2020年11月13日

【おすすめ本】 南彰『政治不信 権力とメディアの関係を問い直す』―変質する権力に抗う取材の再構築を=藤森 研(JCJ代表委員)

本書の内容は、首相会見、メディアとジェンダー、テレビの現在など多岐にわたるが、貫く問題意識は明確だ。権力の変質に古い取材慣行が対抗し得ていない現状を、どう建て直すか、である。
 権力の変質とは、行政改革の末、安倍政権で完成した官邸一極集中だ。ネット化が進み既存メディアは特権を失って力をそがれている。この機をとらえ、為政者は分断・攻勢に出ている。
 たとえば内閣広報官の権限強化だ。菅官房長官会見で果敢な質問をする東京新聞・望月衣塑子記者に対し、当局は質問妨害も辞さなかった。ネット等のメディアを選別する首相の単独インタビューは、読売紙上での改憲表明の事態まで生んだ。
 これに対し報道側は旧態依然。望月記者の頑張りに「官邸側が機嫌を損ね、取材に応じる機会が減っている」と困惑する官邸クラブ員さえいる。
「夜回りなどのオフレコ取材で特定の記者を排 除するよう言われた」記者も少なくない。権力から情報をいただくことに慣れたメディアは、 政権の攻勢に受け身一方だ。
 どうすべきか。「馴れ合い」とも映る夜回りや懇談で、情報をねだる旧来の取材慣行を見直し、公的な記者会見で情報をきちんと出させる。質問制限には団結して闘う。そうしたジャーナリズムの姿勢を再構築することが今、大切だ。
 著者自身、かつては官房長官会見で望月記者の同志として、その後は新聞労連委員長として、それを実践してきた。朝日新聞政治部に戻り、前線復帰の著者の活躍も期待させる書だ。
(朝日新書790円)
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする