2020年05月31日

【今週の風考計】5.31─パステルナークとヴィソツキーへの想い

ソ連の作家ボリス・パステルナークといえば、筆者が1981年5月、ソ連を旅した時に随伴の通訳女性が、本当にうれしそうな顔をしたのが忘れられない。「ベリョースカ」にまつわる出来事だ。
 当時のソ連で合法的に外貨が使えるのは「ベリョースカ」しかない。ここには外貨を落とす観光客向けの高価なマトリョーシカ、琥珀などの宝石、キャビア、高級ブランデー「アララット」などが売られている。通常ではソ連の一般市民は入れない。
だがブレジネフ政権も1970年代後半になると、「ベリョースカ」には多様な消費財や文化財が陳列され、ある手を使えば買えるようになった。公式には刊行・販売禁止のパステルナークやソルジェニツィンなどの本も密かに並んだ。

通訳の彼女は、ある時「ベリョースカにはパステルナークの本があるはず、あれば買ってほしいの…」と、「Борис Пастернак Boris Pasternak」のメモをくれた。意識的に「ベリョースカ」に入り探してみた。
 ついにペーパーバック版の本を見つけた。著者名は合っている。パラパラめくると、どうも詩集みたいだ。ともかく購入して、彼女にプレゼントした。その時の顔が忘れられないのだ。ニコッとして、すぐにバッグの中にしまった。

今から思えば、もう少し、パステルナークの詩について聞いておくべきだった。後で調べてみると、渡した本は、パステルナークが1922年、32歳のときに完成させた『わが妹人生―1917年夏』(Сестра моя − жизнь)と思われてならない。わが妹とは、パステルナークが5年前に激しい恋をした少女で、その恋愛の一年を連詩にして物語にしたものという。
1940年代以降、パステルナークが詩の発表をやめ、また過去の詩集が絶版にされても、人々はパステルナークの詩を愛し、KGBの目を恐れながらも、手書きの写本やガリ版刷りの詩集を作り、手から手へと渡されて読まれたという。いわゆる地下出版(サミズダード)である。

おそらく1980年代に入っても、ソ連の人々は容易に購入できなかったに違いない。禁書扱いの『ドクトル・ジバゴ』が、正式にソ連で刊行されるのは1988年、ゴルバチョフのペレストロイカ路線が敷かれてからだった。
 晴れて翌年の1989年、パステルナークの息子がソ連政府に父のノーベル文学賞授賞を申し出て承認された。なんと受賞発表から30年後のことだ。今は日本でもパステルナークの詩集・小説は、どれも翻訳され手にできる。
しかし今でも入手しがたいのが、前に触れたヴイソーツキイの歌。死の3年前、1977年に録音の「ウラジーミル・ヴイソーツキイ/大地の歌」(OMAGATOKI SC-4101〜2)とあるレコードが唯一。
 いま奥から探しだし針を落として聴いている。ギターの音に合わせて、地の底から這いあがってくるような、しゃがれた声、ドクトル・ジバゴのうめき声にも重なってくる。昨日30日は、パステルナークの死後60年に当たる。(2020/5/31)
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2020年05月30日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 NHK「BS1スペシャル」の海外コロナ危機番組に共感

        2. ペスト仮面.jpg 
  3月以降新型コロナ関連番組がワイドショー、ニュースで数多く放送されている。取材者自身コロナウイルスを避けながらの大変な取材だと思うが、「BS1スペシャル」特に海外の様子を伝える番組に力のこもった番組が多くみられた。
「そして街から人が消えた、封鎖都市・ベネチア」(4/19,BS1スペシャル)でベネチアが都市封鎖に至った状況を見た。
 ベネチアは昨年末、50年ぶりといわれた高潮(1.8m)によって街の大半が2メートル近く海中に沈んだ(11/14)。苦難を乗り越え、街の復活を世界にみてもらおうと開いた「カーニバル」のさなか、新型コロナが襲い、3月8日都市封鎖に至った。
 番組の前半で際立ったのは「ペストの医師の仮面」(写真)をつけた人々が練り歩くパレードだった。イタリアでは14世紀にペストに襲われた際、医師が鳥の仮面をつけ、長い厚手のコートをまとい、手袋に長い杖を持って診察、長く伸びた鳥のくちばしに薬草を詰めた。歴史を語る伝統の仮面は、かつての悲劇を忘れないためだ。
 「コロナ危機、世界が苦闘した4カ月間」(5/9BS1スペシャル)では、最初の発生国中国、抑えみに成功した韓国、感染の中心地となったイタリア、シャンゼリゼに人通りが消えたフランス、異例のメルケルテレビ演説のドイツ、首相自身感染のイギリス、3月に入って感染急拡大のアメリカ、最大のロックダウン国インド、給水車を待つ南アフリカの人々・・・・。など5月に至る世界各国の状況を俯瞰した。
 「ウイルスVS人類、スペイン風邪 100年前の教訓」(5/12BS1スペシャル)は記録を紐解いていくと今の新型コロナと似通った現象に人類がほんろうされていたことが分かる。
 当時の歌人与謝野晶子は家族がインフルエンザに感染したことについて憤懣をのべた。「社会的施設に統一と徹底が欠けているので、国民はどんなに多くの避けられるべき災いを避けずにいるかしれない」。いまも100年前も変わりない事態だ。
 これらの映像や知見によって、遠く隔てた国の市民と共感し、共鳴し、ともに行動できる。また歴史をさかのぼって過去に生きた人とも共鳴しあうことができる。
隅井孝雄 (ジャーナリスト)

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2020年05月29日

政府批判と多様性消えた コロナ危機下で変わる報道 戦争心理が人権を駆逐 内側からジャーナリズム縛る=小笠原みどり

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 カナダ政府が新型コロナウイルス対策として、3月16日に外国からの旅行者の入国を禁止し、トゥルードー首相が人々に「家にいるように」と呼び掛けてからすでに9週間、私は「緊急事態」下で暮らしている。 
  緊急事態は州知事によって宣言され、私が暮らす人口最多のオンタリオ州では食料品店と薬局以外はほぼすべての事業所が閉鎖、学校は休校、5人以上の集まりが罰則付きで禁じられるなど、日本より厳しい制限が私生活の細部にまで課されている。
 カナダのコロナ報道は中国で感染が広がった1月に始まっていたが、イタリアで死者が急増すると明らかに危機感が強まり、国境閉鎖とともに報道はコロナ一色に染まった。初めは人権に配慮した多様な感染対策を紹介していたが、国境閉鎖とともに読者・視聴者に対して「手を洗え」「人から2メートル離れろ」と命令調になり、さらには「コロナウイルスとの闘い」を第二次世界大戦になぞらえる戦争用語を連発するようになった。その変化を報告する。
当初は差別に警鐘
 1〜2月、メディアは至って冷静だった。中国・武漢の封鎖や、横浜港のダイアモンド・プリンセス号の隔離で帰国できなくなったカナダ住民に、政府は帰国便を手配し、メディアは戻ってきた人たちの安堵の声を伝えた。帰国者たちは軍の施設などに14日間隔離されたが、公共放送C B Cラジオはこの隔離が本当に必要なのか、隔離が及ぼす精神的・身体的な悪影響はないのかを公衆衛生の専門家らに取材。隔離よりも治療体制の拡充に力を入れた方が有効である、という見方も報じた。
 やはり中国から始まった2003年のS A R S流行時に、トロントの中華街は閉店が相次ぎ、中国出身者への差別が強まったことから、感染症がもたらす社会的な分断にも警鐘を鳴らした。カナダのメディアには日本に比べて、日頃からよく大学の研究者が登場するが、「伝染病には生物学的側面だけではなく、政治的、経済的、社会的な影響を考えて対処しなければ、より多くの人を傷つける」と語った感染学者の言葉が、今では重く響く。
鎖国ドミノで一変
 個人の自由と社会の多様性を尊重する姿勢は、新型コロナウイルスが欧米内部を直撃するとともにメディアから失われた。米国のトランプ大統領が欧州からの入国者の拒否を発表した際、C B Cはまだ「こんな独断的な手法は、国際協調が必要なパンデミック対策に有効ではない」という専門家の批判を報じていた。が、自国政府が鎖国ドミノに加わるや、政府の対策に疑問をさしはさむ発言は消えてしまった。
 全国紙グローブ・アンド・メールは社説で「ウィルスを止めるためにいま行動するか、後で悔やむか」(3月16日)、「先回りしてウィルスを殺せ」(17日)、「いい市民になろう、距離を保って」(18日)、「ウイルスとの戦争の準備はいいか?」(19日)と連日、読者を総動員体制に組み込むことに精を出した。同紙のコラムニストが「現在のパンデミックをある種の戦争として考えることには、奇妙な心地よさがある。それは私たちの多くがすでに知っていて、よく理解できる概念だからだ。戦争なら私たちは前にしたことあり、何を乗り越えなければいけないのか思いつく」(19日)と書いた時には目を疑った。
実情を覆い隠した
 医療関係者もスーパー従業員もひとまとめに「前線要員」と呼ぶなど、粗雑な戦争の比喩は広がるばかりだ。戦争の心理が、コロナ対策の実像を覆い隠している。カナダのコロナによる死者の約8割が介護療養施設の高齢者と職員だという事実は、明らかに福祉制度の失敗を示し、カナダ史上最悪の連続銃撃事件(22人殺害)は緊急事態下で発生したというのに、原因に深く切り込んだ報道はない。戦争心理がジャーナリズムを内側から縛ることを目の当たりにしている。
小笠原みどり(ジャーナリスト、社会学者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月28日

【メディア気象台】 4月下旬から5月上旬=編集部

◇報道の自由度、日本66位
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は21日、2020年の「報道の自由度ランキング」を発表した。調査対象の180カ国・地域のうち日本は66位(前年67位)だった。日本の状況について、東京電力福島第一原発といった「反愛国的」テーマを扱ったり、政権を批判したりする記者がSNS上で攻撃を受けていると指摘した。新型コロナウイルスの感染が広がる状況については、ウイルスの脅威を利用して「平時ではできないような規制を課している」国があると指摘。中国(177位)やイラン(173位)で大規模な検閲が行われたと指摘した。(「朝日」4月22日付ほか)
◇コロナ禍の「報道危機」調査
新聞や放送、出版などメディア関連労組でつくる「日本マスコミ情報労組会議」(MIC)は21日、「報道の危機」をテーマにしたアンケートに寄せられた報道関係者の声を公表した。新型コロナウイルスをめぐっては、「感染防止を理由に対面取材が難しくなり、当局の発信に報道が流されていく恐れがある」といった声が上がっている。新型コロナウイルスをめぐる報道環境については、「会見がかなり制限され、入ることさえできなくなったものもある」「現場取材や編集などを対面で行えない」との指摘や、「3密」がそろった場所での取材を不安視する声が寄せられた。(「朝日」4月22日付)
◇「桜」扱うNHK番組、放送直前差し替え
社会の多様性をテーマに、障害や差別の当事者らが意見を発信するNHK・Eテレのバラエティー番組「バリバラ」の午前26日の午前零時からの再放送が、放送直前に別の内容に差し替えられていたことが同日、分かった。当初は首相主催の「桜を見る会」のパロディーなどを盛り込んだ回を予定していたが、実際に放送したのは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け障害者たちの生活支援を巡って議論した回。番組の公式ツイッターには「圧力をかけられたと、あらぬ疑いをかけられぬ」との声も寄せられたが、番組を制作したNHK大阪放送局の広報部は「コロナ感染の現状を鑑みて再び伝えるべき内容と判断した。圧力などはない」としている。内容の変更は放送30分前に番組サイトで告知された。(「東京」4月27日付ほか)
◇新聞協会、民放連がWG初会合
日本新聞協会と日本民間放送連盟は7日、新型コロナウイルスを理由とした医療従事者らへの差別や偏見について考える合同ワーキングループ(WG)の初会合を開いた。両団体に差別や偏見防止策の方策を共に検討するよう求める要望書を送った京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授ら専門家8人もウェブ会議で参加した。会合では、専門家から「最も感染リスクの高い医療従事者や医療施設に関する報道で医療従事者の家族が差別、偏見を受けることもある。改善策を考えたい」との意見が出た。報道機関側からは「医療関係者に対する非難や中傷は許容できないとの立場で報道している」などの声が上がった。両団体は差別や偏見を防止する取り組みの一環として今月末までで共同声明を発表する意向を示した。(「毎日」5月8日付ほか)
◇「#桁検察庁法改正に抗議します」、著名人ら380万以上投稿
会員制交流サイト(SNS)のツイッター上で9〜10日にかけ、検察庁法改正に抗議意欲を示す市民や野党議員、著名人のツイートが相次ぎ、一時約380万以上を記録した。検察官の定年を延長する検察庁法の改正部分を含んだ国家公務員法改正案を巡っては、検察庁の独立性が安倍政権にゆがめられないと懸念する声が出ている。(「神奈川」5月11日付ほか)
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月27日

フリー記者が見た安倍首相会見の現実 質問までなんと7年余 首相の「言いっぱなし」を許す 官邸とクラブのなれあい儀式=畠山理仁

 第二次安倍政権下で、たった一度の質問機会を得るまでに、7年3カ月以上もかかった。
 信じられないかもしれないが本当だ。これはフリーランス記者である私が4月17日に体験した「安倍首相記者会見の現実」である。
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 私が首相官邸で開かれる首相会見に初めて参加したのは、2010年3月26日のことだ。従来は内閣記者会(記者クラブ)のメンバーに参加者が限られていた首相会見が、民主党の鳩山由紀夫首相時代に一部のフリーランス記者にも開放された。それをきっかけに私も参加し始めたのだ。
 民主党政権時代は、私を含むフリーランスやネットメディアの記者にも質問の機会があった。しかし、2012年12月26日に第二次安倍政権が発足すると、フリーランスの記者はまったく当てられなくなった。その期間は7年以上。完全な異常事態である。
 そこに風穴を開ける事件が今年2月29日に起きた。この日、安倍首相が会見をわずか36分で打ち切って立ち去ろうとすると、フリーランスの江川紹子氏が「まだ聞きたいことがあります」と声を上げたのだ。
 この様子はNHKの中継で流れた。しかし、首相は江川氏の声を無視して私邸に帰ってしまった。
 江川氏がこの顛末をSNSで報告すると、安倍首相に対する世間からの批判は一気に高まった。
 ここで潮目が変わり、その後に開かれた6回の首相会見では、毎回必ずフリーランスの記者が指名されるようになった。
厳し過ぎる参加条件
 首相会見の実態は、記者であっても知る者は少ない。そこで、まずは素朴な疑問に答えたい。
「セキュリティチェックはあるのか?」
→ある。アポイントはもちろん、身分証明書の提示や金属探知機の通過が必要だ。現在は新型コロナウイルス対策のため体温も測られる。「密を避ける」という理由で、会見場所も換気の良い2階ホールに移された。従来の会見室には約120席あった記者席が29席まで減らされた。そのうち19席は内閣記者会の常任幹事社の指定席。残りの10席を記者クラブ以外の記者が抽選で争っている。
「参加したらお金をもらえるの?」
→一切もらえない。こちらから払うこともない。
「誰でも参加できるの?」
→できない。
 正直に言う。記者クラブ以外の記者にとって、首相会見に参加するハードルは高すぎる。
 まず、フリーランスの場合は条件をクリアして、「事前登録者リスト」に名を連ねる必要がある。
 第一の条件は、日本新聞協会や日本雑誌協会などの加盟社が発行する媒体に「署名記事等を提供し、十分な活動実績・実態を有する者」。
 第二の条件は、前述した団体加盟社からの「推薦状(証明書)」だ。
 さらに、「直近3ヶ月以内に各月1つ以上の記事等」を毎回提出する。記事内容も「総理や官邸の動向を報道するもの」に限られている。
 いま、フリーランスで「事前登録者リスト」に載っている者は10人ほどしかいない。全員が民主党政権時に登録した記者たちで、自民党政権下では一人も新しい登録者がいない。ハードルが高すぎるため、申請しても官邸側に断られるのだ。
追加質問できない
 そもそも、首相会見には「台本」がある。冒頭20分ほどは首相が演台横のプロンプターに映し出された演説原稿を読む。それが終わるとプロンプターが下がり、記者との質疑応答に移る。
 フリーランスは質問の事前通告をしていないが、内閣記者会からの質問は官邸側が把握している。
 しかも、演台中央にはモニターが埋め込まれており、首相の手元には想定問答のファイルもある。
 質問者は長谷川榮一内閣広報官が指名する。質問は「一問一答」だから、首相が曖昧に逃げても追加質問ができない。結果的に首相の「言いっぱなし」を許すことになる。
 つまり、会見の主催者たる内閣記者会は、権力側に主導権を握られたまま、「台本通りの儀式」に付き合わされているのだ。
 これで本当に会見と呼べるのか。内閣記者会の奮起に期待したい。
畠山理仁(フリーランスライター)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

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2020年05月26日

【焦点】 大量返品を危惧 コロナで追いうちの中小出版社=橋詰雅博

 人口減、書店の激減、消費税率10%の値上げによる出版不況は、コロナ禍で既存の書店の臨時休業や営業時間の短縮でより深刻になっている。コロナで追いうちをかけられた出版社は、どんな状況なのだろうか。
 所属する団体のアンケート調査に応じた中小出版社10数社の回答の集計表では、リモートワークを実施している社は70〜80%。売り上げは前年同期比(3月と4月の2カ月間)で30〜50%減だ。手元資金でどのくらい経営を維持できるのかの問いに対して3カ月が最も多い。つまり6月以降、経営危機に陥るというわけだ。印刷物が事業の中心である会社は打撃が大きい。
 この団体の世話役は「イベントのチラシや旅行関係のフリーペーパーなどの仕事がなくなったからです。開店休業¥態と言っても過言ではありません」と話す。ほとんどの会社は持続化給付金など公的資金を受ける申し込みを済ませている。これによってなんとか危機を乗り切ろうとしている。
 ある出版社の幹部社員はこうつぶやく。
「取次会社から書店への配本にブレーキをかける要請はなかった。5月分の返品はこらからですが、大量に戻ってくるのではと心配です。恐怖を感じています」
 中小出版社がバタバタ潰れたら、日本の出版文化は先細る。
橋詰雅博
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2020年05月24日

【今週の風考計】5.24─『ドクトル・ジバゴ』に絡むミステリー

★緊急事態宣言が緩和されつつあるとはいえ、“巣ごもり”の続く我が身にあれば、もう読書しかない。ラーラ・プレスコット『あの本は読まれているか』(東京創元社)を、一気に読んだ。
★昔のソ連では、ボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』が、「十月革命を冒涜している」との理由で、発禁となっていた。だがその原稿を、ある出版社が入手し、1957年、イタリアで刊行した。英米仏でも翻訳されベストセラーとなった。
 そこで米ソ冷戦下にある米国では、CIAが有能な女性タイピストを工作員として使い、その本を密かにソ連の人たちにバラ撒く作戦に打って出る。言論統制や検閲で「出版・表現の自由」を奪っているソ連の現状を、知らしめるのが目的というストーリー。

★メロディー<ラーラのテーマ>が耳によみがえる。デイビッド・リーン監督「ドクトル・ジバゴ」に感動した頃を思い出す。まさか小説『ドクトル・ジバゴ』の本に、CIAが絡んでいたとは思わなかった。
映画「ドクトルジバゴ」LD.JPG 調べてみると、CIAはソ連製の紙とソ連製の活字を使って、ロシア語「ドクトル・ジバゴ」本を作り、スウェーデン・アカデミーに持ち込んで、1958年にノーベル文学賞を授賞させたという。
 これに対しソ連政府は、本書への贈賞は断じて認めるわけにはいかないと、強烈な圧力や脅迫をパステルナークに加え、ついに受賞を辞退させる。その後、彼はモスクワ郊外に蟄居し、2年後の1960年5月30日、肺がんで死去。今月30日は死後60年となる。

★さて今から40年ほど前、正確には1981年、ゴールデンウイークを挟んで3週間ほど、モスクワ、レニングラード、キエフなど、仕事と観光を兼ねて回った旅を思い出す。ブレジネフ政権が末期を迎える時期だ。
 モスクワ五輪が前年の1980年7月19日から、米国・日本などの不参加もあったが開催された。その期間中の7月25日、ソ連の反体制歌手ウラジーミル・ヴイソーツキイが42歳の若さで逝った。12月9日にはビートルズのジョン・レノンが米国で凶弾により40歳で死去する。
★とりわけヴイソーツキイは、あまりにも激しい体制批判を重ねるゆえに、生前には1冊の詩集も1枚のレコードも刊行・発売できなかった。
 だが、「彼の歌うカセットテープはコピーされ、人づてに回されて聴いたわ。私も持っているの…」と、筆者のソ連の旅に通訳で随伴の若いロシア女性は言い、さらに彼女は悲しみが癒えない口ぶりで、9カ月前を思い出すのか、葬儀の行われたタガンカ劇場には10万を超える人びとが訪れたと語ってくれた。

★このヴイソーツキイは俳優でもあり、パステルナークがロシア語に翻訳したシェークスピアの「ハムレット」を演じている。ともにソ連政権の圧政に苦しんだ者の共感からだろう。(2020/5/24) 次週に続く
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2020年05月23日

 コロナ利用し改憲? 緊急事態で自民提案=丸山重威

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 新型コロナウイルス感染で、安倍首相は4月8日、東京、埼玉、神奈川、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に「非常事態宣言」を発令、16日これを全都道府県に拡大した。国民の行動や営業規制を伴う宣言だが、首相はこれを改憲に結びつけようと躍起。惨事を利用して、社会の仕組みや制度を変える「ショックドクトリン」が露骨に動き出している。
国会で堂々と改憲論
  安倍首相は7日の衆院議院運営委員会で「新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会の場で、与野党の枠を超えた活発な議論が展開されることを期待したい」と述べ、憲法審査会での改憲論議を要求した。首相は「緊急時に国家や国民がどんな役割を果たし、国難を乗り越えていくべきかを憲法にどう位置づけるかは極めて重大な課題」とし、自民党が提案している改憲4項目のうちの「緊急事態条項」を上げ、改めて意欲を見せた。
定足数や選挙で提起
 一方、自民党は憲法審査会の新藤義孝・自民党筆頭幹事が、3月19日と4月3日、山花郁夫・野党筆頭幹事(立憲民主党)らに幹事懇談会や審査会を開くよう求めた。
 新藤氏の提案は「緊急事態における国会機能の確保」をテーマに審査会で議論しようというもので、@国会議員に感染者が広がった場合、定足数を満たす方策や国会機能を確保する方策はあるかA例えば現在の衆院議員の任期は来年10月21日までだが、感染症が収束せず選挙ができず、議員不在になった場合、どう対処するか―を上げた。 当然野党は拒否。だが自民党改憲推進本部は、党関係の会議がほとんど中止されている中で4月10日、会合を開き約50人が集まった。
口火切る「維新」
 もう一つ見逃せないのは日本維新の会の動き。コロナを利用した改憲論の口火を切ったのが維新の馬場伸幸幹事長で、1月28日の衆院予算委で「コロナウイルスの感染拡大は非常に良いお手本になる」「緊急事態条項について国民の理解を深めていく努力が必要だ」と安倍首相に質問。首相は「今後想定される巨大地震や津波等に迅速に対処する観点から憲法に緊急事態をどう位置付けられるかは大いに議論すべきもの」と答えた。
 7日の安倍発言も維新の遠藤敬議員が「国が国民生活を規制するに当たっては、ある程度の強制力を担保するため緊急事態条項が必要だ」との質問への答弁で、維新は事実上「安倍改憲答弁引き出し役」になっている。
コロナ・ファッショ
  改正する必要がなかった「新型インフルエンザ特別措置法」を安倍政権があえて改正したのは、「緊急事態」をクローズアップするためだった、とも言われる中で、「緊急事態宣言」をする機会ができたいま、「コロナ感染防止」→「行動や営業など私権の制限」→「非常事態宣言」の道筋には警戒が必要だ。ナチスの独裁は「国会の停止・首相への全権委任」に始まり、日本の戦前・戦中のスローガンは「ほしがりません勝つまでは…」。これを繰り返すわけにはいかない。
丸山重威
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

 
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2020年05月22日

【おすすめ本】毎日新聞「桜を見る会」取材班『汚れた桜 「桜を見る会」疑惑に迫った49日』─人びとの怒りの声を背に数々の疑惑を追い続けた記録=藤沢忠明(しんぶん赤旗記者)

 本書は日本共産党の田村智子参院議員の質問に端を発した「桜を見る会」疑惑を、記者自身が怒りや危機感を持って追い続けた生々しい記録です。
 安倍政権の政治モラル崩壊が凝縮された「桜を見る会」は毎年、開かれ、多くのメディアが取材してきました。それが、なぜ問題にされてこなかったのか―。
 本書も紹介しているように、この安倍首相の私物化疑惑をスクープしたのは、赤旗日曜版の昨年10月13日号です。『世界』1月号の「メディア批評」は、「赤旗にあって大手メディアにないものは『追及する意思』ではないか」と書いています。実際、田村質問の扱いは、「毎日」を含め、目立つものではありませんでした。

 毎日新聞・統合デジタル取材センターの記者らが、ことの重大性に気づいたのは、ツイッターにあふれる「モリカケと同じ、税金の私物化だ!」などの怒りの声です。
 一方で、「これほどの問題をなぜ報道しない」とのメディア批判もあり、結成された取材班が「桜を見る会」で何が起きたのか、何が問題なのか―と報道機関への叱咤激励の熱量の大きさも感じながら模索する姿が率直に記述されています。
 その結果、「いつまでやっているのか」というSNS上の批判について、「その批判は違う。桜を見る会には日本という国の根幹に関わる問題が凝縮されていることが、本書を読めばわかっていただけると取材班は信じている」と述べています。
 注目したのは、疑惑追及のさなかに首相側が呼びかけた会食を「毎日」は欠席したことです。メディアはどちらを向いて仕事をするのか、いうまでもないことです。(毎日新聞出版1200円)
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2020年05月21日

【お知らせ】 新体制でスタート JCJ新事務局長に須貝道雄=編集部

 3月29日に予定していたJCJ総会は新型コロナウイルス問題で会場が使えず、急きょ中止した。20年度の活動方針と人事は運営委員会で決定し、4月から新体制でスタートした。
 代表委員に新たに藤森研(元朝日新聞論説委員)が就任し、事務局長は4年務めた橋詰雅博(元日刊ゲンダイ記者)から、須貝道雄(元日経記者)に交代した。
 20年度の活動方針でポイントとなるのは「会員を100人、読者を100人増やす」運動を提起したこと。現政権は対テレビ局を中心に、メディアへの介入を強めている。真剣に取材・報道するジャーナリストを支援し、守るためにJCJの輪を広げることが急務だ。
 この機会に報道に関心のある市民の方も含め、多く記者や編集者の方々に会員になってもらいたい。
 もう一つは、ネットでの情報発信を抜本的に強化することだ。
「Daily JCJ」の内容を多彩にし、文字だけでなく、写真や映像なども発信していく。
 コロナ問題で先行きは見通せないが、学生や現場の記者も交えた全国交流集会を11月初めに3泊4日の日程で開催する。震災と原発事故から10年目となる福島・宮城をめぐり、直面する問題を考えていく。 
◆20年度の役員体制◆
【代表委員】清水正文▽白垣詔男▽隅井孝雄▽中村梧カ ▽藤森研▽守屋龍一▽吉原功 
【事務局長】須貝道雄【機関紙編集長】廣瀬功【運営委員】河野慎二▽水上人江▽橋詰雅博▽須貝道雄▽矢野昌弘▽鈴木賀津彦▽藤森研▽大野晃▽大場幸夫▽杉山正隆▽廣瀬功▽古川英一▽保坂義久▽丸山重威▽茂木章子ほか【JCJ賞選考委員会】諌山修▽石川旺▽伊藤洋子▽酒井憲太郎▽鈴木耕▽藤森研
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号


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2020年05月20日

NHK経営委員長 「森下氏辞任を」声高まる 放送法に違反と追及 自主自律に無理解 番組介入=小滝一志

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 NHK経営委員会は、2018年10月23日上田良一会長(当時)に「厳重注意」した。当初、「ガバナンス体制の徹底を求めた」と説明したが、実は、経営委員の個別番組への干渉を禁じる放送法32条に反する議論の末に下した処分だったことが明らかになった。 
放送法32条に違反
 3月2日、毎日新聞のスクープでこの事実が明らかになると、国会でも、野党が放送法違反と追及、森下経営委員長の辞任を求める声が上がった。
 NHK問題に取り組む各地の市民団体からも、「事実上の番組内容への介入」「NHKの自主自律の破壊者」など批判が集中、日放労(NHK労組)委員長も「放送法違反の疑いがある」と見解を表明した。
 批判の高まりを受けて、NHK経営委員会は3月24日一連の「対応の経緯」を公表、非公開会議の内容説明に追い込まれた。「公表すべきだったと反省」と謝罪はしたものの、「状況によっては番組について意見を述べ合うこともありえる」と今も居直っている。
「厳重注意」後も改変
 公表資料では「(上田)前会長に対する注意が、番組の取材や制作に影響したとは考えられません」と弁明しているが、経過を見ればこれは事実に反する。
 18年10月の会長への「厳重注意」後、10月30日放送予定の「かんぽ不正」問題にも触れる続編を編集中のディレクターに、番組統括が「一切理のないお願いだが、郵便局を出すことで放送後に厄介な問題が起きる」と郵便局の話題に触れぬよう指示されたという。事実、放送された番組「あなたの資産をどう守る?超低金利時代の処方箋」では、郵便局の話題には一切触れなかった。
見識欠く森下氏
 「厳重注意」を下した会議を主導した森下氏は、「今回の番組の取材は稚拙、取材行為がない。インターネットを使う情報は偏っており、作り方の問題だ。郵政側の抗議への対応も視聴者目線に立っていない」「郵政の不満の本質は取材内容だ」などと発言したとされる。
 この発言は、第一に経営委員でありながら制作現場への理解に欠けている。制作の労苦への共感が感じられず、オープンジャーナリズムという新しい取材方法への理解もない。第二に、外圧から現場を守る防波堤を期待される経営委員の立場を忘れ、抗議してきた郵政の考えに寄り添うもので、「放送の自主自律」を全く理解していない。第三に、郵政の抗議がガバナンスを口実にした番組への抗議であることを知りながら、会長への「厳重注意」を主導、経営委員の個別番組への干渉を禁じた放送法32条違反である。
放送の自律に無理解
 会議で上田会長が「(経緯が)公になればNHKは存亡の危機に立たされる」と強く抵抗したことを、森下氏は「特に重大だとは思っていなかった」と国会で答弁している。これも「放送の自主自律」への無理解の極みだ。会議に先立つ9月25日、森下氏は鈴木郵政副社長と面談したが、この時点で、「経営員会は番組に関与できない」と断るべきだった。
  3月16日から24市民団体が呼びかけて森下氏の経営委員辞任を求める署名運動が開始された。この取り組みを新型コロナパンデミックスの陰に埋もれさせてはならない。                          小滝一志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年05月19日

【スポーツコラム】 プロ意識奪う無観客試合=大野晃

 プロ野球オープン戦や大相撲春場所が無観客で行われた。
 長引く新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策で、大相撲は夏場所を中止し、7月の名古屋場所を東京に移して無観客で開催するという。
 プロ野球の公式戦開幕やサッカーJリーグの再開は決まらない。興行日程を消化するため無観客もやむなしのようだが、競技者の高度な能力や迫力ある試合を見せて楽しませるプロスポーツが根源的な問題に苦悩している。
 無観客では、プロ意識や技能を披露する舞台がなくなる。映像で見せても、観客との人間的な触れ合いがない。プロ競技者は自らスポーツを楽しむばかりでなく、ファンと一体でプレー意欲を高め、試合を盛り上げ、それが喜びの源泉となる。
 能力評価を決める試合が欠かせないが、無観客では存分に力を発揮できない。だから、無観客のむなしさを語る競技者が多かった。
 ファンとのつながりを重視する競技者たちの、ネットでの懸命な訴えが広がった。
 テレビ観戦でも、プロ競技者のプレーを楽しめるというが、無観客試合では、競技場内の興奮が伝わらないうえ、臨場感に乏しいから競技場へ足を運ぶ満足感に欠けるというファンが多い。
 無観客試合はプロ競技者の人間的魅力を薄れさせ、スポーツの人間的価値を実感させないようだ。外出自粛で、競技をテレビゲーム化して見せることが多くなったものの、人間的なスポーツとは異質と考えるファンが少なくない。
 無観客試合は、「見るスポーツ」の楽しみとは何かを、考えさせる。
 放映権料確保などのために競技団体や主催者が無観客試合を選択したのだとしたら、競技者やファンの露骨な商業主義的利用だ。
 プロ競技とマスメディアの関係に疑念が浮かぶ。プロ競技に偏重したマスメディアだけに、競技会の消えた世界で、スポーツの人間的発展と報道のあり方が改めて問われている
大野晃(スポーツジャーナリスト)

posted by JCJ at 13:51 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月18日

コロナ感染拡大 医療崩壊は「人災」 病床削減や病院統廃合 対策では後進国か=杉山正隆

  新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づき福岡など7都府県に緊急事態宣言が4月7日発出された。商業施設が休業するなど生活への影響が既に出ている一方、安倍首相は憲法改正への議論が進むよう期待感をにじませるなど、危険な動きが見え隠れする。
 同宣言は8日から5月6日までの約1カ月間だが延長される可能性が高い。臨時医療施設のための土地・建物の使用が所有者の同意無しに出来るなど住民の私権の制限もできる。感染爆発等には効果が期待される一方、その実効性より心理的な悪影響が大きく、中小企業等の多くの資金繰りが困難になりつつある。制度的な保障策を政府は打ち出す必要があり一部は実行もされているが、タイムラグが大きく、必要な資金が十分に供給されるか否か疑いがある。
 今回、感染拡大が続く「新型コロナウイルス」(SARS-CoV-2)は、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)の呼吸器に重篤な症状をもたらす2種類のほかに、「風邪」として知られる4つの計6種類がある。人類に馴染みの深いウイルスだ。今回の感染症(COVID-19)は80%ほどは軽度で推移する「軽症者が多い」特徴がある一方、20%ほどが増悪し2〜3%ほどが非常に重篤化する。甘く見ると怖い感染症でもある。
 自分が感染したと気付かないまま治癒する無症状感染者が多く、想定されている「新型インフルエンザ」に比べると「コントロールできない感染症ではない」との見方も強い。ワクチンなど根本的な治療法が開発されなければ、半年ほどで一旦収まるとしても強弱を繰り返し、二、三年は流行の可能性が指摘されている。ただ、「それでも、コロナはありふれたウイルス。怖がりすぎるのは間違っている」とも。
 そもそも新たな感染症が予想されるとして対策を求める声が医療関係者から常々上がっていたのに、安倍首相は昨年10月、「病床の削減」をあらためて指示するなど入院病床を減らし続けていた。公立・公的病院の統廃合も強力に進め、保健所数は半減、医師・看護師数も抑制を続けていた。これらは全てほぼ一貫して自民党政権の手によるものだ。つまり、今回の「医療崩壊」は自民党政権による「人災」なのだ。
  閣僚に専門家集団を揃える台湾はじめ、韓国、シンガポール、欧米などはあっという間に保障や援助策を策定し実行に移した。日本は後手後手に終始したうえ、弱い人から犠牲者が出始める「アベノ・コロナ恐慌」が庶民を襲っている。その政策を監視するメディアの役割は予想以上に大きい。
 「新型コロナはしょせん、新型の風邪に過ぎない」(感染症専門家)との声もあるが、強毒性の鳥インフルエンザ流行の懸念が強まっている中、日本での混乱ぶりに各国メディアから注目が集まっている。死者が少ないことへの関心が集まる一方、医師の少なさや病床削減政策を紹介して「日本は感染症対策の後進国だったのでは」などと驚く論調が少なくない。
 インフルエンザの例を見ても、開発が期待されるワクチンも万能では無い可能性が高い。オリンピックを始め介護労働者なども来日外国人に頼る経済政策等に大きく舵を取った日本で、感染症を水際で完全で止めることは期待できない。
 当面、無症状者に2週間限定の「避難所」を各地に作る必要があるが、しっかりとした予算を取ったうえで、医療抑制政策を抜本的に見直さなければ感染症との闘いには勝てない。医師や看護師などを増員し、病床を増やし、公的公立病院の機能を強化する必要がある。憲法25条(生存権)を活かし、国民の健康や生命を守る政策を打ち出すべきなのだ。
杉山正隆
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 10:45 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月17日

【今週の風考計】5.17─検察定年延長─「天ぷら屋」議員の罪と罰

先週8日に審議入りした検察官定年延長法案は、今週が大きな山場を迎える。これもツイッターでの抗議の声の高まりが、ここまで追い込んだのだ。
そもそも法案提出の根源は、<安倍政権の守護神>黒川東京高検検事長を検事総長に就かせたく、彼が2月8日の63歳の誕生日をもって検察官の定年を迎え、検察庁を去るにも関わらず、わざわざ彼のために定年を6か月間、延長する暴挙を閣議決定したことに始まる。
 しかも、これまで40年近く、政府は「検察官に国家公務員法の定年延長は適用されない」としてきたにも関わらず、国家公務員法の定年延長を適用するという牽強付会な「つじつま合わせ」に加え、検察官の人事権まで内閣が握ろうとする企ての悪ドさである。

「検察庁法改正案」は、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げるほか、63歳の段階で役職定年制が適用されるが、内閣あるいは法務大臣が必要と判断した場合は、最長3年の延長ができるという内容だ。
 つまり三権分立と司法権の独立が脅かされ、内閣が検察人事に介入できる重大な問題なのだ。しかも国家公務員法改正案などを含む10本の法案を一括した「束ね法案」にして、本丸の「検察人事への介入」の狙いを隠す巧みな戦術で、法務委員会ではなく内閣委員会で審議させている巧妙な仕掛けがある。

弁護士ら1500人が法案への反対声明を出したのに続き、ついに元検事総長を含む検察OBが法案に反対の意見書を提出する異例中の異例の行動に出た。その内容の高邁な趣旨を熟読玩味しておきたい。安倍首相の2月13日衆院本会議での発言に対し、
<本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる>
と表明し、<黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動き>と指摘している。

ところが自民党議員からは、「数で押し切れ、時間がたてばホトボリも冷める」の声に加え、「官邸から出されたモノは早くあげるのが仕事」と、「天ぷら屋」の「揚げる」にひっかけて法案処理に急ぐ議員までいる。
 呆れるのは内閣委員会で審議中に、タブレット端末で動画を見たり小説を読んだりしている自民党議員までいる始末。
 果ては「強行採決は自殺行為」と述べる同僚議員を内閣委員から外し、政権に追従する議員に変えるなど、内閣をチェックする国会の責務など、どこ吹く風だ。
公明党も同じ穴のムジナ。山口那津男代表のツイッター<法案の趣旨につき政府として説明責任を>には、批判の声が殺到している。「政権与党の一員として、自ら説明されたら」、さらに「10万円給付の時のように、安倍首相に直談判しないのはなぜ」など、同感だ。
 衆議院内閣委員会に出席している公明党の3議員は、「三権分立」の責務、果たされていますか。どこまで安倍政権に、下駄の雪のようについていくのですか。(2020/5/17)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月16日

インパール作戦 戦跡を訪ねた 直滑降の道 苦難を想像 現地に残る空気感を共有=おそどまさこ

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 多大な犠牲者を生んだ旧日本軍によるインパール作戦(1944年)。その戦跡を訪ねる旅をトラベルデザイナー、おそどまさこさんが企画し、8人の参加で1月末に実現した。何を見たのか、おそどさんからの報告だ。

 国は公式発表していないらしいが、「インパール作戦」の戦死者は3万人、傷病者の数は4万人といわれている。
「白骨街道」たどる
 私たちは、日本からインド東北部のコヒマに入り、インパールへ南下した。かつての日本軍の敗退路=白骨街道に隣接した舗装道路を一気に車で走り、国境を越えてミャンマーのタムに入った。
ミャンマーとインド東北部を分ける国境は、北から南へ縦に続く。西のインド側には2千b級の山が連なるアラカン山系、東のミャンマー側には川幅6百b、雨期には濁流で千bにも広がるチンドウイン河がある。
 日本軍は英軍が陣取るインパールの30キロ手前で力が尽きたようだ。武器弾薬、食料などの兵站が当初から不十分だった。
 インパールで印象に残ったことがある。連合軍の墓地では、たった一つの骨でも残っていれば、一人の戦死者とみなされ、一つの墓が創られていた。丁重な扱いに、日本との差を感じた。
冷や汗のドライブ
 日本側のインパール作戦の総司令官、牟田口廉也は将兵の命を軽く考えていた。「味方の将兵5000人を殺せば陣地(インパール)が取れる」。作戦本部で牟田口が話していたという。彼に仕えた若い少尉が記録を克明に残していた。戦争から生き残った元少尉は数年前に、車いす姿でNHKスペシャルの取材に応じ、「兵隊に対する考えはそんなもんです」と怒りをあらわにした。 
 ツアーの圧巻は終盤のチンドウイン河畔の村トンヘ(ミャンマー)から4WDの日本車に分乗して、日本軍が渡河した地点ホマリンへ行く道だ。今までに世界中、100回以上旅してきたが、度肝を抜かれた。スキーの直滑降のような、土と岩の急な山道の上り下りが50回ぐらい続いた。
 インパール作戦のスタート時に、日本軍がチンドウイン河を渡り終え、インド側の2千b級アラカン山系の複雑な山道を、戦車や大砲など部品を分けて進んだというのは、切り立った山のこういう直滑降の道のことを指すのではなかったか。
 そこを3万頭以上の牛馬も連れて、自分のリュックも、大砲も運ぶ。牟田口廉也が将兵たちに強いた様々な苦難を想像するには十分な2時間。命がけ、肝を冷やすドライブだった。
残る空気感を共有
  次の日は軍票(写真)を生まれて初めて見た。チンドウイン河をホマリンから船に乗って南下した。途中の村で散策していたら、村の若者がいた。彼が見せたもの。日本の政府が発行した戦地で通じるお金「軍票」だった。祖父が神棚にしまっていたという。
 戦時中に日本軍が使い、食料や牛馬を調達したと思われる軍票を、こんな田舎の村で、戦後75年たっても村人が大切に持っていた。現金化してやらず、踏み倒し続けていいものだろうか。
 旅の果たす役割は大きい。人々を歴史の現場に連れて行けるし、残されている空気感や痕跡を共有できる。「インパール作戦」の戦地を巡るツアーは21年2月にも計画してる。問い合わせは左記へ
osodomasako@gmail.com
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 12:04 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月15日

【焦点】 マスクなしの経営陣に驚く 株主総会で=橋詰雅博

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 東証一部上場企業の株主総会に出席した。3月末のことで、4月7日の緊急事態宣言の発令前だからまだ新型コロナウイルス感染が本格化していない状況だが、総会はどうなっているのか興味があったので、今年は出た。
 事前に株主には新型コロナ感染防止への対応についてと題したハガキが届いた。それには@当日のご自身の体調をお確かめのうえ、マスク着用、会場各所のアルコール消毒液の使用等、ご協力の程お願い申し上げますA混雑緩和の観点から、ドリンクコーナーの設置及びご来場の際のお土産については、今回は中止とさせていただきますと書かれていた。
 会場は都内一流ホテルの大ホールで、ホテルマンによると800人くらい入るそうだ。会場に入る前、両手をアルコール消毒した後、体温を測るサーモグラフィーカメラの前を通る。おそらく37・5度以上と検知されると入場を断られるのだろう。  
 感染防止に協力した後、受付を済まし、会場へ。ガラガラで両側2席を空けて着席。マスクをしているスタッフの方が目立つほど株主は少なかった。僕が尋ねたスタッフは、出席した株主は100人に満たないと返事した。
 ひな壇にそろった10数人の経営陣を見て少し驚いた。全員、マスクをしていなかったからだ。予想を裏切る光景。議長役の社長は、役員は事前に十分に体調をチェックしているので、本日はマスクはしていませんと述べた。株主にマスク着用を強いておきながら一方でこうしたやり方にやや不満を抱く。
 社長はコロナ禍の対応のため遠距離通勤の社員を対象に職場に近いホテルの部屋を用意していると話した。ここの企業は医家向け製薬会社を傘下に持っているので、コロナ感染防止対策事業ついて質問する株主が多かった。
 何か具体的なプランを持っているのかと僕の質問に対して、議長が指名した製薬会社社長は診断できる検査キットの輸入を検討していますと答えた。企業秘密があるのだろうから公の場では明快な事は言えないのは分かるが、あまり納得できなかった。ちなみにスタッフは株主の発言が終わるたびにマイクをアルコール消毒液で拭いていた。
 毎年6月下旬に集中する株主総会だが、今年はそろえる書類などが準備できず延期する企業も少なくない。ネットを活用したバーチャル株主総会も登場した。コロナ禍で株主総会も状況が一変だ。
 橋詰雅博
posted by JCJ at 08:51 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月14日

【森友事件】 テレビはどう報じたか 真実に迫る報道の強化を=河野慎二

 森友学園問題を巡る公文書改ざん事件で自殺に追い込まれた近畿財務局職員、赤木俊夫さんの手記が3月23日公表され、新たな展開を見せている。
 テレビはこの問題をどう伝えているか。
 TBSは基幹ニュースや報道番組で積極的に取り上げ、掘り下げた報道を展開した。
狼狽する首相
 手記公表当日の「ニュース23」では、自殺した赤木さんの妻が「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」と抗議していることを伝え、国会での安倍首相答弁を放映した。
 共産党の小池晃議員が「総理と総理夫人の国有地売却に関する質問に答えるために改ざんされたと認めている」と追及。安倍首相は「いや、そういう特定のことではなく、膨大な、削除されたことが沢山あるわけで、そういうことを含めて答えている」と狼狽する姿を映し出した。
二度殺すようなもの
  赤木さんの妻を取材した大阪日日新聞の相沢冬樹記者がインタビューに応じ、「新事実が出ているのに『新事実は無い』と言うのは、手記に書いてあるのが嘘と言うのか。首相や麻生氏の発言は、(赤木さんを)二度殺すようなものだ」と厳しくコメントした。
 28日放送の「報道特集」では、金平キャスターが赤木さんのパソコンと向き合った。このパソコンに手記が遺されていたのを、赤木さんの死後、妻が見つけたのだ。金平氏は「僕らの仕事にとって、パソコンは分身みたいなものです」と赤木さんを思い遣った。
もうひとつの文書
 相沢記者によると、赤木さんは近畿財務局のパソコンに、改ざん指示の詳細を記したもう一つの文書を残している。
 相沢記者は「どこからの指示で、どの文章のどの部分を書き換えたのか。パッと見たら全部わかる資料。『全部見てもらおう』と検察庁に出した。財務省にも原本はある」と語る。
 赤木さんの妻が26日、「報道特集」にメッセージを寄せた。「悪しき風土を作っているのは、麻生大臣です。しわ寄せは夫のような立場の人たちのところに来ると思います。このような悪い風土を無くすためにも、再調査を進めてください」と訴えている。
人間の尊厳に係わる
 金平キャスターが「死者が残したものは、人間の尊厳にかかわる問題だ。公務員としての良心があるのなら、財務省、検察庁、法務省は再調査すべきだ」と締めくくった。
 TBS以外では、各局は揃って「IOCが東京五輪延期検討」に多くの時間を割き、赤木さんの手記については、質量ともに見るべき報道は少なかった。
 テレビ朝日の「報道ステーション」は、国会での審議については「再調査はしない」とする麻生財務相らの答弁を中心に構成され、後藤コメンテーターが「再調査すべきだ」と解説したものの、精彩を欠いた。 
 NHKの「ニュースウオッチ9」は、赤木さんの手記公表を独立項目では扱わず、何と国会論戦≠フ1項目で伝えるという仰天構成で、視聴者を唖然とさせた。
 赤木さんが遺した手記がメディアに問うているのは、安倍政権の「知る権利」侵害の意図を見極め、森友事件の真実に迫る取材を強化してほしいということだ。
 テレビは、赤木さんの死と森友事件の真相解明を、新型コロナ報道に埋没させてはならない。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 10:53 | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月13日

【メディア気象台】 4月初旬から中旬=編集部

◇データ通信量、4割増加
新型コロナウイルスの感染拡大で、データ通信量が急増している。国内通信大手によると、3月下旬の通信量(日中)は2月比で最大4割増。世界でも同様にデータ通信量が膨らんでいる。外出自粛でテレワークが広がり、企業の利用と動画配信サービスが増えている。外出抑制に加え、遠隔授業の本格運用が始まれば、通信ネットワークの停滞懸念が強まりそうだ。(「日経」4月4日付)
◇公演中止・延期5678件
新型コロナウイルスの影響でコンサートや演劇など文化芸能分野の5678件が中止・延期となり、チケット代の払い戻しなどの損失額が3月中旬時点の推計で522億円に上ることが9日分かった。国内主要21団体で構成する文化芸術推進ファーラム(東京)が3月17日時点での損害額と以降の見込みを集計した。公演自粛の動きはその後も広がっており、さらに膨らむ見通し。(「神奈川」4月10日付ほか)
◇「知る権利」守れ、質疑時間確保を〜新聞労連が声明
新聞労連は7日、緊急事態宣言下での市民の「知る権利」を守るために政府や報道機関に対策を求める声明を発表した。記者会見では、質疑権と安全性の両立が重要であり、十分な間隔を空けて取材ができる会見場に移すことやネットを活用した質疑も求めている。多様な角度からの質疑がいっそう重要になっており、「大本営発表」一色に染まった戦前の過ちを繰り返さないためにも、質疑時間を十分に確保することを訴えている。政府内の会議については、会議録の作成と早急な公開を強調。NHKが首相や都道府県知事の指示を受ける対象となることについて、報道機関への過度な介入に反対し、批判的な言説を封じることや報道自粛要請には連帯して抗議しようと呼び掛けている。(「しんぶん赤旗」4月10日付)
◇会合も会見もネットで〜与野党手探り
新型コロナウイルスの感染拡大で、与野党も密閉、密集、密接の「3密」回避を本格化させている。議員同士や有権者らとの接触を避けつつ機会を確保しようと、インターネットを用いた会議や記者会見などを試行。新型コロナ禍で手探りの政治活動が続く。(「朝日」4月10日付)
◇4閣僚会見、半減を撤回
内閣府は10日、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の発令を受け、武田良太防災担当相ら4閣僚が個別に週2回実施している閣議後記者会見を1回に減らすとした官邸記者クラブ「内閣記者会」への提案を撤回した。記者会は週2回を継続するよう要望していた。会見数削減の対象となっていた閣僚は、武田氏のほか、衛藤晟一沖縄北方担当相、北村誠吾地方創生担当相。内閣府は8日、感染予防や職員のテレワーク推進などを理由に削減を提案した。記者会は「宣言が発令されている時こそ、閣僚の発信は重要だ」と反論していた。(「東京」4月11日付ほか)
◇在宅で通信量、平日昼2割増
総務省は10日、新型コロナウイルス感染拡大を受けたテレワークの広がりでインターネットの通信量が増えていることの対策を議論する官民協議会を設立すると発表した。総務省によると、企業が在宅でのオンライン会議を行っている影響などで平日昼間の通信量は平時に比べ約2割増加している。通信量のピークとなる夜間に変化はない。緊急事態宣言の発令で通信需要の伸びが継続することが予想されるため、迅速に対応できる体制をつくる。(「東京」4月11日付ほか)
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

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2020年05月12日

広がるファクトチェックの取り組み 国連も声明 FIJが国際プロジェクト=鈴木賀津彦

        ファクトチェック説明図 (002).PNG
 新型コロナウイルス感染症に関連するニュースが連日報道され、世の中に不安感が広がる中で、横行するデマやフェイク(虚偽)ニュースに警鐘を鳴らし、ファクトチェック(真偽検証)に取り組む各国の団体が、国境を越えた協力をして成果を上げている。国連のグテレス事務総長が4月14日、パンデミック(世界的な大流行)をめぐり、「誤情報の危険なまん延」に警鐘を鳴らす声明を発表するなど、ファクトチェックの国際連携はますます重要性を増している。
台湾と連携して成果
 国内のファクトチェックを推進・普及するためのプラットフォーム団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」(理事長・瀬川至熨¢蜍ウ授)が、コロナ関連の国内外のファクトチェック記事を紹介する特設サイトを開設したのは今年2月。3月には「国際協力プロジェクト」をスタートさせ、海外のファクトチェック団体への日本に関する調査の協力・支援をする一方、国内団体には、海外情報の翻訳を含めて国内外の調査の支援を行っている。
 台湾で河野太郎防衛相のツイッター投稿を模した画像が拡散されているのを、台湾ファクトチェックセンターが見つけ、FIJに調査を要請。協力した取材の結果、画像は虚偽と判明し、同センターが3月13日に記事にした。日本でもウェブメディアの「インファクト」(立岩陽一郎編集長)が「河野防衛相を装った虚偽ツイートが台湾で拡散」の見出しで詳報、連携した報道ができた。
 ツイッターは「台湾からの五十万のマスク」が日本に着き感謝の意を述べた内容だったが、マスク不足なのに政府が裏で日本に送っているように見せて、政権を批判するために虚偽情報を流したとみられる。
 FIJの特設サイトは「ウイルスの特徴、予防、治療法」「感染者の状況」「当局の対応、その他政治的な言説」「その他様々な言説・うわさ」に分けて、「国内編」と「海外編」に分け検証記事を掲載している。海外編は、各国のファクトチェック団体や海外メディアの記事を日本語の記事にして載せている。近く日本に関する特設サイトも設ける予定だ。
国連も事務総長声明
 根拠のない治療法や噂を含めた偽情報などが世界中を駆け巡り、世界保健機関(WHO)は早くから「インフォデミック(Infodemic、情報の伝の意味、information epidemicを短くした言葉)」への警戒を呼びかけている。国連のグテレス事務総長は14日の声明で、「新型コロナウイルスのパンデミックと世界が闘う中、新たなまん延が発生した。誤情報の危険なまん延だ」(AFP記事から)と述べた。
 グテレス氏は、「健康に関する有害な助言や、いんちきな解決策が増殖している」「放送電波はうそで満ちている」「見当違いの陰謀論がインターネットに影響を及ぼしている」と指摘する一方で、記者や情報の正確性・妥当性を検証する人々を称賛している。そして「団結して世の中のうそやくだらない言動を拒否しよう」「より健康的で、平等、公正な、立ち直りの速い世界をつくろう」と訴えたのだ。
だまされないために
 熊本県では、副知事がSNSで受けたデマ情報をコロナ対策関係者に拡散するという問題を起こし、謝罪会見する事態になったが、同様の危機は誰にでも起こる状況だ。インフォデミックといかに向き合うか、ファクトチェックの取り組みを広げたい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号



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2020年05月11日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 ネトフリ、GAFAの業績好調 コロナで経済・文化を米IT企業席巻 1〜3月決算

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  映像配信の大手、ネットフリックスの1月~3月の有料加入者数が1577万件に達した。新型コロナによって世界の主要地域での自宅待機が半ば強制状態にあるため、契約増は予想されていたが予測の2倍だった。これで全世界の契約者数は1億8286万人となった。
 1~3月期の売り上げは28%増の57億6769万ドル(6340億円)、純利益は昨年同時期の2.1倍、7億906万ドル(764億円)であった。
 ネトフリは契約すると映画や新作ドラマを一カ月800円から1200円、1800円の3段階で契約できる。同社は10万種類、4200万枚のDVDを保有し、さらに新作を世界各地から調達し、加入者に提供している。過去に上映された映画のリストもあるが、何と言ってもネトフリ独自の制作映画や、連続番組形式のドラマだ。
 映画では「最強の二人」(2011、仏)、「ショーシャンクの空に」(1994、米)、「ゴッドファーザー」(1972、米)などの名作が並ぶ。しかし「ハウス・オブ・カード」(野望の階段)、「ストレンジャーシングス」(未知の世界)などドラマ系の連続ものがエンタメ界の話題を独占するようになった。このほか人気ジャンルに韓国ドラマや日本系のアニメも数多く放映されている。
 コロナで各種の産業が萎縮状態にある中、GAFAと呼ばれる米大手IT企業はいずれも好調を維持している。 アップルは世界各地の店舗閉鎖がスマホ「iPhone One」を直撃したものの、音楽配信が好調で、売り上げ583億1300万ドル(6兆2000億円)、純利益112億4900万ドル(1兆2379億円)と発表した。
  アマゾンはインターネット通販が拡大し、2割を超える増収となった。売り上げ26%増、747億5200万ドル(7兆9237億円)、純利益25億3500万ドル(2787億円)を計上した。(ただし人員増、配送のコストがかさみ、昨年同期比では29%減)。
 このほかマイクロソフト、純利益107億5200万ドル(1兆1827億円)、フェイスブック49億200万ドル(5412億円)などGAFAはそろって黒字を計上している。
 日本では世界に比べITビジネスが立ち遅れている。しかし、授業に取り入れられ、自宅でのテレワークが増え、有料映像サービスが普及、会議ソフトZOOMが珍重されるなど、家庭をベースにしたIT化が急速に進み、日本でも基幹産業の仲間入りをする時代がやって来るのではないか。コロナ後の社会の変化の一つを象徴していると思う。
(注ドル円換算は情報の出典によってまちまちです。目安として参考にしてください)
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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posted by JCJ at 08:15 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする