2020年03月14日

【おすすめ本】古川隆久『建国神話の社会史  史実と虚偽の境界』国民教化の手段として使われた歴史=上丸洋一(ジャーナリスト)

 「2千年にわたって同じ民族が、同じ言語で、一つの王朝を保ち続けている国など世界に日本しかない」─閣僚の一人がそう発言して<おわび>に追いこまれたことは記憶に新しい。
 もちろん「日本」という国号をもつ統一国家も天皇も、2千年前には存在しなかった。だが建国神話をそのまま歴史に接続させて「世界に冠たる日本」を誇る思考は、保守派の間で今なお生き続けている。
 本書は、8世紀初め、権力の正統性を語るために書かれた古事記、日本書紀の建国神話が、江戸時代の国学者によって再発見されたのち、帝国憲法下の日本で国民教化の手段として使われた歴史を平明な文章でたどる。

 興味深いのは、天皇の神格性が強調された戦時中の学校で、子どもたちが建国神話を半信半疑で受け止めていたという事実である。
 太平洋戦争下の茨城県の国民学校で、「国史」の時間に「天孫降臨」の掛け図を見せられた児童の一人が言った。
「先生そんなのウソだっぺ」
 教員は教員で、想像上の神話を歴史事実として語る矛盾に苦心したという。著者はこう述べる。
「建国神話を事実とみなす考え方は……人々を戦争に駆り立てる方向に作用しました」「(戦後になって)建国神話が日本という国家の正当化の根拠や教育から排除されたのは当然すぎるほど当然なことでした」
「建国神話の社会史」.jpg
posted by JCJ at 17:24 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする