2020年08月31日

【お知らせ】 JCJオンライン講演会「時のヒト・コト」シリーズ 第4回目

                 「大阪都構想、七つの大罪」.jpg                    
          維新政治と「大阪都構想」「住民投票」を問う

【開催趣旨】
 大阪では10年にも及び維新政治が続いています。彼らの最大の野望が大阪市をなくし4つの特別区に再編する「大阪都構想」です。2015年の「住民投票」で否決されたものの昨年4月の統一地方選挙で大阪維新の会が勝利し、公明党を屈服させ2度目の「住民投票」を行おうとしています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るい、安倍政権の対応が後手後手に回るもとでメディアへの露出度を強めながら“吉村人気”が全国的にも広がっています。改めて、維新政治の実態や歴史を明らかにしながら大阪、関西から現状や本質を全国に発信します。

日時:9月13日(日)午後2時〜3時30分
講演@ 「大阪都構想、七つの大罪」 ジャーナリスト・幸田 泉さん
講演A 「維新の歴史と大阪のたたかい」 大阪市をよくする会・中山 直和さん


参加費:500円  申し込み先 URL: http://ptix.at/bNIvQ5

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ関西支部)、メディアを考える会・大阪
(JCJとメディアを考える会・大阪の会員は無料。onlinejcj20@gmail.comに別途メールで申し込んでください)

posted by JCJ at 01:00 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月30日

【今週の風考計】8.30─黒人銃撃と「自警団」そして関東大震災・亀戸事件

米国のウィスコンシン州ケノーシャで、23日、黒人男性が警官に背後から至近距離で7発もの銃撃を受け、半身不随の重傷となった事件は、またまた大きな波紋を広げている。
 28日には、キング牧師が「私には夢がある」と演説したワシントン大行進から57年を迎え、一連の黒人銃撃に抗議し「人間の権利と平等と融和」を訴える数千人規模の大集会が、ワシントンで開かれている。
プロテニスの大坂なおみ選手は、ツイッターで「私はアスリートである前にひとりの黒人女性です。(中略)警察の手により黒人が虐殺され続けるのを目にすることは、正直言って吐き気がします」と、内外に訴えている。
 彼女は、5月25日の警官によるフロイドさん殺害事件への抗議デモにも参加し、これまで熱心に黒人差別に対するプロテストと思いを発信している。

ところが25日の夜、米国ケノーシャでの抗議デモに参加した市民が、なんと17歳の白人の少年にライフル銃で撃たれ、2人が死亡、1人が重傷を負った。
 少年は、警官にシンパシーを寄せるだけでなく、地元の白人中心の武装組織「自警団」と一緒に行動していたという。1月にはアイオワ州でのトランプ大統領の集会に出かけ、最前列に座ってエールを送るなど、熱烈なトランプ支持者だという。
 17歳の少年までも銃口を人に向ける現状に、米国社会の病巣の深刻さが際立つ。
しかし、トランプ大統領は、現地に州兵の派遣を表明、大統領選に向けて支持拡大の「法と秩序」の維持を掲げ、黒人差別への抗議デモと警官・「自警団」との対立をあおり、市民を分断し「憎悪の連鎖」に巻き込む危険を、ますます拡大させている。

日本はどうか。「自警団」といえば、いま日本の各地に「コロナ自警団」がはびこっている。コロナへの恐怖心に付け入り市民を相互監視、自粛に従わない人や休業しない店舗、さらには感染者を「コロナをうつす加害者」扱いして責める。この「コロナ自警団」が、正義の鉄槌を下すとばかりに攻撃衝動を発散している。
 政府・自治体にとって「コロナ自警団」は、行政の怠慢は棚上げし、かつ上からの行動規制は推進してくれる、まさに一石二鳥の存在だ。

思い出してほしい。今から97年前の9月1日、関東大地震が発生、その直後から「朝鮮人が暴動を起こした!」「井戸に毒を入れた」などの恐怖をあおる流言が意識的に拡散され、多くの朝鮮人が虐殺された事態である。
 政府や警察みずからデマを広げ、<不逞鮮人の襲来>に備えて、在郷軍人・青年団・消防団を中心に「自警団」を組織するよう促した。その数は関東一円で3000とされる。
 国の「お墨付き」による「自警団」は、棍棒・竹槍・日本刀・鳶口・猟銃などで武装し、通行人を検問、朝鮮人とみるや迫害・虐殺した。2日夜から3日にかけての蛮行はすさまじい。犠牲者は数千人に及ぶ。
9月3日になると、さらに「不逞鮮人を煽っているのは主義者だ」のデマが流される。市民の同調圧力にも助けられ、警察と軍は大手を振って、社会主義者を一挙に根絶やしにする作戦に出る。
 東京・南葛飾地域の労働組合青年幹部ら10人を、相次ぎ亀戸署に留置、軍に引き渡してのち、5日未明、近衛師団の騎兵第13連隊の兵士によって刺殺された。「亀戸事件」である。

米国であれ日本であれ、昔も今も「自警団」が組織されるとき、それを権力者や警察が利用する恐ろしさは、十二分に認識・警戒しておかなければならぬ。(2020/8/30)
posted by JCJ at 08:11 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月29日

【おすすめ本】野田正彰『社会と精神のゆらぎから』─権威や偏見に抗い、苦しむ人々に寄り添う精神医学を築く=山田寿彦(元毎日新聞記者)

社会と人間の精神を物理的にゆらぎ合う共振の関係としてとらえた本書は、精神病理学的分析手法による、社会の歪みを徹底的に批判する精神医学を切り開いた、その到達点を示唆している。著者の出身地高知県の地元紙に寄稿した連載をまとめた回想記である。
野田.jpg 
著者は社会と人間への洞察を欠いた既成の精神医学・医療を根底から否定し、その作り直しをライフワークとしてきた。
 15年間の臨床現場における医療改革の闘い、それに続く評論・執筆活動から生まれた、ノンフィクション文学の形態を取った社会批評は権力を痛打するだけではなく、市民の側の思考停止にも厳しい批判を向けてきた。
「野田精神医学」(勝手に呼ばせてもらう)は、文献の渉猟と徹底した取材、時にはニューギニア現地人の精神分析にまで足を運ぶ知力と行動力を基礎として確立された。
 人間の精神とは何か。答えを求める思索の旅路を縦糸に、社会問題との格闘、悲哀を抱える人々への寄り添いを横糸に回想が織りあげられる。
 1944年生まれ。 北大医学部で医学連・青医連の活動家として批判力のインフラを鍛えながら、苦しむ人々に寄り添う精神医学の在り方を考え始める。野田精神医学が、支配層の育成を目的とした旧帝大の中にあって、「自由・平等・博愛」のクラーク精神を持つ稀有な学府から始まったのは偶然ではないだろう。
 一人の精神科医が「自分はこう生きてきた」と振り返る書物が、さて、あなたはどう生きてきた(いる)のか、どう社会のことを考えてきたのかと問いかけているように思えるのは、本書が哲学の書となりえていることが大きな理由だろう。(講談社1600円)


posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月28日

横浜カジノ反対集会に800人参集 住民投票の署名活動は9月4日から=伊東良平

               8.22勢揃.JPG
 2019年8月22日、横浜市の林文子市長はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を表明したが、その1年後となる8月22日(土)に市民団体がカジノ立地を予定している山下埠頭の隣の山下公園で反対集会(写真)を開いた。
 「カジノもコロナも終息へ」と銘打った集会は、住民投票の実施をめざす市民団体「カジノの是非を決める横浜市民の会」が主催したもので、800人が参加した。会の共同代表を務める小林節慶応大学名誉教授の挨拶のあと地元選出の立憲民主党・阿部知子衆議院議員や共産党・畑野君枝衆議院議員など政党関係者が力強い連帯のアピールを行った。
 さらにはアイドルグループ「モーニング娘」の元メンバー市井紗耶香さんも応援に駆けつけた。市井さんは子育てプロジェクトチームのコーディネーターを務めており、親として賭博施設は認められないとマイクを握った。
 横浜市は首都圏で最初にカジノ誘致に手を上げ、6月に実施方針を明らかにして年度内に事業者を選定するスケジュールだった。しかし、IRをめぐる汚職問題や新型コロナウイルスによる感染拡大で、有力候補で日本のカジノ開放を狙っていたアメリカの「ラスベガス・サンズ」が撤退を表明し、推進側には厳しい状況になっている。
 コロナ禍によって世界のカジノ施設は事実上停止状態になっていて、横浜市はIRの実施方針公表を延期するなど当初構想は崩れている。
 この集会を主催した市民団体は9月4日から誘致の是非を問う住民投票に向けた署名活動をスタートさせる。当初は4月から行う予定であったが、コロナの影響で延期していた。期間は2カ月間で、街頭などのほか市内に約100カ所の署名スポットを設けて市民と対面しながら署名の促進を図るという。
 集会の最後は横浜の18の選挙区にある市民連合の代表らがのぼりともに壇上にあがり、「カジノは断念」などのシュプレヒコールをあげた。参加者も「林市長は勝手に決めないで」と書かれたプラカードを掲げて応じ、会場は真っ赤なプラカードで埋め尽くされた。
伊東良平


posted by JCJ at 01:00 | 関東・甲信越 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月27日

【焦点】 売り上げ激減の音楽エンタメ業界 オンラインライブが希望の星=°エ詰雅博

 ぴあ総研によると、音楽ライブ・エンタテインメント市場は、2019年は過去最高の約6300億円を記録したが、20年はコロナ禍のせいで約1840億に激減する見込み。前年より3割にも満たないことになる。
 音楽イベントを手がけるロッキング・オングループ社長で音楽評論家の渋谷陽一さん(69)は、8月18日、日経Web中継セミナーに出演し、エンタメ業界の現状と、先行きなどについて語った。
 「今のエンタメ業界は死にかけている。深刻な事態だ」という。コロナ禍前のような仕事ができないからで、事業者は収入がほとんどなく、ミュージシャンやスタッフなどに報酬を支払えない状況がずっと続いている。近ごろはやっとライブ演奏ができるようになったが、しかし、国のコロナ感染拡大防止ガイドラインにより会場の定員の半分しかお客を入れることができないのがネックだ。
 「定員1000人のところは、最大で500人までです。売り上げが半分に落ちても収入があるからいいじゃないかと思う方が多いだろうが、そうではない。ミュージシャンやスタッフなどへの報酬の支払いを考えると、完全に赤字です。定員の半分では利益を得られない。赤字を生むだけです」
 だからマスク着用や検温、消毒、換気を徹底するから定員まで入れることを国が許可してほしいと要望する。
 「そうすれば、間違いなく業界は息を吹き返します。『3密状態をつくるのか、バカなことを言うな』と思われるかもしれませんが、このままの状況を続くと、業界の多くの人は食べていけなくなる。コロナウイルスというリスクを恐れながらも、ビジネスが成り立つように知恵を働かす時期にきている」
 こうした苦しいもとで、オンラインライブが希望の星≠ノなると断言する。
「韓国の男性ヒップポップグループ『BTS』(防弾少年団)のオンラインライブは2時間のコンテンツで約65万人が視聴し、20億円の収入をあげた。たった1回でこれだけの収入です。インパクトはものすごい。日本に目を転じればサザンオールスターズ6億5千万円、星野源3億円、それぞれ収入があった。オンラインライブなら演出を変えて、2カ月から3カ月に1回できる。エンタメのビジネスモデルを根底から崩す転機になれる。コロナ禍によってVR(仮想現実)ゴーグルを装着すれば配信されたコンサートの臨場感を味わえるといったテクノロジーの発展と共にオンラインライブという有望ビジネスの誕生が速まった。そのマーケット規模は大きくなる可能性を秘めている」
 あるライブ・エンタメ市場調査では、5年後に占めるオンラインライブは市場の10%を超えるそうだ。
橋詰雅博
posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月26日

【お知らせ】 JCJ賞は9月上旬に発表 贈賞式は10月10日=編集部

  優れた報道、テレビ番組、出版物などを表彰する日本ジャーナリスト会議の20年度JCJ賞はコロナ問題の影響で選考作業が遅れていましたが、9月上旬に発表する運びとなりました。受賞作品の内容は本紙9月号で詳細をお伝えします。
 贈賞式は10月10日午後2時から、東京都千代田区二番町のエデュカス東京(全国教育文化会館)7階会議室で開催します。コロナ感染を防ぐため、贈賞式は関係者だけの参加に絞り、その模様は映像で広くお知らせする予定です。
 第1回のJCJ賞は1958年に「菅生事件に関する報道」で共同通信、大分合同新聞など五つのメディアが共同で受賞しました。今年は第63回になります。例年は敗戦の日8月15日前後に贈賞式を開いてきました。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号
posted by JCJ at 01:00 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月25日

【リアル北朝鮮】 金正男暗殺を描いた映画 事件から3年半 秋に上映=文聖姫

 朝鮮労働党委員長、金正恩氏の異母兄である金正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺されたのは2017年2月のことだ。白昼堂々、国際空港のロビーで実行された殺害は、世界に衝撃を与えた。しかも実行犯は20代半ばの若い女性2人で、犯行の一部始終は監視カメラにも納められていた。
 当初、マレーシア当局は8人の北朝鮮人が関与しているとしていたが、4人は事件直後に出国、大使館員ら2人も後に出国した。唯一逮捕された1人も証拠不十分で釈放され、不起訴となり、帰国した(1人は行方不明)。
 この事件を扱ったドキュメンタリー映画が10月、日本で公開される。タイトルは「わたしは金正男を殺してない」。監督は米国人のライアン・ホワイトだ。映画は、実行犯として逮捕されたベトナム人のドアン・ティ・フォン、インドネシア人のシティ・アイシャの生い立ち、家族、裁判過程などを中心に描いている。
 彼女たちの弁護を引き受けた弁護士チーム、事件を追い続けるマレーシア人ジャーナリストのハディ・アズミ氏、金正恩氏に関する著作があるワシントン・ポスト紙の北京支局長、アンナ・ファイフィールド氏らの証言を通じて、事件の背景が浮かび上がっていく。
 「確実なのは、この(金正男暗殺)事件が北朝鮮の体制には全く影響しないということだ」。筆者は当時、本欄でこう書いた。あれから3年半が過ぎた今でも、その考えに変わりはない。この3年半の間に金正恩体制は盤石のものとなった。そればかりか、金正恩氏は中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領らと次々会談し、文在寅大統領との3度にわたる南北首脳会談も実現した。
 そして、悲願であった米国大統領との会談も2度実現させた。トランプ氏という変わり種だからこそ可能だったのかもしれないが。米大統領との2度目の会談場所は、ドアン・ティ・フォンの母国、ベトナムのハノイだった。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号


posted by JCJ at 01:00 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月24日

【‘20緑陰図書─私のおすすめ】 大地の上に立つ民衆の一人として生きる=渡辺一枝(作家)

顔写真.jpg
1990年代から「グローバル化」がしきりに言われ、一方でナショナリズムに喚起された国民国家論が声高に叫ばれるようになってきている。その危険性がコロナ禍で一層鮮明になった時に読んだ3冊を通し私は「国家」は虚構であり日本政府発行の旅券を私が持つのは、便宜上のことでしかないと改めて思う。
 奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房)は、ボルネオ島サラワク州をフィールドにした著者のエッセイだ。マレーシアは小学校が義務教育だが、プナン人は学校の存在意義を感じず学校教育は定着しない。それは我々の社会での「不登校」とは次元の違う話だ。剥き出しの自然に向き合う中で、困難を乗り越え知恵を紡ぎ、物の見方ややり方を築いてきた森の民は、私たちに異なる生の可能性を示唆しているのではないか。
 熱帯の森で狩猟を生業にするプナン人と長期にわたり継続的に交流してきた著者は、プナン人は私たちには「あって当たり前」の反省や感謝の念が無いが、それは単に彼らの生き方が私たちと異なるからということでしかないという。
 原発事故後の福島を伝える本は数多いが、自分史を交えての飯館村の歴史、事故で破壊された暮らし、国や行政、東電との闘い、避難生活と生活再建の道を、地に足がついた著者の言葉で克明に丁寧に記録した菅野晢『全村避難を生きる』(言叢社)は「農の本質」は種を蒔き、収穫して喜びを分かちあうことで、そのためには土地がなければならないと、国家の論理ではなく民衆の論理として強く説く。
 もう一冊、本橋成一『世界はたくさん、人類はみな他人』(かもがわ出版)は、5歳の時に東京大空襲を体験し、長じて筑豊や賭場など日本の市井の人々を、またチェルノブイリやイラクなど世界を写し撮ってきた写真家による、笹川良一が喧伝した「世界は一家、人類はみな兄弟」に対する強烈なアンチテーゼだ。
 私は、大地の上に立つ民衆の一人として生きていきたい。
本.jpg

posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月23日

【今週の風考計】8.23─国債乱発! コロナ後にくる財政破綻の危機

コロナ感染拡大による経済の停滞・混乱は深刻さを増し、倒産や失業は増える一方だ。今年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、年率換算で−27.8%、戦後最悪のマイナス幅となった。世界を見ても今年の経済成長率は−5%、落ち込みは「大恐慌以来最悪」になるという。

一方で、株価は上昇を続け「コロナ長者」まで生まれている。実体経済とかけ離れた“危うい株高”を支えているのは何か。安倍政権の国債乱発と日本銀行・黒田東彦総裁による国債「買い支え」策にある。市場には「経済が悪化しても日銀が支えてくれる」との期待があるからだ。
 もともと日銀は、国債の買い付けが禁止されている。ただし特別の事由がある場合、国会の議決を経たときは許されている。この「禁じ手」を使って、日銀は国債を無制限に買い続けている。
証券会社が利子もつかない国債を買うのは、金利が上がった際には、「日銀トレード」という日銀への転売で、利ざやが稼げるからという。
 加えて日銀は上場会社の投資信託(ETF)を年間12兆円も購入し、社債の買い入れ枠も3倍に増やし、株価の下落を食い止めている。
 この安倍・黒田二人三脚の「財政ファイナンス」が、株価の下支えをしているのだ。

いまや日銀は「通貨の番人」として「政府からの自立」という矜持や使命まで投げ捨て、せっせと市場を通じて国債を大量に購入し、政府の借金を肩代わりする組織となり下がった。
 2020年度に発行する新規国債だけ見ても、過去最大の90兆円になる。国の歳出額の半分以上が国債で賄われている。世界各国も国債を発行しているが、国内総生産(GDP)の40%前後にとどまる。だが日本は突出、なんとGDPを大きく上回る120%も発行する異常な事態だ。
その国債を日銀が買ってくれるのだから鬼に金棒、国債が「打ち出の小槌」となっている。加えてコロナ感染「第2波」のまっただ中にいる現在、人々の生活を支える給付金や休業補償などへの再対応が急がれ、政府の国債発行や日銀の国債「買い支え」の弊害を指摘する声は、ほとんどない。

国債は、歳入不足の穴埋めに発行する国の借金証書。現在、借金額は1千兆円、驚異的な水準に達している。赤ちゃんから老人まで、国民一人あたり900万円の借金をしている勘定だ。いつ借金を返すのか、何ら明らかにされていない。
しかも日銀が、国債1千兆円の半分500兆円を所有している。日銀こけたら、国債もパー、国家財政の破綻へと行き着く。2009年ギリシャ危機の悲劇を、将来世代へおっかぶせる無責任は許されない。
 政府のコロナ対策の補正予算58兆円にも“厳しい目”が必要になる。1兆7000億円もの支援事業「Go Toキャンペーン」のズサンさ、不必要・不透明な事業への中止など、野放図な国債発行による財政出動はストップ!(2020/8/23)
posted by JCJ at 07:49 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月22日

辺野古移設に固執する二重基準=@技術的にも民主主義的にも問題=福元大輔

                 1面辺野古記事取り替え写真.jpg           
 政府が、秋田県と山口県への「イージス・アショア」配備計画を断念すると、沖縄県では、米軍普天間飛行場返還の条件となっている名護市辺野古移設との違いに触れ、「ダブルスタンダード(二重基準)」と批判が渦巻いている。
 沖縄県の玉城デニー知事は、河野太郎防衛相が地上イージスの停止を表明した翌朝、県庁で待ち構えた記者団に「辺野古の方が無駄」と、厳しい表情を見せた。
 地上イージスは当初、2基で4500億円とされていたが、迎撃ミサイルを打ち上げた際に切り離す推進装置「ブースター」を海上や自衛隊演習場内に安全に落とせない技術的な問題が「判明した」という。
 システム改修に12年、2200億円ほどを要するため、河野防衛相は「合理的とはいえない」と判断した。
 辺野古はどうか。米兵3人による少女暴行事件を受け、日米両政府が沖縄の負担軽減の目玉として1996年に合意したのが普天間飛行場の返還だった。沖縄県内の代替施設への移設を条件に、5〜7年で返還すると発表した。
軟弱地盤は既知
 国土面積0・6%の沖縄に全国の米軍専用施設面積の7割が集中する現状で、さらに県内移設では抜本的な負担軽減につながらない、と沖縄側の反発に遭い、返還合意から24年が過ぎても、実現していない。
 政府は2014年から移設先とする辺野古での埋め立て工事を進めるが、県民の理解を得ることができず、難航する。そこに埋め立て予定海域で「マヨネーズ並み」と言われる軟弱地盤が「判明した」のだ。
 地盤を強化する改良工事が必要で、工費は当初の3500億円から約2・7倍の9300億円に膨らんだ。埋め立て工事の工期は当初5年を見込み、すでに3年が経過したが、さらに少なくとも12年かかり、3倍以上に伸びる。
 地上イージスではブースターを安全に落とせるというそれまでの説明が誤っていたことになる。辺野古でも軟弱地盤の存在は20年近く前から指摘されている。いずれも「判明した」のではなく、もともと知っていたが、他に場所を探せない政府が隠していた可能性もある。
止めるのは政治
 元防衛官僚の柳沢協二さんは、辺野古移設を断念できない理由を「行政に働く惰性」と説明する。動き出した事業にブレーキをかけるには相当なエネルギーがいる。自分たちの仕事の否定にもつながる。無理と分かっていても、辺野古問題を担当する2〜3年を“惰性”で乗り切る。
 軟弱地盤という不可抗力で工事が止まるなら誰も責任を負うことはないが、政治マターだから官僚の意思で変えることができない。つまりイージスのように、政治が止めるしかないのだ。
 辺野古の場合、技術的に建設できるか、できないか、という問題にとどまらない。19年2月の県民投票では、投票率52・48%で、投票総数の71・7%が辺野古の埋め立て工事に反対の意思を示した。地方自治や民主主義の観点からも、政府は辺野古移設を強行すべきではない。
 一方、地上イージス断念直後に「敵基地攻撃能力」の議論が出てきた。日米の力関係から米国の利益が絡む国策を止める場合、その背景を注視しなければならない。
福元大輔(JCJ沖縄)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号


posted by JCJ at 01:00 | 九州・沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月21日

【支部リポート】 香川 懸念つづくゲーム条例 陳情2件 提訴の動きも=刎田鉱造

                ネットゲーム.jpg
 「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」が4月1日から施行されています。条例には家庭に「子どものゲームは一日60分」をルールにして守ることを保護者の責務と明記されています。県議会審議中から子どもの権利を侵害している、家庭に自己責任を押しつけている、など懸念の声や行動が続いています。
 条例施行後開かれた香川県議会6月定例会(7月13日閉会)ではネット・ゲーム依存症対策条例の「制定過程の問題点の洗い出し」を求める陳情2件が出されましたが、不採択となりました。
 香川県弁護士会(徳田陽一会長)は会長声明を発表(5月25日)して「条例の廃止、特に本条例18条2項については即時削除」を求めました=写真=。声明はゲーム時間の目安を決めた18条は憲法が保障する自己決定権を侵害する恐れがある、さらに遊ぶ権利を定めた子ども権利条約の趣旨に反する、などと訴えています。
 また、高松市内の高校生、渉(わたる)さん=17、名字非公表=は県を相手に違憲訴訟を起こすことにしています。撤回を求める訴訟費用をクラウドファウンディングで募集、すでに目標額を集めて秋口には条例撤回を求める提訴を進める模様です。
 もう一つ大きな問題になっているのが制定前に県議会が実施したパブリックコメントです。寄せられた2686件の意見のうち8割ほどが賛成意見ですが、なんと同じ文面が多数あり、同じパソコンからの発信が多いなどおかしなことだらけ。京都市の市民団体「パブリックコメント普及協会」が検証を求める意見書を提出しています。
 疑問渦巻くパブコメですが「行政が私的なことに介入すべきでない」という反対意見が400件あったことは注目してよいと思います。
 県議会では共産党の秋山時貞県議が市民の声をよく聞いた論戦を展開しました。採決は賛成22(自民党県政会、公明党、無所属)反対10(日本共産党、自民党議員会)。棄権(退席)8(リベラル香川)でした。
 同様のゲーム条例を計画していた秋田県大館市では香川の動向を注目して作業をストップするなど影響は広がっています。
刎田鉱造
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 中国・四国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月20日

【おすすめ本】 籠池泰典+赤澤竜也『国策不捜査 「森友事件」の全貌』─国家によるカゴイケ切り捨て、裏で公文書改ざんの暴挙=河野慎二

 森友事件の被告席に立たされた籠池氏が事件の全貌をまとめた。その中で彼は「本物の首謀者が国家の中枢で未だに権勢を振るっている」と、安倍首相に最大級の非難の言葉を浴びせる。
 その原因は安倍首相の「手のひら返し」にある。首相は園児に教育勅語を暗唱させる籠池氏の特異な幼稚園教育に共鳴し、国有地買収計画「神風」を吹かせたが、国会で追及されると一転「国家によるカゴイケ切り捨て」の挙に出た。
 籠池氏は「手のひら返しと決裁文書改ざんは一体のもの」と喝破。「安倍官邸は公文書を改ざんさせ、官僚に国会でウソをつかせ、議会を毀損した」と首相の罪状≠告発する。
 彼は「国家は言葉で成り立つ」との考えのもとで「憲法、法令、統計、決済文書など、公的な言葉に信頼を置くがゆえ、議員に権限を付託する」と指摘。「言葉をないがしろにする人間に、国家にとって最も崇高な言葉である『憲法』を語る資格があるのか」と、安倍改憲をこき下ろす。
 また,検察にも厳しい批判の目を向ける。検察内部には、立件すべき理由があるのに、政治的思惑に基づき、「不起訴ありき」という前提で立件を見送る「国策不捜査」方針がまかり通っていると指摘する。
 実際、森友事件は籠池氏の詐欺事件に矮小化され、国の背任容疑や公文書改ざん問題は闇に葬られた。彼は「公訴権を濫用し、政治権力の犬に成り下がった特捜部は即刻廃止すべきだ」とも、主張している。
 さらに「この国の報道機関のあり方が、いまほど問われている時はない」と指摘しつつ、「希望は捨てていない」と述べ、メディアへの批判と期待に力を込める。(文藝春秋1700円)
                           
                   国策.jpg
posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月19日

【スポーツ】 楽しむ環境条件の再検討を=大野晃

 長い梅雨が明けて、猛暑が続いた。
 新型コロナウイルス感染症の感染対策に加え、屋外でのスポーツにも危険をともなう悪条件が重なった。
 それでもプロ野球やサッカーJリーグなどプロ競技は観客制限で継続し、高校野球は、中止となった全国大会の代替試合が炎天下で繰り広げられた。
 さらに、涼しい高原などでの夏季トレーニングはウイルス感染症対策で自粛に追い込まれ、多競技で猛暑の中での鍛錬が続いた。
 マスメディアは、悪条件を乗り越える競技者の強い希望や意志を伝え、美談仕立てでもあった。 しかし、なぜ子どもまでが、悪条件でも競技に挑まざるを得ないかの分析は、表面的に流れていた。
 災害で荒れる梅雨から熱中症の危険をはらむ猛暑へ連続する気象条件は、地球温暖化を背景に、今年特有ではなく、恒常化すると気象関係者は危惧している。
 1年延期された東京五輪・パラリンピックが、悪条件下で開催されることは、十分に予想される。悪条件開催は、巨額資金で放映権を握る米国テレビが引っ張ったと批判するマスメディアだが、猛暑の中での高校野球を推進して顧みない。ご都合主義と映って不思議はない。
 かねてから、学校教育の一環に固執する文科省指導により、夏休み期間限定の全国大会が、不健康な条件下での競技を、子どもたちに強いていると批判されてきたが、一顧だにされなかった。
 極端に短縮された夏休み前の、猛暑の中での体育授業で、熱中症に襲われた児童も出た。ウイルス感染症対策で、競技に取り組む環境条件がさまざまに制約された中でこそ、改めて競技を楽しむ環境条件を多方面から再検討し、健康なスポーツライフを構築する道筋を見出すべきではないのか。
 文科省の硬直した対応をただし、スポーツ基本法に基づくスポーツ庁の行政責任だろう。
 競技団体の最重要課題であり、マスメディアの姿勢も問われる。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月18日

「妥当な判断」山口県・阿武町長 イージス・アショア撤回=嶋沢裕志

                山口県、むつみ演習場の看板.jpg
 唐突なイージス・アショア配備計画撤回は、もう1つの配備予定地だった山口県側に、より大きな衝撃を与えている。
 山口県は安倍晋三首相まで歴代8人の総理大臣を輩出した保守王国。村岡嗣政知事はじめ全19市町の首長が自民党だ。陸上自衛隊むつみ演習場(萩市・阿武町)を巡っては、大物議員らの工作も奏功。「秋田のようなミスはない」と受け入れムードに傾いていた。
例外が阿武町だった。
「奇跡です。信じられません」。6月15日夕、阿武町の知人から、花田憲彦町長と職員が役場でNHKニュースを見入る映像が送られてきた。
 本紙がイージス・アショア配備に真っ先に反対した花田町長インタビューを掲載したのが昨年9月号。「私も自民党員だし、ミサイル防衛のあり方に反対する訳ではないが、町が進めてきた移住施策、『選ばれる町づくり』という地方創生施策と相容れない」と語った。
 とはいえ北朝鮮の弾道ミサイルの進化も知悉(ちしつ)している。「最初からむつみありき」で来る防衛省側の不誠実、緊張感の欠如に新屋演習場と同じ臭いを嗅いでいた。
 6月19日、河野防衛相が謝罪・説明のため山口県庁を訪れた際、そんな温度差が露呈した。「住民にしっかり経緯を説明してほしい」。怒気を帯びた村岡知事、藤道健二萩市長らの語気に比べ、花田町長は「賢明な選択」の一言だった。
 ブースター云々の背後に潜む新防衛網の解読は、我々に託された大きな宿題だろう。  
嶋沢裕志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

 
posted by JCJ at 01:00 | 軍事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月17日

河井事件 広島政界大揺れ 疑惑は安倍政権直撃か 選挙のあり方 根本見直し=難波健治

                IMG_8894●1面用20200618金座街入り口・撮影川后和幸.JPG
 昨年7月の参院選をめぐる大規模買収事件が、広島県政界を揺るがしている。事件が発覚して9カ月。この間、衆院議員で前法相の河井克行被告(57)と妻で参院議員の河井案里被告(46)が逮捕、起訴されただけでなく、7月17日までに買収された側の首長3人、市・町議4人が辞職、町議1人が辞職を表明。地方政界を襲った激震は今後、安倍政権を直撃する可能性をはらんでいる。
 疑惑は、昨年10月末の週刊文春記事が発端となった。昨夏の参院選で定数2の広島選挙区に県議を辞めて立った案里被告の陣営が、車上運動員(いわゆるウグイス嬢)に法定額上限を超える報酬を支払った疑いが浮上し、克行被告が法相を辞任したのが始まりだ。
溝手「切り崩し」
 事件は、自民党本部が河井夫妻に1億5千万円もの政治資金を送っていたことが発覚して様相を大きく変えた。広島選挙区でもう一人の自民公認候補である現職の溝手顕正氏(77)=元国家公安委員長=への交付金は1500万円だった。なぜ同じ公認候補に10倍もの差をつけたのか。夫妻に渡された巨額資金の使途は何か。党総裁としての安倍晋三首相のかかわりが注目された。
 溝手氏は第1次安倍政権を首相が1年で投げ出した時、首相を「過去の人」と評した。首相は、2013年の参院選でも溝手氏にぶつけるかたちで2人目の自民候補擁立を画策したが、当時の石破茂幹事長らの反対で断念したいきさつもある。
  今回の案里擁立をめぐっても地元自民党県連は2人目の擁立に絶対反対の姿勢を崩さず、結局、安倍首相や菅義偉官房長官らが押し切るかたちで定数いっぱいの候補擁立を強行した。告示後は首相をはじめ、菅官房長官らが次々と広島入りし、「案里、案里、案里をよろしく」と繰り返した。
金権政治解明を
 案里候補擁立の狙いは、広島選挙区で自民が2議席を独占することではなく、政敵・溝手氏の追い落としにあったのではないか。また、1億5千万円のうち1億2千万円は、国民の税金である政党助成金から支出されたことも報道され、県民の反発をいっそう買っている。首相の秘書団が数人規模で広島入りして企業回りをし、溝手票の切り崩しにあたったことも明らかになっている。
 東京地検は河井夫妻の起訴にあたり、「地元政治家ら100人に約2900万円の現金を配った」としている。うち政治家は40人。これまで溝手氏を支援してきた人たちも当然含まれている。
 夫妻の逮捕でこれら政治家は大いにあわてた。「トイレでポケットに封筒をねじ込まれた」「『安倍さんから』と言われ断れなかった」などの告白ドミノが起き、辞職も続いている。
 夫妻は7月8日、買収と事前運動で起訴された。しかし地検は「起訴すべきは起訴した」という言い方で、被買収者100人全員の刑事処分を見送った。「カネを受け取った者も許してはならない」との市民の声が投書欄などにはあふれている。
 法務行政のトップが訴追された事件は新たな局面に入った。8月上旬までに始まる百日裁判では金権政治の実態がさらに明らかになるはずだ。
 県内では15年前にも「政治とカネ」をめぐる問題が起きている。故藤田雄山前知事の選挙で県議らに現金が渡され、1期目は総額2、3億円に上ったとの疑惑が浮かんだものの真相は明らかにならなかった。この時、県議として前知事に「男らしく辞めなさい」と迫ったのが案里被告だった。
  今回の河井事件報道を一貫してリードしてきた地元紙・中国新聞の担当デスクは「選挙のあり方を問い直したい」と述べている。論説主幹はコラムで「脱・お任せ民主主義」「『べからず』公選法を変えよう」と提言した。選挙カーが連呼するだけで「あれもダメこれもダメ」の公選法そのものに金権選挙がはびこる盲点があるのではないかとの指摘である。
 8月2日には、三原市と安芸高田市で、今回の事件で現金を受け取り辞職した市長の出直し選挙が始まる。どのような選挙が行われ、報道はどんな視点で何を読者に問題提起するのか。「ポスト河井」の選挙と報道の行方を見守りたい。
難波健治(広島支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月16日

【今週の風考計】8.16─リムパックから馬毛島へ─「積極的平和主義」の欺瞞

◆戦後75年、「終戦の日」戦没者追悼式での安倍首相の式辞には、戦争への「深い反省」はない。さらに、これまで盛り込まれていた「歴史と向き合う」趣旨の文言まで削除してしまった。加えたのが「積極的平和主義」なる文字。この正体がクセモノダ。

◆15日が明けるや否や自衛隊と米軍の合同軍事演習が始まる。「リムパック2020」だ。17日から31日まで、米国ハワイ沖で行われる。世界的なコロナ感染拡大を踏まえ、中止に傾いていたのが、米海軍への安倍政権の強力な働きかけで開催されることとなった。
◆日本からは、海上自衛隊のヘリコプター空母「いせ」とイージス駆逐艦「あしがら」に加え、搭載航空機2機、隊員約550人が参加し、対空戦、対水上戦、対潜戦訓練などを行う。しかしコロナの影響は甚大で、実施期間も3分の1の2週間に短縮され、参加国も10か国を下回り3分の1となる。
 自衛隊員のコロナ感染不安も募る。さらに肝心の米海軍にしても、演習の中心となる航空母艦が参加しない。それでも「積極的平和主義」の実践に、自衛隊を参加させたい狙いが透けて見える。

◆「リムパック」参加だけではない。防衛省は鹿児島県・種子島から西12キロほど離れた東シナ海上の馬毛島に新基地を作ると公表した。米軍空母に艦載する戦闘機の離着陸訓練を行うため、馬毛島に滑走路2本を新設し、かつ自衛隊基地の施設配置案も提示した。
 自衛隊員150〜200人の常駐を前提に、F35B戦闘機や輸送機オスプレイの訓練を想定している。
 8月中にも地元説明会を開く予定で、秋にはアクセス評価の手続きに入り、早期着工を目指す。工期は4年程度を見込み、早ければ6年後には米軍と自衛隊との共同訓練が始まる。
 この米軍空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)とは、地上の滑走路を甲板に見立てて、空母からの離着陸をスムーズに行う訓練である。今から9年前、太平洋の硫黄島で実施している米軍のFCLPを、馬毛島に移す共同文書が交わされたことに始まる。

◆昨年11月、トランプ大統領にせかされたのか、安倍政権は馬毛島の大部分を所有し、かつ島内での違法な開発・森林伐採が指摘されている会社と、急きょ評価額45億円の3倍を超える160億円で買収合意した。
 これまた「森友学園への国有地払い下げ」の逆バージョンばりに、なぜ3倍も高い買収額、すなわち国民の税金を支払ったのか、その算定根拠や経過は闇のまま。

◆国会も開かずダンマリ、安倍政権の無責任体質は底なしだ。コロナだけではない。辺野古新基地の海底にある軟弱基盤へのズサンな対応といい、秋田と山口での「イージス・アショア」の配備撤回、敵基地攻撃能力の保有を検討するなど、説明責任を果たさず、地方自治をないがしろにするのは許されない。
 しかも「積極的平和主義」なるフレーズで、憲法にも関わる国の安全保障政策を決めるなど、思い上がりも甚だしい。(2020/8/16)
posted by JCJ at 08:15 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月15日

終わらない福島第一原発事故 10年目 今この瞬間も放射線との闘いは続く=片山夏子

                  image002 (1)-1.jpg
 東京新聞・片山夏子記者の連載「ふくしま原発作業員日誌」と原発作業員から得た独自の記事は、安倍晋三首相が世界についた大嘘「アンダーコントロール下」の実像を暴き出し、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム大賞」、講談社ノンフィクション賞を受賞した。「福島原発事故を終わったことにはさせない」。8月1日付で、福島特別支局長として赴任する片山さんに寄稿をお願いした。

 何年たっても、忘れられない言葉がある。「私が原発で働いていると知られれば、孫たちが放射能を持ってくると、いじめられるのではないかと思うと怖くて言えなかった」。東京電力福島第一原発事故前から働く56歳の地元作業員にあったのは、8年前だった。 彼には一緒に住む2人の保育園に通う孫がいた。「じいじどこで働いているの」と聞かれ、とっさに「ガソリンスタンドだよ」と答えたという。彼は原発作業員であることを誇りにもてないと話した。その理由を「低賃金で過酷な労働の現状を考えると胸をはることができない。それに原発作業員と言うと下にみられる」と口を引き結んだ。
「線量役者だ」
  事故当時「一日40万円」で募集しているとの報道もあったが、7次や8次の下請け作業員の中には日当が6千円という人もいた。危険手当なんてついたこともないという人も。その上、被ばく線量が国の定めた上限に近づいたり、会社が競争入札で仕事が取れなければ、下位の下請け作業員は解雇された。「今週末まででいいから」「あしたWBC(内部被ばく検査。原発を離れる前に必ず受ける)を受けて」などと突然言い渡された。
  作業員を取材していて繰り返し聞く言葉がある。「俺たちは使い捨てだ」「線量だけの存在だから、千両ならぬ線量役者だよね」。自嘲めいた言葉を聞くたびに、胸が痛んだ。チェルノブイリ原発事故から30年の年に、事故直後、爆発した4号機直下でトンネルを掘る作業をしたリクビダートル(元作業員)にその話をしたことがある。彼は「なぜ誇りに思わないのか。事故を止めたのは彼らだろう」と疑問をぶつけてきた。少しの沈黙の後、言葉は続いた。「人は忘れるもの。それはしょうがない。でもそれでいいのかもしれない」
15`のベスト着て
 事故から9年が過ぎ、事故直後、次々水素爆発をした原子炉建屋内の溶けた核燃料は安定的に冷やされるようになり、敷地全体の空間線量は事故直後から大きく下がった。けれど、今も原子炉建屋内は人が入れないほどの超高線量の場所がある。溶けた核燃量の取り出し準備は進むが、実際にどこまで取り出せるかはまだ見えてこない。
 ロボットで遠隔操作をするにも、ロボットを格納容器近くまで持って行くのは、生身の人間。事前に何枚も放射線を遮蔽する鉛板を運び、15キロものタングステンベストを着てダッシュで運ぶ。初期に鉛板を運んだ作業員は、顔全体を覆う全面マスクを着け、鉛板20キロを担いで「早く終われ、早く終われ」と祈りながら、建屋内の狭い階段を駆け上がった。
 溶けた核燃料の取り出しに近づくにつれ、高線量下の作業が増え、被ばく線量も高くなる。今、東電は作業員の被ばく線量を下げるために一人「年間20_シーベルト」内に抑えるように指導。その上限で高線量下での作業を考えると、働ける期間はかなり短い。
コロナ禍加わる
 放射線や放射能物質に加えて、目に見えない新型コロナが福島第一原発にも影響した。一時期は最前線の防護服まで代替品に変わり質が悪化。「汗でびしょびしょになり、汚染が出ている」(地元作業員)という状態になった。汚染を防ぐためにビニール製の雨がっぱを重ねると、さらに熱中症との闘いが加わった。
 ある地方から来た作業員は事故直後の福島に来る前に「死ぬかもしれない」と思い、故郷で墓参りをし、母校など楽しかった場所を巡った。原発から10キロも離れていない場所に住んでいた地元作業員は「俺たちまだ帰ることあきらめていないから」と笑顔を見せた。彼は今、周辺住民が戻らぬ中、一人で故郷の家に戻り、寂しいからと犬を飼い、防犯のためにバットを枕元において眠る。それでも「故郷はいい」と電話がかかってきた。
まだ見えぬ廃炉
 東京から事故後に駆けつけた作業員は、事故後に生まれた息子と長期間離れ離れの暮らしに。週末に帰って抱き上げた時に「パパいらない」と小さな手で顔を押しやられた。事故後、世間では絆という言葉が流行ったが、福島では離婚が増えた。そして今この瞬間も作業員たちは熱中症や放射線と闘いながら、まだ見えぬ廃炉に向けて作業をしている。十年目の今も安定して仕事をし続けることは難しく、危険手当も下降の一途。労災以外は何の補償もない。作業員の「福島を何とかしたい」という気持ちに頼るだけでは、いずれ人は集まらなくなる。
 福島第一原発の作業員の9年間をまとめた拙箸「ふくしま原発作業員日誌」が16日、講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞した。事故から10年の節目の年なのに、コロナ禍で福島の報道が全然ないと福島の人たちに言われたばかり。そんな時期だけに受賞したことをうれしく思う。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
                2019(1)2号機デブリ取り出しXペネ190213_12.jpg

posted by JCJ at 01:00 | 福島第一原発事故 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月14日

        JCJオンライン講演会「時のヒト・コト」シリーズ  第3回目

             メディアは今、何が問題か
             ――『政治部不信』を語る
          8月23日(日)午後7時から9時 参加費500円
          講師:新聞労連委員長の南彰さん(朝日新聞記者)


検察幹部の定年延長を、時の政権が自由に差配できることが問題となった検察庁法改正案。ツイッターデモで反対の声が広がった。その渦中で産経新聞記者と朝日新聞社員(元記者)が焦点の人、黒川弘務東京高検検事長(当時)と賭けマージャンをしていたことが明るみに出た。
権力との癒着ではないかと批判の声が上がった。取材のあり方を根本から見直す必要があるとして、新聞労連委員長の南彰さんらが発起人となり、「ジャーナリズム信頼回復のための提言」をまとめた。政治取材を含めたメディアへの不信。そこでは何が問われているのか、お話をうかがう。
◆講師紹介
南 彰(みなみ・あきら)1979年生まれ。2002年に朝日新聞社に入社し、08年から東京政治部、大阪社会部で政治取材を担当。18年秋より新聞労連に出向し、中央執行委員長を務める。「日本マスコミ文化情報労組会議(通称MIC)」の議長も兼務。著書に『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』、共著に『権力の「背信」「森友・加計学園問題」スクープの現場』など。(略歴は『政治部不信』から)

【ビデオ会議システムZoomを使っての講演会です。peatixを通じて参加・支払いのお手続きができます。下記をクリックしてください】
         http://ptix.at/FGrU0z

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 東京都千代田区神田三崎町3-10-15 富士ビル501
                       電話03・6272・9781(月水金の午後に対応)
《JCJ会員は無料。onlinejcj20@gmail.com に氏名・連絡先を明記し別途メールで申し込んでください》     
posted by JCJ at 01:00 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月13日

【焦点】 『文春オンライン』月間4億超PV その秘密を編集長が語った=橋詰雅博

 一般社団法人「電子出版制作・流通協議会」(電流協)が実施している「第3回電流協アワード2020年受賞者が語る」が8月7日、オンライン中継された。デジタル展開に積極的だったとして特別賞に選ばれたのが『文春オンライン』だ。初代編集長・竹田直弘さん(47)は「3年前の2017年に始まった最初の月は600万PVでした。いまでは4億PVを超える月もあります。出版社のニュースサイトではナンバー1です。ライバルと目されている『東洋経済オンライン』は2億PVですから、だいぶ引き離している」と胸を張った。
  竹田さんは、3年間で月間PVを飛躍的に伸ばした主な理由を3つ挙げた。
 一つめは自社の媒体を有効活用することだ。
「とかく編集者はウエブ上で新しいことをやる場合、新しい何かをしなければと意識しすぎてしまう。僕も最初はそうでしたが、それをあらため伝統がある『週刊文春』や『月刊文藝春秋』で力のあるいい記事を有効に活用すれば活路が開けると考えました。当初は、それらの記事を宣伝するつもりで『文春オンライン』に載せましたが、オンラインのPVが大きく上がったことで、雑誌の売り上げアップにも貢献できたと思います。今は発売前日の水曜日に『週刊文春』のスクープを含め強力な記事3本を要約して載せています」
 二つめがPVという数字に真剣に向き合うこと。
「いいものをつくれば利益につながるという編集者特有の固定観念を捨てました。目の前のPVの数字をいかにあげるかに集中した。そのためデジタル向けに見出しや記事を変えるなどをしている。変えるに当たっては、担当編集者を尊重しながら社内調整しています」
 三つめは何かを決める重要な会議は全員参加が原則だ。
「編集者もそうでない人も出席します。編集者以外の人が記事に口出すのはOKです。社内でこういうやり方の会議をしているところはなかなかないですよ」
 こうして月間PVを3億とか4億に伸ばし、それに伴い広告量が増大、その結果、大きな利益をあげている。
橋詰雅博
 
posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月12日

【オンライン講演】 黒人暴行死で矢部氏が講演 少数派になる白人に不安 米の暗部 KKK時代から=須貝道雄

          Zoomを使ってのオンライン講演会.jpg    ジャーナリスト・矢部武さん.jpg
 米国ミネソタ州のミネアポリスで5月に起きた白人警察官による黒人暴行死事件。その背景には何があるのか――。JCJは7月4日、米国事情に詳しいジャーナリスト、矢部武さんを講師に「黒人が殺される国アメリカの深層」と題してオンライン講演会を開いた。ビデオ会議システムZoomを使う初めての試みだった。
 標的は大きな体
 8分46秒にわたって警官の膝で首を圧迫され、死んだ黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)は以前から「オレはいつ殺されるかわからない」と友人に漏らしていたという。白人警官から、車を停止させられることがしょっちゅうあったからだ。
 矢部さんによれば、白人警官は体が大きくて強そうな黒人男性を標的にする。国勢調査のデータでは2015年からの5年間、全米で毎年千人から千数百人が警官の暴力で死亡し、うち黒人は約26%を占めた。黒人の人口比は約13%だから、その2倍の数値だ。
 今回の事件では10代の通行人が撮ったとされる衝撃的な動画が世論を喚起した。遺族は「殺意は明白。公開処刑だ」と世に訴えた。だがもし、この映像が無かったら「フロイドさんの死も、単なる数字の一つとして片付けられ、何もわからなかっただろう」と矢部さんは話した。
 警官の行動の背後には白人至上主義がある。トランプ大統領は「白人の国を取り戻してくれ」という声に乗って選挙に勝った。米国勢調査局によれば、白人の人口比は現在60%だが、2045年には49%台にまで減る。いわば少数派に転じるわけで、その不安が白人至上主義への同調につながっているという。
 「奇妙な果実」が
 米国の黒人差別の歴史は400年以上になる。初めてアフリカから奴隷を連れてきたのが1619年。1865年の南北戦争で北軍が勝ち、奴隷制度は廃止になる。だが同時に、奴隷を使っていた白人至上主義者たちが黒人を迫害するKKK(クー・クラックス・クラン)という団体をつくる。白頭巾にたいまつを持って現れ、黒人の家に火をつけ、逃げた者を木につるして殺すなどのリンチが1950年代まで続いた。
 ジャズ歌手のビリー・ホリディ(1915〜1959年)はこうしたリンチに抗議し、「奇妙な果実」の曲名で悲劇の黒人たちを歌った。
 1964年の公民権法で黒人差別は明確に禁止された。だが意識は変わらず、資産格差も大きい。矢部さんが示したのは資産保有額の中央値だ。2013年時点で黒人世帯は1万1200jなのに対し、白人世帯はその13倍の額に達している。
 延期か中止狙う
 こうした中で、今年の大統領選挙はどなるかに話が進んだ。トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大に、あまり心配する様子を見せていない。矢部さんは「彼は混乱が大好きだから。どんどん感染が広がり、死者も2〜3倍になれば、11月選挙どころではなくなる。延期か中止をもくろんでいるのではないか」と推測した。
 米国の友人とも話したという。ただ延期や中止を決める権限は議会にある。もし、トランプ大統領が選挙をせずに、21年もその座にとどまろうとしたら、おそらくペロシ下院議長が暫定大統領となり、ホワイトハウスに軍を送って、大統領は引きずり出されるだろうという議論になったとか。予断を許さない情勢だ。    
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
posted by JCJ at 01:00 | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする