2019年10月05日

【内政】 地上イージスの配備 揺れる山口県阿武町 移住促進策と相容れず 標的になりたくない 花田町長に聞く=嶋沢裕志

 迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備計画が見直しを強いられている。防衛省のずさんな適地調査、住民説明会での職員の居眠りなどが批判を浴びた結果だ。とはいえ安倍一強下、当初の秋田市、山口県萩市・阿武町の2候補地で決まるとの観測も多いが…。候補地の中で真っ先に反対表明したのが、萩市に接する人口3300の小さな自治体、阿武町の花田憲彦町長(64)だ。生粋の自民党員。現在の胸中を聞いた。

――陸自むつみ演習場が候補地と知った時期は。
 昨年11月の全国紙の報道です。5月に町長に就任して半年後。「まさか?」と思いました。演習場は戦車が走るわけでもない約2平方㌖の原野で時々、野戦訓練がある程度。萩市むつみ地区の住民が牧草を採ったりしている。しかし、防衛省から何も連絡がない。

――正式な告知は。
 昨年の6月1日。大野敬太郎防衛大臣政務官(当時)と、山口県庁で村岡嗣政知事、藤道健二萩市長、両自治体議長らが会い、候補地になっていると説明を受けました。
 それまでの半年間、これは大変なことになったぞ、と情報収集の日々です。イージス・アショアが一体どんなものか。インターネットや雑誌、本で相当、勉強しました。

――昨年9月議会で配備反対を決議しました。
 私は自民党員ですし、ミサイル防衛のあり方に反対するわけではない。ただ、地上イージスをここに配備することは、町が進めてきた移住施策、「選ばれる町づくり」という地方創生の方向と相容れない。配備反対という町民の声を受け、議会で「配備撤回を求める請願書」を全員起立で採択し、防衛省へ意思を伝えに行きました。

――阿武町は過疎化も全国のトップ級でした。
 だからこそ阿武町は美しい自然、環境、食の安心・安全などの魅力を発信し、子育て世代のIターン、Uターン促進に注力してきました。現在の人口は、町が合併で誕生した1955年の3分の1以下。ただ、自然減は仕方ないが、社会増減は1998年から10年間で333人減だったのが、昨年までの10年間は4人減でとどまっている。「空き家バンク」などを早くからスタートさせ、私も町職員としてずっと移住促進のために頑張ってきた自負はあります。

――地上イージス配備が阻害要因になる、と。
 今年3月末時点で町には190人の小中学生がいますが、Iターン組の子どもが50人、Uターンの子はその倍で、全体の75%以上が移住組。演習場に隣接する福賀地区は小学生12人のうち8人がIターンの子ですよ。計画が浮上した頃、Iターンの方から自宅に電話がありました。「ミサイル攻撃の標的になるようなことだけは止めてほしい」と。その後、Iターンの方に会うと必ずその話になる。
 そこでUターンの20、30、40代の人に話を聞くと、彼等は郷土愛に燃えて帰ってきたのでなく、豊かな自然環境で子育てしようとUターンした。「そんな計画があると分かっていたら戻らなかった」と言います。それを聞いて、これは完全にアウトやなと思いました。地上イージスが配備されれば阿武町の将来はない。

――演習場の99%超は萩市。阿武町は道路を提供している形ですね。
 北朝鮮のミサイルに向け迎撃ミサイルを発射すれば、阿武町の生活圏が針路の真下になります。候補地の話も、秋田での適地調査のずさんさ、居眠りを見れば、防衛省に真摯さ、緊張感が欠ける。初めから「むつみありき」で来た印象が拭えません。イージス艦に搭載しているシステムを陸上に移すなら、面積は0・3fもあれば済む。人家に近い場所でなく、無人島や人のいない土地など、選択肢はあるはずです。

――この2月、演習場近くの福賀地区の住民を中心に「イージス・アショア配備に反対する阿武町民の会」(吉岡勝会長)が結成されましたね。
 6月3日時点で、町内の全有権者2898人の55・7%、1614人が会員です。残りは賛成というわけでなく、分からないとか、国に楯突くと道路整備が遅れるといった人たちが多い。住民は電磁波の影響やブースター(第1弾ロケット)落下の恐れ、地下水問題等を懸念していますが、住民説明会でも話がかみ合っていない感じがある。

――防衛省は別の場所を含む最適地調査をやると説明しましたが、萩市、山口県が同調しないとむつみに戻るのでは?
 この9月議会の冒頭挨拶でも触れましたが、参院選山口選挙区のNHKの出口調査では、イージス・アショア配備の賛否も聞いていて、賛成が49%、反対が51%。特に女性の66%が反対という報道があった。これは大きな味方だと僕は感じました。12月には再調査結果が示されるでしょうが、地域・住民の負託を首長も議会も背負って行動しなくてはいけないと思います。

嶋沢裕志(ジャーナリスト)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 16:15 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする