2020年02月29日

川崎市ヘイト禁止条例 7月施行 勧告・命令・告発の3アウト方式℃i法判断で公平性担保=編集部

 石橋さん 両手.JPG 
 神奈川支部は2月1日、横浜市中区の横浜市開港記念会館で例会を開いた。日本で初めてヘイト行為を刑事罰によって規制する「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(7月施行)の意義について、神奈川新聞川崎支局長の石橋学さん(写真)が解説した。
 また石橋さんは自身が訴えられた裁判にも言及し、多くの支援者に支えられていると語った。
石橋さんの講演要旨は以下の通り。

命の危険感じる
 昨年12月、川崎市議会は差別根絶条例を全会一致で可決した。自民党から共産党まで全会派が賛成した意味は大きい。その背景には立法事実や差別デモ、ヘイト行為の実態がある。ヘイトデモは聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせ、その対象者は生命の危険を感じるほどだ。今回の条例成立は、行政や議会がその現実を共通認識として持てたことによる。
 川崎市の桜本地区には朝鮮半島出身者が多く住んでいる。ヘイトデモは2013年5月から始まり、11回目からは桜本地区を目標にデモが行われた。地区の住民は川崎市にデモの出発点として市が管理する公園使用の不許可を要請した。市の答えは「根拠法がないからできない」「何がヘイトスピーチにあたるか判断が難しい」というものだった。
 運動団体の「ヘイトスピーチを許さない川崎市民ネットワーク」は条例制定を市議会に求めた。市議会には日本会議に所属する右派系の有力議員もいる。条例推進派は、議場の日の丸掲揚を推進した有力議員にも働きかけた。「自民党議員に呼びかけても無駄だろう」などと言っている場合ではなかったからだ。その議員は条例が可決された後、推進派の人に「5年間かかってしまってごめん」と言って固く握手した。

足りない点ある
 条例成立の契機は16年成立のヘイトスピーチ解消法。しかし同法は理念法で、ヘイトを罰則で規制するものではない。罰則付きの法律ができないのは「表現の自由」に抵触するという議論があるからだ。
 在日コリアンの人権も表現の自由も共に守るため、川崎市の条例はいろいろな工夫をしている。 
 条例ではヘイト行為に対し勧告、命令、警察・検察への告発という3アウト方式≠とっている。市の警告に従わない確信的な行為に処罰を限定するためだ。これなら普通の人の言論が萎縮することはないと考えられる。
 市の裁量で科せる行政罰の選択肢もあったが、刑事罰を選び司法の判断を加えることで、公平性・透明性を担保している。
 条例では街頭デモを想定し、拡声器やプラカードなどの手段も示し差別的言動を禁止している。
さらに具体的にヘイト行為の類型を示し、在日コリアンに対する「出ていけ」とか「殺せ」とか「ゴキブリ」とか言った言葉を禁止した。
 足りないのは誹謗中傷して憎悪を煽る行為を類型にあげて禁止しなかった点で、今後の課題だ。ヘイト側は「朝鮮人は罪を犯しても処罰されない」などのデマを拡散し偏見を煽っている。関東大震災時のデマは、朝鮮人・中国人に対する偏見を増幅し、その後の戦争につながった。
 現在、やまゆり学園事件が起きた相模原市でも罰則付きの人権条例を検討中だ。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号
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2020年02月28日

自社の報道部にカメラを入れた 映画「さよならテレビ」が面白い 東海テレビ制作 全国で公開中=橋詰雅博

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 名古屋市に本社を構える東海テレビ制作のドキュメンタリー映画「さよならテレビ」を都内の劇場で見た。実は初日の1月2日12時30分の回で見るため劇場に行ったところ、立ち見のチケットまでも売れてしまい入れなかった。
 そばにいた正月休みを利用して秋田から来たという男性は「え―入れないの。うーん悔しい。仕方ない、時間を潰して17時30分の回で見るか」とぼやいていた。 
 この12時30分の回は土方宏史監督の舞台挨拶があるからそのせいもあって完売と思ったが、舞台挨拶がない午前中の回も完売だった。
 全国で公開中のこの映画は、東海テレビ開局60周年記念番組がベース。番組は2018年9月に放送エリアの愛知、岐阜、三重の3県で放送された。放送後に放送業界やメディア研究者の間でスゴイ内容という噂が広まり、番組を収録したDVDの上映会が密かに開かれたという。
 こんなに注目された理由は身内の報道部をありのままに撮影したからだ。監督の狙いは「テレビの今」を伝える。
 もっとたくさんの人に見てもらいたいと阿武野勝彦プロデュサーと土方監督は、新たな録画を32分加え映画版をつくった。ちなみに阿武野プロデュサーは取材対象に「タブーはない」が信条だ。
 当然ながら取材されるデスクや部員らは苛立った。そこで「マイクは机に置かない」「打ち合わせの撮影は許可を取る」「放送前に試写を行う」―この3つを監督と報道部が取り決めて本格撮影が始まった。もちろんこのやり取りも写っている。
 報道部を漫然と撮ってもつまらない。メリハリをつけるためフォーカスされたのが男3人。看板の夕方ニュース番組のメインキャスター兼アナウンサー、1年契約の中堅記者、番組制作会社から派遣された若い記者だ。
 アナは視聴率を上げることができずキャスターを下ろされ、テレビメディアでの娯楽ネタ偏重に疑問を持つ中堅記者は悶々と仕事を続け、若い記者は取材でヘマをやり1年でクビに。退職の日に上司から卒業≠ニ言われて花束を受け取った記者は「この経験を生かし、つぎ頑張りたい」と挨拶した。
 とりわけここまで写していいのかと思ったのが失業した若い元記者が「金がなくヤバイ。貸してくれませんか」と土方監督に頼むシーンだ(この場面、追加した録画部分ではないか)。
監督は2つ折りの財布から取り出した万札数枚を彼に渡した。引き上げる彼のうしろ姿は安堵の気持ちが現れているようにみえた。
 視聴率の上下に振り回される部内、ないがしろにされる権力の監視、正社員とそうでない者の待遇格差――自社の恥部≠堂々と見せた面白いドキュメンタリー映画だ。
「さよならテレビ」を2020年度JCJ賞候補作品として推したい。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号
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2020年02月27日

【植村札幌控訴審不当判決2】 判決文 悪意と蔑視に満ちる 被告こそ捏造者 真の民主主義守るため闘い続く=編集部

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 また、高裁判決は「各資料は、金学順氏の述べる出来事が一致しておらず、脚色・誇張が介在していることが疑われる」としたうえ、「日本軍が強制的に金学順氏を慰安婦にしたのではなく(金さんを)慰安婦にすることにより日本軍人から金銭を得ようとした継父に騙されて慰安婦になったと読み取ることが可能である」と、日本軍の関与を必死で薄めようと試みた。
単なる慰安婦とは
 極め付きは判決文の中で、植村記事を掲載した朝日新聞は「慰安婦狩り」の吉田証言を報じていたから「その一人がやっと具体的に名乗り出たというのであれば日本の戦争責任に関わる報道として価値が高い反面、単なる慰安婦が名乗り出たにすぎないというのであれば、報道価値が半減する」と断言したことだ。
 つまり高裁は、櫻井氏の持論である「慰安婦問題は朝日の捏造」「植村記事は挺身隊と強制連行を結び付ける意図だ」との主張を露骨に正当化したのである。
 法の番人である3人の裁判官が合議のうえ、判決文で「単なる慰安婦」という言葉を言い放つとは一体どういうことなのか。これほど「悪意と蔑視」に満ちた判決文を堂々と出して恥じない。これが歪んだ司法の現実であり、櫻井氏が歓迎する「報道の自由、言論の自由」の中身だ。そしてそれが植村訴訟で暴かれた現在の日本の民主主義のありようだ。
 だが、闘いの成果もあった。札幌、東京の植村訴訟一審、控訴審の闘いを通じて櫻井氏、西岡氏こそが「捏造者」であり、植村さんは「捏造記者」でないことが証明された。いま、2人は「口をつぐんでいる」。騒いでいるのは2人の口車に煽られた一部の人々だけだ。
 従軍慰安婦問題をめぐるバッシングは2014年、朝日新聞が吉田清治証言関係記事を「誤報」として取り消したことから巻き起こった。それは2007年、米ワシントン・ポスト紙に「日本軍に配置された『慰安婦』は『性奴隷』でなく公娼制度下の売春婦だ」と意見広告を出すなどした櫻井氏らが「慰安婦問題をなかったものにしよう」と仕掛けてきた「歴史戦」だと言えよう。
 だが、「いわゆる『従軍慰安婦』とは、かつての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのこと」であり、慰安婦犠牲者は日本軍に「性的慰安」の奉仕を強制され、被害と苦痛を訴える人々である。これが日本の政府公式見解であることを私たちは忘れない。日本ジャーナリスト会議は植村訴訟を今後も闘い抜いていくことを呼びかける。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月26日

【植村札幌控訴審不当判決1】 歪んだ司法を露呈 強引な「論評」認定で櫻井免責 「慰安婦」政府見解ふまえず=編集部 

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 元従軍慰安婦の証言を伝えた1991年の記事を、2014年に「捏造」と攻撃された元朝日新聞記者の植村隆さんが、「捏造記者」バッシングを煽ったジャーナリスト・櫻井よしこ氏や出版社3社を相手取った名誉棄損訴訟の札幌控訴審は2月6日、一審判決を支持して植村さんの訴えを棄却した。植村さんは判決後の記者会見で「不当判決であり、絶対に容認できない」と、上告の意向を表明した。
真実相当性どこに
 高裁判決は一審と同様に、3社の週刊誌などに載った櫻井氏の記事が植村さんの社会的評価を低下させたと認定する一方で、「櫻井氏が捏造と信じたことは公共の利害に関することで、理由がある」と名誉毀損の法理を捻じ曲げて真実相当性を認め、櫻井氏が裏付け取材すらせずに植村さんを「捏造記者」ときめつけ、バッシングを煽ったことを再び免責した。櫻井氏はこれを「報道の自由、言論の自由が守られた」と言うが、本当は何が守られたのか。
 一審判決は、櫻井記事によって植村さんの社会的評価が低下したと認め、櫻井記事の一部が事実でないことを認めたうえで植村さんの請求を退ける根拠として「櫻井氏が(植村)批判記事の内容を真実と信じる相当性はあった」とした。問題は書く側が「本当に取材や確認を尽くしたか」だ。記事は内容によっては人を傷つける。
 だからこそジャーナリスト、ジャーナリズムには報じることの公共性、公益性に加え、取材、確認を尽くすという「基本動作」が求められる。だが、冨田一彦裁判長、目代真理、宮崎純一郎の札幌高裁3裁判官は「資料などから十分に確認できる場合は本人への取材や確認を必ずしも必要としない」として櫻井記事の真実相当性を認定した。
櫻井が流布した嘘
 櫻井氏は、植村バッシング記事で@植村は義母の裁判に便宜を図るため記事を書いたA慰安婦と挺身隊を結び付けたB金学順さんの経歴を隠した、という3つの嘘を流布し、植村さんへの攻撃を煽った。植村さんや家族、北星学園に殺到した「殺す」「爆破する」などの脅迫や「売国奴」「国賊」などの罵倒がこの嘘によって引き起こされたことを我々は忘れない。そして札幌高裁は櫻井記事の@の嘘を事実の適示ではなく「論評である」とすり替えた。
 札幌高裁判決の特筆すべき点は、「ネトウヨ判決」と批判された一審ですら認定した「適示事実」のことごとくを「論評」と判断をすり替え「真実相当性」認定で「ジャーナリスト」櫻井氏を免責したことにある。これは名誉棄損の法理無視に加え司法が積み上げてきた真実相当性判断の枠組みをも大きく逸脱した、誤った判決と言わねばならない。
 その極致はわずか20ページの判決文の半分を占めた「真実相当性」についての裁判所判断の記述に凝縮されている。
本人取材「不要」と
 櫻井氏が植村批判の論拠とした資料は@91年8月15日付のハンギョレ新聞記事A金学順さんの91年の訴状B月刊「宝石」92年2月号掲載の臼杵敬子さん執筆の記事の3資料だが、高裁はこれを「推論の基礎となる資料が十分ある」と評価し、植村さん本人への取材の必要はないとした。
 だが、櫻井氏は3資料を自分に都合よくつまんで使っており@のハンギョレ新聞の記者やBの臼杵敬子さんに、陳述書で「櫻井氏は慰安婦の被害を伝える内容を曲解し、逆に使った」と批判を受けた。またAの金学順さんの訴状には櫻井氏主張の記述などなく、櫻井氏は植村さんの指摘で産経新聞と雑誌WiLLで訂正に追い込まれた。高裁判決は、櫻井免責の根拠とするためこの事実や経緯を無視した。
 高裁判決は櫻井氏の杜撰な「取材」を不問にしたことに加え、「慰安婦」や「強制連行」の定義や見解を随所で捻じ曲げた。「挺身隊」という言葉についても「91年当時、一義的に慰安婦の意味に用いられていたとは認められない」と判断した。だが本当にそうか。
 植村記事が書かれた91年頃は、韓国だけでなく日本でもマスメディアが「挺身隊の名のもとに」などと従軍慰安婦を表現するのは一般的だった。朝日だけでなく産経、読売など全マスコミが普通に使っていた。もちろん櫻井氏も例外ではなかった。「女子挺身勤労令」の規定する「挺身隊」の研究が本格化し始めたのもほぼ同時期であり、高裁の断定にはいささか無理があることを指摘しておく。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月25日

【編集長EYE】 特例法ある限り新聞社に希望ない=橋詰雅博

 米国の大手新聞が再編に突入している。全国紙USAトゥデーなどを発行する新聞大手ガネットは、日刊紙を含む450紙を傘下に持つ投資会社ニューメディア・インベストメント・グループによって昨年末に買収された。ガネットの社名は残るが、投資ファンドが600紙を束ねる全米トップの新聞社を誕生させた。
 74紙を抱えるトリビューン・パブリッシングも、ニューヨークのファンドが運営し、133紙を持つMNGエンタープライジズが求めた株式32%取得に応じた。合併は必至とみられている。再編を主導する投資ファンドは、合併で読者数が増えれば広告収入が上がると見込んでいる。
 7年前には米ワシントン・ポスト紙は、アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾスが買収した。ベゾスが紙媒体のデジタル化を推進した結果、100万を超す有料デジタル版読者を得て業績は回復した。
 質の高い報道と効率的な経営をどう両立させるかが課題だが、米大手新聞社は外部から資金を受け入れ経営不振を乗り切ろうと躍起だ。
 日本の新聞業界も部数激減に伴い業績は落ち込む一方である。19年の部数は3781万で、10年前と比べて1254万減った。売り上げも18年度1兆6600億円と04年度より7178億円失った。
 日本の新聞社も米国のように外部から資金を調達し経営を立て直すことができないのだろうか。
 1月下旬に都内で講演した「2025年のメディア」(文藝春秋)の著者の下山進さんは、こう解説した。
 「それを阻んでいるのは日刊新聞法です。1951年にできたこの特例法は、株式の譲渡を制限している。とはいっても事実上、株式の譲渡はダメというのが現実です。従って買収もされない。読売新聞グループ本社の山口寿一社長は日刊新聞法のおかげで報道の自由が守られていると主張するが、私は変化を阻んでいると思います」
 日本の新聞社はこのままではもたない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2020年02月24日

【映画の鏡】名作の舞台 今や犯罪地帯に化す「レ・ミゼラブル」移民少年と警察との衝突が思わぬ方向へ=今井潤

 この作品は冒頭から最後まで息をつく間もない緊張の連続する104分の問題作だ。去年のカンヌ映画祭で、韓国の「パラサイト」と最高賞パルムドールを競い、コンペ最大のショックと称賛を受けたのだ。
 ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台ともなったパリ郊外の団地は60年代にミドルクラス向けの住宅として建設された。しかし、高速道路が中止となり、陸の孤島の住宅は貧困化が進み、90年代以降は警察と若者の衝突が相次ぐようになった。今や移民や低所得者層が多く住む危険な犯罪地域と化している。
 団地の治安を取り締まるメンバーに配属されたのは北フランスから来たステファンだ。白人のリーダーは人種差別主義者、もうひとりの黒人警察官の3人でパトロールすることになった。
 ある日イッサという少年がロマのサーカス団からライオンの子どもを盗んだことが原因で、街のギャング同士が一触即発の騒動に発展してしまう。
 治安警察と少年グループはもみ合いになり、黒人警察官がイッサに発砲し、さらに追跡していくが、その一部始終が何者かのドローンで撮影されてしまう。混沌とした事態を収束したい治安警察だが、少年グループをめぐる騒動は思わぬ方向に進んでいく。
 それにしても、この作品に出てくる街のギャングの面構えはハリウッドの映画の役者を超え、グルジアかセルビアの役者の風貌を思い起させた。
(公開は2月28日(金)新宿武蔵野館、渋谷ルシネマほか)   
今井 潤


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2020年02月23日

【今週の風考計】2.23─千利休と古田織部が辿った数奇な運命

4年に一度の閏日の前日28日は「利休忌」でもあり、また「織部の日」でもある。まず「利休忌」で偲ばれる千利休は、武野紹鴎らに茶の湯を学び、信長、秀吉に仕えながら茶道の基となる「わび茶」を完成させ、<茶聖>とも称された。
 秀吉に理不尽な切腹を命じられ、天正19(1591)年2月28日自刃、享年70。今でも切腹は歴史的事実として流布している。

だが、1年前に読んだ中村修也『千利休─切腹と晩年の真実』(朝日新書)では、利休は切腹していないとの新説を打ち出している。というのも利休没後とされる1592年の秀吉の書状に、肥前・名護屋城(現在の佐賀県唐津市)で利休の茶を飲んだと書いてあるのを根拠に、利休は九州にかくまわれたのではないかという。
 秀吉が「朝鮮征伐」のために築いた名護屋城跡から、茶室の遺構が発見されている。しかも見つかった茶室は素朴でつつましく、利休が好んだ茶室にそっくりだったと推測されている。
2年前だったか、この名護屋城跡を見学したとき、高台から見晴らす玄界灘の沖には、青い海のかなたに対馬から釜山まで見通すことができた。こうした展望のある居室に座す秀吉は、思わしくない朝鮮の戦況に心鎮めるため、利休の点てる「わび茶」を喫したとの想像は、否が応でも真実味を帯びて広がってくる。
思えば千利休に魅せられて、唐木順三『千利休』(筑摩叢書)、野上弥生子『秀吉と利休』(新潮文庫)、井上靖『本覚坊遺文』(講談社文庫)、さらには山本兼一『利休にたずねよ』(PHP文芸文庫)など渉猟してきたが、中村修也さんの新説には驚かされた。

さて「織部の日」だが、千利休亡き後、秀吉の茶頭となった古田織部が、慶長4(1599)年、自分で焼いた茶器を用いて京都・伏見で茶会を開いた日に当たる。今から33年前に岐阜県土岐市が「織部の日」と制定した。
 ともあれ安土桃山時代に活躍した「へうげもの(瓢軽者)」戦国武将が、後に茶の湯の“天下一の宗匠”となるのだから驚く。だが織部は<大阪冬の陣>頃から徳川方の軍議秘密を豊臣側に漏らしたとして捕らえられ、慶長20(1615)年に切腹、享年72。流布されている千利休の運命と、くしくも同じ道を辿った。
興味津々、最新刊の伊東潤『茶聖』(幻冬舎)は、千利休をどう描いているのだろうか。利休と秀吉、二畳の茶室でどんな会話や駆け引きが展開されたのだろうか、さっそく読んでみよう。(2020/2/23)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月22日

【リアル北朝鮮】 国家存亡の問題と必死 新型肺炎の徹底予防=文聖姫

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。中国や韓国と接している北朝鮮も予防対策に必死だ。薬品や医療設備が不足していることもあって、まずは自国に感染者が入らないようにするための対策が講じられている。
 労働新聞1月29日付は、新型コロナウイルスの流行を防ぐ事業を「国家存亡と関わる重大な政治的問題」だと強調した。「すべての人々が新型コロナウイルス感染症と危険性、流行の深刻さを認識」すべきで、「徹底的に防ぐ」ようにと述べている。
 同紙によれば、各クラスの非常防疫指揮所や衛生防疫機関、治療予防機関、医学研究機関などで行う住民を対象とした医学的監視と診断、治療薬物の開発と関連した研究を積極的に後押しするのが課題だ。
 また、個人に対してはマスクの着用、手洗いの徹底、野生動物との接触回避、体を鍛えて抵抗力をつけることなどを奨励している。
 2003年、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、北朝鮮に長期滞在していた。その際もSARSの感染を防ぐための対策が徹底的に講じられていた。海外渡航者や国外からの出張帰りの人々は症状のあるなしにかかわらず、すべて10日間程度隔離された。症状が出ないことを確認して、やっと平壌に入ることができたほどだ。
 当時滞在していたホテルは閑散としていた。いつもなら5月の連休を利用してやってくる訪問団でにぎわうのに、一人も来なかった。
 今回もおそらく予防対策に必死だろう。「国家存亡と関わる」というほど深刻に受け止めていることは容易に推察できる。10日発朝鮮中央通信によれば、医療チームが毎日のように担当区域を回って教育や予防治療を行っているという。
 とにかく、北朝鮮としては「我が国に新型コロナウイルス感染症が絶対に入ってこないようにする」(労働新聞)ことが、何より重視されていると思う。
  文聖姫(ジャーナリスト・博士)


posted by JCJ at 14:55 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月21日

【リレー時評】気候変動に鈍感きわまりない小泉環境相=中村梧郎

 パリの地球温暖化防止会議。「化石賞」は再び日本に来た。小泉進次郎の演説は「具体性のかけらもない」と嘲笑された。
 小泉大臣は1月末、ベトナムでの石炭火力発電に反対だと突然ブチあげた。CO2問題で世界が日本を批判するからと。
 だがその真相に驚く。三菱商事によるブンアン石炭火力発電所計画は日本が融資するが、建設は中国や米国の企業が担うから(ウマ味がない)というだけのことなのだ。
 ベトナムは、福島を教訓に日本の原発を拒んだ。ならば石炭火力発電がお得だと、三菱、丸紅、住友が5か所の建設計画を進めた。温暖化批判に応えるというのなら日本はその全てを撤回すべきなのだ。インドネシアへの輸出もやめるしかない。
 より容易なのは進次郎氏の地元、横須賀での石炭火力計画をまずは止めること。そのうえで国内13基の停止、25か所で進む計画の破棄だ。
 ベトナムは日本の原発予定地だったニントゥアンを、太陽光と風力発電のメッカに変えている。

 おりしも1月17日、広島高裁は伊方原発3号機の運転禁止を命じた。原子力規制委員会の判断は誤りと。判決は、瀬戸内の中央構造線や阿蘇噴火の危険想定が過小だとした。伊方3号機は1月末、電源ミスで冷却が43分間止まる重大事故を起こした。12日には制御棒1体が7時間も炉から抜かれていたりもした。
 伊方原発は愛媛県・佐多岬にある。事故は真夜中でも起こり得る。電気のない暗闇で5千余の岬の住民は逃げ場がない。高齢者や病人はどうなるのか。福島では強い放射能で自衛隊が出動を躊躇、双葉病院の患者50人が死亡した。伊方は廃炉にするしかないのだ。
 アメリカの規制委は住民の避難路が不十分、となれば稼働を禁止する。一方、日本の規制委は「それは自治体の責任。住民避難には関知しない」という。再稼働を認めるだけの規制委。‶寄生∴マだとの揶揄も囁かれる。
 今後30年以内に80%の確率で発生する南海トラフ地震。首都直下地震もある。まさに地震大国日本なのに、3・11の苦痛を教訓としない。
 昨年、大飯や玄海、川内原発の稼働が先送りされた。対テロ施設である送水ポンプが未完成だから、との理由だった。だがこれも子供だましだ。テロリストの兵器は今や無人攻撃機。米軍はアフガンなどでの殺戮をこれで続けた。イランのソレイマニ司令官殺害も無人機のロケット弾だ。
 無人機を量産輸出するのは中国である。SIPRIによれば中国は世界第二の武器輸出国。中国航空工業集団がその主役だ。テロリストが無人機を入手して原発を狙えば核爆発を誘発しうる。「送水ポンプで安全」というのはほぼ幻想である。
 核兵器と原発、CO2は地球環境を危機に曝している。だが小泉環境相は事態を無視したままパフォーマンスばかり。それ結婚だ、妊娠だ、育休だ、にはもうウンザリなのだ。
中村梧郎

posted by JCJ at 11:38 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月20日

【沖縄リポート】 元少年兵が語る日本軍への怖さ=浦島悦子

 やんばる(沖縄島北部)の山々が緋寒桜のピンクに染まる2月1日、私は大宜味村の山間にある上原集落へと車を走らせた。
 75年前の沖縄戦時、15〜16歳のやんばるの少年たちが駆り出された「護郷隊」(遊撃隊)の元隊員で、同集落に住む瑞慶山良光さん(91歳)が、戦死した69人の戦友を偲んで自宅の裏山に植え育てた桜を「観る会」、及び、瑞慶山さんも出演するドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」(三上智恵・大矢英代共同監督、2018年公開。文化庁映画賞など8つの賞を受賞)の上映(上原公民館にて)などが行われた。
 翌2日には、瑞慶山さんら3人の元隊員とともに、第二護郷隊が配置された恩納岳の激戦地を巡るフィールドワークと「伝えたい第二護郷隊少年兵の体験」シンポジウム(進行:三上監督。恩納村博物館にて)が開催され、沖縄内外の100人余が参加した。
 スパイやゲリラを強要され、爆撃で友人の体が吹き飛び、病気で動けない友人が上官に処置(殺害)されるのを目前にした少年たちの体験はあまりにも壮絶かつ過酷だ。瑞慶山さんは帰郷して2〜3年後に戦争PTSDを発症(戦時と同じ精神状態で匍匐前進したり大声を上げて暴れる)、「兵隊幽霊」と呼ばれて自宅内の「牢屋」や精神病院に閉じ込められたという。今の穏やかな笑顔からは想像もつかないが、底なし沼のような心の闇を乗り越えてきた長い道のりがあったのだ。
 同じく元隊員の宮城清助さん(国頭村出身、92歳)は「自分たちは騙されていた。軍隊は住民を守らない。軍隊は軍隊しか守らないというのが戦争の教訓だ」と語った。
 三上監督は映画公開後、さらに取材を重ねて発行した新刊『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書。2月発行)の冒頭で次のように述べる。「軍隊が来れば必ず情報機関が入り込み、住民を巻き込んだ『秘密戦』が始まる」。彼女が映画や本で世に問うたのは、「陰惨な秘密戦」=「スパイリスト」による住民虐殺など、敵軍より怖い自国軍の実態だ。当時の日本軍は同様の戦争を全国で行う準備を進めていた。
宮古・八重山に自衛隊基地が次々に造られていくいま、「私が戦慄する危機(同著)」はやがて全国に及ぶだろう。その警鐘を聞いてほしい。
浦島悦子

posted by JCJ at 10:27 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月19日

【メディア気象台】1月下旬から2月初旬=編集部

◇NHK、まとめサイトを提訴
京都アニメーションの放火殺人事件をめぐり、ネット上の情報をまとめたサイトが虚偽の情報・拡散したとして、NHKは24日、サイトの編集長を相手取り700万円と同サイトでの謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。問題のサイトは「LH MAGAZINE」。事件発生後まもなく、NHKのディレクターが容疑者の遺留品を回収しているかのように加工されたNHKニュース映像の画像を掲載し、「なんで警察が来る前に勝手に回収してんだよ」などの投稿を引用し拡散した。(「朝日」1月25日付ほか)
◇紙と電子合わせた出版、前年比増
出版科学研究所は24日、2019年の出版市場(紙と電子の合算)が前年比0.2%増の1兆5432億円だったと発表した。14年に紙と電子を合算した出版市場統計を開始して以来、初めて前年比プラス成長となった。(「毎日」1月25日付ほか)
◇「写真から黒人を削除」批判
スイス・ダボス会議で24日に閉幕した世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」に参加した若者の環境活動家5人の集合写真をめぐり、黒人女性でウガンダ出身のバネッサ・ナカテさん(23)だけトリミングして配信した米通信社APに「人種差別的」と批判が集まっている。APは英メディアに「あくまで構図の問題だった」と主張し、ナカテさんの後ろに建物が写り込んでいたため、締め切り時間が迫る中でトリミングしたと釈明している。(「東京」1月26日付ほか)
◇NHK受信料の追加値下げ要請〜総務相意見書
高市早苗総務相は5日、NHKに受信料の追加値下げなどを求める意見書をまとめた。受信料は2020年度までに、値下げや支払い免除対象拡大などで、18年度受信料収入の6%を還元することが決まっている。総務相意見書では、NHKの19年度末の繰越金見通しが1千億円に上ることなどから「6%相当の還元にとどまらず、受信料の在り方について不断に検討する必要がある」と指摘している。(「しんぶん赤旗」2月7日付ほか)
◇遺族意向で氏名非公表〜黒岩神奈川県知事
黒岩祐治神奈川県知事は6日、斜面崩落事故で亡くなった女子生徒の氏名が公表されていないことについて、「ご家族が公表を望まない気持ちが強いと聞いており、発表を差し控えている」と述べた。知事は個人的な考えと断った上で「情報は正しく出していくことが基本。本来はただちに(氏名を)発表すべきだ」と強調。一方で「国の統一的な公表基準がまだできていない」と理解を求めた。(「神奈川」2月7日付ほか)
◇ヘイト犯罪対策求め、NGOが政府に署名提出
在日コリアンの虐殺宣言に爆破予告と、川崎市の多文化交流施設「市ふれあい館」を標的にヘイトクライム(差別に基づく犯罪)が立て続けに起きている問題で、人種差別撤廃に取り組む非政府組織(NGO)「外国人人権法連絡会」は6日、さらなる差別と犯罪の抑止のため早急なヘイトクライム対策を求める署名を政府に提出した。同会の師岡康子弁護士は、相次ぐ脅迫は明白かつ危険なヘイトスピーチだと指摘。政府には人種差別撤廃条約とヘイトスピーチ解消法に基づき非難声明を出し、継続しているヘイトクライムを終了させる義務があると強調した。(「神奈川」2月7日付)
編集部

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2020年02月17日

「桜」疑惑深まる 醜態さらす官僚 国民の「知る権利」守れ=編集部

 「疑惑」発覚のたび「丁寧な説明をしてまいりたい」と述べてきた安倍首相は、「桜を見る会」疑惑でも、「丁寧な」説明も対応も果たさずに臨時国会閉会で幕引きを図った。だが追及は越年し、年明けの1月14日、憲法学者ら13人が安倍首相を背任の疑いで東京地検に告発。16日には23回目の野党合同追及本部のヒアリングが開かれ、20日には通常国会が始まった。改めて問題を整理しておこう。
 桜を見る会と前夜祭の後援会員ら大量招待と供応は、公職選挙法違反(買収)疑惑をはらむ。前夜祭には、実際の費用と会費5千円との差額の問題があり、安倍事務所が差額を負担なら公選法(寄付行為)違反、ホテル(ニューオータニ)側が差額を負担なら贈収賄だ。
 安倍首相は「安倍事務所が一人5千円を集金してホテル名義の領収書を渡し、集金した現金はその場でホテルに渡した」(11月15日)と説明した。だが参加者の「領収書はもらっていない」との声もある「ホテル名義の領収書発行」は代金の事前支払いが大前提だが、安倍事務所の政治資金収支報告書に「支払い」の記載はない。政治資金規正法違反(不記載)疑惑だ。
 「桜を見る会」は公的行事。19年度の予算は1767万円だが、実際の支出は5519万円と約3倍だ。首相の立場を利用した不正支出が疑われ、公的行事の私物化疑惑もある。
「昭恵枠」は、公私混同の象徴だ。安倍政権は森友事件に続き、「昭恵夫人は私人」と閣議決定したが、共産党の調査によると「昭恵枠の招待者は7年間の累計で143人」に及ぶ。会の招待状も同様だ。安倍事務所は2月中に後援者らに案内状を送っていたが、政府の招待状発送は3月。会当日の開門前から園内で記念撮影させる安倍夫妻の後援者優遇も公私混同だ。
 新年を迎え内閣府が公文書管理法に違反して、13〜17年度の招待者名簿を「行政文書ファイル管理簿」に記載せず、廃棄簿への記載や手続きを無視した名簿廃棄が判明。安倍政権の支えは、内閣府などの忖度官僚の法を無視した公文書管理と、証拠の公文書廃棄や改竄であることが明るみに出た。違反を認めてなお逃げ切りを図る安倍政権追及の核心は国民の「知る権利」を守る闘いだ。 
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月16日

【今週の風考計】2.16─新型肝炎とフェイクが作り出す「現実」

新型コロナウイルスによる肺炎は、クルーズ船内での感染者285人に加え、北海道から沖縄まで日本国内を縦断し11都道府県の各地で感染者53人、死者1人まで出ている。世界でも中国に続く第2位の338人という感染者数だ。もう水際作戦どころか、「国内感染の大流行」を想定し、緊急対策に全力を挙げるときだ。

ところが加藤勝信・厚労相は、国内感染の広がりを否定し続けている。この間、安倍政権は何をしてきたか。正確な情報を公開せず、クルーズ船の乗客を事実上の監禁状態に置き、船内感染を拡大させてきた。
 2週間たって、やっと政府は船内乗客のPCR検査を順次に実施し、70歳以上の高齢者は陰性なら下船を許可したが、多くの人は不安な状態のまま放置・監禁されている。
国内でも、これまで政府はPCR検査キットが高価なうえ検査機関が足りないという理由で、中国渡航歴がある人に限定して検査してきた。だが実際は「万単位の検査を1週間で可能」という証言まで、民間診療機関や医薬業界から出てきている。やっと検査の限定条件は外したが、判断は自治体任せ、保険適用も検討せず、感染した労働者の休業補償もなし。

さらに感染者の人数を隠ぺいするため、政府は「日本の感染者数からクルーズ船の乗客を除くよう」WHOに提案までしている。WHOのテドロス事務局長は、<WHOが主導する新型コロナウイルス対策に1000万ドルを拠出してくれた日本に感謝>とツイートしているから、人数減らし工作の効果が透けて見える。
 1000万ドル(11億円)も拠出できるのなら、まず先に日本国民のPCR検査や医療・治療体制の補充に充てるべきではないか。国民を愚弄するのもいいかげんにしろ。
この1カ月、安倍首相は「桜を見る会」など、都合の悪い事実やデータは隠滅し、違法行為を消してしまう「フェイク」手法を続けてきた。いまや新型コロナ肺炎への対応にまで持ち込み、事態を隠し民間からの協力を妨げてきたと言わざるを得ない。
 <鯛は頭から腐る>の例え通り、トップがそうだから、他にも改ざん隠ぺいがはびこっている。防衛相まで辺野古沖にある「マヨネーズ以下の絹豆腐並み」の埋め立て軟弱地盤データを隠ぺいする。さらに日本原発は敦賀原発2号炉の建屋直下にある断層が「活断層の可能性がある」という調査資料を改ざん。もう「フェイク」の拡がりは底なしだ。

山腰修三さんの<メディア私評>(朝日2/14付)が指摘しているが、こうした隠ぺい・改ざんによる「フェイク」は、「フェイク」に沿った新たな「現実」を、能動的に作りだす恐ろしさである。
 例えば「反社会的勢力」の参加が問われると、「反社は定義困難」と閣議決定される。質問通告後に対象とされた文書がシュレッダーにかけられる。「桜を見る会」に参加したとされる人々が自分のブログ記事を削除する。
 これこそ事実・真実を抹消してしまう「ポスト真実」の恐怖である。政治家・官僚だけの問題ではない。メディアを含め、私たち一人ひとりに関わる深刻な問題である。(2020/2/16)
posted by JCJ at 09:25 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月13日

自民 新ポスターで改憲PR 首相「任期中」強調 市民団体 発議反対署名スタート=丸山重威

 2020年を迎えた政局は、「桜を見る会」問題のほかに「カジノ疑獄」「前法相夫妻の公選法違反」に火がつき、自衛隊派遣に踏み切った中東情勢も予断を許さない事態だ。しかし、安倍首相は、新春所感、伊勢記者会見で、改めて「任期中の改憲」を叫び、自民党は「改憲ポスター」を作成、改憲ムードを駆り立てるのに躍起だ。
 一方、憲法審査会を動かさなかった野党と市民は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「九条の会」など4団体による「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけて、新たに「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」の署名を開始。改憲勢力と地域で全面対決している。
国民の声と強弁
 首相の年頭所感では、「未来をしっかりと見据えながらこの国の形に関わる大きな改革を進めていく。その先にあるのが憲法改正」と表明した。
 第2次政権での年頭所感は8回目だが、憲法改正に言及するのは14年以来2回目で、自民党総裁任期が21年9月と迫る中、改憲姿勢を改めて鮮明にした。6日の伊勢神宮での記者会見でも「私自身の手で成し遂げていく考えには全く揺らぎはない」と強調。「参院選や最近の世論調査でも国民の声は改憲議論を前に進めよということ」「国会議員として改憲への国民的意識の高まりを無視することはできない」などと強弁した。
 さらに首相は、12日のNHK番組で、衆院解散・総選挙に関して「今は考えていない」としながら「解散すべき時が来たと思えば解散に躊躇はない」と発言。「補正予算を上げたあと、野党の準備が整わないうちに解散するのではないか」との観測も浮かんでいる。
国会は問題山積
 自民党が憲法改正を訴えるポスターを作るのは初めてで、キャッチコピーはともに「憲法改正の主役は、あなたです」。草原を背景にしたものと男女のイラストを配したものの2種類で、草原のポスターでは「話し合おう!考えよう!」、イラストのポスターは、「さあ、みんなで考えよう」と訴え、各4万枚を作り1月末から自民党の憲法集会などで活用する。
 平沢勝栄広報本部長は「一般の国民の理解をいただくには、もっとムードを盛り上げていく必要がある」と語り、安倍首相を起用しなかった理由を「憲法改正は首相がやるというより、国民がやることだ」と説明した。
丸山重威
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月12日

【イベント案内】永江朗氏・講演会のお知らせ

なぜヘイト本が作られ売られるのか
─出版倫理と人権─

人格を傷つけ‶憎悪≠あおるヘイト本─なぜ本屋に並ぶのか!
書き手・出版社・取次・書店の現場を取材し、
「売れればいい」で通る出版産業の欠陥を炙りだす。
あらためて〈出版倫理と人権〉について鋭く問う。

講演:永江 朗
1958年生まれ。ライター。最新刊『私は本屋が好きでした─あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス)

日時:2月21日 (金) 18:30開会(18:15〜開場)
場所:YMCAアジア青少年センター
東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎03-3233-0611
アクセス地図 https://www.confetti-web.com/site_map.php?site_code=2356
参加費:800円(会員・学生500円)
チラシPDF版出版部会2・21永江 朗氏講演会チラシ(完全版).pdf

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2020年02月11日

【リレー時評】 「サンデーモーニング」新春特集は出色=吉原功

 1月5日、TBSサンデーモーニングは時間を延長して特集「幸せになれない時代―分断と格差 深まる世界」を放映。お笑いやオリンピック企画の多い新春番組の中で、現代社会を深く見つめた硬派番組として出色だった。
 特集は、チリ、フランス、メキシコ、香港などの大規模な街頭デモの様子を流したあと、「国民所得が上がっているのに幸福度は低下」している米国を、街頭インタビューを交えながら紹介。
そのなかで保守系ラジオのDJ A・ジョーンズの場面は衝撃的だ。「私は25年間、情報戦争で闘い、叫んできた」という彼の叫びはSNSやケーブルTVでも流れ、数百万人の視聴者がいるという。「トランプ大統領には民主党を脅かす独裁者になってほしい」「彼の番組は人生を変えてくれます。真実を教えてくれるからです」との声を拾う。
「情報戦争」という用語は日本右翼の「歴史戦」を彷彿とさせる。いずれも事実や真実は問題ではなく「勝つ」ことが目的。
 ドイツで急激に支持を広げている、経済格差に苦しむ旧東独に基礎をおく右翼政党AfDも同じく衝撃的だ。「ヒトラーは絶対悪ではない」と、かつて発言した党首は「我々が国境を守らなければ歴史的に価値の高い文化が破壊される」という。
 哲学者内山節氏は「どう展開するか解らない混沌の時代へ歴史は向かっている」という。番組はその主な要因に次の5点をあげる。
 「経済格差」「移民と難民」「人種差別」「民主化要求」「温暖化問題への対応」。これを受けコメンテーターの寺島実郎が<冷静終了後30年、民族・宗教・格差問題が吹き荒れている。とりわけトランプ政権下で株価が4割上がったが、金融経済の肥大化で、実質GDPの4倍を超すマネーゲームが展開され、その恩恵を受ける人と全く関係のない人のギャップが格差を生んでいる>
と核心をつく。
 資産上位26人の資産総計150兆円が世界の下位38億人の総資産に相当(オックスファム、2019年)するという、目の眩むような格差を生んだのはアメリカ起源の新自由主義と番組は指摘、トリクルダウンという喧伝はウソだったと指摘、このようなシステムを変えなければいけないと結論する。
 さらに、S・フロイトやE・フロムの「成長欲求」と「退行欲求」の葛藤理論を紹介しつつ、「いままでの成長の流れから退行の流れに歴史の逆行が始まった」「今は成熟拒否の世界」という加藤諦三氏の言を紹介し、さらに次のようなコメントを結論的に示す。「アメリカ・ファースト」も「EU離脱」も「軍事力拡大」も、「フェイク・暴言」も無意識の退行であり幼児化である。
 この特集は世界各地に取材し、街頭の人々にもインタビューしてその声を拾っている。番組制作費が削減されている民放局作としても評価できよう。NHKにのみ放送予算が集中している現在の構造を再編すべきときではなかろうか。
吉原功
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

posted by JCJ at 11:13 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月10日

【リアル北朝鮮】 今年最初の視察は肥料工場 金委員長「食料」アピールか=文聖姫

 新年早々、イラン・イスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官が米軍のドローン攻撃によって殺害されたとの衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。イランは報復措置としてイラクにある米軍拠点を攻撃したが、米政府は軍事力を行使せず、寸でのところで軍事衝突は回避された。北朝鮮はこの事態をどう見ているのか。
 国営・朝鮮中央通信は11日、ソレイマニ殺害からイランの米軍基地攻撃に至るまでの出来事を客観的に報じたが、いまのところ北朝鮮政府の見解などは発表していない。米国をあからさまに非難することもしていない。
 また、潜伏して表に出てこないのでは?という大方の予想を裏切って、金正恩・朝鮮労働党委員長はソレイマニ殺害後に公の場に堂々と姿を現した。7日発朝鮮中央通信が、金委員長の肥料工場建設現場の視察を報じたのである。
 昨年12月28〜31日、北朝鮮の平壌では朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会が開かれた。事前に「重大な問題を決定する」と予告していた総会では、金委員長が「世界は遠からず朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新たな戦略兵器を目撃することになる」と宣言した。新たな戦略兵器とは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を指すのではないかと言われている。
 安保面ばかりが注目されたが、実はこの総会は、米国との交渉膠着が長引くことを予想して、制裁下でいかに難関を突破するかを協議する場であったと筆者はみている。結論的に言うと、金委員長は「正面突破戦」で難関を克服するよう全国民に呼び掛けた。
 そして、今年最初に視察する場所として選んだのが肥料工場の建設現場だった。最高指導者が食料問題解決のためにいかに尽力しているかをアピールする面もあろう。
 国の状況が目に見える形で悪くなっていると、総会で率直に語った金委員長。北朝鮮は今年、どう動くのか。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号


posted by JCJ at 09:52 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月09日

【今週の風考計】2.9─いまも思いだす石牟礼道子さんのオーラ

◆『苦海浄土─わが水俣病』(講談社)の出版から50年、著者の石牟礼道子さんが90歳で亡くなって、この10日で丸2年になる。石牟礼さんは、チッソという会社が熊本不知火の海″を有機水銀で汚し、人間と自然を破壊した水俣病のおぞましさを告発し続けてきた。かつ苦しむ人々に寄り添い、一緒に悶えながら、見捨てられた魂の救済に生涯をささげてきた。
◆8日に開かれた講演会<石牟礼道子の世界>に参加し、語る米本浩二さんの話に聴き入りながら、あらためて「人間の尊厳とは、命の回復とは、…」考えこまざるを得なかった。
 水俣病の発生が公式に確認されたのが1956年5月、いまから64年前だ。『苦海浄土』の第三章<ゆき女きき書き>の「もう一ぺん人間に」と題された掌作の中に、次のような「ゆき」がつぶやく叙述がある。

◆<人間な死ねばまた人間に生まれてくっとじゃろうか。うちゃやっぱり、ほかのもんに生まれ替わらず、人間に生まれ替わってきたがよか。うちゃもういっぺん、じいちゃんと舟で海にゆこうたる。うちがワキ櫓ば漕いで、じいちゃんがトモ櫓ば漕いで二丁櫓で。漁師の嫁御になって天草から渡ってきたんじゃもん。>

◆「ゆき」が語る、この「じいちゃん」茂平も、そして不知火の海″沿岸の住民も、長い間なにも知らされずに、サワラやコノシロなどの魚を朝昼晩とわず食べてきた。それが猫の狂い死にから漁民の手足の痺れへと広がり、ついには足腰が立たず、目も弱くなり、言葉ももつれるようになった。まさに神経系疾患を発症し「水俣死民」を誕生させたのだ。
◆他人の苦しみに深く感応し、見過ごせない石牟礼さんは「悶え神」として患者に寄り添い、漆黒ののぼり旗に白抜きで「怨」の文字を刻み、水俣病闘争に「加勢」する。
<水俣病事件の全様相は、…公害問題あるいは環境問題という概念ではくくりきれない様相をもって、この国の近代の肉質がそこでは根底的に問われている>
との認識に立ち、3年にわたって水俣―東京間を往復し、座り込みや「死民」のゼッケンをつけての街頭行進に投入する。しかし金銭的解決に矮小化されていく道筋に、満たされぬ石牟礼さんの「魂」は、新たな地平に向けて歩みだす。

◆さて『苦海浄土』が講談社文庫に収載・刊行されたのは、1972年12月15日。「水俣病闘争」の激しい時期だ。この文庫化作業にあたった女性編集者から、「石牟礼さんは、原本に赤字をいっぱい入れてきた。それを整理して送り返すと、またも赤字を入れてくる」苦労を聞いた。それだけ文字に「魂」を、入れ込もうとしていたことが分かる。
◆その後、彼女から引き継いで担当することになり、重版の連絡や読者からの問い合わせなど、電話や手紙でコンタクトしていたが、1990年代中頃だったか、石牟礼さんが講演で上京した折、お会いすることになった。短い時間、何を話したかなど問題でなく、石牟礼さんの体から、何かオーラのような光が発しているのを感じてしまい、身がすくんだことが、今でも忘れられない。(2020/2/9)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月08日

2020年核廃絶へ正念場 初のNY原水禁世界大会 核禁止条約発効できるか=松村真澄

賞状授与.jpg
 日本のメディアは、五輪で大騒ぎしているが、2020年は、広島・長崎への原爆投下から75年の節目。在京紙では、唯一、東京新聞の連載、「2020年 核廃絶の『期限』」が目立った。このタイトル「期限」の由来は、03年、平和市長会議が「2020年ビジョン」を決議、「被爆者が存命のうちに核なき世界の達成」と訴えたのに基づく。1982年設立した同会議は、163カ国・地域、7861都市が参加している。
高まる国際世論
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は2017年のノーベル平和賞を受賞。これは核兵器禁止への国際世論の高まりを象徴していた。
 条約は、「核兵器の開発、実験、生産、製造、使用、保有」に加え「使用するとの脅威」をも禁止。50カ国が批准すれば発効するが、現在34カ国が批准しており、ICANなどは五輪期間中の発効を目指して各国に働きかけている。
 原水禁世界大会は今年初めてニューヨークで開催されることになった。呼びかけたのは、日本の原水協、原水禁、日本被団協の3団体のほか、米国のフレンズ奉仕委員会、英国の核軍縮キャンペーン、国際平和ビューロー、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)など。核不拡散条約(NPT)再検討会議の開催に合わせ、4月24日から26日まで、マンハッタンで大会を開き、集会やデモ、「ヒバクシャ国際署名」提出などを行う。  日本国内ではすでに代表の派遣運動が始まっている。
情勢はきびしい
 しかし、NPT発効50年といいながら、世界の核情勢は極めて厳しい。昨年5月の準備委員会では、イスラエルの核保有をめぐり米国が拒否、本年の本会議も前回15年会議同様、決裂の危険性が高いといわれている。
 米国、ロシアは新型核兵器を開発し、中国、インド、パキスタンは核兵器を増強、北朝鮮も核の力を強化しつつある。
 全ての加盟国に誠実に核軍縮交渉を義務づけたNPT6条に基づく中距離核戦力(INF)全廃条約は昨年失効、包括的核実験禁止条約(CTBT)は成立から20年を経て今も未発効だ。
 核保有国と非保有国との溝が深まる中、日本政府は「両者の橋渡しをする」と言いながら、核兵器禁止条約に反対し、唯一の戦争被爆国としての責任を放棄している。
 昨年日本を訪れたローマ教皇フランシスコは、核兵器禁止条約発効の必要性を述べ、被爆者と時間をかけて言葉を交わし、「核兵器使用と同様、保有も道義に反する」と語った。教皇は「被爆者の預言的な声が何よりも次世代への警告として役立つ」とも強調した。
 今年8月の原爆投下75年の広島の式典には国連グテレス事務総長が参加、IOCのバッハ会長も聖火リレーに合わせ5月に広島を訪問するという。ローマ教皇がつないだ平和のメッセージ・リレーは、2020年にも引き継がれる。
 日本政府も昨年の国連総会には「未来指向型の対話」を提案、核軍縮賢人会議の議長レポートは核兵器廃絶のための「困難な問題」への検討と対話を呼びかけた。日本の市民社会は政府に、この立場を更に前進させ、実効的に具体化するよう求めなければならない。
「核の傘」は戦争の「抑止」ではなく、相手国の胸元に突きつけた刃であり、相手国の軍拡を促すことだ。
 2020年は、核廃絶へ向けての正念場だ。
松村真澄(ピースボート国際担当)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月07日

植村札幌控訴審 司法の歪みここまで不当判決に抗議 日本ジャーナリスト会議声明

 韓国で初めて名乗り出た従軍慰安婦の証言を1991年に記事にした元朝日新聞記者植村隆さんが、自身を「捏造」記者と攻撃した櫻井よしこ氏と週刊新潮、週刊ダイヤモンド、月刊WiLLを発行するワックの出版3社を訴え、名誉回復を求めた植村訴訟控訴審で札幌高裁(冨田一彦裁判長)は2月6日、植村さんの訴えを退ける不当判決を言い渡した。
 植村さんへのいわれのないバッシングは記事執筆から四半世紀後の2014年、朝日新聞が「韓国・済州島で慰安婦狩りをした」との吉田清治証言関係記事を「誤報」として取り消したことから巻き起こった。櫻井氏らはこれを「朝日新聞が慰安婦問題を捏造した」とすり替え、「慰安婦問題はなかった」と歴史的事実をゆがめ、歴史認識を書き変える手段として植村さんへの個人攻撃を展開した。その結果、植村さんは「慰安婦問題捏造記者」とレッテルを貼られ「家族を殺す」などの脅迫をはじめとする卑劣な攻撃にさらされて本件提訴に至った。
 だが、櫻井氏らの主張は真実か。慰安婦についての日本政府の公式定義は「いわゆる『従軍慰安婦』とは、かつての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのこと」であり、慰安婦犠牲者は日本軍に「性的慰安」の奉仕を強制され、被害と苦痛を訴える人々である。だからこそ日本政府は被害者に橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の各総理大臣が署名した手紙を送り、「おわびと反省の気持ち」を表明したのである。
 一方、櫻井氏らは2007年、米紙ワシントン・ポストに「日本軍に配置された『慰安婦』は『性奴隷』でなく公娼制度の下で働いていた『売春婦』だ」との意見広告を掲載している。もちろん櫻井氏らがそういう意見を持つのは「自由」だが、裁判所が国の公式見解も歴史認識も踏まえず、名誉棄損の法理すら無視した「真実相当性」の認定で櫻井氏らを免責するのは根本的な誤りであり、司法の歪みと言わざるをえない。
 このような判決がまかり通れば、言論の自由、ジャーナリズムはおろか日本の民主主義が死滅する。札幌高裁の不当判決に強く抗議するとともに、日本ジャーナリスト会議は今後も植村さんを支援し、歴史修正主義と闘っていく。
                                       2020年2月7日
                                 日本ジャーナリスト会議(JCJ)

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