2020年08月11日

イージス・アショア配備撤回 「民意」避け「技術」理由に 防衛相 政治混迷を危惧か=松川敦志

                秋田県庁で謝罪する河野防衛相 (6月21日).jpg
  陸上自衛隊新屋演習場への配備を見直すのは時間の問題だろうと思っていた。だが、イージス・アショアの配備計画自体を断念するというのは、正直言って想定の範囲を超えていた。
  河野太郎防衛相独自の政治的な決断であるのは確かだが、経緯はわかりにくい。
 「行革魂」関係も
 ことし1月に米ハワイのイージス・アショア実験施設を視察した際、河野氏は「なるべく早く整備したい」と述べ、配備に前のめりな姿勢をにじませている。
 一方、5月6日付の読売新聞が「政府が新屋配備を断念する方向で検討に入り、県内を軸に配備候補地を再選定する方針」と報じ、NHKなど各社が追随した際には、自身のツイッターに「フェイクニュース」と投稿。各報道を非難した。
 この投稿に込めた意味が後の撤回表明につながるものだったとすれば、1月のハワイ視察から5月のフェイク発言までの間に、大きな変化が生じたことになる。
 注目しておきたい報道がある。会員制の月間総合情報誌「選択」が6月1日発行の6月号に載せた「難航する陸上イージス計画 河野防衛相が『白紙』を検討」という記事だ。「計画を白紙にした場合の影響を調べ始めた模様だ」という内容で、この段階で同様の報道は皆無。全国紙にも先んじた紛れもない特ダネである。
 この情報を入手した時期について秋田魁新報が編集部に問い合わせたところ、「5月19日の時点で情報を得ていた」との回答が得られた。さらに、5月号に掲載していた「河野防衛相の『行革魂』が再燃」という記事が一連の経緯の伏線だという示唆もあった。コストカッターで鳴らす河野氏が、防衛省内の「無駄削減」に乗り出し、自衛隊内に反発する声があると伝えるものだった。
 知事選も考慮か
 こうした経緯や、われわれの取材を踏まえた私の推論は次のようなものだ。
 昨年9月に防衛相に就任した河野氏は当初、規定方針通り配備を進める考えだった。そして、秋田に関しては新屋演習場への配備を取りやめ、県内の他地区を新たな配備候補地とする方針が防衛省内で固まった。
 しかし、秋田では2021年4月に知事選が予定され、このままいけばイージス・アショア問題が大きな争点となることが明らかだった。そして、その場合は昨年7月の参院選同様、配備反対を訴える候補の優勢が予想され、配備計画が長い混迷に入るというシナリオが十分に考えられた。
 そうした現状分析に、「行革魂」が加わり、計画そのものを撤回するという案が河野氏の中で膨らんでいった。
 経緯はなお不明
 ただ、地元住民の反対を理由に計画を断念すれば、政府にとっては政策遂行の是非を考える際に民意を大きな判断材料にするという「悪しき先例」をつくることになる。そこで持ち出されたのが、上昇推進装置「ブースター」の落下位置を完全には制御できないという、技術的な問題だった――。
 いずれにせよ、イージス・アショア問題は導入の経緯からして不明な点が多い。配備問題を巡る混迷を2年半余り追ってきたわれわれは、これからも息長く取材を続けていく考えでいる。
  松川敦志(秋田魁新報・社会地域報道部長)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
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2020年08月10日

【リアル北朝鮮】 与正氏、男女平等の証? 新興富裕層も女性が多い=文聖姫

  本欄でも再三書いてきたが、金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正党第1副部長の台頭が著しい。正恩氏の妹で故金正日総書記の娘だとはいえ、北朝鮮で女性がこれほど頭角を現すのはかつてなかったことだ。金総書記の妹である金慶喜氏も、党で軽工業部門を担当するなど要職を務めてきたが、表立って活動することはなかった。ましてや、兄に代わって談話を発表したりすることなど皆無だった。
 ところが、金正恩時代になってからは、妻の李雪主氏が「女史」と呼ばれて夫とともに公に活動し、妹は「兄の分身」として活動の幅を広げている。北朝鮮で女性に対する考え方が変化してきている証ではあるまいか。
 1946年7月30日、北朝鮮臨時政府は解放からわずか1年後、男女平等権法を発令した。法的には男女平等が確立したわけだが、儒教精神が根強い朝鮮半島で、男女平等が簡単に浸透するはずもなかった。
 96年に朝鮮新報特派員として平壌に滞在していた際、男女平等権法発令50周年の現状を取材した。その際、ある男性が語っていた言葉がいまでも忘れられない。
 「男女差別というものは、アスファルトに生える雑草のようなものだ」と彼は言った。採ってもとっても生えてくる、そんなに簡単になくなるものではないと。平壌市の区長を務める妻に代わって料理も担当していたが、料理作りの場面を写真に撮ろうとしたら、かたくなに断られた。「男が料理する場面など撮られてたまるか」というわけだ。そんな北朝鮮で、たとえ金ファミリーの一員とはいえ、女性が活躍するのは悪くないと思う。
 ネットフリックスで配信中の韓国ドラマ「愛の不時着」には、北朝鮮で財を成した女性実業家が登場する。彼女は夫を亡くした後、自らの力でデパートを経営するまでになった。もちろん、これはフィクションだが、私が取材した限りでも、「金主」と言われる新興富裕層には女性が多かった。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
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2020年08月09日

【今週の風考計】8.9─見上げてごらん、コロナ禍の夏の夜の天空を。

この5日、明るい星のように光る球体が、19時45分ごろ西の低空から浮かびあがり、3分後の49分には南西45度の天空で最高点に達し、19時51分ごろ南の低空へ移動し消えた。わずか6分のドラマを、東京郊外の自宅の2階ベランダから、孫と一緒に見つめた。
 地上から約400kmの上空に建設された実験施設・国際宇宙ステーション(ISS)が、地球を周回する光跡である。ISSはサッカー場くらいの大きさを持ち、約90分で地球を一周している。残念ながら我がカメラでは、その光る球体を撮ることができなかった。

天空に関心が及ぶこの1週間、6日の広島・9日の長崎に投下された原爆を思い、「キノコ雲」と「黒い雨」の怖ろしさを噛みしめる。
 75年前の8月6日午前8時15分、米軍が広島市にウラン235原子爆弾を投下。上空 580mで爆発、市街3分の2を破壊し56万人が被爆、年末までに14万人が死亡した。
 そして3日後の8月9日午前11時2分、米軍は長崎市にプルトニウム239原子爆弾を投下。上空 500mで爆発、市域は半分が破壊され、年末までに7万人が死亡した。
 唯一の戦争被爆国である日本政府は、核兵器禁止条約の批准すらしない。核保有国では核軍拡が進む中、「橋渡し」などの詭弁で逃げるとは何事か。

35年前の8月12日午後6時56分、日本航空123便が御巣鷹山に墜落、乗客乗員520人が死亡、生存者4人。事故は、ボーイング社による後部圧力隔壁の修理が不完全なため損壊し、操縦ができなくなり墜落したといわれる。だが今もなお事故原因や墜落への疑問・謎は尽きない。
 今年の8月12日は深夜から13日の未明にかけて、北東の空にペルセウス座流星群が放射状に流れ星を光らせる。哀悼の光だろう。
また16年前の8月13日、宜野湾市の沖縄国際大学構内に、米軍普天間飛行場に所属するCH53D大型輸送ヘリが墜落・炎上した。飛散したヘリの破片は多くの民家や車両などに被害を与えたが、死者が出なかったのは奇跡というほかない。
 いまだに米軍ヘリや戦闘機の不時着・炎上・部品落下などの事故が、後を絶たない。重大な問題は、事故現場が日本の民間地にもかかわらず、日本の捜査権が及ばない、まさに「治外法権」がのさばっている実態にある。

コロナ禍の暑い夏、天空を見上げながら、「キノコ雲」や山のかなたに消えた機影、そして落ちてくる米軍機や部品に思いを広げる。そうだ! これらは自然災害じゃない、まさに人災だ! その現実のむごさに、鳥肌が立つ。(2020/8/9)
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2020年08月08日

住民置きざりのスーパーシティ構想 管理される個人情報 ビックデータ使用に不安=橋詰雅博 

 街中を自動運転の乗り物が走り、遠隔による医療・教育が受けられ、スマホ決済で現金不要、ドローンが配送、行政手続きがスマホで済ませられる――AIや個人情報などが入るビックデータ、情報通信技術などを活用した「スーパーシティ」(海外ではスマートシティと呼ばれる)というふれ込みのこんな都市が、規制を大幅に緩和し、新ルールのもとで計画が進められる国家戦略特区にできるという。
竹中平蔵が旗振り
 このスーパーシティ構想の旗振り役は竹中平蔵・東洋大教授だ。竹中教授は「(スーパーシティ法案)が早く成立していれば、コロナ危機への対応が違っていただろう」とツイッターに投稿している。ただ、具体的な対応は何も示していない。
 そんなスーパーシティをPRしようと政官民は一体で6月末にオンライン特別セミナーを開いた。国会議員、官僚、首長、学者、1T企業幹部らが講演を行いパネラーとして話した。
 とくに注目されたのは構想を推進する内閣府地方創生推進事務局の村上敬亮審議官の基調講演だ。
「『スーパーシティ』構想の最新動向と今後の展望」をテーマに30分ほど話し、こう要望した。
 「中国のアリババ系列会社が行政と連携する杭州市では、交通違反や渋滞対策にAIを活用し、無人コンビニで顔認証でのキャッシュレス支払いを実施している。ものすごい勢いで技術を使いこんで熟度をあげて、それを広げている。日本にも必要な技術はほぼそろっているが、街で住民を相手に複合サービスを実施した実績がない。関わる事業者が利益を得られるビジネスモデルを構築するためにも早く実践する場が欲しい」
 しかし、スーパーシティには大きな問題がある。国や自治体に集積された個人情報が特区で情報を一元管理する民間業者のビックデータに集められ、不正に使用されて住民のプライバーを侵害する恐れがあるのだ。個人情報の管理の仕方や特区住民とどういう風に同意するのかなどがあいまいなままだから不安は消えない。
グーグル撤退した
 その不安が的中したかのようなケースが特別セミナーで明らかにされた。各国が展開中のスマートシティのネットワーク化を進める世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長の須賀千鶴氏が挙げたのは、カナダのトロント市のスマートシティ計画の失敗だ。須賀氏はこう言った。
 「グーグルの子会社は、街中にデータ収集のため多くのセンサー(監視カメラ)を設置するなどを提案した。しかし、プライバー侵害発生時の対応計画やデータ保管に関する明確なコミットメントの必要性について、住民への説明が十分ではなかった。このため住民の同意が得られなかった。また、コロナ禍の影響で都市への人の流入が減少し、利益が見込めないとグーグルは判断。5月に撤退した」
 だが、安倍首相はトロントの計画失敗を無視し、「ピンチをチャンスに変える思い切った改革の代表がスーパーシティだ」と内閣府にハッパをかけた。
 政府は年内に5自治体を選定する予定だったが、コロナ禍で自治体の計画が進まないため選定を来年3月ごろにする見込み。ともあれ、自治体とIT企業が手を組むスーパーシティは、住民を置き去りにして計画が強行されそうだ。しかし、プライバシー侵害の不安が残るという市民の声が高まれば、計画を中止に追い込むことは可能だ。トロントの例があるじゃないか。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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2020年08月07日

【‘20緑陰図書─私のおすすめ】 いま取材過程の実際を開示する大切さ=澤 康臣(専修大学教授)

澤康臣.jpg 捜査・司法当局幹部たちとの間に記者が築いた人脈、深夜早朝の訪問や電話、グラス片手の会話、リークされる情報─賭け麻雀問題で論じられた取材手法のことではない。ニクソン米大統領を辞任に追い込んだ調査報道、ウォーターゲート事件取材でワシントン・ポストの記者たちが取り組んだことだ。
 ボブ・ウッドワード&カール・バーンスタイン『[新版]大統領の陰謀』(ハヤカワノンフィクション文庫)は、取材過程を詳細に書き、今も版を重ねる。
 権力の不正に迫る彼らは、悪を一喝するヒーローとは異なり、情報が集まる当の権力の圏内に無作法な侵入をする。本書には「ここまで手の内を書くのか」の思いを禁じ得ない。だがここまで公開するからジャーナリズムが信頼される。
 今、いくつもの米メディアが倫理規定を公表する。ニューヨーク・タイムズの規定は取材源との私的しつらえでの人間関係づくりを肯定しつつ、その危険にも釘を刺し、規定全文もネット公開している。
 取材過程の秘密が神秘性めいて尊重された時代は終わっている。オープンに語ってこそ市民の支持を得る、という40年前の米報道界の実践を本書は示している。

 日本の取材現場の息づかいと息苦しさを感じさせるのは、神奈川新聞取材班『やまゆり園事件』(幻冬舎)だ。重度障害者19人を殺した植松聖の実像に、37回の接見で迫る。犠牲になった人たちの姿と家族の思い、障害者の権利を求める闘い、障害ある家族と今を生きる人々の肉声、植松の命もまた奪おうとしている死刑制度、いささか目まぐるしいほどに多くの焦点を提供する。
 「ジャーナリズムは歴史の第一稿」(ワシントン・ポスト元社主フィリップ・グレアム)のはずなのに、名前が語られない「19人」。取材で名前を把握しながら書けない、書かないでいる矛盾に、痛苦の表情で向きあう報道人の姿もまた、静かに浮かびあがる。
「大統領の陰謀」.jpg
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2020年08月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 朝鮮戦争70年 日本人の「参戦」=徳山喜雄

 朝鮮戦争が70年前の1950年6月25日に勃発した。日本は連合国軍総司令部(GHQ)の占領下で、戦後の混乱を抜け切れていなかったが、朝鮮特需で活況に湧くこととなった。
 一方、GHQの要請で多くの日本人が戦争に動員された。旧日本海軍の掃海部隊1200人は朝鮮海域で活動し、日本の民間船が兵隊や武器弾薬を輸送した。しかし、平和憲法ができてまもない日本の「戦争協力」は長く秘匿されることになり、このことはあまり知られていない。
 この夏、いくつかの新聞が埋もれた事実を掘り起こした。たとえば、毎日新聞(6月22日朝刊)は米国立公文書館所蔵の米軍作成の極秘文書を入手し、少なくとも日本の民間人男性60人を米軍が帯同し、うち18人が戦闘に加わっていたことを突き止めた。なかでも20歳未満の少年が18人おり、うち4人が戦闘に参加していた。
 文書には帯同した60人の尋問記録もあり、広島出身の少年(当時13歳)は「原爆で両親を亡くした」と証言。殺害を証言した12歳の少年も「両親は戦争で死んだ」と明かしている。さらに尋問記録のよると、米軍が「渡航したことは口外しない」と言わせ、署名させていたという。
 朝日新聞(6月24日夕刊)は朝鮮戦争で戦死した日本人の遺族にインタビューし、その経緯を明らかにした。東京都町田市の集合住宅で平塚照正さん(84)は、70年前に戦死したとされる兄、重治さん(当時29歳)の思い出を語った。
 太平洋戦争の激戦地ニューギニア戦線で生き残った兄は戦後、知人からの誘いで米軍基地で働きはじめ、朝鮮戦争の戦場に身を置くこととなった。戦争勃発後しばらくして家族のもとに死亡の知らせが届いた。
 家族の問い合わせに対し、GHQから「ネオ平塚は国連軍兵士に変装し、日本や占領軍の正式な許可がないまま朝鮮半島に密航した」「50年9月4日ごろ、韓国での軍事作戦中に死亡した人物が、平塚だと数人の米兵によって明らかになった」との回答があったという。
 ここで留意したいのは、憲法9条の解釈改憲によって集団的自衛権が認められた現在の日本において、朝鮮戦争への「参戦」は決して過去のもでないということだ。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号


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2020年08月05日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 トランプ 郵政投票に反発 仰天の「居座り論」も登場

        バイデン.jpg トランプ.jpg
 トランプ大統領はブラッド・バスケール選対本部長を降格させ、副本部長のビル・スピール氏を新たな本部長とする人事を発表した(7/15)。6月20日にオクラホマ州タルサで開かれたトランプ支持集会が、前評判で数10 万人から100万人近く支持者が集まるかと予想されたが、フタを開けるとわずか6,800人。その責任者がバスケール氏だった。支持率低下に何とか歯止めかけたい、という思いからの人事ではないかとみられる。
 ちなみにタルサ市では6月下旬以降、コロナ感染者が急増している。市衛生当局は、「トランプ関連政治集会が要因となった可能性が高い」と指摘した。集会参加者のほとんどがマスクをしていなかった。
 汚染拡大と人種差別で孤立
 最近の調世論調査によると、トランプ氏の支持率は44%、それに対して民主党大統領候補の支持率は54%と10%のリードを許している(6/16~22、ピュー・リサーチ・センター)。同じ調査によるとトランプ大統領の仕事ぶり評価も支持が下がり、39%が支持、59%が不支持を表明した。また米国が目指している方向に満足していると答えたのはわずか12%、87%が不満だと回答した(ブルームバーグ7/1)。
 アメリカ経済はコロナの影響をこうむりながらも、ダウ平均は26,500ドル~26,600ドル台を維持している。しかしコロナ感染が拡大したことから、4月に失業者2000万人を超えて、失業率が14%台に跳ね上がった。市民の間でトランプのコロナ対策が著しい批判も出ている。最近までマスク不要論を唱え、注射すれば菌を封じ込められなどのとんでもない発言もあった。
 支持率急落の直接の原因は今年5月25日、警官隊による黒人男性、ジョージ・フロイドさんの暴行、殺害事件だ。この経緯を物語る2分53秒の映像は、「息ができない、助けてくれ」という音声とともに全米に広がり、かつてない規模の人種差別デモが、各地に広がり、繰り返されている。
 抗議デモに対し、トランプ大統領は強硬姿勢でのぞみ、軍隊派遣もありうると発言した(6/1)。抗議デモを暴動であるかのように鎮圧するという姿勢に、共和党重鎮のパウエル元国務長官(共和党)までもが不支持を表明するなど、コロナウイルス感染拡大が重なりこれまで、岩盤といわれてきたトランプ支持者からも造反者が相次ぐ事態となった。ブッシュ元大統領、ロムニー上院議員らも再選を支持しないと見られるに至った。 軍動員示唆、デモを暴徒だと敵視する発言を「有害」だとする人は65%にのぼっている(CNN6/8)。
各州で郵便投票導入へ
 一方11月の米大統領選に向けて、郵便投票制度を導入する動きが、各州に広がっていることが特徴的だ。コロナ感染予防のため、投票所に足を運ばないで済むようにする思いから始まった。大量の軍隊を海外に派遣している米国ではかねてから、郵便による不在者投票を認めている州が多かったが、今回は不在投票ではなく、本投票として本人の意志によって、投票所に行くか、郵送による投票にするか、選択できる。郵便投票を実施しなかった自治体に対して「投票の権利を侵害する」という裁判がおこされこともあり、6月2日に実施された大統領選予備選ではメリーランド州など7州や首都ワシントンで、郵便投票が実施され、郵便投票の利便性、投票率の上昇などが実証された。
 トランプ大統領はカリフォルニア州などでの郵便投票導入に対して反発を強めている。「大規模な不正行為につながる」と繰り返してツイッターを発信している。また、ウイリアム・バー司法長官は、「外国勢力が大量に偽造票を送り込んでくる可能性もある」と発言した(6/22)。バー長官の発言は中国を念頭に置いているとみられる。
 郵便投票は低所得者、黒人、中南米系などマイノリティーの有権者の多い民主党に有利に働くといわれ、トランプはそれを警戒しているものとみられる。しかし投票所から離れたところに住んでいる人、高齢者などへの利便性は党派を問わない。
バイデン資金力で上回る
 民主党ジョー・バイデン前大統領が世論調査で10%上回っているが、それでも、トランプが勝つという予想をする人が多くいる。
 理由の一つはトランプの資金力だ。一時期バイデンを選挙資金で2億ドル上回っていたトランプ陣営は、1,000万ドルをテレビなどにつぎ込んで「バイデンは中国に甘いがトランプは厳しい」というイメージを全国に植え付けようとしている。そして、トランプは、自らをウイルスと戦う「戦時下の大統領」だと呼号している。
 コロナ汚染が拡大を続けていても、トランプは「悪いのは中国だ」という責任逃れに期待をかけている。
バイデン陣営は6月に入り、選挙への献金を1億4,100万ドル集め、トランプ陣営の1億3,100万ドルをわずかにではあるが上回ることに成功した(7/3日経)。経済施策ではこれまで、右寄り、財界寄りと見られたが、急進派バーニーサンダー・サンダースの主張も受け入れ、学生ローンのサム帳消し、授業無償化、メディケア(医療保険制度)の改善、銀行や大企業の規制強化など、経済の革新を打ち出した。
マイノリティー中心で選考
 さらに、民主党は大統領候補の年齢が高い(77歳)とあって、副大統領候補選びにも慎重だ。女性、黒人、中南米、アジア系などマイノリティーを中心に選考が進んでいる。誰が選ばれても話題に事欠かない顔ぶれである。
 スーザン・ライス氏、(外交専門家、黒人、55歳)、カマラ・ハリス氏(ジャマイカとインドからの移民の子、元検事、55歳)、タミー・ダックワース氏(イラク戦争で両足を失った元軍人、上院議員、52歳)、ミシェル・ルパングリシャム氏(ニューメキシコ州知事、中南米系60歳)、エリザベス・ウォーレン氏(上院議員、進歩派71歳)、ランス・ボトムス(アトランタ市長、黒人、50歳)。
辞めないシナリオとは
 7月に入って敗色を濃くしたトランプ氏だが、11月で負けても任期は2021年1月まである。7月19日のフォックスニュースで、選挙に敗れたらどうするか、と問われ、「不正が行われればやめない」と発言した。反トランプを掲げる非営利団体「スタンド・アップ」は、「負けても辞めない可能性に備えて、今から準備しよう」と訴えている。トランプは「負けても居座る」戦術を持っているのではないかとの憶測が急に広がっている。 
 7月28日号の日本版ニューズウィークは次のようなシナリオを描いた。「激戦州の一部で中国が郵便投票に介入し不正があった、これは国家安全保障上の非常事態だ、として司法省が不正を調査する間、あるいは裁判に持ち込まれる間、選挙結果を確定することができない。長期にわたり現職が居座る、あわよくば選挙結果を、現職有利に書き換える可能性もある」というのだ。
まさか、そのようなことが起きるはずもない。が、トランプならやりかねない。
 民主主義にもとることがないよう、トランプの言動を見守る必要がある。
 隅井孝雄 (ジャーナリスト)
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2020年08月04日

【スポーツ】 運動不足列島≠フ恐れ=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染再拡大が全国的に進む中で、当初の東京五輪開幕に併せて新設された祭日を加えた4連休を前に、混乱した政府の観光旅行キャンペーンが強行された。
 休校が続いた学校は、極端に短縮された夏休みに入ったところもある。しかし、観光地でも感染不安は消えず、経済・社会活動の復活ばかりを求める行政に批判が高まっている。
 梅雨明けの盛夏は、自然の中で思い切り体を動かし、暑さを吹き飛ばす爽快感を満喫する太陽の季節だが、観光キャンペーンから除外された東京では、再び不健康な巣ごもりを強いられた。
 しかも、海外旅行は特別の理由がなければ禁止されたまま。国内の海水浴場の多くは開設されず、プールも制限付き。山小屋が閉鎖されているので、登山やハイキングも、ままならない。
 プロ野球やJリーグ、大相撲は観客制限解除が見通せず、拍手応援にとどまり、暑気払いの大騒ぎはできない。
 東京の感染再拡大で国立トレーニングセンターでの東京五輪代表の合宿練習を中止する競技が相次ぎ、プロ競技を中心にスポーツが再開されたものの、縮小制限に逆戻りしそうな状況が強まっている。
 政府や東京都の感染対策放置が続き、東京五輪の1年延期開催を危ぶむ深刻な声が広がった。我慢強い国民とはいえ、長引く梅雨のうっとうしさに加え、豪雨災害の危険も消えず、熱中症が気がかりな猛暑の中で、欲求不満が募っている。
 しかし、医療関係者の警告を無視して、新たな対策に動かず、自衛を訴えるだけの政府や自治体に振り回され、判断の迷いが広がり、日常生活の安定化は、さらに遠のいた。
 感染の地域差が目立ち、拡大する一方の都市部と新たな感染がない地域の対立感情すら生んでいる。
 生活にスポーツが欠かせないことが実感されてはいるが、その環境条件は狭小化するばかりで、気軽に取り組めず、運動不足列島となりそうな夏季休暇入りである。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年08月03日

【焦点】 東京五輪選手村訴訟 次回弁論8月18日に決まる 原告不動産鑑定士の月刊文春記事を証拠として提出へ=橋詰雅博

 東京五輪選手村用地を激安で払い下げた小池百合子都知事らに損害賠償を都が求めるべきだとする民事裁判(日本ジャーナリスト会議機関紙2017年10月25日号に既報)の第9回口頭弁論は、コロナ禍のため延び延びになっていたが、日時がやっと決まった。8月18日(火)午後2時から東京地裁103号法廷で行われる。大法廷で開きたいとしていた原告弁護団の要望を裁判所が受けいれた。103号は傍聴席数が100近くあるが、今回、三密を避けるため傍聴席は36に限定された。
 前回の1月17日の裁判以来7カ月ぶりになる8月の法廷では、原告側が先に提出した岩見良太郎・埼玉大学名誉教授らの意見書をもとに被告(東京都)に対して全面的に反論する。岩見名誉教授は、地権者は都だけの更地であるのに、極めて異常な個人施行の第一種市街地再開発事業を都があえて実施したのは、不当な都有地処分を隠蔽するためだったと述べている。
 ところで原告都民33人の中に不動産鑑定士の桝本行男(72)さんがいる。桝本さんはこの疑惑の土地の評価額を鑑定した。それは昨年の10月26日の第4回口頭弁論で公開された。街区は5つに分かれ、各区によって1平方b当たり100万から134万円で、総額は1611億1800万円と弁護士が陳述した。そして弁護士は「92%も減額し、都民の財産が1470億円失う」と指摘し、都は激安の根拠を示すべきだと訴えた。都が算出の根拠とした日本不動産研究所の調査報告書(鑑定評価書ではない)の多くが黒塗りだからだ。
 その桝本さんを昨年の月刊文藝春秋12月号でノンフィクション作家・清武英利さんが取り上げている。清武さんが連載中の「後列のひと」第11回目に登場した。タイトルは「土地のことは土地に聴け」。記事によれば、この言葉は不動産鑑定の父≠ニ呼ばれる日本不動産鑑定協会の櫛田光男・初代会長が残したものだという。桝本さんはこれを<地道に現場を歩け>と解釈し、仕事を続けている。「晴海選手村土地投げ売りを正す会」ニュース最新号によると、原告弁護団は、見開き4ページのこの記事を証拠として裁判所に提出することを考えている。
 被告弁護団は、桝本さんは原告であり、中立性を欠く鑑定と批判したが、桝本さんの誠実な人柄と公正な仕事ぶりがうかがえるこの記事は証拠になり得ると思った。
橋詰雅博
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2020年08月02日

【今週の風考計】8.2─米国が求める<ジャガイモ協定>は拒否せよ!

コロナ禍の中、家での飲食が多くなった昨今、ご飯のおかずは肉ジャガ、酒のつまみにポテサラ、TVを見ながらポテチと、ジャガイモをお供にすることが増えた。それにしても長梅雨・日照不足により野菜が高騰、ジャガイモ1個で100円とは恐れ入る。
 そんなところに「生食用バレイショ 米国が輸入解禁要求」という見出しに目がいった。「赤旗」(8/1付)の4面最下段である。紙智子参院議員と農水省とのやり取りを読んで、にわかに興味を覚え、少し調べてみた。

まずは「生食用バレイショ」が気になる。「バレイショ」は「馬鈴薯」だと気づく。ジャガイモの形が馬につける鈴に似ていることから名づけられたという。だが「生食用」が分からない。
 ジャガイモには生食用と加工用があるのだ。料理や自家製コロッケに使うジャガイモが生食用で「男爵」や「メークイン」、筆者の好きな「インカのめざめ」などがある。加工用ジャガイモは主にポテトチップスに使い、「トヨシロ」や「スノーデン」などの種類があるそうだ。
これら日本のジャガイモ総生産量は240万トン、消費量は1人1年あたり25s、世界平均で32.4s、ベラルーシは171.2kgだから意外に少ない。

ジャガイモは連作ができない。生育が悪くなるうえに病害や寄生虫が発生しやすくなる。とくにジャガイモシロシストセンチュウにかかると、広く伝染し深刻な被害に遭う。このセンチュウは地中で増殖し、10年以上も生存し続け根絶が難しい。
そのため日本では、植物防疫法の指定種苗とされ、検疫を受けていないジャガイモの直接持ち込みは禁止とし、1950年以降、ジャガイモがかかるシロシストセンチュウが米国で発生していることを理由に、米国産の生食用ジャガイモの輸入を禁止してきた。この間にも米国産ジャガイモの輸入をめぐる攻防は続き、押し込まれる事態が進んできた。
ついに2017年9月、安倍政権は米国トランプ大統領の圧力に負け、アイダホ州産の加工用ジャガイモの輸入を、シロシストセンチュウ侵入リスクの低下を理由に解禁した。

さらに米国はこの3月末、生食用のジャガイモまで輸入解禁を求める要請を日本政府にしてきたのだ。もし輸入を認めれば、ジャガイモの国内生産への影響やシロシストセンチュウの流入リスクなど、計り知れない被害が出るのは明らかだ。
 ジャガイモ生産者だけでなく消費者・国民に知らせず、トランプ大統領の再選目当ての支持者向け<ジャガイモ協定>に屈服するのは断じて許されない。(2020/8/2)
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2020年08月01日

【フォトアングル】 オスプレイの木更津駐屯地配備に反対の声あげる=酒井憲太郎

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「日本のどこにもオスプレイはいらない!」の大きな横幕が左右に2枚並んだJR津田沼駅北口。マイクを手に訴えるのは「幕張メッセでの武器見本市に反対する会」と「安保関連法に反対するママの会@ちば」と「どこの空にもオスプレイはいらない@フナバシ」と支援の皆さん。行き交う人々に手作りの看板「武器見本市もオスプレイもいらない」をかざして、オスプレイの木更津駐屯地配備に反対の強い意思表示をした。=4日、千葉・習志野市津田沼、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号

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