2020年10月31日

【セクハラ】 杉田議員のウソ発言に非難高まる 女性を貶める偏見土壌 性被害者にさらなる暴力=吉田磨美

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が性暴力被害者の相談事業を巡って「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言し、その後謝罪した問題で、市民から抗議の声が上がっている。10月3日には東京都内で性暴力に抗議する「フラワーデモ」の主催者らが、杉田議員に抗議する緊急のフラワーデモを開催し、13日には杉田氏に謝罪と発言の撤回、議員辞職を求めるウェブ署名約13万6000筆を提出しようと自民党本部を訪れた。
 杉田議員の問題発言は、杉田議員固有の問題ではない。2018年4月に明らかになった女性記者に対する財務次官のセクシュアルハラスメント事件後、新聞労連は新聞社内外でのセクハラや性暴力の被害者への支援活動に取り組んでいる。「女性はうそをつく」という偏見は「被害者をバッシング」する典型的手法や定説として被害者を苦しめ黙らせてきた。
 新聞労連が昨年4月の提訴段階から支援をしている「長崎市幹部による女性記者に対する性暴力事件」の損害賠償訴訟(長崎地裁)では、幹部と原告の女性記者が以前から男女関係であったかのような噂が流されたことによる二次被害も焦点の一つとして争われている。
 裁判では、女性記者による被害の訴えがうそであることを前提にした噂が市役所や市議会で流されていたとされる。訴訟で、原告は「デマを流されて、私の社会的名誉や記者としての信用は爆破されたように砕けた。病状も悪くなった」「二次被害も性暴力と一体の暴力だという自覚が全然ない」と訴えている。
  事件後女性記者は職場から離れていて、市側から直接聞き取り調査もされずにいた。それにもかかわらず、女性記者がうそをついていることを前提とした噂が広まった背景には、この種の女性の訴えに共通で吹き出してくる「女性はうそをつく」という社会的偏見がベースにあるからではないか。実は、直接利害関係のない噂の受け手側にも女性に対する嫌悪や蔑視、差別の意識があり、当たり前のようにこの手の噂が広まっていく土壌がある。
 今回の杉田議員の発言は女性を貶める、重大な問題だが、読み解くには議員の個人的資質を問題視するだけでは足りない。一人一人が自分ごととして捉え、「このような偏見を生み出す根本は何か」について考えていくことが求められている。
吉田磨美(新聞労連・中央執行委員長)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号


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2020年10月30日

【支部リポート】 香川 それぞれの「8・15」 次世代にどう語り継ぐか=刎田鉱造

                                                   DSCN8108 香川.JPG
 香川支部は2020.8.15、午後2時から4時まで高松で8月集会を持ちました。9人が参加、それぞれの「8・15の思い」を語りました。ヒロシマ被爆手記朗読の会にかかわるYさん。「今年は若い人に引き継いで、新しい活動をする。会の歩みと未来へ語り継ぐための宝の動画を作ります」と。   「語り継ぐがキーワード」と高松空襲の語り部に取り組むSさん。「動員されてきた労働組合の青年にわが町の近代史を知りましょう、と話した。私の仕事は伝えるための資料つくりを急ぐこと」。 午前中、野党の街頭宣伝に参加してきたTさん。「いまの政治のテーマをもっと深めなくちゃあ。若い人であれ、年配者であれ分かったつもりになっていないか」。1939年生まれ、年配のHさん。「このさき10年は生きていられないと思うから、いま私の8.15を若い人に伝えたいがどうしたら……」。
 1945年、国民学校1年生だったIさん。「15日の記憶ない。7月4日の高松空襲、その日予讃線は動いていた。そういう周辺のことをもっと記録していくことが大事だ。いまから私に何ができるか。戦前世代でも戦後世代でもないことにこだわり続ける」。
同じ8・15、9歳だった私。「午後、川へ泳ぎに行く途中、白衣に戦闘帽の兵隊から『戦争は終わった』と聞かされた.玉音放送は覚えがない.先生のいうことがコロッと変わっていた9月の学校。そのままいまも地続きの8月15日」。大学で若い人と学んでいる元民放局員。「最近の子どもたちは感性豊かだ.。きちんと分かってくれるが、じゃあ自分が何かするべきだとはならない。私たちの世代が過去を懐かしく語り継ぐだけではだめで地域や子どもたちにアクションかけよう」。 
 教員組合で頑張る小学校教員。「若い先生たち、平和の旅にいって、ここを学んでほしい、こう思ってほしいから、あなたの感性で見てきてといえるまで15年かかった」とまた「この夏コロナで走る世間のありさまを見て、恐ろしかった」とも。午前中、10月31日(日)に開く「平和ケンポーがだいじ20周年フェス」の相談会に行ってきたYさん。「野外でのオープンなイベントだけれど、そんな場所で人がよってくれるかな心配」といいながらでも「景気悪くなったら戦争という戦前起こったことがまたくるの?ちょっとそれどうよ」と。平和の日々の影でうごめくものを止める「いまが正念場」というみんなの思いがひとつに……。
刎田鉱造
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月29日

【フォトアングル】 原発もスガも去れ 経産省前テントひろば10年目集会=酒井憲太郎

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 9.11経産省前テントひろば10年目大集会が経産省前で開かれた。2011年3月11日東日本大震災の半年後、「撤去すべきは原発」と訴え、経産省前にテントを設置したのが始まりで、2016年8月に強制撤去されたが、本館玄関前に座り込んで脱原発を今も訴え続けて10年となった。安倍が辞任しても、フクシマは終わっていない。「安倍とともに原発も去れ」「スガも去れ」と講談師が講じた。=11日、東京・霞ヶ関の経産省本館正門前で、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月28日

【リアル北朝鮮】 3つの台風 被害甚大 経済の仕切り不可避=文聖姫

 3つの台風が北朝鮮を襲った。被害は甚大だ。朝鮮労働党の金正恩委員長は自ら各被災地に足を運んだ。北朝鮮の最高指導者が被災地を訪れるのは珍しいことだと思われがちだが、実は金委員長は数年前、中朝国境沿いの羅先で水害が起きた際にも、被災地を訪れ、壊された家屋の復旧を軍人らに命じたことがある。
 今回も黄海南北道や咸鏡南北道の被災地をただちに訪れた。黄海北道行きでは自ら車を運転した。咸鏡南道の被災地からは、平壌市の朝鮮労働党員に向け、被災地に来て復旧作業を手伝ってほしいと要請する公開書簡を送った。最高指導者が被災地から支援を要請するなど、私が記憶する限りなかったことだ。それだけ事態が深刻だということだろう。確かに、北朝鮮の代表的な亜鉛産地である剣徳鉱山や3大マグネサイト産地の大興・龍陽・白岩鉱山など、「経済の重要命脈」も被害に合った。
 それでなくても、新型コロナの影響で北朝鮮はいち早く国境を封鎖した。外国との経済関係は寸断状態で、経済は低迷している。今年は2016年に開催された第7回党大会で示された「国家経済発展5カ年戦略」の最終年にあたる。決められた達成目標があったはずだが、それも頓挫しているようだ。
 「朝鮮中央通信」によると、9月8日に開催された党中央軍事委員会で発言した金委員長は、予想もしなかった台風被害によって、国家的に推進してきた年末の闘争課題を見直し、その方向を変更せざるを得ない状況に直面したと語った。年末の経済計画を遂行できなくなったから、方向転換せざるを得ないということだ。北朝鮮では、10月10日の朝鮮労働党創建75周年に際して、平壌に総合病院を建てる計画などがあった。完成をあきらめざるを得ないかもしれない。
 北朝鮮では来年1月、第8回党大会が開かれ、「国家経済発展5カ年計画」が発表される。経済の仕切り直しが不可避な模様だ。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月27日

【メディアウオッチ】安倍政治に敗北したメディア 分断社会に深い亀裂 権力監視 十分に機能せず=徳山喜雄

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2800日におよぶ安倍晋三内閣が退陣、「菅雪崩」現象によって新首相に菅義偉氏が選出された。菅氏は第2次安倍政権以降、一貫して官房長官を務め、「安倍政治の継承と前進」を掲げている。その安倍政治とは、どのようなものだったのか。
端的にいえば、敵と味方を峻別する分断対決型の政治手法をとり、数々の重要法案を「数の力」で強行採決していった。問答無用といわんばかりに異論を排する手法は、政治だけでなくメディアや国民をも分断し、社会に深い亀裂を生むこととなった。
 この背景には、政権側の切り崩しによってジャーナリズムの要諦である権力監視が十分に機能しなかったことがあり、分断対決型の安倍政治にメディアが敗北するという事態になった。
 メディア選別
新政権の発足にあたり、安倍政治の功罪を明らかにし、何を引き継ぎ、何を改めるのか、見極める必要があろう。内政や外交政策はもちろんのことだが、その政治姿勢や国民への向き合い方が厳しく問われている。
 長期政権による奢りと緩みのなか、財務省による公文書改竄にまで発展した森友学園への国有地売却問題や、加計学園の獣医学部新設、首相主催の「桜を見る会」の疑惑について、国民が納得いく説明がいまもってなされていない。知人を優遇するもので、「国政の私物化」と批判されている。
 調査報道などで疑惑が追及されたが、いずれも詰め切れていない。ここには、首相に近いメディアとそうでないメディアを選別する巧みな首相官邸の戦術があり、一致団結できない昨今の分断状況が横たわる。「ほかに、もっとやることがあるだろう」と突き放す一部メディアの論調は、その典型であろう。
 近い報道機関を優遇するメディア選別は、権力監視というジャーナリズムの核心を切り崩していった。権力によるメディアの敗北はいまにはじまったことではないという見方もある。しかし、注目したいのは、「安倍一強」による弊害が政策や国民生活にまで多岐におよんだにもかかわらず、ジャーナリズムの役割が機能しなかったということだ。これは、歴代内閣が権力を抑制的に使ってきた戦後政治において、例をみないのではないか。
 在京6紙をみれば、保守系の「読売、産経、日経新聞」とリベラル系の「朝日、毎日、東京新聞」にくっきりと二極化し、お互いに聞く耳をもたない不毛といえる言論状況になっていった。
単独会見の妙
 手掛かりとして安倍政治が進めた、憲法を改正したともいえる安全保障政策や、エネルギー・原子力政策、歴史問題の対応などを見ながら、「安倍政治とメディア」について考えたい。
 国の根幹ともいえる安保政策は、特定秘密保護法の強行採決にはじまり、憲法9条の解釈改憲が国会審議ではなく閣議で決定。集団的自衛権の一部行使を認める安保関連法が成立し、日本は戦争ができる国にかたちを変えた。この原動力となった のが、首相と近いメディアとの「連携」であったとみられる。
第2次安倍政権は、首相会見を内閣記者会が主催する共同記者会見だけでなく、単独記者会見方式を取り入れた。これによって官邸は、首相の狙いを大きくアピールできるよう時期を見計らいながら単独会見の相手と日取りを調整することになった。その一例としては、2017年、安倍首相は読売新聞と単独会見し憲法改正について縦横に語り、憲法記念日の5月3日に改憲を前提とした特大記事を掲載。「権力と報道の距離」の問題が問われた。
当初は新聞、放送ともに会見の機会が均等に回されていたが、やがて偏るようになった。権力側にとって都合のよい情報が気脈を通じたメディアに流され、それを他のメディアが追いかけることで、安倍政治の独断的なシナリオに沿う流れができていった。
NHKをはじめとする放送においても、安倍政権のメディア選別は常套手段となり、情報と引きかえに取り込まれることとなった。
二元論的な世界
東日本大震災が2011年3月に発生。東京電力福島第一原発が津波の影響で爆発事故を起こし、最悪の場合「東日本壊滅」という事態にまで発展した。
 多くの住民が避難生活を余儀なくされ、甚大な被害がでたにもかかわらず、安倍政権は原発の再稼働を進めた。保守系メディアが原発推進、リベラル系が原発反対の立場を取り、激しく対立した。しかし同時に、保守、リベラルを問わずに「安全神話」を作りあげたメディアへの不信感が、国民に根強くあったことも忘れてはならない。
東京五輪招致が決まったIOC総会では、安倍氏が放射能について「アンダー・コントロール」と発言。これに対して東電関係者は否定的な見方を示している。「アンダー・コントロール」という言葉から、「安全神話」がよみがえってくるようでもあった。
 さらに、愛国か反省かを迫る歴史認識における対立が、社会に決定的な分裂状態を招くことになる。戦後70年の首相談話などをめぐって「歴史修正主義」的な動きがあり、保守系メディアがそれに呼応するということがあった。
 多様な意見があることは健全なことだ。それを否定しているのではない。ただ、安倍政権下での政治、社会状況は、改憲や原発の存廃、歴史認識など国論を二分するテーマで、保守とリベラルが鋭く対立、議論が二項対立化し双方ともに言いっ放しで終わっているケースが随所にみられた。
 このため深い議論や、第三の可能性を探るといった成熟した言論が成立しなくなり、二者択一の極論しかない二元論的な世界に社会が覆われることとなった。お互いに耳を傾けたうえで、切磋琢磨していく。これが民主主義社会のあるべき姿ではないか。
懐柔された報道
 菅首相による新内閣が発足した。安倍政治を「前に進めたい」といい、負の側面には目を向けようとしない。たとえば森友問題について、菅氏は財務省の処分や検察の捜査終結で「すでに結論がでている」と取り合わない。
官房長官時代の朝夕2回の記者会見での質問に対し、「そのような指摘はあたらない」「コメントは控えたい」など、そっけない受け答えをする場面がしばしばみられた。メディア対応は安倍氏以上に高圧的で乱暴という見方もある。
どう対応すべきなのか。現在の言論状況を打破する道として、@権力との適正な距離を保つA二極化、分断の解消につとめるB首相や官房長官らへの「質問力」をアップするC読者、視聴者への説明責任を果たすD女性や外国人が活躍できるよう組織の多様性をはかる、という点を挙げたい。
 首相や官房長官への多くの質問にみられるように、メディアは分断対決型の安倍政治を追及するどころか、懐柔された。巻き返さなければならない。   
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号


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2020年10月26日

【メディアウオッチ】 テレビ朝日労組が民放連脱退 社の意向 強く反映か 菅政権の攻勢に腰砕け=編集部

 テレビ朝日労働組合が7月25日、民放労連(日本民間放送労働組合連合会)から脱退した。テレビキー局労組の労連脱退は初めてのこと。民放労連加盟組合員は約7000人。テレ朝労組700人余が抜ける影響は小さく
ない。
 脱退の理由について同労組は@政治方針等の対立A会費の問題を挙げているが、真の理由は民放労連が加盟しているMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)の文書にあるという。
 大量の派遣切り
 テレビ朝日は昨年暮れ、看板番組の「報道ステーション」を支えてきたベテランの派遣ディレクターらスタッフ10数人に対し体制の刷新≠ネどを理由に「3月末で契約を打ち切る」と一方的に通告した。
 報道によると、スタッフはテレビ朝日労組を通して派遣切り撤回を社側に求めたが、撤回要求に応じなかったため、MICに駆け込んだ。
 相談を受けたMICは2月、国会で院内集会を開き、テレビ朝日に派遣スタッフ契約終了の撤回を求める集会宣言を採択し、スポンサー企業にも送付した。
身分の不安定な派遣労働者を守るためには、当然の行動だが、これが早河洋会長ら経営陣の怒りを買い、労連脱退につながったというのだ。
 テレビ朝日労組の労連脱退には、驚きと疑問を禁じ得ない。
菅のメディア支配
 16日に発足した菅義偉新内閣は、安倍政権の「負の遺産」の一つである「メディア支配」を継承する。菅首相は、これまで以上に強面の権力主義的な手法でメディアへの介入、干渉を強めるに違いない。
 そんな時、同労組の民放労連脱退は、テレビ朝日の番組制作者が菅新政権の攻勢に事実上丸腰≠ナ立ち向かうことを余儀なくさせる。
 歯に衣着せぬコメントで視聴者の信頼を高めている「羽鳥慎一モーニングショー」や「報道ステーション」への影響が出はしないか。
権力の「共犯者」
 労働組合が弱体化すれば、職場で自由にモノが言えなくなり、放送の自由は危機に瀕する。
 新聞労連と研究者がまとめ、新聞協会加盟の新聞・通信・放送129社に送った「ジャーナリズム信頼回復のための六つの提言」には、賛同人として多くの現役の若い記者、女性記者らが実名で署名している。
 メディアは、権力との「共犯者」になってはならない。テレビ朝日労働組合の組合員と番組制作者は、労連脱退がもたらす影響などについて、改めて議論してほしい。
 編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月25日

【今週の風考計】10.25─ベラルーシの「勇気ある女性」3人とタイの「黒シャツ」3本指

ロシアとポーランドに挟まれたベラルーシ共和国の首都ミンスクで、ルカシェンコ大統領の選挙不正を糾し退陣を求める大規模デモが、10週連続して日曜日ごとに開かれ、数万人が参加している。
 治安部隊が浴びせる放水やゴム弾にもめげず、「白・赤・白の旗」を掲げ、「パルチザンの行進」と名づけたデモが繰り広げられている。日本でも連帯のデモが始まった。
いま66歳のルカシェンコ大統領は、1994年に就任以来、この8月には不正選挙で6選を果たし26年間も君臨する。
 「ヨーロッパ最後の独裁者」が組閣する「残忍な政権」の弾圧に抗し、人権擁護と民主化を追求している活動には頭が下がる。
 EU議会は、活動のリーダーであるチハノフスカヤ氏、支援するノーベル文学賞受賞者アレクシエービッチ氏、当局に拘束された音楽家コレスニコワ氏らに、人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」を授与した。「勇気ある女性」3人である。退陣に応じなければ26日からはゼネストに入るという。

眼を東南アジアに転じよう。タイでもプラユット首相の退陣と民主化を求めるデモが拡大している。
 これまた66歳のプラユット首相は、2014年の軍事クーデターを主導し、昨年3月の総選挙で民政に移行したとはいえ、そのまま首相の座につき政権を維持している。
 だが経済の低迷は続き格差は拡大し、さらに野党「新未来党」への解党命令や市民に対する軍兵の無差別殺害事件も起き、バンコクでは連日、2万人規模のデモが続いている。
とくに注目されるのは、「黒シャツ」を着た若者たちが3本の指を掲げ、これまでタブーとされてきた王室批判、すなわち王室関連予算の透明化や不敬罪・最長15年の禁錮刑の見直しなど、王室改革を求める行動にまで踏み込んでいる点だ。
ワチラロンコン国王は68歳、ドイツの高級ホテルを借り切って「ハーレム」を作り、若い女性20人ほどと一緒に暮らしている。全て税金で賄われている。
 しかも国民投票で承認された新憲法案を拒否し、政府に条文の修正を要求するなど、政治への介入は度を超す。国民からの信望は薄れる一方。王室改革を求める声が大きくなるのも無理はない。

アフリカでも大西洋・ギニア湾に面したナイジェリアで、汚職撲滅や市民の安全を求めるデモの隊列に、治安部隊が発砲し死者は50人を超す。長期に市民を虐待してきた警察の特殊部隊(SARS)への怒りは頂点に達し、2週間ほど前から各地で大規模なデモが行われていた。
 デモの拡大を受け、第2次ブハリ政権は首都ラゴスに無期限の都市封鎖を発令した。その数時間後、平和的なデモをしていた約1000人に向けて、またも武装した男たちが発砲した。
政権による人民弾圧に限らず、イエメン内戦、ナゴルノ紛争など、やっている時か。いまやコロナ感染者は世界で4220万人・死者114万人。全てが協力して、コロナウイルスと闘うのが先だろ!(2020/10/25)
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【焦点】 五輪選手村訴訟原告団 裁判長宛て「人証申出」ハガキ提出を開始 TBS「報道特集」が報じ関心高まる=橋詰雅博

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  東京五輪選手村用地を周辺地価よりも9割以上も安く売却したのは違法だとして小池百合子都知事や舛添要一前知事らに約1500億円の損害賠償を都民33人が求めている民事裁判の第10回口頭弁論は、12月8日(火)15時から東京地裁で開かれる。
 これに向けて原告らが集まる「晴海選手村土地投げ売りを正す会」(正す会)は、前回の弁論で証人申請した小池知事、舛添前知事を含む6人の「人証申出」を裁判長宛てに要請するハガキ(写真左)を出す活動を始めた。証人申請を認めて慎重に審理してほしいというハガキが多ければ多いほど、裁判長にプレッシャーがかかる。自分にきたハガキを裁判長がどう扱うか注目される。
 この五輪選手村訴訟をTBS番組「報道特集」が8月22日に報じた(写真下)。放送メディアがこの問題を真っ当に取り上げたのは初めてではないだろうか。原告側弁護士と原告3人が登場して値引き9割のカラクリを明らかにし、金平茂紀キャスターが五輪について疑問を投げかけた番組は、ユーチューブで流れており、正す会によると、22万人超が視聴し、850件を超えるコメントが寄せられた。「TBS報道でかなり広く知られるようになり(次回の裁判の傍聴者は)一般の方も増えるかもしれません。ぜひ傍聴したい方は早めに来られたと思います」(正す会ニュース10月19日付)。
 この訴訟の主な争点は@官制談合疑惑A不当な土地譲渡価格B都市再開発法による違法・脱法行為の3つだ。被告側弁護士は「原告らは特異な都市再開発だと非難するが、独断と偏見による評価に過ぎない」と反論している。
 12月8日の裁判終了後は、裁判官、原告、被告の3者が非公開で協議する。この席で証人申請について話し合いが行われるという。
橋詰雅博
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2020年10月24日

【おすすめ本】 山田朗『帝銀事件と日本の秘密戦』―事件捜査の裏で軍の「秘密戦」を隠蔽=菅原正伯 

 冤罪事件として知られる帝銀事件だが、では、12人もの銀行員たちを青酸化合物で毒殺した真犯人は誰だったのか。犯人の手際のよい毒薬の取り扱いや慣れた殺害のやり口から、捜査本部は旧軍関係者の関与を疑った。
  本書は、その捜査本部の全報告を克明に記録した警視庁捜査第一課・甲斐係長の膨大なメモ(甲斐手記)を整理・分析し、捜査過程を検証した。
 その結果、旧軍には陸軍を中心に毒物を扱う20以上の秘密戦を行う軍機関・部隊が存在し、戦時中、中国大陸で生きた人間(捕虜や住民)を細菌や毒物の実験材料にしていたこと等が、地を這う捜査で明らかとなる。
 だが警察の捜査は大きな壁に直面する。捜査と同時進行で、GHQと旧軍関係者の間で、秘密戦部隊の元隊員を戦犯にしないとの交換条件で、秘密戦の詳細データを米軍に提供する隠蔽工作が進められたからだった。
 隊員たちの口止め工作を先導したのは、秘密戦の総元締め・参謀本部の有末精三中将と七三一部隊の石井四郎部隊長。著者は捜査の焦点をそらす彼らの証言を歴史学者の目で冷静に指摘する。
 捜査が難航したもう一つの壁は、意外にも捜査陣の通常捜査の「盲点」だった。物証が少ないなか「年齢五〇歳前後」「白毛まじりの短髪」という目撃情報が、一人歩きし た。秘密戦の隊員にとって、「変装」は必須の技 術であり、年配者に化けるのは容易だった。これは著者独自の指摘。
 戦後史の深い闇を垣間見せる検証結果の内容だが、事件後、ほどなく日本は再軍備への逆コースに向かう。(新日本出版社2000円)
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2020年10月23日

【スポーツ】 競技者に負担強いる国際大会強行に疑問=大野晃

 国際体操連盟が11月8日に東京で国際大会を開催するという。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で2020年東京五輪1年延期決定後、国内で初めての五輪競技の国際大会である。
  体操の強豪だが、感染が拡大した中国、ロシア、米国の代表が参加して日本代表と競い2000人までの観客を見込んでいる。
 外国代表は72時間以内のウイルス陰性証明書を持参し、入国時にも検査。入国後2週間の待機は免除されるが、公共交通機関を使わずにホテルと競技場の往復などに行動が制限され、毎日検査を受けるとしている。
 出入国制限している国からの入国を特例で認めるが、延期された東京五輪運営の試験とされていることが気になる。
 東京五輪開催の不安を表面的に消すための政治的色彩が強い。競技者の人体実験とまでは言わないが、強引に安全宣伝するのは、GOTOキャンペーンとどこか似ている。
 五輪開催へ向けて、政府や組織委員会の強引さが目立ち始めている。各国代表を検査漬けにして、五輪開催を強行する腹づもりなのだろうか。国際交流が制約されてトップ競技者が悩んでいるのは、世界中で全競技に共通しているが、安心、安全を犠牲にできない。
 五輪の意義は、世界の競技者が競技を通じて交流し、友好連帯を強めることで世界平和につなげることにある。
 開催国や都市の運営能力や競技力を誇示する場ではない。五輪の観衆が求めているのは、競技者の高い技能や仲間とともに競技に取り組む姿勢を目の当たりにして、人類の到達点や国際協調の重要性を再認識することだろう。
 焦らず、入念に、それらの条件を十分に整えることこそ、五輪開催都市の使命である。
 「アスリート・ファースト」を軽々しく口にして、競技者に負担を強いる強引な開催を目指すのは、感染拡大対策に動かずに、自助を強調する政治姿勢に通じる。厳しい監視が必要だろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年10月21日

【オンライン講演】 会見は記者の主戦場 南彰新聞労連委員長が語る=須貝道雄

                                        ◆新聞労連・南彰委員長.◆.jpg
 
 「記者会見は現代の主戦場だ」――新聞労連の南彰委員長(朝日新聞記者=写真=)は8月23日、オンライン講演会「メディアは今、何が問題か」で首相・官房長官会見を取り上げ「政治家の言いっ放し、宣伝の場にしてはならない」と語った。
 政治取材では自宅への夜回りやオフレコ取材が重視され、報道側は「表の場」である記者会見に力を入れない傾向があった。南氏はその転換を訴えた。
政治家はツイッターなどのSNSやネットで市民に直接情報を発信し「やってる感」を演出するようになった。一方で記者会見の無力化、形骸化を狙っていると話した。
 実際に2017年以降、官房長官会見では「公務があるのであと1問」と官邸側が発し、質問制限が露骨になった。その結果、会見は長くても10分か15分で終わっている。
今年8月6日、広島市であった安倍晋三首相の会見では、質問を求めた朝日新聞記者に対し、官邸報道室の職員が「ダメだよ。終わり」と腕をつかんで妨害した。明らかな知る権利の侵害だった。
 記者会見がネット中継され、可視化される中で「記者は質問を通じて、市民の期待に応え、報道への信頼を勝ち取っていくことが大事。その意味で会見 は主戦場だ」と南氏は繰り返した。
官房長官会見は元々、時間制限無しがルールだったという。菅義偉官房長官のもとで制限が生まれた。「官房長官が代わったら、時間制限無しのルールに戻す必要がある」と呼び掛けた。
 「桜を見る会」をめぐり安倍首相への疑惑が深まった19年11月、報道各社の官邸キャップは首相と中華料理店で懇談をした。その後も総理番、ベテラン記者と懇談が続いた。世間からは「正式な会見を要求すべきだ」と批判の声があがった。
 南氏はこの事態を「官邸側の作戦勝ち」と見ている。懇談の日程は官邸側が設定する。「この時期に懇談をすればメディアを共犯者にできるし、メディア不信もかき立てることができる」と分析。報道側はその意図を見抜き、「作戦」に乗らず、記者会見を機能させていくことが大事だと強調。「会見を、ある意味で記者の怖さ≠伝えていく場にしていくことが重要だ」と語った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
 
  

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2020年10月20日

【お知らせ】被災から10年目―福島とつながるZoom交流会 11月7日(土) 午後2時から4時

  2011年3月の東日本大震災から9年7カ月が過ぎた。原発の炉心溶融という大事故は地域住民に甚大な被害を与えた。もう、あの素朴で美しい福島の農村は戻ってこないのだろうか。文明が破壊される様を目撃した私たちは何をどう考え、行動したらよいのか。様々な迷いと疑問が交錯する。
 その中で、被ばくした牛の命を断ってはならないと、一念発起した女性がいる。福島原発で危険な作業をする人々をずっと追いかけてきた新聞記者がいる。現場を知るお二人から率直なお話をうかがい、被災10年を間もなく迎える福島のこれからをともに考えていきたい。

お話をする方
谷さつきさん(ふるさとと心を守る友の会代表)
片山夏子さん(東京新聞・福島特別支局記者)

参加ご希望の方はPeatixを通じて参加費500円をお支払いください。
(1)http://ptix.at/Nf0V3Kをクリックする(2)チケットを申し込むをクリック。参加券の枚数を選ぶ=金額の確定(3)支払いに進む。初めてPeatixを利用する人はここでアカウントを作成。名前、メルアド、自分独自のパスワードを入力し、ログインする(4)次に移ると、カードかコンビニかなど、支払い手段の選択。支払いを終える(5)交流会のZoomの配信URLは前日11月6日にメールでご連絡

◎お二人の略歴
◆谷咲月(たに・さつき):静岡出身。津田塾大学卒業後、海外で国際紛争について学ぶ。東京で第1〜第3セクターの仕事を転々とする中、2011年4月旧警戒区域内の被災農家からの依頼を受け、福島へ。そのままだと荒れてしまう田畑に柵を作り、飼い主を探して放浪していた牛を誘導して入れ、草木を食べてもらうエコ草刈りを支援。2012年非営利一般社団法人ふるさとと心を守る友の会設立。
 2013年〜大熊町帰還困難区域内で、依頼のあった計8haの農地を牛力で回復・保全。2017年ふくしま復興塾第5期グランプリ、2018年日本トルコ文化交流会日本復興の光大賞受賞。2019年自給率100%を目指し、冬季の飼料(保存草)作りスタート。2020年もーもーガーデン那須オープン、耕作放棄地を解消。牛と作物の実証研究とIoT化を進め、災害にも強い「人・動物・その他自然」が共存共栄する里山モデルを構築中。

◆片山夏子(かたやま・なつこ):中日新聞東京本社(東京新聞)の福島特別支局の記者。大学卒業後、化粧品会社の営業、ニートを経て、埼玉新聞で主に埼玉県警を担当。出生前診断の連載「いのち生まれる時に」でファルマシア・アップジョン医学記事賞の特別賞受賞。中日新聞入社後、東京社会部遊軍や警視庁などを担当。特別報道部では修復腎(病気腎)移植など臓器移植問題や原発作業員の労災問題を取材。名古屋社会部の時に、東日本大震災が起きる。
 震災翌日から東京電力や原子力安全・保安院などを取材。同年8月から東京社会部原発班で、作業員の日常や収束作業、家族への思いなどを綴った「ふくしま作業員日誌」を連載中。同連載が2020年2月、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞を受賞。連載や9年間の福島第一の作業、国の動き、作業員一人一人の人間物語をまとめた書籍『ふくしま原発作業員日誌〜イチエフの真実、9年間の記録〜』(朝日新聞出版)が講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

◎交流会はビデオ会議システムZoomを使って開きます。参加費をお支払いいただいた方に前日の11月6日、配信URLをメールでお送りします。受け取ったURLを当日、パソコン画面でクリックすると、自働的にZoomの画面が出てきて、参加できます。

◎主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101-0061東京都千代田区神田三崎町3−10−15富士ビル501号
電話03・6272・9781 ファクス03・6272・9782
メールoffice@jcj.sakura.ne.jp ブログhttp://jcj-daily.seesaa.net/
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2020年10月19日

【月刊マスコミ評・出版】 戦争阻止こそジャーナリズムの本道=荒屋敷 宏

 菅義偉首相の疑惑が早くも浮上している。「週刊文春」9月24日号「徹底取材 新総理で誰が笑うのか 菅義偉『親密企業』がGoToイート受注」。または「週刊新潮」同の「菅総理」の裏街道―「河井案里」に1億5000万円投下の首謀者=\などなど。
 「『助言したらパッと採用』経済ブレーンは竹中平蔵」と、菅首相と竹中平蔵パソナグループ会長との親密ぶりに迫った「文春砲」が鋭い。同誌で某政治部デスクは「菅氏が『絶対にやる』と力を込めているのが、省庁の縦割りを打破するためのデジタル庁の新設。…竹中氏がロイター通信の取材で『デジタル庁みたいなものを期限付きで作ればいい』と語っているのです」と指摘している。
 菅首相と竹中会長との関係は、2005年の小泉政権時代、竹中総務相(当時)に菅氏が副大臣として仕えた時期にまでさかのぼるという。安倍政権がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用で、国債から株式主体の運用に舵を切った背景には、竹中会長から菅官房長官(当時)への助言があったという。
 この暗部を最近まで口外しなかった政治部デスクの役割とは何なのだろうか。確かに、菅首相誕生で明るみに出す意義は強まった。スクープ記者には、ネタを温める作法がある。しかし、株価下落による年金損失に心を痛める国民からすれば、政策立案過程の隠ぺいにマスコミが加担したように見えてしまう。報道各社が新宿御苑で「桜を見る会」を取材しながら、当初は、「しんぶん赤旗」日曜版編集部以外に疑問を持たなかった構図と似通ったものを感じてしまう。
 戦争阻止は、ジャーナリストとしての最高の役割であるはずだ。見過ごせないのは、日本政府が相手国の領土内の施設(敵基地)を攻撃する能力、いわゆる「敵基地攻撃能力」保有の検討へ動きだしたことだ。菅首相は16日の組閣後、安倍談話を踏まえて、岸信夫防衛相に「敵基地攻撃能力」など安全保障政策の方針を年末までに策定するよう指示した。
 「世界」10月号(岩波書店)の特集「攻撃する自衛隊」は、重要な論点を提出している。半田滋氏は、自衛隊が現時点で「敵基地攻撃能力」を保有し、「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を受けて、防衛省が長射程のミサイル導入を始めたことを指摘している。政治部デスクの机の中で記者のメモが温められているうちに、戦争に突入していたという悪夢を現実化しないように警鐘を乱打すべき時だ。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
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2020年10月18日

【今週の風考計】10.18─菅政権1カ月:<2人の杉田>が象徴する監視・差別の怖さ

首相動静によると、朝は6時45分から官邸内を散歩。1時間後には永田町のホテル内レストランで首相好みの有識者と朝食懇談。そして昼も夜も連日、赤坂や紀尾井町の料理店で政官財の関係者と会食。午後9時前後には議員宿舎に帰宅。
 会食や面会で確認された民間人は70人を超えるという。だが9月16日の就任会見から、1カ月たっても記者会見は開かず、所信表明すらない。18日からはコロナ感染者が日本の4倍35万人もいるインドネシアなど、4日間も外遊する。

この間にやることがエゲツナイ。日本学術会議が推薦した名簿を「見ていない」のに、6人を任命拒否。政府方針に異を唱えた学者を排除し、憲法が保障する「学問の自由」を侵害する暴挙に手を染める。
 首相は「総合的、俯瞰的に決めた」と、説明にもならぬ説明ではぐらかす。あげくに自民党は「任命拒否」から目をそらすため、学術会議の制度見直しに論議をすり替える。
 政権の意に沿えば重用し、盾突けば冷や飯を食わせる―安倍政権下での強権的な手法まで、菅首相は「継承」する。森友問題の再調査は拒否。桜を見る会は中止する一方、サクラ疑惑にはフタをする。

その陰で動く、官邸内に君臨するもう一人の人物の存在がクローズアップされた。杉田和博官房副長官である。学術会議105人の推薦名簿から排除する6人を選別、任命拒否の筋書きを用意し、決裁前に菅首相に報告、名前は確認されていたことが明らかとなった。
杉田官房副長官は、東大法学部卒、警察庁で警備・公安畑を歩み警備局長を務めた“公安のドン”といわれるエリート。2012年の第2次安倍内閣が誕生と同時に官房副長官として官邸入り。菅政権誕生後も引き続き同ポストを務めている。
官房長官時代から官僚支配に力を注いできた菅首相だが、その中心的役割を担ったのが、杉田官房副長官である。2017年からは官僚人事を掌握する内閣人事局の局長も兼務。これまでに公安警察を使って官僚を監視下に置いてきた。
 さらには政権と敵対するメディアや政権批判の学者・知識人にも、介入の隙を伺い監視の目を光らせている。代表的なのがNHK「クローズアップ現代」のキャスター降板事件だ。また東京新聞の望月衣塑子記者の身辺を、公安が探っていたというのも有名な話。

さてもう一人、杉田姓を持つ人物がいる。自民党の杉田水脈・衆議院議員である。女性の身でありながら、女性への性暴力に関連し「女性はいくらでもウソをつける」と発言し、総スカンを食らっている。
 これまでにも性的少数者のカップルに「生産性がないから問題だ」などの差別発言や伊藤詩織さんへのバッシングを繰り返してきた。
 杉田議員は、17年総選挙に際し安倍首相の推薦で「維新」から自民党に鞍替えし、比例中国ブロック単独候補に格上げして当選。
「性暴力の根絶」を掲げる菅政権・自民党にもかかわらず、女性への差別発言を繰り返す自党の議員に、厳しい対応するどころか、「本人の言葉づかい」の問題と矮小化する。
 さらには「フラワーデモ」主催団体が13日、杉田議員の議員辞職などを求める13万6000筆の署名すら、受け取りを拒否する始末。
 <2人の杉田>が示す、国民に対する監視と差別を放任する仕組みは、はからずも菅政権の本質をあぶりだしている。(2020/10/18)
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2020年10月17日

大阪都構想 七つの大罪 オンライン学習講演会=大原 真

幸田泉さん(ジャーナリスト).jpg  大阪都構想七つの大罪・パソコンの画面.jpg  
 大阪市をなくして四つの特別区に分割する「住民投票」が11月1日に行われる。それを進める維新の実態や「都構想」の中身を全国の皆さんに知ってもらうため、学習講演会が9月13日にオンラインで開催された。
 JCJの須貝道雄事務局長から「コロナ禍のもとでネットを使った企画は4度目になる。大阪の2人の講師からしっかり学んでほしい」と開会あいさつがあった。
最初にジャーナリストの幸田泉さん(写真)が「大阪都構想七つの大罪」のテーマで講演をした。「(罪の数は)七つどころではないが、絞り込んだ。維新は大阪市をなくし、四つの特別区という半人前の自治体をつくり、大阪市のお金と権限をむしり取ろうとしている」と指摘。@民主主義のつまみ食いA不都合な真実の隠蔽B役所の形がいびつになるC市民サービス維持を偽装D科学的データのでっち上げE財産目当ての結婚Fイメージ戦略――の七点について一つ一つ解き明かした。
 そして最後に、今回評価できるのは投票用紙に「大阪市の廃止」が明記されたことだと語り、「吉村人気」や維新への期待もあるが、この事実を伝えれば大阪市を守ることができると訴えた。
 次に、大阪市をよくする会の事務局次長の中山直和さんから「維新の歴史と大阪のたたかい」をテーマに講演があった。維新が掲げる「都構想」による成長戦略もコロナ禍で破綻してきたが、彼らの綱領の中心は「都構想」実現であり執念を燃やしている。維新はわずかな実績を作りながら、嘘とフェイクを垂れ流して府民を惑わしてきたと現状を分析した。
 一例をあげれば、高校授業料無償化を行う一方で、私学助成金を削減し、公立高校の統廃合を進めている。住民には授業料無償化以外は見えにくい。高齢者の中には「自分はいいが、子や孫のために(維新に)頑張ってほしい」などの声が少なくない。
 吉村人気は高いが、大阪市を廃止することとは別だ。前回も多くの市民が足を運んで67%の投票率で勝利した。勝手連的に市民がビラをつくり運動に参加した。今回もそうした状況を作れば必ず勝つと信じていると締めくくった。
 その後、大阪のメディア状況などの質疑応答があり終了した。 
 大原 真(大阪都構想ストップ共同闘争本部事務局長)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
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2020年10月16日

【月刊マスコミ評・新聞】 安倍政治の「総括」なき新内閣=白垣詔男

 9月16日、「菅義偉新首相」が誕生した。一部で「アベノママ内閣」と言われる。実質的に首相が決まる9月14日の自民党総裁選は党大会を開かず両院議員総会で決めた。「石破氏有利な党大会は開きたくない」という安倍首相の感情論を最優先にして全国自民党員の投票の権利をないがしろにしたものだ。
 17日の朝刊各紙社説は「新内閣に望む」一色。その中で好対照だったのが西日本「まずコロナ対策に万全を」と「カネより命」に重点を置いていたのに対し読売は「経済復活へ困難な課題に挑め」と「命よりカネ」を力説していた。朝日は「安倍政治の焼き直しはご免だ」、毎日「まず強引な手法の転換を」と、いずれも「アベノママ内閣」の否定を求めた。
 社説としては自民党総裁が決まった翌15日のほうが各社の姿勢がはっきりしており読み応えがあった。
 朝日「総括なき圧勝の危うさ」、西日本「『総括なき継承』の危うさ」、毎日「継承ありきの異様な圧勝」と新総裁に対して「危うさ」「異様さ」を指摘、疑問を投げかけた。もちろん、「安倍首相の負の遺産、モリ、カケ、桜」など解明しなければならない諸問題にも言及する。
 対して「政府広報紙」の読売は「社会に安心感を取り戻したい」と、新型コロナウイルス問題に対する安倍前首相を「後手に回った」と指摘はするが、「負の遺産」は不問。「安倍首相信奉者」産経は「危機に立つ首相の自覚を 派閥にとらわれぬ人事を貫け」の見出しで、中朝脅威論を強調。両紙とも総裁が変わっても、政権に耳の痛いことは素通り。
 産経は「安倍氏をねぎらいたい」の小見出しで「憲政史上最長の在任で、身を削るようにして国の舵(かじ)取りを担った楼をねぎらいたい」と、政治的成果がほとんどなく「長いだけがレガシー(遺産)」安倍氏を最大級に持ち上げているのはいかがなものか。
 菅発言で非常に危険な内容を含んでいるのが13日のテレビ番組で「政策の方向性に反対する幹部は移動してもらう」だ。14日の毎日夕刊「近事片々」に「菅氏。政府方針に反対の官僚は異動させると強調。忖度しろよ、とでも」。菅氏が「安倍の負の遺産をそのまま継承する」と声高に叫んだものと指摘した。安倍氏以上の独裁政権になる恐れがある。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
 
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2020年10月15日

【焦点】 デジタル庁こそが監視社会の司令塔だ=橋詰雅博

 菅義偉首相の肝いりで来年新設のデジタル庁は、国や地方の行政データのデジタル化を進め、それを一元管理する。狙いはいまだ2割にとどまるマイナンバーカードの普及に加えてもう一つスーパーシティ計画の推進だ。この計画は国家戦略特区にまるごと未来都市をつくる≠ニふれ込む政官民学あげての大型プロジェクト。しかし、その半面では、役所に蓄積された個人情報はもとよりIT企業のビックデータまでもデジタル庁に集められ、監視社会が強化される危険性がある。
     ◆
 街中を自動運転の乗り物がスイスイと走り、遠隔による医療・教育が受けられ、スマホ決済で現金不要、ドローンが配送、行政手続きがスマホで済ませられる―。政府はAI(人工知能)など最先端技術を活用したスーパーシティのイメージをこんな風に喧伝している。
竹中平蔵が旗振り役
 本格的な実現は2030年ごろとするこの未来都市の旗振り役は、東洋大の竹中平蔵教授だ。竹中教授は小泉純一郎内閣時代の総務相で、菅首相はその時、総務省副大臣だった。竹中氏は現在、首相の経済ブレーンである。竹中教授は「(5月に成立のスーパーシティ法)が早く成立していれば、コロナ危機への対応が違っていただろう」とツイッターに投稿している。ただ、具体的な対応は何も示さなかった。
 計画進める民間側を束ねる三菱UFJリサーチ&コンサルティングの村林聡社長は、9月8日の「アフターコロナを考える」Webライブセミナーで、デジタル庁創設にふれている。
 「昨年暮れ『デジタル・ガバメント実行計画』(行政サービスが最初から最後までデジタルで完結される行政サービスの100%デジタル化の実現)が閣議決定されました。これを進めるためには『デジタル庁』といった権限のある組織をつくり、司令塔にする。国のリーダーシップが必要です」
全個人データを入手
 政府側もスーパーシティ計画に入れ込む。6月末のオンライン特別セミナーに登場した内閣府地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は、こう語った。
 「中国のアリババ系列会社が行政と連携する杭州市では、交通違反や渋滞対策にAIを活用し、無人コンビニで顔認証でのキャッシュレス支払いを実施している。ものすごい勢いで技術を使いこんで熟度をあげて、それを広げている。日本にも必要な技術はほぼそろっているが、街で住民を相手に複合サービスを実施した実績がない。関わる事業者が利益を得られるビジネスモデルを構築するためにも早く実践する場が欲しい」
 デジタル庁が中核となるスーパーシティ計画だが、大きな問題がある。スーパーシティ実現には個人情報が必須だ。国家戦略特区では民間事業者が国や地方の個人情報の提供を受ける。事業者もビジネスで得た個人情報などからなるビックデータを持っている。 
 デジタル庁は特区の事業者の全個人情報の入手可能となる。事業者が得られた個人情報をビジネスに不正利用するかもしれないし、なによりデジタル庁が個人情報の管理をどういう風にするのか、特区住民とどう合意にするのかがあいまいのままだ。知らぬ間にプライバシーを侵害された上に、積み上げられた個人データをもとに政府から監視を強化されかねない。
トロントは計画中止
 中国を始め欧米ではスーパーシティと同じような未来都市の実証実験がスタートしているが、住民の反対で計画が中止に追い込まれた都市がある。カナダのトロント市だ。
 未来都市を運営するグーグルの子会社は、データ収集のため街中に多くの監視カメラを設置するなどを市や住民に提案した。
 しかし、プライバー侵害発生時の対応計画や個人データ保管に関する明確な方法の必要性について、住民への説明が不十分だった。このため住民の同意が得られなかった。また、コロナ禍の影響で都市への人の流入が減少し、利益が見込めないとグーグルは判断。こうしたことで5月に撤退した。運営会社が身を引いたことでトロント市は計画を断念せざるを得なかった。
 カギを握る個人データの管理について、村林社長は「個人データの扱い方では、誰が何のためにデータを使うのか説明し、本人の了解を得て進めるのが原則だ。(日本が手本とする)エストニアは誰がいつ自分の情報を使ったか、住民が請求すれば公開している。日本でもそういう対策をする必要がある」と指摘する。
 だが、その前に欧州と比べて不十分な国民のプライバシーが守られる規制・ルールづくりをすべきだろう。これをないがしろにして、スーパーシティ計画を隠れ蓑に監視社会が進められ、築かれようとしている。
 来年3月ごろには国家戦略特区に指定されて、スーパーシティの実証実験が行われる5自治体が決まる見込みだ。
橋詰雅博
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2020年10月14日

【新型コロナ禍】 ワクチン接種で克服はウソ すべての人に効かず 副作用も=橋詰雅博

 政府は2021年前半までに全国民分の新型コロナワクチンを確保することを目指している。安倍晋三前首相はワクチンさえ接種すれば、さもコロナを克服できるようなニュアンスが感じられる発言をしている。まずは量の確保だと、日本も欧米の後を追いワクチン争奪戦に参入。いままでに英アストラゼネカと米ファイザーの2社と各1億2000回分の供給を受けることで基本合意した。加えて米モデルナとは約4000万回分の供給を受けられるよう交渉中だ。
 しかし、開発されたワクチンがすべての人に効くわけではない。新型コロナウイルスの変異のスピードが恐ろしく速いからだ。ノーベル賞学者の本庶佑さんはこう警告している。
〈(新型コロナは)中国で発生して以来、世界各地に広がっていく過程で変異を繰り返し、すでに数百の変異があるという報告があります。
 ワクチンが完成しても、開発当初とは異なる遺伝子のウイルスが蔓延しているかもしれない。そうなると、一部ウイルスにしか効かないことも十分にあり得ます〉(『月刊文藝春秋』8月号)
 さらに副作用の問題もある。現にアストラゼネカは臨床試験で被験者に重い副作用が発生したため治験を一時中断した。その後、再開したが、ワクチン開発をめぐっては治験の簡略化で安全性が置き去りにされていると指摘する専門家は少なくない。またデング熱では、ワクチン接種がかえって重い症状を引き起こした報告もある。新型コロナで同じようなケースが起きる可能性もある。
 ワクチン接種でもコロナ罹患は防げない。副作用もある。政府に騙されてはいけない。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
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2020年10月13日

【スポーツ】 コロナ禍を契機に競技環境が好転も=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大対策で、観客制限などを余儀なくされたプロ競技が、未曽有のシーズンの大詰めを迎えている。
大坂なおみが全米オープンテニスで2年ぶり2回目の優勝を飾ったのに続き、極端に試合数を減らした米大リーグで、復活したダルビッシュ投手が8勝をあげ、日本人史上初の最多勝に輝いて、カブスの地区優勝に貢献した。感染拡大の勢いが止まらぬ米国で、日本人競技者が活躍した。
 日本のプロ野球では、巨人の菅野投手が開幕から最長新記録の13連勝し、セ・リーグ独走を支えた。
 大相撲では、中止となった夏場所で朝乃山が大関昇進したのに続き、秋場所で正代が初優勝して大関となった。
 一方、プロ野球の阪神は、集団感染の相次ぐ発生で波に乗れず、大相撲は、三段目力士が感染死する不幸に見舞われ、秋場所は両横綱はじめ休場者続出だった。
 コロナ禍の明暗を分けたのは、練習不足が避けられない中での、競技者の気構えと鍛錬の工夫や集団の力を引き出すことにあった。
 総合力を競ったプロ野球では、出場機会を生かした若い力の伸長が目立った。ピンチをチャンスに変える頼もしさを持っていた。それはベテランの冷静な意欲にも表れていた。
 自律的な生活態度とプレーへの集中が重要だった。どこかに甘えやミスがあれば、成功は覚束ない。古い体質からの脱却が不可欠になった。
 観客制限は、貴重な観戦機会となったファンにプレーへの集中を促し、静かだが、熱っぽい応援が続いた。競技者も、ファンも、競技を楽しむ喜びを、改めて実感したようだ。
 それは、球団などの経営に大きな影響を及ぼした。利益優先から、競技者やファン第一の知恵が求められた。中止に追い込まれた社会人、大学、高校では、競技会のあり方が見直されている。
 政府の無策による不自由なコロナ禍を契機に、スポーツ界の先導で、競技環境が好転する可能性もある。
大野晃(スポーツジャーナリスト)

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