2021年01月18日

【月刊マスコミ評・放送】 Eテレ売却論 NHKに圧力?=諸川麻衣

  今年NHKでは、次期中期経営計画での衛星やラジオ第二の波の整理・統合、受信料制度の見直し、受信料収入に対するネット関連予算の比率の見直しなど、制度の幾つかが論議の的となった。
  波の削減については既に本紙七五一号で取り上げられたが、年の瀬に新たな論点=「Eテレ売却論」が出来した。主張しているのは、菅政権の内閣官房参与に起用された、元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授。高橋氏は、Eテレは視聴率が低いので、テレビとして放送するよりはネットで配信し、電波は売却して携帯などの通信に使えばよい、そうすればNHKの波を減らせて受信料も半分程度に下げられる、と言う。
 この主張が公になると、「最も公共放送らしいEテレ売却なんて馬鹿げてる」(堀潤氏)、「Eテレは、色んな年齢や状況の人々に文化へのアクセスを提供する大切なインフラ。視聴率だけでは評価などできません」(ロバート・キャンベル氏)、「今のNHKの報道には山ほど批判があるが、教育テレビをなくすと言われれば、NHKを守れという運動を始めるしかない」(山口二郎氏)といった批判の声が上がった。
 さらにツイッターにも視聴者から、「わざわざ受信料払ってるのは本当にEテレのため」「子育て世代を敵に回すのは、やめてください」といった声が多々寄せられ、「#Eテレのために受信料払ってる」というハッシュタグがトレンド二位に入った。前田NHK会長も「教育テレビはNHKらしさの一つの象徴だと思う。それを資産売却すればいいという話には全くならない」と述べている。
 これに対し高橋氏は、「Eテレの売却とは、Eテレの周波数帯の売却であり、Eテレの番組制作コンテンツの売却ではない」「Eテレの番組をインターネットで提供でき…インターネットを活用した『GIGAスクール』と整合的になる」と反論している。自説への批判は、「波の売却=コンテンツ消滅」と誤解しているというのだ。
 しかし、批判の多くは、二つをきちんと区別している。ツイッター上の「スマホやPCにアクセスが難しい子どもでも“2”押すだけで観れるんだよ」という声は、テレビとネットの特性の違い、前者の存在意義を分かりやすく示している。
 そもそも高橋氏はなぜEテレだけを売却候補に挙げたのだろう?まじめな福祉・教養番組やドキュメンタリーで社会をしっかり見つめているEテレが目障りなのか?今後、Eテレ売却論が政権のNHKへの圧力のカードにならないか、注視したい。
諸川麻衣
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号
posted by JCJ at 02:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする