2020年09月30日

【隅井孝雄メディアウオッチ】 NHK、ネット事業制限撤廃 一方ではラジオ第二とBS1廃止の矛盾

 NHKはこれまでインターネット業務の予算枠を全体の2.5%に抑えてきたが、9月15日、その制限枠を来年度から撤廃する考えを明らかにした。
好調の波にのる
 4月に開始したネットサービス、「NHKプラス」がたまたまコロナによる「外出自粛」と合致し、好調の波にのった。”この際一気にネット拡大に向かいたい”という思惑が見て取れる。ネット業務の拡大について、NHKは建前として「抑制的な管理に努める」としている。
 かねてからNHKのネット進出を警戒する民放連は「NHKは放送とネットを横並びに位置付けている」との懸念を表明、逆に現行受信料の引き下げ(地上波月額2230円)を求めた。
 NHKのネット業務費は2020年度予算で170億円(受信料の2.4%)。別枠の東京五輪関連のネット費19億円を含めると189億円(受信料の2.7%)となる。
 「NHKプラス」主体のネット業務は2021年には197億円に、22年は194億円になる見通しも発表された。それぞれ受信料の2.94%、2.90%を占める。
事業規模縮小か
 合点がいかないのは、NHKが今年8月4日に発表した3ヵ年計画で事業規模を現状の7200億円から、6000億円台に縮小する方針との整合性だ。番組やチャンネルを縮小する一方ネットビジネスを拡大するということとの間の矛盾は大きい。
 NHKネット業務の主力はなんといっても「NHKプラス」だ。同時配信ももちろんだが、見逃し視聴、追いかけ視聴、地方番組サービスもあり、視聴者にとっては便利な存在に違いない。しかし受信料を支払っている視聴者であれば無料で利用できる。NHKがインターネットをビジネスとして活用することは放送法上できない相談だ。
 にもかかわらずネット利用に執心するのには何か別の魂胆があるのではないかとの疑いをすら持つ事態だ。
 高市早苗総務大臣(当時)がネット事業の上限撤廃に見直しを求めた(9/16)。NHKは上限撤廃されれば、地方局制作番組のネット配信期間を7日間から14日間に延長する、在外邦人向けの「NHKワールドジャパン」のネット同時配信を始めるといっている。
都市放送の歴史持つ
 一方3ヵ年計画でNHKが打ち出した、ラジオ第二とBS1の視聴者に断りもなく一方的廃止には私は断固として反対する。
 ラジオ第二放送は今では教育教養、それも語学講座が主体だが、1931年以来半世紀の歴史を持つ。東京、大阪、名古屋に聴取者が留まったことから局名を1939年に「都市放送」と改称した。そして都市知識層向けの、教養、講座、文芸、音楽番組に力を入れた。
 太平洋戦争中「都市放送」は休止されたが、終戦直後再開、学校放送、プロ野球中継、大相撲、音楽放送など、柔軟編成で親しまれた。また「農村」向け、「漁村」向け番組なども開発した。
世界を身近に感じる
 BS1も貴重な歴史を持つ。開始は1984年5月12日。日本初となる人工衛星を利用して受信可能なテレビ放送を開始したのがBS1、衛星放送のパイオニアだった。
 その後、デジタル化の曲折を経て、現在はスポーツ、ドキュメンタリー・情報番組・海外報道に特化して放送している。世界に触れようとする場合、BS1が最も豊富な海外ニュース報道を提供しているので、欠かせない貴重な存在だ。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする