2019年11月17日

【今週の風考計】11.17─160年前の「日米通商条約」の轍を踏む!

◆低山ハイクを楽しむ仲間と、伊豆半島・下田にある寝姿山を歩いた。黒船見張所跡や復元された大砲を確かめ、ついた山頂から大島や利島を望む。眼下の下田港に黒船サスケハナ号が入ってくる。
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。

◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
 この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!

◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。

◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
 幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。

◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向け、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
 まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月15日

【おすすめ本】斎藤貴男『驕る権力、煽るメディア』─市民の主権者意識がジャーナリズムを育てる基盤=河野慎二

 著者は、2015年4月から4年間のメディアと安倍政権の動きを、報道内容を中心に辿って見すえ、どうすればよいのかを、読者と共に考えようと本書をまとめた。
 この時期、驕り高ぶった安倍政権は安全保障関連法(戦争法)の成立をはじめ、森友・加計問題での文書改ざんや隠蔽など、悪政を恣(ほしいまま)にした。

 著者の疑問は、09年に自民党を下野させた有権者が、なぜ「呆れるほど従順」になったのかという点だ。疑問を解くカギはメディアの劣化にある。新聞に対する消費税軽減税率適用がメディア劣化の一因と指摘。新聞協会は政権への陳情(オネダリ)を重ね、軽減税率の適用を手に入れた。
「借りを返せ」と恫喝された新聞界の対応が無残。「消費税の報道は絶望の極み。オネダリの見返りとしてのプロパガンダを報道とは呼ばない」と、大手紙の報道を痛烈に批判する。
 劣化は新聞だけではない。雑誌ジャーナリズムも、反権力・反拝金の姿勢が攻撃される中で劣化し、このままでは「確実に滅びる。新聞も、単行本も」と警鐘を鳴らす。
 その上で「知性の灯を絶やすな」として「オール出版界による『ノンフィクション再生プロジェクト』の立ち上げ」を提唱する。

 著者は、ジャーナリズムは滅んではならないと強調する。ジャーナリズムが機能しなければ、民主主義は成立しないからだ。「ペンは剣よりも強し」は市民の主権者意識があってこそ成り立つ。
 最終ページに森友文書改ざんをスクープした朝日の写真を掲載している。ジャーナリズムを滅ぼしてはならないという著者の信念と気概が伝わってくる。(新日本出版社1900円)
『驕る権力、煽るメディア」.jpg
posted by JCJ at 09:28 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月10日

【今週の風考計】11.10─ますます深まる「桜を見る会」への疑惑

大臣の連続辞任に続いて、河井案里・参議院議員が広島県議へ配った現金疑惑など、政治スキャンダルが相次ぐなか、安倍首相が主催する「桜を見る会」への疑惑が浮上した。安倍首相自らが先頭にたち、公的行事・税金を私物化している疑惑である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員が追究して明らかとなった。
「桜を見る会」の参加者数・支出額は、安倍首相になってから年々増え続け、主催して8回目となる今年4月13日の参加者数は18,200人、支出額は5,518万円、予算額の3倍。参加者一人当たり、飲食・お土産・警備などの費用を含む3,000円の税金が使われている。

参加資格は「功労・功績のある方を各府省が推薦する」とある。議員の後援会員や支持者は、招待範囲に含まれていない。税金が使われる公的行事である以上、当然だ。だが、自民党は党内で役職ごとに後援会や支援者の招待枠を割り振り、各議員は名簿を提出し、内閣府から各人へ招待状が届いている。
稲田朋美、世耕弘成、松本純、萩生田光一議員らの後援会ニュースや議会報告には、<地元後援会や女性支援グループの皆さん、選挙のうぐいす嬢の皆様、後援会の中の常任幹事などと、思いで深い「桜を見る会」となった>の記載があるという。
とりわけ安倍首相の地元・山口県の友田有県議のブログでは、<“後援会女性部の7人と同行”“ホテルから貸し切りバスで会場に移動”>と記され、安倍事務所が取りまとめ役になって前日「下関からは毎年数百人が上京する」との証言まである。こうした事実から、「桜を見る会が『安倍首相後援会・桜を見る会前夜祭』とセットになっている」と、田村議員は追及した。

さらに重大なのは、「新宿御苑で一般招待客は並んで手荷物検査がある。しかし“下関組”はバスの駐車場がある“裏口”から入るのが恒例だ」「(新宿御苑に)到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席をまわって、入場のための受付票を回収する。その秘書が受け付けを済ませ、参加者用のリボンを配る。まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった」という。安倍後援会の約850人がスルーで入園していたことになる。
当日の「首相動静」欄には<午前7時48分、東京・内藤町の新宿御苑着。午前7時49分から同8時31分まで、昭恵夫人とともに前田晋太郎山口県下関市長、地元の後援会関係者らと写真撮影>─まぎれもない証拠がある。
 「桜を見る会」の開門・受付開始は午前8時30分なのに、30分も前に安倍首相が地元後援会の人と、新宿御苑内で記念撮影をしている。田村議員の追究に「セキュリティー」を持ち出して、答弁を拒否し続けてきた安倍首相、自らが「セキュリティー」を犯している事態に、噴飯ものだとの声が挙がる。

ちなみに850人が、<バスの駐車場がある新宿御苑の“裏口”から入る>としたら、大型観光バスで17台にもなる。新宿御苑の“裏口”にあたる大木戸駐車場には、大型車は全長5m、重量2.5トンなどの駐車条件があり、かつ予約はできない。これらの条件を、どうやってクリアーしたのだろうか。(2019/11/10)
posted by JCJ at 11:29 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月08日

吉田博二さんを悼む 音響技術の名手 元民法労連役員=茂木章子

 吉田博二さん死亡の一報を受け、私は驚愕と疑問そして失望に打ちのめされた。一年ほど前から病気の症状に適合する薬を探す治験のため突き一回近所の大病院に通院していると聞いていた。JCJに来るのは以前より減少していたが、いつも変わらず寡黙な笑顔で作業に集中、時にはきつい冗談を発しみんなの笑いを誘っていた。現役時代は会社も異なり職場も違うので彼との付き合いはなかった。少し伝わっていたのは組合の委員長時代の労務要件獲得と賃金アップの華々しい成果と武勇伝は喧伝されていた。

 博二さんが年々ごろJCJの会員になったか私の記憶は不確かだ。彼によるとJCJか民放組合の主催による沖縄支援に旅行会で私に拉致され有無を言わせず入会させられたと、あの笑顔で放言していたようだ。

 几帳面で正確性高くきれい好きの彼は、常に手を動かし機材の手入れもよく行い、零細運営社員の見本のようであった。JCJ本部の何個もある白いテーブルも、汚れはもちろんのことボールペンの傷も消しゴムや消毒液で黙々と吹いていた。この性格は飲み会でも発揮され、一定量のむとどんなに座がにぎわっていても、お先にと多めの支払いをして帰宅する。メディアの人達は良く飲み議論をし座を沸かせる種族といわれるが、彼はどんな席でも笑顔でうるさい連中の話を聞いていた。

 これからも集会・講演・小森チャンネル等の取材は絶えないが、吉田さんの音響の仕事は外部に依頼し、その都度出費となり頭の痛いことである。

 とにかく安心して一つの物事を任せ続けてきた吉田さんの存在感の大きさにあらためて感謝したい。   

 茂木章子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 10:06 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月07日

【国際情勢】 中南米報道これでいいのか 革命40周年のニカラグアで考えた 人権弾圧無縁の国=吉原功 

日本の報道ではベネズエラやニカラグアなど中南米は、独裁政権下で大混乱しているように伝えられている。しかし本当にそうか。 JCJ代表委員の吉原功・明治学院大学名誉教授は、7月中旬、革命40周年の式展に招待され、ニカラグアを訪問した。以下は、吉原代表委員のリポート。(写真も)

【詩の工房】

十五歳のマリアは /銃でこづかれ犯された /

ロセンドのおばあさんは / ガーゼで首をしめられた /

ファンは殺菌剤を飲まされ / 呪いながら死んでいった /

国家警備兵に何度もレイプされマリ―ナは流産した

           ☆

1979年7月19日、中米ニカラグアでサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を中心とする長く苦しい民族自決運動が勝利し、米国の傀儡ソモサ独裁体制が崩壊した。革命政府は複数政党制、混合経済、非同盟の国家再建を目指す。国外逃亡した旧軍残党を中心とし米国の支援を受けた反革命コントラの攻撃にも対処しつつ、民衆の文化運動にも力をいれる。 各地に作られた「詩の工房」はその一つだ。農民、労働者、老若男女を対象に識字運動の一環として作詩をうながし生徒同士に意見交換させて最後に詩人が形を整えタイプし作品を残すというものだ。冒頭の詩はその運動から生まれた作品で『ニカラグアの詩の工房のアンソロジー』に収められている。ソモサ体制下で民衆がいかに悲惨な目にあわされていたかを端的に表現している。

街は平穏、報道ウソ

本年は、サンディニスタ革命の40周年にあたり7月19日に記念式典が挙行され、筆者は偶然にもその記念式典に参加する機会をえた。メキシコ経由でニカラグアの首都マナグアに入ると猛暑の日本より過ごしやすい気候だった。街々は近代的な豊かさにはほど遠いが、静かで平穏だった。昨年春、サンディニスタ政権打倒を叫ぶ大暴動事件が全国に吹き荒れ、欧米と日本のメディアが「政府に抗議する市民運動を徹底的に弾圧する独裁国家」と書き立てたのとは全く異なる風情だった。式典当日を含め警備の警官や軍隊はほとんど目に入ってこなかった。

式典の2日前、ニカラグア国民自律大学を訪れ、学長の話をきいた。経済学、医学、教育学、人類学、工学などの学部を要するニカラグア有数の大学だ。昨年の大暴動では学内が破壊され1500万ドルの物的損害に加え精神的被害も受け苦悩しているが、学問研究の向上に努めると同時に、社会事業、ボランティア、地方の青年向けの農業講座などにも力を入れ市民に受け入れられるような大学に発展するよう努力していると話してくれた。

その日の夜、FSLN本部で中心的に活動しているフォンセカとの会食が準備されていた。彼はサンディニスタ創設者の一人で革命運動中斃れたカルロス・アマドール・フォンセカの子息で、式典でのオルテガ大統領のスピーチと重なる貴重な話を聞くことができた。

 翌日、大暴動の動画映像を見たが解説してくれたのはかれだった。冒頭の詩を映像化したような凄惨場面がこれでもかこれでもかと続いた。

革命式典に20万人 

19日、式典会場は人々で溢れていた。会衆は20万人を超えていたと思われる。私たち外国からの参加者約500人は観覧席のような席に案内されたが人垣に遮られて全体は見えない。スピーチの最後にオルテガ大統領が立った。革命を勝利に導いたリーダーの一人だ。静かにはじまり次第に情熱をこめて概要つぎのようなことを会衆に呼び掛けた。「貧困と失業を根絶しよう。憎しみは混乱や戦争を生む。貧困を解消するには平和が絶対条件、愛こそは平和な社会の確立につながる。寛容が必要」。式典のテーマ「愛と平和」にピッタリの内容だ。

 愛と平和、それに寛容はサンディニスタの哲学だという。拷問、放火、火炙りをほしいままにした前年の大暴動参加者たちも恩赦によって解放されたという。

勝利の暁には寛容を

 フォンセカとともにサンディニスタを設立し、初期革命政府の内務大臣を務めたトマス・ボルヘは1980年、「われわれは彼らの生命を尊重しよう。復讐とは、彼らにいささかの憤りも抱かず、彼らがわれわれを処したより、比較できぬほどずっとよく彼らを処することだ。戦闘にあたっては妥協せず勝利のあかつきには寛容たれというわれわれの銘を実行することである」と述べた。40年後もそれが実行されているようだ。

 こうした国を米合衆国は、キューバ、ベネズエラとともに「人権弾圧の独裁国家」として制裁を加えている。メディアは米政府の言うことをそのまま事実と報道する。ニューヨーク・タイムスやワシントン・ポストなども例外ではない。日本メディアはそれを横流ししている。



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 13:58 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 芸術祭、政治関与の有無検証を=徳山喜雄

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が紆余曲折の末、終わった。開幕からわずか3日で中止となっていた企画展「表現の不自由展・その後」が閉幕直前に再開されるなど、「表現の自由」をめぐってさまざまな議論がなされた。

 不自由展は慰安婦をテーマにした少女像や昭和天皇の肖像をバーナーで燃やす映像作品などが展示され、「反日的だ」などとして匿名の抗議が相次いだ。萩生田光一・文部科学相は9月、採択を決めていた補助金全額を交付しないと発表。不交付の理由について「展示内容」ではなく、「手続きの不備」をあげた。

 不交付の発表を受け、在京紙では朝日、毎日、産経の3紙が9月27日朝刊に社説を掲載。朝日は「表現行為や芸術活動への理解を欠く誤った決定である。社会全体に萎縮効果を及ぼし、国際的にも日本の文化行政に対する不信と軽蔑を招きかねない。ただちに撤回すべきだ」と強いトーンで批判し、毎日は「結果的に今回の措置は、自分たちと意見を異にする言論や表現を暴力的な脅しで排除しようとする行為を、後押しすることにつながる。/さらに、そういった風潮が社会に広がっていくことにも強い危機感を覚える」と疑問を呈した。

 一方、産経は「日本国の象徴である天皇や日本人へのヘイト(憎悪)を表したとしかいえない展示だ。それへの反省を伴う全面的な見直しなくして企画展の再開などとんでもない」「そもそも、左右どちらの陣営であれ、ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない。当然の常識を弁えるべきである」と、朝日や毎日とは正反対の見方を示した。

 不自由展の再開合意を報じる10月1日朝刊の在京紙をみる。朝日と毎日が1面を含む複数面で、東京も2社面で大きく報じ、読売と産経は2社面に事実関係を伝える小振りの記事を入れた。不自由展をめぐっての報道各社の立ち位置がよく分かる紙面扱いだ。

 10月14日に芸術祭は閉幕。朝日や東京は16日朝刊で文化庁の宮田亮平長官の「不交付決定を見直す必要はない」とする参院予算委員会での答弁を取り上げた。宮田氏は決済に関わっていなかったともいうが、政治の関与はなかったのか。ここは閉幕で終わるのではなく、突っ込んだ取材を続けてほしい。

徳山喜雄

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 13:17 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月05日

【リアル北朝鮮】 白頭山登頂で決断? 金委員長自立繁栄を強調=文 聖姫

 「敵がいくら執拗にあがいても、我々は我々の力でいくらでも良い暮らしができ、我々式で発展と繁栄の道を切り開いていけるというのが、試練と困難を踏みしめ奇跡と遺勲でより飛躍した2019年の総括」

 金正恩・朝鮮労働党委員長は中朝国境の三池淵郡を訪れた際、意味深な発言を行った。冒頭はそのひとつだ。16日発の朝鮮中央通信が伝えたが、訪問の日時は明らかにしていない。

 この視察で金委員長はこうも述べた。「米国を首位とする反共和国敵対勢力が朝鮮人民に強要してきた苦痛は、もはや苦痛ではなく、それがそのまま憤怒に変わった」。

 6月の金委員長とトランプ米大統領による電撃的板門店対面では米朝の実務者協議を開催することで合意、10月5日にストックホルムで実現したが、不発に終わった。協議には北朝鮮の金明吉首席代表と米国のスティーヴン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が参加した。金首席代表は、「アメリカは、我々を大いに失望させた。アメリカは自分たちの古い立場や姿勢を手放さないようだ」と述べ(BBCニュース電子版2019年10月7日)、米国側は「アメリカは、創造的なアイデアを提示し、北朝鮮側と良い話し合いを行った」(モーガン・オーテイガス国務省報道官声明、前述のBBCニュース)と表明。双方食い違いを見せている。

 金委員長の三池淵での発言は、この米朝協議後になされたものとして注目される。もはや米国との対話には期待しないとも受け取れるからだ。

 金委員長は、自力更生、自力富強、自力繁栄などの言葉を連発し、(制裁という)圧力に屈せず、自力で道を開いていかねばならないと強調した。

 同じ16日発の朝鮮中央通信は、金委員長が白頭山頂に登ったことを、白馬にまたがった金委員長の写真とともに報じた。金委員長が白頭山に登るときは何かを決断する時であることが多い。金委員長の意味深な発言とともに注目される動きだ。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 14:10 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月04日

【メディア気象台】 10月初旬から中旬=編集部

メディア過労自殺、20代集中

厚生労働省は1日、2019年度の「過労死等防止対策白書」を公表した。過労防止大綱で重点業種・職種と位置付けられた建設、メディアの両業種を分析し、建設は現場監督、メディアは若い世代に過労自殺が集中していると指摘した。10年1月〜15年3月に労災認定された脳・心臓疾患と精神障害の事例から、建設の311件とメディアの52件を分析した。メディアの52件を細かく見ると、業種別では広告が26件と最多で、放送17件、出版6件、新聞3件と続いた。職種別では営業が10件、メディア制作とディレクターが7件だった。精神障害が認められた30件のうち、19件が20〜30代の若い世代で、過労自殺した4人は全員が20代だった。背景にあるストレスは、長時間労働や仕事量・質の変化、上司とのトラブルが多かったという。過労死弁護士連絡会議幹事長の川人博弁護士は「東京五輪に向け、報道が過熱し、過重な労働が広がる恐れがあると認識すべきだ」と話している。(「朝日」10月2日付ほか)

「共謀罪 言論を萎縮」市民団体が廃止署名提出

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を求める市民団体が7日、衆院第二議員会館前の路上で「言論を萎縮させ、自由が脅かされている」などと訴え、衆参両院議長あての署名約1万6800人分を野党議員に手渡した。既に提出した分と合わせると約27万4500人分に上るという。(「東京」10月8日付)

韓国法相、容疑者集団取材の場廃止案

韓国のチョグク法相は8日、検察がメディアに対し、出頭した捜査中の容疑者らに集団取材できる場を設けてきた慣行の廃止などを含む検察改革案を発表した。「誤った捜査慣行」として、今後は規則で禁じるという。チョグク法相の妻らが絡む不正疑惑の捜査中でもあり、野党からは批判の声が上がっている。韓国では、検察がメディアに対し、事情聴取で出頭を求めた国会議員や官僚、大企業幹部らに集団取材の便宜を図ってきた。庁舎前に取材エリアを設定し、議員らを立ち止まらせる方式だった。ただ、社会の注目が集まる事件では対象が一般人にも広がり、法曹界からは「推定無罪の原則に反する」「先進国では異例の人格殺人だ」などの反発が起きていた。(「朝日」10月9日付ほか)

マイナンバー原告180人控訴

マイナンバー制度は憲法が保障するプライバシー権を侵害し違憲だとして、神奈川県内の住民ら230人が個人番号の収集・利用の差し止めを国に求めた訴訟で、原告のうち180人が9日、請求を棄却した横浜地裁判決を不服として控訴した。原告側弁護団は「横浜地裁判決は憲法13条で保障されているプライバシー権を極めて狭くとらえており、現代社会におけるプライバシーの重要性に背を向けたものだ」とのコメントを発表した。9月26日の判決では、憲法13条は「個人情報をみだりに第三者に開示、公表されない自由」と指摘した上で、「制度やシステム技術の不備から個人情報が公表される具体的な危険が生じているとは言えない」として、違法性を認めなかった。(「毎日」10月11日付ほか)

東宝「天気の子」で最高益

東宝は11日、2020年2月期の連結純利益が前期に比べて14%増の345億円になる見通しと発表した。従来予想から30億円引き上げ、2期ぶりに最高益を更新する。同社が出資して自社配信するアニメ映画「天気の子」をはじめヒット作が収益を押し上げる。(「日経」10月12日付)

シンガポール、甘い飲み物の広告ダメ

シンガポール政府は、砂糖の含有量が一定量を超える飲料水の広告を全面的に禁じる方針を発表した。同国が「健康危機」と位置付ける糖尿病対策の一環。具体的な実施方針は来年に打ち出すといい、実現すれば世界初の取り組みになる。(「朝日」10月12日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 11:07 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月03日

【今週の風考計】11.3─W杯ラグビーの後味と東京五輪の酷暑

先月末の秋晴れの日、東京・調布にある神代植物園のバラを見たあと、深大寺へと散策した。境内に入り「達磨まつり」で有名な元三大師堂や国宝の本堂を拝観し、山門へと辿る途中で、ラグビーのユニホームが飾られた堂宇に目がいった。
にわかラグビー・フアンとなっていた筆者には、興味津々、なんとオーストラリア代表チーム「ワラビーズ」の全員がサインしたユニホームだ。達磨の<七転び八起き>がラグビー精神につながるとの縁で、祈願した際に贈呈されたという。

くしくも翌日、調布にある東京スタジアムで、ニュージーランド対ウェールズの3位決定戦、もうテレビにかじりついた。そして昨日2日、イングランド対南アフリカの決勝戦、テレビの前で「行けー、押せ…」と声が出てしまう。結果はご承知の通り、南アフリカが32−12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を果たした。
44日間・170万人の観客を動員し、テレビ視聴率は最高53.7%を記録したW杯ラグビー。秋篠宮さまや安倍首相、日本ラグビー協会の名誉会長でもある森喜朗元首相も出席し、大会を締めくくる閉会・表彰式で、後味の悪いシーンが演じられた。
イングランドの選手が2位の銀メダルを首にかけられることを嫌がり、さらには授与された直後に銀メダルを首から外す選手まで続出。<ラグビー発祥の地>の選手たちが、ノーサイド精神を踏みにじる行為に走るとは、内外からブーイングが起きている。

さて東京五輪。組織委員会会長である森喜朗さん、前日の1日、マラソン・競歩の札幌への変更を決定した。絶大なる権限を持つIOCには逆らえず、東京も「合意なき決定」に従った。しかし、森喜朗さん、「日本が世界にウソをつき続けた結果、今回の事態を招いた」という責任は免れない。
JOCがオリンピック招致の際に作った「立候補ファイル」の、「2020年東京大会の理想的な日程」という項目に、こう書かれている。
〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉

なんとなんと、日本みずからが蒔いた種なのだ。2013年IOC総会の最終プレゼンでも、福島原発事故問題に触れて、安倍首相は「アンダー・コントロール」との恐るべき言葉を発したが、天気までウソをついていたとは呆れかえる。もう「任命責任」なんて言葉も、取りもしないのに軽々しく言うな。(2019/11/3)
posted by JCJ at 11:57 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【沖縄リポート】 軟弱地盤改良で米国が危惧=浦島悦子

沖縄島北部・本部半島の採石場から連日、運搬船16隻体制(1日当たり4〜5隻)で大浦湾に運ばれ、投入される埋め立て土砂。毎日朝・昼・午後の3回、基地ゲートから資機材を搬入するダンプやコンクリートミキサー車―。辺野古新基地建設工事は「順調に」進んでいるように見える。そして政府は、国民・県民、そして何よりも米国にそれをアピールしたがっている。

 しかし実際はそうでないことが、現場にいるとよくわかる。運搬船に土砂を運ぶダンプの1台当たりの積載量を荷台の底板が見えるほど減らしたり、埋め立て用護岸の前面に、必要性に疑問符のつく巨大なテトラポットを多数設置したり、時間稼ぎとしか思われない現状がある。昨年12月14日から始まった埋め立て土砂投入は、10カ月経った現時点で達成率は約1%にすぎない。

 事業者である沖縄防衛局が一番頭を悩ませているのが、大浦湾の埋め立て区域の広大な「マヨネーズ状」と言われる超軟弱地盤だ。防衛局はあくまで改良工事は可能とし、9月6日に「有識者」による「技術検討委員会(委員8人)」を発足させた。運輸省港湾技術研究所出身で辺野古工事の関連会社取締役でもある清宮理・早稲田大学名誉教授を委員長とし、「国の立場」の委員が大半を占める「御用機関」。それでも初会合では、大浦湾の軟弱地盤は羽田空港や関西国際空港とは異なる特有のものであり、完成後の沈下を懸念する声が出たという。

 10月5日、辺野古ゲート前で開催された県民集会で発言した土木技師の北上田毅さんは、防衛局が地盤改良工事の設計のために発注した委託業務を情報公開請求で入手し、「これまでにない内容に驚いた」と話した。業務の実施に当たって当初から完成まで4回にわたる米軍との協議を義務付けているという。「これは、地盤改良工事を日本政府に任せておくことはできず、米軍が直接指揮監督するということだ。軟弱地盤に対する米軍の危惧がいかに大きいかがわかる」「来年初めに防衛局は沖縄県に対し(地盤改良工事を含む)設計概要変更申請を出すと報道されている。県が不承認すれば工事は止まる。展望に確信を持って現場に結集しよう」と呼びかけた。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 11:16 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月01日

【リレー時評】ネット情報への対応と新聞報道の危機=黒島美奈子(JCJ沖縄世話人)

 新聞はインターネットの情報とどう向き合うべきか。既存メディアにとって現代の命題とも言えるテーマに取り組んだ本が9月、沖縄県内2紙から相次いで出版された。
 沖縄タイムス社編集局著『幻想のメディア〜SNSから見える沖縄』と琉球新報社編集局著『琉球新報が挑んだファクトチェック』(ともに高文研)。どちらも2018年9月の県知事選を巡る「フェイクニュース」の背景を取材し、その軌跡をまとめたものだ。

 取材を担当した両紙記者によるトークショーが10月、那覇市内であった。そこで司会者にフェイクニュース問題を取材した理由を聞かれた両紙の記者が口にしたのが、県内の選挙報道で感じた危機感だった。
 県内では県知事選の7カ月前、同年2月の名護市長選からネット上にフェイクニュースがあふれ、あきらかにこれまでの選挙と違った様相を呈していた。「名護市が長年誘致してきたプロ野球キャンプを、市長選候補者の1人である現職が止めようとしている」。そんな情報がSNSを中心に広がりはじめたのは名護市長選の告示からまもなくのことだ。
 2月の選挙の争点は名護市辺野古への新基地建設の是非。20年前と変わらないが、大きな変化もあった。県内の首長選挙として初めて「18歳選挙権」が行使され注目を浴びていたのだ。

 その選挙で「若者の間でデマが拡散されている」とのうわさが市長選取材班の耳に届くようになったのは、選挙戦も中盤にさしかかったころだった。告示直後の有権者調査で大幅なリードが報じられた現職だが、このころになると劣勢がささやかれるようになった。そして迎えた投開票日。報道各社の当初予想を上回る票差で新人が勝利。
 この選挙を通して県内2紙をかつてない危機感が襲った。「有権者に正しい情報を届ける責任を、新聞は果たせていないのでは」。選挙後に沖縄タイムスの市長選取材班が寄せた検証記事にはいくつも「新聞の敗北」を語る言葉が並ぶ。名護市長選は、県内の多くの記者が選挙報道を見直すきっかけとなった。

 とはいえ長年培ってきた報道の在り方を変えるのは難しい。迎えた県知事選で沖縄タイムス編集局は部をまたいだ「SNSチェック班」を結成し、毎日決まった時間、デマやうその情報発信を監視した。
 ただ、その後の県民投票(2019年2月)や参院選(同年7月)では班を立ちあげず、ネット情報の監視は記者個人の「やる気」に頼っているのが現状だ。参院選では初めてネット上の情報の分析図を作成したが、従来的な選挙報道が解消されたとは言い難い。
 情報発信の在り方やツールは加速度的に変化している。本気で「正しい情報」を届けたいなら、新聞はもっと焦らなければならない。
posted by JCJ at 09:29 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする