2020年10月09日

【沖縄トピックス】辺野古、沖縄の民意は底堅い 強硬路線がつまずけば菅政権のダメージに=阿部岳

 振り返っても、安倍晋三氏が沖縄に関して信念を語った記憶がない。「沖縄に寄り添う」と言いながら、沖縄に対する構造的差別を強化し、基地を固定化した。負担解消へ「できることは全てやる」と言ったが、実態は「できないことを全てやらなかった」だけだった。
 直前の民主党政権は辺野古新基地建設が鬼門となり、自壊した。沖縄の強固な反対と米国の強硬な要求の板挟み。やっかいで避けられない命題を、安倍氏は菅義偉氏に丸投げした。
 その菅氏は沖縄対策の全てを辺野古から逆算して取り仕切った。政権発足当初こそ「できる限り県民に理解してもらえる方向で」などと手探りだったが、徐々にアメとムチをふるっていく。
 当時の仲井真弘多県知事に公約違反の基地受け入れをのませる局面では、振興予算増額などのアメをばらまいた。仲井真氏が次の知事選で新基地反対の翁長雄志氏に敗れると、菅氏はムチを握り締めた。
 選挙で相次いで示される反対の民意にも関わらず「粛々と進める」と繰り返し、翁長氏から「上から目線だ」と批判された。わずかに試みられた対話の期間、日本の高度経済成長の陰で米軍が沖縄の土地を強制接収していた歴史を翁長氏が説いても、菅氏は「私は戦後生まれなので、歴史を持ち出されたら困る」などと都合の悪い事実から目を背けた。
 各省庁の権限を総動員して脱法的に行政手続きを進め、現場には本土の警察官や海上保安官を投入して市民の抵抗を強制排除した。菅氏でなければ新基地工事はここまで進まなかっただろう。
 一方、安倍氏になかった哲学が菅氏にあるかと言えば、それもない。菅氏に備わっているのは米国に隷従し、沖縄の反対を徹底的に踏みつぶそうとするサディスティックな情念だけである。
 対する沖縄の反対の民意はなお底堅い。軟弱地盤など工事の実現性を揺るがす技術的困難も、厳然とそこにあり続ける。
 ここまで強硬路線を主導してきた菅氏は、今さら撤退も修正もできない。硬直した方針は、案外もろいものである。首相肝いりの案件でつまずけば、新政権は大きなダメージを負うことになる。
阿部岳(沖縄タイムス編集委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 九州・沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする