2019年09月19日

【おすすめ本】南 彰『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』─メディアの分断・選別に抗う記者の連帯を熱く訴える!=新崎盛吾(共同通信社)

 首相官邸が特定の記者排除を意図して、官邸記者クラブに文書で申し入れをした質問制限問題が広く報道されるきっかけとなったのは、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が2月に発表した抗議声明だった。

 本書は、朝日新聞政治部から昨年9月、30代の若さで新聞労連委員長に就任した著者が、問題の経緯を明らかにし、全国の記者に連帯を呼び掛けたメッセージである。
 問題の発端は2017年6月、主に政治部記者が参加する官房長官の定例会見に、東京新聞社会部の望月衣塑子記者が登場したことだった。
望月記者は官邸側の制止を振り切って23回の質問を繰り返し、結果的に加計学園の獣医学部新設について「総理のご意向」と書かれた文書の存在を認めさせる原動力になった。記者会見という公の場での質問よりも、オフレコ取材を重視してきた政治部の慣習を揺るがす出来事でもあった。

 官邸側はその後、「質問が長い」「事実誤認が多い」などと望月記者にレッテルを貼って孤立を図り、メディアの分断を試みる。08年から官邸取材に関わってきた著者は、政権の長期化とともに強まる閉塞状況やメディア選別の動きに危機感を抱き、会社の枠を越えた連帯が必要だと訴える。
書名には太平洋戦争に至る契機となった満州事変に例えて、今が「知る権利」を守る重要局面だとの思いを込めたという。
 新聞労連の委員長は、朝日、毎日、北海道新聞、共同通信などの労組が交代で選出。会社を2年間休職し、専従で任に当たる。私も14年から16年まで務めた。労働組合の存在感が薄れる中、今も記者の連帯を目指す活動が続いていることに、安堵と希望を感じている。
(朝日新書790円)
「報道事変」.jpg
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2019年09月15日

【今週の風考計】9.15─「嫌韓」をけしかけているのは誰だ!

★この2カ月、ほぼすべてのワイドショーが「嫌韓報道」に狂奔し、韓国ヘイトをあおってきた。武田邦彦・中部大学教授などは、「日本男子も韓国女性を暴行しなけりゃ」(ゴゴスマCBCテレビ)とまで言い募る。元駐韓大使の武藤正敏氏を含め、他のコメンテーターにしても、隣国を罵るヘイト発言を頻発している。
★韓国の「玉ねぎ男」=゙国(チョ・グク)氏をめぐる蓄財疑惑や娘の不正入学スキャンダルを、朝・昼のべつ幕なし、一週間以上も取り上げている。陰に陽に「嫌韓」をあおっているのは間違いない。もういい加減にしたらどうか。

★放送だけに限らない。出版でも<嫌韓炎上商法>が大手を振っている。「週刊ポスト」(9/13号)は「怒りを抑えられない韓国人という病理」、「週刊文春」(9/12号)も「文在寅の自爆が始まった」、「週刊新潮」(同)も「韓国大統領の『玉ねぎ男』大臣任命強行で検察が法曹を逮捕する日」という特集をやっている。

★こうしたメディア状況や社会の風潮を憂慮し、新聞労連が6日付で<「嫌韓」あおり報道はやめよう>との声明を発表した。大切な視点と提起が込められている。要点を挙げておこう。
<他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。(中略)
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない>

★メディアは、視聴率稼ぎや販売部数増を狙って、韓国ヘイトに血道をあげ、「玉ねぎ男」スキャンダルの追っかけに走る前に、わが国の足元にある消費税10%増税、年金問題、さらには内密にされている日米経済交渉の中身を追跡したらどうか。
 外交面でも、安倍首相はトランプ米大統領にこびへつらい、ロシアのプーチンには騙され続け、中国の習近平からは三等国扱いされている。この体たらくを、もっと追究したらどうか。
★もう8年近く安倍政権が続く。一向に景気は良くならず、生活の苦しさだけがつのる。国民の不満は高まるばかり。それをそらすには、安倍首相お気に入りの学者・作家・タレントらを動員し、韓国バッシングに走るのが得策と踏んでいるのだ。この策謀にメディアが手を貸す愚はない。(2019/9/15)
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2019年09月11日

学生向け・テレビ記者講座、10月15日と29日に開催

JCJジャーナリスト講座
学生向け・テレビ記者講座  協力/令和メディア研究所

■10月15日(火)午後6時半〜9時 
 「テレビ記者疑似体験! その厳しさ、面白さ」 参加費1000円(定員20人)

講師:元TBSキャスター・下村健一さん(令和メディア研究所主宰/白鴎大学特任教授/インターネットメディア協会理事/元内閣広報室審議官)  
会場:東京都千代田区の日比谷図書文化館・4階セミナールームB
              (最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)  
■10月29日(火)午後6時半〜9時
「テレビ局エントリー動画で学ぶ、映像リポート実習」
参加費1000円(定員40人)
講師:元TBSキャスター・下村健一さん 
会場:東京都千代田区の日比谷図書文化館・4階スタジオプラス
              (最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)

これまでの講座の様子がわかります。下記を開いて見てください。
令和メディア研究所の服部さんのリポートです。
https://reiwa.media/219
https://reiwa.media/298

≪受講希望の方々へ≫
要予約です。氏名、参加希望日、大学名、電話番号、メールアドレスを明記して sukabura7@gmail.com にメールで申し込んでください。確認メールを返信いたします。

★10月29日のエントリー動画の講座を受ける方へ★
自由課題=10月22日(火)までに30〜90秒の自己紹介映像をつくり、無料の大容量データ転送サービス(ギガファイル便など)で上記アドレスまで提出してください。(義務ではありません。希望者のみです)映像は、スマホの横撮りで結構です。当日、下村講師が批評・助言します。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 電話03・3291・6475
           東京都千代田区神田神保町1-18-1千石屋ビル402号
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2019年09月10日

【内政】 国民民主1本釣り? N国を抱き込みか 新戦略で改憲ねらう安倍「独裁政権」=丸山重威

7月21日投開票された第25回参院選は、自民・公明の与党は過半数を獲得したが、与党と維新などの憲法改定勢力は総議員の「3分の2」164議席に必要な85議席を割り込み、81議席だった。だが安倍晋三首相は翌日の記者会見で「国民は政治の安定を求めた」「改憲についても議論すべきだという国民の審判が下った」と強弁した。

メディアはこの発言を大きく取り上げたが、世論調査では、最優先課題を一つだけ聞いた朝日、読売では「年金・社会保障」が、朝日38%、読売41%でトップ、「改憲」はともに3%。2項目を聞いた共同でも「年金・医療・介護」が48・5%、「改憲」は6・9%。民意とは全くかけ離れていた。

 しかし安倍首相の意欲は旺盛。国民民主党の一本釣りや、NHKから国民を守る党(N国)の抱き込みなどで「改憲勢力3分の2」を達成、発議に持ち込む構えだ。

魚心あれば水心…

 この中で、野党共闘の一員、国民民主党の玉木雄一郎代表は25日のインターネット放送で、「私、玉木雄一郎は生まれ変わった。令和のの国会は議論の場にしたい。安倍総理と憲法改正の議論を進めたい。首相の4項目には必ずしも賛成ではないが進めたい」と発言。党内外から批判を浴び、翌日「国会の党首討論で議論する」と弁解した。

 選挙戦の中では例えば、定員2人の静岡選挙区では、立憲民主の徳川家広氏と争った国民民主党の榛葉賀津也氏を、自民支持のはずの地元財界の大物が応援した。また、国民民主党・企業団体委員長の桜井充参院議員は「榛葉氏が厳しいから、自民党の元大臣に、票を回してとお願いした」と語り、「改憲にらみの布石」との見方もあった(静岡新聞7月13日)。

 国民民主党は、8月15日には、立憲民主党と統一会派作りの協議を始めたが、安倍戦略は、国民民主の「切り崩し」を狙っている。

 さらに併せて狙われているのは、97万票、1・97%を獲得して政党要件に達した「N国」だ。立花孝志代表は、23日のインターネット放送で「とりあえず憲法改正に反対するが賛成と引き換えに首相にスクランブル放送を実現してもらう」と述べ、憲法改正の国会発議に条件付きで賛同する意向を示した。29日には「戦争発言」の丸山穂高議員を入党させ、30日には無所属の渡辺喜美議員と新会派「みんなの党」を結成。1日の初登院では安倍首相と議場で握手、感激の面持ちだった。

議長交替まで狙う

多数派工作の一方で、いかにも独裁政権丸出しの動きも出てきた。

 首相の側近、萩生田光一自民党幹事長代行は26日夜のインターネット放送で、憲法改正論議が停滞するなら大島理森衆院議長の交替が必要だとの認識を表明。「今のメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長にすることも考えなければならない」と述べた。衆院議長はいやしくも「三権の長」だ。与党の幹部が進退を云々するなど非常識きわまりない。

 1日、参院議長に就任した山東昭子氏は「憲法改正が国会できちんと議論されていないのは正常ではない」と述べ、「できるだけ憲法審査会などが活発に動くことを期待する」と述べた。さすがに、同席した小川敏夫副議長は、「数の力で結論に持っていく議論の在り方であってはならない」とクギを刺した。

 核兵器禁止条約への対応を求められながら、6日、9日の原爆忌にも無視する政府の姿勢が目立つ中で、7日には小泉進次郎氏と滝川クリステルさんが、何と首相官邸で結婚を発表した。小泉氏は「文藝春秋」9月号で菅義偉官房長官と対談、「憲法改正」にも言及。いよいよ「安倍改憲の広告塔」としての登場だ、との見方も出る。

お盆に帰郷した安倍首相は13日には、岸信介元首相、安倍晋太郎元外相などの墓参りをした。墓参後、「憲法改正は自民党立党以来最大の課題だ。国会においていよいよ本格的に議論を進めていくべき時を迎えている」と発言し、「改憲ムード」盛り上げを狙った。

 政権は、とにかく国会の憲法審査会を動かすことを狙っている。併せて、今年中にも予想される総選挙で多数を取り、改憲発議を一歩進めること目論む。安倍改憲阻止には事態を見据えた、機敏な対応が求められている。

丸山重威

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 15:14 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月09日

JCJ東海支部声明 「表現の不自由展・その後」再開を求める=古木民夫

愛知県の「表現の不自由展・その後」が中止されたことを受けて、JCJ東海は5日、抗議と再開を強く求める声明を出しました。要旨は次の通り。

愛知トリエンナーレ2019企画のうち「表現の不自由展・その後」は、その良心的な開催意義がメディア報道やSNSで知られ始めた矢先の8月3日、突如中止になりました。まだ見ていない人、見るのを楽しみにしていた人が多いと思われるだけに大変残念なことでした。中止の理由として主催者(愛知県)は「平和の少女像」など展示作品に対する抗議が多く、中には「ガソリン持参でお邪魔 する」などの脅迫もあったこと、河村名古屋市長からも抗議があり、首相官邸からの「注意」があったことなどを挙げています。

作品を見た上での意見表明ならともかく、展示そのものに反対し、「ガソリン持参でお邪魔」などの脅迫言辞を弄することは犯罪行為であり、その脅しに屈する形で中止となったのは残念でなりません。再発防止のためにも、早急かつ徹底的な究明が必要です。今回最も重視されるのは、展示の内容を批判する河村名古屋市長、菅官房長官ら政治家の介入です。これは政治権力が展示内容に口出しをする事実上の検閲であり、日本国憲法の固く禁ずる不法行為であります。

私たち日本ジャーナリスト会議(JCJ)東海は、言論表現の自由を守る立場から、今回の展示中止に抗議し、言論表現の自由をないがしろにする河村市長と菅官房長官に対して発言の撤回を、警察当局に対しては脅迫行為の取り締まりを要求します。その上で、主催者に対し「表現の不自由展・その後」の再開を強く求めます。           2019年8月5日 

古木民夫

(東海代表)



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月08日

【今週の風考計】9.8─重陽の節句から「憲法99条」への想い

重陽の節句には、菊を浮かべた<菊湯>に入り、<菊酒>を酌む習慣がある。山形では食用菊「もってのほか」のおひたしが食卓を飾る。このシャキシャキ感がいい。
もう一つ加えれば、9日は<「チョロQ」の日>。タカラトミーが“チョロチョロ走るキュートな車”をキャッチコピーに1980年に発売。子供にも大人にも広がる大ブームを起こした。わが本棚にも飾ってある。

お隣の朝鮮半島に目を向ければ、9日は朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日。朝鮮半島の支配権をめぐる米ソの対立から、38度線以南の地域を単独で収める大韓民国が、1948年8月15日に李承晩を首班として樹立される。朝鮮半島の分断が決定的となった。
これに対抗して38度線以北でも独立運動が加速し、同年9月9日に金日成首相の下で朝鮮民主主義人民共和国が樹立された。しかし、70年以上が経過しても統一の悲願は遠のくばかり。

こうして9と9をたどってくると、日本の憲法9条、さらには99条に目を向けざるを得ない。安倍政権の動きを見るにつけ、今ほど99条が大事な条項に浮上している秋はない。
 日本国憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記している。
この条文の主語は「公務員」とあるのが重要だ。「公務員」とは国家権力の行使を担う人たちである。だからこそ「国家権力の横暴を戒め、監視と抑制を行う最高の法律である」憲法の99条に、「憲法尊重擁護義務」を明記したのだ。
 この規定は、単に憲法を尊重するだけでなく、違反行為を防ぎ、憲法を守るために積極的に努力することを含んでいる。

ところが行政府の長である内閣総理大臣という「公務員」が、国会の施政演説や自衛隊観閲式の場で、改憲を勧める所信を表明し訓示を垂れるなど、99条に背く憲法違反を平気で行う事態だ。
 もともと内閣は憲法改正の提案や意見表明はできない。憲法の定める三権分立を侵しても、立法府に干渉するという異常さは極まる。さらには参議院本会議で「愚か者、恥を知れ!」と野党を罵る、自民党・女性議員まで入閣するとの噂が立つ第5次安倍改造内閣、さらなる改憲策動を許してはならない。(2019/9/8)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月07日

【支部リポート】 北九州 抗議行動やまぬ香港 暴力警察の蛮行を目撃=杉山正隆

 「逃亡犯条例」の改正案を契機に起きた香港政府に対する市民による抗議活動は、6月9日の大規模デモから2カ月が経った。8月10日、現地に取材に入った。目抜き通りネイザンロードでは、10日夜9時過ぎ、黒服を着た市民らに、デート帰りと思われるカップル、高齢の男女らと警察隊がにらみ合いを続けていた。突然、20歳代の女性ら数人を警察官が警棒で数十回、激しく殴りつけ押さえつけて手錠を掛けた。

 数千人の市民らは「釈放しろ、警察は恥を知れ」と大合唱。もみ合いの後、警察車両数台と加勢の警察官100人ほどが人波を押しのけて到着。激しいヤジを浴びながら「容疑者」が警察車両に乗せられ尖沙咀警察署に連行された。その後、抗議の声が止まず、警察官らは催涙ガスを発射。市民らは逃げ惑い、脱げた靴や買い物袋などが現場に散乱した。

 翌11日の午後6時半。世界的に有名な雑居ビルの「重慶大廈」(チョンキン・マンション)前のネイザンロードに黒服の男女らがゴミ箱数個を置いた。これをきっかけに、通行が妨げられ、大混乱に陥った。集まった市民は数千人に上り「自由な香港」を訴えたのに対し、警察官らは警告したものの催涙ガスを発射。20歳前後と思われる男女4人が後ろ手に縛られ道路に数十分間座らされ、警察署に連行された。通すよう抗議する日本人に「黙れ、香港から出て行け」と警棒を突き出し怒鳴る警察官も。引き上げる警察官に「こんなに手荒なことをされた。ひどいじゃないか」と腕の傷跡を見せながら詰め寄るお年寄りの姿も見られた。

市民の間で警察への怒りの声が広がっている。催涙ガス弾やゴム弾を市民に発射し、警棒で歯が折れても若者を殴る、地下鉄構内など閉ざされた空間での催涙ガスの発射など行き過ぎた対応に「暴力警察」のイメージが浸透している。

 香港国際空港には9日以降、1万人近い市民が集まり、到着旅客らに「迷惑を掛けてごめんなさい。でも、香港の現状を知って下さい。支援して下さい」などと訴えた。裁判所は中止を命令、中国政府は「テロ」と断じた。

 香港がこれからどうなるのか。これからも注目したいと考えている。

杉山正隆

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月06日

【メディアウオッチ】「韓国は『敵』なのか」に8千人署名 訴える元NHK国際部幹部の理由 自立失ったメディア、高圧的な政治態度…=大貫康雄

 安倍晋三政権が突然のように打ち出した、韓国に対する半導体関連素材3品目の輸出規制措置の後、日韓関係は急速に悪化している。
 特に日本国内の世論がメディアに煽られて、韓国を「敵視」する風潮が強まっている。
 今回の声明、「韓国は『敵』なのか」は、輸出規制措置が日本にとって如何に危険であるか、それこそ「国益」を損なうものであるかを、冷静、客観的に考えてもらうために出されたものだ。
 声明文は、東京大学名誉教授の和田春樹氏や元「世界」編集長の岡本厚氏らが世話人となって日本国民に向けてまとめ、私も呼びかけ人の一人として参加した。

植民地支配の歴史
 声明の概要は、第一に日本が韓国を侵略し、植民地化した過去・歴史を鑑みて対応することの必要性を求めている。日韓両国が報復に報復を招く事態は絶対に避けるべきだ。特に来年は東京オリンピック・パラリンピックの年だ。主催国日本が周辺国と摩擦を引き起こして得るものは何もない。

「敵国扱い」同然
 ところが安倍首相は年初の施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善については見解を表明し、北朝鮮に対してさえ、交渉したいと述べる一方で、日韓関係については一言も触れなかった。5月末の大阪でのG20会議の際には、安倍首相は各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかった。その上での今回の措置である。自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄を共に築いていくべき隣人を、まるで敵国扱いするようなものだ。
 第2点は、日韓両国は未来志向のパートナーであることを強調している。1998年10月、金大中大統領(当時)が来日し、国会演説の中で、戦後日本が民主主義の下、経済成長を遂げアジアへの援助国となり、平和主義を守ってきたと、日本を高く評価した。 その上で、日本国民が過去を直視する勇気を持ち、韓国国民は戦後大きく変わった日本を評価し、共に未来に向かって歩もうと呼びかけた。日本の国会議員も大きな拍手を送りこれに答えた。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領との「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となった。

「解決済み」ではない
 第3点は、日韓基本条約と、それに基づく「日韓請求権協定」の解釈については日韓両国で隔たりがあるままだが、元徴用工問題は安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」ではない。元徴用工の訴訟は民事訴訟であり、まずは企業が判決にどう対応するかが問われるべきだ。実際、日本政府は過去にも、個人の戦争被害に対する補償の権利を否定せず、サハリン残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、工夫しながら実質的な補償をしている。こうした過去を踏まえるならば、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だ。
 声明はこのように指摘し、日本政府が韓国への輸出規制を直ちに撤回し、韓国との間で、冷静な対話と議論を開始することを求めている。今回の声明が出された後、賛同者は3週間で8千人を超えた。インターネットでのアクセスは20万人に上っている。

 歴史を否定する姿勢
日韓関係の急激な悪化について私は、報道の自由・自立を失った日本のマスコミの責任とともに、安倍晋三という、現在総理の座にある一人の人物とその集団による被害者を考慮しない冷たい対応、気に入らない歴史を否定し、強い者には卑屈に出る一方で弱い立場の人には高圧的に出る感情的な政治姿勢が両国関係悪化の背景にあると見る。かつて、西ドイツの故シュミット首相が、日本が真の友人を持っていない危険性を指摘していたのが思い出されてならない。

大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月05日

【月刊マスコミ評・放送】 英独も模索する「公共性」の回復=諸川麻衣

「NHKをぶっ壊す!」をスローガンにNHKのスクランブル放送化を訴える「NHKから国民を守る党」(N国党)が、参院比例で一議席を獲得、選挙区の得票率で政党要件を満たした。あの丸山穂高代議士を入党させたかと思うと、渡辺喜美議員と「みんなの党」会派を作り、さらにスクランブル化と引き換えに安倍改憲に賛成を打ち出すなど、立花党首の打算的な言動は相変らずである。それを批判するのはたやすいが、問題は相当数の有権者がN国党の主張に共感し、わざわざ投票したという事実である。選挙直後のTOKYOMX『モーニングCROSS』の集計でも、スクランブル放送化に賛成二〇六四、反対七〇八という衝撃的な結果が出た。

今の受信料制度やNHKのあり方へのこうした批判の要因と思われるものを列挙してみる。まず、受信料制度を合憲とした二〇一七年の最高裁判決を錦の御旗に、NHKの集金活動が高圧的になったこと。政権寄りの政治報道のせいで国営放送同然に見られていること(反面「番組が反日的だ」との批判もある)。携帯やカーナビも受信機器とみなして契約を強いる論理が、生活実感になじまないこと。庶民にほぼ無縁な4K8K放送に莫大な予算がつぎ込まれていること。そして、ネット社会の進展によって、NHK・民放を問わずもはやテレビが重要な情報源ではなくなってしまっていること。災害であれ選挙であれ、人々はネットで一次情報を取得できるだけでなく、自らも発信者になりうる。放送制度が前提としてきた、情報発信の専門性・寡占性が大きく変化し、「電波の希少性」がかつてほどの意味を持たなくなってきたのかもしれない。

こうした趨勢の中、イギリスではBBCが、オンライン専門の若者向けチャンネルで犯罪、ドラッグ、セックス、LGBTQなど青少年にとって重要なトピックを扱った番組を配信、注目されている。また放送番組のコンテンツも動画共有サイトに積極的に配信しているという。ドイツは二〇一三年に、従来の受信料を、ネット端末を含む「放送負担金」に変え、費用の徴収の根拠を「受信機の所有」ではなく、「公共放送によるサービスを享受する権利」に変更した。さらに今年四月には値下げにも踏み切った。

「公共メディア」を自称するNHKが受信料制度を維持したいのであれば、疑問符を突き付けられた「公共性」を、日々の放送とネット発信を通じて回復してゆくしかないだろう。  諸川麻衣

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月04日

【内政】大分と宮城 東西参院選最激戦区からのリポート 安倍政権に大打撃=柳瀬陽之助・多々良哲

お上嫌いの風潮 脈々
 東京の知人が今回の参議院選挙を評して「大分はおそろしい」と感想を漏らした。新顔の革新系候補が、首相側近の有力保守候補を破ったからだ。
 九州各県の1人区のうち、革新が勝ったのは大分だけ。予想しない結果だった。大分弁で「おそろしい」を「おじい」という。
 3人が立った。事実上、保革の一騎討ち。激戦を制したのは安達澄(きよし)氏。無所属で、野党連合4党の推薦・支援を受けた。別府市出身、49歳。22年間のサラリーマンを辞め4年前、別府市長選に出たものの、苦杯をなめた。5人候補のうち最下位に近かった。
 シンボルカラーは出身の青山高校名から「青(ブルー)」を選んだ。白シャツに青ズボン、運動靴で県内を駆け巡った。若さと新鮮さをアピール。国政論争より「現場主義」「政治に地方重視」を強調した。
 相手は3期目を目指す自民・公明推薦の礒崎陽輔氏。自民党所属で61歳。総理補佐官として「2期12年の実績」を誇示した。安倍晋三総理や菅義偉官房長官、小泉進次郎氏らが応援に駆け付けた。

 開票の結果、新顔の安達氏が1万6655票差で初当選した。安達氏の勝因は野党連合3党と共産党の支援による「大分方式」が功を奏したほか、あえて政党色を出さず、無党派層を取り込んだ。
 これに対して礒崎氏の保守陣営は3期目のおごりと組織の劣化が災いしたようだ。むしろ自民党の「敵失」という見方もある。参議院大分選挙区は革新のDNAが脈々と流れる。革新候補が2004年以来3回、自民党候補を破った。
 昔から社会党の牙城でもある。比例代表で社民党前党首の吉田忠智氏(大分県出身)も返り咲いた。「トンちゃん」こと元総理の村山富市氏も95歳で健在である。

 今回の投票率は50・54%で過去最低だが、もともと大分人は選挙好き。昔から選挙後の訴訟の多いこと、「東の千葉、西の大分」とやゆされる。
 自民党副総裁や衆議院議長の大物代議士が総選挙で落選する怖いところ。反権力やお上嫌いの風潮もある。
 「九州は一つ」と言われるが、そんなことはない。瀬戸内海を隔てて関西とつながる大分県。他県とは違った異質なおじい風≠ェ吹いている。

柳瀬陽之助(別府市在住ジャーナリスト)


60日の新人VS60年世襲
 今回の参議院選挙宮城選挙区では、5月に名乗りを上げた新人「市民と野党の統一候補」石垣のりこ氏が、4期目を目指す自民党現職「名門政治家一家の3代目」愛知治郎氏に勝利した。その闘いは「60日の新人が60年間の世襲に勝った」と称された。
 その勝因の第一は、宮城における「市民と野党の共闘」の蓄積である。2016年の参院選勝利、17年の仙台市長選勝利、そして18年の女川原発県民投票を求める署名運動と、市民と野党が共同で物事を成し遂げる経験を積み重ねてきており、その中でお互いの信頼関係が醸成されていた。
 それを下支えしたのは、選挙以外の日常の様々な市民運動、すなわち憲法、原発、沖縄等々の諸課題を巡る地域の共同の取り組みであった。それらの活動が多くの有権者からの信頼を得ており、これが今回の勝利の土台となったことは間違いない。

 第二には、なんといっても候補者がよかったということである。石垣氏は親しみやすい庶民派であり、有権者の声を丁寧に聞く草の根選挙を展開しながら、その主張は鋭角であり、忖度もしがらみもなくハッキリと物をいう態度が有権者の共感を呼んだ。
 同時にそれは石垣選対のイメージ戦略でもあった。若い女性候補でありながら「笑わない」ポスター、「上げるべきは賃金であって消費税ではない」という断定調のキャッチフレーズが浸透し、SNSや動画配信を駆使したネット戦略によって若い世代にも届いていった。
 いわば石垣氏のパーソナリティ、政策、活動スタイル、そして言葉の力があいまって、政治をあきらめるなというメッセージとなって、無党派層の人々に一定届いたのではないか。7月17日仙台駅前に三千人が詰めかけた「れいわ新選組」街頭演説会で、石垣氏が山本太郎氏と並んで登壇した姿が、それを象徴していた。

 終わってみれば、宮城選挙区は全国最少の得票率差の激戦区であった。私たちは、権力が力任せに共闘つぶしに襲いかかる「官邸直轄選挙」の恐ろしさをひしひしと感じた。来るべき衆院選に勝利するためには、私たちの共闘のウイングを、政治を諦めていた無党派層の人々へも広げる言葉を、私たちは持たなければならない。

多々良哲(市民連合みやぎ事務局長)


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 17:48 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月03日

【リレー時評】図書館の民間委託 弊害多し 新政策を=守屋龍一

 今夏の猛暑続きは世界規模。中国ではエアコンの効いた場所へ、避暑めあてに移動する「納涼族」が急増したという。書店内もイス持参の子ども連れがいっぱい。書棚の本を持ち出し読みふける映像に衝撃を受けた。
 日本だって地域の図書館は、「納涼族」格好の場所だ。お盆のさなか、住まいの近くにある図書館を訪れると、26℃に調整してある館内は高齢者ばかり。中には居眠りしている老人もいる。
 図書館の利用がこれでいいのか。5月末、岩波ホールで観た映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を想起しながら、考えさせられた。

 6月24日、活字文化議員連盟・公共図書館プロジェクトが、〈公共図書館の将来─「新しい公共」の実現をめざす〉(答申)を発表した。子細に読むと頷ける点が多く、5つの提言についても示唆に富む内容が豊富である。
 まず小泉内閣が進めた規制緩和や民間委託、郵政民営化につながる政策の是非が問われ、公共図書館の運営についても、民間委託の指定管理者制度そのものにメスを入れる、これが緊急テーマに浮上したと指摘する。

 民間委託した図書館の貸出点数の推移を調査したところ、ほぼ2〜3年で貸出率が下がり、5年以上では20〜30%以上も減少し、住民の図書館離れが始まるという。
 さらに民間業者の目先の利益が優先し、長期に図書館の発展を目指す姿勢がない。地域に密着した図書館サービスの提供に向けて、必要不可欠な専門知識のある人材が育成・蓄積されない。
 まずやるべきは図書館職員の劣悪な労働条件の改善だと提言。司書の6割が非正規で働き、賃金は経験を積んだ30代後半でも月13万円。専門職としての能力に応じた十分な賃金を支払い、雇い止め≠見直し、司書が継続して安心して働ける労働環境づくりが必要だと説く。

 いま日本全国にある公共図書館は3300館。そのうち民間業者に指定管理者委託をしているのは640館を超える。なかでも図書館流通センター(TRC)の占有は激しく、333館(全体の65・5%)になる。
 昨年11月、神奈川県海老名市の公共図書館の管理運営を、市は図書館流通センターと「TSUTAYA図書館」(CCC)による合弁事業とし、今後5年間、毎年3・2億円の委託契約を更新。年間の税金投入は市が直営時の2倍となり、市民から批判の声が挙がる。
 公共図書館に納める図書も、いまや図書館流通センターが独占し、〈町の本屋さん〉は、公共図書館という安定した書籍の販売先を失ってしまった。
 図書納入にあたっては地域書店からの直接購入を優先し、装備作業は無償サービスではなく、福祉施設に業務委託して効用促進を図るなど、新たな地域循環型の経済効果を生み出す図書館政策の確立が必要である、と提言する。即実行を願う。

守屋龍一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月02日

【内政】市民連合「継続は力なり」実証 参院選報道 紋切型で争点伝えず メディアの知的劣化が著しい 上智大・中野教授に聞く=河野慎二

 先の参議院選挙で、市民連合と野党共闘は自公など改憲勢力を、3分の2割れに追い込んだ。安倍政権は「改憲ノー」の民意に深刻な打撃を受けている。画期的な成果を上げた要因と今後の展望、メディアの報道などについて、市民連合呼びかけ人の中野晃一上智大学教授に聞いた。

―参院選の最大の成果は、改憲勢力の3分の2を阻止したことですが、どう振り返りますか。
 まず何を措いても触れなければならないのは、投票率が低かったこと。5割を割って48.8%に終わったことは、市民連合としても重く受け止めています。低投票率についてはメディアの責任も重く、深刻です。その中で極めて重要なことは、自公などの改憲勢力が3分の2を割ったことです。
 特に、1人区で10勝したことは、率直に言って想定を超えるいい結果だと考えています。と言いますのは、統一地方選で候補者の一本化が遅れ、長野以外は新人候補ばかりで、それがこれだけ多くの自民党現職を打ち破ったのは凄いことです。

候補一本化に道筋
―今回も市民連合が大きな役割を果たしました。
 市民連合としては、13項目の政策合意で野党候補一本化の道筋を作れたことは大変良かった。前回、惜敗率が一番高かった愛媛で勝利したように、蓄積が極めて重要です。市民と野党の協力の継続が無ければ、これだけ短期間でこれだけの新人候補が勝てるはずはありません。まさに「継続は力なり」です。

―市民連合と立憲野党の13項目の政策合意は今後、どう内実化させて行くのですか。
 参院選直後、立憲民主党の枝野幸男代表が国民民主党の玉木雄一郎代表に、13項目の政策合意を基調にして院内統一会結成を呼びかけました。野党共闘を強化して行く過程で、13項目の枠組みが効いています。政策合意に完成版はありません。核禁条約盛り込みなど、常に先を目指して充実を図ります。

―衆議院の年内解散説も燻りますが。
 常識的には、年内の解散総選挙はないと見ますが、解散権を乱用する安倍専横政権ですから、先手々々を取って共闘体制を準備することが極めて重要です。もたもたすることは許されません。枝野代表の統一会派申し入れは、想像以上に早かった。よりリベラル色の強い立憲民主が仕掛けて、旧民進党系の再結集が始まりました。市民連合としても後押ししたい。

印象操作に「加担」
―メディアの参院選報道はどう見ますか。
 まず、自民党単独過半数割れについての報道が不十分です。自民党は公明党無しに法律一本も作れない政党です。その党首が改憲などを仕掛けられる訳がない。その辺をきちんと捉えないと、メディアが政権の印象操作に事実上加担しているとの批判を免れません。安倍戦略に乗って、煽って来た衆参同日選が無くなるや、テレビの報道量は激減し、新聞も一面トップで伝えなくなりました。
 重要な国政選挙の争点を伝えないメディアは、自由と民主主義を下支えする言論機関としての自覚が余りにもなさ過ぎます。参院選についてメディアは「議論がかみ合わない」「争点がない」と紋切り型に繰り返しました。しかし、安倍首相は「改憲」に踏み込んだ街頭演説を行い、野党は暮らしや年金など「生活争点」を訴え、争点は明確に存在していました。
 憲法には憲法を対置させないと争点にはならないという思い込みがあるようですが、メディアの知的劣化ではないのか。

 もう一点、メディアがもの凄く劣化したと思うのは、政権の業績評価をしなくなったことです。安倍政権は6年半、国民の税金を使って何をやってきたか。アベノミクスや3本の矢≠ヘどうなったのですか。何もやってないじゃないか。メディアは参院選の時に評価せずに、いつ評価するのでしょうか。

SNSの力と限界
―今回、SNSの影響力が注目されました。ジャーナリストへのメッセージもお聞かせください。
 SNSがメインストリームのテレビや新聞に対抗できる動きを作り得ることはあります。「れいわ新選組」の躍進はSNSと切り離せません。しかし、SNSは同じ意見が共鳴し合う情報のタコツボ化≠ニいう限界があります。新聞やテレビは、広く共通の土台を作るというプラットフォームですから、そこで広範な世論を形成するプロセスが出来ないと、国民を分断された言論状況の中に放置することになります。
 SNSでシェアされる情報は、発信元になるプロのジャーナリストが職業倫理に基づき、自分の良心に基づいて取材し、記事にしたものであるべきです。それが、SNSの拡散する中で、無くなってしまうのは非常にまずい。ぜひ、頑張ってほしい。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 11:25 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月01日

【メディア気象台】 7月から8月=編集部

公文書保存ルール、大臣もなし
大臣が在職中に保有する公文書について、退任時に保存するルールがないことが、大臣のいる全14官庁への毎日新聞の取材で判明した。複数の大臣経験者らによると、退任時に文書を持ち出したり、自ら処分したりするなど対応はバラバラで、廃棄や散逸の恐れがあるという。一方、経済産業省では、大臣に示した文書を半年後にサーバーから自動削除するなど廃棄につながる動きがあることも判明。読者は「大臣の政策判断の検証が困難になる。保存のルールが必要だ」と指摘している。(「毎日」7月18日付)

首相へのヤジ排除、道警が見解変える
札幌市で安倍晋三首相の街頭演説中にヤジを飛ばした市民を警官が取り押さえて排除した行為について、北海道警は17日、聴衆同士のトラブルを防ぐための通常の警察活動だったと説明した。当初は、ヤジが公職選挙法違反(報道の自由妨害)にあたる「おそれがある」としていたが、「事実確認中」と見解を変えた。(「朝日」7月18日付ほか)

ジャニーズ事務所の「圧力」、各局番組は有無触れず
アイドルグループ「SMAP」の元メンバー3人のテレビ出演をめぐり、公正取引委員会がジャニーズ事務所(東京都)に注意について、NHKや在京民放キー局は17日夜〜18日昼、ニュース番組や情報番組で伝えたが、公取委に情報が寄せられた「事務所から局への圧力」の有無について、番組内で局からの詳しい説明はなかった。(「朝日」7月19日付ほか)

ベネチア映画祭に是枝作品
世界最大映画祭の一つ、第76回ベネチア国際映画祭で、メインのコンペティション部門に是枝裕和監督の日仏合作映画「真実(原題、ラ・ヴェリテ)」が選ばれた。日本人監督の作品で初めてオープニング上映されることになった。同作は、フランスの俳優カトリーヌ・ドヌープとジュリエット・ビノシェが母娘を演じている。映画祭は8月28日から9月7日までイタリアのベネチアで開かれる。(「毎日」7月19日付ほか)

NHK「N国党主張に誤りなら放置せず」
NHKの木田幸紀総局長は24日の定例記者会見で、参院選で議席を獲得した「NHKから国民を守る党」が主張する、NHKに受信料を払った人だけが番組を視聴できるスクランブル放送について、否定的な考えを示した。その上で「受信料制度について誤った理解を広げる行為や言動は放置せずに対応したい。明らかな違法行為があれば厳しく対処する」とも述べた。(「毎日」7月25日付ほか)

参院選、真偽不明情報まん延
今回の参院選期間中にインターネットで出回った真偽不明の関連情報は、ファクトチェック(事実確認)の推進団体「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ、東京都)の調べで50件を超えていたことが分かった。連携する新聞社などが確認し、真偽を判定できたのは9件にとどまった。検証作業の担い手不足が課題になっている。参院選公示後にツイッターに載った政治家、候補者の発言や、参院選関連の各種メディア報道、ネット情報などに対し、誤りやミスリードを指摘する投稿を自動的に収集。ファクトチェックが必要と判断した情報が50件を超えた。主要争点となった消費税増税関連が多かったという。(「東京」7月28日付)

市民が再開要望、県知事あて提出
国際芸術祭「あいちトリエナーレ2019」で、元従軍慰安婦を題材とする「平和の少女像」などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」が中止された問題で、中止に抗議する市民団体が7日、大村秀章・愛知県知事宛てに再開の要望書を提出した。市民団体は、中止翌日の4日の抗議行動に集まった市民を中心につくられた「再開を求める愛知県民の会」。(「毎日」8月8日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 11:28 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【今週の風考計】9.1─よみがえれ! 蒸気機関車「東村山D51」

蒸気機関車を見ると童心に帰る。お盆休みには<煙を吐いてシュッポ、シュッポ…>田舎へ帰る列車の窓から流れ込む煙の臭いが懐かしい。
 旅をしては秩父鉄道や大井川鐵道の蒸気機関車に胸躍らす。町を歩いては展示されている新橋駅前や中野紅葉山公園のC11型、川崎・生田緑地公園のD51型機関車に見とれる。まさに日本の文化遺産だ。

ところが筆者の住む東京・東村山市の運動公園に展示されている蒸気機関車「D51684」が、市民には何も知らされないうちに、解体・撤去されることになった。この3日から撤去工事が始まる。
市当局は5月末に目視による劣化度調査を行い、鉄錆が広がり枕木も腐食し、地震で脱輪・横転する危険性が高いとの報告を受け、6月7日の定例市議会で、修繕・維持費も高額になる以上、解体・撤去するとの方針を打ち出した。
 しかも議会最終日の7月2日には、解体工事費2030万円を盛り込んだ補正予算を提案し、審議も説明も不十分なまま自民・公明などの賛成で可決・成立させてしまった。展示されて43年間、市民の見学に供してきたのだが、ペンキの塗り直しは僅か4回。風雨にさらし放置してきた責任は免れない。

さっそく市民有志や全国のSLファンらが連絡を取り、「東村山D51684保存会」を立ち上げた。市民の力で<よみがえれ! 運動公園の機関車>を合言葉に、専門家や研究者の知恵を集め、また解体・撤去を取りやめた自治体の経験を活かしたいと張り切っている。
ちなみに市当局が挙げる修繕費1億2300万円は、「全国で実施されてきたSLの生態保存と比べて、ケタ違いの数字であり、必要のない作業を含め、意図的に膨らませていたとしか考えられません」と、SL修繕専門家は言う。
錆びた表面の薄い鉄板を張り替え、ペンキを塗りなおすなどの工事費は、100万円ほどで対応できるし、ボランティアによる協力やクラウドファンディングにも取り組めば、保存は実現可能だと強調している。解体・撤去の契約が成立しても、解体を取りやめた自治体は数多くある。諦めないで「東村山D51」を復活させよう!(2019/9/1)
posted by JCJ at 11:08 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする