2020年05月07日

【月刊マスコミ評・放送】かんぽ問題で混迷続くNHK=諸川麻衣

 昨年秋の報道で世間を驚かせた、かんぽ不正を取り上げた2018年4月放送のNHK『クロ―ズアップ現代+』への郵政三社の反発と、それを受けた、経営委による会長への厳重注意処分問題。3月来新たな事実が報道され、問題の深刻さが改めて際立ってきた。
 2018年10月、番組に強い不満を持つ日本郵政の鈴木上級副社長(当時)が経営委に「NHKにおけるガバナンス体制を改めて検証し、必要な措置を講」じるよう求める書面を送った。これを受けて10月23日、経営委員会の「会合」が開かれたが、そこではガバナンス問題だけでなく番組の内容も議論の対象となったというのだ。
 これは「委員は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない」などと定めた放送法第32条に反する。
 しかも経営委は、この会合の議事録を公開せず、今回報道されてからようやく「議事経過」なるものを公表した。
 さらにその後の報道や国会質疑で、当時の上田会長が件の会合で、「個別番組に関係した形のガバナンスになると対応が非常に難しい」「(経緯が公になれば)NHKは存亡の危機に立たされることになりかねない」と強く反発していたことも明らかになった。
 ところがこの重大な発言は、公表された「議事経過」には載せられていない。
 しかもこの会合の冒頭、経営委員3人からなる監査委員会は、「基本はすべてちゃんと話が会長に上がり、会長指示があってNHKとして動いていた」「協会の対応に組織の危機管理上の瑕疵があったとは認められない」と報告していた。経営委員と監査委員の見解が逆だったのである。
 議事録の公開・非公開を決める経営委員会議事運営規則は、2007年制定当時の経営委員会の決定で非公開とされていた。
 このことが201432国会で問題となり、当時の総務委員会の理事会に提出されたものの、今もって経営委のサイトには掲載されていない。
 これらはいずれも「法律違反」「ガバナンス不全」は経営委の方であることを物語っている。上田会長の当時の行動にも弱点があったと思われるが、前田現会長は定例記者会見で「経営委として番組のことを何も知らないで対応できるのか」と述べ、放送法32条への無理解と自律意識のなさを示した。
 上田前会長の証言による事実のさらなる究明、経営委の刷新は待ったなしである。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号
posted by JCJ at 16:06 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする