2020年07月05日

【今週の風考計】7.5─香港の人権を抑圧する「国家安全法」は撤回せよ!

◆「デジャヴ」(既視感)に襲われた。1カ月前に米国の黒人男性が警官に首を膝で抑えつけられ、「I can't breathe」と叫んでいる写真と、まさにそっくりのショットが、香港返還記念日にあたる7月1日に、香港市街で撮影されていた。
 警官がヘルメットをかぶりゴーグルをつけ、スネ宛てなどの重装備で、街頭デモに参加していた男性の首根っこを締め上げ、催涙弾ピストルをデモ参加者に向けている衝撃的な写真だ。
 これは先月30日に中国が強行した「香港国家安全維持法」に抗議する、市民デモへの弾圧現場をとらえた写真である。

◆香港の繁華街や銅鑼湾地区で300人が、即座に「国家安全法」違反の容疑で逮捕されている。荷物検査まで行い「香港独立」と書かれた旗を隠し持っていたとの理由で検挙している。
 こうした深刻な現実を招来させたのは、ほかでもない中国・習近平政権だ。これまで香港の「高度な自治」を認めてきた方針を投げ捨て、香港の人々の人権を抑圧するだけでなく、中国自らが国際的に公約した、「一国二制度」をブチ壊す暴挙である。
 香港議会での審議も抜きにして、中国政府が一方的に押し付けるなど、民主的手続きを無視しての強行は断じて許されない。
◆しかも香港政府内に、中国政府の出先機関「国家安全維持公署」を新設し、香港における市民的・政治的行動を取り締まるため、中国当局が直接介入し、弾圧ができるようにするとは、中国自らが署名・支持してきた国際人権規約にも反する。
 66条からなる「香港国家安全維持法」は、国家分裂や政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国の安全に危害を与えたり、威嚇したりする行為を取り締まる。最高刑は終身刑だ。外国人も含め、香港にいる全ての者が処罰の対象だ。裁判の管轄権は中国政府が握る。

◆香港は英国から中国に返還される際、当時のケ小平国家主席は、2047年までの50年間、香港を社会主義化しない「一国二制度」を守ると約束をし、「高度な自治」が保障されてきた。
 香港市民は自らを「香港人」と捉え、とりわけ若者たちの間では自治と司法の独立を誇りに、「雨傘運動」「人間の鎖」など、強圧的な中国への抵抗を繰り広げてきた。
◆しかし、今や一部の活動家グループは「国家安全法」の対象となることを恐れ、香港離脱や活動停止表明をしている。街中でも商店主らが反政府デモを支持するポスターを撤去する動きがみられる。このまま中国に屈服してしまうのか。
 9月6日には香港立法会議の議員選挙がある。7月18日から立候補の受け付けが始まる。民主派団体や組織は11日〜12日に候補者を決める予備選を行う。だが選挙管理委員会は、施行された「国家安全法」に反対する候補者は受け付けないのではとの懸念が高まっている。
 それにしても中国政府は、30カ国近くの国際的な批判に対し、「内政干渉」だと一蹴するが、基本的人権を踏みにじっての暴挙には、内政も外政もない。謙虚に耳を傾け香港への「国家安全法」は撤回すべきだ。(2020/7/5)
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2020年07月04日

コロナ禍取材最前線 Zoomぶっつけ本番 感情を読み取る難しさ 始めは抵抗感 有効な面も=知念愛香

             オンラインで取材する筆者.jpg
 コロナ問題の取材現場はどうなっているか。通信社記者に、この間の体験記を寄せてもらった。
      ◇
  国内で新型コロナウイルスの感染が広がり、現場での取材環境は目まぐるしく変わった。対面取材はしづらくなり、電話やビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」などのオンライン取材が増えた。意義があると思って取材した人の名前を掲載したところ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で思わぬ批判がきたこともあった。これからは「新しい生活様式」ならぬ「新しい取材様式」のための気遣いが求められている。
 目線は時々下に
  初めて取材先からビデオ通話でのやりとりを求められた際、正直に言うと困惑した。電話でやりとりするよりも相手の表情は見えるが、パソコンの画面に向かって話しかけるという点からも、対面取材とは圧倒的に違う。取材先は胸の内を明かすような発言をしてくれるのか……。どう取材を進めたら良いのかが全く分からず、最初の「Zoom取材」はぶっつけ本番となってしまった。
 結論から言うと、オンライン取材は問題なくこなせるものの、相手と打ち解けたり、表情などを読み取ったりするにはノウハウが必要だ。基本的に、ビデオ画面には私の顔しか映らないため、話を聞きながらメモを取っている手の動きや、ノートにペンを走らせている様子は見えない。相手から見ると、私はなぜか目線を時折下に落とし、話を聞いていないような態度を取っているように思われているかもしれない。
 また、目線にも気を付けなければならない。画面上の相手の目を見ても目線は合っていない。視線を合わせるには、相手の目を見ずにカメラを見なければいけない。こうした目線ひとつでも、対面や電話取材とは違う。「私がどう見えているのか」に気を遣う必要がある。
 リラックスする
 とはいえ、出張しないと会えないような遠方の人と話をする場合は非常に有効だ。また、自宅で取材を受けてくれた人からは「リラックスして話せた」と言われたこともある。最初は抵抗感があったものの、今ではメリットとデメリットをしっかり認識した上で、新たな取材手法として上手く取り入れていきたいと考えている。
 オンライン取材の反面、緊急事態宣言中や解除後の街を原稿にするために、しばしば街に繰り出した。緊急事態宣言下でも、自らの生活のために営業する飲食店や、なじみの店を支えるために足繁く通う常連客など、様々な事情を抱えた人と出会った。
 これは緊急事態宣言の解除直後の話だが、神奈川県・湘南の海岸である親子に出会った。母親の「子どもの学校がそろそろ始まるが、休校期間が長かったため夏休みがなくなるかもしれない。今まで外出できず、夏休みもない可能性が高い分、今のうちに遊ばせてあげたい」との言葉が印象に残った。
 許可を得た上で雑観として記事を出したが、SNS上で「緊急事態宣言が解除されたからといって遊びに行くなんて、子どもが感染してもよいと思っている親なんだろう」などの批判的な意見が散見され、驚かされた。
 監視し合う風潮
 社内では、街で取材した人の名前を掲載したところ、発言をめぐって取材相手本人のSNSに誹謗中傷のコメントが届いたため、ネット上の記事を匿名に切り換えたこともあった。
 「自粛警察」という言葉が登場したように、コロナ禍では同調圧力や市民が監視し合う風潮が高まった。同調圧力に迎合するつもりはないが、状況に応じて取材相手が誹謗中傷を受けないような記事の書き方に気を遣う必要があると考えている。     
知念愛香
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

posted by JCJ at 09:32 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月03日

【沖縄リポート】 沖縄戦継承 考えるきっかけに=浦島悦子

            P1020077.JPG
  沖縄が「慰霊の島」となる六月。今年は沖縄戦終結から75年の節目を迎える。例年、6月23日(沖縄慰霊の日)に平和祈念公園内の「平和の礎」に隣接する広場で開催されてきた沖縄全戦没者追悼式の会場を、新型コロナウイルス感染拡大防止のため規模縮小し、同公園内の国立沖縄戦没者墓苑に変更すると、玉城デニー知事が発表(5月15日)したことが大きな波紋を呼んだ。
 規模縮小に伴い、安倍晋三首相ら政府関係者を招待しないことを県民は歓迎する一方、国の施設で式典を行うことへの違和感・危機感が広がった。沖縄戦研究者や遺族らをはじめとする「沖縄全戦没者追悼式のあり方を考える県民の会」は、「住民目線から殉国の思想へと追悼式の意味が大きく変わってしまう」と、従来の式典広場での開催及び可能な限りの遺族・県民の参加を知事に直接要請した。
 地元2紙はともに文化欄や社会面で連続企画を組み、論稿やインタビューで多角的に問題提起。遺族の一人として県民の会共同代表を務める知念ウシさんは「人々の素直で真摯な祈りが、植民地主義の秩序に回収されてしまう不安」に言及した(6月10日付「沖縄タイムス」)。
 これら県民の意向を受けて玉城知事は再検討を行い、例年通り式典広場での開催を発表(12日)したが、一連の事態は図らずも、追悼のあり方や沖縄戦継承について、改めて考えさせるものとなった。
 国立墓苑での開催について、知事の国への忖度があったとは思わない。むしろ、彼が(知事でさえ)「勉強不足だった」と正直に言ったことが、沖縄社会の現実を浮き彫りにしたのではないか。「風化」が指摘されて久しい沖縄戦をどう次世代に継承し、沖縄戦から続く戦後史をどう捉えるか。それは、国の意向や強権に傾きがちな「コロナの時代」、私たちが「いつか来た道」と同じ過ちを犯さないための貴重な材料を与えてくれたと思う。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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2020年07月02日

著名人・若者を動かした「怒り」 「 #検察庁法改正案に抗議します」=望月衣塑子

             ◆望月衣塑子記者.jpg    
 検察庁法改正案が審議入りしていた5月、ツイッター上では「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ(検索目印)付きツイートが広がり、大きなうねりとなった。賭けマージャン問題もあいまって政府は改正法成立を断念した。
 総数は9百万件を超えたが、数の多さよりも注目されたのは、普段はあまり政治的な発言をしない著名人や若者たちが次々と賛同したことだ。彼らを突き動かしたのは、思想信条や損得ではない、「怒り」の感情だったのではないか。
「罪が無くても」
 5月8日、東京都内の30代の女性会社員「笛美」さんのツイートが始まりだった。この日、検察庁法改正案を含む「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が衆議院で審議入りした。
 おさらいすると、政府は長年の法解釈を変更し、1月に黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年延長を閣議決定した。将来、黒川氏を検事総長にすえ、検察捜査への関与を強めようとする官邸の狙いは明らかで、法改正は定年延長を正当化し、検察の独立や公正性をおびやかすものと受け止められていた。実際、笛美さんはツイートの理由を「政府が気に入らない人は、罪がなくても裁かれるということが起きる予感」がしたから、と答えている。
注目度トップに 
 ハッシュタグのついたツイートは急速に広がる。女優の小泉今日子さんや大竹しのぶさん、ミュージシャン「いきものがかり」の水野良樹さん、演出家の宮本亜門さんら著名人も次々に賛同し、ツイッターの注目度を示すトレンドで国内トップにもなった。
 当然、ツイート数=「抗議した人数」ではない。ただ、東京大大学院の鳥海不二夫准教授(計算社会科学)の分析によると、同じ内容を自動で投稿したり、拡散目的で新たにアカウントが作られたりした形跡もなかった。「ネットでの炎上などの案件として比較的多い」と指摘している。
耳を傾ける役割
 日本人の多くは周囲との不要な対立を避ける。政治的な意見を口に出すことはまれだ。特に著名人はファンやスポンサーから敬遠されるリスクが増すだけで、メリットはない。実際、今回も賛同した著名人に「政治に口を出すな」「がっかり」「歌だけ歌っていればいい」という反応も出た。
 それでも今回のツイッターデモに多くの賛同者が続いたのは、検察庁OBたちが意見書で示したような「検察の政治的中立性を損なう」ことへの抗議だけでなく、新型コロナウイルス対策を急ぐべき緊急時に、全く無関係の法案通過を図った「火事場泥棒政権」への猛烈な怒りだろう。
 政権は「普通の人」が政治に意見することを恐れる。20年前の衆院選で森喜朗首相(当時)が発した「無党派層が寝ててくれたらいい」と失言(本音)と通底する。今回のツイッターデモは、普段は政治に無口な層が動いた。不公正や不平等、不正義への怒りは、個人の立場や信条、利害を超えて共鳴し伝わっていく。この音に耳を傾け、報じるのがジャーナリズムの本質だろう。
望月衣塑子(東京新聞記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

posted by JCJ at 13:00 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月01日

沖縄県知事選 議会運営 綱渡り 新基地NO過半数確保 いつまで続く政権の民意無視=米倉外昭

開票結果を選挙事務所で待つ翁長雄治.JPG
6月7日に投開票が行われた沖縄県議会議員選挙(48議席)は、玉城デニー知事の与党が、改選前から1議席減らしたものの過半数の25議席を確保した。辺野古新基地に反対する県政を支持する民意が改めて示された。
薄氷の過半数
ある全国紙は10人を超える記者を送り込んだという。なぜ全国的に注目されるのか。
県議会で与党が多数を維持するかどうかは、政府と対立を続ける県政の動向を左右し、2年後の県知事選に直結する。そして、日米同盟の在り方に影響するからである。結果は、「薄氷の過半数」だった。
自民党は今回、初めて新基地容認を明確にした。さらにコロナ対策などへの政府批判が逆風になると見られていた。また、中立・非与党の公明党がコロナ禍を理由に現有4議席から公認を2議席に減らした。
しかし結果は、自民が議席を14から17に増やした一方で、与党は社会大衆党委員長など重鎮が議席を失った。議席を増やせなかったことに、与党陣営から「事実上の敗北」との声も漏れた。
ただ、辺野古新基地反対を表明している議員は非与党も加えて29人おり、全体の6割を占める。新基地反対の沖縄の民意は変わっていない(人数はメディアによって若干異なる。琉球新報報道にもとづいた)。
翌日の会見で菅儀偉官房長官は、自民が議席を増やしたことを問われ「(辺野古について)かなり理解が進んでいるのではないか」と発言。既定方針通りとして、選挙から5日後の12日、約2カ月ぶりに埋め立て工事を再開した。玉城知事は「民意は明確だ。大変遺憾」と反発した。
コロナ禍で運動が制約されたことから、投票率低下が心配されていた。投開票日が大雨だったこともあり、初めて5割を切る46・96%だった。痛恨の数字である。
揺れるオール沖縄
これからどうなるか。玉城県政と政府の、司法の場も含めた闘いはさらにし烈さを増すだろう。県政にとって綱渡りの議会運営となり、基地問題での対政府訴訟や訪米活動などに支障が出かねない。
翁長雄志前知事が「イデオロギーよりアイデンティティー」を合言葉に作り上げた「オール沖縄」は、各勢力の足並みの乱れが目立っている。知事選に向けて体制構築が急務だ。
投票率の低下は、政治に対する無力感、あきらめの反映でもある。これは、政治家だけでなく市民運動やマスコミの課題でもあろう。
しかし、沖縄に無力感やあきらめが広がっているとしたら、それはなぜだろうか。長年にわたり何度も意思を示してきたのに、無視され続けるからではないか。そして、なおも選択を迫られ続ける。そんな地域がこの国にほかにあるだろうか。
 沖縄は保革対立の構図の下では「基地か経済かが争点」とされてきた。それが翁長前知事以後は、ヤマトとの「対立か協調か」=「自立か従属か」に変わった。「ヤマト」とは日本政府にとどまらない、日本人一人ひとりの意味でもある。沖縄の選挙は、自分や身近な政治、政府の在り方を問う映し鏡であると、日本の全ての人々が考えるべきだろう。
米倉外昭(JCJ沖縄世話人)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

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