2019年07月31日

【リアル北朝鮮】 電力不足解消の証? ビール缶の写真掲載=文聖姫

朝鮮総聯機関紙の朝鮮新報(2019年7月17日付2面)に興味深い写真が掲載されている。樹脂ボトルと缶の大同江(テドンガン)ビールである。

 拙著『麦酒とテポドン』(平凡社新書)でも紹介したことがあるが、北朝鮮の大同江ビールは実においしい。2003年に朝鮮新報平壌特派員をしていた頃は、ほぼ1週間に1度の割合でビール工場に通った。工場で直売するビールを5ケースぐらいずつ購入していた。支局の冷蔵庫にビールを入れておくと、すぐになくなった。「案内員」と称されるガイドら現地の人々にふるまっていただからだ。

 酔ってくると本音が出てくるのは北朝鮮の人たちも同じ。彼らから取材のときとは違う話が聞けるから、ビールの代金など安いものだった。

 大同江ビールは北朝鮮の人々に大人気。平壌市内には大同江ビールを飲ませる店がいくつもあった。ビアホールは仕事の帰りに一杯ひっかけていく労働者らでにぎわっていた。

だが、私が頻繁に訪朝していた2010年代の初め頃に缶ビールはなかった。缶ビール販売の再開は16年8月。大同江ビール工場のキム・グヮンヒョク工場長は、対外市場に出しても遜色のない「大同江ビール工場を代表するビール」(朝鮮新報朝鮮語版・電子版17年3月13日付)と自画自賛していたが、この発言を見る限り、缶ビールの海外輸出を目指していたことがうかがえる。同じ頃、平壌では外国人客も招待して「ビールの祭典」が開催された。ガイドブックまである。

もし、アルミ缶ビールの大量生産が可能になったとすれば、電力不足の解決にメドがついたともいえるかもしれない。もちろん、写真だけで判断するのは早計すぎるかもしれないが。

 世界的にも評価の高い大同江ビールだが、いまは経済制裁下で輸出もままならない。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月30日

【編集長EYE】 武村元官房長官 会見の心構えを語る

 新聞労連は6月下旬に東京都内でシンポジウム「官邸会見の役割を考える」を開いた。

 このシンポには菅義偉官房長官と東京新聞社会部・望月衣塑子記者との官邸バトル≠ェ背景にある。これの波紋は大きかった。官房報道室長が内閣記者会に望月排除≠ほのめかすような申し入れをした。これに対して新聞労連などマスコミ労組は報道の自由を制限し、国民の知る権利を阻むと官邸前で抗議行動を展開。シンポはこの問題を広く知ってもらうため企画された。

 現在、菅長官との会見は平日の午前11時と午後2時の2回実施されている。金曜日の午後は記者会に非加盟だが、特定の雑誌記者やフリージャーナリストが出ている。

 シンポに出席した細川護熙内閣(93年8月から94年4月)で官房長官を務めた武村正義さんは「私の頃は2回の会見に加えて記者懇談会を午後3時と夕方に行った。1日に4回記者とお付き合いした」と振り返った。

 続けてこう言った。

 「官房長官は政府の広報官です。情報を隠さない∞捏造しない∞身構えない≠モットーに会見に臨んだ。従って知らないことは『知らない』と答え、答えられないことは『答えられない』と言った。質問の制限や拒否は官房長官の姿勢としてよくないと思っていた」

 加計学園疑惑で「総理のご意向」と書かれた政府の内部文書を菅官房長官は「怪文書」と打ち消したが、これについても語った。

 「あるものを隠すという発想は取らなかった。クロをシロと言いくるめるウソを繰り返すと政府は信頼を失う。そういうことはしませんでした」

 同じくシンポに出席の毎日新聞政治記者30年・与良正男さんによると、官邸側はこちらの都合の悪い話を報じない新聞・テレビがあると自信を深めている。状況を打ち破る糸口はあるのか。

 「(望月記者のような)気概のある人が多く出てくれば、政治は変わると思う」(与良さん)

 そうなればいいのだが……。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月29日

【メディアウオッチ】 出版界は制度疲労 『出版ニュース』元編集長・清田さんが講演=土居秀夫

『出版ニュース』誌と『出版年鑑』で知られる出版ニュース社が今春、惜しまれつつ経営の幕を降ろした。その代表で、長年JCJ賞選考委員も務めた清田義昭さんが、6月28日の出版部会例会で、「『出版ニュース』編集50年―いま出版界に大切なこと」―と題して語った。

清田さんは冒頭、比較哲学への関心を経てアカデミズムについて考えるようになり、その中で出版への興味を深めて出版ニュース社に入社したことなど、出版界との関わりの原点を振り返った。

 出版ニュース社は当時、国会図書館への納本事務を行っていて、常に新刊に目を通せたこと、入社2年目以降は自分のプランが誌上で実現できるようになったことから、清田氏は、自身と『出版ニュース』の業界ウォッチとしての役割を自覚するようになったという。

出版支える再販制

 出版は、多品種・少量生産で、ときには反公共的な面もある点で、大資本で公共性や公益性を求められる新聞、放送とは、大きく異なる。そこから清田さんは、出版・表現の自由は流通の自由なくしてはありえないことを強く意識するようになった。そして出版・表現の自由は「守る」のではなく「拡げる」ものだと強調。現在も年間出版点数は8万点もあるが、誰もが手がけられるメディアとして当然なことで、それを支えているのが再販制(再販売価格維持制度)と委託販売だと、講演の主題へ話を移した。

 オイルショックでも成長を続けた出版業界に対し、公正取引委員会が、定価の高さ、断裁の無駄、流通の非効率などから出版物の再販制廃止を言い出し、騒然となったのが78年。業界側は、寡占化や流通の困難、中小出版の経営悪化の恐れなどを挙げて反論し、『出版ニュース』も「再販ニュース」と言われるほど、この問題に取り組んだ。

 公取委は結局、2001年に再販制存置を決めたが、電子出版物は除外。同じ著作物でありながらそうなったのは問題だと、清田さんは指摘した。

深刻アマゾン問題

 出版業界は80年代以降、雑誌が牽引する「雑高書低」の成長を続けたが、1995年がピークで、同年、ウィンドウズ95が発売されたのが大きな分岐点となったと分析。以後、右肩下がりが止まらず、いまや「雑低書高」となり、雑誌の時代は終わった。それが中小書店の経営を打撃し、日書連の書店は3000店にまで減少したこと、2000年のアマゾン参入後は、ポイント制や割引販売、出版社との直接取引などで再販制が事実上、無視されていることを述べた。

 一方、業界は出版社、取次、書店とも対応はバラバラだ。その結果、再販制がなくなればかつて業界が危惧したことが起きるだろう。「制度疲労」といわれるが、どこがなぜ疲労しているのか、運命共同体である業界三者で議論・検証する必要があると主張した。

 国会の活字文化議員連盟の「公共図書館プロジェクト」が出した答申でも、書店の疲弊と図書館問題を取り上げているが、書店は読者と出版界が向き合う最前線であり、その問題を起点に再販制の議論をしていくべきだと提案して、講演を終えた。

 講演後の質疑応答でも再販制とアマゾンが話題となり、この問題の大きさが改めて浮き彫りにされた。  

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月28日

【今週の風考計】7.28─「祇園祭」に厄除・無病息災への願いを込め

今年の祇園祭は、創始1150年のアニバーサリーイヤー。平安時代初期の貞観11年(西暦869年)、京の都に疫病が大流行したとき、厄災の除去を祈ったことから始まる。7月1日から1カ月間続く。

念願かなって、7月24日の後祭・山鉾巡行を観にいくことができた。山鉾巡行は、八坂神社に鎮座の牛頭天王を楽しませる神賑わいとしての行事。
蝉が御池通りの街路樹でうるさいほどに鳴いている。この日、朝9時にして32度を超える真夏日。烏丸御池をスタートした「橋弁慶山」を先頭に、山鉾11基が、それぞれの町の伝統と歴史と誇りをかけて、意匠を凝らした金糸銀糸のきらびやかな前・胴・見送り懸けや欄縁が台車に巡らされている。

最重量は12トンにおよび、最高は地上から山鉾のてっぺんまで25メートルになる。巡行に就く者は、武士の正装によるお供が二十数名、鉾に乗る人形方数名、コンチキチンと祇園囃子を奏でる鉦・笛・太鼓の囃子方40人、曳き手46人、そのほか約30人。
とりわけ北観音山、南観音山、掉尾の大船鉾、この3山鉾の壮観さには圧倒された。御池河原町の四つ辻で、竹を敷きならべて車輪を90度回す辻回しの掛け声や一気に力を合わせる曳き手の捌きは見事だ。

続く花傘巡行も2年ぶりの開催。色とりどりの花傘の女性や4花街の芸妓・舞妓が載る屋台、子ども神輿が練り歩く。
 翌日、帰宅して玄関口に粽を飾った。厄除けと幸せを祈願する「蘇民将来子孫也 大船鉾」の護符が添えてある。

その後、祇園祭の大切な神事は、山鉾巡行後の夕刻より始まるのを知った。24日夜の「還幸祭」である。17日から四条御旅所に鎮座していた3基の神輿を、白い法被姿の担ぎ手たちが、「ホイット、ホイット」の掛け声とともに、頭上に掲げて激しく揺さぶり、飾り金具の音を響かせながら八坂神社へ戻す神事。
さらに28日夜8時からの神輿洗い。四条大橋の中ほどで鴨川から汲みあげた水で、神輿を清める。31日は疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)。八坂神社内の摂社・疫神社で祇園祭を締めくくる最後の行事。
 神前に粟餅を供え、鳥居に茅の輪(ちのわ)を設けて厄除・無病息災を祈願する。茅の輪を八の字を描くように合計3回くぐると、厄除けのご利益があるという。(2019/7/28)
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2019年07月27日

【沖縄リポート】 ハンセン病元患者 本土以上に過酷な運命=浦島悦子

 国の強制隔離政策によって、元患者だけでなくその家族も甚大な被害や差別を受けたとして561人が提訴したハンセン病家族訴訟で、熊本地裁は6月28日、国の責任を認め賠償を命じる判決が出た。安倍晋三首相は7月9日、控訴しないことを表明、12日には謝罪の首相談話を発表した。参議院選向けのパフォーマンスという側面は否めないにしろ、原告勝訴が確定した。

 しかし、原告や元患者の多くは、これを手放しでは喜んでいない。生死をも左右した深刻な差別被害に見合わない、あまりにも低額の賠償。2001年の熊本地裁判決(元患者による訴訟で隔離政策を違憲とし、国が謝罪)以降の被害については国の責任を否定し、原告のうち20人の請求を棄却したこと。そして、原告の約4割を占める沖縄の家族(250人)にとっては何よりも、米軍統治下の被害について日本政府の責任を認めなかったことは、あまりにも不当だ。

 沖縄の元患者・家族は、「本土防衛」のための捨て石とされた沖縄地上戦によって、「本土」とは異なる被害を強要された。1944年3月に沖縄入りした日本軍がまず行ったのが、軍民混在の地上戦に備え、「戦闘の邪魔になるハンセン病者の一掃」をめざす沖縄島全土での「患者狩り」=「軍収容」だった。こうして、沖縄愛楽園(「療養所とは名ばかりの強制収容所」=元患者の言葉)に定員の2倍以上も押し込まれた人々は、劣悪な居住環境や強制労働、不自由な体を押しての防空壕掘りなどで病気や後遺症を悪化させ、沖縄戦前後の1年間で300人近くが命を落とした。

 愛楽園の収容人数が1000人を超え、最も多かったのは戦後すぐだ。戦争による劣悪な衛生・栄養状態の中、ハンセン病を発症する人が増え、沖縄を占領した米軍は、日本の隔離政策を引き継いで強制収容を行った。しかしこれによって日本政府の責任が免罪されるとは思われない。沖縄の元患者・家族を、「本土」より格段に苛酷な状況に追い込んだのは、沖縄を戦場にし、米軍に売り渡した日本政府だからだ。

 原告・弁護団は「本土」と一律の補償を求める方針だが、むしろそれ以上に手厚い対策を取ってしかるべきだ。ある元患者は「(元患者以上に)それぞれの家族の状況は複雑だ」と語った。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月26日

【メディアウオッチ】6月~7月=編集部

◇ロシア記者軟禁で抗議の200人を拘束
ロシアの独立系ニュースサイト「メドゥーザ」のイワン・ゴルノフ記者が麻薬密売容疑で捜査当局に一時軟禁されたことに抗議する市民ら数百人以上が12日、モスクワ中心部に集まった。野党系サイトによると約200人が拘束された。(「東京」6月14日付ほか)

◇「性別確認」BPOが審議〜読売テレビのニュース番組
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日、番組内のコーナーで一般人の性別をしつこく確認する様子を放送した読売テレビ(大阪市)のニュース番組「かんさい情報ネットten.」について審議入りすることを決めた。問題となったのは、5月10日に放送した街角ロケのコーナー。飲食店員から「(常連客に)男の人か女の人か聞いて」と依頼を受けたお笑い芸人が、常連客の同意を得て胸を触ったりする模様を流した。(「毎日」6月15日付ほか)

◇NHK同時配信、費用上限順守を〜民放連会長
民放連の大久保好男会長は14日の会見で、NHKに放送番組のインターネット常時同時配信を認める改定放送法が成立したことを受け、「NHKには配信費用の現行枠をしっかり守ってもらいたい」と述べた。受信料収入の2.5%までと定められたネット関連業務の上限順守を訴えた。(「しんぶん赤旗」6月16日付ほか)

◇関テレ「ヘイト」放送、番組で謝罪
関西テレビが5月18日放送のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」で、作家の岩井志麻子氏の「(韓国人は)手首を切るブスみたいなもん」とヘイトと受け取られかねない発言を編集せずに放送した問題で、同社は22日昼の番組冒頭で謝罪した。(「毎日」6月23日付ほか)

◇大阪市、街宣ヘイト初認定
ヘイトスピーチ抑止を目的とした条例に基づき、大阪市の有識者審査会は2日までに、2016年9月の大阪市内での街宣活動と、その音声ファイルをインターネット上で公開した行為がヘイトスピーチに当たると認定し、市に答申した。街宣活動の認定は初めて。(「神奈川」7月3日付ほか)

◇NHK、吉本興業に要望
吉本興業のお笑い芸人らが振り込み詐欺グループの宴会に参加し金銭を受け取っていた問題について、NHKの上田良一会長は4日の会見で「番組の出演者をめぐって視聴者から不信感や疑念を抱かれることがないよう、しっかり対応して参りたい」と述べた。担当者によると、番組制作に影響が出かねないような情報があれば、速やかにNHKに伝えるよう求めたという。(「朝日」7月5日付ほか)

◇一部記者排除「独裁政権のよう」〜NYタイムズが批判
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は5日、東京新聞の望月衣塑子記者を紹介する記事を掲載した。菅義偉官房長官らに対して多くの質問を繰り出すことで、日本の報道の自由にとって「国民的英雄のような存在」になっていると指摘した。背景として、日本政府は一部の記者を会見から排除するなど「独裁政権のような振る舞い」をすることがあると批判。日本には多くの記者クラブがあり、所属する記者たちは情報を得られなくなることを恐れ、当局者との対立を避ける傾向があるとの見方も紹介した。(「東京」7月7日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月25日

【メディアウオッチ】NHKもテレ朝も「安倍忖度」人事 「官邸御用聞き」専務理事に3年ぶり復帰 政権批判の経済部長 報道局からパージ=河野慎二

 このところ、安倍晋三政権寄りとの批判が強まるテレビ朝日で7月1日、それを印象づける報道局幹部の人事があった。「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)として、テレビ朝日の報道を支えてきた松原文枝経済部長が報道局から外され、イベント事業戦略担当部長に発令された。

不正追及崩さず    
 松原部長は「報ステ」CPを務めた2016年、「ワイマール憲法の教訓」を題材に安倍改憲の危険性を取材した映像で、JCJ賞を受賞している。
 経済部長就任後も、政権の不正追及の姿勢を崩さず、年金に関わる「2千万円不足問題」では、テレ朝記者が麻生太郎財務相追及の口火を切った。重要な局面では松原部長自身が記者会見に出席し、現場記者を支えた。テレ朝記者の質問に麻生財務相は「またテレビ朝日か。ものの見方が俺たちと全然違う」と敵意を隠さなかった。
 この点について、森友学園疑惑のスクープ取材を巡る配転命令でNHKと訣別した相澤冬樹氏がJCJの6月集会で「松原経済部長は政権を忖度せず、真っ当にニュースを出してきたから、それがダメだとして配転された。何が何でも、報道の外に出すという(上層部の)意思がある」と指摘した。
 その上で相澤氏は「早河洋会長と近い見城徹氏がテレビ朝日番組審議会の委員長に就任してから『報道ステーション』をヤリ玉にあげるなど、今回の松原氏外しにつながった」と松原経済部長の異例な人事の背景に言及した。

見城徹氏の役割
 見城氏については本紙6月号で記事にしたが、ベストセラーづくりの名物編集者で幻冬舎の社長。もう一つ安倍応援団≠フ顔を持ち、知人や友人を安倍首相に引き合わせている。
 早河会長も13年3月見城氏の紹介で安倍首相と会食。これを境にテレビ朝と安倍官邸の距離は急速に縮まり、NHKに劣らずアベチャンネル化≠ェ進むのではないかと懸念が広がる。松原氏のもとには「誰が見ても左遷人事だ。大変だけど頑張れ」と激励する仲間が少なくない反面、若い後輩からは「テレ朝にとって、想像以上のダメージです」「テレ朝報道の終わりの始まり。政権監視は当たり前なのに、安倍忖度≠ナすね」などのメールが送られ、衝撃が広がった。

内示後もスクープ
 松原氏は「萎縮したら、向こうの思うツボ。ひるまず、取材を続けて」と返信。「私もへこんでばかりではいられない」と前を向く。
 異動内示後も松原氏は、農水省が所管する政府系ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」のズサンな融資と累積損失の実態をスクープする。「支援機構」には、国が300億円を出資している。
 松原氏自ら「報道ステーション」(6月25日)に生出演し、独自に入手した「支援機構」の内部文書をもとに、国民からの資金で運営する財政投融資が食い物にされる危険性を解説した。
 さらに彼は、立教大学が開催した「国際カジノ・シンポジウム」の取材を指揮した。「日本統合型リゾート〜健全社会のIRを目指して」と題して5日から開催されたが、実態はカジノの人材養成講座で、文学部と社会学部の教授会が総長に連名で抗議。豊島区も後援を取りやめた。
 テレ朝は学内で教授や学生にインタビューを行い「立教はカジノに魂を売るな」などの声を伝えた。この「カジノ・シンポ」を取材したのは、民放ではテレ朝だけだった。
 権力の不正に迫ろうとする松原氏の姿勢に揺らぎはない。しかし、報道強化に欠かせない貴重な人材を報道局からパージするテレ朝首脳の判断は、安倍官邸の評価は得ても、視聴者の信頼は失うだけだ。

裏で密かに蠢く
 一方、NHKでは、籾井勝人元会長の側近・板野裕爾氏の専務理事復帰で、テレ朝以上に安倍政権御用化≠ェ進むことが危惧されている。
JCJが参加する「NHKとメディアの『今』を考える会」は6月25日、NHK前で板野氏の退任を求める集会を開催した。大貫康夫さん(元NHKヨーロッパ総局長)はこう言った。「NHKは政権べったりで、公共放送と言えるのか。板野専務理事の仕事は裏で蠢くことではない」。
各参加者は口々に板野即刻退任の声を上げた

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月22日

【お知らせ】JCJ賞、決まる! 8月17日(土)に贈賞式と記念講演(どなたでも参加できます)

2019年度のJCJ賞が決まりました。
8月17日(土)午後1時からの8月集会で贈賞式があります。

元文科省事務次官の前川喜平さんが「私が見た『安倍官邸とメディア』」のテーマで記念講演をします。
会場は東京・内幸町のプレスセンターホール。日本プレスセンタービルの10階です。
参加費は1000円(学生と障がい者手帳をお持ちの方は無料)。
予約いりません。どなたでも参加できるオープンな集まりです。どうぞ御来場ください。
詳細は下記をご参照ください。

【JCJ大賞】 
○「税を追う」キャンペーン 東京新聞社会部 
 
【JCJ賞】 4点(順不動)
○『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』みんなのデータサイト出版
○「イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道」
 秋田魁新報社・イージス・アショア配備問題取材班
○「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの“心”」山形放送
○ ETV特集『誰が命を救うのか 医師たちの原発事故』NHK

問合せなどは、下記事務局までお願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1−18−1  千石屋ビル402号
電話 03-3291-6475 FAX 03-3291-6478
(電話は月、水、金曜日の13:00〜17:00受付)
Eメール office@jcj.sakura.ne.jp

8月集会・JCJ賞贈賞式PDF版チラシ2019年8月集会.pdf
posted by JCJ at 21:43 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月21日

【今週の風考計】7.21─参院選後、すぐに襲ってくる3つの危機

参院選が終わったとたん、安倍首相が封印し、国民の前に明かさなかった安倍・トランプ密約″が暴かれる。日本の「農産物や自動車・サービス」へ、米国から要求される法外な内容を、暗黙に受け入れるという疑惑取引である。
TPPを離脱したトランプ政権が、日本を2国間交渉のFTAに引きずり込み、8月中にも、日本が輸入拡大で大幅に譲歩する日米合意へもっていく狙いだ。24日にはワシントンで日米両国の事務レベル交渉が始まる。

さらにトランプ大統領はイラン包囲網を視野に、「有志連合」構想をブチあげた。19日には日本も含む世界60か国の外交関係者を招いて、非公開の説明会を開いた。ホルムズ海峡の安全確保に向けて、各国は護衛艦や要員の派遣あるいは経済的な支援を選択肢として挙げている。さっそく日本の防衛省が検討に入った。
それにしてもトランプ大統領の「自作自演」ぶりには呆れる。イランとの緊張を高めたのは、イランとの核合意を離脱し、イラン産原油の禁輸報復に加え、戦争ボタンを押す寸前までの冒険をしたトランプ本人にある。その責任はどうなるのか。
日本は25日のフロリダで開かれる、「有志連合」オペレーション検討会議に、どのような顔して参加するのか。大いに気になる。

日韓関係も緊張が深まるばかり。日本は徴用工問題と絡めての半導体材料の輸出規制など、韓国への経済制裁がエスカレート、対立は長期化しそうだ。G20大阪サミットで、自由貿易の原則を再確認したばかりなのに、政治的テーマに絡めての経済制裁は「禁じ手」とのそしりは免れない。韓国は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も再検討カードに入ると示唆する。
徴用工問題は、1965年の日韓基本条約で国家間の請求権は放棄されても、被害者個人の請求権は残っている。日本企業に補償を求める行為は、裁判所の判決でも認められている。この前提で、被害者の名誉や尊厳を回復するため、人道上の解決に向け、両国政府は全力を挙げるべきだ。(2019/7/21)
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2019年07月17日

【2019年度JCJ賞】大賞は東京新聞「税を追う」キャンペーン報道 ほかにJCJ賞4作品を決定

7月13日のJCJ賞選考委員会で、次の5点を受賞作に決定しました。
選考委員:諌山 修 石川 旺 伊藤洋子 酒井憲太郎 柴田鉄治 鈴木 耕

【JCJ大賞】 
「税を追う」キャンペーン 東京新聞社会部
受賞理由: 深刻な財政危機に直面しながら、安倍政権は税金の無駄遣いを続ける。米国からの兵器爆買い急拡大で、5兆円を突破した「兵器ローン」の 実態を浮き彫りにした第一弾。教育や社会福祉など国民生活を犠牲にした軍事費を皮切りに、キャンペーンは、沖縄・辺野古の米軍新基地建設や東京五輪などにテーマを広げ、昨年末の予算編成論議にも影響を与えた。政策の是非を丹念に検証し、利権や既得権をあぶり出す手法や報道姿勢は、多くの読者や識者などから高い評価を得ている。 

【JCJ賞】
『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』みんなのデータサイト出版
受賞理由:「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」が、福島原発事故後、3400カ所以上から土壌を採取・測定し、延べ4000人の市民の協力で2011年3月のセシウム推定値の「県別土壌マップ」(第1章)をまとめた。放射能プルームの動き、100年後の予測も入れた。第2章で食品についての不安を解消し、自分の“物差し”が持てる。第3章「放射能を知ろう」では、放射能の基礎知識、チェルノブイリとの比較などが深く学習できる。国はやらない、市民の市民による市民のためのA4判放射能必読テキスト。

「イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道」 秋田魁新報社・イージス・アショア配備問題取材班
受賞理由: 2017年秋に始まったイージス・アショア配備問題は秋田、山口県を直接、世界大の問題に突き当たらせている。秋田魁新報は県民の不安に寄り添い、判断材料を誠実に提供していく中で、問題の真意を多角的に探り、県民の声、県知事、市長の取材、議員アンケート、ルーマニア・ポーランドルポを続けた。そして、公立美大での卒業謝辞削除事件を浮かび上がらせ、後に防衛省の適地調査の杜撰さをあぶり出させることになる。配備反対の声は実現していないが、ここには、権力の監視を地で行く地域ジャーナリズムの力の真骨頂がある。

「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの“心”」 山形放送
受賞理由:児童文学者・国分一太郎は1930年、山形県の小学校で教職に就き、「想画」と呼ばれる生活画教育と、「生活綴り方」教育に打ち込んだ。凶作に見舞われた中で、たくましく生きる村人たちの暮らしを、子供たちは生き生きと画に描き、作文に綴った。しかし、国分の教育にも戦争の影が忍び寄り、治安維持法で罪に落とされる。安倍一強政治のもとで「共謀罪」は治安維持法との類似性が指摘される。制作者は、自由に表現できる未来に向けて「釘一本を打ち込みたい」と考え、番組を世に送り出した。

ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」 NHK
受賞理由:東電福島第一原発の爆発事故発生直後、広島などから多くの医師たちが現場に入り、汚染された住民や爆発で負傷した自衛隊員の治療など、被ばく医療の最前線で奔走した。医師たちの多くは沈黙を守り、その結果、彼らの多様な体験が十分政策に反映されないまま、各地で原発再稼働が始まることになった。取材班は、治療にあたった医師たちをしらみつぶしに訪ね歩き、医師たち自身の撮影による3000の写真と映像を入手。当時の医療現場のすさまじい実態の全貌を初めて明らかにした。                       

JCJ賞贈賞式:8月17日(土) 13:00〜 プレスセンターホール(東京・内幸町)
案内チラシ・PDF版2019年8月集会.pdf

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2019年07月16日

【参院選】 争点は「改憲」「安倍政治」 野党が政策合意 自民 若者対象の新広報戦略展開=丸山重威

2019年参院選は「老後の生活には2000万円の準備を」という金融審議会報告とその受け取りを拒否するという麻生太郎副総理・財務相の前代未聞の対応で同日選はなくなったが、自民党が5つの政策の中に「早急な改憲」を掲げ、「憲法」が争点の中心におかれることになった。

全一人区で統一

 一方、立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党と、衆院の「社会保障を立て直す国民会議」の5野党・会派は5月29日、「市民連合」が示した安保法制(戦争法)の廃止など13項目の「共通政策」に合意。6月初めまでの協議で、参院選の1人区全32区での野党統一候補が決まった。

市民連合の政策を野党が合意しての統一は、2016年参院選、17年衆院選に続くもので、17年にはなかった「改憲発議」そのものへの反対や、「沖縄・辺野古新基地建設反対」、「消費増税中止」、「原発再稼働反対」「防衛予算削減」などが入り、国政の根本問題での共通の主張が明確にされた。メディアについても「放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築する」が第13項に入っている。

「新時代」で宣伝

 これに対し自民党は6月7日「日本の明日を切り拓く」と題した参院選政策を発表した。

 内容は@力強い外交・防衛A強い経済B誰もが安心、活躍できる人生100年社会C最先端をいく元気な地方D復興・防災E憲法改正を目指す−の6項目を挙げ、都合のいいことを並べた「令和新時代・伝統とチャレンジ」とのキャンペーン。しかし、「改憲」には「早期の憲法改正」と具体化を強調した。

 その一方で、自民党は若者と女性を対象にした「#自民党2019」と名付けた新広報戦略を進めている。歌・ダンス・落語などで活躍する10代の若者たちが登場する動画を展開。女性誌「vivi」の6月10日のウェブ版は「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?」のタイトルの企画広告を掲載。どんな世の中にしたいかを投稿した人からモデルの思いを印刷したTシャツを贈るという。

ムード選挙狙う

自民党・安倍政権は、令和―代替わり―トランプと続いた社会フィーバーの流れの中で参院選と「改憲」発議を実現しようとの大戦略をつくってきた。この結果、5月の内閣支持率と不支持率はNHK調査支持48%、不支持32%、JNN(TBS系)支持59・1、不支持36・9%、共同通信支持50・1%不支持36・2%など、軒並み上昇、不支持率も減少の傾向を見せた。

 自民党は、世論調査で「参院選で投票したい政党・候補者は?」という質問に、「自民党」との答えが、全体では約40%なのに、18〜39歳では50%だったことを見た、という。

 自民党は「新聞を読まず、SNSを日常的に使う若年層の支持」を期待してムードに訴え、彼らの心を掴む」という作戦で、有権者の半数を占める無党派数の支持を獲得する作戦だ「新時代」に自民党、「新時代」に憲法改正、のムードを駆り立てようとしている。


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月15日

【内政】 基地取材 大きく制限 改正ドローン規正法施行 新聞協会「極めて遺憾」=新藤健一

飛行禁止区域を米軍基地などにも広げる改正ドローン規制案が6月13日施行された。日本新聞協会編集委員会は遅ればせながら「極めて遺憾」との談話を発表した。

6月6日には、岩屋毅防衛大臣に要望書を提出し、「施設指定」と「飛行同意」の基準を作成、制限はこの範囲に限ることを求め、同意しない際は合理的理由について申請者の報道機関に誠実に説明するよう求めた。在日米軍施設・区域に関しても同様だ。

要塞地帯法の復活

改正案が成立前日の4月16日、参院内閣委員会では、社民党の福島みずほ議員が「これは要塞地帯法でないか」と質した。要塞地帯法は日露戦争後の明治32年7月、勅令で公布された。一定距離内を要塞地帯と指定し、地域内への立入り、撮影、模写、測量、築造物の変更、地形の改造、樹木の伐採などが禁止、制限された。罰則と軍機保護法で規制された。

 「ドローン規制法は、非常時には拡大解釈される恐れある」との危惧は去っていない。

 それだけではない。すでにドローン取材については、電波による妨害が行われているのではないか、との危惧がある。

辺野古で妨害?

沖縄の米軍基地をドローンで取材してきた琉球新報の花城太カメラマンは、「辺野古上空に近づくとコントローラーに障害物を検出しました、という警告が出て驚いた」という。「その瞬間、機体は前進できなくなる。高度を落とし低空50メートル位に入ると飛べるが、こうした現象は3、4か月前から始まっている。基地から妨害電波を出しているのだろうか」と語る。

 ドローン取材は、基地取材では極めて重要だ。例えば、辺野古建設に注目が集まる陰で、キャンプシュワブに隣接した辺野古弾薬庫では大規模な改造工事が進んでいる。

海兵隊唯一のこの弾薬庫は、以前から、核・生物・化学兵器貯蔵の疑惑が絶えない。私は「沖縄ドローンプロジェクト」が撮影した画像をもとにこれを報じたが、規制法が施行されるとこうした取材や市民の監視活動がやりにくくなることは明らかだ。(「週刊金曜日」3月17日号)

「基地隠し戦略」進む

いま、沖縄の辺野古新基地建設と併せ、南西諸島への自衛隊進出が進んでいる。

 与那国島には沿岸監視隊が配備され、宮古島には南西諸島全域の司令部が置かれ、大規模の駐屯地が作られた。石垣島にも、大規模の部隊配備が進んでいる。

防衛省は既に2012年、米軍のキャンプシュワブとキャンプハンセンの部隊と島嶼に置く自衛隊によるで共同作戦構想をたてている。

 南西諸島での自衛隊基地建設は、辺野古の米軍新基地建設と連動、「基地を見せないドローン規制」もこれと密接に関わっている。

新藤健一(フォトジャーナリスト)

 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月14日

【今週の風考計】7.14─いま迫ってくる「報道の自由」への牙

★「報道の自由のための国際会議」が、10日と11日、ロンドンで開催された。100以上の国から閣僚級の代表者や学者、報道関係者など約1500人が参加。サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件やミャンマーでの記者収監など、報道の自由の侵害状況や改善策について意見交換したという。
★だが英国とカナダ政府が主催する会議で、「権力を監視・批判するメディアが報道の自由」を、権力者とともに論ずる居心地の悪さは、ぬぐえなかったと漏らす参加者も多かったという。

★さて「国境なき記者団」の調査によると、昨年、報道によって殺害されたジャーナリストは少なくとも99人、前年より15%増えている。新たに投獄された被害者は348人、人質となった者60人。しかし殺害犯が責任を問われることはほとんどない。
★4月半ばには、2019年の「報道の自由度ランキング」も発表している。180カ国・地域のうち、トップはノルウェー、2位がフィンランド。米国は「報道の自由度」が、初めて「問題あり」に格下げ、「トランプ大統領のフェイク・コメント」やジャーナリストへの敵対的な風潮が要因となり、45位から48位に順位を落とした。

★日本は前年と同じ67位だが、沖縄の米軍基地などを取材するジャーナリストへのバッシング攻撃が指摘されている。とりわけ安倍政権の報道対応が国際的な関心事となり、官邸における新聞記者への質問制限について、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、<日本は報道の自由が憲法で保障されている民主国家だが、時には独裁政権のように振る舞っている>と批判している。
★記事は、これまでの官邸における経過を紹介したうえで、<情報が取得できなくなることを恐れ、多くの記者が当局との対立を避ける中、「日本の報道の自由」にとって東京新聞の女性記者は庶民の英雄になっている>と指摘。
 さらに、記者クラブ制度について、<多くの記者の調査意欲をそぎ、国民が政治について知ることを妨げている>という識者らの声を伝えている。同感だ。映画「新聞記者」がヒットしているのも頷ける。(2019/7/14)
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【月刊マスコミ評・放送】 小川彩佳キャスターと筑紫イズム=三原治

テレビ朝日を4月に退社し、その2カ月後、TBS系報道番組『NEWS23』のメインキャスターに抜擢された小川彩佳キャスターのリニューアル版が6月3日スタートした。小川さんは2007年4月にテレビ朝日に入社して以降、『サンデープロジェクト』の司会、『報道ステーション』のサブキャスター、直近ではインターネットテレビ局「AbemaTV」のニュース番組『AbemaPrime』の司会進行を務めるなど、一貫して報道畑に携わってきた。特に看板番組『報道ステーション』を7年半経験し、将来の報道番組を背負っていく逸材に違いなかった。そんな未来あるキャスター移籍の話題が夜のニュース戦争に拍車をかけている。

夜11時台に放送されているニュース番組と女性キャスターは、NHK『ニュースきょう一日』は井上あさひ。日本テレビ『news zero』は元NHKでフリーの有働由美子。TBS『NEWS23』は小川彩佳。フジテレビ『Live News α』は三田友梨佳。テレビ東京の老舗番組『ワールドビジネスサテライト』は大江麻理子。夜10時のテレビ朝日『報道ステーション』は徳永有美といった顔ぶれである。平成から夜ニュースは女性キャスターの時代に入っていたが、令和となって小川キャスター参入で、夜のニュース戦争が激化してきた感がある。

 骨太なニュース番組は姿を消した。権力を監視する辛口なキャスターもいなくなった。報道のTBSを自負する『NEWS23』も筑紫哲也氏の頃の緊張感はなくなった。安倍内閣の下、益々右傾化する今こそ、筑紫氏のようなキャスターを必要としている。彼は、少数派の立場に立ち続け、沖縄への思い入れを持ち続け、護憲の立場を崩さなかった。世の中にはびこる権力や日本という国を踏みにじるような社会の趨勢に、常に「にこやかに」、硬直的でない抵抗のスタイルを貫いた。彼の剛健な気風は、どんな人が投げるどんな球でも受け取り続けた。

 『NEWS23』という冠を受け継ぐ小川キャスターにその精神や心構えは宿っているのだろうか。

 小川キャスターは、半年間のブランクを感じさせない番組さばきは見事。インタビューでは、自分なりの感性と言葉で伝えようとする姿勢が垣間見えた。ジャーナリストとしての資質を褒める評論家の指摘もある。

これまでメインキャスターを務めてきた星浩氏がアンカーとして小川キャスターを支える。スポーツは石井大裕アナウンサー、サブキャスターを山本恵里伽さん、取材キャスターを報道局の村瀬健介記者が務める。2週間視聴したが、期待は感じている。目先の視聴率で揺らぐことなく、信じる報道姿勢を貫いてほしい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月13日

【おすすめ本】川本裕司『変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場 』─政治に翻弄される公共放送、危ういニュース報道への信頼=河野慎二

 受信料制度を合憲とした最高裁判決を梃子に、NHKの2018年度受信料収入が初の7千億円を超え、5月には改正放送法の成立で番組のネット同時常時配信が認められ、NHKは新たな受信料収入の手段を手に入れた。
 これで上田会長率いるNHKは盤石か?
 問題は官邸にひれ伏すNHKの報道姿勢だ。著者はNHKの政治報道について「政権との一体化」という見方が増えていると指摘する。
 87年から足かけ30年、NHKを取材してきた著者は「その残像は、『政治』に翻弄される公共放送の経営」であり、「とりわけ報道のニュースに、その痕跡が深く刻まれてきた」と振り返る。
 2001年1月、慰安婦問題を取り上げたNHKの番組について、安倍官房副長官が放送総局長らに「公正、公平な番組になるべきだ」と述べ、NHKは番組を改変。
 安倍氏が政権を握ると、官邸に対するNHKの忖度の度合いが強まり、政権に不都合な事実はニュースに載らないようになる。著者は「加計学園問題を取材する社会部に対し、ある幹部は『君たちは倒閣運動をしているのか』と告げた」事実を明らかにする。
 NHKと政治の関係については昨今、NHKの「政府広報機関化」が懸念されるほど、危機は深刻になっている。
 著者は「自壊しかねない不安要素を抱えながら、肥大化していく公共放送の未来が明るい、とはとても言えない」と強調。視聴者の怒りが限度を超えれば「公共放送への信頼は瓦解する」と警鐘を鳴らす。
(花伝社1500円)
「変容するNHK」.jpg
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2019年07月09日

【リレー時評】年金問題、巨額な武器購入とも関連=吉原 功

 野党に脚光が浴びるのを避けているのではと疑念の声が高まっていた予算委員会が6月10日、参議院でやっと開かれた。4月4日以来実に2ヶ月ぶりである。議論の焦点は年金問題。
 2004年の年金改革時、与党は「百年安心年金制度」と喧伝した。ところが金融庁が6月3日公表した報告書はそれを真っ向から否定するような内容だった。野党が追求するのは当然だろう。
 同報告書は、2017年の家計調査に基づき「高齢夫婦無職世帯」(夫65歳、妻60歳の無職世帯)の月平均収支を算出。収入の9割は年金で20万9千円、支出26万4千円、毎月5万5千円の赤字は貯蓄など金融資産で補填という結果であった。20年後までに1300万円、30年では2000万円必要となるので資産を運用して自分で用意しなさい、というのが金融庁の結論だった。「人生100年時代」・少子高齢社会を迎えるにあたって「公助」は限界があるので「自助」で対処しなさいという内容だ。

 蓮舫立憲民主副代表は「100年安心とは嘘だったのか」と問い、大塚国民代表代行は「安心とは年金制度維持との意」と断じ、小池共産書紀局長は「大企業・富裕層優遇税制を改め低年金層の底上を」と要求した。
対して安倍首相は「嘘ではない」と反論。04年に約束したのは「所得代替率」50%であり、今は6割と強弁。「所得代替率」とは、現役世代の 平均手取り収入に対する年金支給率の割合のこと。「マクロ経済スライド」も適用し支給額を、賃金の伸び率0.6%を下回る0.1%増に抑制しつつ、プラスにできたと自慢した。04年に物価スライド制をやめ「マクロ経済スライド」を導入したことで「現在の受給者、将来世代にプラスになり、公的年金の信頼性はより強固になった」と誇ったのだ。
 翌11日、麻生副総理兼財務・金融担当大臣は金融庁報告書を「世間に著しい不安を与え、政府のスタンスとも異なる。正式な報告書として受け取らない」と表明した。前代未聞のことだ。麻生氏は報告書を「表現が不適切」と言ってきた。いったいどこがどのように不適切だったか。「マクロ経済スライド」は年金を抑制するシステムであり、受理を拒否しても報告書の指摘は概ね正しく制度を変えない限り「世間の不安」は消えないであろう。

 メディアはこの問題を比較的大きく取り上げているが、参議院選挙を巡る攻防という視点で捉えているように思える。年金問題、高齢社会問題を正面から深く把握し国民に提起すべきである。その際国家財政全体の問題として、小池氏が指摘する大企業・富裕層優遇税制とともに、輸出大企業を潤す消費税や最新鋭戦闘機F35、イージス・アショアーなど米国言いなりの巨額な武器購入なども考慮にいれるべきであろう。
posted by JCJ at 09:17 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月07日

【支部リポート】 香川 出撃の空から遺書を投げた学徒 西日本放送「海は知っている」=刎田鉱造

5月12日に例会を持った。RNC・西日本放送が4月28日に放送した番組「海は知っている」〜詫間海軍航空隊〜をみる。昭和18年6月に水上機の実機訓練基地として設置された詫間海軍航空基地(香川県三豊郡詫間町)で20年4月から5月にかけて特攻戦死者57人を数える歴史を掘り起こした番組だ。地元出身の2人の大学生が特攻に出撃させられる。家族の思い、出撃の空から実家近くに遺書を投げ落としていった学徒兵の姿などを丁寧に描いて感動を呼ぶ。

 跡地は現在、化学会社や香川高専詫間校の敷地になっており、いまの若者たちの戦争してはいけないという声、語り継いでいくことの大切さの訴えで締めくくっている。

 出撃機はフロート付きの水上偵察機でとても体当たり攻撃に適した機体ではない。最後には機体がなくなって練習機までかり出したという。そういう機体で敵地に向かった若者たちの思いは実家の寺に残した長い遺書、本堂の端から端までの巻紙に毛筆でしたためたものににじみ出している。

 映像でコメントをしている証言者の大半は80代以上だ。もういましか実体験者の話を聞く機会はない。県内の戦争遺跡、体験を記録したものをライブラリー化する。足りないものを掘り起こすことを課題にして、力を注ぎたい。

刎田鉱造

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 15:42 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【今週の風考計】7.7─参院選の焦点、鋭く深く捉えよう!

安倍1強政治に、審判を下す参議院選挙が始まった。6年半という異例の長期政権の実態を明らかにし、人間の尊厳が大切にされ、希望を持って働き生活できる日本へ、どうすべきか真剣に考えたい。

この間の国会運営は、あまりにも議会制民主主義を無視した、強権・横暴の連続だった。官邸は内閣人事局を通じて各省庁の人事を掌握、官僚による改ざん・忖度が蔓延した。
 森友問題では財務省による公文書改ざん、加計学園問題では「総理の意向」を忖度し、厚労省・総務省では毎月勤労統計の不正が発覚、これらいずれも検証は不十分、説明責任は果たさず、「不都合な事実」の先送りに終始した。
さらに異常なのは、国会での強行採決のオンパレードである。知る権利が侵害される「特定秘密保護法」(2013年12月)、集団的自衛権の行使を可能にする「安全保障関連法」(2015年9月)、犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪処罰法」(2017年6月)、残業代ゼロをもくろむ「働き方改革法案」(2018年6月)、カジノ賭博を認める「IR法案」(2018年8月)、外国人労働者の受け入れを拡大する「改定出入国管理法」(2018年12月)などなどだ。

与党が圧倒的多数の国会審議は結論ありきで進み、政策論議は深まらないどころか、首相は批判に耳を貸さず、予算委員会すら開かず、国会を空洞化させて恥じない。自民党国会議員の暴言もきりがない。
会期末に野党が提出した安倍首相問責決議案に対し、参議院の本会議で自民党の三原じゅん子参議院議員は「安倍首相に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、愚か者の所業、恥をしりなさい」と、言い募る。
 自民党の二階俊博幹事長までが、参院選・立候補予定者の激励会で「選挙を頑張ったところに予算をつけるのは当たり前」と、国民の税金による露骨な利益誘導に走る。この議員モラルの崩壊は底なしだ。

さらには野党やメディアを乱心・偏向などと漫画入りで攻撃する、発行元が出所不明の自民党パンフレットを自党の国会議員に各20部も配布。首相の遊説日程まで、街頭の有権者から浴びる叱声を恐れて隠す。
今回の選挙に備え、自民党の党利党略から参議院の議員定数を6つ増やし、そのうち4つは「特定枠」として、選挙運動をしない比例候補者を優先的に当選させる仕組みを作った。そこに自民党は2人を当てた。有権者の審判を仰がないまま、国会議員が誕生する悪法がまかり通る。

重大な関心テーマである老後の生活費が2000万円不足する年金問題も、<年金100年安心・消費税10年無用>などというだけで、根本的な議論から逃げ回っている。ある試算では65歳までに2000万円貯めるには、金利3%として、30歳から毎月2万8千円を充当させなければ不可能という。
しかし2人以上の世帯では貯蓄ゼロが急増、非正規雇用者が300万人も増え、労働者の4割を占める。賃金は上がらず、どうやって毎月3万円近くの原資を捻出できるのか。
 かつ現行のマクロ経済スライドでは7兆円も年金資金が削減される。ならば高額所得者も均等負担をし、負担と給付の総合的な見直しを通して、減らない年金額にするのが緊急テーマとなっている。
少子高齢化が進む上に、6年後の2025年には団塊世代が後期高齢者となり社会保障費の急増は待ったなし。どうするのか。

消費税10%の増税も、2度延期した時よりも経済指標の数字も傾向も悪化しているのに、断行すれば日本経済をメチャクチャになる。改憲どころではない。
10月22日の「天皇即位パレード」は、自民党本部前を通過するコースに変更され、安倍総理、菅官房長官がパレードの車列に加わる。改元「令和」や天皇即位の政治利用も注意が肝心。21日の投票に向け、しっかり政権の動きを見極め、悔いのない1票を行使しよう!(2019/7/7)
posted by JCJ at 10:21 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【月刊マスコミ評・新聞】 対北朝鮮 無策への疑問ないのか=白垣詔男

日本の対北朝鮮外交は全くゼロなのか―そう思わせるニュースがあった。

6月5、6日、モンゴルでの国際会議の記事だ。朝日が5日朝刊で「北朝鮮が国際会議欠席 首脳会談打ち合わせの予定が」と前触れ記事を掲載した。6日朝刊では読売「日朝会談へ接触想定 モンゴル対話に北朝鮮参加せず」、産経とその他一部の地方紙(共同通信記事)「政府、日朝会談意向、伝達できず 北朝鮮がモンゴルでの会議欠席」の見出しで、外務省幹部が出席した国際会議に北朝鮮が欠席したことを報じた。これで安倍晋三首相が「前提条件なしで北朝鮮との対話」を提唱する意向を見せていたことを北朝鮮に伝えられなかったと「事実」のみを書いていた。毎日、西日本は報じなかった。

北朝鮮との関係について、「拉致問題解決」も「日朝首脳会談」も、安倍政権は米トランプ大統領頼みで、いずれも手詰まりの安倍首相は、それでも「外交の安倍」と胸を張るのだろうか。「モンゴル国際会議、北朝鮮欠席報道」からは、そうとしか読み取れない。

しかも、「親安倍新聞」も「正常なジャーナリズム感覚をまだ失っていない新聞」も、事実のみしか報じなかった。記事を書いた記者は、読者が抱く疑問を考えなかったのか。

本来、この記事は、日本の、対米追従だけの「対北朝鮮外交無策」について、これでいいのかという疑問を抱き、その解説が必要だろう。それを、日朝首脳会談の事前接触が、モンゴル国際会議頼みだったというだけの印象を与える内容では、読者不在の記事と言ってもいいだろう。

裏を返せば、「対北朝鮮外交」を外務省はどう考えているのかを知りたい。最前線で北朝鮮と接触をする、かつての田中均さんのような外務省幹部はいないのか。北朝鮮との接触方法が、国際会議に出てくると予想した北朝鮮の代表しか当てにできないとしたら、いくら国交がない国相手としても、政府(外務省)の姿勢はお粗末だ。安倍首相が「拉致問題解決が私の最大の仕事」と胸を張っても、事実は「やっているポーズ」でしかないことが、今回の一件で、さらに確実になったと思う。

そうした読者の疑問に答える解説記事をどこも掲載しなかったことは残念で仕方がない。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月05日

【沖縄リポート】 ジュゴンの死因を明らかに=浦島悦子

 去る3月18日、今帰仁村運天漁港に死体となって漂着し、現在、今帰仁漁港冷凍冷蔵施設に保管されている雌のジュゴン(個体B)の解剖が近く行われるという情報を受けて、私たち「北限のジュゴン調査チーム・ザン」と今帰仁村民有志は、死因究明がきちんと行われるよう「解剖の責任主体・解剖行程・費用の内訳の開示、結果の公開」などを求める要請書を6月3日、環境省・沖縄県・今帰仁村に送付した。

翌4日付『琉球新報』は、解剖について5月27日の今帰仁村議会臨時会で関係予算18万5千円が可決されたと報道したが、金額があまりに低いことに疑問を持った私たちは、議会議事録を調べてみて驚いた。それによると、採択されたのは「ジュゴン標本化事業」の補正予算であり、その内訳は「標本化に向けての監修アドバイザー」としての県外大学准教授の報償費2万円と旅費10万7千円、ジュゴンを保管している施設の賃貸料及びジュゴンの移動費のクレーン車の使用料5万7千円となっている。つまり、今帰仁村の予算は解剖後の標本化のためのものであり、「死因究明のための解剖」の予算ではないことが判明したのだ。

 同じく4日の報道によると、個体B漂着の4日前、沖縄防衛局は周辺海域(辺野古埋め立て土砂運搬船も航行する海域)に設置した水中録音装置にジュゴンの異様な鳴音を「通常を大きく上回る頻度で確認」していたが、3日に開いた環境監視等委員会で、ジュゴンの死に新基地工事の作業船の影響はないと報告した。

 しかし、防衛局が公開した資料を見ると、民間船のAIS(船舶自動識別装置)は生データが表示されているが、土砂運搬船の航路は生データではなく防衛局が作図したものであり、「影響はない」ことを裏付けるものではない。海上抗議行動メンバーによると、土砂運搬船は、抗議行動に察知されないよう、最近はGPSの電源を切って運行しているという。

 死因をうやむやにしたまま解体・標本化されてしまうのではないかと危機感を持った私たちは10日、前記3者宛てに「拙速な解剖を行わない」よう求める緊急要請を行った。しかし、2回の要請にも環境省はなしの礫。真相を闇に葬らせてはならない! 

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 11:10 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする