2020年09月08日

【月刊マスコミ評・放送】 コロナの現状を伝えるNHK番組=諸川麻衣

  今回は、新型コロナの現状を伝えたNHKの番組を幾つか取り上げる。
 『BS1スペシャル 封鎖都市・武漢〜76日間 市民の記録〜』(5・8)。76日間封鎖された中国・武漢で「武漢封城日記」を通して近隣住民、清掃員などの生の声を伝えたソーシャルワーカー、患者の悲痛な声を配信してきた北京のネットラジオ番組『故事FM』などを取材、官製メディアが伝えない実態を明るみに出した。
 『ETV特集 パンデミックが変える世界〜台湾・新型コロナ封じ込め成功への17年〜』(6・20)。新型コロナ発生直後、台湾は発生源の近くにありながら迅速な水際対策やIT技術の活用で封じ込めに成功した。その背景には17年前のSARSの時の失敗とその後の大改革があった。疫学者から副総統となった陳建仁など関係者へのインタビューで、台湾の歩みとその教訓を伝えた。
 『BS1スペシャル レバノンからのSOS 〜コロナ禍追いつめられるシリア難民〜』(7・12)。レバノン国内に逃れた120万以上のシリア難民は経済的に困窮し、売春や臓器売買が広がっていた。3月、新型コロナの感染拡大でレバノン政府は非常事態を宣言、難民は感染の危険が増す中、さらなる困窮や差別・襲撃にさらされた。コロナ禍が弱者、とりわけ女性に特に深刻な打撃を与えることを迫真的に描いたルポで、取材者と出演者の心の絆なくしてはここまでの取材はできなかったろう。同様の問題、日本は無縁と言えるだろうか…。
 『NHKスペシャル 新型ウイルス“生と死”の記録〜医療最前線・密着3か月〜』(7・19)。治療法が未確立な中での試行錯誤、大規模な院内感染の発生、無念にも救えなかった命…神奈川県の二病院に密着して現場の苦闘を描いた。一般の救急や診療を停止したため地域医療が危機に瀕した実態も伝わってきた。  
  最後に参考に挙げたいのが『証言記録 感染症から巨大避難所を守れ』(6・14)。大震災直後、三千人を収容した福島県郡山市の大規模避難所で、不衛生な環境からノロウイルス感染症が発生した。県職員・支援ボランティア・医療関係者が尽力の末、最終的には避難者が避難所運営に参加して衛生状態を自ら改善する仕組みを築いたことで感染拡大を防げたという。
 台湾の例と併せ、市民の主体性、対策の科学的な合理性、行政・政府と市民との信頼関係など、社会の「民主主義」の度合いこそがコロナ対策の成否を決めると痛感した。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする