2020年06月10日

【リアル北朝鮮】 劇的演出で噂払しょく 浮上する金与正後継者説=金聖姫

 今回の「金正恩重体説」騒ぎを見て、34年前の出来事を思い出した。「金日成死亡説」である。1986年11月、金日成主席が死亡したというニュースが世界中を駆け巡ったが、彼が訪朝したモンゴルのバトムンフ人民革命党書記を空港に出迎えたことで打ち消された。
 金主席死亡説が飛び交う間も北朝鮮は沈黙を守っていたが、これ以上ない劇的な演出で噂を払しょくして見せた。中国やロシア(当時はソ連)の指導者でもない、モンゴルの指導者を金主席が空港まで出迎えるのは異例だった。北朝鮮が噂を意識したのは間違いなかった。
 4月12日以降、動静が途絶えていた金正恩朝鮮労働党委員長は、5月1日、平壌の西北にある平安南道・順川の肥料工場竣工式に出席し、健在をアピールした。
 金委員長に関しては、15日の故金日成主席の生誕記念日に遺体が安置されている錦繍山太陽宮殿に参拝したことが報じられず、にわかに動静が注目された。20日には韓国のインターネットサイト「デイリーNK」が「12日に心血管系の手術を受けて療養中」と報道。翌21日には米CNNが「重体説」を報じたことで、「金正恩重体説」が世界を駆け巡った。だが、34年前と同様、金委員長が公の場に姿を現すことで北朝鮮は噂に「答えた」。
 そもそも、外部で騒いでいただけで、北朝鮮では特異な変化は見られなかった。韓国政府も否定していた。北朝鮮は外部が騒いでいるからといって、いちいち反応する国ではない。1日に肥料工場竣工式に姿を現したのも、日程を粛々とこなしたと言えなくもない。もちろん、世間の噂は十分に意識していただろうが。
 今回の「重体説」でにわかに浮上しているのが、妹の金与正氏(朝鮮労働党第1副部長)後継者説だ。1日の竣工式では、金委員長の二人目横に座るなど、権威が高まっていることをうかがわせる。4月11日の党中央委員会政治局会議では、政治局委員に返り咲いた。今後の動きが注目される。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号

posted by JCJ at 09:30 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする