2021年04月11日

【今週の風考計】4.11─コロナ「まん延防止」と大阪・吉村府知事の破綻

ついに政府は「まん延防止の重点措置」を6都府県に要請せざるを得なくなった。緊急事態宣言の解除から1カ月も経たない。
 すでに大阪、兵庫、宮城は5日から、続いて東京、沖縄、京都が12日からの実施だ。さらに地方の各県へと広がるのは確実。
期間は、東京が5月11日までの30日間、京都と沖縄は5月5日までの24日間。飲食店の営業時間を午後8時までとし、不要不急の都道府県間の移動も、極力控えるよう促す。
 だが緊急事態が解除されたかと思うと、今度は「まん延防止」、しかも自治体によっては対象外の地域もあるから、混乱ばかりでなく「コロナ慣れ」など緊張感は薄れるばかり。「まん延防止の重点措置」で、感染拡大が抑えられるのか、不安は尽きない。

ここにきて連日、テレビや新聞各紙は、トップにコロナ変異株を取り上げ、その特徴を解説し感染拡大に警鐘を乱打している。
 英国由来のコロナ変異株が猛威を振るっているからだ。従来株と比べて感染力が1.32倍も強い。南アフリカ型やブラジル型なども加え、変異株感染者が日本全体で1040人を超える。5月1日ごろには変異株の割合が7割になると言う。
 だが変異株の監視強化に必要な陽性者に対するスクリーニング検査は、全国平均32%、目標の40%に達していない。先が思いやられる。

それにしても大阪府の感染者数の急拡大は異常としか言いようがない。8日の新規感染者数が905人、9日883人、10日は過去最高の918人と続く。
 これも吉村知事が経済を最優先したいがために2月末に下した、緊急事態宣言の前倒し解除が招いた結果だ。この7日には、2度目の医療非常事態宣言を出したものの、すでに病床運用率は重症患者用で9割を超えている。
 整備費約37億円を投じ、確保病床60床・設置期間2年の「大阪コロナ重症センター」も、昨年12月中旬にオープンしたものの、その後の医療従事者の確保が困難で、やっと14床ほどが機能しているだけだという。

そこに加えて、驚くなかれ、3月初めに吉村知事は、大阪にある最大236床の重症病床を150床まで減らすよう医療機関に促していたことまで明らかとなった。これでは医療崩壊が起きるのも当然だ。
 こう見てくれば「維新の会」橋下・松井・吉村知事が続けてきた、新自由主義による地域医療システムの改変による人災なのは、明らかではないか。
吉村知事 よく耳を傾けよ! コロナ変異株が拡大する中、オール大阪で力を発揮すべき時、二度も否決された大阪都構想を焼き直す、府・市の広域行政一元化プランに執着し、これ以上地域医療をないがしろにするのはよしなさい。(2021/4/11)
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2021年04月10日

【沖縄リポート】南部の土砂採取 戦没者への冒涜=浦島悦子

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 沖縄戦戦没者の遺骨収集ボランティアを約40年間続けている「ガマフヤー(ガマを掘る人)」の具志堅隆松さんとその賛同者たちが、戦没者の遺骨が残る沖縄島南部の土砂を辺野古新基地建設の埋め立てに使う計画の断念、自然公園法に基づく知事の中止命令などを求めて、県庁前で行った6日間(3月1〜6日)のハンガーストライキは、沖縄戦体験者をはじめ多くの県民の心を揺り動かした。
 沖縄防衛局は当初、埋立土砂の3分の2を県外から調達する計画だったが、沖縄県が2015年に制定した「埋立用材に係る外来生物の侵入防止に係る条例」や輸送コスト等から県内調達に方針を変更。沖縄島南部から必要量の7割を調達できるとしている。
 沖縄戦から76年が経った今も、激戦地だった南部では、掘れば必ず遺骨が出てくる。但し、長年の間に風化した遺骨は、南部特有の地質である石灰岩と見分けるのは難しいという。それを丁寧に掘り起こし、DNA鑑定して遺族のもとに返す活動をやってきた具志堅さんが、遺骨収集に行った際、土砂採取の前の森林伐採が行われているのを発見。矢も楯もたまらず行動を起こしたのだ。
 遺骨はウチナーンチュだけではない。日本兵も米兵もいる。「辺野古基地に賛成・反対以前の問題。戦没者への冒涜であり人間のやることではない!」
 この問題については市民や、宗派を超えた宗教者たちによる抗議・要請・署名活動などがすでに行われてきたが、具志堅さんの身を挺した行動はそれらに一気に火を点けた。ハンスト現場には連日、多くの県民が集い、涙ながらに沖縄戦体験を語る高齢者の姿があった。最終日の6日(土曜)朝には玉城デニー知事が訪れて具志堅さんの話に耳を傾け、「県民の深い思いを行政に反映できるよう努力したい」と述べた。
 土砂業界の利権も絡み、解決は簡単ではないが、10日には自民党沖縄県連・公明党県本部も沖縄防衛局に「人道上許されない」とする要請書を出した。防衛省は虎の尾を踏んでしまったのかもしれない。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
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2021年04月09日

【月刊マスコミ評・新聞】官僚は「体調不良」ですぐ入院=白垣詔男

 オリンピック・パラリンピック組織委員長、森喜朗が「女性べっ視発言」で失脚したとき、新聞各紙は「男性社会の弊害」を力説した。ところが、内閣広報官、山田真貴子が3月1日に辞職した際の報道では「男性目線」しか感じなかった。
 西日本は3月1日夕刊で、山田が「体調不良を訴え2月28日に入院した」「加藤勝信官房長官は、自民党に山田氏の診断書を示して経緯を説明した」(共同通信)と報じた。
 ところが、「体調不良」「入院した」それ以上の中身は他紙も触れていない。山田は政治家並みに、立場が不利になるとすぐに入院してしまい、説明責任がうやむやになった。入院するほどの体調不良とは、どんな症状なのか、どの新聞も(ラジオ・テレビ報道もそうだが)伝えていない。細部まで知りたい「国民目線」からの指摘がない。
 かつて、首相、橋本龍太郎が長期入院した報道の際、それを知った、病気の親族を抱える多くの女性から「それほど長く入院できる病院を教えてほしい」と新聞各社に問い合わせが相次いだことを思い出した。今でも病院への長期入院は日数が限られているから、当時、「橋本入院」という報道各社の「男性目線ニュース」の先にある中身について、そうした女性は強い関心を示した。報道した側には、そうした考えがなかったようだ。これは「男性社会」では気付かない「関心事」だろう。
 山田に話を戻すと「体調不良で入院した」のが当たり前のように報じているのも、おかしい。「ジャーナリスト」先号2面で小滝一志さんが追悼文をお書きになっている元NHKディレクター、戸崎賢二さんは、体調不良で救急車を呼んだが、入院する病院が見つからず自宅に帰された後に亡くなったと聞いている。悔やまれてならない。
 コロナ禍のなかで一般市民がこのような悲惨な扱いをされているのに、山田は即入院できた。そこを各報道は触れていない。「上級国民」という使いたくない言葉がある。山田が「菅首相のお気に入りで首相官邸幹部」つまり「上級国民」だから、こうした待遇が可能になったのか。
 そう考えると、菅が政権発足時に「国民のための政治」「自助、共助、公助」を強調したのも、こうした現実を意識しているからではないかと勘繰りたくなる。
 白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号

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2021年04月08日

【好書耕読】「うちなーぐち」に耳を傾けて=石川 旺(JCJ賞選考委員)

 「島口説」(しまくどぅち)は、東京の池袋にあるパモス青芸館の開館にあたって、企画された北島角子主演の一人芝居。1981年に文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞した。
 舞台は沖縄市の繁華街にある民謡酒場。そこの女主人の語りと歌と踊りで構成されてゆく。第一部では戦争から戦後にかけて一人の女性が直面した激動。第二部では基地に重くのしかかられた戦後沖縄の抵抗と闘いの歴史が描かれている。
 劇中では沖縄の古謡、民謡など多数が歌われ、また語りにも沖縄言葉(うちなーぐち)が豊富に取り入れられている。ささやかな個人の幸せが大きなうねりの中で翻弄される過程。続いて訪れた巨大で理不尽な力に対する人々の抵抗などが、柔らかな語り口や歌の中から次第に鮮明さを増して浮かび上がってくる。

 『謝名元慶福戯曲集 島口説』(ゆい出版)には代表作「島口説」をはじめ「美ら島」、「命口説」など六本の戯曲を収載。著者は「島口説」を二晩で書き上げたという。沖縄で生まれ育った著者の情念が噴出し、突き動かされた時間であったに違いない。
 セリフを書くとき、声を出す癖がある著者は「島口説」執筆中に自分の声が北島さんの声になり驚いたと述べている。また彼は劇作家としてだけでなく、映像作家としても優れた報道活動をしている。
 2018年3月、土木技術者の北上田毅氏が沖縄防衛局による大浦湾のボーリング調査の結果を情報公開で入手。湾内に豆腐のような軟弱地盤があることを発見した。

 謝名元氏は6月にドキュメンタリー・シリーズ「美ら海辺野古」で北上田氏を取材し、軟弱地盤の存在を広く訴えた。しかし中央の大手メディアは動かず、9月の県知事選挙に傾注し、12月には土砂投入による不可逆的な環境破壊が開始されてしまった。大手メディアは翌19年になって、ようやく軟弱地盤を報じ始めたのだ。
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2021年04月06日

【東京オリパラ】森発言に五輪スポンサー反発 名乗った朝日 辞任強く要求 読毎日経「表明せず」=橋詰雅博

                              
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 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言に対してスポンサー企業からも遺憾の声明が次々と出され問題が大きくなった折、2月9日付朝日新聞でオヤッと思う記事を見つけた。その記事はこう書いてあった。<オフィシャルパートナーの1社である朝日新聞社の広報部は「森氏の女性差別発言について、組織委会長をすみやかに辞任するよう求める社説を2月5日付に掲載しています」とコメント。社説では「女性全般を侮辱した責任は極めて重い」と指摘した。>
 朝日の記者が自社の広報部に取材し、それを紙面に載せた形だ。東京オリパラの国内スポンサーはゴールドパートナー(15社)、オフィシャルパートナー(32社)、オフィシャルサポーター(21社)に分かれる。各社は大会組織委と契約し、大会エンブレムを使う権利などが与えられる。オフィシャルパートナーのうち新聞社は朝日以外では読売、毎日、日経も名を連ねる。 
ほかの3社は朝日のようなスタイルで記事を載せているのだろうかと気になったので、読売、毎日、日経に問い合わせた。3社ともそうしたスタイルで記事を載せていないと答えた。ただ、社説でこの問題を取り上げており、3社は明確に示すものとして5日付社説をあげた。読売の見出しは<森氏の決断遅れが混乱広げた>、毎日は<五輪責任者として失格だ>、日経は<あまりにお粗末な森五輪会長の女性発言>。朝日は<森会長の辞任を求める>だ。
 朝日は、森会長辞任を強く要求した。
東京五輪問題に詳しい著述家の本間龍さんはこう言う。
「スポンサー企業が森会長への反論を相次いで発表した。それに触発された朝日はオフィシャルパートナーとして何か言わなければという思いがああいう紙面になったのでしょう。加えて組織委でやりたい放題だった森会長に一矢報いたいという動機も考えられます。ほかの3社はそこまでの熱意≠ヘなかったのでしょうね。ともあれ大手新聞社が組織委に多額の契約金を支払ってオフィシャルパートナーになったのは、五輪に便乗した紙面づくりで広告をたくさん集めるのが大きな理由です」
 これでは五輪開催の可否など鋭くついた記事を載せられないのは当然だ。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号

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2021年04月05日

【リアル北朝鮮】地方の党首長による初の講習会 家族や親せきの私利私欲にも言及=文聖姫

 北朝鮮の平壌で3月3日から6日までの4日間、朝鮮労働党の市・郡責任書記が一堂に会する講習会が開催された。北朝鮮で同種の講習会が開催されるのは初めてのことだ。日本で言えば、市長や村長ら首長が一カ所に集まって講習会を開催するようなものだ。
 ではなぜ、この時期、このような講習会が開かれたのであろうか。北朝鮮では今年1月に朝鮮労働党第8回大会が開かれたが、そこでの主な議題は経済とともに党の活動家の働き方だった。党内において権勢を振るうことや官僚主義、不正腐敗に関して辛辣な批判が繰り広げられた。党内には新しい規律監督体系が樹立された。北朝鮮指導部が党内で起きている不正腐敗現象について深刻に受け止めている証であろうと思われる。
 講習会の2日目、金正恩党総書記は結語で、「自分自身が党と人民の面前で潔白であるだけでなく、家族、親せきたちも絶対に私利私欲を追求できないよう警戒」するよう述べた。責任書記自身だけでなく、家族や親せきにまで言及するのは極めて珍しい。実例が示されているわけではないが、実際にそのようなことが起きているのだろうことは想像に難くない。
 世界中で猛威を振るう新型コロナはいまだ収拾する気配はない。北朝鮮は厳格な国境封鎖を続けており、経済にも深刻な影響を与えている。人々も生きていくために必死だ。1990年代半ばから後半にかけての経済難の時代には、突然国家からの配給が中断されたりしたことで、餓死する人々も現れた。ただ、そのような時代を経て、北朝鮮の人々もたくましく、したたかになった。配給に頼らず、自力で物資を調達する人々も少なくない。
 党幹部の家族や親せきの中にも、その地位を利用して私利私欲を求める人々が出てくるのも自然な流れなのかもしれない。ただ、社会主義体制下で、平等を掲げる北朝鮮指導部にとっては許されないことなのかもしれない。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
 

 
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2021年04月04日

【今週の風考計】4.4─最高裁 孫の世話に励む祖母の「監護者」申し立てを却下!

■誰しもオヤッと首をかしげたのではないか。娘の離婚で長い間、孫の親代わりをしてきた祖母が、孫の世話をする「監護者」として申し立てた裁判に対する判決内容である。
 最高裁は「父と母以外は監護者の申し立てはできない」と、祖母の訴えを却下した。さらに別事案での「孫との面会交流」を求める申し立てにも、「父母以外には認めない」との判決を下した。
■とりわけ「監護者」の申し立てには、下級審の判断を覆し、裁判官5人全員一致の意見による判決とくるから驚く。
 1審の大阪家裁は、子供が母親の再婚相手を拒否しており、母親らに監護させれば精神状態が悪化する恐れがあると判断。同居している祖母に「監護者」を指定している。さらに2審の大阪高裁では、「子の利益のためなら、父母以外も申し立てができる」との判断を示していた。
 それもそのはず、「監護者」とは、未成年の子供と生活し、身の回りの世話や教育をする「監護権」を持つ人、と定義されているのだから、1審・2審の判決は極めて真っ当だ。

■子どもの福祉や権利、意思の尊重を第一に置けば、最高裁が民法上の規定にある第三者への権限移譲に神経をとがらせ、実情を無視した判決で却下するのは許されない。
 すでに家族法制の見直しを議論している法制審議会や有識者らの研究会でも、子への虐待が絡むケースや父母の監護能力が欠ける場合、祖父母に「監護者」の申し立て権を与えることなど提言している。それを最高裁は、なぜ踏まえないのか。
■また離婚したら子どもの親権は、父母のどちらか一人しか認めない、今の民法の「単独親権制度」をめぐる裁判も各地で起きている。つい最近、「共同親権」を求めて起こされた裁判で、東京地裁は「単独親権制度は憲法に反するとは言えない」との判決を下した。
 憲法上の平等な権利の保有に抵触しないか、またも古い家族観で議論を深めない判決には、大いなる疑問が湧く。とりわけ最高裁を始め各級裁判が、憲法判断を避けた判決を繰り返しているのも問題だ。

■2017年当時、安倍内閣に対し野党が求めた臨時国会の召集に、3カ月以上応じなかったのは、憲法53条に違反するとして提訴した裁判の判決が出された。これまた東京地裁は憲法判断をせずに請求棄却した。
 憲法53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会召集を決定しなければならないと定めている。
 同種訴訟は岡山など全国3地裁で提起されているが、昨年6月の那覇地裁判決では、憲法53条の要求に基づく召集は「憲法上の法的義務だ」と明言した。だが召集の時期を巡っては憲法違反かどうか、その判断を避けている。
■このほど最高裁が下した、沖縄・嘉手納基地を発着する米軍機の夜間・早朝の飛行差し止め裁判への判決も、騒音への金銭的賠償は認めるが、肝心の騒音を発する米軍機の飛行差し止めは却下した。
 米軍の勝手放題な行動が、独立国家としての日本で許されるのか、深い議論もなく憲法判断を避けた判決を下しているようでは司法の独立が泣く。(2021/4/4)
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2021年04月03日

【焦点】コロナワクチンへの不安  南ア型に効果弱い  日本に多いアナフィラキシー=橋詰雅博

 新型コロナウイルスの第4波は、感染力が強い変異株が猛威を振るいそうだ。ワクチンの効果はどうなのか、また副反応などへの不安も消えない。
 英国型、ブラジル型、南アフリカ型の変異株のうち南ア型に対して、ワクチンの効き目は落ちる。南ア型は体の免疫防禦をすり抜ける免疫回避≠備えているからだ。加えて国内では由来がわからないナゾの変異株も確認されている。この型へのワクチンの効果は不明だ。
 英大学インペリアル・カレッジ・ロンドンが欧米やアジアなど15カ国、1万3500人以上を対象に実施したコロナワクチン調査によると、日本は副反応を懸念する人の割合が61%で最も高かった。その懸念は当たっている。
 ワクチン接種後にじんましんや息切れなどアナフィラキシーショックを発症した日本人は、18万人接種で36人(3月11日現在)と米20万件に1件、英10万件に1、2件と比べると相当に多い。人種の差異に由来しているのだろうか。日本では女性がほとんどで、なぜ多いかははっきりしない。
 ニューヨーク在住のジャズピアニストの大江千里は、2度目にモデルナ製ワクチンを接種した後、急激に体調を崩し、気を失った体験を『ニューズウィーク誌日本版』と月刊『文藝春秋』に書いている。
 大江は、持病はなく、過去にアレルギー反応が出たこともなかったそうだ。にもかかわらず失神したのは、迷走神経反射を起こしたのが原因とみられる。
 迷走神経は体をリラックスさせる自律神経。ワクチンの筋肉注射で強い痛みや恐怖心を感じたりすると、迷走神経反射により血圧低下などで意識が遠のくのだ。大江の症状とあてはまる。こういうケースがあることを知っておいて損はない。
 さらに注視したいのは、抗体依存性感染増強(ADE)だ。ワクチンを接種しておけば発症や重症化の予防が期待できる一方でADEはワクチン接種が災いしコロナに罹患したとき、かえって病状が悪化する現象を指す。SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、デング熱のワクチンで報告された。
 ワクチンを打ったことで偶然に生まれる悪玉抗体≠ェ引き起こす。今のところ、その症例報告はないが、ADE患者が現れないとは言い切れない。
 また人類初のワクチンゆえに長期的に人体に悪影響を与える恐れがあると警鐘を鳴らす医師もいる。
 とはいえコロナに限らず100%安全なワクチンは存在しない。感染、発症、重症化のリスクを抑制するメリットは、副反応のリスクを上回る。ありきたりの結論だが、やはりコロナワクチンは接種したほうがいいだろう。
 橋詰雅博
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2021年04月02日

【リレー時評】 桜咲く頃 なぜか怖い事件が起きる!=守屋龍一(JCJ代表委員)

 コロナ禍にあって出版界は、昨年1年間の販売額1兆6168億円(前年比4.8%増)、2年連続のプラス成長となった。
 これも「巣ごもり」により、本への関心と需要が高まったからである。典型がコミック『鬼滅の刃』(集英社)。全23巻で累計1億5千万部、この1年間だけで1億1千万部・売り上げは5百億円だ。
 私も、この1年間、多くの本を読んだ。そして最近、柳広司『アンブレイカブル』(KADOKAWA)を一気読み。スゴイ小説だ。
 日本が戦争へと突っ走る戦前・戦中にかけ、人々を恐怖に陥れた治安維持法と特高の暴虐ぶりを描く。
 プロレタリア文学の旗手・小林多喜二、反戦川柳作者・鶴彬、「横浜事件」で弾圧された編集者、そして哲学者・三木清の4人を取り上げ、犯罪のデッチあげから苛烈な拷問、ついには獄死へと追い込む叙述とミステリアスな展開は手に汗握る。
 だが、アンブレイカブル=敗れざる者たちは、人間として生きる矜持と信念を、死を賭しても貫く。彼らの重い問いかけが、ひたひたと私たちに迫ってくる。
 日本学術会議・会員6人の任命拒否を始め、為政者が目論んでいる「言論・学問・表現の自由」への介入・規制が、何をもたらすか、よくよく考えねばならぬ。

 なぜか桜咲く3月、怖い事件が歴史的に見ても頻発している。戦前では、
1925年3月19日:治安維持法が成立。以降、全ての社会運動の弾圧に利用。
1928年3月15日:日本共産党員1568人の一斉検挙。いわゆる「3・15事件」。
1929年3月5日:労農党衆院議員・山本宣治が右翼テロにより暗殺される。
1933年3月27日:日本軍部は満州侵略を正当化し国際連盟を脱退。
1945年3月10日:米軍による東京大空襲(23万戸消失・死傷者12万人)。

 戦後も怖い事件は3月に頻発する。
1954年3月1日:第5福竜丸がビキニ環礁で米国の水爆実験により被曝。
1979年3月28日:米国スリーマイル島原発で放射能漏れ事故。
2011年3月11日:東日本大震災・福島原発の爆発(死者1万5899人・行方不明2526人)。

 直近の怖い事件も忘れてはなるまい。
2017年3月13日:安倍首相の加計学園に対する優遇が発覚。
2018年3月12日:財務省は森友学園に関する公文書改ざんを、ついに認める。
2021年3月1日:東北新社と菅首相の長男による総務省接待で、内閣広報官が辞職。

 ふりかえれば「桜を見る会」とその前夜祭を巡る参加者や会費への疑惑に始まり、安倍・菅の両首相が用意した「モリ・かけ・親子丼」と揶揄される特別メニューで官僚の忖度を煽り、国会ではウソの答弁を百回以上も繰り返してきた。
 坂口安吾の小説ではないが、永田町の「桜の森の満開の下」には、国民を脅かす醜い鬼がいる。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
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2021年04月01日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】反国軍のミャンマー市民 フェイスブックで映像投稿を続行

ミャンマーでフェイスブックが国軍を相手に果敢に戦っている。
フェイスブックは2月21日、国軍の運営するページを「暴力行為を扇動している」という理由で閉鎖した(2/21AFP)。
続いて27日には国軍が支配するメディアなどによる利用、国軍系企業による広告出稿も禁じた。削除対象には「軍高官や軍に関連するネット TVミヤワディなど20の個人、組織なども削除した」ことを明らかにした(/27ロイター)。
ミャンマーでは、クーデターの直後インターネットが不通になったが、今は深夜と早朝を除き利用できる。フェイスブックなどSNSは国軍が使用できないような措置をとった。しかし市民の多くはVPN(仮想プライベートネットワーク)を経由してフェイスブックその他のSNSに復帰している。

普及率は94%
ミャンマーでは、2011年の民政移管以来、スマートフォンを多くの市民が手にするようになった。スマホの普及は人口5700万の半数以上、およそ2900万台に達しているとみられている。ツイッター、インスタグラムなどを含むSNS全体の中でフェイスブックのシェアは94%と断トツだ。
抗議活動もZ世代の若者たちが、フェイスブックで連携している。2月22日のゼネストも若者のネット経由の呼びかけで、ミャンマー全土で展開された。参加した市民は100万人に上る。ニューズウイーク(日本版3/16)が伝えるところによると「治安部隊の発砲で頻発する死亡事故に際しても、現場で、担架で運ばれる負傷者の姿や、銃撃を受けて倒れる市民を捉えた映像が次々にフェイスブックなどネット映像で拡散している」と伝えている。

国軍の発信元は
ミャンマー国軍は2月22日、2万3000人の服役者を釈放した。抵抗をやめない市民に恐怖感を植え付ける手法だ。1988年のクーデターの際にも同じ手法を軍はとったのだと伝えられる。そのあと放火、略奪、誘拐など事件が次々に起きたことの繰り返えしが予想される。
それに加えて今回はスマホの自撮りで「今夜俺はパトロールに出る、アウンサンスー・チーを支援する奴ら(マザーファッカー)は撃ちぬいて殺してやる」( ニューズウイーク日本版3/16)などという脅迫まがいの映像も流れた。
これら軍協力者や軍関係者の発信源はTikTokだというのも意味深だ。軍関係者が中国の支援を受けている証拠になるというわけではないが、フェイスブックの使えない軍や軍支持者らが中国発のアプリに親和感を持っていることはありうる。
 
名誉挽回図る
2018年、イスラム系少数民族ロヒンギャ虐殺事件が起きた際、フェイスブックは「憎悪拡散に十分な対応をとっていない、むしろ都合の良いプラットフォームになっている」との批判を、国連ロヒンギャ問題調査団から受けた。今回はその批判からの名誉挽回をフェイスブックは試みているものとみられる。
ニューズウイークはミャンマーのある市民の声を伝えている。「私たちはこの瞬間にも、隠れながらスマホで撮影し、フェイスブックに投稿を続けている。軍が私たちの分断を画策しているが、市民は結束してフェイスブック武器に連帯を示す」。

記者らを迫害
ミャンマーの独立系インターネット有力メディア「イラワジ」はクーデター以来、一貫して国軍批判の報道を続けてきた。ところが3月12日「社会の不安をあおっている」として軍事政権から告発をうけた。記者個人への迫害は多くみられたが、メディアが組織として告発されるのは初めてのことだった。
これに前後して国軍は15日までに39人のジャーナリストを逮捕、解放の条件としてデモを報道ないという誓約書への署名を強制しているという。
また17日までに「スタンダードタイムス」、「ビルマの民主の声」など5紙の新聞発行が停止された。「ミャンマーナウ」の編集長(新聞とネットの両方を出している)は「報道を継続すれば投獄や殺害の危険があるが、国軍の非道な犯罪を取材し続ける」と表明した。「ミャンマーナウ」は今後インターネットを通じて報道する。
3/29の時点で、ミャンマー市民デモの死者は423人に達した。世界の批判を浴びながら、ミャンマー国軍は弾圧拡大し続けている。一方市民の側は犠牲者を出しながら、抗議デモは止まらずに続いている。
ミャンマーの平和の回復を祈るほかはない。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
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