2020年04月30日

【森友事件】 再調査拒否に厳しい視線 赤木さん「手記」が問いかけたもの=木村真

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 森友問題の公文書改ざん事件で改ざん作業をさせられ、自死に追い詰められた近畿財務局職員・赤木俊夫さんの「遺書」とも言うべき手記が公開され、大きな波紋を呼んでいる。
 手記は、財務省からの改ざん指示を実名入りで書いた生々しい内容。「修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告した」などの記述を読むと、2018年6月の財務省による調査報告書では見えなかった細部が浮かび上がってくる。
あまりに酷すぎる
 さらには、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」として、「当時の佐川理財局長、理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部、担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)」を告発している。
 会計検査院の検査や野党国会議員からの資料請求に対する隠ぺいについても、「資料はできるだけ開示しない」「文書として保存していない」など本省の指示を具体的に書いている。そして麻生財務相や太田理財局長(当時)の国会答弁は「詭弁を通り越した虚偽答弁」と断じている。
 「抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました」。結び近くでこう書いた赤木さんは、直後に自らの命を絶つ。
 しかし、改ざんを指示した連中は、昇進や栄転に(佐川元理財局長はその後国税庁長官に。佐川氏の後任理財局長・太田氏は主計局長となり事務次官の最有力候補。近畿財務局に直接電話し改ざんを強要した中村課長はイギリス公使に等々)。あまりにひどすぎる。
 赤木さんの手記のおかげで、森友問題は何も解決などしていないことを、多くの人が思い出すことになった。そもそも公文書改ざんは、森友学園に国有地をタダ同然で差し出した「背任事件」に、安倍昭恵が関与していたことを隠すために行われたのであり、異常な国有地売却こそが核心だ。昭恵も安倍首相本人も何の責任も取っていないのだから、解決などするはずがない。
 安倍首相と麻生財務相は、赤木さん手記が公となったその日のうちに「再調査の考えはない」と述べた。この傲岸不遜な態度が多くの人々の憤りを呼び起こし、赤木さんの妻が第三者委による再調査を求めインターネットサイトchange.org上で始めた署名はごく短期間で30万を突破(同サイト史上最速最多の賛同数とのこと)。
再喚問求める署名
 たまたま私たち「森友学園問題を考える会」も昨年10月から佐川元理財局長の再度の国会証人喚問を求める署名を集めていたのだが、半年かけてやっと9,500筆だったのに、手記公開後は爆発的に伸び、3月末までに10万を超えた。
 ところがその頃から新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、私たちの署名も4月8日の提出予定を延期せざるを得なくなった。
  とはいえ国民の厳しい視線には、森友問題を放置している安倍政権に私たちの生命と生活に直結するコロナ対策をさせて大丈夫なのかという疑問が込められている。
  赤木さんが文字通り命をかけて書き残した手記が忘れられることなどあってはならないし、現に忘れられてなどいないのだ。
木村真(大阪府豊中市議)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年04月29日

【森友事件】 今、問い直す意味 政治の思惑抜きに再調査を 問題の本質は「国有地値引き」=相澤冬樹

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 森友事件の発覚から、はや3年。これほどあからさまにおかしなことがうやむやになりかけた要因はどこにあるだろう?この事件が政治の思惑に巻き込まれてしまったからではなかろうか?

  森友事件とは何か?森友学園に小学校の用地として国有地が売却された。鑑定価格から8億円以上も値引きされて。これは正当か?国民の財産を不当に安く売ったのではないか?それが問題の根本だ。政治とは本来関係ない。
大見得を切った
 ところが、この土地に建つ小学校の名誉校長は安倍首相の妻、昭恵さんだった。昭恵さんは森友学園の教育方針を繰り返し賛美。昭恵さん付きの政府職員はこの土地のことを財務省に問い合わせていた。
 安倍首相は「照会しただけで便宜は求めていない」と言うが、役人はそれだけで“忖度”する。首相の妻が名誉校長だから 安くしたのでは?安倍首相は関与していないのか?追及が強まる中、安倍首相は国会で大見得を切った。
 「私や妻が(学校の認可や国有地取引に)関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」。まるで無関係と強調したかったのだろうが、この答弁で野党は勢いづいた。関与の証拠を見つけ出そうと資料や説明を要求。 
 これに財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は国会で「資料は廃棄しました。ございません」と突っぱねる。2日後、関連公文書の「改ざん」が密かに始まった。現場で改ざんを押しつけられた近畿財務局の赤木俊夫さんは、その責任の重さに耐えかね命を絶った。
安倍答弁引き金
 改ざんに関する調査報告書を取りまとめた財務省の伊藤豊秘書課長(当時)は「安倍さんの答弁と改ざんは関係あった」と赤木さんの妻に説明した。首相の答弁が野党の追及を招き改ざんを引き起こしたというのだから「安倍首相は改ざんに責任がある」と言ったに等しい。では改ざんを招く元になった国有地の値引きについてはどうか?
  財務省は「地下のごみの撤去に8億円かかる。撤去しないと小学校が開校できず損害賠償を求められる恐れがあった」と説明してきた。だが「ごみ」は本当にあるのか?明確な証拠はない。しかもこの土地からごみはほとんど撤去されていないのに立派な校舎が立っている。
 ごみのあるなしに関わらず校舎はできた。つまり小学校は開校できたはず。財務省の説明は説得力を失っている。
 しかし、森友事件はすっかり「色」が付いてしまった。安倍政権是か非かという「色」。政権を非難する人々は「値引きは不当。安倍首相の責任だ」と訴える。政権を支持する人々は「値引きは正当。森友はもう決着した」と突っぱね、野党とマスコミが騒ぐだけだと言う。双方の主張は平行線をたどった。
 そこに現れたのが「赤木俊夫さんの手記」だ。改ざんを現場で押しつけられた俊夫さんの苦悩。寄り添ってきた妻の深い悲しみと苦しみ。週刊文春でこうした事実が初めて明らかになり、30万人もの方が妻が望む再調査をすべきと賛同した。
妨げにならない
 赤木さんの妻はもともと反政権ではない。むしろ長らく自民党を支持し読売新聞を購読してきた。妻が望むのは夫が亡くなった真相を知りたい、その一点だ。夫の死を招いた改ざんはなぜどのように行われたのか?改ざんを引き起こした国有地の値引きに問題はなかったのか?それを知りたいだけなのだ。こうした疑問に政権への賛否が関係するはずがない。与野党一致して遺族の願いをかなえてはどうか?
 「コロナ対応が最優先の今この問題を蒸し返すべきではない」という意見がある。再調査はコロナ対応の妨げになるか考えてみよう。妻が望むのは「有識者による調査」だから役所は手を取られない。任意の調査だから断ることもできる。コロナ対応の妨げになるとしたら、政権に不都合な事実が浮かび上がり窮地に立つ場合しかない。逆に調査によって関係ないことがはっきりしたほうがいいだろう。
  それでも拒否すると「再調査されると困ることがあるのか?」と勘繰られる。だから安倍政権を支持する方々こそ再調査を支持した方が良いのではなかろうか?
相澤冬樹(大阪日日新聞記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号



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2020年04月28日

組織委理事に9億円 カネまみれの東京五輪 電通が背後で蠢く=橋詰雅博 

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 新型コロナ禍で東京五輪1年延期の道スジをつけたとされる東京五輪・パラリンピック組織委員会理事で元電通専務の高橋治之氏(76)は、スポーツビジネスの表裏を知りつくす人物だ。その高橋氏に関し、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」(招致委)から9億円を受け取り、東京五輪実現のため奔走した疑惑が浮上した。
 招致委の銀行口座の取引明細証明書を入手したロイター通信による3月末のスクープ記事で明るみに出た。ロイターの取材に対し高橋氏はラミン・ディアク世界陸連前会長などIOC(国際オリンピック委員会)委員にロビー活動をしたことを認めた。しかし、9億の使途については「いつか死ぬ前に話してやろう」とうそぶいた。
 東京五輪招致では、贈収賄疑惑で仏検察が捜査を進めている。贈賄側として招致委理事長を務めたJOC(日本オリンピック委員会)前会長の竹田恒和氏が18年に同検察から事情聴取をされている。高橋氏もこの汚職疑惑に深く関与していると見られる。
 高橋氏は竹田氏とは交流が長い。同じ慶応大出身の竹田恒治氏を介して弟の恒和氏と知り合った。話はそれるが、高橋氏の弟はイ・アイ・イ・インターナショナル社長の治則氏(05年7月死去)で、ホテル・リゾート開発などバブル事業≠拡大させて日本長期信用銀行を潰した男と言われた。
 また、高橋氏は02年の日韓共催W杯サッカーでは電通幹部社員として裏面で動いた。
 ところでロイターのスクープ記事の中で招致委による資金の支払いについて、日本の月刊誌「FACTA」が最初に報じたと書かれている。筆者が残しておいた「FACTA」18年3月号の記事によれば、16年3月号の記事がそれだと思われる。18年の記事は仏紙ル・モンド記者と本誌取材班が共同取材したもので、タイトルは『電通「東京五輪買収」の物証』だ。仏検察が押収した電通とディアク世界陸連前会長が交わした極秘契約書がその物証としている。1500万j(約16億円)の不可解な金の流れがあると指摘する。
 東京五輪招致の背後で高橋氏を中核とした電通グループがヒト・モノ・カネを投じたのは間違いない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
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2020年04月27日

【編集部EYE】 3ショット写真が8億値引きの転機に=橋詰雅博

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 近畿財務局OBの喜多徹信さん(71)と電話で話をした。森友学園事件の口火を切った大阪の木村真・豊中市議の紹介。喜多さんの後輩で、森友学園への国有地売却問題を担当し、自死に追い込まれた(18年3月、当時54歳)赤木俊夫さんの手記と遺書が公開され森友事件が再びクローズアップされたので、取材のお願いだった。
 喜多さんは取材の前にぜひ読んでほしいものが2つあると言った。19年春号『季論21』と、昨年10月兵庫県で行われた全国革新懇交流会記録集だ。
 早速入手。前者は2月にインタビューを受け、後者は全体会での発言。ちなみに喜多さんは1967年に近畿財務局に入り、60歳の定年後4年間の再任用を経て13年3月に退職した。46年間近畿財務局で国有地の売却や貸付の仕事に従事した。この間、全財務労組本部書記長も務めた。森友学園が土地取得を申し込んだのは退職3カ月後の6月だから、大阪地検特捜部から事情聴取は受けていないという。
 『季論』の記事によれば、国鉄民営化で近畿財務局に移ってきた赤木さんは正義感があふれ、〈親しく付き合ってきた仲間〉。財務局の審査で9億5千6百万の値段が付けられた土地がわずか1億3千4百万で売却が決まる大きな転機になったのは14年4月28日に持ち込まれた〈安倍首相の昭恵夫人と籠池夫妻が一緒に写った写真〉。そして〈後輩たちは「昭恵事案」とか「安倍事案」と呼んでいたらしいですが、「無理筋の仕事をさせられた」と言っていた〉。
 記録集発言では、公文書改ざんに関わった役人のほとんどが出世していることを指摘。例えば改ざんに抵抗したとされる楠敏志管財部長もナンバー2の総務部長に昇進。〈19年の定年後、神戸財務事務所の特別ポストに再任用され、会議室をつぶして彼の「個室」まで作ったそうです〉。
 喜多さん、森友事件は終わっていないと雑誌と記録集で力強く語っている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
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2020年04月26日

【今週の風考計】4.26─今こそ辺野古・工事中止とジブチ撤退を!

韓国・文在寅政権はトランプ大統領の要請を退け、国防費を削減してコロナ禍対策に充てるという。安倍首相も、マスク2枚の配布に466億円使うよりも、「不要不急」の防衛費を削って、休業補償と医療整備に回したらどうか。
 まずはトランプ大統領の一声で爆買いしたF35戦闘機147機の費用1兆7千億円、さらには維持費約4兆5千億円、その一部でもいいから今の緊急事態に使うのだ。
 戦闘で「命」を奪うよりも、コロナから「命」を守るために、コロナ禍対策に充てたら国民は喜び、支持率アップにつながるのは間違いない。

だが防衛省は、米軍の“殴り込み部隊”の海兵隊を拡充する前線基地・辺野古基地建設のため、重ねて沖縄県民の民意を踏みにじり、設計変更を沖縄県に申請した。
 その目的は、辺野古<美ら海>の大浦湾側にある、マヨネーズ並みの軟弱地盤66.2ヘクタールの改良工事である。最深90メートルの海底などに、約4年1カ月をかけ、砂杭など約7万1千本を打ち込む。総経費9300億円、そのうち約1千億円が地盤改良費。当初の見積もり額の2.7倍だ。完成は予定より大幅に遅れ、2030年代前半という。
 戦争で「命」を奪う米軍基地の建設に、日本国民から搾り取った1兆円近くの巨額の血税を投じる。まさに「不要不急」の極みではないか。しかもコロナ感染拡大を防ぐため、沖縄の人々が懸命になっている時期を狙ったとすれば、悪質極まりない。

つい最近、24年前に全面返還が決まった普天間飛行場の格納庫から、またも発がん性が指摘されるPFOS(ピーフオス)を含む泡消火剤22万7千リットルが漏れ、14万リットルが基地外に流出。
 付近を流れる河川の水質サンプル調査では、汚染を判断する米国の暫定指標値の6倍に当たる量が検出された。他の地点からも多量のPFOSが確認されている。
 沖縄県は基地内の土壌をサンプル調査できるよう申請していたが米軍は拒否。防衛省の要請も効果なし。その後、米軍は格納庫そばの土壌を掘り起こし、除去した土を県外に搬出。米軍基地内は治外法権の好例、県民の「命」など眼中にない。

防衛省・自衛隊は国民の「命」を守るのが仕事。大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号での、コロナ感染防止・水際作戦での活躍は承知の通り。だがジブチを拠点に海賊対処や航行の安全確保に派遣されている、P3C哨戒機部隊60人の「命」は例外なのか。交代要員の派遣が調整できず、3カ月での帰国ができない事態となっている。
さらに2月末から中東海域で情報収集を始めた護衛艦「たかなみ」乗組員180人は大丈夫か。寄港地でもコロナ感染を防ぐため下船ができず、3段ベッドでの生活は「3密」そのもの。もし感染者が出たらクラスターは確実、ストレスは極限にまで達している。
 バーレーンの多国籍部隊司令部に派遣されている自衛隊員10人のうちの1人が、コロナに感染しているとのことだ。防衛省・自衛隊よ、いまこそ辺野古建設の中止、ジブチ派遣から撤退の勇気を持て。(2020/4/26)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月25日

【リアル北朝鮮】 金委員長らマスクせず コロナ対策万全誇示=文聖姫

 4月15日、韓国では4年に一度の国会議員選挙が行われ、与党(共に民主党と比例政党・共に市民党)が過半数を超える大幅な議席を獲得して圧勝した。新型コロナウイルスへの文在寅政権の取り組みが評価されたことが大きい。
 前日の朝、北朝鮮は東部の江原道・文川付近から日本海に向けて、数発の飛翔体を発射した。韓国軍合同参謀本部によると、巡航ミサイルとみられる。巡航ミサイルなら、発射が確認されるのは2017年6月以来(「朝日新聞」20年4月15日付)だ。
 韓国の総選挙を意識したのかもしれない。15日は金正恩氏の祖父、故金日成主席の生誕日でもあるので、それも関連しているかもしれない。
 北朝鮮の国会にあたる最高人民会議が12日、平壌の万寿台議事堂で開かれた。当初は10日に予定されていたが、2日間延期された。延期の理由は定かではないが、代議員ではない金正恩氏は欠席した。
 主な議題は、昨年の事業報告と今年の課題、昨年と今年の国家予算審議である。再資源化法、遠隔教育法、除隊軍官生活条件保障法の三つの法律も採択された。いくつかの人事も発表された。
 北朝鮮でも新型コロナウイルス対応に国家を挙げて取り組んでいる。最高人民会議の前日に開かれた朝鮮労働党中央委員会政治局会議の第一議題は、新型コロナウイルスから国民の生命と安全を守るための対策を立てることだった。
 こちらの会議には金正恩氏も参加した。会議の報告では、最初の段階から超特別クラスの非常防疫措置を稼働させるなどして安定的な防疫態勢を維持している点、ウイルスの流入を遮断するための対策を引き続き厳格に実施する点などが指摘された(朝鮮中央通信12日報道)。
 そのおかげか、北朝鮮では「一人の感染者も発生していない」(会議報告)という。それを誇示するかのように、写真で見る限り、最高人民会議の参加者は誰一人マスクをしていなかった。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 16:38 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月24日

【スポーツコラム】 東京五輪 中止ありえる=大野晃

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 新型コロナウイルス感染症の感染対策で、東京五輪・パラリンピックの1年延期が決まった。
 五輪の延期開催は史上初めてで、関連して世界と日本のさまざまな競技会の日程調整が続いている。
 外出自粛要請などにより、世界と日本のあらゆる競技会が延期や中止となり、市民スポーツも自粛され、スポーツの消えた世界が長引いている。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会は延期による会場確保などを急いでいるが、膨れる経費で、改めて開催意義が問われている。
 安倍首相と国際オリンピック委員会の政治的、経済的思惑が一致して、感染終息による経済活動復活の希望的観測に基づく延期であり、日本で開催ができるようになっても、世界的に代表派遣が不可能な状況が続けば、中止もありうる。
 見切り発車はできまい。国際的に連帯、協力して、感染終息と生活再建を目指すことが延期開催のカギを握る。いわば五輪精神で世界が一つになることで開催は可能となる。
 自国第一主義の経済的対立が顕著になる中で世界的に感染が拡大したが、感染対策でも国際的連携は進まず、米中は対立すら見せる。
 安倍政権も中韓との協力に消極的で、世界から学ぶ姿勢に乏しいようだ。
 異例の五輪延期開催を実現するには、世界で五輪精神を生活に生かす知恵と努力が不可欠だ。
 国際オリンピック委員会や五輪を開催する日本オリンピック委員会による国際連帯の強い呼びかけが必要である。
 地元での五輪・パラリンピック開催に勢い込んでいた競技者だが、活動停止に追い込まれ、命と安全第一の社会でこそ競技生活が営まれることを改めて自覚したはずだ。
 競技を続けるために課題は山積しており、団結して、世界の競技者と連帯し、政治を動かさなければ、夢は実らないだろう。
 延期された1年は五輪精神の正念場だ。スポーツの発展を目指すマスメディアの姿勢を問い直す契機でもある。
大野晃
posted by JCJ at 16:44 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月23日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 経済減速させたくない 延期の五輪実施で花道飾る―これが安倍首相の思惑

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 安部晋三首相は4月7日、改正新型インフルエンザ特別措置法による初の「緊急事態宣言」を発した。東京など7都府県を対象としたが批判を受け、4月16日全国を対象にした。朝令暮改だ。
 7日の会見で安倍首相は「欧米のようなロックダウン(都市封鎖)ではない。電車、バスなど公共交通機関は運行、道路を封鎖はない」と強調した。経済を減速させない思惑がかいま見られる。
 今回の緊急事態宣言には、各国メディアは批判的だ。「強制力が不足しているため、感染拡大に大きな変化がないだろう」(韓国聯合ニュース)、「対応が遅い、経済への打撃を避けようと、意図的に対応に時間をかけた」(CNN)、「遅すぎた。東京の感染拡大は容易に制御できないレベルに達している」(英BBC)など手厳しい。
 アメリカ大使館は日本に滞在中の米国民に直ちに帰国するよう注意情報を出した(4/3)。「日本は検査を広範に行わない。罹患割合を正確に把握できない、感染の急速拡大の恐れもある」と警告した。日本国内でも政府が緊急事態宣言を発令は「遅すぎた」が81%に達した(4/13読売新聞) 。
108兆円はまやかし
  政府は緊急経済対策として、108兆円を支出すると閣議決定(4/7)、減収世帯への30万円の現金給付、売り上げ減少の業者への最大200万円の給付金などを発表した。108兆円という数字には融資などの金融措置も含まれ、政府の財政支出分(いわゆる真水)は39.5兆円止まる。ところが、10日後、減収世帯への支給を取り下げ、全国民に一律10万円配布すると変えた(4/17)。
 全国知事会は4月8日自粛要請に応じた企業への損失補償を求めた。吉村洋文大阪府知事は、「行政が営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調した。しかし安倍総理は「落ちた売り上げをすべて補償することはできない」と拒否した。東京都は独自に休業補償する。
低い感染検査数
 安部首相の失態は2月初旬クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号が日本に接近、水際で食い止めるとして、船内に乗客、乗員3533人を閉じ込めたときから始まる。
 船内で感染が広がる一方、1月16日に国内で初の新型コロナウイルス感染者が出たのに、PCR検査など対策が不十分のまま推移した。
 100万人当たりのPCR検査受験者数は英国,6,164.5人(3/12), 韓国,4,831.3人(3/13), 中国(広東省),2,820.4人(2/24)に対し日本は80.5人(3/12)、世界23位に止まる(Our World Data3/15)。
  PCR検査は当初、国立感染研究所と各地方衛生研究所に限られたが、2月20日以降民間の医療機関で受検できるようになった。それでもなお検査が進まないのは、医療機関に受診者が集まることを避け、感染が疑われる人、重症者の検査を優先しているからだ。
  休校宣言(2/27)も唐突だった。専門家との協議なしの閣議決定で、しかも「ここ1,2週間が極めて重大な時期だ」との発言は、感染拡大について誤った情報を国民に与える結果となった。フェイク発言だったといわざるを得ない。今となって見れば休校措置は意味ない結果となった。
歴史に名残したい
  新型コロナウイルスの世界蔓延で、安倍首相はオリンピック委員会のバッハ会長との電話会談(3/24)で東京五輪の一年間の延期を提案、IOCも同意した(3/24)。
 もともと新型コロナウイルスを「水際作戦」で抑え込もうとした安倍首相には、東京五輪を開催したい、日本の経済には影響を与えたくないという思惑があった。しかし日本でも世界でも感染拡大は続き、世界のアスリートが次々に危機感を発し、開催を断念した。
 3月30日の決定よると、東京五輪とパラリンピック2020は一年後、2021年7月23日から2021年9月5日の日程となった。一年ずらせば、2021年9月の総裁任期内ということになる。五輪とパラリンピックを花道に、9月に任期満了を迎えられるとの思惑が見られる。だが一年後新型ウイルスが収束しているという保証はない。
NHK指定公共機関に
 安部首相の7日の緊急記者会見(7都府県緊急事態宣言)は19時から行われNHKなど民放キー局が生中継した。首相の約25分演説の後記者と応答、挙手がある中20時過ぎ「次の日程がありますので」として終了した。次の首相の姿はNHKの「ニュースウォッチ9」生出演だった。
 番組では首相の主張をそのまま伝えるのみで、問題点を問いただすことはなかった。
 「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」では日銀、赤十字などと並んでNHKが指定公共機関とされた。従来から政権寄りのNHKは、政府のコロナ対策への協力にアクセルがかかっている。国境なき記者団(本部パリ4/7)、日本ジャーナリスト会議(4/11)、などが独立した報道を阻害するとして反対声明を出し、NHKを指定から外すよう要求している。
海外報道もチェック
 テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショーで「首相が法改正にこだわるのはごてごて批判を払しょくするためだ」、「マスクを医療機関などで重点的に配備する必要がある」(3/4)などの発言に対し、「内閣官房国際感染症特別来策室」や「厚生省」がツイッターで批判、報道を正すよう求めた(3/5, 3/6)。
  国会のやり取りでも、宮下一郎内閣府副大臣は「民放でも、この内容を流してもらうと指示し、変更や差し替えをしてもらうことはありうる」(3/11衆院法務委)と発言した。のち撤回したが本音がこぼれたものだ。
 安部首相の感染対策としてマスク2枚配布の発表(4/1)は、国内の批判に加え、海外メディアからも「アベノマスクはエイプリルフールか」(Fox News4/1)など嘲笑、揶揄が乱れ飛んだ。
 それを意識してか“批判をチックし、正しい情報流すために”との予算24億円を外務省が組んだ。主要20か国のなどのSNSをAI(人工知能)も活用してチェック、“正しい情報を発信する”という。厚生省も国内海外に向けて「ネガティブ情報の払しょく」、「正しい情報の発信」を行う予算35億円が組まれた。
  憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的最低限度の生活を営む権利を有する、国はすべての生活部面について、社会福祉及び社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とされている。「健康で文化的な最低限の生活」を取り戻す日が一日も早く来ることを、願ってやまない。
隅井孝雄


posted by JCJ at 15:50 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月22日

【好書耕読】「食なき国」への危機が迫る!=伊藤洋子(JCJ賞選考委員)

 近い将来、食糧危機の時代が必ずくる。先進国中最低の食料自給率はいまや37%、大半の食料を他国に依存する異常さが常態化している。
 1月、安倍首相の施政方針演説でガクンときた。自給どころか農産物輸出を声高に叫ぶばかり。軍事に前のめりになるものの、命を支える食の安全保障への配慮は、この宰相には関心外であるらしい。
 農地の大規模化で競争に強い農業を目指すとするが、本当に強い農業とは補助金に頼らず生業として営々と続けてきた家族農業=小規模農業だと、農民作家の山下惣一は自著『日本人は「食なき国」を望むのか―誤解だらけの農業問題』(家の光協会)で吼える。しかも誤解を拡散してきたのはメディアであり、これに洗脳された消費者だとも言う。

 輸出型農産物に精を出すのは大規模な企業型農業である。安倍が重視するのは世界市場を相手にする農業。行きつく先は農業はあれど「食なき国」への道だと山下は言う。
 安倍の演説文を読めば読むほど総花的で中身=具体策がなく、不都合な事実には蓋をしたままなど、指摘すべきことは満載だけど、メディアも野党もスルーの感の食と農の問題が気になって、本書の読み返しとなった。
 超高額兵器で重武装したその陰で、餓死者続出、医療崩壊なんて悪夢はまっぴらだ。
 新型コロナウイルス禍で世界が大騒動する中、アフリカで異常発生したバッタが間もなく中国に達するという。世界食糧危機は現実なのだ。

 本書が発行された2014年を、国連は「国際家族農業年」と定めた。以来、家族農業=小規模農業は持続可能な農業と飢餓及び環境問題への軸とされてきた。切り捨てられ続けてきた日本の伝統的農業こそ、その見本である。
 「強い農業が生き残るのではない、生き残った農業が強いのだ。」その農業は自給自足を原理とし、あまたの食を支えてきた。山下の持論が突き刺さる。
『日本人は「食なき国」を望むのか』.jpg
posted by JCJ at 10:18 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月21日

5月9日「世界報道自由デー」のオンラインセミナー お知らせ=須貝


5月9日(土)午後2時から、世界報道自由デーのオンラインセミナーが開かれます。
支援金を集めるクラウドファンディングが始まりました。
一口500円の支援金と220円のシステム利用料をクレジットカードなどで払うと、5月9日午前にオンラインセミナー(zoomを利用)の招待メールが届きます。ぜひ、ご参加ください。

下のリンクをクリックしてください。
https://camp-fire.jp/projects/view/259175

やり方の解説はこちら→https://www.slowtimes.net/2020/05/09/20200509/

【世界報道⾃由デーのオンラインセミナー】
報道の⾃由と新型コロナ
公文書・情報公開を考える
 5月9日(土) 14:00〜16:00 ZOOMを使用
1993年に国連総会は5月3日を「世界報道自由デー」とすることを宣言しました。それ以来、5月3日前後に報道の⾃由について世界中でさまざまな催しが企画されています。
 ⽇本では、アジア太平洋メディア情報リテラシーセンター(AMILEC)と⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)が協⼒し、2017年以来3回にわたって、法政⼤学で「世界報道⾃由デー」フォーラムを開催してきました。今年はオンライン・セミナー(ウェビナー)方式で開催します。
【国境なき記者団東アジア総局長セドリック・アルビアーニ⽒から特別メッセージも届いています。当日、公開します】
講演@ 報道の自由と新型コロナ(14:00-15:00)
国境なき記者団・日本特派員 瀬川牧子氏
◇瀬川牧子(せがわ・まきこ) 1981 年生まれ。産経新聞記者を経て、2009 年以降、海外メディアの記者やコーディネーターとして働く。12 年9 月からフランスの国際ジャーナリスト団体NGO「国境なき記者団」日本特派員に任命される。同記者団が毎年発表する自由報道度の日本ランキング調査などに関わる。
講演A 報道の自由と公文書・情報公開(15:00-16:00)
毎日新聞社会部記者・大場弘行氏
◇大場弘行(おおば・ひろゆき) 2001年、毎日新聞社入社。阪神支局(兵庫県尼崎市)を振り出しに、大阪社会部府警担当、東京社会部検察庁担当、週刊誌「サンデー毎日」編集部、特別報道部などを経て現職。2019年、キャンペーン報道「公文書クライシス」取材班代表として、優れたジャーナリズム活動に贈られる第19回「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」(公共奉仕部門)大賞受賞。
posted by JCJ at 21:11 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月20日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 日本と違いコロナ禍でも欧米は文化・芸術助成を実施

      IMG_0091.jpg
 日本国憲法は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある。国は、すべての生活部面について、社会保障および公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という条文がある(25条)。
  今日はこの条文の元、新型コロナウイルスと文化芸術にについて考えたい。政治家は全力を挙げてこの条文に沿った行動をしてほしい。今の日本の政権ではすべてが後手後手になっている。PCR検査を怠っている。緊急事態宣言は4月7日発令されたが4月16日に全国が対象に切り替えられた。
 京都では、芸術文化施設を全面閉鎖し(4/4)、市長が緊急事態を京都にも適用してほしいと国に要望した(4月10日)。100万人当たりの感染者数が全国都道府県で5位であるなど、感染拡大が続く。
軒並み閉館
 ところで健康で文化的な生活が今は不可能。私が通っていたスポーツジムも閉鎖された、「文化博物館」も閉鎖された。祇園祭特別展「町衆の情熱」で懸想(山鉾を飾る美術垂れ幕)が見られる、金具飾りが見られると、見に行ったが文博は閉鎖されていた。国立博物館も、新装のローム博物館(元府立博物館)もロームシアターも全部閉鎖されている。
 大量感染の元となったことから京都でもライブハウスは軒並み閉鎖、京都コンサートホールの演奏会にも中止だ。
祇園祭巡行中止
 例年7月1日から一か月間行われる祇園祭の鉾立て7/10、巡行7/17,7/24の是非が問われている。山鉾を立てれば人が集まる、山鉾巡行(写真)では引手が連なる、周囲約2.5キロに観客が密集する、とあって、現状では開催に見込みは立たない。巡行は中止することが決められた(4/20発表)、おそらく鉾立てもできないのではないか。
 平安時代初期863年(貞観5年)に当時蔓延した疫病(当時わらわやみ、おこりなどと言われたがマラリヤかと思われる)で多くの死者が出たことを悼み、悪霊を退散させるための行事が始まりだったといわれる。やがて豪華絢爛の伝統文化として1150年続いてきた、それが1151年目の今年、中止になるというのは歴史上の大きなアイロニーではないか。
30万人賛同
 ライブハウスの出演者が先頭に立って進めていた、文化助成を求める署名♯SaveOurSpaceがツイッターであっという間に賛同者30万人をこえたと聞いた。各種のライブ公演、音楽会、演劇文化公演から歌舞伎至るまで舞台が開けられない。博物館、映画館まで閉まった。
 映画、演劇の世界では、俳優、音楽家はもとより音響、照明などなど、フリーで働く人々も無収入になる。人々は音楽や演劇を楽しむ機会を失われている。休業資金を出し、歌手、アーティスト、文化関係施設に給付し、生活を保障して、コロナ明けに備えることが重要だ。
 休業したお店には200万円の補償をする。減収世帯に最低10万円〜60万円、などの給付がかろうじて決められたが、安倍首相はそれを全世帯10万円配布に切り替えた。申告すればの話だ。音楽、映画、ライブハウスなど文化関係への補償は話しすら出ていない。
 宮田亮平文化庁長官がメッセージを出した(3/28)だけで、文化、芸術の助成についてついての具体策は一切ない。
欧米最新事情
 ヨーロッパでは真っ先に音楽関係、映画、俳優、などへの手厚い保護策がとられたことを紹介したい。
 イギリスではすでに2000万ポンド(27億円)ガアート・カウンシルから支出されることが決まっており、その中には芸術文化関連フリーランス、一人当たり2500ポンド、34万円が支給される。いずれも面倒な手続きがなく、即時に振り込まれる。
 フランス文化省の緊急支援策は、音楽家、俳優、フリーの文化関連労働者などの収入の穴埋めに10億ユーロ(1200億円)を投じる。文化芸術関係の小規模組織、個人事業者に1500ユーロ〜3500ユーロ(18万円〜42万円)を支給した。封鎖期間中はこの手当を打ち切らず延長するという。
 イタリア政府では財政困難の中にも関わらす、舞台芸術、映画企業、芸術家、実演家、緊急基金1億3000万ユーロ(152億円)が支出された。文化関係従事者の所得補償もある。
 ドイツでは「アーティストは、生命維持に必要不可決な存在だ」と、モニカ・グリュッタース文化相が発言した。個人、自営業支援として500億ユーロ(6兆円)が用意された。そのうち休業補償の対象になるフリーランス、芸術家、演劇・音楽グループなどは140万人と見られる。
 アメリカではブロードウェイが閉まり、ジャズクラブ、レストラン、リンカンセンターも閉鎖だが、芸術団体、仕事のなくなった音楽家、オペラ歌手、ジャズ歌手など休業した文化関係者の休業補償にとりあえず500万ドル(5億3000万円)が用意された。
 アメリカの特徴は、大手IT企業、銀行など大手企業の支援があることだ。例えばナイキ財団とその幹部が即座に文化関係、アスリートなどに対し1500万ドル(16億円)を寄付した。
 コロナの中にあっても文化、芸術を保護し、終息すればすぐ再開できるようにとの配慮が必要だ。一日も早く、健康で文化的な生活にもどり、音楽を聞き、演劇を鑑賞し、映画を楽しみ、カラオケも歌える、山鉾巡行も楽しめる日常に戻ることを願うばかりだ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
 
posted by JCJ at 17:19 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月19日

【今週の風考計】4.19─トランプ大統領! WHOを危機に陥れるな

WHO(世界保健機関)が危機にさらされている。1948年4月7日に設立されたWHOは、2年後、その日を記念して「世界保健デー」とし、今年は70年を迎える。
 しかも新型コロナウイルスが世界中を暴れまわり、感染者220万人・死者15万人となる今、こともあろうに米国のトランプ大統領は、WHOへの資金拠出を一時停止すると表明した。
トランプ大統領は自らのコロナ対応への失敗を糊塗するため、「中国寄りのWHOが多くの過ちを犯し、多くの人が死亡した」などと、責任転嫁の言動を繰り返している。
 WHOへの協力では、民間からの任意拠出金の額が最大のビル・ゲイツ氏が、「世界的な医療危機のさなか、WHOへの資金拠出を停止するのは危険だ」と批判し、「新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかける上で、ますますWHOを必要としている」と、WHOの重要性を指摘している。

WHOの財政は2年期制で分担金と任意拠出金で構成する。全体で約4900億円。分担金は各国の富裕度や人口によって算出され拠出する。分担金の割合は2020年会計で、1位の米国22%、次いで中国12%、3位が日本8.5%となっている。とりわけ中国はWHO分担金の伸び率が断トツで二桁を更新し、日本を抜いて2位の座を固めている。
トランプ大統領は、米中の経済衝突から、報復関税へとエスカレートし、いまだに中国といがみ合う。もちろん最初にコロナの集団感染が確認された中国の初動の遅れ、またWHOへの圧力など、改めて責任が問われてしかるべきだと思う。
 だが自国のコロナ猛威への対処に失敗し、11月の大統領選を視野に支持率低下に悩むあげく、責任をWHOへなすりつけ、「資金拠出の停止」という脅しを仕掛けるのは筋違いも甚だしい。

いまWHOは懸命だ。アフリカ諸国や難民キャンプ、貧困地域など、保健衛生が不十分で医療施設・従事者が貧弱な地域へのコロナ感染拡大は、想像以上の悲劇を招く。新型コロナウイルスの感染を阻止するかたわら、はしかや風疹、肺炎、ポリオ、ジフテリア、破傷風などの蔓延も防がねばならない。
これらの病気はワクチン接種で防ぐことができる。だが実情は、2千万に及ぶ1歳未満の子どもたちが、ワクチン接種を受けていない。WHO は24日から30日の一週間を「世界予防接種週間」とし、ワクチン接種キャンペーンを展開する。
 また25日は特別に「世界マラリアデー」に設定し、年間42万人以上が命を落とすマラリア撲滅に力を注ぐ。まだワクチンは開発されていないが、抗マラリア薬としてメフロキンが内服薬として用いられている。新型コロナウイルスにも適用できないか、その研究が進む。
ともあれワクチンで防げる病気は、コロナ猛威の時期でも、しっかり予防接種を受けて防ぐことが必要だ。外出自粛でいう「不要不急の外出」に、予防接種は含まれないのだから。(2020/4/19)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月18日

植村訴訟は最高裁へ 「言論の場」も主戦場に=編集部

       DSC_0132.jpg  
 元従軍慰安婦の女性が韓国で初めて名乗り出た1991年の2本の記事で、不当な「捏造記者」攻撃に晒された元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復の闘いは、今年2月(札幌)、3月(東京)の両控訴審での高裁不当判決を受け、新たなステージで闘いが再スタートした。
 札幌(被告櫻井よしこら)、東京(被告西岡力ら)両控訴審判決の真実相当性認定の不当は、機関紙ジャーナリスト紙面や両判決に対するJCJの声明で明らかにした通りだ。
 両高裁は、櫻井、西岡両氏を「免責」するため、一審で明らかになった櫻井、西岡両氏こそが「捏造者」だった事実に目をつぶり、控訴審では新証拠(1991年11月の弁護団聴き取り調査への金学順さんの「証言テープ」)の内容をも否定。
 植村さんが「金学順さんの記事を、読者に事実を伝えるために書いたのか、読者を騙すために事実を偽り「捏造」したのか」への判断が問われているにもかかわらず、(櫻井、西岡が)「真実でなくても、そう思い込んだことに相当の事情がある」と「真実相当性」に逃げ込み、植村「捏造記者バッシング」を免罪した。
 この控訴審両判決は、最高裁の判例にも、国の「強制連行」や「慰安婦」の定義にも背反する。根本にあるのは「朝日新聞の慰安婦報道が間違っていたのだから、記事を『捏造』呼ばわりされても仕方がない」との認識だ。
 つまり記事が真実かどうかなど関係ない、「歴史否認」勢力への忖度判決だったのだ。それは植村裁判を支える市民の会ブログや『慰安婦報道「捏造」の真実』(花伝社)に詳しい。
 植村訴訟の舞台は最高裁に移る。そして名誉回復の闘いの主戦場は「言論の場」にも広がる。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

posted by JCJ at 14:08 | 裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月17日

【スポーツコラム】 絆の重さ知った空白の3月=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染対策で、3月は世界中からスポーツが消えた。戦争中のようだとの声も上がった。
 日本では、あらゆる競技会が延期、中止、休止や無観客試合に追い込まれ、米大リーグやフィギュア世界選手権など世界のビッグイベントが次々に延期、中止。東京五輪やパラリンピックの予選会も見通しが立たない。
 安倍首相の独断で全国一斉に小中高校が休校を要請されたことで、子どもたちの運動機会が制限され、大人には、屋外でも、集まったり、活動したりの自粛要請でスポーツ機会は失われた。
 家の中で体を動かしたり、外で走ったり、歩いたりできても、一人では楽しくない。テレビ中継などで競技を見ても、スタンドで仲間と観戦しながら大騒ぎする喜びがない。
 子どもからお年寄りまで、スポーツが楽しめないストレスは、プレーや競技ができないことより、仲間と集まることを制限されたことで強まったのではないか。
 仲間との絆や人と人とのつながりが、スポーツには欠かせないからだ。スポーツが消えたことは、災害時同様に、当たり前の生活を奪われたことを意味する。生活に欠かせないスポーツの権利は重い。消えて本質のわかる自粛期間なのだと思う。
 しかし、政府やマスメディアの視点には、それが欠落している。
 東京五輪・パラリンピックの延期や中止が重大問題とされているが、経済的影響や国の威信ばかりが注目され、五輪代表などトップ競技者の不利益には敏感だが、国民のスポーツ生活は、精々、健康・体力つくりしか眼中にないようだ。
 スポーツ庁や日本スポーツ協会による国民スポーツ生活の対策提示は皆無であり、スポーツ基本法は無視された。日本オリンピック委員会は世界に連帯を呼びかけることもなく、沈黙したままだ。
 国際連帯で、権利を尊重した科学的根拠のある感染対策を進める必要があるだろう。
大野晃
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

posted by JCJ at 10:44 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月16日

【映画の鏡】 一人っ子政策の悲劇 『在りし日の歌』 中国人夫妻の激動の30年=今井潤

 中国の人口は1945年に人民共和国建国時には約5億人と言われていたが、社会の安定化により死亡率が激減し、人口爆発が起きた。そして1980年に共産党は一人っ子政策と呼ばれる厳しい人口抑制策をとるようになる。
 1986年、国有企業の工場で働くヤオジュンとリーエン夫妻は同じ工場の同僚である夫婦と同じ宿舎で暮らしていた。二組の夫婦には同じ年の同じ月に生まれたシンとハオという息子がいた。
 二人の息子たちは兄弟のように育った。ある日リーエンは第二子を妊娠するが、一人っ子政策に反するため、夫婦だけの秘密にしていた。しかし強制的に病院に連れていかされリーエンは堕胎させられ、手術後の事故で、二度と妊娠できない身体となった。
 1994年のある日、シンがハオに連れられて行った川で幼い命を落としてしまう。
 一人息子を失ったヤオジュン夫妻は住みなれた故郷を捨て、南方の漁港で修理工場を開き、養子をもらい、死んだ息子と同じ名を付けた。しかしその息子は高校生になると、身替りの人生を嫌い、反逆して家出してしまう。
 やがて時は流れ、改革開放後一人っ子政策が進む1980年代、目覚ましい経済発展をとげた1990年代、そして2010年代、大きく変貌する社会の片隅で、懸命に生きる市井の人々を優しく描く3時間の大作である。
(4月3日より角川シネマ有楽町、渋谷ル・シネマほか全国順次公開)
  今井 潤
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号



posted by JCJ at 14:15 | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月15日

【おすすめ本】中川一徳『二重らせん 欲望と喧噪のメディア』─フジテレビとテレビ朝日を巡るマネーゲームの裏面史=河野慎二

 著者は、公共の電波をメディア一族が私し、政官財報で分け合い、マネーゲームの具と化していった姿を、フジテレビとテレビ朝日の裏面史を通じて克明に追う。
 1959年の両局開局時、出資した旺文社の赤尾好夫の一族が90年代、マネーゲームに奔った。
 著者は、フジを巡るマネーゲームと最高権力者日枝久・フジサンケイグループ代表の経営姿勢に多くのページを割く。
 日枝は92年、創業者一族の鹿内宏明を追放し、以後30年近く経営のトップに君臨する。だが2005年、ライブドアの堀江貴文がニッポン放送株を50%確保して、フジ支配を謀るという危機の瀬戸際に、日枝は立たせられる。彼は堀江との和解で危機をしのぐが、翌年1月の堀江逮捕でライブドア株は暴落、フジの経営は深傷を負う。

 著者は、一連のメディア買収戦が「日枝だけでなく、キー局の経営者や放送行政当局の発想を内向きのベクトルに導いた」と分析する。総務省は認定放送持株会社制度を新設し「放送業界を守ることに価値を置く新秩序が定まった」。
 18年7月のカジノ法成立は「日枝にとって最大の障壁だった法整備が決着した」と、著者は指摘した上で「収益向上を歪んだ形で表出」しようとする日枝の計略を厳しく批判する。
 テレビ朝日は、赤尾一族のマネーゲームによる被害の最大化は阻止したものの、安倍首相と親密な会長の早河洋のもとで「権力監視機能は弱体化する方向へ向かうだろう」と、著者は強い懸念を示す。(講談社2400円)
「二重らせん」.jpg
posted by JCJ at 10:32 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月14日

【フォトアングル】 東電本店前抗議=酒井憲太郎

       bIMG_0356.jpeg
 新型コロナの影響で多くの企画、デモ、抗議行動、集会が中止、延期と自粛に追いやられた。そんな中、断固として開かれた東京電力本店前の合同抗議、78回目だ。参加者は195名。発言のトップに立った鎌田慧氏は「10周年にはとにかく脱原発が国の方針になって行くような政治運動をやって行きたい。野党統一戦線で脱原発を実現させる。当面は、東海原発第二は再稼働させない。」と訴えた。参加者は「東京電力原発やめろ」とコールをして、「原発はいらない」「東京電力許さない」と歌った。=7日、東京都千代田区内幸町、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

posted by JCJ at 13:07 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月13日

【JCJ賞情報】2020年度(第63回)日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)─応募と推薦のお願い

2020年度(第63回)日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)
応募と推薦のお願い


 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、年間のすぐれたジャーナリズム活動を顕彰するため、1958年以来「JCJ賞」を設け、贈賞してきました。今年は63回となりました。
 今年度も優れた労作の多数応募を願っています。そして今年度は今後の活躍と期待を込めて新人賞を設けました。自薦・他薦によって応募といたします。入賞作には賞状と記念品が贈呈されます。
 ただし、今回のJCJ賞は、コロナ禍問題の影響により、JCJ賞の選考作業や贈賞の公表日が流動的にならざるを得ません。大幅な先送りもあり得ますことをお含み置きください。

■日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)募集規定
〈募集ジャンルと応募資格〉
 新聞、放送、出版、写真作品のほか、市民運動や地域活動なども含み、個人・グループを問いません。
 提出期限までの1年以内に発表された作品 (連載の場合は同期間に発表) を対象とします。

〈提出条件〉
郵送または宅配便で下記、提出先にお送りください。
◆書籍の場合はその現物1冊。放送作品はビデオ、DVDを1本。
◆雑誌、新聞の場合は、その掲載部分をコピー(カラー写真を含む場合はカラー複写)1セット。
※1作品に1枚、エントリーシートを必ず同封してください。特に連絡先担当者、電話、メールアドレスは必ず明記してください。FAX、メールによる送稿は受け付けません。エントリーシートはJCJ事務所に常備しますが、ここに添付のPDF版も活用してください。
●2020年JCJ賞エントリーシート.pdf

〈提出期限〉
 ◇新聞、出版作品は5月22日(金) 
 ◇放送・その他の作品は5月29日(金)

〈提出先〉
  〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル 402号
  日本ジャーナリスト会議 「JCJ賞」 応募作品係 (赤で目立つように表記)

※ 応募作品は返却しません。選考経過、選考理由などについてのお問い合わせには応じません。
※ 選考結果は7月中旬に主要新聞に発表するほか、JCJホームページに掲載します。
●なお今回、コロナ禍の影響のため選考作業、贈賞の公表日については、通年よりも大幅に先送りになる可能性があります。お含み置きください。

〈選考委員〉 (50音順・敬称略)
諌山 修(ジャーナリスト) 石川 旺(上智大学名誉教授) 伊藤洋子(元東海大学教授) 酒井憲太郎(フォトジャーナリスト)  鈴木 耕(編集者)  藤森 研(元朝日新聞論説委員)

〈問い合わせ先〉 JCJ事務所:電話 03-3291-6475 (月、水、金曜日の13時より18時まで)
         Eメール:office@jcj.sakura.ne.jp
                      
2020年4月13日
                日本ジャーナリスト会議
JCJ事務局長  須貝道雄
JCJ賞推薦委員会統括責任者  大場幸夫
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「コロナショック」利用も視野? 改憲前面に自民党運動方針=編集部

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 自民党は3月17日、コロナウイルスの流行で延期した党大会に代わる両院議員総会を開き、2020年運動方針を採択した。憲法について「国会発議に向けた環境を整えるべく力を尽くす」と明記。安倍晋三首相は「憲法改正を含めて運動方針に則り、一致結束して全力を尽くしたい」とあいさつした。
 新型コロナウイルス感染拡大に対して政府、与党一体となった取り組みを要請したが、すでにこの「ショック」を利用した改憲戦略が出てきていることを見逃すわけにはいかない。
伊吹発言が発端
 伊吹文明元衆院議長は1月30日、二階派の会合で「緊急事態に個人の権限をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と語り、2月1日には下村博文選対本部長も「改憲論議のきっかけに」と提起した。
 また1月28日の衆院予算委では、日本維新の会の馬場伸幸幹事長が「このようなことがあったから緊急事態条項を新設しなければならない、と言う議論を活発にすれば国民の理解も深まるのではないか」と質問、安倍首相は「緊急事態条項を含め…与野党の枠を超えた活発な議論を期待する」と答えている。
女性や青年狙え
 運動方針では、その冒頭に「新たな時代にふさわしい憲法へ」と題して改憲を掲げ、総合的な改憲運動を提起している。
 具体的には、憲法改正推進本部が「遊説・組織委員会」を設置して全国で「憲法改正研修会」を「精力的に」開催するほか、組織運動本部が女性の視点からのパンフや若い世代に向けた漫画入り冊子を作成。青年組織の「全国一斉街頭行動」などを「積極的に」展開、「友好団体」にも説明の機会を設けるなど「世論喚起に励む」とする。
 さらに「広報本部」は「憲法改正の主役はあなたです」というポスターの全国展開、インターネット動画の活用を通じて国民的な機運の盛り上げに努めるという。
ネット配信強化
 運動方針で自民党は、昨年の参院選について「わが党は憲法改正について『議論を前に進めるべきか、否か』その選択の選挙であることを国民に訴えた。結果、『議論を前に進めよ』との国民の強い支持を得た」と主張。「早期に衆参の憲法審査会の場における各党各会派の枠を超えた議論は、実施されるべきである」との論理を展開、改憲論議の推進を狙っている。
 もちろん参院選の結果から「『憲法論議を進めよ』が民意だ」などという結論は出てこない。
 このほか、自民党運動方針は、「党勢の拡大は道半ば」と各選挙の必勝に向けた党員拡大と組織力の強化をうたい、「友好団体」の結びつきの強化、「友好的な労組」との政策懇談、政策アピールを進めることや、少人数での車座「ふるさと対話集会」、日本の近現代史を学ぶ「まなびと夜間塾」、「地方政治大学校」との連携を強める。
 そして、講座のネット配信のほかホームページをリニューアルし、スマートフォンで見易さ、使いやすさを高め、閲覧者に合わせた「見える化」を図るという。
 特にSNSや動画放送局「カフェ・スタ」で一層面白い発信をする、など、ネット社会での広報強化をうたっている。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年04月12日

【今週の風考計】4.12─進む「#コロナ差別」と国家統制の怖さ

◆新型コロナウイルス感染が拡大する中、「#コロナ差別」が、ハッシュタグがつくほど世界中で広がっている。インターネット上の差別発言やヘイトを含むデマ、暴行などの「ヘイトクライム」が、頻発している。
 インドではヒンドゥー至上主義のモディ政権下、イスラム教徒がウイルスを拡散しているとのデマが、SNS上の「#コロナジハード」で拡散され、政権の意を受けた警察がモスクに踏み込む事態まで起きている。

◆日本国内でも、コロナをめぐるデマや誹謗中傷が拡大している。「医療関係者の子供は登園するな。卒園式もお断り」など、感染者の出た病院の職員が罵倒される事件まで起きている。愛媛県では、親がトラック運転手の児童に小学校の始業式や入学式を欠席させ、自宅待機を要請していた。親が感染拡大地域へ行き来するという理由からだ。「職業差別につながる」と指摘され撤回した。
 SNSなどから得るコロナ情報も、SNS自体がフェイクニュースの発生源となっているのをわきまえておく必要がある。情報が人為的・ボッド回路を通じてSNS上で拡散し、トイレットペーパーの買い占め騒動や納豆がコロナウイルスに効果があると聞くや納豆が品薄になるまで発展するのだ。
 WHOは新型コロナウイルスの感染拡大「パンデミック」を防ぐとともに、誤情報・偽情報の世界的な拡散「インフォデミック」に強い警鐘を鳴らしている。

◆厄介なのはSNS上での罵詈雑言の投げ合いである。首都圏からは一部の人が“コロナ疎開”で離島や避暑地に避難する動きが出てきて、医療設備の手薄なそれらの地域に感染者が一人でも足を踏み入れれば、途端に医療崩壊が起きかねない。
 そこから「東京の人=コロナ」と決めつけ、やむをえない帰省者にも<トンキン土人>などのレッテルを張り、まるでバイキン扱いの応酬が始まる。コロナへの「不安・恐れ」が「偏見・差別」を増長させ、人々に「負の連鎖」を拡大する。
 何もコロナウイルスは、人種・地域・性別・貧富などを嗅ぎ分けて感染しようと思っているわけではない。誰にでも感染するし、感染したからと言って感染者を非難するのも、感染者が謝罪するのも間違いだ。
 自分も当事者になるかもしれないと意識し、さらに全ての人が感染しているかもしれないという想定で、自分の行動を律することではないか。

◆もっと恐ろしいのは、緊急事態宣言の陰で進む事態だ。イスラエルでは携帯情報が個人隔離の判定材料にされ、台湾でも隔離が必要と思われた人が移動すると政府から警告メッセージが届く。国民の個人行動が全て監視可能になっている怖さである。
 ハンガリーのオルバン首相は、政権に批判的なメディアを抑圧するため、緊急事態宣言を無期限延長し、フェイクニュース対策と称して、政府の承認した事柄を「歪めて」伝えた者を 5 年間投獄することまで可能にした。
 「隠ぺい・改ざん」の安倍政権、大丈夫だろうか。<信なくば立たず>と頻繁に口にする首相だが、動静欄にあるコロナ対策会議の議事録は、いつ公開されるのか。政治的決定のプロセスは明らかにせず、ただ「命を守るため」と称して、基本的人権を制限し、放送を始めメディアへの介入を狙う。緊急事態を理由に報道機関を権力の支配下に置く動きは、まさに戦前の言論・報道統制そのものにつながる。(2020/4/12)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする