2020年07月31日

【沖縄リポート】 コロナ対策しながら「全基地封鎖!!」=浦島悦子

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  沖縄防衛局は、受注業者作業員のコロナ感染を理由に2か月近く中断していた辺野古新基地建設工事を、沖縄県議選(6月7日投開票)後の12日、再開した。私たちも抗議行動の再開を余儀なくされ、梅雨明け後の炎天下、マスク着用などのコロナ対策を取りながら、陸上・海上4〜5カ所の現場で行動を続けている。
 7月に入って在沖米軍基地内で急激に広がったコロナ感染(7月16日現在で136人)が県民に大きな不安を与えており、抗議行動の中でも「全基地を封鎖せよ!」とシュプレヒコールが上がる。
 大浦湾側埋め立て予定区域の三分の二を占める軟弱地盤の改良工事は「ほぼ不可能」と指摘されて久しいが、7月2日には地質学の専門家による「沖縄辺野古調査団」(代表・立石雅昭新潟大名誉教授)が、震度1以上の地震で新基地の護岸が崩壊する危険性が高いという解析結果(防衛局の設計条件で算出)を発表、大きな衝撃が走った。
 工事のあまりの無謀さに何度も警鐘が鳴らされながら、なぜ止められないのか? ここに来て、「新基地建設阻止」を掲げながらも実際の工事を止められない県行政の矛盾が見えてきた。
 琉球セメント安和鉱山が林地開発許可を得ずに埋め立て土砂を搬出していたことが発覚。県は立ち入り検査を行って「違法状態」を認めたものの、許可手続きを行うよう行政指導したのみで、中止命令は出さず、違法のままの搬出が続いている。
 また、本部港塩川地区で辺野古への土砂搬出を請け負っている業者は、ベルトコンベアーの使用を県に申請しており、これが許可されれば搬出量が格段に増加すると見込まれる。
 市民・県民の反発の強さに、今のところ県は許可を出していないが、許可しないよう要請した「沖縄平和市民連絡会」に対し、県の担当部局は、法的には「(最終的に)許可せざるをえない」と答えたという。デニー知事の公約との整合性が問われている。
浦島悦子
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
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2020年07月30日

【月刊マスコミ評・出版】 安倍+「電通」支配から抜け出せ=荒屋敷 宏

 コロナ禍の陰に隠されていた問題を週刊誌が取り上げ始めた。
 「週刊文春」7月23日号、相澤冬樹さんの寄稿「森友自殺職員妻に安倍昭恵夫人が『人を信じられない』 赤木雅子さんのLINEに返信が!」に注目した。
 公文書の改ざんを命じられ、自殺した赤木俊夫さんの妻、雅子さんは、森友学園8億円値引き問題のきっかけを作った安倍首相の夫人と連絡を取りたいと願っていたという。相澤氏から首相夫人の携帯電話番号を教えてもらい、雅子さんが首相夫人にLINEを送ると、「色々なことが重なり人を信じられなくなるのは悲しいことですがご理解ください」「いつかお線香あげに伺わせてください」と返事があったという。
 ところが、「本当のことを話して」と書くと、首相夫人から返事は来なくなったそうだ。赤木雅子さんの「法廷発言全文」にある「真面目に働いていた職場で何があったのか、何をさせられたのか私は知りたいと思います」との言葉は、日本の労働環境の現状を撃つ言葉となっている。
 高橋まつりさん=2015年当時24歳=を過労自殺に追い込み、「持続化給付金」委託「中抜き」で世間から糾弾されている巨大広告企業の電通を批判する記事が少ない。そう感じていたところ、「サンデー毎日」7月26日号の連載「令和風景論」第5回で田中康夫さんが「『電通』化する日本 巨大広告代理店はなぜ迷走したか」を書いている。
 小説「なんとなく、クリスタル」で作家デビューし、いわゆる「電通文学」の申し子のような田中さんが、友人関係にある山本敏博電通グループ社長に物申しているところが痛快だ。田中さんは、電通が海外でM&A(合併・買収)を繰り返し、国内約130社、海外約900社で構成(今年1月1日現在)され、57%の収益を海外に依拠することを指摘している。そのうえで、日本の産業構造、労働環境の縮図となっている電通が「結果責任」とは無縁の事業を展開し、経産省の「令和ビジネスモデル」の錬金術に加担していることを批判している。「結果責任」に向き合わない安倍首相を連想させる論旨である。
 田中さんが鋭いのは、メディアの側も過労死に直面する労働環境にあることを見抜いている点だ。いわく「睡眠3時間で3日連続没頭するCMやドラマの撮影・編集、新聞や雑誌の降版・校了、プレゼン準備や広告物デザイン等々、日付変更線超えは日常茶飯事」と。電通を批判できるメディアになる必要がある。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月29日

【リレー時評】 「麻生全面支持」の福岡・高島市政=白垣詔男

 福岡市長・高島宗一郎(46)は、「麻生太郎氏を全面支持する市長」として知られている。市が運営する福岡市民病院には、福岡県飯塚市にある麻生一族が経営する「麻生飯塚病院」から関係者を多数受け入れているなど福岡市制と麻生の結びつきは非常に強い。福岡市長選では麻生の全面支援を受けて、2回の改選を大勝している。高島の市長選では、福岡市での「麻生の力」をまざまざと見せつけたとも言える。
 高島と麻生の具体的な結びつきの1例は―。福岡市では、7月入りやっと支給が終わったとみられる国の「特別定額給付金」(1人10万円)の事務作業をパソナに5月1日に6億8千万円で委託した。4月20日に安倍政権が支給を決めてから11日目。しかもパソナは同日、凸版印刷など8団体に2億3千万円で「再委託」する手回しの良さだった。パソナは残り4億5千万円で区役所などの相談受付補助などを受け持ち、自社管理職に7万円の日当が払われた。
 6月福岡市議会でこの件を追及した共産党市議は「福岡市はパソナに業務委託をする準備をしていたのではないか。いつまでに給付が終わるようにパソナ指示したのか」などと質問したが福岡市当局は満足な答弁ができなかった。高島は「支給は政令指定都市では一番早かった」などと事実に基づかない答弁をしてひんしゅくを買った。
 パソナは高島と親しい竹中平蔵が代表取締役会長。政府は「給付金」を電通に支給業務を丸投げ、電通はパソナなどに再委託したが、福岡市はパソナに直接委託している。
 さらに福岡市は、年度内に18歳、22歳になる市民の名簿を自衛隊に通告する暴挙を強行した。18歳は高校卒業予定者、22歳は大学卒業予定者だ。この問題は今年初めに福岡市が、コンピューターの改良を口実に、これまで自衛隊関係者が市役所で名簿から書き写していた作業を、市自らが自衛隊に便宜を図ろうとするものだ。
 市民団体などが「反対運動」を繰り広げた結果、福岡市は「自衛隊に名簿を知らせたくない適齢者は除く」と譲歩をしたようだが、「自衛隊に知らせたくない市民は名乗り上げてください」という告知は「市政だより」に1回、市のブログで短期間掲載したが、市民はほとんど知ることがなかった。市民団体が市役所で市当局に「抗議」している最中の6月5日、市は急遽、自衛隊に名簿渡しを強行している。
 この市の姿勢は、憲法に自衛隊を盛り込もうとする安倍の意をくむものであることは自明の理だ。高島市政は「ミニ安倍政権」と言われても仕方がない。
 なお、高島は市長を踏み台に国政志向が強く、自分が立候補できる選挙区を麻生に指定してくれるよう懇願しているという情報もある。高島は「安倍政権の顔色をうかがって市政を運営しており本音は自分が国会に進出することだ」と言う識者もいるほどだ。(敬称略)
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
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2020年07月28日

仕切り屋%d通 官庁とズブズブ トンネル会社つくり受注 天下り受け入れ人脈築く=本間龍

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 国の持続化給付金支援事業において、電通がトンネル会社を通して巨額の税金を中抜きしていたことが明らかになり、批判を浴びている。だが、広告会社であるはずの電通が、なぜこのような給付事業を受注していたのか。電通と言えば、メディアでは「広告代理店大手」「広告業界最大手」などと紹介されることが多いが、実は肝心の電通自身は、もはや自らを「広告代理店」どころか「広告会社」とすら考えていないのだ。

解決策提供
 電通のホームページを見ると、事業内容を『「Integrated Communication Design」を事業領域としたコミュニケーション関連の統合的ソリューションの提供、経営・事業コンサルティングなど』としている。横文字ばかりで分かりにくいが、ソリューションとは「解決」「回答」と言う意味の英語であり、電通はあらゆる事業分野でそのソリューション(解決策)を提供する企業である、と宣言しているのだ。そこには当然広告も入るが、紹介文には広告の文字すらない。
 今回の給付金事業は、「事業の告知」と「実際の給付」という二つの柱で成り立っている。事業告知は、全国紙・ローカル紙で30段(2ページ)の告知広告が3〜4回掲載され、この広告掲載も電通が受注した。昔であれば、こうした広告分野だけが電通の取り分であったのだが、現在は広告以外の事業でも積極的に受注する企業に変貌している。だから今回は、実際の給付分野も担当したのだ。
 給付金事業は、担当官庁の経済産業省に大規模給付の経験が無く、人員もいないため、最初から全てを民間業者に任せるしかなかった。
こうしたときに頼りになるのが、常日頃から政府系広報や事業を担当している、電通や博報堂である。彼らは大きなイベントの設営・運営経験が豊富であり、他の様々な企業との協働実績もあり、どの企業がどんな仕事を得意か、よく知っている。大手のため資金繰り等も問題なく、予想外の問題が発生しても決して途中で潰れることはないから、リスクヘッジにもなる。
 中でも電通は、各省庁からの業務を受注し易くするために、今回の「サービスデザイン推進協議会」のようなトンネル団体を数多く作っている。この社団法人もすでに5年前から存在していて、経産省の業務を多数受注してきた。
 こうした受注システム構築の基礎となるのが、役人の天下りである。しんぶん赤旗の報道によれば、2009年からの10年間で、11人の役職付き公務員と1人の特別国家公務員が電通に天下りしている。内訳は財務省、総務省、経産省、国土交通省、警察庁など幅広く、有名どころでは、元総務省事務次官で18年に電通に入社し、現在は電通グループ副社長の櫻井俊氏は、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親である。

氷山の一角
 こうして元事務次官クラスを顧問などとして雇い入れれば、彼らの出身官庁と太いパイプを作ることが容易になる。そうして作った人脈をフルに活かし、トンネル会社を配置して電通の社名が目立たぬようにして、政府や中央官庁の業務を数多く受注してきた。だから今回の持続化給付金の一件は、あくまで氷山の一角に過ぎない。
 さらに、官庁関係が電通を重宝する決定的な理由がもう一つある。それは、電通を指揮系統のとりまとめ役(仕切り役)にすれば、業務の異なる複数業者にいちいち説明する手間が省けるからだ。
 極端に言えば、事業概要を電通の担当者1人に説明して金を渡せば、あとは電通が必要なスタッフを集め、孫請け・ひ孫請けなどの組織構築を全部やってくれて、業務を遂行してくれる。その間、委託側は詳細を知らなくても事業は完遂される。今回の件が発覚し、野党による追及を受けた経産省側が、当初はこの業務の組織構造を知らず、まったく答弁できなかったことが、このことを証明している。
 リスクを嫌い、なるべく早く業務を発注して、後はお任せにしたい官庁側の姿勢と、広告以外でも金になるなら何でも受注しよう、という電通の貪欲さが絡み合い、同社への業務集中を生んでいるのだ。
本間龍(著述家)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年07月27日

【焦点】 佐川再喚問を求める署名13万筆を提出 ウヤムヤ許さず 市民団体の活発な活動つづく=橋詰雅博

 森友事件で財務省の公文書改ざんの中心人物の佐川宣寿・元財務省理財局長の国会での再喚問を求める署名約13万筆が、森友事件を追及する野党合同チーム座長・川内博史衆院議員(立民)に6月中旬に手渡された。
 この署名活動は事件の口火を切った大阪府豊中市の木村真市議らがつくった市民団体「森友学園問題を考える会」が昨年10月から始めた。本来は4月に川内議員に渡す予定だったが、コロナ禍のため実現できなかった。ただ、署名募集期間が結果的に伸びたため署名は13万筆を超えた。
 「森友学園問題を考える会」ニュース7月号で同会は、こう訴えている。
〈国会では残念ながら、森友問題を「終わった話」として片づけようとする自民・公明・維新が圧倒的多数を占めており、追及を続けようという野党は少数に過ぎません。私たち市民が「森友学園問題は終わっていない!」「うやむやのまま幕引きは許されない!」という声をあげ続けないと、国会の中だけではどうにもなりません。引き続き、「モリ・カケ・サクラ」に象徴される政治と税金の私物化、ウソ・隠蔽・改ざんの安倍政権の責任を追及していきましょう!〉
 同会は毎月第2木曜18時から豊中市内各駅前、第4木曜17時30分から自殺した赤木俊夫さんが職員として勤めていた近畿財務局前で、それぞれ街頭アピール≠行っている。
橋詰雅博
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2020年07月26日

【今週の風考計】7.26─「陸・海・空」から宇宙へ拡大するミサイル防衛の怖さ

★政府は、4500億円もの巨費を投ずる迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を断念した。設置予定の秋田県からの強い反対に加え、検討すらしていなかったブースター落下の危険、さらにこれを統御する追加改良への疑問が募り、すでに米国企業に支払った200億円は戻らないのを承知で決断した。
 しかし自民党と安倍政権は転んでも只では起きない。ミサイル防衛を巡り「敵基地攻撃能力」の保有や「陸・海・空」のみならず宇宙にまで広げる軍事計画へと、議論を加速させている。9月にも国家安全保障会議(NSC)で方針をまとめるという。
★計画断念に至る経緯も検証せず、いきなり「敵基地攻撃能力」の保有に奔るとは呆れる。自民党内からは「自衛反撃能力」と言い換え、「専守防衛」の範囲内と強弁し、本質を隠ぺいする姑息な動きも強まっている。

★とりわけ北朝鮮の軍事動向に対応する議論は、危険きわまりない。北朝鮮の弾頭ミサイルは日本全域を射程に収め、発射台つき車両に搭載のうえ地下施設に収容されている。
 すでに数百発は保有し、短時間で発射できるよう実践配備している。さらにミサイルの種別や運用方法も多様化し、同時発射能力や奇襲能力などを高めているという。
 日本による「敵基地攻撃能力」の保有が、北朝鮮のミサイル発射を抑止する保障など一つもない。かえって日朝間の緊張を高め戦争誘発へと導きかねない。
★来年3月には海上自衛隊イージス艦8隻の態勢が整う。防衛省は、さらに2隻増やす検討に入った。日本海に2隻配置し展開すれば、日本のほぼ全域に飛来する北朝鮮からの弾道ミサイルを迎撃できるという。本当かいな。
 しかも2隻で計4千億円の建造費と600人の乗組員が必要となる。コロナ第2波の襲来で未曾有の規模の財政支出が必至、かつ景気低迷が続く中で、さらなる予算計上が許されるのか。訓練も含め600人の乗組員の確保だって、ただでさえ自衛隊員の募集がままならない中で、本当に可能か。

★防衛省は、さらに中国海軍の尖閣諸島への接近など、中国の軍事攻勢に神経をとがらせている。中国は日本を射程に収める弾道ミサイルの増強や宇宙空間での軍拡、マッハ5を超える極超音速ミサイル兵器の開発に傾注している。
 そこで防衛省は、コロナで緊急事態宣言が出されている5月18日、航空自衛隊に部隊員20人の「宇宙作戦隊」を創設した。東京・府中基地を拠点に、将来100人態勢を目指し、昨年末に発足した米国の「宇宙軍」と連携を強めている。
★背景には宇宙空間に広がる中国・ロシアの軍事的脅威がある。航空自衛隊「宇宙作戦隊」が取り組む、人工衛星の防衛や衛星キラーおよび発射ミサイルの早期探知などは、宇宙空間で展開される米・ロ・中の軍事作戦に巻き込まれる危険は大きい。
 いや防衛省は積極的に、電磁波を使って他国の衛星通信を妨げる装備の開発や日本独自の宇宙監視衛星の打ち上げすら計画している。安全保障の基本方針である「専守防衛」を踏み外すことに、つながりかねない。
★安倍首相に問う、コロナ禍の中、1か月以上も記者会見すら開かず、国民の前から雲隠れしている陰で、憲法「九条」をぶち壊す策動をしているとは、どういう神経か。(2020/7/26)
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2020年07月25日

コロナ禍を隠れ蓑に 日本など各国で接触追跡アプリ導入 「監視社会」強化 前のめり 有効性は疑問だらけ=橋詰雅博

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新型コロナのまん延で各国は感染防止策としてスマホを使う感染者接触追跡アプリの導入に前のめりだ。すでに世界の40カ国・地域で取り入れられている。また米IT巨大企業のグーグルとアップルが共同開発した基本ソフトを用いたアプリ導入を、欧米や日本など20カ国以上が進めている。しかし、一方では個人情報が政府やIT企業に流れてしまう危険性をはらんでいる。
機能は3タイプ 
20年以上監視問題を取材・研究しているジャーナリストで社会学者の小笠原みどりさんは(カナダ・オタワ大学特別研究員)、スマホを使ったコロナ対策の主な監視機能を3つに分けている。
 一つは移動の追跡。GPS(全地球測位システム)による位置情報からスマホ使用者が移動した場所を追跡して感染の可能性を予測する。そして政府が使用者に外出を許可したり、自己隔離を要求したりする。
中国がその代表例で、アプリの利用は事実上、強制に近い。病院の診察情報も連動させる徹底ぶりだ。中国と異なるが、韓国やイスラエルなども位置情報を取得している。
 二つめは隔離の強制執行。政府が、監視が必要と判断した人たちが、実際に自己隔離をしているかを位置情報などによって見張る。隔離場所から離れると、本人に警告が発信される。警察にも通報がいく。台湾では厳格に実施されている。
 三つ目が接触者の追跡。近距離無線のブルートゥースを利用して、接触者を記録・通知する。
シンガポールや米国、イギリスと同じくこの方式を使う日本の場合、仕組みはこうだ。まず保健所がコロナ感染者などを管理するシステムに陽性者を登録する。その陽性者は保健所の通知を受けて陽性者であることをアプリに入力。アプリをインストールした人が陽性者と接触記録がある場合、接触者アラート≠ェ通知される。さらに接触が確認された人には相談方法などが案内される。アプリを利用するかどうかは、個人の判断だ。
厚生労働省は、携帯電話番号は暗号化され、データは二週間後に自動的に削除されるのでプライバシーは守れるとしている。
差別につながる
これに対して小笠原さんはこう反論する。
「日本のように政府が感染者情報を入力する場合、感染者の特定は避けられない。データは必ず実名で扱われる段階がある。匿名化できるというデータは、裏を返せば、実名化もできるということ。実際、イギリスでは政府が入手した匿名の医療データから感染者を特定する権限を持っていることを英紙ガーディアンは指摘した。病歴など健康に関する個人情報は、最もセンシティブな情報であり、将来、本人が望まない場面で知られれば、就職や結婚、保険加入や取引などで不利に扱われかねない。日本でコロナの感染者捜し≠ェ過酷なバッシングとデマに発展したことを考えれば、接触者情報も差別につながる可能性を無視できない。
アプリの有効性は、すでに導入された国々でもまだ証明されていない。技術が確立していない上、ダウンロードする人が少ない。実際には、行動を追跡されたくない人が多いのだろう。また、十分な感染検査が実行されていなければ、このアプリは機能しない」
 コロナ禍後に監視資本主義(社会、経済、政治までもGAFAが動かす仕組みを指す)は強まるのか弱まるのかについて、小笠原さんはこう言う。
 「『監視資本主義』は、ハーバード大学ビジネス・スクールのショシャナ・ズボフ名誉教授の言葉です。多くの政府や企業が、接触者追跡アプリのように、感染防止対策として人々の行動を監視するツールを矢継ぎ早に導入しているのは、この延長線上にある。が、I B Mなど顔認証システムを開発してきた企業は、いま広がっている人種差別反対の動きに対して、警察への販売を停止すると発表した。
コロナ下で権限が強化された政府によって監視対象にされてきた人々は、こうした監視ツールがいまある不平等を強化し、自分たちに対する暴力として使われることに気づいている。 
日本では五輪を契機に、顔認証のような監視技術が人々の安全を守るという宣伝が先行しているが、顔認証が個人の自由を抑制し、不平等や差別の強化につながることが報道される必要がある。監視によって誰が守られ、誰が排除されるのかを、いまほどジャーナリズムが明確にしなければならないときはない。コロナを口実に息ができない$「界が広がらないように」
不具合も多く見つかった感染者接触追跡アプリの有効性は疑問だ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号
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2020年07月24日

【おすすめ本】後藤逸郎『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』─巨大ビジネスに翻弄される実態を暴き意義を問う=薗田碩哉(スポーツジャーナリスト)

 平和の祭典「オリンピック」という錦の御旗はすでにボロボロに劣化し、金と醜聞にまみれた巨大ビジネスになり果てている。本書はその実態を、丹念な取材とデータ分析から詳述している。
 クーベルタンが理想を掲げて再興した近代オリンピックだが、1980年のモスクワやそれに次ぐ84年のロサンゼルス大会でのボイコット騒ぎに見るように、オリンピックは常に政治に翻弄され続けてきた。
 オリンピックを主宰するIOCは年間1500億円もの収入を挙げる。その73%はテレビ放送権料、次いでトップ・スポンサー料が18%を占める。IOCはテレビとの癒着、グローバル企業の抱え込みに邁進する。

 その結果、オリンピックは世界のスポーツ興行界の歯車に組み込まれ、身動きが取れなくなっている。開催費用は増す一方で、いまや開催都市に名乗り出るのも二の足を踏む状況だ。トップ・スポンサーのマクドナルドの撤退も大きな話題となっている。
 日本は「アンダーコントロール」との嘘までついて開催を勝ち取った。だが開催の決定以前から競技場の拡張を画策し、隣接の都営アパートを追い出す計画まで進められていた。その狙いは、オリンピックにかこつけて神宮外苑地区の再開発をもくろむ衝撃の事実も、本書で明かされる。
 コロナ禍による延期は天の配剤と言うべきだろう。これを機にオリンピックそのものを根底から見直す必要がある。本書は歯切れのよい文章で、その理由を明示してくれる。(文春新書800円)
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2020年07月23日

【スポーツ】 拍手で再開も不安拡大=大野晃

 プロ野球開幕に続き、サッカーJリーグも再開。大相撲7月場所が始まり、限られた観客の応援を受けながらプロ競技が正常化を目指した。大声や大騒ぎは厳禁で、拍手による応援が繰り広げられた。
  大騒ぎしないだけ、試合に見入るファンが多く、プロ競技の応援風景が様変わりした。拍手応援で、新たな競技者との一体感を模索するファンの変化は、競技者と国民の新しい関係を生み出す契機となるかもしれない。
 ところが、プロ競技の再開直後から、東京を中心とした首都圏や大阪などで、自粛要請解除前に逆戻りしたように新型コロナウイルスの感染確認が急増し、国民生活の不安は一気に拡大した。
 しかも、梅雨の豪雨で九州中心に大災害が発生し、政府や自治体は自衛を訴えるばかりで、対策が皆無に近かったから、不安はさらに広がった。
 そのうえ政府は、感染再拡大を過小評価して、観光旅行を促進し、生活不安を無視した姿勢に不満が噴出した。
 見るスポーツや旅行の再開は、さまざまな自粛要請に疲れた国民のストレス解消につながるはずだが、生活不安が募る中で、気軽に楽しめるわけがない。
 安倍政権は、感染対策や災害対策を投げ捨てて、「現実を見ずに適当に楽しめ」と強要するようなもので、国民の安心、安全第一をおざなりにした。
 安心、安全な生活があってこそ、スポーツは楽しめる。だからファンたちは、感染対策のさまざまな制約をがまんしてスタンドに足を運び、指示に従いながら、新しい楽しみ方を試していた。
 マスクを着けてのランニングなど不自由なスポーツスタイルでも受け入れてきた愛好家たちが少なくない。
 経済活動第一の行政姿勢に、裏切られたと思って不思議はない。制限付きのスポーツ再開は、行政と生活の関わりを一変させる動機ともなりそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2020年07月22日

「抱きつき取材」見直しを――新聞労連らが6つの改善提言をメディア幹部に送付=藤森研 

  今年5月に発覚した黒川弘務・東京高検検事長と記者たちの賭けマージャン問題は、黒川氏の辞任と検察庁法改正案の廃案で落着した。政権の検察支配の企ては、ひとまず頓挫した。
  賭けマージャン問題は、他方、メディアにも大きな一石を投じた。コロナ緊急事態下、渦中の黒川氏と産経や朝日の記者らが賭けマージャンに興じていたことがあからさまになり、権力者と記者のずぶずぶの関係が白日の下にさらされた。特ダネほしさに取材源に見境なく近づくこうした手法を、元同僚は「抱きつき取材」と喝破した。それは往々にして癒着に陥り、ヨイショ記事に帰結する。
 濃淡はあれ、日本のメディアは取材相手と個人的に親しくなって情報を得ることに精力を注いできた。夜討ち朝駆け、ひそかな会食……。賭けマージャンもその延長上にある。取材相手に「食い込む」ことに長けた記者は、社内で重宝がられ、高い評価を得てきた。
 しかし、そうした取材手法が他方で、「権力監視」というジャーナリズム本来の責務を見失わせ、権力に甘い報道姿勢を招いてしまっていることを多くの市民が見抜いている。改革が必要な時代だ。
 メディア関係者たちからも、自省の動きが出始めた。南彰・新聞労連委員長や林香里・東大大学院教授らが、今回の問題を機に「ジャーナリズム信頼回復のための提言」をまとめ、7月10日、全国の新聞・通信・放送129社の編集局長、報道局長に送った。
 提言は、賭けマージャン問題について「水面下の情報を得ようとするあまり、権力と同質化し、ジャーナリズムの健全な権力監視機能を後退させ、民主主義の基盤を揺るがしていないか」と問題提起。改善のため、以下の6点を提言した。
@ 報道機関は権力と一線を画し、記者会見などの場で責任ある発言を求め、公文書の保存・公開の徹底化を図るよう要請する
A 各報道機関は、取材・編集手法に関する報道倫理のガイドラインを制定し、公開する
B 当局取材に集中している現状の人員配置を見直す
C 権力者を安易に匿名化する一方、立場の弱い市民らには実名を求めるような二重基準は認められないことに十分留意する
D 現在の取材慣行は、長時間労働の常態化につながり、女性ら多様な立場の人の活躍を妨げてきたことを反省し、改める
E 倫理研修を強化し、読者や外部識者との意見交換の場を増やす
 旧来型取材に対する、かなり根源的な問題提起だ。こうした動きが取材手法の改善にどの程度結びつくかを、見守っていきたい。

藤森研(JCJ代表委員・朝日新聞記者OB)
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2020年07月21日

【おすすめ本】伊東順子『韓国 現地からの報告 セウォル号事件から文在寅政権まで』─いっさいの偏見を捨てて、韓国社会のリアルな姿に深く迫る=洪 相鉉(ソウル在住ジャーナリスト)

 本書の著者は、韓国語だけでなく、韓国の政治ㆍ経済ㆍ社会ㆍ文化に対する幅広い知識を兼ね備え、かつ長年にわたって韓国各地にあるネットワークまでも活用し、充実したルポルタージュを完成させた。
 本書の始まりが2014年4月のセウォル号事件であることは意味深い。リーマンㆍショック以後、急速なグローバル化の渦に巻き込まれた韓国社会は、非正規の船員を雇用し、船の安全点検すら外部委託し、コスト削減への暴走を続けてきた。
 ところが春のある日、324人の高校生を乗せて済州に向かっていたセウォル号が珍島郡の海上で沈没したこの事故は、結局、韓国社会の暴走に歯止めをかけた事件であると同時に、光化門のロウソク集会と朴槿恵政権の退陣、そして文在寅政権の成立まで続く「1987年以降最大の激変期」の始まりだった。

 さらに「異邦人」の著者が、韓国で生まれ育ち、教育を受け、今の社会の主流となっている40代50代の韓国人以上に、韓国社会に対する認識の深さと思考の地平を示していることだ。
 いま韓国の現状は、産業化世代と民主化世代に象徴される保守ㆍ革新の対立を超えて、新しい時代を切り開くための陣痛期にある。
 最も自信に満ちていながらも、最も不安定に見える今日の韓国ㆍ韓国人を理解することは重要である。 こうした目的に本書ほど、有用な本が他にあるだろうか。
 韓国と日本が共生する未来を築く上で、現実を認識することから始めるためにも、本書は日韓双方の必読書にならなければならない。(ちくま新書880円)
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【支部リポート】 北海道 2年ぶり 総会を開催 例会活性化などを提起=山田寿彦

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北海道支部は6月13日、2020年度総会を札幌市内で開き、今年度の活動方針案、予算案などを決めた(写真)。総会開催は2年ぶり。代表委員に林秀起(朝日新聞OB、再任)と高田正基(北海道新聞OB、新任)、事務局長に山田寿彦・毎日新聞OBを選出し、この間の活動の停滞と支部立て直しに向けて意見交換した。
 18〜19年度の総括として、歴史修正主義との闘いを継続している「植村裁判」への会員個々の支援を通してさまざまな市民運動との連携・協力関係を構築できたことを評価。一方で、昨年7月の参院選の際、安倍首相の札幌市内での街頭演説にヤジを飛ばした市民が警察権力に排除された問題に「支部として機敏に対応できなかった」点を「痛恨の反省事」とした。
支部主催の活動として望月衣塑子・東京新聞記者講演会、野田正彰氏講演会「優生手術の推進者は誰か〜大学精神科が犯した罪」、沖縄への公募記者派遣と報告会の取り組みなどを挙げた。
 今年度の活動方針に「例会の活性化、他組織との連携強化」「事務局体制・情報発信の強化」「財政基盤の確立」を掲げた。
 例会活性化については「市民の注目を集める講演会やシンポジウムだけではなく、会員や読者が講師にもなる気楽な勉強会や懇談会」を積極的に企画していくことを盛り込んだ。
 新型コロナウイルスの感染防止のため、多くの参加者を集める従来型のイベント開催は札幌においても極めて困難になっている。こうした状況下での効果的な情報発信のためにはホームページやSNSの活用、イベントを「やりっぱなし」にするのではなく、デジタルコンテンツとしてのデータベース化にも取り組まなければならない。
機関紙も一件一件の封筒詰めと郵送というアナログ作業の軽減化を図り、可能な限りPDF送信に切り替える必要がある。「パソコンは苦手だから」では済まされない環境がコロナ禍により加速度的に深化しそうな現実を見据えなければ、JCJの活動は停滞を免れない。そんな危機感を共有する総会となった。
山田寿彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年07月20日

JCJ第2回オンライン講演「どうなる?朝鮮半島情勢」27日(日)14時から

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 7月26日(日)14時から日本ジャーナリスト会議(JCJ)による第2回オンライン講演を開きます。今回は「どうなる?朝鮮半島情勢」がテーマ。講師は南北問題に詳しい東京新聞・五味洋治論説委員です。五味さんは月刊『文藝春秋』8月号で「金与正毒舌プリンセス=w冷たい仮面』の裏」と題した原稿を書いています。この与正の正体や、兄の金正恩の健康状態、経済のひっ迫状況、日韓と日朝の関係など多面的に話をされます。参加費500円。ぜひ皆さん、視聴してください。
                  
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2020年07月19日

【今週の風考計】7.19─コロナ第2波のなか「Go Toトラベル」強行の愚

「東京外し」でコロナが収まるの? 経済が活性化するの? 「Go Toトラベル」が「Go Toトラル」に陥るのが関の山。政府はコロナ第2波が急拡大しているさなか、1か月も前倒しのうえ22日から始める。あるネット調査では「今はどの地域でも実施すべきではない」が81%を占める。

東京を除外したからといって、コロナ禍が解消されるわけじゃない。東京のコロナ新規感染者数は、この17日には1日当たり過去最多の293人。この数字に注目が集まるが、日本全国に目を向ければ、直近の1日当たり新規感染者数は662人、4月10日の600人を超えている。
今もなお首都圏や地方の都市部を中心に感染が広がっている。夜の街でのクラスター(感染集団)発生に加え、エピセンター(感染集積地)まで形成されている。かつ感染者の半分近くが感染経路不明とくるから恐ろしい。
 コロナ感染の不安を抱え、行く側も受け入れる側も疑心暗鬼での観光旅行なんて、消費喚起どころか、名所を楽しく歩くこともままならない。

4月7日に閣議決定した「Go Toキャンペーン」は、「感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」に実施するとされていた。感染が収まってもいない状況で、1兆3500億円もの税金を投入して「Go Toトラベル」を始めること自体が大間違い、即刻中止すべきだ。
 もともと「Go Toキャンペーン」は、官邸の<アベトモ補佐官>が発想し、経産省や財務省の<安倍ライン>で練り上げられたシロモノ。まさに安倍政権の側近官僚の手で、1兆7000億円もの巨額予算が、費用対効果の点検もなく計上されたのである。
感染を防ぎながら、経済を回す状況をつくり出すには、まずPCR検査を大規模に実施し、感染者の把握、隔離・療養に全力を挙げ、職場や学校・家庭での感染リスクを低くするのが先決だ。
 コロナ第2波が来て、東京の医療現場は逼迫の状況を加速させている。軽症者の宿泊施設の確保もままならない。まずそこへの集中した支援、資金援助も含めた対策が緊急ではないか。

いま世界はコロナ感染が、米国・ブラジル・インドなどで急拡大し、感染者は1400万人、死者は59万人を突破。1日の新規感染者は23万7千人に上る。「パンデミック」は深刻化の一途をたどっている。
 日本は「間違った方向に」舵を切っている。世界から「マスク2枚と10万円の国」と揶揄されるうえに、さらに「Go Toトラベル」などで騒いでいる時ではない。日本も全世界の英知に参加・協力して、コロナ感染症の対策に全力を挙げるときだ。(2020/7/19)
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【新型コロナ禍】 北九州 トップの「動揺」で混乱=杉山正隆

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 「北九州市は第二波の真っ只中にある」――。北橋健治市長の時折、声を詰まらせる記者会見を連日目にし市民に衝撃が広がった。4月30日から23日間、「感染者0」だった同市では、5月23日から感染者が出始め、再開しつつあった公的施設が再び休館になり、休業に追い込まれる飲食店が出ている。
 中心部の老舗百貨店「井筒屋」は自動体温測定器を設置、係員が立ち入店時のマスク着用と手指消毒を求めた。「マスクは暑くて苦しい」と苦情が続出。専門家は「市長がパニックのようだった。自粛してきた市民への感謝の気持ちを表し、これからも取り組もうとのメッセージが無かった」と話す。
 同市は日本製鉄の高炉廃止に伴い人口が流出し95万人弱まで減少。160万人の福岡市に水をあけられたが九州第二の人口を有す。高齢化率は30%を超し「都会と郊外を併せ持っている」と評される。
 小学校で「感染集団」(クラスター)が発生し保護者に動揺が走った。NHKや民放でほぼ一日中、市長の顔が映し出された。「感染者数は少なく病床数等にも余裕もあるのに、もうダメかもと混乱を招く対応だった」と指摘される。
 病院や高齢者施設でも感染集団が発生したが、市長の「真っ只中」発言とは裏腹に5月29日の26件をピークに新規感染者は減少し数日で1桁に。6月11日には20日ぶりに0になった。感染者が出なかった間も水面下で弱い流行がくすぶっていたとみられる。九州の玄関口で新幹線や飛行機等で県外から流入した可能性もある。
 5月末、「徹底的に対策を採る」(北橋市長)との方針を打ち出し、症状の有無によらず濃厚接触者にPCR検査を行うように。対象を増やしたことで無症状の感染者があぶり出されたともいえる。「方針転換で感染者数が急増することを、市長は分かってなかったのではないか」と市民の間ではささやかれている。「市長が混乱したことで大きな損害を被った」とも。
 感染症は拡大が始まると数年は続くことが多く、恐怖による過剰反応が災禍を拡大する。北九州市での混乱は、来る第二波第三波に向け、首長の言葉に重みがあることを思い知らされた「失敗例」として注目を集めている。
杉山正隆
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年07月18日

【新型コロナ禍】 北海道 公共交通網 崩壊の危機=山田寿彦

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 北海道では国の緊急事態宣言解除を挟み、2カ月以上に渡り新規感染者が連日報告されている。21日現在の感染確認者数は全国4番目の1180人(死者95人)。人口が集中する札幌圏が中心だが、観光などサービス産業の比重が大きい北海道の経済的ダメージは甚大で、影響は道内全域に及んでいる。
  感染のクラスター発生はライブハウス、病院、老人福祉施設など。最近では岩見沢市内の美容室、札幌市内の昼カラオケでのクラスター発生が報告され、後者は全国ニュースになった。
 老人福祉施設で最も悲惨な事例となったのは札幌市北区の茨戸アカシアハイツだった。スタッフも含めて90人以上の感染者を出し、15人が死亡した。うち11人は入院もできず、施設内で亡くなった。施設内に事実上閉じ込められた背景には札幌市保健所の判断があったとされ、今後の検証が待たれる。
 北海道では多くの外国人を含む約200万人の来場者があったさっぽろ雪まつり(1月31日〜2月11日)後に感染第1波が襲来した。2月28日に鈴木直道知事は国に先駆けて独自の緊急事態宣言を出し、学校を一斉休校としたほか、外出自粛を要請した。
  一旦収束に向かったため、知事の判断は称賛された。しかし、世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言は1月30日。結果的に第1波の原因となった可能性が高い雪まつりを何の注意喚起もせずに開催した札幌市の判断の是非については検証されていない。
 多くの企業が経済的ダメージを被る中、JR北海道は深刻な経営難に直面している。19年度の線区別収支状況によると、道内23線区すべてが赤字となり、赤字総額は551億円余。北海道新幹線(新青森−新函館北斗)は線区別で最大の93億円余の赤字となった。コロナ禍が直撃した第4四半期だけでこれだけの影響が出ており、今年度はさらに深刻な事態に陥ることが懸念される。
 もともと多くの不採算路線を抱えて出発したJR北海道は経営基盤が極めて脆弱で、今後は「国や自治体が助けてくれなければ、企業存続のために不採算路線は切り捨てざるを得ない」と開き直ることも予想される。北海道の公共交通網が崩壊の危機に直面する可能性をコロナ禍ははらんでいる。
山田寿彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号


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2020年07月17日

「テラスハウス」事件とネット規制 「あおり」と制作責任 メディア支配強化狙う政府=岩崎貞明

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 フジテレビが制作・放送し、フジテレビオンデマンド(FOD)やネットフリックスでインターネット配信されていた人気番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラーの木村花さん(写真)が22歳の若さで亡くなった。SNSでの誹謗中傷を苦にした自殺だったのではないか、ということで、フジテレビの遠藤龍之介社長はお悔やみのコメントで「同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります」と表明した。
  番組が言う「台本は一切ございません」という体裁は「リアリティーショー」と呼ばれ、90年代からアメリカで人気を博し、各国に広がった。そして、現実とは異なる設定を押しつけられた出演者が自殺するケースも既に多数報じられている。
 悪役レスラーとして活躍していた木村さんは、番組でも悪役を引き受けさせられ、そう見えるような編集が施されていたと推測される。その点フジテレビなどの制作責任は免れないが、一方でネット社会が攻撃に拍車をかけたとも言える。
 『テラスハウス』はネットフリックスでの配信が先で、フジテレビの地上波放送はその一ヵ月ほど後という「ネットファースト」で制作されていた。放送枠にとらわれない番組編成が可能なネット版は、地上波版よりも番組尺が長く、CMも挿入されず、また過去分の繰り返し視聴も可能になっている。
 番組は、出演者たちが共同生活しているパートと、その様子を見ながらタレントたちがトークを展開するパートが交互に現れる形で進められる。そしてネット版では、タレントたちのトークのシーンがより長く編集されていた。ここでタレントたちが番組を盛り上げようと過激な発言をして、それがSNSへの「あおり」となって、木村さんを追い詰めていった可能性もある。
 この事件を契機に、政府はSNS規制の動きも見せている。ネット上の人権侵害は厳しく取り締まるべきだと思うが、政府批判も一緒くたにされては、言論・表現の自由が奪われ、政府のメディア支配が強化されてしまう。慎重に見極めたい。
岩崎貞明(放送レポート編集長)

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2020年07月16日

こじ開けた隠蔽の扉 NHK「かんぽ不正」報道 市民・メディア・野党協力=小滝一志

 5月22日、 NHK情報公開・個人情報保護審議委員会は、NHKがそれまで一部非開していた経営委議事録について、「開示すべき」と答申した。「開示すべき」文書とは、「2018年度以降、NHK経営委員会が上田良一会長(当時)に『厳重注意』した議論の一切が判る資料」。審議委員会とは、NHKが情報公開規程・審議委員会規程に従って外部委員に委嘱した第三者機関。
毎日がスクープ
 問題が明るみに出たのは昨年9月26日の毎日新聞スクープ。NHK経営委員会が「かんぽ不正」問題をとりあげた「クローズアップ現代+」をめぐり、上田会長に「厳重注意」していた事実を隠蔽し、議事録にも記載しなかった。
 毎日の報道を受けて、各地の市民団体が経営委員会に抗議、石原委員長(当時)の辞任を要求した。国会でも野党合同ヒアリングなどで、議事録や配布された資料の提出を要求した。
 追い詰められた経営委は「議事録は作らなかった」との態度を一転して昨年10月13日「議事経過」を公表、会長に「厳重注意」した事実は認めたが議事録全面開示は拒んだ。
 今年3月2日、毎日新聞が再びスクープ。経営委員会で複数の委員が放送法32条に反し、番組内容に踏み込んだ議論をしていた詳細が明らかになった。しかも12月に経営委員長に選任された森下俊三氏が議論を主導していた。市民団体は議事録公開を要求、24市民団体が共同して森下辞任要求署名を展開、短期間で7,289筆に達した。NHK予算を審議する衆参総務委員会でも、野党議員から議事録公開を求められた。
「議事概要」公表
 メディア・市民・野党の追及に抗しきれず、NHK経営委員会は3月24日、郵政との対応の経緯を「議事概要」として公表、5月12日には、非公開だった「経営委員会議事運営規則」の公開にも踏み切った。
 しかし、6月10日の経営委員会は審議委の「公開すべき」との答申にもかかわらず「議論を継続中」と相変わらず煮え切らない態度だ。11日には、前田現NHK会長まで、「(審議委答申を)尊重してほしい」と言い出した。メディアと市民・野党が一歩一歩NHK経営委員会を追い込んできたが、議事録全面公開まであと一押しである。
小滝一志
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2020年07月15日

【焦点】 黒人世帯の資産は白人の13分の1―ピケティ理論℃vい出す=橋詰雅博

  日本ジャーナリスト会議(JCJ)が7月4日に行った第1回オンライン講演は、「黒人が殺される国 アメリカの深層」がテーマだった。話したのは近刊『アメリカ白人が少数派になる日 「2045年問題」と新たな人種戦争』(かもがわ出版)の著者でジャーナリスト・矢部武さん。アメリカの社会、政治、経済を約40年間ウオッチしている矢部さんは、アメリカの根深い黒人差別問題などを平易に解説してくれた。
  講演の中で、白人と黒人との経済的な格差が大きいことを指摘。世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」(PRC)が2014年の国勢調査をもとにつくった調査によると、黒人世帯の所得中央値は約4万3300ドル(約465万円)、白人世帯は約7万1300ドルで、白人世帯は黒人世帯の1・6倍以上収入が多い。また、資産保有額の中央値(2013年)では、白人世帯は14万4200ドル(約1546万円)で、黒人世帯1万1200ドルの約13倍もの資産を所有していることになる。黒人世帯の保有額が圧倒的に少ないのは、黒人は長い間差別され、土地・建物を所有することや、その購入資金も借りることが禁止されていたことも関係している。ということは子どもらがもらえる相続財産があまりないのだ。
 ここで思い出したのは、高額経済本(日本では約6千円)にもかかわらず300万部売れた世界的なベストセラー『21世紀の資本』だ。著者のフランス経済学者トマ・ピケティは、こう分析した。相続財産に恵まれた富裕層は、投資によって不労所得を稼ぎ、政府の減税の恩恵を受ける、その一方では資金に余裕がない人は、いくら働いても富裕層との格差は開き、縮まらない。つまり相続財産の多寡が人生を決める。
 アメリカの白人と黒人の資産保有額の格差は、このピケティ理論≠ェピタリと当てはまる。しかし、白人が少数派になる2045年以降、白人と黒人の立場は逆転するかもしれない。
橋詰雅博
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2020年07月14日

【スポーツ】 再開後に不安つのる=大野晃

 プロ野球が無観客で開幕した。
 パ・リーグでロッテが8連勝を記録するなど新鮮な競い合いや新戦力の活躍が注目を集めた。ホームチームが応援録音を球場に流すなどして、競技者の全力プレーを盛り上げた。
 サッカーのJリーグも無観客で再開され、家庭で映像を目にするだけでもファンの興奮を呼んだようだ。
 テレビ中継やスポーツ・マスメディアに触れる限りでは、プロ野球やJリーグ一色に近い日常が戻ったように錯覚させた。
 ところが、皮肉にも、東京を中心に新型コロナウイルスの感染確認は、自粛解除以前に逆戻りしたように急増が続き、市民生活の不安は高まった。
 安倍政権も小池都政も警戒を訴えるだけで対策を示さずに放置したから、国民の不安は募って、7月10日から観客を入れても、客足が減りかねない。
 スポーツを楽しむには、安全、安心な生活が第一だが、行政の無策は、プロ競技の発展に暗い影を落とした。練習を再開した東京五輪代表たちも見通しが立たないことで、ベテランの引退表明が相次いだ。
 甲子園を目指した高校野球の大会中止による代替試合が始まったが、感染防止対策を徹底して、球児の保護者や関係者だけが見守る寂しさだった。
 長い自宅待機が強いられ、運動不足解消に動き出したい国民が大多数となったが、草の根の市民スポーツは、どう再開するか揺れ動いている。国民に自衛を求めるだけの国や自治体の投げやりな態度は、再開された企業活動や営業だけではなく、国民の日常生活に大きな戸惑いを生んでいる。
  そこへ梅雨の豪雨災害が拡大し、熱中症拡散の恐れも重なり、再開後の不安は広がるばかりで、より一層、将来を見通せなくしている。
 プロ競技再開が生活の励ましになるどころか、競技を見て騒いでいて良いのかとファンを動揺させ、張り切っている競技者をも不安にさせた。
 国や自治体の怠慢が、混乱を長引かせたと言えそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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