2021年07月11日

【今週の風考計】7.11─「ソーバーキュリアス」の陰で居酒屋の悲鳴

「ソーバーキュリアス」なる語句を知った。英語で「Sober Curious」。酒は飲めるのだが、あえて飲まない人たちを指す。「Sober=しらふ」「Curious=ふりをする」を組み合わせた造語だ。
 欧米の若者を中心に、トレンドになっているそうだ。日本も例外ではないという。日本の若者の半分以上は、ソーバーキュリアス的なライフスタイルを選択しているとか。
「本当にそうかい?」─疑問に思ってしまう。緊急事態宣言が発せられ、酒類の販売禁止が要請されているのに、渋谷や歌舞伎町など繁華街の路上で、缶酎ハイや缶ビールを座り飲み、酔っぱらっている若者の映像が、テレビから流れる。これは例外か。

それにしても巣ごもり″を強いられる我が身にあっては、家での晩酌、ビールのロング缶は欠かせない。サラリーマンや労働者だって、帰りがけに「ちょっと一杯」の息抜きは必要だろう。ストレスの多い毎日にあって、「ソーバーキュリアス」などと洒落ている<優雅な一日>はないだろう、それが実態だと思う。

東京都に4度目の緊急事態宣言が発令された。12日から8月22日までの6週間だ。再び飲食店に酒類提供の全面禁止が要請される。
 居酒屋は「また酒が悪者にされるのか」と怒りの声を挙げる。「五輪をやるなら、居酒屋もやらせてくれ、酒がダメなら潰れるしかない」と憤るのも無理はない。
 しかも政府は、金融機関に対し、酒の提供禁止に歯向かう居酒屋・酒卸業者に「金を貸すな」みたいな脅し・締め付けを依頼しようなどという。まさに言語道断、撤回するのは当然だ。

筆者も時には行く、東京・新宿のビア&カフェ「ベルグ」副店長・迫川尚子さんの<酒に罪はない─新宿駅最後の小さなお店の悲鳴>という一文を読んだ。
 「時短営業、酒類の提供自粛は本当に厳しく、赤字は何百万円にも上ります。創業して50年たちますが、最も危機的な状況です。…コロナ対策は万全を期したうえ、…うちは仕事帰りの労働者が立ち飲みで、さくっと飲んで、ちょっと摘まんでさっと帰るというスタイルの店、お酒に罪はないですし、軽く一杯、というささやかな楽しみまで奪わなくても良いのではないかと思うのです」(「女性のひろば」8月号)

顧みれば、コロナ感染防止を目的に飲食店や居酒屋に発令された規制は、時短要請や酒類の販売自粛・禁止など、昨年11月28日から今年の8月22日まで、連続して6か月間に及ぶ。
 コロナ対策の全てが「現場に尻ぬぐいさせる」対応では、誰も政府の緊急事態宣言など、信用しなくなるのは当たり前。
 「ああいえば上祐」じゃないが、「いずれにせよガースー」の菅政権の発令など、信頼はもう吹きとんだ。退場してもらうしかない。(2021/7/11)
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2021年07月10日

【JCJ声明】北海道新聞記者の逮捕に抗議する 建造物侵入罪の濫用は取材行為への脅しに直結

 国立大学法人旭川医科大学の校舎内で、取材中の北海道新聞記者が建造物侵入の現行犯により逮捕された。大学側は「その場で身分や目的を問うたが、明確な返答がなく立ち去ろうとしたため、学外者が無許可で建物内に侵入していると判断し警察へ連絡した」と説明し、警察は「常人逮捕」(大学職員による逮捕)として身柄の引き渡しを受けたと発表。警察は記者を48時間留置した。記者の取材行動をめぐり、学問の府と警察権力が報道機関を「懲らしめる」という構図になった。
 これは行き過ぎた大学の取材規制、不必要な警察の身柄拘束であり、看過できない。取材者に対する一種の脅迫である。公益目的の取材活動を萎縮させ、ひいては市民社会の自由の束縛につながることを私たちは危惧し、大学と警察に抗議する。
 今回の逮捕は建造物侵入罪の濫用の疑いが濃厚だ。今後、建物内の取材規制に同罪が悪用されれば、報道の自由は大きく揺らぐ。現に、取材のためにカルト教団の公開施設に入ったフリーランスの記者が建造物侵入罪で有罪判決を受けるという問題が起きている。新型コロナウイルスの感染防止を理由にすれば、どこでも取材記者を立入禁止にできるという悪しき例にもなる。

 大学職員に現認された記者は当初、身分を明かさなかったのは事実のようだ。では大学はいつの時点で道新の記者であることを認識したのか。JCJ北海道支部の質問に、大学は「捜査中」を理由に回答を拒否した。しかし、道新関係者によると、記者は警察官に身柄を引き渡される前に姓名と身分を明かしていたという。それが事実なら、大学は新聞記者と認識した上で警察に引き渡したことになる。その細部の説明をなぜしないのか。したくない何らかの理由があると疑わざるを得ない。

 その後の警察の対応も明らかに異様である。48時間の留置後、任意捜査に切り替え、記者を釈放したが、捜査は継続中とのことである。記者の行動への指示命令系統を解明するための捜査らしい。いったい何が目的なのか、深い疑問を禁じ得ない。報道機関への過剰な「一罰百戒」の意図が透けて見える。

 道新記者は立入禁止区域に無断で立ち入り、非公開の会議をドアの隙間から無断録音していたという。大学側がこの人物を取材中の記者だと認識したとすれば、記者に抗議して退去を求める、北海道新聞に抗議する、取材手法の是非を社会に問う、など警察権力に頼らない対応ができる状況ではなかったのか。現行犯で逮捕する必要があるほどの実害も、大学側の説明からは見当たらない。

 旭川医大が北海道新聞記者を記者と認識した上で警察に引き渡したとすれば、報道機関の取材活動の是非をめぐって警察権力の介入を許す軽率な対応であったと言わざるを得ない。旭川医大は記者を警察に引き渡すまでの詳細な経緯と判断の根拠を検証し、結果を公表すべきだ。

 一方の当事者である北海道新聞は記者逮捕から2週間後の7月7日、社内調査結果をようやく公表した。「記者教育に問題があった」など低姿勢の釈明に終始し、事実上の謝罪となっている。記者が逮捕されたことについて「遺憾」と言うだけで、大学や警察の対応の問題点には一言も触れておらず、報道機関としての矜持に欠ける内容になっているのは残念としか言いようがない。事の本質に正対することを望みたい。
 報道規制をかいくぐってでも事実に肉薄し、何が起きているかを取材し、伝えるのが記者の本来の役割であり、仕事である。規制に唯々諾々と従っていては、かつての大本営発表のような記事ばかりになる。事実を知る権利のある市民の期待に応えることはできない。今回逮捕された記者も取材目的で建物に入ったのであり、正当な行為であった。その点から実名報道は不適切であり、道新はすぐに大学と警察に抗議すべきだったと考える。

 道新記者の行動の背景には旭川医大の報道対応、情報開示の在り方の問題点も指摘されている。旭川医大は、学長の学内学外へのハラスメントで別の病院を巻き込み、コロナ禍で苦しむ旭川医療圏の医療を大混乱に陥れた。感染者や死者が多く出たのは、こうした混乱も一因との指摘もある。病院長も解任された。事実を知りたいとの声が極限に達している。一方で、患者や市民への説明はほとんどなされていない。取材は必要な状態だった。
 しかし毎日新聞の記事によれば、大学側は記者たちの直接取材の求めにほぼ応じず、メールのやりとりでも「回答は差し控える」と無回答が多かったという。取材のため構内に入った複数の記者と、制止する大学側との間にトラブルも起きていた。

 一般市民の批判が情報開示に後ろ向きな大学に対してではなく、そこを突破しようとする報道機関に向けられがちな社会風潮にも私たちは危機感を覚える。国民の知る権利に奉仕するジャーナリズムが、今回の問題で揺らぐことがあってはならない。

2021年7月9日
日本ジャーナリスト会議

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【沖縄リポート】県民をスパイ視の悪法成立=浦島悦子

                         
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 稀代の悪法「重要土地調査規制法」案が参議院において、強行採決か廃案かの大詰めを迎えている(6月11日現在)。
 辺野古新基地建設工事の強行、「中国の脅威」を振りかざした宮古・八重山での自衛隊基地建設、日米共同訓練の激化等々、軍靴の足音が日々高まる中でこの法案が出てきたとき、「とうとうここまで来たか」と背筋が寒くなった。
  住民の反対を踏み潰して強行されるそれらの動きに対して、住民はなお不屈のたたかいを続けている。政権にとってそんな「目の上のタンコブ」を「一掃」できるのが同法というわけだ。「その他政令で定める」「その他の関係者」「必要がある場合」など、調査や規制の対象は権力者の胸先三寸。住民の相互監視や「密告」が奨励され、罰則もある。
  普天間基地を抱える宜野湾市の市長も務めた伊波洋一参議院議員は、米軍基地に土地を奪われ、基地周辺に居住せざるを得ない住民や「国境離島」の住民など沖縄県民すべてを「スパイ視」する法案だと追及した。

 この法案に反対し廃案を求める声明には全国297団体が賛同し、衆議院・参議院での審議に合わせて院内集会がもたれた。衆議院での院内集会(5月26日)では私も、辺野古現地からリモート発言し、「米軍キャンプ・シュワブの国道を隔てた向かいにある座り込みテント(写真)など、私たちが基地周辺に持っている3つの拠点が法の対象にされるのは明らか。住民を委縮させ、市民的抵抗の拠点を奪うものだ」と訴えた。最近、ゲートには多数の監視カメラが追加新設されている。
  6月4日、鳥類研究者の宮城秋乃さんが県警の家宅捜索を受け、県民に衝撃が走った。米軍北部訓練場の返還跡地に散乱している米軍廃棄物を回収し、基地ゲートに置いたのが威力業務妨害だとして、パソコンやビデオカメラ等が押収され、連日事情聴取された。「審議中の法案の先取り」「監視すべきは住民でなく基地だ」と抗議の声が高まっている。何としても廃案に!    
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
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2021年07月09日

【おすすめ本】魚住 昭『出版と権力  講談社と野間家の一一〇年』─講談社の秘蔵資料から軍部との関係に光を当てる=萩山 拓(ライター)

講談社に眠っていた約150冊の秘蔵資料を読み解き、講談社の歩みのみならず、出版史の欠落を補った浩瀚な力作だ。
 創業者の野間清治は、講談をベースにした雑誌「雄弁」を創刊。その成 功を跳躍台とし、<日本の雑誌王>へと飛躍。だが雑誌王国・講談社の蹉跌は、初代・清治が病死した1938(昭和13)年10月以後に訪れる。
 つまりアジア・太平洋戦争下において、講談社が軍部へ協力・迎合していく歩みである。「第七章 紙の戦争」の扉写真にも出てくるが、出版統制を指揮した内閣情報部の鈴木庫三陸軍中佐との関係である。

 社史『講談社の歩んだ五十年』には<書かれざる部分>として秘されてきた顧問団への謝礼金額が典型である。1941(昭和16)年2月、鈴木庫三中佐から陸軍御用達″の知識人14人を講談社の顧問団として、受け入れるよう迫られた。
 やむを得ず顧問団は社外の事務所に置くことを条件に受け入れる。かつ顧問団への「謝礼の総額は月に五千三百円〜四千二百円、年額では五万円前後に達する。今でいえば数千万円から一億円前後に相当するとみていいだろう」と、著者は初めて本書で解明する。
 「第八章 戦時利得と戦争責任と」では、第4代・省一社長が誕生した1941(昭和16)年7月以降も、鈴木庫三の提案で皇国文化協会が創設され作家の動員に協力。
 軍部が強行する出版の事業統制・用紙の重点配給に際しては、軍部からの優遇を受け、戦意発揚の新雑誌を次ぎ次ぎと創刊して国策にこたえる迎合ぶりだ。
 この1941年から敗戦までの4年間の講談社の歩みを辿った叙述こそ本書の白眉である。(講談社3500円)
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2021年07月08日

【オンライン講演】ミャンマーはどうなっているか ドキュメンタリー監督 岸田浩和さんが語った=須貝道雄

                       
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JCJは5月15日、「ミャンマーはどうなっているのか」の題でオンライン講演会を開いた。2月の軍部クーデターについて、講師のドキュメンタリー監督、岸田浩和さん(写真)は2点の要因を挙げた。
一つは、軍に有利な現行憲法の改正をアウンサンスーチー国家顧問が主張し始めたこと。もう一つはスーチー氏率いるNLD(国民民主連盟)政権が国境地帯の麻薬取引にメスを入れ、軍幹部に還流する裏金が止まるとの懸念が強まったことだという。
 2020年秋の総選挙でNLDが圧勝した後、民主化が進むとの期待から、スーチー氏に海外の政府・企業が目を向け、軍部に危機感が高まったことも大きいと指摘した。
たとえば、ミャンマー軍と「太いパイプ」を持つ元国会議員で日本ミャンマー協会会長の渡邉秀央氏の行動だ。今年1月に同国を訪れたとき、初めてスーチー氏と先に会い、ミンアウンフライン国軍最高司令官との会談は後にした。「これまで渡邉氏はスーチー氏とは距離を置いていた。付き合い方を変える姿勢が見えた」。軍が会見で「選挙に不正」と言い始めるのはその直後。順位の変化に敏感に反応したことがうかがえる。

欧米からの支援を得るため、軍事政権が「見かけ上の民主化」 を企図したのは2008年から。憲法で議会の25%を軍人議席で固定し、憲法改正など重要問題は75%以上の賛成が必要と定め、何事も軍次第の体制をつくった。
2015年にNLDが選挙で勝利しても、軍は表向きスーチー氏と仲良くした。「理由は国軍系の企業に投資が集まっていたから」。その構造が20年総選挙後に崩れることを恐れたと見られる。
 クーデターに対し、軍部と太いパイプを持ちながら沈黙した人物がいる。日本財団の笹川陽平会長。彼は昨年11月の総選挙で監視団長を務めた。
日本政府は今年5月に食料向けに400万jを同国に無償支援すると発表した。これが市民に届くのか、軍部の懐に入ってしまうのか。地元では「クーデター政権に水をやるのか」と懐疑的な見方が広がってるという。      
岸田さんは1997年から2年間、ヤンゴン外国語大学に留学。ミャンマー取材の経験が長い。
須貝道雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号     
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2021年07月06日

【新型コロナ禍】自衛隊接種センターシステム欠陥報道 正当な取材活動への非難 政府・読売・産経一体=臺宏士 

  菅義偉首相の肝いりで設けられた「自衛隊大規模接種センター」(東京)で行う新型コロナウイルスワクチン接種のネット予約をめぐり、地方自治体が送付する接種券に記載された市区町村コードや接種券番号と異なる架空の番号でも予約が完了となる仕様であることが報道で発覚した。朝日新聞出版のニュースサイト「AERA dot.」(5月17日「予約システムに重大欠陥」)と毎日新聞(18日朝刊「防衛省『善意頼み』」)は、記者が実際に予約確認したうえで報じた(予約はキャンセルした)。

 自由のない国か
 閣僚からは「面白半分に予約を取って、65歳以上の方の予約の邪魔をし、それを誇っているかのような報道」(河野太郎行政改革担当相・前防衛相)、「ワクチンそのものが無駄になりかねない悪質な行為で、極めて遺憾」(岸信夫防衛相)と報道に批判の矛先を向ける発言が相次いだ。
 読売新聞や産経新聞も取材手法を問題視した社説を掲載し、政府の擁護に回った。読売は「適切な取材方法とは言えまい。報道機関は責任を自覚する必要がある」(25日)、産経は「憲法が定めた報道や取材の自由の範囲を明らかに逸脱している。不正アクセスそのものが問題であり、報道目的だから許されるとの考えなら、それは思い上がり」(20日)と非難した。取材や報道の自由のないどこかの国の報道機関のような言い分だ。
 朝日新聞出版は19日に「真偽を確かめるために必要不可欠な確認行為であり、政府の施策を検証することは報道機関の使命であり、記事は極めて公益性の高いもの」との見解を出し、毎日も19日朝刊で「放置することで接種に影響が出る恐れもあり、公益性の高さから報道する必要があると判断。架空の予約をしないよう呼び掛ける防衛省のコメントを載せ、紙面でも架空予約防止を呼び掛けている」と説明。朝日社説(25日)も「記事には公益性があり、抗議は筋違いだ」と反論した。
 
潜入取材は普通
 ネット予約システムの不備を確認するため架空の人物として身分や目的を偽った今回のような潜入取材は珍しくはない。
 古くは、ルポライターの鎌田慧氏が大手自動車メーカーの工場で期間工として働いて体験した過酷な労働環境を告発し、大きな支持を得た。福島第一原発事故で敷地内での取材が許可されたのは事故から半年以上も後だ。その間、劣悪な労働実態が週刊誌などで暴かれたのは、フリーライターらが作業員の身分で取材に入ったからだった。
 政治家や役人は都合が悪くなると記者を避けるように病院に逃げ込むのが常とう手段になっている。そうした場所には家族や看護師を装って接触を試みる取材も従来から行なわれてきた。
 政府・読売・産経と朝日・毎日が同じように対立した問題に特定秘密保護法の是非がある。国の安全保障にかかわる重要な情報を漏らした公務員らに厳罰を科す法律だが、情報を入手した記者も処罰の恐れがあることから大きな議論となった。

 反自衛隊を規制
 政府は「通常の取材は処罰されない」「西山事件に匹敵する行為」と繰り返すのみで審議は深まらなかったが、過去には自衛隊の取材観を示す好例がある。07年6月に陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊法施行令の訓令に基づき、イラク派遣に国民が異議を唱える行為を「反自衛隊活動」として情報収集活動を行っていたことが発覚した。朝日記者が基地周辺で隊員に感想を求める行為も同様の活動とされた。市民が起こした損害賠償訴訟の控訴審で、元情報保全隊長は広報を通さない取材について「場合によっては、取り上げることがあると認識している」と証言したが、記者を狙い撃ちにした違法な解釈だ。
 「前」と「現」の防衛相にしてみれば、同省発注のシステムに身分を偽って入り込むなど許しがたい取材であろうし、読売や産経も同じ立場だろう。「社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為」。西山事件の最高裁決定(78年)に照らしても、今回の確認は、正当な取材行為だ。政府・読売・産経が一体となった理不尽な非難こそ国民の生命を危険にさらしかねない。
 臺宏士(ライター)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号


  
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2021年07月05日

【月刊マスコミ評・新聞】菅政権批判 単発でいいか=白垣詔男

 「東京オリンピック・パラリンピック」に関する新聞各紙の社説は、政府に対する姿勢が、いつものようにくっきり分かれていた。権力監視が最大の役目である「ジャーナリズム」を守る姿勢を見せる朝日、毎日、西日本と「政府側から発想する非ジャーナリズム」読売、産経。
 社説の見出しは「理解得られぬなら中止を」(西日本5月25日)、「中止の決断を首相に求める」(朝日5月26日)、「緊急事態宣言の再延長 五輪優先の解除許されぬ」(毎日5月29日)、と「中止」に重点を置く3紙に対し、「開催へ感染防止を徹底せよ」(読売5月28日)、「開催努力あきらめるな 菅首相は大会の意義を語れ」(産経5月28日)と「開催」に賛意を示す。ただ、産経は「政府や組織委が掲げる『安全・安心な大会運営』は前提であって答えではない。開催意義をあいまいにしたまま『安全・安心』を繰り返しても、国民の理解は広がらない。菅義偉首相にはそこを明確に語ってもらいたい」と注文を付ける。
 ところで、「五輪開催」の是非を語るとき、「ワクチン接種の大幅遅れが国民に不安を与えている」ことに連動して触れる新聞(放送も)が皆無なのは視野狭さくだ。ワクチン接種が進んで、既にマスク不要やレストランの通常営業を再開した国もあるが、日本は「7月中に高齢者に接種」と後手後手の政権運営。なぜワクチンの輸入が遅れたのか。ワクチン接種の遅れは日本の外交力の弱さである。五輪開催の是非論議が今ごろ盛んになったことに不快ささえ覚える。大いなる政府の失政を日本のマスコミは指摘しない。
 目の前にある大きな問題を単発的に報道して、その原因である失政や外交力の弱さに言及しないマスコミの姿勢は疑問だ。
 東京、大阪のワクチン大規模接種会場の運営に自衛隊が当たった。コロナ禍は日本の安全保障問題なのに、自衛隊の活用を閣議や防衛省への指示だけでやってしまうのは疑問だ。政府の安全保障に対する考え方は「米国からの兵器爆買い」しか頭にないのか。自衛隊を動員するなら「国家安全保障会議」(議長は首相)を開いて決めるべきではなかったか。「国民の安全・安心を守る」を繰り返すだけの菅首相の「安全保障観」はどうなっているのか。
 白垣詔男
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
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2021年07月04日

【今週の風考計】7.4─日本を襲う「線状降水帯」と気候崩壊への対応

ちょうど1年前の7月4日、熊本県南部地域を襲った集中豪雨は甚大な被害をもたらした。今なお多くが仮住まい生活だ。これも「線状降水帯」が原因だという。その長さは約277キロ、総降水量は最大値633.3ミリに及んだ。
 そして今年もまた、集中豪雨が太平洋側に沿って、沖縄から四国、近畿、伊豆半島、熱海、箱根、房総地方まで連続して襲っている。
「線状降水帯」とは、発達した複数の積乱雲が線状になって並び、数時間にわたり同じ地域に停滞するか、通過しながら数百ミリの大雨をもたらす。台風を除けば、日本で起きた集中豪雨の約3分の2が「線状降水帯」によるものだという。
 なぜ発生するのか、大まかには地球温暖化による気候変動によるものの、詳細なメカニズムの解明や予測はできていない。

目を転じれば、カナダ西部が熱波による記録的な猛暑に見舞われ、6月29日の気温は49.6℃に上昇。ブリティッシュコロンビアでは1週間に719件の突然死が報告されている。もともと6月の当地域は平均気温が25℃ほど、2倍の暑さが襲ったことになる。
米国・北西部のオレゴン州ポートランドでも6月28日の気温が46.7℃、63人が死亡。ワシントン州シアトルでも42℃超を記録し、アスファルト道路が歪み、送電線が溶けたという。
 このような異常気象がカナダや米国北西部を襲い、熱波と干ばつの影響で山火事の発生数が今年、過去最高を更新するとの警告まで出ている。
昨年、シベリアの気温が過去最高の38℃まで上昇し、北極圏の永久凍土が急速に融解している。地球の冷却機能は失われ、平均気温の上昇につながっている。

いまや世界は異常気象に包まれ、気候変動どころか気候崩壊にさらされているのが実態だ。これも私たち人類が、無制限に二酸化炭素CO2を排出し続けた結果なのだ。
 米国のジャーナリストであるデイビッド・ウォレス・ウェルズが著わした『地球に住めなくなる日─「気候崩壊」の避けられない真実』(NHK出版)が、世界で大反響を呼んだ。
現状の温室効果ガス・CO2の排出ペースが続けば、今世紀末までに平均気温は4℃上昇するという。今でも2030年には地球の気温が1.5℃上昇するといわれる。
 さらに2050年までには、世界で100都市以上が浸水し、熱波、大洪水、大気汚染、経済破綻などが広がり、数億人が貧困にあえぐ壊滅的な危機に至ると予測している。 

それでは私たちはどうしたらよいか。この6月初旬に刊行された宇佐美誠『気候崩壊─次世代とともに考える』(岩波ブックレット)が、「気候正義」という概念を提起して、グローバルな視点から示唆に富む提言をしている。
 しかも次の世代を担う若い人びととの対話を通じて、理解と認識を共有する作業は貴重だ。ぜひ読んでほしい。(2021/7/4)
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2021年07月03日

【JCJ沖縄】旭川医科大による記者の私人逮捕と旭川東署による勾留に対する 抗議 声明  

 日本ジャーナリスト会議沖縄 (JCJ 沖縄) は、 旭川医科 大学 による取材中の記者の私人逮捕と、旭川東警察署による 48 時間の勾留について抗議 する 。大学と警察という公共機関による取材妨害と報道の自由の侵害にあた るもので 看過 できない 。 この行き過ぎた行為について大学と警察 へ経緯の 説明と謝罪を求め る 。
 旭川東警察署は 6月22日、旭川医科大 の施設内に正当な理由なく侵入したとして、建造物侵入の疑いで北海道新聞旭川支社の記者 を 現行犯逮捕 し 、その後 48 時間勾留 した 。しかし 同 大学では 同日、吉田晃敏学長の解任を審査する学長選考会議が開かれ ており、 署によると 記者は 「会議の場所を探すために入った」と 説明したとのこと である 。記者が、取材を目的に大学内に入ったことは明白であり、 逮捕にあたる事案でないことは 明らか だろう 。
 旭川医科大による私人逮捕についても大きな疑問が沸く。国立大学法人である同大は公共の施設であり、取材記者の通行も当然認められるべきものである。同大では昨年12月以降、報道各社の取材で、吉田晃敏学長による数々の不祥事が発覚した。そうした中の学長選考会議の開催直前に、新型コロナウイルス感染対策を理由に記者の大学内の通行を制限したことをもって「不法侵入」と主張することは、あまりにも道理が通らない。今回の事案は、大学側が「取材拒否をした」のであって、「不法侵入」とは全く別次元のものである。
 重要事項に関して取材拒否や情報の非公開を続けた大学側の姿勢や、大学の求めに応じて一方的に必要のない拘束を実行した警察署の対応こそが問題である。こうした事案が認められれば、取材により、マスメディアが権力を監視することは今後ますます困難となる。
 記者は逮捕の2日後に釈放されたが、同署は28日現在、在宅で捜査を継続中という。行き過ぎた捜査はいまだ続いている可能性が高い。また旭川医科大については後日、この記者が録音していたとして北海道新聞社に抗議文を送付しているという。勘違いも甚だしい抗議であり、北海道新聞社は、自社の記者と報道の自由を守るため、大学側と警察署に対して断固とした姿勢を示し、取材・報道の自由は国民の声であることを自覚すべきであろう。
 われわれ日本ジャーナリスト会議沖縄は、旭川医科大と旭川東警察署の一連の対応について強く抗議する。と同時に、なぜこのような事態が発生したのかその説明と、不当に拘束された北海道新聞記者への謝罪を求める。
                                                     2021年7日2日
日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ沖縄) jcjokinawa@gmail.com
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2021年07月02日

【リアル北朝鮮】5年ぶり党規約改正 集団指導体制へ転換か=文聖姫

 北朝鮮で今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会では、5年ぶりに党の規約が改正された。最近、その内容が明らかになった。
 『日本経済新聞』6月10日付によると、序文から「先軍」の文字が消え、「主体」も大幅に減ったという。「金日成同志と金正日同志の遺訓」という表現も削られた。先軍は金正日政権時代を象徴する言葉だ。金正日政権時代、北朝鮮では建国以来最悪と言われる経済難に見舞われた。その困難を乗り切るうえで、金正日総書記は軍事優先路線を掲げ、核兵器やミサイルの開発を進めた。主体は金日成主席が提唱した主体思想からきている。
 先代を象徴する言葉が消えるか、大幅に減った点、さらには両先代の「遺訓」という表現が削除された点などを考えると、金正恩総書記がいよいよ“独り立ち”を宣言したものととれる。すでに自らの体制は十分に固まったといえるが、今後はさらに先代のやり方にこだわらず、自らの方法で国を運営していくと予測するのも可能だ。
  今回の党規約改正では、「人民大衆第一主義」が打ち出されたという。第8回党大会で北朝鮮指導部は5カ年経済計画を発表した。具体的な内容は明らかにされていないが、同計画に沿って経済が運営されており、『労働新聞』などのメディアでは連日達成された成果が報じられている。一方で、思うように成果が出ていないのではないかとも思われる。というのも、6月に入り、立て続けに党の会議が開催されているからだ。そこでは、経済問題と人民生活の安定が強調されている。最近の論調を見ても、北朝鮮の喫緊の課題が経済の立て直しであることが分かる。
 一方、改正された規約では、「第一書記」のポストを新設し、「金正恩総書記の代理人」と規定した。現段階では第一書記が誰なのかは明らかになっていない。だが、金正恩総書記に継ぐポストが新設されたことは、北朝鮮が集団指導体制を推し進める兆候ではないか。
  文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
 

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2021年07月01日

【リレー時評】「金大中氏拉致事件」に遭遇して=山口昭男(JCJ代表委員)

昨年来のコロナ禍で大学の授業もリモートが主流になり、新入生も大学構内に入れない事態が続いていた。振り返ってみれば、私の大学時代も構内に立ち入れない時期があった。
 いわゆる「大学紛争」期の大学封鎖によってである。団塊の世代の最後に当たる私が大学に入ったのは1969年。そして70年安保闘争が起き、大学立法は国会に上程され、大学は自治能力をなくしていた。
 構内には立ち入れず、もとよりリモートなどない時代であるから、授業はなく、試験はすべてレポートになった。ゼミは近くの喫茶店などで行うのが日常であった。こうした環境だったから、当時の学生はほとんどが社会に対して、政治に対して少なからぬ関心を持っていた。

 私はといえば、4年になっても就職についてあまり執着していなかった。就活などという言葉もなかった。会社人間になって一生歯車のように働くのは嫌だと思ったし、団塊の世代で人数は多かったが、時代は売り手市場でもあったから、何とかなるだろうと楽観もしていた。
 そんな時、家族ぐるみの付き合いがあった当時一橋大学学長だった都留重人先生から、岩波書店が社員を募集しているから受けてみないかと言われた。出版社なら少しは自由かもしれない、落ちてもともとと思い受験した。そして幸運にも合格できた。

 1973年入社してすぐ『世界』編集部に配属された。当時決められたことをする以外は、何をするにも指示はなく、好きな人に会い、好きな取材をし、自由に動き回ることができた。自由な環境の下で「社会に生じている矛盾を掘り起こし、人間の運命にかかわる仕事をする。それが自分の役割だ」などと意気がっていた。しかし、入社して3か月目、自らのそうした甘い考えを吹き飛ばすような事件に遭遇した。
 それが「金大中氏拉致事件」である。後に大統領となる金大中氏は、当時韓国の野党の大統領候補で、人気のある政治家だった。その金大中氏に『世界』編集部がインタビューをした。

 当時の私の手帳には「7月18日(水)午後2時30分 金大中氏インタビュー 於ホテルグランドパレス2212号室」と書かれている。ところがその記事が載った『世界』9月号が発売された当日の8月8日に、そのホテルから金大中氏は白昼堂々何者かによって拉致誘拐されたのである。
 幸い殺害はまぬかれ、一週間後にソウル市内で傷だらけの状態のまま発見された。次第に事件はKCIAによるものということが明らかになっていった。
 この入社3か月目の出来事は、私に大きなショックを与えた。ジャーナリストとしての緊張感を強く感じた事件だった。そして自分の考えの甘さとやっていることの大きさを感じた事件でもあった。
 あれから半世紀近くが経ち、今の政治の退廃、社会の弱体化を見るにつけ、私が20代前半に感じた緊張感をいま一度取り戻さねばと思っている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
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