2020年04月16日

【映画の鏡】 一人っ子政策の悲劇 『在りし日の歌』 中国人夫妻の激動の30年=今井潤

 中国の人口は1945年に人民共和国建国時には約5億人と言われていたが、社会の安定化により死亡率が激減し、人口爆発が起きた。そして1980年に共産党は一人っ子政策と呼ばれる厳しい人口抑制策をとるようになる。
 1986年、国有企業の工場で働くヤオジュンとリーエン夫妻は同じ工場の同僚である夫婦と同じ宿舎で暮らしていた。二組の夫婦には同じ年の同じ月に生まれたシンとハオという息子がいた。
 二人の息子たちは兄弟のように育った。ある日リーエンは第二子を妊娠するが、一人っ子政策に反するため、夫婦だけの秘密にしていた。しかし強制的に病院に連れていかされリーエンは堕胎させられ、手術後の事故で、二度と妊娠できない身体となった。
 1994年のある日、シンがハオに連れられて行った川で幼い命を落としてしまう。
 一人息子を失ったヤオジュン夫妻は住みなれた故郷を捨て、南方の漁港で修理工場を開き、養子をもらい、死んだ息子と同じ名を付けた。しかしその息子は高校生になると、身替りの人生を嫌い、反逆して家出してしまう。
 やがて時は流れ、改革開放後一人っ子政策が進む1980年代、目覚ましい経済発展をとげた1990年代、そして2010年代、大きく変貌する社会の片隅で、懸命に生きる市井の人々を優しく描く3時間の大作である。
(4月3日より角川シネマ有楽町、渋谷ル・シネマほか全国順次公開)
  今井 潤
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号



posted by JCJ at 14:15 | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする