2020年09月30日

【隅井孝雄メディアウオッチ】 NHK、ネット事業制限撤廃 一方ではラジオ第二とBS1廃止の矛盾

 NHKはこれまでインターネット業務の予算枠を全体の2.5%に抑えてきたが、9月15日、その制限枠を来年度から撤廃する考えを明らかにした。
好調の波にのる
 4月に開始したネットサービス、「NHKプラス」がたまたまコロナによる「外出自粛」と合致し、好調の波にのった。”この際一気にネット拡大に向かいたい”という思惑が見て取れる。ネット業務の拡大について、NHKは建前として「抑制的な管理に努める」としている。
 かねてからNHKのネット進出を警戒する民放連は「NHKは放送とネットを横並びに位置付けている」との懸念を表明、逆に現行受信料の引き下げ(地上波月額2230円)を求めた。
 NHKのネット業務費は2020年度予算で170億円(受信料の2.4%)。別枠の東京五輪関連のネット費19億円を含めると189億円(受信料の2.7%)となる。
 「NHKプラス」主体のネット業務は2021年には197億円に、22年は194億円になる見通しも発表された。それぞれ受信料の2.94%、2.90%を占める。
事業規模縮小か
 合点がいかないのは、NHKが今年8月4日に発表した3ヵ年計画で事業規模を現状の7200億円から、6000億円台に縮小する方針との整合性だ。番組やチャンネルを縮小する一方ネットビジネスを拡大するということとの間の矛盾は大きい。
 NHKネット業務の主力はなんといっても「NHKプラス」だ。同時配信ももちろんだが、見逃し視聴、追いかけ視聴、地方番組サービスもあり、視聴者にとっては便利な存在に違いない。しかし受信料を支払っている視聴者であれば無料で利用できる。NHKがインターネットをビジネスとして活用することは放送法上できない相談だ。
 にもかかわらずネット利用に執心するのには何か別の魂胆があるのではないかとの疑いをすら持つ事態だ。
 高市早苗総務大臣(当時)がネット事業の上限撤廃に見直しを求めた(9/16)。NHKは上限撤廃されれば、地方局制作番組のネット配信期間を7日間から14日間に延長する、在外邦人向けの「NHKワールドジャパン」のネット同時配信を始めるといっている。
都市放送の歴史持つ
 一方3ヵ年計画でNHKが打ち出した、ラジオ第二とBS1の視聴者に断りもなく一方的廃止には私は断固として反対する。
 ラジオ第二放送は今では教育教養、それも語学講座が主体だが、1931年以来半世紀の歴史を持つ。東京、大阪、名古屋に聴取者が留まったことから局名を1939年に「都市放送」と改称した。そして都市知識層向けの、教養、講座、文芸、音楽番組に力を入れた。
 太平洋戦争中「都市放送」は休止されたが、終戦直後再開、学校放送、プロ野球中継、大相撲、音楽放送など、柔軟編成で親しまれた。また「農村」向け、「漁村」向け番組なども開発した。
世界を身近に感じる
 BS1も貴重な歴史を持つ。開始は1984年5月12日。日本初となる人工衛星を利用して受信可能なテレビ放送を開始したのがBS1、衛星放送のパイオニアだった。
 その後、デジタル化の曲折を経て、現在はスポーツ、ドキュメンタリー・情報番組・海外報道に特化して放送している。世界に触れようとする場合、BS1が最も豊富な海外ニュース報道を提供しているので、欠かせない貴重な存在だ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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2020年09月29日

【支部リポート】 神奈川 コロナ禍 様々な体験談 優生思想への危惧も議論に=保坂義久

 神奈川支部では1年に4回を目安に例会を開いてきた。今年は2月1日に川崎市のヘイトスピーチ禁止条例をテーマに例会を開いたが、その後にコロナウィルス感染が拡大し、4月に予定していた例会は中止。講演予定者には、相模原の障がい者施設大量殺傷事件裁判について、支部の機関紙に執筆してもらった。
 その後、休館となっていた公共施設が6月以降に再開、手頃な会場が予約できたので、7月11日に支部総会を開いた。今年は支部総会の後に行う外部から講師を招く集会ではなく、会員同士が自由に語り合うフリートークの会を行った。
 部屋は定員57人の半分までの利用とされ、消毒剤も用意されていた。参加者は9人で十分に社会的距離がとれた。
 総会では、地域マスメディアの記者との交流とともに、「例会などを通して、メディアの現状をありのままに市民に伝え、市民と共にジャーナリズムを鍛える」とするJCJの役割の明示を含む運動方針を採択した。
 続いてフリートーク。2時間ほど話し合ったが、中にはコロナ禍での身近な出来事などの発言もあった。社会福祉の現場で働く会員からは「ソーシャルディスタンスと言われても、それでは介助できない」という。集団で福島を訪問した会員は、ある村営食堂で昼食をとろうとしたおりに「東京に近い横浜から来た人はご遠慮ください」と断られた経験を語った。
 当支部と協力関係にある機関紙協会神奈川県本部で活動する会員は、参加団体からの情報として医療生協で病院収入の減少、自粛による市井の建築業への影響を報告。コロナの広がりを感じさせられた。
 神奈川の大きな問題であるヘイトデモや、運動シーンにおける女性の活躍、ツイッターデモなどにみられる政治への関心の高まりなど様々な事柄が話題になった。
 テレビ局出身の会員が今のテレビの現状を批判、東京高検検事長と新聞記者の賭けマージャン問題については、元検察担当の記者が解説した。
 相模原の事件に関連し新たな「優生思想」への危惧や、被害者の匿名報道の是非などが語られた。コロナウィルスの流行は社会にどういう影響を与えるか、など様々な話にも及んで、とても豊かな議論の機会となった。
保坂義久
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月28日

【おすすめ本】 木内みどり『またね。 木内みどりの「発熱中!」 』─あっという間に逝った著者のステキな文章に「さよなら」=鈴木耕 

 表紙を見ただけで胸がつまり、普通の書評のように平静な気分では書けません。これは昨年急逝した木内みどりさんの「遺稿集」のような本。 私は木内さんとはほんの少しの友人でした。だから書評が「さよなら」の 文章になってしまうのは悲しすぎるのです。
 私たちが運営しているウェブサイト「マガジン9」は今年、創刊15年になる小さなネット週刊誌です。その「マガ9」連 載の木内さんのコラムを編集したのが本書です。帯に「世の中を本気で変えようとした女優がつづったひとりの人間としての『生』の記録」とある 通り、まさに木内さんの本気が溢れています。
 反原発集会で司会を務め、改憲反対のデモを歩き、自分がいいと思った候補者の選挙運動に参加する。なぜその人を推薦するのかを、じっくりと勉強した上で、コラムに書く。
 芸能界では政治に関わったら損だよ、などと言われても、そんなことを言う人とは疎遠になってもかまわないわ、フフフ…と笑顔を浮かべて先頭に立ち続けたのです。
 私は、そんな木内さんが大好きでした。だから「マガ9」への連載をお願いしたのです。「私は 中卒だし、知識なんかまったくないのだけど、それでいいのかしら」。い いんですよ、もちろん。 だってこんなステキな文章を書ける人、そんじょそこらにはいませんよ。
 ここに収められた文章は多岐にわたります。原発、政治、憲法、環境、そして旅や親しい人たち。自由奔放にして優しさに満ちた文章。文は人を表します。その通りの生き方をした木内さんでし た。あっという間に去っていった大切な友人に、私が書けるのは、やっぱり「さよなら」と淋しさ だけでした。(岩波書店1800円)
                    木内.jpg
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2020年09月27日

【今週の風考計】9.27─今こそ必要なコロナに立ち向かう世界の連帯

◆新型コロナウイルスの感染者が、中国・武漢で最初に見つかってから9カ月が経過した。武漢で何が起きていたのか。1月20日に都市封鎖令が出されて以降の状況を伝えるドキュメントが刊行された。
◆方方『武漢日記─封鎖下60日の魂の記録』(河出書房新社)である。一気に読んだ。
 武漢に住む65歳の高名な女性作家が、自身のブログで武漢の実情を、当局の手で削除されたり、中国の極左分子「ネトサヨ」から攻撃されたり、様々な圧力や妨害にもめげず、日記の形で綴った感動にあふれる書だ。
 ⾝近な⼈が次々と死んでいく悲惨な状況、医療現場の疲弊と焦燥、とりわけ殉職医師・李文亮への思い、事実を隠ぺいした当局者への怒り、メディアの怠慢など、著者の目線の厳しさが、ひしひしと伝わってくる。
 武漢だけで感染者5万人、死者3800人という深刻な結果となったが、それに立ち向かった庶民の苦労や悲哀へ注ぐ目線は極めて温かい。

◆いま武漢はコロナ感染が収束し、10月1日から8日までの「国慶節」の連休には、武漢の名所「黄鶴楼」への旅行が人気トップだという。中国内を6億人も移動するが、コロナ感染拡大の懸念はないのか。いま中国全体で感染者9万人・死者4700人に上るというのに。
◆さらに深刻なのは世界全体で感染者3257万人、死者98万人を超えたことだ。感染者が最も多いのは、先進国ナンバーワンの米国で703万人、2位インド590万人、3位ブラジル468万人となる。上位3カ国に世界の感染者の54%が集中する。
 しかも米国は死者が20万人を超え、今もなお1日に新規感染者が5万人もふえ、かつ1日に960人近くが死亡するという、世界各国の中でも最悪の事態が続いている。

◆だがトランプ大統領は、国連総会の演説で「武漢肺炎によるパンデミックを引き起こした原因は中国にあり、責任を取らせねばならない」と激しい言葉で各国に同調を促した。
 その背景には、トランプ大統領が11月の選挙で再選を狙うため、感染防止対策を軽視した責任を中国に転嫁し、自らの「コロナの影響は大きくない、8月にも沈静化する」との発言を取り繕うためといわれている。
◆75周年となる国連のグテーレス事務総長は「コロナの感染拡大は医療危機、経済不況と大量失業、さらに人権侵害という脅威を同時にもたらしている」と述べ、危機打開に向け各国に結束と連帯の必要性を訴えた。
 自国第一主義による他国非難や経済制裁をやめるよう促し、さらにはコロナ・ワクチンの自国向け独占取引・ウラ取引など、いわゆるワクチン国家主義へ警鐘を鳴らした。

◆いま欧州ではコロナ感染がフランスやスペインで1日に3万人の規模で増え、集会や外出の禁止など、再規制に躍起となっている。
 ところが菅政権は「Go Toキャンペーン」を拡大し、さらに全世界から外国人の入国受け入れを決めた。当面は3カ月以上滞在する医療従事者、スポーツ選手、留学生などに限るとはいえ、解禁で感染拡大の危険が強まるのは火を見るより明らかだ。止めたほうがいい。(2020/9/27)
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2020年09月26日

【事件】 道警ヤジ排除で報告会 権力の異様さ まざまざ 北海道支部=山田寿彦

 安倍晋三首相の街頭演説にヤジを飛ばした市民が警察官に強制排除された問題で、警察の行為を検証するドキュメンタリー番組を制作したテレビ局スタッフによる報告会「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に」が7月15日、札幌で開かれた。JCJ北海道支部が例会として企画した。
 支部会員、読者会員ら35人が参加。番組(46分版)上映後、プロデューサーの山ア裕侍・HBC報道部統括編集長(47)と当時道警担当だった長沢祐(たすく)記者(27)が制作の意図などを話した。
 番組は映像の力で警察の異様さを物語る。力づくの排除、排除後も女性につきまとう女性警察官の言動、能面のような表情で、「事実確認中」と繰り返す道警本部長。「年金安心どうなった?」と書いたプラカードを無言で掲げようとしただけで排除された女性など、丹念に集めた場面とそれらをつなぐインタビューにより、普段は見えにくいこの国の権力の姿が時代背景を伴って像を結ぶ。
 山アさんが敏感に反応したのは三つの危機感から。表現の自由をめぐる社会の不寛容さ、政治的主張を理由に排除する権力の暴走、これを問題と思わないマスコミ――。積極的なニュース報道から始め、TBSの協力で全国放送枠を確保して作品につなげた。
 長沢記者は山アさんの厳しい指導と助言を受けながら、取材に精力的に取り組んだ。警察組織を批判する報道は初めて。「怖さもあった」と正直に語る。取材を通じて「マスコミは権力監視が形骸化している。私たちは本来の役割を認識すべき」と痛感したという。 
 排除された当事者の市民も参加し、世論喚起に果たすメディアへの期待感などを語った。
 番組は放送批評懇談会のギャラクシー賞報道活動部門で年間優秀賞に選ばれた。YouTubeで視聴できる。
 山田寿彦(北海道支部)
道警ヤジ排除問題
2019年7月15日、JR札幌駅前で参院選の遊説中だった安倍首相に対し、「安倍やめろ」「増税反対」と叫んだ男女2人が警察官に強制排除された。2人はそれぞれ国家賠償請求訴訟を起こし、地検に刑事告訴(不起訴処分)した。排除は取材中の報道各社の目の前で起きたが、朝日新聞が翌々日の同17日朝刊で初めて報じた。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月25日

【裁判】 ビキニ被曝の高知漁船員 「労災」求め闘い続く 世界の核被災者との連携みすえ=石塚直人

       W8面 ビキニ[53602].jpg 労災訴訟を起こした原告と弁護団=3月30日、高知地裁
 1954年、太平洋ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験で被曝した高知県の元マグロ漁船員や家族らが全国健康保険協会(東京)と国を相手取り、労災認定に当たる船員保険の適用を不認定とした処分の取り消しと損失補償を求めた「ビキニ労災訴訟」の第1回口頭弁論が7月31日、高知地裁で開かれた。
 この日は原告2人が意見陳述、被告側は裁判の分離や東京地裁への移送を求めた。3年半にわたる国家賠償請求訴訟に続く闘いは、世界の核被災者との連帯を見据えている。
政治決着で闇に
 第五福竜丸の被災が問題化した後、港で放射能マグロを廃棄した漁船は、この年12月までに延べ992隻(うち高知県は270隻)。月別の内訳では実験が終わった夏以降に急増し、海域は日本近海からオーストラリア北東に及ぶ。
 「海がパーッと光って、灰が降ってきた」などの目撃者も含め、誰もが汚染されたスコールを浴び、獲れた魚を食べていた。海水中の「死の灰」が食物連鎖で魚に蓄積され、内部被曝の危険性が高まる中、漁船員らは自身の検査結果も知らされず何度も出漁した。
 日本政府は米国の意向を受けて同年12月末、全ての調査を打ち切り、翌55年1月、見舞金7億2千万円と引き換えに「今後、米国の責任を問わない」で政治決着した。今に続く対米従属外交の〈原点〉と言える。
 一方で、官民挙げて原子力の「平和利用」キャンペーンが行われ、同年11月から全国10か所で開かれた博覧会には約300万人が訪れた。第五福竜丸以外の被曝はもみ消され、漁船員らは風評被害を恐れて沈黙した。
35年前 高校生ら発掘
 広島、長崎に続く第3の悲劇に光を当てたのが高知県西部で活動する「幡多高校生ゼミナール」の生徒とゼミ顧問だった山下正寿さん(75)ら。長崎とビキニでの二重被ばくを苦に自殺した宿毛市の青年の話を端緒に、1985年から元漁船員らの聞き取りを続け、本や映画でも紹介された。
 「8人のうち5人ががんや脳腫瘍で死んだ」「10年ほど前から肝臓障害や手足のしびれがひどい」。後年になって発症する晩発性障害が目立った。山下さんらは翌86年、元漁船員の健康調査を始めるとともに、マーシャル諸島の被曝者を訪ねて調査。以来、全国各地に対象を広げたが、被災の全容解明は「資料がない」とする国に阻まれてきた。
メディアが局面打開
 局面を打開したのがメディアだ。2004年から山下さんに密着取材した南海放送(愛媛)が「NNNドキュメント」で相次ぎ放映。12年の映画「放射線を浴びたX年後」も多くの賞に輝いた。NHK広島放送局も14年、NHKスペシャル「水爆実験 60年目の真実」で元船員の歯や血液の新たな分析結果を報道、被災当時の詳細な秘密文書を米国で発掘した。米元高官は「核開発競争に邪魔なものはすべて隠した」と証言した。
 高知の元漁船員らが国賠訴訟に踏み切ったのは16年。一審・高知地裁、二審・高松高裁は請求を棄却したものの、被曝自体は認めた。日弁連も7月21日、国に補償などを求める意見書を公表、続いて広島地裁が「黒い雨」訴訟で原告全面勝訴の判決を出した。
 国連で核兵器禁止条約が採択された17年以降、山下さんらは世界の核被災を紹介するDVD(日・英・露語など)を作成、漁船員の英訳つき証言写真集を各国の大使館に送った。仏国営放送制作の映画「我が友・原子力〜放射能の世紀」(渡辺謙一監督)も今年10月、高知・黒潮町から全国上映される。
 問い合わせは、太平洋核被災支援センター(宿毛市)へ。
 石塚直人(元読売新聞記者)  

ビキニ水爆実験
 1954年3月1日から5月まで計5回。3月16日に静岡・焼津に戻った第五福竜丸の悲劇が大きく報じられ、原水爆禁止運動の引き金となった。マーシャル諸島海域全体での米国の核実験は、46年から58年まで計66回。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号
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2020年09月24日

改憲に言及しなかった長崎平和宣言 「政権批判するな」と圧力? トーンダウン 首相への忖度か=関口達夫

            W5面 平和祈念式典全景.jpg
  被爆75年の今年、長崎市の平和祈念式典=写真=で田上富久長崎市長が読みあげた平和宣言は、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准だけでなく日本国憲法の平和の理念の堅持を求めており、広島の平和宣言より高く評価されたかも知れない。
 しかし、原爆、平和問題を永年取材し、平和宣言の変遷を知る者からすれば、今年の宣言は、安倍首相への忖度を感じざるを得ないものだった。それは平和宣言が2014年、安倍首相の集団的自衛権の行使容認は「戦争をしないという平和の原点が揺らぐ」として、国民の不安の声 に耳を傾けるよう訴えてきたからだ。
  宣言は15年も、同じ理由から安保法制について安倍政権に慎重審議を求めた。だが、翌16年からは「日本国憲法の平和の理念を堅持するよう求める」と、抽象的な表現へのトーンダウンが始まった。
 長崎の平和宣言は、被爆者や学識者、若者らで構成される平和宣言起草委員会の意見を参考にして作成される。
             W5面 平和宣言を読む田上富久長崎市長.jpg
抽象化進む宣言
 16年の起草委員会では憲法9条を改正しようとする動きに警鐘を鳴らすよう求める意見が相次いだ。しかし、田上市長は、憲法改正に言及せず、憲法の平和の理念を堅持せよという表現に留めた。なぜ平和宣言は変質したのか。それは安倍首相とパイプがある長崎県選出の自民党国会議員が、田上市長に平和宣言で政府批判をしないよう”圧力“をかけたからといわれている。
 コロナ禍に乗じて安倍首相や自民党から、憲法に緊急事態条項の新設を求める声が上がった今年は、被爆者らから平和宣言起草委員会で、緊急事態条項の新設や9条に自衛隊を明記する憲法改正案に反対するよう求める意見が出されたが、宣言には全く反映されなかった。
  このことは、戦争と原爆で甚大な被害を受けた被爆地としては看過できない問題だ。何故なら憲法9条に自衛隊を明記すると、自衛隊が海外でアメリカなどと一緒に正々堂々と戦争をすることが可能になり、その結果日本が戦争に巻き込まれ、場合によっては再び核攻撃を受ける危険性さえ生じるからだ。
危うい現実伝えて
 だが、平和宣言が憲法改正の動きに言及しなかったことを報道したマスコミは皆無だった。それは、記者たちが若く、憲法改正や敵基地攻撃論議など日本を戦争する国にしようとする動きに関心が薄いからではないか。原爆は、戦争の過程で投下された。だから記者たちには、核問題だけでなく戦争につながる動きにも関心を向けて欲しい。
 そうすれば日本が、安保法制や憲法改正によってアメリカの戦争を支援する体制を整えつつあることがわかる。その上で平和宣言が憲法改正に言及しなかったことを報じれば被爆地の市長を取り込んで戦争へと突き進む日本の危うい現実を伝えることができる。
関口達夫(元長崎放送記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号


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2020年09月23日

【裁判】 黒い雨集団訴訟 広島地裁「原告全員を被爆者に」 国は控訴 核兵器廃絶に背向ける=難波健治

 核による人類滅亡までの時間を示す「終末時計」は「残り100秒」と過去最悪、コロナ禍も収束どころか、世界中で増え続けている。今年の8・6ヒロシマ式典は、これまで経験したことのない自粛ムード下での開催となった。だがそれは、ヒロシマが直面する課題の行方を占う注目の式典でもあった。
               W4面 報告集会で喜ぶ原告と支援者.JPG
 式典の8日前、広島地裁は「黒い雨」集団訴訟で原告84人全員を被爆者として認めるよう求める画期的な判断を示した。
迫る核禁条約発効
 また、この日を待っていたように3カ国が核兵器禁止条約を批准した。その後、9日に1カ国増え、条約が発効する基準となる50カ国まで残り6カ国となった。
 被爆75年の節目に日本政府がどのような姿勢を示すのか。核保有国に同調し条約に背を向ける姿勢を改めて欲しい。だが、市民の期待は見事に裏切られた。安倍首相は式典のあいさつで核兵器禁止条約には一切ふれず、「立場の異なる国々の橋渡しにつとめる」と、いつもの言葉を繰り返し、核保有大国の「お先棒担ぎ」の姿勢にしがみついたままだった。
控訴断念に答えず
 式典後の懇談会で被爆者団体代表は、黒い雨援護対象区域拡大や広島地裁判決への控訴断念を口々に求めた。だが、安倍首相は答えようとせず、会を40分で閉じた。6日後の12日、国は広島県、広島市を説得し、地裁判決を不服として、広島高裁に控訴した。
 「人類が滅びるとしたら、核兵器か地球温暖化(気候危機)、感染症パンデミックのどれかによるだろう」。世界へ反核の旅を続けてきた89歳の被爆者の言葉である。
 この3つが地球に重く垂れこめるこの夏、唯一の戦争被爆国のトップは、危機打開の道を何ら示すことなく黙ったままだ。
 3つの危機は人類の活動が招いた災禍だが、核は政治の決断で廃絶が可能なものだ。
判決前 報道は健闘
 ジャーナリズムの「2極化」の中、この夏もいくつかのメディアは核兵器廃絶に向けた報道に力を尽くした。「黒い雨」判決を前にした毎日、朝日などのキャンペーンは、この報道が7月29日の広島地裁判決を引き出したのではないか、と思わせるほどの迫力があった。8月2日付毎日新聞の「長期不明のままだった草創期の広島被団協資料500点確認」は、被爆者運動の原点を明らかにし、その意義を明確にしたものとして特筆される。放送の分野でも、若い人たちの視点を生かした力作が目についた。
難波健治(広島支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月22日

ジャーナリスト・外岡秀俊さん寄稿 いま、ジャーナリズムに問われるもの 役所の伝声管≠ナなく、庶民の共感呼ぶ報道を=外岡秀俊

                w1面右 外岡さん写真.jpg
 敗戦75年の節目、全国戦没者追悼式の安倍首相式辞から「歴史の教訓」に学ぶ姿勢が消えた。歴代首相のアジア諸国への謝罪、加害責任言及も、第2次安倍政権で途絶えた。「2度と戦争のためにペンをカメラをとらない」がJCJの出発点だ。いま、ジャーナリズムに問われるものは何か。元朝日新聞東京編集局長でジャーナリストの外岡秀俊さん(写真)に寄稿をお願いした。
                ◆
 あの戦争が終わって、75年目の暑い夏が過ぎようとしている。敗戦の年に生まれた人が後期高齢者となる。それほど長い「戦後」を私たちは生きてきた。 
私たちはいつも「敗戦」を起点に歳月を数えてきた。戦争を生きた人々の遠ざかる影を追い、記憶に留めようとしてきた。だがいずれ、その後ろ姿が消える日が来る。私たちはどのように、惨禍と悔悟、痛恨をのちの世代に伝えたらよいのだろう。
メディアの本性
 「敗戦」を折り返しとして、昭和を前期と後期に分けてみよう。明治維新から敗戦まで77年間は、戦争に次ぐ戦争の時代だった。そして敗戦後の昭和後期から平成、令和まで、ともかくも日本国憲法のもとで、この国は武力で諸国に介入しない節義を守った。あと2年で「戦後」は、近代日本の「戦争の時代」と等しくなる。排外派から「自虐」と呼ばれ、米国には「グズ」と呼ばれようが、私たちがかろうじて志操を守ったのは、この国で生きる人々が、あの戦争で逝った、巻き込んだ数百万の失われた命の痛苦を噛みしめてきたからだ。
 だが、あの戦争を支え、鼓舞・煽動すらしたメディアの本性は、その後どこまで変わったのか。「大本営発表」は軍部の自作自演ではない。メディアがそれを伝えたからこそ、人々は信じ込んだ。その過ちの重さと愚かさを、私たちはどこまで剔抉したのだろう。
伝えるべき情報
 昨年末に始まったコロナ禍は、世界を巻き込み、私たちは今なお、「自粛」と「社会的距離」を強いられている。「自粛」が内面化されれば容易に「萎縮」になり、「社会的距離」は、「連帯」や「共生」を挫くことになりかねない。メディアが政権の発表を垂れ流すだけなら、この目には見えない、強制を伴わない「心の戒厳令」は、仮にコロナ禍が終息しても「新常態」になる恐れがある。
ジャーナリズムが伝えるべき情報は、大きく分けて四つあると思う。
 @刻々と変わる情勢において、「いま直面している問題は何か」を、そのつど定義する情報A「いま、何をなすべきか」という選択肢を市民や自治体に示し、行動や判断の参考にしてもらう情報B政府の施策の成り立ちと効果の有無を批判的に検証する情報C専門家同士に議論の場を提供し、現時点での論点を整理し、問題の在りかを解明するための情報。
 この四つは、それぞれ言論機関の@アジェンダ設定機能A行動・判断指針の提示機能B検証・調査報道機能C言論フォーラム形成機能、という役割を示している。
 コロナ禍報道は今のところ、起きた事象の後追いをするのが手いっぱいで、こうした言論機関本来の機能は十分に果たしていないのではないか。そう感じない訳にはいかない。
センサーの役割
 具体的に指摘しよう。今の政権与党は、事態が行き詰まると、その難局に全力で対処するよりも、その困難を奇貨として、本来望んでいた政策へと誘導する傾向がある。
 たとえばコロナ禍に乗じて「緊急事態条項」を導入する改憲機運を盛り上げようとしたり、「イージス・アショア」の配備失敗を機に、あろうことか「敵基地攻撃力」の保有を検討し始めたりすることに、それは顕著だ。
 そればかりではない。
 昨年の消費増税に当たってポイント還元を導入し、あるいはマイナンバーカードの普及を図ったりするなど、官邸を「輔弼」する人々にも、その傾向は強い。いったん緩急あれば、何が何でも省庁の施策を貫くというこの傾向は、コロナ禍においても、医療態勢支援の前に「アベノマスク」に巨費を投じたり、感染拡大の兆しがあるにもかかわらず「Go To トラベル」を前倒し実施したりといった、ちぐはぐな対応を招いた。「国民の命と安全を守る」ことが最優先とするなら、考えられない発想だ。
 こうした姿勢を、「ショック・ドクトリン」とまでは言うまい。しかし、庶民が直面する厳しい現実を察知するセンサーが働かず、「慣性」のように、省庁の従来施策を追い求めて摩擦を起こすという点で、それは政治の機能不全だといえる。そして言うまでもなく、その「センサー」の役割を果たすべきなのは、ジャーナリズムであり、メディアなのだ。
「不信」の要因は
 私は、コロナ禍でメディアが果たすべき役割は、役所の伝声管になるのではなく、庶民の嘆きや苦しみを察知して政権に現状を知らせ、そうした声に寄り添うことで、人々の共感を呼ぶよう努力することだと思う。
 近年、SNSの急速な台頭で、新聞やテレビといった既成メディの影響力は低下し、「メディア不信」も広がりつつある。コロナ禍による広告の減少は、産業としての基盤をも揺るがしかねない。
打開策はあるのだろうか。
 私は、「メディア不信」の背景には二つの要因があると思う。
一つは、メディアの側が、読者や視聴者に対する説明責任を十全に尽くしていないことだ。たとえば、コロナ禍で、現場では十分な取材ができていないことを、受け手は敏感に察知する。メディアが、取材手法やその限界など「手の内」をさらせば、受け手はきっと理解してくれる。もう一つは、各社の報道姿勢が、ある種の型の価値観に縛られ、既成メディアが、すでに「フィルター・バブル」状態になっていることだ。各社の報道姿勢を越えて、ジャーナリストが連携し、何が問題で、何を大事にすべきか、その共通項を探ることが、急務だと思う。
「大本営」検証を
 新聞労連は今年3月8日の国際女性デーに向けて、会社の枠を超えて有志がメーリング・リストなどで議論を深め、その前後に、各社が独自の記事や特集を組んで緩やかに連携する試みに挑んだ。
 その試みをヒントに、「メディア不信」に抗するために、具体的な提案をしたい。
 私は、毎夏の終戦記念日前後に、メディアで働く人が「大本営発表」について検証し、自らの今の報道姿勢が、同じ轍にはまっていないかどうかを、読者や視聴者に説明することを提案したい。
 各社が右に倣う必要はない。メディアは、個々のジャーナリストの集合体に過ぎない。志のある人が、自ら所属する組織に働きかけ、自分のできる範囲で最善を尽くす。それがひとつの潮流となれば、きっと「メディア不信」を押し返す力になると思う。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号



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2020年09月21日

【お知らせ】 学生向け・秋のJCJジャーナリスト講座 オンラインで10月から実施

ジャーナリスト講座でテレビ記者座談会・18年7月15日.jpg ジャーナリスト講座でテレビ記者座談会=2018年7月15日
 
《メディアの世界をめざす学生向けの講座です。報道の姿がリアルにわかり、仕事の面白さ、魅力が伝わってきます》
【1】10月11日(日)午後2時〜5時 
「新聞記者の仕事とは何か――自分のテーマを持つ」
共同通信記者・新崎盛吾さん
【略歴】1967年生まれ。90年4月に共同通信入社。山形、千葉、成田の各支局で3年ずつ、計9年を過ごし、99年4月から08年9月まで社会部。 警視庁公安、羽田空港分室、国土交通省などの記者クラブを担当し、遊軍ではイラク戦争、北朝鮮、赤軍派などを取材。その後、さいたま、千葉の支局デスク、関東・甲信越の支局を管轄する東京編集部デスクを経て、14年7月から16年7月まで新聞労連委員長。現在は共同通信の配信記事をネット向けにリライトするデジタル編成部のデスク。「金曜ジャーナリズム塾」事務局長、法政大学兼任講師。沖縄県出身。
【2】10月24日(土)午後2時〜5時
  「報道の文章とは――どう書き、伝えるか」
  東京都市大学教授・高田昌幸さん
【略歴】1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。
【3】11月3日(火)午後2時~5時
   「調査報道とはーー事実を深く掘り下げる」
            東京都市大学教授・高田昌幸さん
【4】11月14日(土)午後2時〜5時
「海外取材から見る記者の仕事
――あらゆる取材に欠かせない『虫の目、鳥の目、魚の目』」
  毎日新聞専門記者・大治朋子さん
【略歴】1989年入社。東京社会部、ワシントン、エルサレム特派員。英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。テルアビブ大学大学院など修了。2002〜03年の防衛庁(当時)による個人情報不正使用に関する報道で日本ジャーナリスト会議大賞と新聞協会賞(2年連続)受賞。10年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。単著に『アメリカ・メディア・ウォーズ 』など。最新刊に「歪んだ正義『普通の人』がなぜ過激化するのか」

【5】11月21日(土)午後2時〜5時
 「セクハラ問題にどう向き合う、どう伝える
〜〜メディアの当事者性は」
東京新聞記者・佐藤直子さん
 【略歴】東京新聞特報部記者。元論説委員。1991年入社。セクシュアル・ハラスメント問題、少年事件、犯罪と更正、沖縄戦、米軍基地、貧困問題、選択的夫婦別姓、家族法など人権をテーマに幅広く取材。編著「マスコミ・セクハラ白書」(文藝春秋社)、共著「あの戦争を伝えたい」(岩波書店、第12回平和・協同ジャーナリスト基金賞)、「私にとっての憲法」(同)などがある。テレビ局女性記者に対する財務省幹部によるセクハラ事件をきっかけにして2018年春、新聞、通信、放送、出版、ネットメディアで活動する女性たちの職能集団として発足した「メディアで働く女性ネットワーク」(WiMN)メンバー。

【6】12月12日(土)午後2時〜5時 
「映像を撮る仕事――Webでの発信術」
   映像記者、ドキュメンタリー監督・岸田浩和さん
【講師・岸田浩和さんからのメッセージ】海外メディアの映像記者が先駆けとなった少人数の映像取材「ビデオグラファー・スタイル」に興味を持ち独立。独自に研究を重ね、現在は、Yahoo!ニュース特集やデジタルメディアのVICEなどに独自企画の記事を発表している。 昨年は「香港デモ・理工大学包囲の前線取材」や、ブータン人留学生の就労実態に密着した映像ルポなどを発表した。
当日は、2人チームで写真、映像、記事を扱う取材手法や、フリーランスの立場で感じた「視点」や「今後の戦い方」について、お話ししたいと思います。また、香港デモの取材報告も行います。 

【7】12月19日(土)午後2時〜5時 
「福島原発事故と避難者の今を追う」
   朝日新聞記者・青木美希さん
【略歴】札幌市出身。北海タイムスの休刊に伴い北海道新聞に。警察幹部が捜査費を飲食などに使っていたことを追及し、10億円近くの返還に結びついた「北海道警裏金問題」などを取材した。2010年に朝日新聞社に入社。東日本大震災を発生翌日から現場で取材し、原発事故を検証する企画「プロメテウスの罠」などに参加。「手抜き除染」報道などを手がける。「北海道警裏金問題」「プロメテウスの罠」「手抜き除染」の各取材班で新聞協会賞を3度受賞。避難者や原子力村、東電社員など多角的に原発事故を描いた著書「地図から消される街」(講談社現代新書)で貧困ジャーナリズム大賞、日本医学ジャーナリスト協会賞特別賞など受賞。Yahoo!ニュース特集、現代ビジネスなどネットメディアでも執筆。

  【オンライン講座、参加の方法】
◇受講者:新聞やテレビの世界をめざす学生が対象。既卒1〜2年でもOKです。一般の社会人の方はご遠慮ください。

◇参加人数:30人前後を想定しています。
◇受講料: 【1】から【7】まで7回通し券=3500円(推奨)
      【1】から【3】まで前期3回券=2000円
      【4】から【7】まで後期4回券=2500円
         好きな講座が選べる1回券=700円
◇受講希望の学生の方はメールで onlinejcj20@gmail.com に申し込んでください。氏名、大学学部名・学年(既卒の方は卒業年)、連絡先電話番号、メールアドレス、受講券の種類(7回通し・前期・後期・1回)を明記してください。1回券の方は受講希望日をはっきり書いてください。1回券2枚で好きな2講座、3枚で3講座、4枚で4講座を選べます。

◇受講料の支払い方:メールで申し込むと、支払いシステムpeatixで使うキーワードをお知らせします。Peatixを開き、キーワードを用いて支払い手続きをして下さい。
◇キャンセル:7回通し券・前期3回券は10月8日まで受け付け。後期4回券は11月11日まで受け付けます。Peatixを通じて取り消し手続きをしてください。1回券は取り消し不可ですのでご注意ください。
◇参加する講座の前日に、Zoomの配信URLをメールで送ります。パソコンでクリックして参加できます。ミーティングID、パスコードも送ります。
◇講座を欠席されても毎回事後に録画(7日間試聴可能)をメールで送信します。アルバイトなどで講座に出れない場合も、後から講座の録画を視聴できます。
◇主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
    〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−5 富士ビル501号
      電話03・6272・9781(月水金の午後1時〜5時対応)
      メール office@jcj.sakura.ne.jp
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2020年09月20日

【今週の風考計】9.20─コロナ禍で進む「ふるさと納税」の歪み

コロナ禍での「ふるさと納税」が、菅義偉首相の誕生により再び注目を集めている。この制度は、菅氏が総務相時代の2007年に制度創設を表明し、翌年からスタートさせた。2012年には官房長官に就任、その3年後には税額控除を倍増させた。

「ふるさと納税」は、自治体に寄付すると、額に応じた魅力あふれる返礼品がもらえる。かつ自己負担の2000円を除いた寄付金は、そのまま住民税から控除される。寄付をすればするほど寄付者が“もうかる”仕組みだ。
 現に高額所得者が、自分の住んでいる自治体には税金を払わず、地方から贈られる高級和牛やカニなどを堪能している。こんな不合理がまかり通るようになった。居住する地域の医療や図書館など、公共施設の運営に要する税を負担しないとは。
 日本に在住している外国人が、子供を日本の学校に通わせながら、「税金は母国に払う」と言ったらどうするか。
 まさに「ふるさと納税」は税制度の根幹を揺るがしている。

今や寄付額は08年度81億円から18年度は395万人が5127億円まで急増し、税金の控除額は3265億円に達した。こうなると各自治体は、何が何でも寄付額を増やそうと、自治体間での返礼品競争が激しくなる。
 地方の特産品どころか、アマゾンのギフト券を返礼品として配る大坂・泉佐野市も出てきた。事実上の現金還元だ。
 最近では長野県御代田町が、町内の遺跡から出土した縄文土器の実物大レプリカを、「ふるさと納税」の返礼品にした。5万円以上の寄付が前提にもかかわらず即完売。神奈川県南足柄市への寄付額が2019年は27億円、前年の約8倍に激増した。これも丹沢山系の水を利用したビールを返礼品に加えたためである。

財政が逼迫している地方の自治体には、「ふるさと納税」は降ってわいた財源、よだれが出るほど欲しい。地方自治体間で「ふるさと納税」の取り合いである。「地方創生・産業振興」への取り組みなど、すっ飛んでしまう。
その一方、「ふるさと納税」に流れて税収が減った、首都圏を中心にした自治体の悲鳴は深刻になるばかり。東京・渋谷区は26億円もの住民税が流出する、いわば“ふるさと納税貧乏”状態だ。同じ杉並区では2019年度25億円近くの財源が流出した。
 コロナ感染拡大に対応しての緊急な財政支出がかさみ、そのうえ税収が減れば、道路や公園など公共空間や施設の維持・管理は滞る。街灯の電球が交換されなくなり、廃棄物の収集回数は減るなど、深刻な事態が進む。

コロナ禍で巣ごもり需要による「ふるさと納税」の伸びが目立つ背後で、所得の高いものほど税額控除が大きくなる矛盾、そして自治体間の無用な競争をあおり、<税の応益負担>へ不信が募る、ここに目を向けなければダメ。(2020/9/20)
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2020年09月19日

【フォトアングル】 日本の戦跡を撮り続ける安島太佳由さん=酒井憲太郎

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  終戦75年を記念する写真展、「太平洋戦争激戦地 慰霊景 沖縄・サイパン・ペリリュー・フィリピンを辿る」(写真)が東京新宿で開かれた。戦後生まれの安島太佳由氏は1995年10月鹿児島県トカラ列島悪石島で対馬丸慰霊碑、地蔵尊を見て、日本の戦跡をテーマに決めた。以来、戦争に関わる物を記録し、忘れてならない慰霊の景色は日本全国から海外へと広がった。=3日、東京・新宿、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月18日

【おすすめ本】水島久光『戦争をいかに語り継ぐか 「映像」と「証言」から考える戦後史』─もどかしい戦争報道の歩み、語り部と対話し問答する大切さ=菅原正伯

 戦争体験を語るさい、「あの戦争」とよぶ人が少なくないのはなぜか。本書はそんな疑問を手がかりに、NHKやTBSのドキュメンタリー番組を主な素材にして、戦争体験を語り継ぐことのもどかしさや難しさの要因を考察している。
 戦後60年(二〇〇五年)、戦後70年(二〇一五年)に、テレビ各局は競って百を超える戦争番組を作った。だが語り部は自分の言葉が聞き手に届かない悩みを、抱えていた。
それは戦後、知識人と大衆、語り手と聞き手に加え、「知る者と知らざ る者」の分断によって、戦争に関わる語り(テレビ報道)が「一方向性」に傾斜したからだと、著者は言う。
 第二章は「戦争を知らない子供たち」と戦争体験者とのコミュニケーションの「断絶」を、フォークソングや戦争マンガの考察から文化的に明らかにし、示唆に富む内容がいっぱいである。
断絶があるがゆえに「問答」や「対話」による克服が大切になるが、原爆など「なぜこんな悲惨なことが…」という聞き手の問いかけは、話し手との圧倒的な情報量の差を前にして、「だから 戦争はいけない」という結論に短絡しがちだったと、著者は指摘する。厳しい批判だが、その底には戦後第一世代の努力にたいし、大いなるエールが込められている。
 語り部が高齢化し「語り手なき時代」の到来が迫っている。それだけに著者はテレビ各局が製作した膨大なドキュメンタリーのアーカイブ化を図って活用することや、この間、戦前のニュース映画や映像の新たな発掘が続いていることに期待を寄せている。(NHK出版1500円)
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2020年09月17日

【映画の鏡】制作の決意は揺るがず 『島を守る』 新聞社が提携「命の尊さと平和」発信=鈴木賀津彦

 沖縄戦の激戦地、摩文仁の丘(糸満市・平和記念公園)の『島守の塔』をご存じだろうか。碑文には「この地は、沖縄戦で住民とともに南下を続けた島田知事、荒井警察部長らが摩文仁の丘を最後の地と定め、随行の部下に退去・避難を命じ、この山に構築した壕で自らの生命に終止符を打ったゆかりの地」とある。
 戦後75年の今年3月、沖縄県内で映画「島守の塔」(五十嵐匠監督)の撮影がスタートした。この知事島田叡(あきら・神戸市出身)と県警察部長荒井退造(宇都宮市出身)という本土から赴任した二人の内務官僚の苦悩や葛藤を通じ沖縄戦を描き、命や平和の尊さを伝える作品。だが、コロナ禍で中断、撮影は来年以降に延期を余儀なくされた。当初は、年内に関係地域での先行上映、来年夏の公開予定だった。
 撮影も上映も未定という残念な事態にもかかわらず、製作陣の強い決意を感じたのは、7月に映画の公式サイトを立ち上げ、8月には広く「サポーター」の募集を始めたことだ。製作委員会のメンバーに注目してほしい。下野新聞、神戸新聞、琉球新報、沖縄タイムスの4地方紙が中心となり、毎日新聞やサンテレビ、とちぎテレビなどが加わった構成。
 「主な登場人物の出身地(沖縄、兵庫、栃木)の地方新聞社が連携を図り、単にこの映画製作の支援・協力をするだけでなく、3県のトライアングルによる『平和交流事業』の基盤を構築し、3県のみならず全国のメディアに呼びかけ、大きな平和事業に発展させていきます」としている。
 映画づくりの新しい形としての地方紙連携に期待したい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号
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2020年09月16日

【スポーツ】 自由で自主的な文化気運が拡大=大野晃

 6月に3カ月遅れの無観客で開幕し、7月から5000人以下の観客制限で続行されたプロ野球は、9月に入って後半戦の王座争いを迎えた。
 過密日程が総合力の勝負を促した。投手陣のやり繰りがむずかしく、失敗すれば大差の敗北となったが、新戦力の台頭もあって、競り合いの強さが重きをなしている。スリルに富んだ面白さが、ファンの興奮を呼んだ。
 セ・リーグは巨人がリードし、パ・リーグでソフトバンクとロッテが首位を競っているが、大詰めへ向け激戦が続きそうで、王座は予断を許さない。
 新型コロナウイルス感染症の感染対策を徹底し、競技者たちの感染検査を怠らず、自覚的な予防姿勢が白熱戦を生み出している。 
 プレーによる感染の危険は少ないため、濃厚接触の少ない競技では、屋内での競技や市民スポーツでも、競技会などが本格化してきた。
 全国的な感染拡大の地域差は大きく、感染の少ない地域では、濃厚接触の多いラグビーでも、高校生の公式戦がスタートした。
 それでも東京など都市部の感染拡大は収束が見えず、不安は消えない。
 感染拡大対策の最中に、安倍首相が病気を理由に辞任して、投げ出した政府の対策に空白が続き、関連自治体も手をこまねいてきた。
 そんな中で、競技者や競技団体が、自主的に競技を継続させる意欲を見せていることが特徴的だ。スポーツ文化を守る姿勢が広がっている。
 感染拡大が続く欧米だが、競技ファンは多く、過密日程の米大リーグ野球では、復活したダルビッシュ投手(カブス)など日本人競技者が活躍している。
  欧州のサッカーも熱戦が続く。自衛により文化を絶やさない競技者たちの意志は世界共通に違いない。コロナ禍が、自由で自主的なスポーツ気運を拡大している。
  猛暑がおさまりつつあり、台風被害の危険はあるが、スポーツの秋本番に向かい、知恵と工夫のスポーツライフが発展しそうだ。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年09月15日

【沖縄リポート】 新基地建設止めないため米軍クラスター隠す?=浦島悦子

           報告集会.JPG
 「ヤマトと基地からコロナの挟み撃ち 強固な日米同盟の証です −防衛省 県民各位」
 8月9日付『琉球新報』読者ページ「うそっぱち」欄に掲載された投稿は、県民の現在の心境をズバリ表現していた。
 5月以降68日間、新型コロナ新規感染ゼロが続いていた沖縄で、7月上旬の米軍基地でのクラスター発生以降、感染者が出始め、安倍政権の愚策「Go To トラベル」と相まって感染者数はうなぎのぼりに増え、瞬く間に「全国一の感染拡大地」となってしまった。県内感染者数が累計1404人(米軍基地除く)となった8月13日、玉城デニー知事は警戒レベルを最高段階(感染蔓延期)に引き上げ、15日までとしていた県の緊急事態宣言を2週間延長すると発表した。
 県の緊急事態宣言を受けて、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」は8月3日からすべての現場抗議行動を自主的に休止(搬出入のチェックと監視のみ続行)しているが、沖縄防衛局は埋め立て工事を止めようとしない。
 当初、感染者数さえ公表しなかった米軍は、県や県民の強い要請により数だけは県に伝えるようになったものの、感染経路など感染拡大防止に必要な情報は一切提供せず、発表される数(13日現在で累計320人)や基地名についても、県民はその信ぴょう性を疑っている。何よりも、隣接するキャンプ・ハンセンで感染爆発ともいえるクラスターが出ているのに、同じ海兵隊で訓練を共にしているキャンプ・シュワブがゼロというのはおかしい。新基地建設工事を止めないために隠しているのではないか、というのが大方の見方だ。
 ヘリ基地反対協は5日、沖縄防衛局に直接出向き、「在沖米軍全基地の当面の閉鎖」と「埋め立て工事の中止」を要請したが、対応した担当官は「米軍と緊密に情報共有している」「(工事は)着実に進める」と繰り返すのみ。埋め立て工事の海上警備作業員に感染者が出た後もなお工事を強行している。    
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年09月14日

【お知らせ】 東京新聞オンラインセミナー「ニュース深堀り講座」10月から実施 受講者募集=編集部

 東京新聞の論説委員と記者が長年の取材で培った専門分野を、独自の観点からライブで解説する。政権交代の影響も織り交ぜた最近のニュースを分析。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使い、受講者からの質問も受け付ける。

 ◇日時(1)10月10日(土)(2)11月14日(土)(3)12月12日(土)各午後2時から

 ◇講師・内容
(1)望月衣塑子(社会部記者)「新政権でも聖域化!?〜米兵器大量購入の構図」
(2)豊田洋一(論説副主幹)「米大統領選〜超大国の選択が日本にもたらすもの」
(3)五味洋治(論説委員)「『愛の不時着』と金与正から解く北朝鮮」

◇定員 480人
 ◇受講料 3回分4500円
 ◇申し込み 東京新聞ホームページ内「注目コンテンツ」から。先着順。10月2日締め切り
 ◇問い合わせ 東京新聞文化事業部=(電)03(6910)2345(平日午前10時〜午後6時)
 ◇主催 東京新聞
 申し込みページはこちらから
https://www.tokyo-np.co.jp/ky/fukabori/
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2020年09月13日

【今週の風考計】9.13─憲法の「非戦・平和主義」を骨抜きにしてきた7年8カ月

<最後っ屁>とはいうが、安倍首相が放ったのはイタチよりひどい。あと7日もない首相の座から「敵基地攻撃能力」の保有を促す談話を発表した。自民党内の討議も経ず、閣議決定もなし。自民党内ですら「辞めていく首相が方針を決めるのはおかしい」と、反発の声が出ている。
これまで政府は、「敵基地攻撃能力」について、憲法上は保有を認められるが、専守防衛の観点から政策判断として持たないとの立場を維持してきた。
 こうした方針を大転換させる談話で、よしみを通じるとはいえ、次期の「菅政権」に年内という期限付きで政策決定を求めるのは言語道断だ。
 「ミサイル反撃」と言うが、他国の領域を標的にする兵器の使用は、専守防衛を逸脱するのは明白なうえ、先制攻撃にもなりかねない。まさに憲法9条が死滅する。

「ミサイル反撃」への対応にしても、まず他国から発射されるミサイルを正確に予測し把握せねばならず、宇宙空間での監視が不可欠。そのため早期警戒衛星の打ち上げが必要になる。日本が独自に持つと年間850億円かかる。さらなる地対空誘導弾パトリオットの拡充も迫られる。
いま防衛省が準備している「敵基地攻撃」の一つには、北朝鮮や中国、ロシア沿岸部に到達する射程500キロの弾道ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」(ノルウェー製)がある。それを2022年3月までに購入し、航空自衛隊のF-35Aステルス戦闘機に搭載して運用する計画だ。
 これも専守防衛との整合性について議論を尽くさずに導入を決定した。
さらに敵基地のレーダーや通信などの防空網をかいくぐって攻撃するには、電子戦機やステルス戦闘機が必要になる。電子戦機もステルス戦闘機も1機100億円。その維持費や要員の訓練なども含む経費を考えれば、年5兆円の防衛予算が、さらに拡大の悪循環に陥る。

安倍政権の7年8カ月、日本の安全保障を脅かす暴挙が、どれだけ繰り返されてきたか。
 2014年4月には「積極的平和主義」の名の下、武器輸出の禁止を解除。7月には憲法解釈の変更で、集団的自衛権の行使容認を、国会での議論を経ずに、閣議決定で一方的に決定した。翌年9月には学者や国民の反対にもかかわらず、安保関連法を強行採決で成立させた。
 自衛隊が地理的な制限もなく海外に派遣される攻撃部隊と化し、米軍との一体化が加速、憲法の「平和主義」が骨抜きにされた。
その間、トランプ大統領のご機嫌を伺い、兵器の爆買いに奔った。核兵器禁止条約には背を向け、「東アジア平和共同体」構想など視野にもない。
 安倍政権の一強支配による権力行使の7年8カ月は、日本を「戦争する国」へと歩ませる道程だったといっても過言ではない。(2020/9/13)
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2020年09月12日

【JCJアピール】圧力・忖度・屈従の悪循環を断ち切ろう 安倍首相退陣・新内閣発足に当たっての見解

ジャーナリズムにとっても危機と災厄の7年8カ月
 8月28日に安倍晋三首相が記者会見で持病の悪化を理由に辞意を表明したことで、2012年12月に発足した安倍政権(第2次)は遂に幕を閉じることになった。7年8カ月にわたったこの政権は、立憲主義・法治主義の破壊、戦争法・辺野古基地建設の強行、増税と新自由主義的経済政策、歴史修正主義、国政の私物化と「お友だち」優遇など、国民にとってあらゆる点で災厄でしかなかったが、ジャーナリズムの分野もその例外ではなかった。
 発足以来メディア対策を特に重視した安倍官邸は、メディアへの圧力・介入を常態化させた。
 NHKの経営委員・会長・理事に政権寄りの人物を送り込む、放送法の公平原則を盾に電波停止の可能性を明言する、メディア対策に当たってきた与党議員が民放の報道番組を批判し、結果的に大量の外部スタッフの契約打ち切りという事態を生む、記者会見で政権に批判的な記者に発言させない等々、悪しき「実績」は枚挙にいとまがない。その一方で、メディア経営者・幹部らと頻繁に会食して緊密な関係を維持し、また首相の好きな新聞社・テレビ局には頻繁に単独会見・出演するなど、メディアを分断・懐柔してきた。その結果、大手メディアの多くで官邸への忖度が広がり、政治報道の質の低下が進んだ。
 また、統計の改ざん、公文書の隠蔽や破棄などを繰り返し、現在と将来の世代が国政を客観的・実証的に検証する手立てを失わせたことも、見過ごせない負の遺産だった。

官邸・メディア合作の「病気辞任」劇?
 問題なのは、8月末のメディアの「辞意表明」報道が、「道半ばで病気に倒れた」というイメージを国民に振りまき、「かわいそう」「おつかれさま」という情緒的な反応を引き出したことである。新型コロナへの無策や検察庁法改正案などで内閣支持率が急落していた7月には既に、「秋までに政権を投げ出すのでは」との憶測が語られていた。8月17日の検査入院についても、「歴代最長内閣の記録更新を花道に、病気を理由に側近に禅譲し、石破の芽を摘む作戦では」との指摘があった。結果的には正にその通りの流れとなり、内閣支持率も一時大きく持ち直すに至った。
 一国の首相が体調不良をあえて表に出し、検査入院に向かう姿をカメラに見せつける……ベテラン政治部記者にそのような異常な行動の「狙い」が分からないはずがない。官邸が脚本を書いた「政権投げ出しを病気辞任にすり替える」という逆転劇=病気の政治利用に、少なからぬ大手メディアは協力したのではないか。

後継首相美化キャンペーンは許されない
 さらに、辞意表明後の政局報道も国民をミスリードするものとなっている。特にテレビは、安倍政権の検証はそっちのけで、自民党内の動向に関する報道に集中している。主流派が菅義偉官房長官で一致すると早速、「地方出身で苦労してきた叩き上げ」という菅美化キャンペーンが始まった。「菅優位」報道や記者会見の放送で露出度が増したことで、9月初めの数日間で一般市民の菅支持率が激増したと報じられている。
 しかし、菅氏が7年8カ月の安倍政権の全期間を通して官房長官として悪政の推進の中心であったこと、記者会見ではまともに質問に答えようとせず、記者に高圧的な態度をとってきたことを、ジャーナリズムは不問に付すわけにはゆくまい。

求められる追及力
 森友・加計疑惑、桜を見る会、そして河井夫妻の大規模買収事件など、安倍首相に関わる疑惑は依然として解明されていない。この半年間のコロナ「対策」の検証も、国民の生命と生活を守る上で欠かせない。さらに、敵基地攻撃論という、国家の根本に関わる重大問題が新たに浮上している。これらを追及することはメディアの喫緊の責務だが、記者会見で政権側が質問を制限し、まともに答えないという状態が慢性化した中では、取材する側の追及力、質問力がこれまで以上に必要になっている。独自取材の積み重ねに依拠しつつ、記者会見を改めて事実解明の主戦場にしてゆくことは、ジャーナリズムにとって大きな課題だろう。
 圧力・忖度・屈従の悪循環を断ち切れるのか、ジャーナリズムとして再生するきっかけをつかめるのか……今、メディアとジャーナリストは存在意義を改めて問われている。

2020年9月11日 日本ジャーナリスト会議(JCJ)


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2020年09月11日

【お知らせ】 JCJオンライン講演会「時のヒト・コト」シリーズ 第5回目

             後藤逸郎20200325.jpg P1020271.JPG
              「五輪、政治とカネ」(仮題)
              講師:ジャーナリスト 後藤逸郎さん

              9月26日(土)午後2時〜4時
 
 新型コロナウイルスのパンデミックは収束に向かっていない。たとえコロナワクチンができたとしても、すべての人に効くとは限らない。また副作用も心配だ。世界各国はコロナにおびえている。1年延期の東京五輪・パラリンピックを開催する日本の新政権は、コロナ対策と失速した経済の立て直しで手いっぱい。政府も国民も五輪どころではない。こんな状態で五輪パラは本当に開けるのか。『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』(文春新書)の著者で元毎日新聞記者の後藤逸郎さんが「五輪、政治とカネ」(仮題)をテーマにオリンピックの闇を語る。

【後藤逸郎さん略歴】ジャーナリスト。1965年、富山県 生まれ。金沢大学法学部卒業後、 1990年、毎日新聞社入社。姫路支局、和歌山支局、大阪本社経済部、 東京本社経済部、大阪本社経済部次 長、週刊エコノミスト編集次長、特別報道グループ編集委員などを経て、 地方部エリア編集委員を最後に退職。著書に『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』(文春新書)。
参加費:500円
★参加費のお支払いはpeatixでお願いします。下記URLを開き、支払ってください。なおpeatix利用が初めての方は氏名、メルアド、独自のキーワードの打ち込みが求められます。 http://ptix.at/SoLGfp 
★講演前日の9月25日にZoomの配信URLをお送りしますので、そこから講演会に参加してください。

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
    〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
     電話03・6272・9781 メール office@jcj.sakura.ne.jp
ブログ「Daily JCJ」 http://jcj-daily.seesaa.net/
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