2019年07月04日

【若い目が見た沖縄】 借金苦 ブータン留学生 業者「月25万」と騙す=竹内章浩

JCJは30歳以下の若者を沖縄に派遣し、自由なテーマで取材してもらう「沖縄特派員」を今春、始めた。前号に続き、北海道支部の公募で選ばれた北広島市の通訳、竹内章浩さん(写真)の報告を紹介する。

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「沖縄の人々は温かく、気候にも恵まれていた。東京では毎日電車に揺られ、勤務時間は6時間なのに、通勤時間を入れると計11時間。東京での生活は『真の』日本というものを味わっている気がします」

2月、沖縄で会ったブータンからの留学生アイリーン(仮名)は今、東京で「沖縄にとどまるべきだった」と後悔していた。2017年、ブータン政府が始めた「学び・稼ぐプログラム」。700人超が来日し、全国の日本語学校などに送り込まれた。アイリーンと友人二人は沖縄行きを指示された。

「日本へ行き、日本語を勉強すれば大学、大学院に進めるし、正規雇用先を見つけ月25万円稼ぐことも容易である」。3人は、来日前のオリエンテーションでこう聞かされたという。アイリーンはブータンの大学を卒業したが、国内なら初任給は7万円前後だ。

留学プログラムはブータン政府のお墨付きだが、業者が介在し、日本へのビザ申請や、日本語学校の学費などとして、約150万円を徴収する。3人はブータンの銀行から借りて、業者に払った。日本の知識がほとんど無く、高い給与ですぐ返済できるという言葉を鵜呑みにした。那覇の別の男性学生も、来日して1年が経つが、返済は借金の5%にも満たないと話した。

バイト先は、コンビニの店員、コンビニ向けの弁当製造工場、ホテルでの清掃、日本語ができる場合は居酒屋だ。バイトを2、3か所掛け持ちし、生活費と学費を稼ぐのがやっとで、肝心の日本語の勉強に費やす時間はほとんど無い。正規雇用や進学の道はますます遠のく。

「今は我々のビザも切れてしまった。業者はとりあえず我々の学生ビザを延長するために、東京の私立大学に入学するのが唯一の解決策と言っている。だれも彼らの言うことに従いたくはない。でも、おそらく彼らの言う通りだ」。その入学先が、行方不明学生で問題となっているあの東京福祉大学だった。

ある日本語学校元職員は、学生の囲い込みに問題がある、と言う。出稼ぎ目的の学生をかき集め、日本語学校から系列の専門学校、大学などに進学させ、稼ぐ。

沖縄でブータン留学生を取材したのは、北海道でも、あるブータン留学生から「約束と違う。だまされた」と聞いていたからだ。沖縄、東京、北海道――。各地で現在進行形のこれらの問題は、それほど世論の関心を呼んでいない。日本がグローバル化の流れに乗っていくのなら、日本に来てよかったと思われるような環境作りが急務だ。 

竹内章浩

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月03日

【メディアウオッチ】 安倍政権で「壊れた」NHK 山口二郎氏 放送法制度改革を訴え=河野慎二

市民連合と立憲野党4党1会派は5月29日、安倍改憲反対や戦争法廃止など13項目の共通政策で合意した。その中で注目されるのは「新たな放送法制構築」で合意したことだ。

合意内容は「国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること」となっている。

 独立行政委員会で放送事業を監督する方式は、日本とロシア以外の先進諸国では共通して行われている。今回、参院選に向けた政策合意でこの問題が盛り込まれたのは画期的なことだ。

翼賛的な姿勢

そこで、市民連合の呼びかけ人として、政策合意のとりまとめにあたった山口二郎法政大学教授に話を聞いた。

山口氏は「安倍政権が今日まで長続きしている理由の一つに、メディアの翼賛的な姿勢がある。とりわけ、大きな力があるテレビは認可事業だから、政府の影響が及びやすい」と指摘し「メディアの批判的な機能が著しく低下しており、ここで放送制度を変えないと翼賛体質がさらに進む」と危機感を露わにした。述べた。市民連合がまとめた要望書に各党会派の代表が署名したことに、山口氏は「重みがある」と述べた。

民主主義のインフラ

 そして、「安倍政権のメディア支配のやり方には、常軌を逸したところがある。この機会に、公平・公正なテレビとは何かを、きちんと議論しないといけない。民主主義のインフラですよ、これは」と強調した。

 特にNHKについて山口氏は、「一番驚いたのは天皇代替わり報道で、天照大御神を天皇の祖先と伝えたことだ」と指摘し「言語道断。会長のクビが飛んでもおかしくない」。その上で「安倍政権6年。いろんなところで壊れたが、一番壊れたのがNHKだ」と批判した。

ネット常時同時配信

 これに対し、NHKはどう対応するのか。

NHKを巡っては、改正放送法が5月末成立し、インターネットでの「常時同時配信」が認められ、NHKの全テレビ番組が放送と同時に、スマホやパソコンで視聴できるようになる。民放などのNHK「肥大化」批判に対し、上田会長は「放送の補完」を強調するが、新たな受信料収入に利用しようとするNHKの姿勢は強まるだろう。

 実際、17年7月、坂本専務理事が「将来的には本格業務としたい」と述べてテレビを持たない世帯からも利用料を集める考えを示し、上田会長が火消しに回ったことがある(川本祐司「変容するNHK」より)。

板野専務衝撃復帰

その一方で4月、NHK内部にも衝撃が走る人事があった。板野裕爾氏が専務理事に復帰したのだ。NHKのあるOBは「わたしたちの宝物である国谷裕子さんを切り捨てることに、何のこだわりもなかった奴」と非難している。

官邸に太いパイプがある板野氏の復帰についてNHK関係者は「官邸が板野に貸しを作った」と見る。だとすれば、板野氏はどんな見返りを用意するのか。NHKと官邸の距離をさらに縮め、忖度を強める。安倍政権に不都合な事実は伝えない…。

NHKが目指す「公共メディアとは名ばかりの「国策報道メディア」に仕立て上げて借りを返すつもりなのか。

 山口氏は「異常な安倍政治が続く今こそ、権力者に対するメディアの独立性を再構築しないといけない」と強調。独立行政委員会による新しい放送法制の構築に、市民の理解と参加を呼びかけた。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月02日

【事件】 過酷な生い立ち、救えぬ社会 ジャーナリスト講座・山寺記者 祖父母殺した少年を取材=須貝道雄

JCJは夏のジャーナリスト講座を6月5日、毎日新聞くらし・医療部の山寺香記者を講師に迎えて東京で開いた。テーマは「少年はなぜ?闇の日々に迫る」。

     ◇

埼玉県川口市で2014年3月、17歳の少年が祖父母を刺殺する事件が起きた。警察は孫を逮捕し「金目当ての犯行」と発表した。不良少年による単純な事件。さいたま支局に赴任し、県庁担当だった山寺記者そう考え、最初は気にしなかった。警察・司法担当となり、裁判を傍聴して「衝撃を受けた」。弁護側が語る少年の生い立ちにだった。

 小学5年から学校に行かず、親から虐待を受けながら野宿生活を続けた。乳飲み子の妹の世話に懸命だった。少年は母親から「金を持って来い」と迫られ、事件を起こした。

「彼の窮状を社会は救えなかった。この子は裁判が終わったら刑務所に入り、問題は闇から闇へと葬られてしまう」。焦りを感じた山寺記者は次々と記事を書いた。拘置所で少年と面会し、手紙のやりとりをして著書『誰もボクを見ていない』(ポプラ社)を出した。

少年が小学4年の時に母親は離婚し、ホストクラブ通いで知り合った男性と一緒になった。少年を連れながら埼玉、西伊豆、横浜、埼玉と各地を転々とする。埼玉ではラブホテルに泊まる生活を2年余り続けた。男性が日雇いの仕事で金を稼いだ。朝にチェックアウトし、午後8時にチェックインする毎日。昼間はゲームセンターやパチンコ店で母親と少年は過ごした。金がなくなるとホテルの敷地内にテントを張って生活した。この時期に妹が生まれたという。

母親は少年に親戚から金を無心してくるよう何度も求めた。ある親戚から4年間で150回、合計400万―500万円巻き上げたことが裁判で明らかになった。母親は競走馬を育てるゲームに夢中で、ビジネスホテルに泊まり、大きな風呂に入ることが好きでたまらず、金を使い続けた。

少年の証言によれば、男性が失踪し、金に窮した夜に母親から殺人の話が出る。「ばあちゃんたち殺したら、お金が手に入るよね」と。そして事件へと進んだ。山寺記者は生い立ちを取材する過程で、少年の近くにいた人々がみな同情的に彼を見つめていたことを知る。ラブホテルの管理人らは、赤ちゃんをだっこしながら悲しそうな顔をしていた少年を鮮明に覚えていた。しかし、具体的な支援には結びつかなかった。行政も含めて「あと一歩が足りなかった」と振り返る。

山寺記者は大学・大学院で臨床心理学を専攻し、子どもを元気にするカウンセリングの仕事を志していた。病院などの専門機関に入る前に、社会全体を見てみたいと、報道の世界をめざした。「子どものことを書きたいと思っていたところ、今回の事件にたまたま出合った」と話した。  

須貝道雄

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月01日

【メディアウオッチ】 メディアの信頼高める活動を JIMAが設立シンポ リテラシー教育も推進

フェイクニュースやヘイトの言説の横行など、ネットメディアの信頼を揺るがす問題の解決を図っていこうと、インターネットメディア協会(略称JIMA)が発足、設立を記念したシンポジウムが6月8日、都内で開かれた。JIMAは今後、加盟メディアなどで議論を深めて倫理綱領を策定し、「送り手」の信頼を高める努力をする。一方で、メディアリテラシー教育にも力を入れ、ネット情報の「受け手」のリテラシー向上に取り組んでいくという。

JIMAは、ネットで情報発信するメディアのほか、配信するプラットフォームや広告などの関連事業者などが加盟(会員数34=5月末現在)。スマートニュースメディア研究所の瀬尾傑所長が代表理事を務める。

シンポの冒頭、瀬尾氏は挨拶で、設立の狙いを「信頼性ある情報をどう届けるかであり、インターネット上に形成されてきたインタラクティブな創造性と多様性をどう守っていけるか」とし「平場で、さまざまな議論」をしたいと述べた。

「メディアの創造性と信頼のために今なすべきこと」と題したパネルディスカッションでは、ジェイ・キャスト執行役員の蜷川聡子氏、BuzzFeed Japanシニア・フェローの古田大輔氏、MarkeZine(マーケジン)編集長の安成蓉子氏、NHKネットワーク報道部専任部長の熊田安伸氏、JX通信社代表の米重克洋氏が登壇、東洋経済オンライン編集長の武政秀明氏の進行で、多様な立場から「信頼されるメディア運営とは?」「表現の自由と規範をどう支えるか」「メディア経営をどう考えたらいいのか」などの議論を深めた。

信頼されるメディアについて、古田氏は「ユーザー(読者)に対して誠実な情報を発信する。我々がなぜ信頼性があるのか、信頼されるメディアであることを自ら証明すること」が必要だと強調。また熊田氏は「メディアにこそ説明責任が求められる」とし、NHKのウェブで政治部の記者が署名入りで執筆している「政治マガジン」では、従来のメディア(NHKを含め)では書き切れなかった綿密な取材で得た情報などをそのまま伝え、読む側が判断する材料を提供する取り組みを紹介。「そこまでやって信頼が得られる」と、レガシーメディアでは発信しきれていなかった試みを説明した。

「送り手」側とともに「受け手」「支え手」のリテラシーを重視するJIMAは、元TBSキャスターでリテラシー教育に取り組んでいる下村健一氏(令和メディア研究所主宰)が担当理事になり、受け手向け公開講座を積極的に展開し、子どもたちから一般のメディアリテラシーを高める活動を広げていく予定。また支え手である広告業界団体などとも連携を進め、ネットメディアが抱える多様な課題を業界横断的に一緒に考え、解決していける団体を目指すという。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 14:26 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする