朝日新聞記者


安倍政権が発足して7年近くが経過しようとしている。この間に噴出したメディアを巡る問題を総合的にとらえ、何が問題かを明らかにする。
官房長官会見での官邸による質問妨害、沖縄県民の民意無視。政権に忖度するNHKの報道姿勢。歴史をねじ曲げる動きと元朝日記者への個人攻撃、朝日新聞バッシング。福島原発事故からの自主避難者を見捨てる政権と被害の矮小化。官僚によるセクハラ行為。これらの実情を明らかにし、メディアの役割を問い、考える。
主催:日本ジャーナリスト会議と法政大学図書館司書課程
お問い合わせ:JCJ 電話03−3291−6475=月水金の午後
□詳細は下記をクリックしてください□
■■■6月29日シンポジウム・お知らせ【完成版】.jpg□6月29日シンポ裏面.jpg
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【今週の風考計】6.16─争点隠して「年金詐欺」に奔る愚の行方

「年金が毎月5.5万円ほど不足するから、老後に備え2000万円貯蓄せよ」―金融庁の報告書が波紋を呼び、「<100年安心の年金>なんて大ウソ」と、怒りの声が安倍政権を直撃している。

しかも5分で読める報告書を、麻生担当大臣は「冒頭部分に一部、目を通しただけで、全体を読んでいるわけではない」と開き直り、あげくに、この報告書は受け取らないという愚挙に出た。
みずから諮問した市場ワーキング・グループが、昨年9月から12回も議論を重ね、「政府の政策スタンス」に沿って、かつ金融庁内部の了承を得てまとめあげた報告書まで、ついに「消してしまう」のだから呆れる。

ネット上は<年金詐欺(笑)ホント、そうだよな>であふれ、「#年金詐欺」というハッシュタグまで作られるほどだ。なかには「2000万円って、麻生さんの1年に使う“飲み代”だろ」―政治資金の使い途から推し量った意見まで、登場してきた。
現に、麻生氏が代表を務める資金管理団体「素淮会」の17年度・政治資金収支報告書によると、有名寿司店に高級和食店、馴染みの会員制サロンなどに支払った、飲食を伴う「会合」費は、1年間だけで計2019万6547円にも及ぶ。

この政治資金の使いみちからして、庶民とはかけ離れた感覚の持ち主である78歳の麻生さん、自分が年金を受給しているかどうかすら「記憶がない」のだから無理もない。

さらに許せないのは、5年ごとに年金の給付水準の長期的な見通しを示す、財政検証の結果を公表しないことだ。従来では6月初めに公表しているのだが、見通しによると約15兆円もの運用損が出るといわれている。参院選の投票に及ぼす影響が大きいから、「公表を参院選後に回す」争点隠しに躍起だ。
昨年の森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざんといい、厚労省のデータ統計不正が発覚するなど、「都合の悪いことは全て隠滅・改ざん・破棄し、現場に押しつける」安倍政権の退廃ぶりは極まる。(2019/6/16)
posted by JCJ at 12:15 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月10日

【支部リポート】 神奈川 菅官房長官会見の映像流れる 横浜駅パブリックビューイング=保坂義久

神奈川支部では4月13日に首相官邸記者会見での質問制限をテーマに例会を開いた。同じ日の午前10時から午後5時まで横浜駅西口前では、その関連パブリックビューイング(PV)が行われた。これを企画したのは武井由起子弁護士ら5人。

支部例会の講師の南彰新聞労連委員長は、例会の前と後にこの催しに参加し、菅義偉官房長官会見の実態について語った。

横浜駅西口前は各党が選挙で第一声をあげる通行量の多い場所。PVでは52インチのディスプレイを使い、菅官房長官の記者会見の映像を流した。合間にはスピーチタイムが設けられた。

 発言者は南さんのほかに元自衛隊レンジャーの井筒高雄さん、森友・加計疑惑を追及する元NHK記者の相澤冬樹さん、憲法学者の石川裕一郎さんなど多彩なメンバー。武井さんが活動する中で出会った人たちだ。武井さんは相澤さんとは週刊金曜日の主催のイベントで面識を得たという。

 海老名駅前自由通路でのマネキンフラッシュモブ禁止の不当性を訴えて勝訴した朝倉優子さんなど神奈川の市民も発言し、言論・表現の自由を訴えた。神奈川では街頭で訴える市民活動が活発で、沖縄の基地問題でのPVに携わっているメンバーの協力を得た。

 東京新聞の望月衣塑子記者に対する質問封じに対抗し、菅官房長官の選挙区である横浜で開いた今回の企画について、武井さんは「頑張っている記者を応援することが大事だ」と語る。

 これまで事実がどう取材され伝えられるのか受け手には見えにくかったが、望月記者の活動で可視化された。官邸側の望月記者への嫌がらせに対しても、記者たちがこれまで取りがちだった第三者的な立場ではなく、当事者として向き合うようになった。MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)主催の3月14日の官邸前行動は、その意味で画期的だったと武井さんは評価する。

神奈川支部例会も140人を超す参加者があった。安倍政権による報道恫喝に市民の関心の高まっている証拠だろう。 

保坂義久

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
posted by JCJ at 14:47 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月09日

【内政】 あらゆる差別 撤廃へ 自民党の後進性暴く 上智大・中野教授に聞く=河野慎二

 メディアの過熱した天皇「代替わり」報道にうんざりした「10連休」が終わり、参議院選挙が約2カ月後に迫って来た。この選挙は、安倍改憲勢力を3分の2以下に追い落とせるか、最大の正念場を迎える。そこで「市民連合」の呼びかけ人である中野晃一上智大教授に話を聞いた。

 中野教授はまず、沖縄と大阪の衆院補選で自公与党が2敗したことについて「自民党にはショックだ。巻き返すために衆参同日選は選択肢としてありうる」と述べた。
 しかし、大義≠ニして企む消費税増税の3回目の延期については「アベノミクス失敗の容認に繋がる」と指摘し「自民党にとってこの選択はギャンブルだ。それでも同日選をやるというなら、そこまで追い込まれた選挙となる」と述べ、安倍一強が盤石ではないとの認識を示した。

 野党共闘について中野教授は「参院選1人区の候補一本化は既定方針だ。野党共闘の効果は各党が理解しており、一本化調整の必要性でも一致している。(合意は)時間の問題だ」と発言。「(11の1人区で勝利した)3年前と同等以上の結果を出すことは不可能ではない」と述べた。
 衆参同日選への野党の対応については「同日選は投票率を上げる。無党派の人たちが野党候補にも投票する。自民党には両刃の刃で、リスクは高い」と指摘。「同日選になれば、候補を衆参の選挙区で振り分け、一本化調整はやり易くなる。同日選を警戒しつつ、いざとなれば受けて立つ」と述べ、市民と野党の共闘に自信を示した。

攻め姿勢で変える
 中野教授は、今回の参院選勝利に向けて「政治を変える!プログレッシブ連合へ」という運動を呼びかけている。「なぜ、憲法を守ろうと言うのか。それは憲法を活かして、政治や経済をより良い方向に変えたいからだ。これまで安倍政治に反対するネガティブな発信になりがちだったが、これを分かり易く言語化、可視化してポジティブに発信したい」
「そのポジティブな声は、私たちの仲間の周りにいる、政治を諦めちゃった人たちにも届けて社会を前に進めたい。現状を維持するだけの守勢ではなく、攻めの姿勢で政治を変えて行きたい」とその狙いを熱く語った。

 参院選の論戦では、人間の尊厳や権利、ジェンダーの問題、あらゆる差別を乗り超える問題に集中することが重要と指摘。特に政治参加への男女均等を目指す「パリテ元年」の今年は、女性への差別撤廃が大きな争点になるとして「選択的夫婦別姓制度」や女性天皇の問題も取り上げて「自民党の復古的な後進性、逆進性を暴き出し、民意と大きく乖離している実態を訴えることが参院選の勝負を分ける」と強調した。

ニュー・ノーマル
 中野教授は、安倍晋三首相が第一次政権当時、メディアに「自由な政権批判を許した」ことを反省し、第2次政権では「NHKや朝日新聞への攻撃を軸にメディア支配の構図を作り上げた」と指摘。その中で「ニュー・ノーマ ル」と呼ばれる、現状を無批判に受け入れる風潮がメディアの現場に広がっていることに警鐘を鳴らした。
 同教授は「6年に及ぶ安倍一強支配がもたらす現実を当たり前のことと常態化し、正常なんだと受け入れる世代がある」と指摘し、様々な弊害を引き起こしている小選挙区制度を不易のものと決め込むメディアの無定見な対応を「ニュー・ノーマル」の一例と批判した。
 中野教授は、菅義偉官房長官に質問を重ねて真実に迫った東京新聞望月衣塑子記者の取材に「こういうことをしてもいいのかと目から鱗(うろこ)≠感じた記者も多い」と述べ、ジャーナリストが世代を超えて「ニュー・ノーマル」克服へのチエを出すことこそが「たくましい知性だ」と強調した。

 特に中野教授は、市民参加の遅れがメディアの危機を進め、政治の危機と連動していると指摘、「市民の側からも、メディアを切り捨てて溜飲を下げるのではなく、メディアの中で歯を食いしばって頑張っている記者やディレクターを叱咤激励することが極めて重要だ」と力を込めた。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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【今週の風考計】6.9─「キムリア」3350万円が投じた複雑な波紋

白血病で闘病している競泳女子の池江璃花子選手が、5日、1カ月ぶりに自分の公式サイトを更新し、「先日、数日間の一時退院をしました」と明かした。
「治療は続いており、体調が優れない日もあります。(中略)一日一日を何とか乗り越えています」と綴っている。白血病やリンパ腫の治療に役立つ画期的な新薬「キムリア」の投与は、検討されているのだろうか。早い復帰を願うだけに、いらぬ心配までしてしまう。

この「キムリア」、スイスの製薬会社ノバルティスファーマが開発した特効薬といわれる。だが価格は投与1回で3349万円もする。「キムリア」を使う患者は年間200人ほどといわれ、販売額は約72億円と見込まれる。
5月22日、日本での公的医療保険の対象となった。保険適用になれば、高額の新薬も一定の自己負担で利用できる。「キムリア」の場合、年収370万〜770万円なら自己負担は40万円程度。残りは公的医療保険から支払われる。
これまたノバルティスが開発した「ソルゲンスマ」も、難病の脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬として、早ければ年内にも日米で承認される見込み。価格は2億3200万円ともいわれる。

それにしても新薬の価格算定をめぐる不透明さはぬぐえず「まるでブラックボックス」との批判が噴出している。
いま日本の年間医療費は42兆円を超える。そのうち7兆7000億円が薬代。がん治療薬の「オプジーボ」など保険適用される高額な薬が年々増えていることも関係している。飲み忘れなどの残薬は、年間500億円ともいわれ、過剰な処方による投薬を減らす対策も必要だ。
合わせて東京新聞のシリーズ<税を追う>が告発する、製薬会社71社で288億円という大学病院や学会への寄付など、「製薬マネー」にも、メスを入れなければならない。

<団塊の世代>が後期高齢者となる2022年以降、ますます医療費の増加に拍車がかかる。この10年で個人が負担する健康保険料は年間38万円が50万円となり、2022年には55万円となる。医療保険制度の抜本的な改善は待ったなし。(2019/6/9)
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2019年06月08日

【月刊マスコミ評・新聞】 心に響く高村薫さんの朝日への投稿

 30年前とは雰囲気は大きく異なるが、改元騒ぎが続いた。とりわけテレビは改元一色となり、NHKの放送時間は4月29日から3日間で33時間という。安倍政権による改元の政治利用も目についた。

垂れ流される報道のなかで、朝日4月30日の作家・高村薫さん寄稿が心に響いた。この30年の歴史を振り返り、何よりも変わる意思と力をもった新しい日本人が求められると。

今から30年前、1989年はベルリンの壁崩壊、冷戦終結という、戦後史にとって節目の年であった。日本国内はバブル絶頂期であり、消費税3%がスタート。その後、バブルが崩壊して経済社会の混乱が続いた。日経4月30日社説も「未完の成熟国家だった」とし、人口減社会の到来など、日本が抱える試練への対応を求める。

ことし2019年も、揺れ動く時代の転換点になるのではないか。日本国憲法施行から72年の時を刻む。憲法記念日の読売社説は「もとより、憲法改正論議の中心は、9条である。一部に根強く残る自衛隊違憲論を払拭し、国の安全と国民の命を守る正当性を明確にする狙いは理解できる」。安倍政権の狙いを理解できると言うのだろうか。 

毎日社説は「今、憲法をめぐって手当てが必要なのは、9条の問題よりもむしろ、国会の著しい機能低下だろう。その最たるものは首相権力に対する統制力の乏しさだ」。

読売5月10日「憲法考」での馬場伸幸・日本維新の会幹事長の発言にも注目したい。改憲勢力が「3分の2を維持することは、我が党にとっても参院選のアピールポイントになる」。安倍政権の「別働隊」として、改憲勢力の一翼であると明言。安倍改憲に向けて、維新の援軍ぶりが際立つ。

地域政党の大阪維新の会は、脱法行為といえる大阪府・市「入れ替えダブル首長選」で圧勝し、府議・市議選も大きく議席を伸ばした。ノンフィクションライター松本創さんが本紙4月号に寄稿したように、広がり定着する「穏健」支持層など、大阪での維新政治は、その基盤を広げている。選挙後には、公明・自民が変質して、大阪「都」構想=大阪市潰しの住民投票が現実味を帯びてきた。

維新の動向は大阪だけでなく、安倍改憲など国政にも重大な影響をもたらす。注視したい。

山田明

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年06月07日

【植村裁判】 東京訴訟 6月29日に判決 札幌控訴審は全面対決=編集部

 歴史修正主義勢力の「捏造」攻撃に対する元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復の闘いは4月25日、札幌訴訟(被告櫻井よしこ、新潮社など)控訴審が高裁で開廷。東京訴訟(被告西岡力、文芸春秋社)は5月10日、結審後の再開、中断など原克也裁判長の訴訟指揮で続いた異例の事態を経て口頭弁論が再開され再結審。6月26日午前11時半と一審判決日が決まった。

強引に再結審

東京訴訟は午後3時開廷。冒頭、植村弁護団は原裁判長が結審後の今年2月、被告側に新証拠を追加提出させた行為について、裁判所の釈明権行使義務の存在を指摘。新証拠「朝日新聞社第三者委員会報告書全文」の「裁判所が重要と考えた部分を明らかにし、植村側に反論、立証の機会を保証するのが適正だ」と求めた。だが、裁判長は応じず「弁論を終結する」と、一方的に再結審を宣言した。

またこの日の傍聴券交付も、裁判長(裁判体)が「席が余っても時間で切り券を配るな」と、指示していたことも職員の証言で明らかになった。

予断許さない

 新証拠「朝日新聞社第三者委員会報告書全文」は、朝日新聞ホームページ上の「慰安婦報道検証第三者委員会」に公開されており現在も確認できるので詳しくは触れない。だが、札幌訴訟一審判決は、植村さんへの櫻井よしこ被告の名誉毀損の事実、櫻井被告の主張の杜撰さ(彼女のほうが「捏造」者にふさわしい)を認定しながらなお、「朝日新聞の慰安婦報道に問題がある」を逃げ道に「真実」相当性を認め、櫻井被告の植村バッシングを免罪した。そして櫻井被告は「勝った私が正しい」とばかりに居直り続けている。東京訴訟の西岡力被告はそのネタ元の「捏造」者で、植村バッシングの「膿の親」だ。原裁判長らが「新証拠」歴史修正主義へのどんな「忖度」論理を組み立てるのか。6月26日の判決は予断を許さない。

 一方、札幌高裁での控訴審(本多知成裁判長)は4月25日に開廷し、植村さんの名誉回復への第二ラウンドがスタートした。開廷に先立ち植村裁判を支える市民の会が呼びかけた「公正な判決を求める署名」1万3090筆も高裁事務局に提出された。

 午後2時半に始まった第一回口頭弁論で植村さんは、櫻井被告が「捏造」とした植村記事の同時期、櫻井被告本人が「(金学順さんが)強制的に旧日本軍に徴用された」と書いていた事実と、2014年の「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起しているものがあるとすればそれは朝日や植村氏の姿勢ではないでしょうか」との言説を指摘。一審判決の不当を強く主張した。また弁護団も、「一審判決は櫻井被告が植村さんや当事者への取材なしに、資料引用や事実理解の誤りを繰り返したことを看過した。『真実相当性』の判断も、最高裁判例や法理論からかけ離れている」と明解に指摘した。

第二回控訴審は7月2日午後2時半に開かれる。

編集部
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2019年06月06日

【沖縄リポート】 「軍事植民地」現実かわらず=浦島悦子

 一人の人間が年老いて息子に仕事を譲っただけで、なぜ「時代が変わる」のか…? 強烈な違和感の中で、「改元フィーバー」の10連休が過ぎた。「天皇制」によってさんざん痛めつけられてきたはずの沖縄のメディアでさえ「平成天皇賛美」の片棒を担ぎ、わずかに「沖縄タイムス」が文化欄で目取真俊氏らの批判的な論稿を載せたくらいだった。

 もちろん、沖縄の現実は何一つ変わってもいない(日本だって同じだろうけれど)。「令和」とは「ヤマト(大和)の命令に従え、ってことだろ?」という声が聞こえるように、沖縄に対する安倍晋三政権(日本政府)の圧政はますます強まる予感さえする。それをうまく慰撫するのが天皇(制)なのだろう。

10連休2日目の4月28日は、米軍属に惨殺された当時20歳の女性の3周忌であり、67年前に沖縄が米国に売り渡された「屈辱の日」でもあった。私は友人とともに恩納村に向かい、女性の遺体遺棄現場に地域住民が設けた献花台に手を合わせた。「二度と娘のような被害を生まないで」という両親の悲願とは裏腹に、つい2週間前(4月13日)またしても、在沖米海兵隊所属の海軍兵に北谷町の女性が殺害される事件が起こったばかりだ。米兵の勤務時間外行動を制限するリバティー制度を、米軍は「兵隊に快適な時間を過ごしてほしい」という理由で大幅緩和した直後だった。軍事植民地♂ォ縄の現実を変えられないことを、霊前に詫びるしかなかった。

4月21日に行われた(玉城デニー氏の知事選出馬に伴う)衆議院沖縄3区補欠選挙で、安倍政権の全面的バックアップを受けた辺野古新基地容認の元沖縄北方担当大臣・島尻安伊子氏を、デニー知事の後継で新基地反対の新人・屋良朝博氏が見事破って当選。沖縄の民意はさらに明白になったにもかかわらず、翌日から変わらず、海と陸での新基地建設埋め立て工事が、何事もなかったかのように続けられている。

5月15日、沖縄は47年目の「日本復帰」の日を迎えた。「アメリカ世」から「ヤマト世」への「世変わり」は、植民地の宗主国を替えたにすぎなかった。今日も辺野古ゲート前に「沖縄を(沖縄に)返せ!」の歌が響く。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年06月05日

『未和 NHK記者はなぜ過労死したのか』 著者・尾崎孝史氏にインタビュー 選挙報道で月209時間残業=橋詰雅博

NHKはなぜこの事件≠4年間も伏せていたのだろうか―5月8日に岩波書店から出版された「未和 NHK記者はなぜ過労死したのか」の著者・尾崎孝史さん(53)の取材動機だった。尾崎さんは、外部スタッフとしてNHKで27年間、番組制作に携わっている。亡くなった未和さんのご両親と出会い「娘が31年間生きてきた証を残したい」という要望を受けた。彼女の死に至るまでの経過をまとめた尾崎さんに話を聞いた。

    ☆

――佐戸未和さんの過労死を公表したNHK「ニュースウオッチ9」(2017年10月4日)の翌日、各新聞も報道しましたが、どう受けとめましたか。

 朝日新聞の朝刊を見てビックリしました。2013年7月にNHKの女性記者が亡くなり、翌年の5月渋谷労基署が労災認定したと書いてあったからです。私はNHKで長年仕事をしており、職員が亡くなるようなことがあると、あまり時間をおかずに伝わってくるのが普通でした。ご両親の「未和の死が葬り去られる」という新聞のコメントに説得力を感じました。そこで、ご両親あてに「可能なら焼香させていただきたい」と書いた手紙を、代理人の事務所に持参し、ご両親に渡してくれるようお願いしました。焼香を機に本の出版の話が進みました。

109人取材

――どんな資料もとに書いたのですか。

 NHKから遺品として届いた取材ファイルや放送を録画したDVD、未和さんがスケジュールを書き込んでいたNHK手帳、3冊の取材ノート、携帯電話・パソコンでやり取りされたメールなどです。また、遺族、友人、NHK関係者など109人にインタビューをしました。1年半に及ぶ取材で合計約300時間になりました。

――彼女が過労死した背景は?

NHKでは災害と選挙が報道の2本柱とされています。特に国政選挙の報道は、与党・自民党議員に不利にならないようバランスをとることが不文律となっています。国会でNHK予算案をスムーズに承認してもらう必要があるからかもしれません。投開票日は民放よりいち早く当確を出すのがNHKの使命です。当確を出した後、別の候補者が当選したら、ミスした記者は降格人事を受けます。あの13年は6月の都議選に続き7月に参院選がありました。都庁詰め記者の彼女は殺人的なスケジュールでした。発病前1カ月間の時間外労働時間数は209時間にも達していました。

横浜局へ異動となる未和さんは送別会が終わった後、帰宅しました。7月24日午前3時ごろです。遠方から駆けつけた婚約者が遺体を発見したのは25日夜9時すぎです。

真相知りたい

――未和さんは助かる可能性があったと示唆していますが。

 彼女のNHK手帳の7月24日欄に〈14:30〜15局長 15:00〜15:30次長〉と書き込まれています。異動の挨拶のため2人の都庁幹部との面談があったと推測できます。当日、佐戸記者が来ないので都庁職員がNHK都庁クラブに連絡を入れた可能性があります。それを受けた人が不審に思い、彼女のマンションを訪ねたら助かっていたかもしれない。ご両親も私も真相を知りたいと願っています。

――NHKが事件を伏せていたのはなぜですか。

 14年5月に未和さんが労災認定されました。NHKの担当者から「記者会見をしますか」と尋ねられた担当弁護士は「予定はない」と答えました。すると担当者は「会見をしないですね」と深く確認するかのようだったと弁護士は言っています。この情報がNHK上層部に伝わり、ご両親は公表を望んでいないという空気が定着したのかもしれません。日放労も何か事を起こすという姿勢は見られませんでした。NHKは「代理人から公表を望んでいないと聞いていた」と言っていますが、弁護士は否定しています。ご両親は記者会見を開き、事実誤認があるとしたうえで「両親が公表を望んでいないという事実はありません」と抗議しています。

――その後も外部スタッフが倒れ国会で取り上げられましたが、働き方は改善されたのでしょうか。

 深夜や休日の勤務が一部届出制になるなど改善されたところはあります。一方、外部スタッフやプロダクションは視野の外です。勤務管理と称して記者に携帯端末が配布され、上司に居場所が監視されるような不安もあるそうです。忖度のない自由な取材や放送が実現して、はじめて未和さんの死に報いることになるのではないでしょうか。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
posted by JCJ at 11:30 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月04日

【リレー時評】「世界一の民主主義国」と孫総領事=白垣詔男

 私が所属している「日本コリア協会・福岡」は20年近く前から月刊紙「日本とコリア」を発行している。同協会はかつて「日朝協会福岡支部」と名乗っていたが、会の趣旨が「朝鮮半島関係者との友好親善」を掲げているので「日朝協会」では北朝鮮だけとの友好親善組織と誤解される恐れがあるために、福岡や他の数支部は「日本コリア協会」と改名した。東京にある「本部」は創設以来「日朝協会」と名乗っている。

 私は、約15年前から月刊紙「日本とコリア」の取材担当として活動している。同紙は原則として毎号、1、2面は「朝鮮半島と関係がある方」のインタビュー記事を載せている。インタビューは理事長(堀田広治さん)と私が、韓国人、在日韓国・朝鮮人、日本人を含むさまざまな「関係者」にお願いしている。
 今年3月号では駐福岡韓国総領事の孫鍾植(ソンジョンシク)さんにインタビューをさせていただいた。孫総領事は、韓国が朴槿恵(パククネ)大統領から文在寅(ムンジェイン)大統領に代わった直後に福岡に赴任されてこられた。政権が変わると、福岡の総領事も交代するのだ。

 孫総領事は、大阪の総領事館領事、東京の大使館公使などを歴任された。大変気さくな方で、インタビューから約1カ月後、「日本コリア協会・福岡」の堀田理事長と私を懇親会に招いてくださり、大いに歓談した。
 その中で私が一番驚いたのは、孫総領事が「韓国は世界で一番民主主義が発達している国です」と言われたことだ。もちろん私は、「沖縄には沖縄の民主主義があり、しかし国には国の民主主義がある」などと発言する閣僚がいる今の安倍政権は日本の民主主義をおろそかにしていると考えている。韓国の民主主義のほうが数段進んでいるとは思っていたが、総領事の口から「世界一の民主主義国家」という発言が飛び出し、一瞬沈黙した後、私は納得したが返事に困った。

 私は、韓国の民主主義の原点は100年前の「三・一民族運動」だと思っていた。その運動で朝鮮半島の方々が取った言動を支えた精神が、その後の韓国の民主主義を推進したと、今年の「三・一民族独立運動」の際、講演会などで学びながら思ったことだった。韓国のさまざまな民主運動にその精神が引き継がれ、記憶に新しいのは朴槿恵大統領退陣要求運動のキャンドル集会・デモにまで引き継がれている。
 「三・一運動」の原点は東京神田のYMCA会館で創案された、朝鮮半島から日本の大学へ来ていた留学生らによる「2・8独立宣言」であることを、恥ずかしながら私は今回初めて知った。
 その後の歴史を通じて韓国国民が民主主義を進展させたことは疑いようがない。
 「世界一の民主主義国家」と言われた孫総領事の顔を、私はまぶしく見つめ続けたことだった。
posted by JCJ at 09:26 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月02日

ジャーナリスト講座「過労社会を取材する」=東京新聞・中澤誠記者

JCJ夏のジャーナリスト講座
過労社会を取材する――社会部記者の視点とは
<体が痛いです。体が辛いです>と手帳に書き残し、過労自殺した26
歳の新入女性社員。居酒屋チェーン大手、ワタミフードサービスの横須賀市の店で起きた労災事件をきっかけに、横浜支局にいた中澤誠記者は、遺族に会い、通勤徒歩ルートをたどり、ワタミの店員に聞き、過労社会の問題を世に問いました。女性の死から11
年。電通やNHKでまた問題は起きた。なぜ繰り返されるのか……。
6月13日午後6時半から9時半
会場:日比谷図書文化館・4階小ホール
東京都千代田区日比谷公園1−4
最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅
講師:東京新聞社会部の中澤誠記者

参加費=1000円・予約が必要です。
予約:参加希望日と氏名、大学名
またはご職業、電話番号、メールアドレスを明記し、下記にメールかファクスでお申し込みください。講義内容はメディア志望の学生向けですが、社会人の方の参加も歓迎します。
メール sukabura7@gmail.com ファクス 03・3291・6478
★中澤誠記者の略歴=1975年、香川県生まれ。99年、中日新聞に入社。横浜支局や中日新聞社会部などを経て、2015
年8月から東京新聞(中日新聞東京本社)社会部に所属。キャンペーン報道「過労社会」でワタミや電通の過労自殺などを取材したほか、獣医学部開設を巡る加計学園問題や東京五輪の経費問題を追及。現在は、社会部の調査報道班の一員として、税金の使い道を検証する「税を追う」キャンペーン報道に携わる。著書に「ルポ過労社会」(ちくま新書)、共著に「検証ワタミ過労自殺」(岩波書店)
主催:日本ジャーナリスト会議 電話03・3291・6475=月水金の午後
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【今週の風考計】6.2─<トゥク トゥク トゥク>と働くセミ

★ショーン・タン『セミ』(岸本佐知子訳・河出書房新社)に魅了された。A4変形版32ページの絵本である。表紙を開けると、見返し2頁にわたって、高さがバラバラな墓石を思わせる、蒼い鉛色の積み木が並ぶ。左下に、小さく蝙蝠のような飛形で飛ぶセミが一匹、描かれている。

★続いてページを繰ると、なんと薄みどり色のセミが背広を着て無機質なオフィスで働いている。しかもニンゲンからコケにされ、昇進もせず、17年間ケッキンなし、<トゥク トゥク トゥク>と働いてきた。
★そして定年、送別会もない、セミは高いビルの屋上に行く、そろそろお別れの時間、屋根の縁に立つ。それから一気に10ページにわたって、心を打つドラマが描かれる。
★朱赤で描かれる無数のセミの抜け殻が空を舞う。絵を見ながら、まさにセミの甦り、17年目の新たな出発への飛翔、そんな感動に包まれた。最終ページに、芭蕉の句<閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声>を載せている。

★ショーン・タンは、1974年オーストラリア生まれのマルチ・アーチスト、絵本のみならず彫刻、映画、舞台などで活動を続けている。絵本では『アライバル』ほか、アンデルセン賞をはじめ数々の賞を受賞、作品は世界中で翻訳出版されている。

★実は、彼について知ったのは、つい最近だ。先週末、1万歩ウオーキングがてら、「ちひろ美術館・東京」に立ち寄ったところ、<ショーン・タンの世界展>が併催されていたからである。
★展示されている作品を、まず一巡。そして二巡目で、一つ一つじっくり見入る。なんとも不思議な、奇妙で懐かしい、どこでもないどこかへ連れていってくれる余韻に浸った。すぐに『セミ』とショーン・タン展覧会の公式図録を買い求めた。今も座右において、このコラムを書いている。(2019/6/2)
ショーン・タン「セミ」.jpg
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2019年06月01日

【メディア気象台】 4月から5月=編集部

トランプ報道にピュリツアー賞
米報道界で最高の栄誉とされる2019年のピュリツアー賞が15日発表され、トランプ大統領をめぐる疑惑の調査報道を行ったニューヨーク・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の両紙が受賞した。タイムズ紙は「18か月間にわたる徹底調査」(選考委員会)を通じ、トランプ氏が1990年代に一族による脱税工作に関与した疑惑を明らかにし、解説報道賞に選ばれた。WSJ紙はトランプ氏と不倫関係にあったと主張する女性に、トランプ氏側が口止め料を払っていたことを暴露した報道で国内報道賞を受けた。(「しんぶん赤旗」4月17日付ほか)

旅券返納命令で国を提訴
中東イエメンの取材を予定していたジャーナリストの常岡浩介さん(49)が外務省から旅券の返納を命じられた問題で、常岡さんは24日、国を相手に命令の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。同日、外国特派員協会で会見し、報道の自由が制限されたと訴えた。(「朝日」4月25日付ほか)

女性記者が長崎市を提訴、「取材で性暴力」「名誉も傷ついた」
長崎市の男性部長(故人)から性暴力を受けたという報道機関の女性記者が25日、市に約3500万円の損害賠償と謝罪を求めて長崎地裁に提訴した。取材過程で性暴力がふるわれたほか、市の他の幹部が虚偽の話を広めたにもかかわらず、市が対策を怠ったために記者の名誉も傷つけられたなどと主張しており、弁護側は「報道の自由が侵害された」と訴えている。(「朝日」4月26日付ほか)

菅氏「文書管理問題ない」
菅義偉官房長官が25日の記者会見で、NPO法人の情報公開請求により、2017年度から2年間に公文書として作成された11府省の各閣僚の日程表がすべて不存在となっていたことについて、文書管理上の問題はないとの認識を示した。(「毎日」4月26日付ほか)

「NHKから国民を守る党」統一選躍進、参院選擁立へ
今月の統一地方選でNHKへの批判を唯一の政策に掲げた政治団体「NHKから国民を守る党」の公認候補26人が当選した。所属する地方議員は選挙前の13人から39人に大幅に増え、26日には今夏の参院選に候補者を擁立すると発表した。「ネットの時代にNHKのみに強制的に(受信料を)支払わせることに相当の不満があって投票につながった」。会見した同団体の立花孝志代表(51)は、統一地方選についてそう述べた。7月の参院選では比例区への候補者擁立に必要だとして、選挙区も含め10人を擁立すると発表、自らも東京都葛飾区議を辞職して比例区に立候補すると表明した。(「朝日」4月27日付ほか)

サウジ記者殺害に河野外相は触れず
訪問先のサウジアラビアで同国のムハンマド皇太子と会談し、サウジの経済構造改革を支援する考えを改めて強調した。日本外務省によると、河野氏は約1時間の会談で、ムハンマド氏の関与が指摘されるサウジ人記者カショギ氏殺害事件について言及しなかった。殺害事件を巡って国際社会から批判を受けるムハンマド氏に配慮したとみられる。(「東京」4月30日付ほか)

改元報道、テレビは170時間
改元前後の7日間のテレビ番組で、天皇や改元をめぐる特集が170時間を超えたことが、番組・CM調査を手掛けるエム・データ(本社・東京都板橋区)の調べで分かった。同社はNHKと在京民放キー局の4月28日〜5月4日の地上波放送で「改元」「令和」「天皇」「皇后」のいずれかのキーワードが入ったコーナーや特集などの総量を調べた。(「朝日」5月11日付)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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