2020年10月19日

【月刊マスコミ評・出版】 戦争阻止こそジャーナリズムの本道=荒屋敷 宏

 菅義偉首相の疑惑が早くも浮上している。「週刊文春」9月24日号「徹底取材 新総理で誰が笑うのか 菅義偉『親密企業』がGoToイート受注」。または「週刊新潮」同の「菅総理」の裏街道―「河井案里」に1億5000万円投下の首謀者=\などなど。
 「『助言したらパッと採用』経済ブレーンは竹中平蔵」と、菅首相と竹中平蔵パソナグループ会長との親密ぶりに迫った「文春砲」が鋭い。同誌で某政治部デスクは「菅氏が『絶対にやる』と力を込めているのが、省庁の縦割りを打破するためのデジタル庁の新設。…竹中氏がロイター通信の取材で『デジタル庁みたいなものを期限付きで作ればいい』と語っているのです」と指摘している。
 菅首相と竹中会長との関係は、2005年の小泉政権時代、竹中総務相(当時)に菅氏が副大臣として仕えた時期にまでさかのぼるという。安倍政権がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用で、国債から株式主体の運用に舵を切った背景には、竹中会長から菅官房長官(当時)への助言があったという。
 この暗部を最近まで口外しなかった政治部デスクの役割とは何なのだろうか。確かに、菅首相誕生で明るみに出す意義は強まった。スクープ記者には、ネタを温める作法がある。しかし、株価下落による年金損失に心を痛める国民からすれば、政策立案過程の隠ぺいにマスコミが加担したように見えてしまう。報道各社が新宿御苑で「桜を見る会」を取材しながら、当初は、「しんぶん赤旗」日曜版編集部以外に疑問を持たなかった構図と似通ったものを感じてしまう。
 戦争阻止は、ジャーナリストとしての最高の役割であるはずだ。見過ごせないのは、日本政府が相手国の領土内の施設(敵基地)を攻撃する能力、いわゆる「敵基地攻撃能力」保有の検討へ動きだしたことだ。菅首相は16日の組閣後、安倍談話を踏まえて、岸信夫防衛相に「敵基地攻撃能力」など安全保障政策の方針を年末までに策定するよう指示した。
 「世界」10月号(岩波書店)の特集「攻撃する自衛隊」は、重要な論点を提出している。半田滋氏は、自衛隊が現時点で「敵基地攻撃能力」を保有し、「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を受けて、防衛省が長射程のミサイル導入を始めたことを指摘している。政治部デスクの机の中で記者のメモが温められているうちに、戦争に突入していたという悪夢を現実化しないように警鐘を乱打すべき時だ。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする