2020年11月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 学術会議めぐる報道のスタンス=徳山喜雄

 日本学術会議が新会員として推薦した候補者105人のうち、6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、波紋が広がりつづけている。
 学術会議人事への政治介入は、学問の自由を保障する憲法に違反する行為との声があがる。しかし、在京各紙はこの問題について複数回の社説を書いているものの、足並みがそろっているわけではない。社説に各紙のスタンスが鮮明だ。
 朝日は「法の趣旨をねじ曲げ、人事権を恣意的に行使することによって、独立・中立性が求められる組織を自由に操ろうとする」(10月3日)、毎日は「過去の発言に基づいて意に沿わない学者を人事で排除する意図があったとすれば、憲法23条が保障する『学問の自由』を侵害しかねない。首相は今回の措置を撤回すべきだ」(同)とし、両紙ともに厳しく批判した。
  一方、産経は「学問の自由の侵害には当たらない。……任命権は菅義偉首相にあるのだから当然だ」としたうえで、「学術会議は、活動内容などを抜本的に改革すべきである」(同)と、任命拒否を擁護した。
 読売は即座に反応せずに3日遅れで社説を掲載。「政府が十分に説明していないのは問題だ」としつつも、「6人は自由な学問や研究の機会を奪われたわけではなく、野党の指摘は的外れだろう。……会員の専攻過程や、会議の運営が不透明だという指摘は多い」(10月6日)とし、学術会議の改善を求めた。
 菅政権になったが、リベラル系と保守系メディアの二極化した論調は相変わらずのようだ。安倍晋三政権時代のメディアの構図がそのまま引き継がれるということか。
 菅首相は「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」といいつつも、学術会議から提出された105人の推薦者名簿を「見ていない」とする。目にしたのは99人のリストだけというなら、「総合的、俯瞰的」という言葉と矛盾しないか。
 除外されたのは、特定秘密保護法や安全保障関連法など安倍政権の政策に異を唱えた学者である。問題の核心はなぜ6人の任命拒否をしたのか、だれが、いつ、どんな理由で決めたのかということだ。首相には国民への丁寧な説明責任がある。
 どのような立場であろうが、ここはすべての報道機関が追及すべきところだ。    
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号


posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする