2021年01月20日

書籍 4月から総額表示へ 切り替え費用 出版社負担 絶版本増え出版文化は衰退=橋詰雅博

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 出版界が大きな問題にブチ当たっている。紙の書籍などの出版物の価格は消費税額入り総額表示の義務づけが来年4月から復活し実施されようとしているからだ。
 総額表示が初めて義務化された2004年(それ以前は本体+税の外税表示が多かった)以降、多くの出版社は書籍に挟み込まれるスリップの上部に総額を表示することで対応した。
 しかし出版社を中心とした広範な運動もあって外税表示が13年10月から認められたものの、政府は適用期限を21年3月末までとした。
 となると外税表示の本のカバーや帯などを総額表示に切り替えなければならず、その費用は出版社の負担に。さらに波紋は広がる。費用削減のため絶版になる書籍が増える。負担に耐えられない出版社はつぶれる。出版社の9割は中小零細企業だ。倒産の影響で書き手は仕事を失う。費用増は新刊本の価格アップにはね返る。
 出版界はこぞって外税表示の継続を政府に求めている。大手出版社などが加盟する日本書籍出版協会らは11月中旬に財務省を訪れ「総額表示の義務免除措置を、四月一日以降も継続してほしい」と要望書を提出した。
  事の発端は30年前の1989年の消費税率3%の導入だ。出版物も総額表示を受け入れた。このとき約2万冊が絶版となった。
 この経緯などについて、約70の中小出版社でつくる日本出版者(注:『社』ではありません)協議会(出版協)会長の水野久さんが説明する。
 「当時、総額表示は義務ではなかった。ただし公正取引委員会が総額表示を強力に指導したので、各業界はそれに従った。出版協(当時は流対協)は強制した公取委を訴える行政訴訟を提起した。最高裁で敗訴確定したが、判決で『公取委の指導は法律に基づかず、原告側は勝手に総額表示をした』と述べた。8年に及ぶこの民事裁判を糧として、97年の消費税率5%アップの際、ほとんどの出版社は外税表示を取り入れた。罰則がないので、今日まで出版協加盟社の出版物は外税表示を貫いている。違法と分かっていますが……」
 総額表示が義務づけられる4月以降はどうするのか。
「消費税率がこの先上がる可能性があり、外税表示の上にシールを貼るなど費用もかかるので総額表示はしません。外税表示の書籍を差別せずに扱ってほしいと取次企業と書店に要請します」(水野さん)
 一方ではなんらかの手を打つ出版社も出てきそうだ。
 政府は消費者が求めていると説明するが、これまで外税表示で混乱はなかった。出版文化を衰退に追いやる総額表示はやめるべきである。とはいえ政府は外税表示の継続を認めないようだ。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号
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