2021年06月30日

【お知らせ】JCJオンライン講演会「原発事故から10年の福島を撮り続けて」7月11日(日)午後2時から4時まで

                        
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        講師:フォトジャーナリスト山本宗補(やまもと・むねすけ)さん(写真

東日本大震災と原発事故から11年目に入った原発事故被災地。深刻な放射能拡散のため、我が家にも故郷にも戻って生活再建できない被災者は4万人余。帰還困難区域内の見せかけの「復興」。歳月とともに忘れ去られる被災者。生活再建途上の被災者を省みない五輪報道。
フォトジャーナリストの山本宗補さんは、原発事故直後から10年にわたり、福島の被災者を撮り続ける。失われた多くの命に対する慰霊と鎮魂、国策に翻弄されてもなお地元に留まる人々の姿など。今回は山本さんが撮影した現地の写真を見ながら10年追って見えてきた「復興」とかけ離れた現場と広義の「棄民」などを考える機会にしたい。

□参加費:500円
□参加のご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。 
(1)https://kouen21711.peatix.com/ をクリック
(2)チケットを申し込むをクリック。参加券の枚数を選ぶ
(3)支払いに進む。初めてPeatixを利用する方はアカウントを作成。名前、メルアド、自分独自のパスワードを入力し、ログインする
(4)カードかコンビニかなど、支払い手段の選択。支払いを終える
(5)Zoomの配信URLは前日7月10日までにメールでご連絡
(6)講演会当日、パソコンでURLをクリックして参加

【講師の紹介】山本宗補
1953年長野県生まれ。フォトジャーナリスト。85年からフィリピン、88年からビルマ( ミャンマー)軍事政権下の少数民族や民主化闘争を取材。日本国内では「老い」と「戦争の記憶」のテーマで取材。
「3・11」の翌日12日から福島県に入り、原発周辺での放射能汚染の実態を伝え、原発事故と大津波被災地に通い続ける。著書「鎮魂と抗い〜3・11後を生きる人びと」「戦後はまだ・・・刻まれた加害と被害の記憶」など多数
    
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)電話03‐6272‐9781(月水金13〜18時)
メール office@jcj.sakura.ne.jp ホームページ http://www.jcj.sakura.ne.jp/
【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com に別途申し込んでください】
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2021年06月28日

台湾海峡有事と憲法 米国追従の日本 民間人も戦地へ 法の秩序を無視 メディアにも責任=徳山喜雄

 ことしの憲法記念日は、例年に増して憂鬱な日となった。一つは新型コロナ対策の緊急事態宣言のなかで迎えたこと、もう一つは4月の日米首脳会談の共同声明が52年ぶりに「台湾」にふれ、日中の緊張がいっきょに高まったことだ。
「一つの中国」を譲らない中国と台湾の両岸問題は微妙で、取り扱いを間違えれば「爆発」しかねない。ジョー・バイデン米大統領は習近平国家主席を「専制主義者」と名指しし、3月末の就任後初の記者会見においても米中関係を「21世紀における民主主義と専制主義の闘い」と位置づけている。

中国の台湾侵攻

 共同声明は、中国に対し対決姿勢を強める米国に日本が追従したかたちだ。憂鬱になるおおもとは、安倍晋三政権による2014年の憲法9条の解釈変更に端を発し、その翌年に可決された安全保障関連法(安保法制)の存在にある。
 安保関連法によって日本は、自国が攻められたときにのみ個別的自衛権を発動するという段階から、緊密な関係にある米国が攻撃された場合も応戦するという役割を担うことになった。米軍司令官は「中国の台湾侵攻は、6年以内に起こりうる」と3月の米上院公聴会で証言しており、安保法制が発動されることに現実味がでてきた。
 今夏の中国共産党の結党百周年と、22年の北京冬季五輪を終え、習主席が台湾問題を優先し軸足を置いたなら、台湾海峡に激しい波浪が押し寄せる可能性がある。米軍が出動するということになれば、日本はこれまでとまったく違った対応を迫られることになる。
 安保法制では、日本の平和と安全に影響を与える「重要影響事態」となれば米軍の後方支援をおこなうことになり、台湾海峡有事によって日本の存立が脅かさる「存立危機事態」になれば自衛隊は集団的自衛権を発動して武力行使できるとする。仮に米軍基地がある沖縄が攻撃されれば、日本有事を意味する「武力攻撃事態」と考えられ、個別的自衛権を行使することになる。

兵站を担う民間

 ここで留意したいのは、中国が台湾に侵攻し米軍が介入した際、戦地に送られるのは自衛隊員だけではないということだ。状況次第では、兵站のために民間の船舶や船舶従業員が動員されることになる。
 専守防衛に徹してきた自衛隊の前線への兵站能力は限定的で、民間に頼らざるをえないというのが関係者の見方だ。医療行為のために医師や看護師らが派遣されることにもなりかねない。
中国の近年の覇権主義的な動きをみるにつけ、絵空事とは思えない。法律には成立後すぐに使われるものと、年月を経て使われるものがある。安保法制が可決されて6年になるが、10年を迎えるころにあるかもしれないのである。選択は間違っていなかったのか。(→続きを読む)
(→続きを読む)
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2021年06月27日

【今週の風考計】6.27─<赤木ファイル>─公文書改ざん「指揮・命令」の闇を暴け!

★近畿財務局に勤務した赤木俊夫さんの死から3年。いまだに麻生太郎財務相は線香すらあげに来ない。安倍前首相の夫人・昭恵さんも、昨年5月中旬、残された妻の雅子さん宛てに「いつかお線香をあげに伺わせてください」とのメッセージを、LINEで発したまま。その後はナシの礫だという。
 「赤木ファイル」が、やっと妻の雅子さんや国会に開示された。赤木俊夫さんが「森友学園」に関する公文書改ざんを苦に、2018年3月7日、自死する間に財務省と交わされた518ページに及ぶ記録には、貴重な記述が並ぶ。

★財務省が2017年2月26日、係長名で近畿財務局に「森友学園」関連文書の改ざんに関するメールを発信。安倍首相の妻・昭恵氏や政治家などの記述に、「削除した方が良いと思われる箇所があります。マーキングしておきました」と、この箇所を「できる限り早急に」削除するよう求めている事実が記されている。
 この指示を受けた赤木俊夫さんは「既に意思決定した調書を修正することに疑問が残る」と、財務省本省に直接抗議し、かつ「今回の対応は、本省理財局が全責任を負う」などと説明されても納得できないとして、「備忘として記録しておく」とファイル作成の経緯を記していた。
★改ざん指示のメールがくる9日前の2月17日。安倍首相は国会で、国有地を8億円も値引きして森友学園に売却した「森友問題」に、自分や妻が関係していた場合は「首相も国会議員も辞める」と答弁した。この答弁が契機となり、慌てふためいた官邸や財務省が、公文書の改ざんに猛進した構造が浮かび上がる。
 当時の佐川宣寿理財局長も、3月20日には「国会答弁を踏まえたうえで、修正するよう」直接指示している。この「国会答弁」とは、安倍首相の答弁を指すのは言うまでもない。
 そもそも「森友問題」は、開校予定の小学校の名誉校長に就いた安倍昭恵さんが、国有地売却に絡む打合せの際、<「2014年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)>との記述が発端なのだ。

★開示されたとはいえ「赤木ファイル」の写しは、幹部職員以外の名も含め墨塗りが400ケ所もある。別添の資料は開示されていない。財務省「調査報告」との食い違いはもとより、公文書改ざんの指揮・命令系統は、いまだ「闇」のままだ。第三者委員会の設置など、再調査は不可欠だ。
 その際、肝心なのは、最初に改ざんを指示したのは誰か、その解明である。すべてを佐川宣寿理財局長におっかぶせているが、一介の理財局長が独断で、このような大規模な公文書改ざんという作業を指示できるわけがない。
★2017年2月17日の「首相も国会議員も辞める」との<安倍答弁>から、5日後の22日、当時の菅義偉官房長官は、財務省の佐川理財局長、中村稔・総務課長、太田充・大臣官房総括審議官と面談し、改ざんを命じた可能性が濃いとの報道もある(LITERA6/22付)。
 この糸口に切り込み、公文書改ざんへの指揮・命令の道筋と全容を暴いてほしい。(2021/6/27)
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2021年06月26日

【焦点】1枚の写真で森友事件の悲劇が起きた=橋詰雅博

  赤城ファイルが開示され森友学園への国有地売却事件が新たな展開を見せている。国有地を森友学園に売却する転機になったのは1枚の写真だった。
 この豊中市の土地は近畿財務局の審査を経て9臆6千万円の値段がつけられていた。国有地は誰に売ってもいいというわけではない。病院や介護施設、保育園など地域住民に役立つ施設に売るのが条件だ。大阪音楽大学が買い手として名乗りを上げたが、価格が折り合わなかった。そのあと籠池泰典さんが小学校をつくりたいと2013年9月に申し出た。
 ところが計画はズサンだった。義務教育の小学校を建てるというのに認可はおりていない、資金集めのめどはたっていない、先生がいない、運営のビジョンがないなど中身がほとんどなかった。これでは売ることができないので、財務局は資金手当ての見通しや学校運営の構想を出してほしいと籠池さんに求めた。
 しかし出てこない。ついに14年4月の打ち合わせで財務局は出された計画書の説明次第では交渉を打ち切ると籠池さんに通告した。
 4月28日に安部晋三首相の昭恵夫人と籠池夫妻が一緒に写った例の写真を籠池さんは近畿財務局担当者に見せた。財務局OBが19年春号『季論21』でこう書いている。
<『いい土地ですから前に進めてください』と言われたと籠池さんは熱心に説いたそうです。この日が転機でした。攻守ところを変え、主客が転倒します。ひと月後には財務局は協力する旨を伝えています。籠池夫妻は財務局担当者に『そんな細かいこと言わんでええやないか』とか、しまいには『アホ、ボケ』とぼろくそに言い募っています>
 財務局内では籠池小学校計画を昭恵事案≠ニか安部事案≠ニ呼んでいて、無理筋の仕事と職員はこぼしていた。
 1枚の写真が結局、8億円の値引き、1億3千万の売却価格、公文書改ざんを強いられた赤木俊夫さんの自死の端緒になったのである。
 悲劇をもたらした安部前首相夫妻は罪深い。
 橋詰雅博

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2021年06月25日

憲法記念日 25条を使い倒せ 危機に乗じ、壊憲*@案続々 戦争できる国にまた一歩=丸山重威 

  施行から74年目の憲法記念日の5月3日。国会議事堂前で「変えよう政治!いのちを守り、平和をつくろう」と、「2021平和といのちと人権を! 5・3憲法大行動」が、オンラインを中心に行われた。
 まず、実行委員会を代表して「九条の会」事務局長の小森陽一さんが「菅政権の無策でコロナ感染が拡大し、貧困が加速している。国が社会保障、公衆衛生への努力を決めた憲法25条、男女平等の24条、財産権保護の29条が侵されている。13条で個人の尊厳が保障され、生命、自由、幸福追求の権利があることも主張しよう。戦争法反対以来、党派を超えた統一した運動が進んできた。いまや憲法を守り生かす側から政治を変える段階」と挨拶した。

政治を変えよう
 「これから『おとな食堂』に支援に行く」という雨宮処凜さんは「憲法25条を使い倒そう」、羽場久美子神奈川大教授は「米国の中国封じ込めに参加してはならない」、清水雅彦日体大教授は「もうこんな反権力政治は終わりに」と訴えた。
枝野・立憲、志位・共産、福島・社民、沖縄の風・伊波の各党代表が挨拶。いわ山本代表のメッセージが紹介された。
 続いて、田中優子前法大総長が「憲法と自民党の改憲草案を比較してみよう。価値観、人間観、国家観が全く違う。『公共の福祉』は『公益・公の秩序』に置き換え、自衛隊は国防軍にする。憲法は捨てるか守るかどちらかだ」と強調した。

異なる価値観
 最後に市民連合代表の山口二郎法大教授が「安倍、菅政権の8年半、憲法との乖離が目立った。それぞれの場所で声を上げよう」と述べた。
一方、菅義偉首相は産経新聞に「自民党の改憲4項目を元に議論を」と発言。改憲派集会のビデオメッセージで「国民投票法は改憲の第一歩」と強調した。(→続きを読む)
   
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2021年06月23日

【リレー時評】飲んでみる?汚染水=中村梧郎

 4月13日、「飲んでもなんてことない」と麻生副総理が記者団に言った。福島原発の汚染水を、である。
その日午前の閣議で海に流すと政府は決めた。その後の発言である。
 1959年12月、「濾過した排水は飲める」と言ったチッソ水俣・工場長の姿を思い出す。水俣病患者たちの前で彼は一気に飲んだ。後で発覚したのだが、工場排水のコップは職員が巧みに水道水のコップと取り替えていたのであった。
 福島原発で溶け落ちたウランなどの金属デブリは今も炉内にある。そこに流れ込む地下水がデブリに触れて放射性物質まみれの汚染水となる。1日に140d。それをALPSで濾過するのだがトリチウムは除去できない。それを真水で薄めてしまえば「飲めるぐらい」安全だというのである。でも汚染の総量は変わらない。
 これは飲めるはずがない。トリチウム以外にも除去しきれないセシウムやストロンチウム、炭素、ヨウ素などの核種が残る。そのことは2018年に共同通信が報じている。
 政府は「通常の原発でも排水にトリチウムはあり、それを海に出しているから問題はない」との解説をつけた。だがこれも騙しの手口だ。原発排水には事故水のように12種もの危険な核種の混入はない。この二つを同列に置いたところに嘘がある。
 海でつながる近隣諸国、韓国も中国もこの点を衝く。中国政府のスポークスマンは皮肉たっぷりに反論した。「では飲んでみていただきたい」…。
 事故と汚染に関して平然と嘘をつく先例がある。安倍晋三氏によるオリ・パラ招致のための「アンダーコントロール」発言である。汚染水は原発面前の、堤防のある海に出しているのだから安全だと。

 復興庁は4月、トリチウムの「ゆるキャラ」をHPに登場させた。「健康への影響はない」という説明も付いた。だが批判の嵐で削除となった。
 水だけではない。地上の汚染も未解決なのに人体の汚染限度を20倍に変えて安全とし、避難民は戻れという。老朽原発の再稼働を含め、国民がいかに危険に曝されようが意に介さない姿勢が貫かれる。
  汚染は魚介に濃縮される。菅政権は苦しむ漁業者の叫びを蹴飛ばした。被害者は漁民だけではない。魚好きの人間全体の問題なのだ。日本の農・水産物の輸入規制は今も米国以下15の国で続いている。
  もと米GEの原発技術者佐藤暁氏は「周りを掘って地下水を止め、デブリ取り出しは先送り、事故炉を『乾いた島』にする」構想を発表(5月2日東京)した。汚染水を出さない策である。国連の専門家も「汚染の海洋放出は人権侵害」との声明を出した。
 政府は風評被害を防ぐと言う。だが風評は嘘への不信が生みだすものだ。では風評を回避する特効薬はあるのか。
 今こそ出番である。閣僚のどなたかが汚染水をコップで「飲んで見せる」のがいちばん効く。ただし、決して水道水と取り替えるようなことをしてはいけない。
 中村梧郎
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号


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2021年06月22日

【フォトアングル】護憲派の5・3国会議事堂前行動=酒井憲太郎

                           
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憲法記念日、護憲派は国会議事堂正門前で「5・3憲法大行動」を開いた。新型コロナウィルスの感染を極力回避するため、参加者にはマスクの着用とフィジカルディスタンスの確保を求められた。多くの人はオンライン中継での視聴で参加した。6日に衆議院憲法審査会で国民投票法の改正案を採決する直前で、会場には「採決反対」のプラカードが上がった。3日、東京・国会正門前 酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
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2021年06月21日

【オンライン講演会】スクープの秘訣を語る 文春編集局長 赤旗日曜版編集長が対談=古川英一

                                
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         対談する山本赤旗日曜版編集長(左)と新谷文春編集局長

 菅首相の長男と総務省の幹部との会食問題や、学術会議の任命拒否問題など、政治権力の在り方を世の中に問う大スクープ。「週刊文春」と「しんぶん赤旗」は次々にこうしたスクープで権力の闇を暴いてきた。このメディアとしての「元気さ」はなぜ?4月のJCJのオンライン講演会は「週刊文春」の新谷学編集局長と、「しんぶん赤旗」の山本豊彦日曜版編集長の2人に対談で、「スクープの秘訣」について語ってもらった。聞き手は藤森研JCJ代表委員。
―スクープとは?
 新谷 相手がいかに強かろうが書くものは書く。読者の声援を背に闘い続ける。そして闘い続けるメディアに情報は集まる。世の中に問いたいと思った時に、文春だったら相手に権力があろうが忖度しないだろうと思ってもらえる。なぜスクープを狙うのか、前のめりになって、とことん問い続けている。
 山本 赤旗や文春はタブーなく物が言える。今の日本のメディアにとって、そこが大きな問題ではないか。そして文春や赤旗でしか報じないものが売れる。活字媒体が売れない中で、どうすれば売れるのか、それがスクープ、読んで得になる情報を出していく。
―具体的事例は?
 山本 安倍前首相の「桜を見る会」の問題は、国会で、財務省が予算を毎年増やしていることが明らかにされたことがきっかけ。なぜ増やしているのか、違和感を感じて取材を始めた。公開されている情報になぜ、ほかのメディアが気づかなかったのか。学術会議の問題でも、拒否された学者がフェイスブックに載せたのを見つけ、これは大変だと取材した。ほかの社も書くかと思ったら、記事として出したのは赤旗だけで、スクープに。
 新谷 舛添元東京都知事の、公用車で別荘通いのスクープは、記者がアンテナを張っていた都の幹部がポツリと「公用車の使い方が」とつぶやいたのがきっかけ。そこで情報公開で知事の動きを確かめ、別荘の前で張り込んでいたところ、知事が公用車で現れた。
―どうすれば?
 新谷 問題意識を持つこと。基本的に「週刊文春」はど真ん中を目指す。左右どちらかの主張にとらわれず、フラットな目線で。スクープは、編集長が腹をくくることが必要。甘利大臣の現金受領スクープについても「大臣室で現金を受け取った」という情報が入った時、まさかと思った。でも本当だったら大変なこと。取材には経費や人手もかかるが、そこで一歩を踏み出せるかどうか、編集長の覚悟が問われる。
 山本 記者はやらされている仕事をこなすのではなく、自分で探し、自分の目で確かめていく、「向かっていく」という姿勢を。そして記者は「この問題ならこの人に聞く」という人間関係を持っているかどうか。「桜を見る会」の取材でも保守系の人ともつきあう中で情報を積み上げていった。相手は本気。全人格をかけて勝負しない限りネタは取れない。
―今のメディアは?
 山本 スクープを出せないということはマスメディアの劣化。今求められているのは。「前うち」ではなく「独自ネタ」。大手メディアはそこにシフトできていない。それは記者の問題ではなくデスクや編集幹部の問題ではないか。
新谷 スクープが、組織の小さい文春、とは健全なメディア状況とはいえない。またデジタルの時代に新聞やTVのビジネスモデルは崩壊していると思う。ダイナミックなデジタルシフトが必要ではないか。
―最後に一言
 新谷 後に続く若い人たちにスクープのおもしろさ、気持ちよさを味わってほしい。いろいろなメディアがしのぎを削っていきたい。
 山本 なぜスクープを、それはおもしろいから。おもしろがらないと話が始まらない。そしてメディア全体が元気にならないと。
 古川英一
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号

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2021年06月20日

【今週の風考計】6.20─下田・本土寺・明月院のアジサイをめぐる対話

10日ほど前、思い切って伊豆・下田公園のアジサイを見に行った。安政元(1854)年、日米和親条約を結んだ了仙寺の境内に咲く、アメリカン・ジャスミンに足を止める。
 さらに柳しなだれるペリーロードを歩き、日本初の商業写真家・下岡蓮杖の像を脇にして、アジサイ群落の広がる山道を登る。
その数、なんと約15万株300万輪! 種類もウズアジサイ・ガクアジサイ・墨田の花火など、100種以上。山肌に広がる薄い青・紫・黄・ピンクの大輪の先に、下田市街や下田内港・稲生沢川に舫う舟が一望できる。穏やかな山容の下田冨士も望める。
 下田城址をめぐるアジサイロードを南へ下ると、お茶ケ崎展望台に出る。左手に犬走島、眼下にイルカが遊泳する海中水族館、さらに右には赤根島や和歌の浦が見渡せる。

帰ってきて数日後、地元の一膳めし屋に行く。「カツ煮定食」ができるまでの間、こあがりの壁にかかる、額に入った2枚の大きなカラー写真に見入った。
 五重塔の前にアジサイのピンクの大輪が咲き誇る。もう1枚は広い屋根を持つ建物の前に広がる、青いアジサイの群落だ。こんなに見事にアジサイの大輪が咲く寺は、どこなのか。分からないだけに興味津々。

来客が途切れたのを捉え、訊いてみると、「松戸のホンドジ」だという。調理場から出てきた親爺の説明により、JR常磐線北小金駅から徒歩10分にある、日蓮宗・本土寺であるのが分かった。境内には1万株が植栽され、松戸のアジサイ寺として有名だという。
店の老いた親爺は大のカメラ好き。このアングルが最高で、何枚も取った中のベストを伸ばしたものという。ひとしきりカメラと風景写真の蘊蓄を聞いた後、下田のアジサイに話を振ると、得たりや応と、「あそこはいいアングルがたくさんある」と頷く。

さらには「鎌倉のアジサイ、ここも外せない」と、話を続ける。とりわけ北鎌倉の明月院、そこのアジサイは「明月ブルー」といわれ、カメラ好きには腕の見せ所。構える角度やシャッターに神経を集中する、という。
 6月ごろから、自生するタマアジサイが、大きな丸い蕾が弾けるように開花する。その澄んだ藍色は吸い込まれそうなほど。今年はコロナで行けないのが悔しくて…という。
鎌倉には建長寺や長谷寺、浄智寺、妙本寺、稲村ケ崎などなど、アジサイの名所は尽きない。コロナが終息したら、ぜひ回ってこいと勧められる。

さて14日、関東甲信地方にも梅雨入り宣言が出た。だが今年の梅雨は梅雨前線の活動が活発で大雨が多くなるという。まさに、<紫陽花や壁のくづれをしぶく雨─正岡子規>となろうか。梅雨晴れを狙って、近在の寺や公園に咲くアジサイでも見物に行こうかと思うが、それも容易ではなそうだ。(2021/6/20)
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2021年06月19日

【スポーツ】競技者とメディアに一石=大野晃

 女子テニスの大坂なおみさんが、全仏オープンで記者会見を拒否し、ルールにより罰金を科されて、大会を棄権した。
「精神状態を無視された」が会見拒否の理由だったが、大坂さんは謝罪し、大会主催者は改善策を協議するという。
競技者とメディア、そして競技会主催者の競技団体の関係に、一石を投じる事態だった。
 世界的な競技会の発展は、競技者と競技団体とメディアの三者の協力で発展してきたことを歴史は教えるが、競技団体とメディアによる競技会の商業主義的利用の拡大により、三者の関係が極度に歪んできたことを如実に示す事態である。
 競技団体は、メディアを通じて競技会の興行化を拡大し、メディアは競技者を商業利用して、競技者は多額の収入を得るようになった。
 競技会の本質的意義を重視して、互いに協力する信義とルールを尊重していたはずなのだが、歯止めのない商業主義路線は、時として、信義を踏みにじる行為に走らせた。
 競技者とメディアの関係は、これまでも問題をはらんできたし、記者会見では本音を語らず、SNSを通じて意思表示する競技者が多くなった。
 競技団体はメディアを宣伝媒体とみなし、実態を隠して形式的な対応をとり、取材制限は強まるばかりだった。

 その典型が、東京五輪に現れている。
 政治利用を狙う政府や経済効果を期待する企業利益が強力にけん引して、主催者の国際オリンピック委員会は、世界の安全に不安があっても、開催強行に動き、メディアは開催利益を求め続け、競技者は競技成果に執着する。
 それらが、五輪の意義を無視した、異常な開催を招いていると言えまいか。
 しかも、コロナ禍のオンライン取材の拡大で、メディアが競技者や競技団体の実態を把握しにくくなり、五輪開催を巡る事実確認は断片的にしか進まない。
 大坂さんの一石も、東京五輪開催も、スポーツ報道の本質的な問題提起である。
大野晃
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2021年06月18日

【おすすめ本】松田 浩『メディア支配 その歴史と構造 』─「深刻な現実」への危機意識 闘うジャーナリズムの構築を=栩木 誠(日経支部)

日本でテレビ放送が始まった1953年、日本経済新聞に入社した著者は、組合やJCJ活動などで活躍しながら、「ラテ(ラジオ・テレビ)欄」などを担当する電波報道部に配転となった。
 しかし、このことが半世紀以上にわたり、最前線の放送ジャーナリスト・研究者として活躍、 多大な実績を記す出発点となった。本書はメディアの現場で闘い、研究を続けてきた歩みの集大成であり、遺著である。
 いま政府・官邸によるニュース・情報番組への介入、NHKや一部民放幹部などによる忖度が、一段と激しさを増す。
 吉田内閣による電波監理委員会の廃止を一里塚に、1960年代後半から70年代前半にかけての5大全国紙とテレビ・キー局の資本系列一本化、テレビの多局化と再編成、さらには「権力の番犬」であるべき新聞テレビの「情報産業」化と ジャーナリズムの変質。
 さらに政府によるメディア統制の野望と波状攻撃の中で、「政権に同調的なマスネディアが作られてきた」ことを、本書は解き明かす。戦後マスメディア史の優れた概説書でもある。
 本書に流れる基調は、「言論・表現の自由の危機」に対して、「権力の番犬」としての役目を十分に果たしてこなかった「マスメディアの深刻な現実」への危機意識と怒りである。
 「いま何より急務なのは、この日本の現実を国民一人一人が見極めること、そしてなぜこういう事態になったかを歴史に学ぶこと、この二点ではないだろうか」
 視力の衰えに抗しつつ1文字1文字に全思いを傾注した著者の後輩として、行間から溢れる「闘うジャーナリズム」の心を継承したいと思う。(新日本出版社1900円)

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2021年06月17日

【焦点】AWSから情報が米国に EU阻止へ 無警戒の日本=橋詰雅博

 欧州連合(EU)の欧州データ保護監督機関(EDPS)は、EU機関によるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)など米国のクラウドサービス利用について欧州市民の個人データが米国に漏れるリスクがあると見て調査を開始した。
 EDPSが調査を実施する背景には、米国での「海外データ合法的使用明確化法(クラウド法)」の成立がある。このクラウド法は米国企業が保有・管理する国内外のデータの提供を米政府が求めたなら企業はそれに従わなければならないのである。この2018年3月の法制化に対応するためEUは2カ月後の5月に一般データ保護規則(CDPR)を施行。CDPRは個人データの移転を厳しく規制した。
 加えてEUの最高裁にあたる欧州司法裁判所は、米国への個人データ移転のルールである「プライバシー・シールド」を無効だと20年7月に判断した。
 EDPSの調査開始と裁判所の判断は、米のクラウドサービスに依存を高めるEU機関からの個人データが米当局に収集・監視される危険性に歯止めをかけたのだ。
 問題視されるAWSのクラウドサービスは日本でも政府が採用している。昨年10月から運用を開始した政府共通プラットフォームがそれで、クラウドサーバーに東京・霞が関の全府省を始め国会、裁判所、自治体などの情報が入る。昨年2月に「米企業のクラウド利用に懸念はないのか」と記者に質問された当時の高市早苗総務相は「AWSはセキュリティ対策も含め極めて優れている」から心配ないと答えた。
 サーバーは国内にあるし、AWSの日本法人が運営しているとはいえ、決して安心できない。クラウド法に基づき米政府から依頼を受けた親会社のアマゾンからこんな情報を欲しがっているという要請を日本法人は断れるだろうか。リスクがあまりにも大きい(JCJ機関紙『ジャーナリスト』1月25日号 http://jcj-daily.seesaa.net/article/479771429.html
 EUは米国に流れる恐れがある個人データ阻止をめざし活動を強化した。日本のアマゾンクラウドサーバーには重要な政府情報などが蓄積される。米国への情報漏洩のリスクを回避するため日本も行動を起こすべきだ。無警戒は許されない。
 橋詰雅博


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2021年06月15日

【スポーツ】 事前合宿 感染対策の実験台=大野晃

 「緊急事態宣言下でも東京五輪は開催する」と国民を驚かせたコーツ国際オリンピック委員会副会長の地元の豪州から女子ソフトボール代表が、五輪事前合宿の第1号として来日し、群馬県太田市で活動を始めた。
 日本のむし暑さなどに慣れるのが目的らしいが、開幕予定まで1カ月以上をかけて、検査漬けと隔離を特徴とする新型コロナウイルス感染症の感染対策の、不自由な実験台を思わせる。感染対策などで100を超える自治体が事前合宿断念を決めた中だけに、競技者に忍耐を強いる開催への実績作りにも映る。
 菅首相は、東京五輪開催の意義に関して、コロナ禍で二転三転したうえ、「スポーツの力を発信する」と競技会一般論に縮小させてしまった。これでは、巨額な税金を投じた大規模な五輪開催の国民的成果を期待できない。
  山下泰裕日本オリンピック委員会長に至っては、開幕予定まで50日を切っても、「安心安全な開催を信じる」と神頼み的発言を繰り返し、動揺する五輪代表の声に耳を貸そうとしない。そういえば、女性差別発言で辞任した森喜朗前組織委員会長は、「日本は神の国」発言で辞任した元首相だった。
  政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は、「感染の世界的流行での開催は普通でない」と厳しく指摘した。 開催強行に科学的根拠が見出せないまま、政府の固執が、混乱に拍車をかけている。
 しかも、ワクチンの優先接種が始まった五輪代表たちは、開催の是非に沈黙を強要されているようだが、感染は自己責任と突き放されてもいる。多国間の競技者同士や応援ファンとの交流は規制され、公平な条件での競争が保障されず、行動の自由が制限されて、安全が確保されない競技会への、無批判な出場が求められている。
 五輪にとどまらず、一般的な競技会としても、異常な「2021年東京五輪」がスポーツ史に刻まれそうだ。
 日本スポーツの実情を、世界は注目している。常識外れの孤立を恐れる。
大野晃 (スポーツジャーナリスト)
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2021年06月14日

【裁判】行政も司法も自衛隊に忖度 おおすみ事故 民間生存乗客の証言無視=沢田正

                        
釣り船「とびうお」.png


自衛艦と釣り船衝突事故をめぐる広島地裁判決について先月号に続き、取り上げたい。
 事故は2014年1月15日朝発生、広島県沖の瀬戸内海で海上自衛隊の大型輸送艦「おおすみ」(8900d、178b、写真下)と釣り船「とびうお」(5d未満、7.6b、写真上)が衝突、転覆した釣り船の船長ら2人が死亡した。 
 事故を調査した国交省運輸安全委員会は翌15年1月、釣り船が事故直前に右転し、おおすみが避けきれず衝突したとする船舶事故調査報告書をまとめ、この後右転原因説が捜査などの基調となった。船の生存乗客2人はともに、おおすみが後方から接近してきて衝突したと証言、右転を否定したが、安全委は衝突現場から1.3`離れた島の目撃者やおおすみ乗員の供述を右転の根拠とした。
 事故ではおおすみの艦長と航海長、釣り船の船長の3人が業務上往来 危険容疑などで書類送検されたが、広島地検は12月、釣り船が1分前に右転したのが衝突の原因として艦長ら2人を不起訴、釣り船船長は死亡で不起訴とした。検察審査会も不起訴相当と議決。
遺族や被害者らは16年5月、真相を究明し、責任を追及する最後の手段として国家賠償請求訴訟に踏み切った。
                     
輸送艦.jpg
                                
 
 裁判で、防衛省の艦船事故調査報告書全文やおおすみのレーダー映像、艦橋の音声記録や乗員の供述などが初めて開示された。釣り船の航跡記録は水没で失われ、おおすみのレーダーも衝突約4分前から釣り船をとらえておらず、右転を裏付ける記録はなかった。
原告側は釣り船の右転を否定、おおすみが後方から戦闘態勢の高速で釣り船に接近し、針路が交差する態勢になったのに回避義務を怠ったのが衝突の主因と主張。接近した2船の相互作用で釣り船の船首がおおすみ側に吸引されて衝突した後、おおすみの操艦ミスで船尾と再衝突し転覆したと訴えた。
国・海自側は、釣り船がそのまま進めばおおすみの前を通過できたのに衝突直前におおすみ側に右転したため衝突したので、おおすみに回避義務はないと主張した。

 今年3月23日の判決は、両船の航跡を延長すると釣り船が右転しない限り衝突しないと認定、艦長ら乗員の証言とも合うとして衝突30秒前に釣り船が右転したと結論付けた。釣り船生存乗客の証言は無視された。ずさんな認定とのそしりを免れないだろう。
 見通しのよい海上で起きた自衛艦と民間船の衝突事故で、運輸安全委、防衛省、海保、検察、裁判所がそろって、直接証拠もなく、民間側の証言を無視した上で一方的に民間側に非があり、自衛艦に何の責任もないという判断をした。行政も司法も自衛隊に忖度していると危惧するのは筆者だけだろうか。
沢田正(広島支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
 
 
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2021年06月13日

【今週の風考計】6.13─「墨汁一滴」から田辺聖子「十八歳の日の記録」へ

<ねんてん先生の文学のある日々>を、いつも楽しみに読んでいる。俳人・坪内稔典が「赤旗」文化欄に、毎月第一金曜日、執筆している。
 この4日付の75回では、正岡子規の「墨汁一滴」に触れて、子規と漱石との交遊を綴っている。
興味を覚え、書棚から170ページの岩波文庫を引っ張り出して再読。あらためて脊椎カリエスに苦しみながら、毎日、「墨汁一滴」分の文章を、一年半も書き続けてきた精神の強靭さに心打たれる。
<この頃は左の肺の中でブツブツブツブツといふ音が絶えず聞える。これは「怫々々々」と不平を鳴らして居るのであらうか。あるいは「仏々々々」と念仏を唱へて居るのであらうか。あるいは「物々々々」と唯物説でも主張して居るのであらうか。>(四月七日)
 東京市下谷区上根岸の寓居で書く、この一文は鬼気迫る。

子規への想いを膨らましているところに、<田辺聖子「18歳の日の記録」没後2年、押し入れから出てきた一冊のノート>というニュースである。そういえば6月6日が命日、享年91。今年は3回忌に当たる。
見つかった日記ノートは、田辺聖子が18歳になったばかりの昭和20年4月1日から書き初め、22年3月までの日々を綴った記録である。とりわけ昭和20年6月1日の「大阪大空襲」に遭った際の詳細な記録は、その後の「聖子の原点」を彷彿とさせる。
10日発売の雑誌「文藝春秋」7月号に掲載された田辺聖子「十八歳の日の記録」から、恐縮だが引用させていただくと、
<お父さんも、私が帰ったときいて、ぬれしょぼれた格好で向うからやって来られた。「そうか、帰って来たのか、家、焼けたよ。ははっは。これも戦争じゃ戦争じゃ、仕様がないわい、しかしこれで皆、無事に揃うて、まず目出度いとせなあかん」とお父さんは、快活に言った。私はたとえ、それが不自然であっても、しおれた皆を元気づけようとする心がうれしかった。>(六月二日)
 とあり、大阪市此花区にあった父が経営する田辺写真館が燃え落ち、家族は一睡もできない夜を過ごした状況が描かれている。

また敗戦の「八月十五日」には、万年筆で丁寧に書かれた他のページとは違い、「墨汁一滴」墨文字が一気呵成に躍っているという。
<何事ぞ! 悲憤慷慨その極を知らず、痛恨の涙滂沱として流れ肺腑はえぐらるるばかりである。我等一億同胞胸に銘記すべき八月十四日。嗚呼、遂に帝国は無条件降伏を宣言したのである。>
愛国心いっぱいの軍国女学生の思いが、ほとばしる。だが翌年の大晦日には、二十歳を前にして、こう綴る。
<来年も、勉強して小説を書こう。私はもう、この道しか、進むべき道はない。そう、信じている。来年もまた、幸福な精神生活が送れますように。>

さて、ここまで書いてきた筆者の誕生日は6月12日。もう一度「墨汁一滴」を繰ってみる。今からちょうど120年前の同日、34歳の子規は病床から、次のように書いている。
<植木屋二人来て病室の前に高き棚を作る。日おさへの役は糸瓜殿夕顔殿に頼むつもり。碧梧桐来て謡曲二番謡ひ去る。曰く清経曰く蟻通。>(六月十二日)
 猛暑に備えて、梅雨どきの庭の植栽に心を配る子規、そこへ見舞いに訪れた俳人・河東碧梧桐が謡う能「清経」「蟻通」の一節が響く。おお、この情景と余韻、サイコー!(2021/6/13)
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2021年06月12日

【オンライン講演】監視強化に進むデジタル法 大住弁護士が講演 個人情報保護は二の次=須貝道雄

デジタル監視法の危険性を語る大住弁護士.jpg

デジタル庁創設などを規定した「デジタル改革関連法」が5月12日、成立した。JCJはそれに先立つ4月24日、同法の問題点を考えるオンライン講演会を開いた。講師の弁護士、大住広太さん(写真)は同法を「デジタル監視法案」と呼ぶのがふさわしいと指摘。政府・警察や企業による個人情報の利活用が優先され、市民のプライバシーは危険にさらされると警鐘を鳴らした。

AIによる悪用
生年月日や住所、健康状態、趣味嗜好といった個人情報が政府や企業によって吸い上げられ、データベース化されると、AI(人工知能)が発達した現在では思わぬ形で利用される。大住弁護士は例をあげて説明した。
 米国の一部裁判所では、いくつかの個人情報をもとにAIで再犯率を計算し、判決で執行猶予を付けるか否かなどの判断材料に採用している。フェイスブックから大量の個人情報入手し、的を絞って政治広告に生かした疑惑(ケンブリッジ・アナリティカ事件)も米大統領選挙であった。日本も例外ではない。就職活動支援で集めた学生らの個人情報を分析し、内定辞退率を企業向けに販売したリクナビ事件は耳に新しい。
  デジタル監視法のもとで創設されるデジタル庁はマイナンバーカードの利用を推進する。同カードは健康保険証、運転免許証、銀行口座、国家資格などと関連付けられる予定で、デジタル庁には膨大な個人情報が集まる。自治体の持つ個人情報も一元管理が可能となる。

政府と警察接近
この情報を誰がどのように利用するかが問題だ。デジタル庁のトップは首相で、強大な権限を持つ。情報機関の内閣情報調査室と連携して仕事をする可能性が高く、かつ内閣官房では警察出身者が要職についている。法律では「相当な理由」があれば行政組織間で個人情報のやり取りができる。個人情報をめぐって「政府と警察の接近が進む」と大住弁護士。市民監視、治安維持に重点利用される可能性が高い。
もう一つは民間のIT企業が食い込む恐れだ。デジタル庁には特別職のデジタル監一人を置き、民間から起用する方針だ。職員(100人程度)も民間から週3日勤務の非常勤で採用する。IT企業の自席からパソコンで役所の仕事をする勤務も可能で、「所属するデジタル企業に有利な政策判断がされやすくなる」
民間企業による個人情報の第三者への提供には@法令にもとづくA国への協力B学術研究の目的――の条件クリアが必要だが、解釈はいかようにもでき、本人同意のないまま個人情報の流出が広がる懸念も強いという。
公的給付金を素早く受け取ることができる、書類の押印を省くなど、デジタル化の利便性を政府は強調する。だがその利点はわずかで、同法の主眼は、中央に吸い上げた個人情報を政府・企業が市民監視や経済目的に円滑に活用できるようにする点にある。情報保護は二の次だ。

データの支配権
これに対しEUには一般データ保護規則(GDPR)があり「自然人は自身の個人データの支配権を持つべきである」(前文)との原則を掲げている。勝手に本人に無断で個人情報を第三者に提供できないよう「情報の自己コントロール権」をうたっているのである。
具体的には情報主体によるアクセス権、消去の権利、自動化による決定(AI活用)の対象とされない権利などだ。今回の日本の法律にはこの権利規定が不十分で「AIが広まった社会に対応していない」と大住弁護士は批判した。
これまで個人情報は各自治体と政府の間で分散して収集・管理していた。デジタル庁で一元管理されるとサイバー攻撃に脆弱となり、情報漏れが起きると被害は甚大になる。こうした難点にも法は目をつぶっている。
端的に表現すると、日本のデジタル化は「欧米型とは異なり、監視社会の中国型」。個人情報の利活用に歯止めをかける適切な規制が不可欠だと提言した。
須貝道雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
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2021年06月11日

【沖縄リポート】「沖縄・奄美 世界遺産へ」複雑な思い=浦島悦子

                           
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  5月11日、地元2紙の1面トップに「沖縄・奄美 世界遺産へ」の大見出しが躍った。国際自然保護連合(IUCN)が「奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島」を世界自然遺産に登録するよう勧告、7月に正式決定される見込みだという。2018年の登録延期以来3年、地元や県の「安堵」「歓喜」を伝える紙面を見ながら、私の胸は複雑だ。
 30年前、私は沖縄島北部(やんばる)の自然林を切り裂いて建設される広域基幹林道(県営)「大國林道」の反対運動にかかわり、残念ながら造られてしまった後、「琉球諸島を世界自然遺産に!」と訴える市民運動に加わった。私たちの願いは、繊細な島の生態系に合わない過度の開発をやめ、自然破壊の最たる米軍基地をなくし、海と陸を含めた島嶼生態系を一体として保全する仕組みを構築することであり、世界自然遺産登録は目的ではなく「手段」だった。
 やんばるの登録予定地は米軍北部訓練場に隣接する。2016年に過半が返還されたとはいえ、なお4000ha近くもあり、オスプレイを含め激化する一方の訓練が周辺住民と野生生物を脅かしている。返還地からは薬莢や放射性物質を含む廃棄物が次々と見つかり、かつて使用されていた枯葉剤の汚染除去もされないままだ。さらに、近接の辺野古・大浦湾海域では、世界遺産に匹敵すると言われながら新基地建設のための工事と破壊が進む。
 また奄美大島では、鹿児島県が「奄美世界自然遺産トレイル」のルートを公表したが、そのルート上にある市(いち)集落には、辺野古への土砂搬出の可能性のある採石場が立ち並ぶ。採石場周辺の自然調査を行っている「海の生き物を守る会」の安部真理子さんは、「大型ダンプが1日何台も行き来し、トレイルに書かれている『自然や人とのつながりを感じる心』とか『地域住民が地域の誇りを再認識する』とは程遠い場所だと思う」と語る(写真)。
 登録を機に、私たちが考えるべきこと、取り組むべきことはあまりにも多い。   
 浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
 
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