2020年02月26日

【植村札幌控訴審不当判決1】 歪んだ司法を露呈 強引な「論評」認定で櫻井免責 「慰安婦」政府見解ふまえず=編集部 

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 元従軍慰安婦の証言を伝えた1991年の記事を、2014年に「捏造」と攻撃された元朝日新聞記者の植村隆さんが、「捏造記者」バッシングを煽ったジャーナリスト・櫻井よしこ氏や出版社3社を相手取った名誉棄損訴訟の札幌控訴審は2月6日、一審判決を支持して植村さんの訴えを棄却した。植村さんは判決後の記者会見で「不当判決であり、絶対に容認できない」と、上告の意向を表明した。
真実相当性どこに
 高裁判決は一審と同様に、3社の週刊誌などに載った櫻井氏の記事が植村さんの社会的評価を低下させたと認定する一方で、「櫻井氏が捏造と信じたことは公共の利害に関することで、理由がある」と名誉毀損の法理を捻じ曲げて真実相当性を認め、櫻井氏が裏付け取材すらせずに植村さんを「捏造記者」ときめつけ、バッシングを煽ったことを再び免責した。櫻井氏はこれを「報道の自由、言論の自由が守られた」と言うが、本当は何が守られたのか。
 一審判決は、櫻井記事によって植村さんの社会的評価が低下したと認め、櫻井記事の一部が事実でないことを認めたうえで植村さんの請求を退ける根拠として「櫻井氏が(植村)批判記事の内容を真実と信じる相当性はあった」とした。問題は書く側が「本当に取材や確認を尽くしたか」だ。記事は内容によっては人を傷つける。
 だからこそジャーナリスト、ジャーナリズムには報じることの公共性、公益性に加え、取材、確認を尽くすという「基本動作」が求められる。だが、冨田一彦裁判長、目代真理、宮崎純一郎の札幌高裁3裁判官は「資料などから十分に確認できる場合は本人への取材や確認を必ずしも必要としない」として櫻井記事の真実相当性を認定した。
櫻井が流布した嘘
 櫻井氏は、植村バッシング記事で@植村は義母の裁判に便宜を図るため記事を書いたA慰安婦と挺身隊を結び付けたB金学順さんの経歴を隠した、という3つの嘘を流布し、植村さんへの攻撃を煽った。植村さんや家族、北星学園に殺到した「殺す」「爆破する」などの脅迫や「売国奴」「国賊」などの罵倒がこの嘘によって引き起こされたことを我々は忘れない。そして札幌高裁は櫻井記事の@の嘘を事実の適示ではなく「論評である」とすり替えた。
 札幌高裁判決の特筆すべき点は、「ネトウヨ判決」と批判された一審ですら認定した「適示事実」のことごとくを「論評」と判断をすり替え「真実相当性」認定で「ジャーナリスト」櫻井氏を免責したことにある。これは名誉棄損の法理無視に加え司法が積み上げてきた真実相当性判断の枠組みをも大きく逸脱した、誤った判決と言わねばならない。
 その極致はわずか20ページの判決文の半分を占めた「真実相当性」についての裁判所判断の記述に凝縮されている。
本人取材「不要」と
 櫻井氏が植村批判の論拠とした資料は@91年8月15日付のハンギョレ新聞記事A金学順さんの91年の訴状B月刊「宝石」92年2月号掲載の臼杵敬子さん執筆の記事の3資料だが、高裁はこれを「推論の基礎となる資料が十分ある」と評価し、植村さん本人への取材の必要はないとした。
 だが、櫻井氏は3資料を自分に都合よくつまんで使っており@のハンギョレ新聞の記者やBの臼杵敬子さんに、陳述書で「櫻井氏は慰安婦の被害を伝える内容を曲解し、逆に使った」と批判を受けた。またAの金学順さんの訴状には櫻井氏主張の記述などなく、櫻井氏は植村さんの指摘で産経新聞と雑誌WiLLで訂正に追い込まれた。高裁判決は、櫻井免責の根拠とするためこの事実や経緯を無視した。
 高裁判決は櫻井氏の杜撰な「取材」を不問にしたことに加え、「慰安婦」や「強制連行」の定義や見解を随所で捻じ曲げた。「挺身隊」という言葉についても「91年当時、一義的に慰安婦の意味に用いられていたとは認められない」と判断した。だが本当にそうか。
 植村記事が書かれた91年頃は、韓国だけでなく日本でもマスメディアが「挺身隊の名のもとに」などと従軍慰安婦を表現するのは一般的だった。朝日だけでなく産経、読売など全マスコミが普通に使っていた。もちろん櫻井氏も例外ではなかった。「女子挺身勤労令」の規定する「挺身隊」の研究が本格化し始めたのもほぼ同時期であり、高裁の断定にはいささか無理があることを指摘しておく。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

posted by JCJ at 11:09 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする