2019年07月13日

【おすすめ本】川本裕司『変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場 』─政治に翻弄される公共放送、危ういニュース報道への信頼=河野慎二

 受信料制度を合憲とした最高裁判決を梃子に、NHKの2018年度受信料収入が初の7千億円を超え、5月には改正放送法の成立で番組のネット同時常時配信が認められ、NHKは新たな受信料収入の手段を手に入れた。
 これで上田会長率いるNHKは盤石か?
 問題は官邸にひれ伏すNHKの報道姿勢だ。著者はNHKの政治報道について「政権との一体化」という見方が増えていると指摘する。
 87年から足かけ30年、NHKを取材してきた著者は「その残像は、『政治』に翻弄される公共放送の経営」であり、「とりわけ報道のニュースに、その痕跡が深く刻まれてきた」と振り返る。
 2001年1月、慰安婦問題を取り上げたNHKの番組について、安倍官房副長官が放送総局長らに「公正、公平な番組になるべきだ」と述べ、NHKは番組を改変。
 安倍氏が政権を握ると、官邸に対するNHKの忖度の度合いが強まり、政権に不都合な事実はニュースに載らないようになる。著者は「加計学園問題を取材する社会部に対し、ある幹部は『君たちは倒閣運動をしているのか』と告げた」事実を明らかにする。
 NHKと政治の関係については昨今、NHKの「政府広報機関化」が懸念されるほど、危機は深刻になっている。
 著者は「自壊しかねない不安要素を抱えながら、肥大化していく公共放送の未来が明るい、とはとても言えない」と強調。視聴者の怒りが限度を超えれば「公共放送への信頼は瓦解する」と警鐘を鳴らす。
(花伝社1500円)
「変容するNHK」.jpg
posted by JCJ at 10:11 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする