2019年11月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 芸術祭、政治関与の有無検証を=徳山喜雄

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が紆余曲折の末、終わった。開幕からわずか3日で中止となっていた企画展「表現の不自由展・その後」が閉幕直前に再開されるなど、「表現の自由」をめぐってさまざまな議論がなされた。

 不自由展は慰安婦をテーマにした少女像や昭和天皇の肖像をバーナーで燃やす映像作品などが展示され、「反日的だ」などとして匿名の抗議が相次いだ。萩生田光一・文部科学相は9月、採択を決めていた補助金全額を交付しないと発表。不交付の理由について「展示内容」ではなく、「手続きの不備」をあげた。

 不交付の発表を受け、在京紙では朝日、毎日、産経の3紙が9月27日朝刊に社説を掲載。朝日は「表現行為や芸術活動への理解を欠く誤った決定である。社会全体に萎縮効果を及ぼし、国際的にも日本の文化行政に対する不信と軽蔑を招きかねない。ただちに撤回すべきだ」と強いトーンで批判し、毎日は「結果的に今回の措置は、自分たちと意見を異にする言論や表現を暴力的な脅しで排除しようとする行為を、後押しすることにつながる。/さらに、そういった風潮が社会に広がっていくことにも強い危機感を覚える」と疑問を呈した。

 一方、産経は「日本国の象徴である天皇や日本人へのヘイト(憎悪)を表したとしかいえない展示だ。それへの反省を伴う全面的な見直しなくして企画展の再開などとんでもない」「そもそも、左右どちらの陣営であれ、ヘイト行為は『表現の自由』に含まれず、許されない。当然の常識を弁えるべきである」と、朝日や毎日とは正反対の見方を示した。

 不自由展の再開合意を報じる10月1日朝刊の在京紙をみる。朝日と毎日が1面を含む複数面で、東京も2社面で大きく報じ、読売と産経は2社面に事実関係を伝える小振りの記事を入れた。不自由展をめぐっての報道各社の立ち位置がよく分かる紙面扱いだ。

 10月14日に芸術祭は閉幕。朝日や東京は16日朝刊で文化庁の宮田亮平長官の「不交付決定を見直す必要はない」とする参院予算委員会での答弁を取り上げた。宮田氏は決済に関わっていなかったともいうが、政治の関与はなかったのか。ここは閉幕で終わるのではなく、突っ込んだ取材を続けてほしい。

徳山喜雄

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 13:17 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする