2020年04月06日

【月刊マスコミ評・出版】 政治のウソを見逃さないを貫く=荒屋敷 宏

 「雑誌ジャーナリズムの復権宣言!」の帯を「サンデー毎日」が目次に掲げたのは、2019年1月6日・13日合併号だった。高村薫さんの時評連載が始動したのも同号で、初回の見出しは「政治の嘘 見逃すまい」だった。同誌「編集長後記」によると、「決意の言葉を抱きしめる思いで、巻頭特集として掲載」したという。
 同年1月20日号で「『報道・評論・読物』の復権!」となったものの、同年1月27日号から目次に「雑誌ジャーナリズムの復権!」の帯が躍り始めた。同誌が1年3カ月以上もキャンペーンを続けていることに驚く。
 手元にある「サンデー毎日」2020年3月29日号を見ると、鈴木哲夫さんの「安倍政権の大ウソを見破れ」をはじめ、内田樹さんの「民主主義を目指さない社会 なぜ日本の統治機構が崩れ始めているか」など、初心を忘れていないことがわかる。
 大阪日日新聞記者の相澤冬樹さんのスクープには驚かされた。発表された媒体は、「週刊文春」3月26日号だったが、森友事件の公文書改ざんを強要されて2年前に自ら命を絶った近畿財務局職員・赤木俊夫さんの遺書の全文公開である。このスクープのおかげで発行部数53万部の「週刊文春」は約2年半ぶりに完売したという。「週刊文春」が「隠蔽の安倍政権」追及を加速させるきっかけになるだろうか。
 心を動かされるのは、赤木俊夫さんの「手記」を入手できた経過である。相澤さんによると、取材を避けていたはずの赤木さんの妻は、相澤さんに会うなり、カバンから数枚の紙を取り出したという。妻は、夫が残した「手記」を相澤さんに託して、そのまま夫の後を追うつもりだったというから衝撃的である。
 相澤さんが赤木さんの遺書でもある「手記」の入手に当初、失敗した経過が生々しい。赤木さんの妻は「興奮する私の様子を見て『手記』を託すのをやめ、同時に命を絶つのもやめた。つまり私は重要文書入手という記者の仕事をしくじった」という。が、妻の自死を思いとどまらせることができて、「けがの功名≠あげていたことになる。人生何が幸いするかわからない」との述懐は、人の命を左右するスクープの裏事情を伝えている。
 政治のウソを見逃すまいとの思いは、NHK司法キャップ当時から森友事件を追及していた相澤さんにもあるはずだ。彼の著書『安倍官邸 vs NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)に詳しい。初心忘るべからず。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

posted by JCJ at 13:59 | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする