2020年02月05日

【月刊マスコミ評・出版】 ルポ「コンビニ絶望経営」に注目=荒屋敷 宏

 第2次以降安倍内閣は、わずか7年間に消費税率5%から8%に、さらに10%への2度にわたる増税で合計13兆円もの大増税を強行した。2020年の日本経済は、「令和不況」の足音が早くも聞こえてきている。
 ジャーナリストの斎藤貴男氏が「世界」(岩波書店)1月号と2月号に発表したルポ「コンビニ絶望経営」(上・下)に注目した。「セブン−イレブン」東日本橋一丁目店のオーナー店長の死の謎を追うところから始まる。店長は、「9年間、365日24時間営業の店を年中無休で切り盛りし、多額の借金を背負った挙げ句、最愛の息子を失い、ついには縁もゆかりもない土地で、非業の死を遂げた」という。
 コンビニ経営の実情は、悲惨である。コンビニオーナーの死亡率が他の業種に比べて異常に高いという。妻が朝7時から夜10時、夫が夕方6時から翌朝8時、長男や次男も駆り出す家族経営となり、「家族全員が販売期限の切れた廃棄弁当を食べ、仕事の合間を縫っては、バックヤードに敷いた段ボールで仮眠をとった」との実情は、すさまじい。
 コンビニの本部社員が商品発注の締め切り時間ギリギリにやってきて、恵方巻などを「無断発注」し、大量仕入れを強要する等々。今年も予想される恵方巻の大量廃棄を生み出しているのは、コンビニ本部なのだ。加盟店の向かいに加盟店を出店させて、「共食い」を生み出すのもコンビニ本部。斎藤氏は、コンビニ店主が消費税の納税額分を回転資金に流用してしまいがちであることを指摘している。
 フランチャイズ契約とは、斎藤氏の言葉を借りれば、「本部による加盟店の一方的な搾取」「奴隷契約」だ。斎藤氏は、「日本にはフランチャイズ契約をきちんと規制する法整備がなされていない現実をご存じか」と提起している。本部に反乱を起こしたオーナーや普通の小売業と異なる「コンビニ会計」の話は、「世界」2月号に登場する。
 ほかに、読み応えがあったのは、「週刊朝日」1月17日号、元文部科学事務次官の前川喜平氏と作家の桐野夏生氏の対談「若者荒廃に危機感 現代の深層に何が?」だった。なぜ荒廃しているのか。桐野氏が「一つの大きなほころびの中で、若い女性も男性もあがいているような感じがするんですよ」と言えば、前川氏は「私が非常に危機感を抱いているのが、国全体として人を大切にしない政治がずっと続いていることです」と語る。現実をいかにリアルに見るか。課題は、そこにあると思う。
 荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

posted by JCJ at 08:55 | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする