2021年08月01日

【今週の風考計】8.1─〈‘21緑陰図書〉コロナ禍のなか、心洗われる本3冊

暑中お見舞い申し上げます。コロナに翻弄され、夏休みに入っても巣ごもり≠ェ強いられるなか、少しでも涼風の通る場所で、頁をひも解くに良い本3冊を紹介したい。
倉本聰『古木巡礼』(新潮社)─<北の国から>を演出した倉本さんが、多忙な日々の傍ら、全国各地の古木を訪ね、静かに囁く古木の声を詩という形で掬いあげ、さらに古木をカラーの点描画にして添える、ユニークな詩画集。
 開けると途端、森や林のフィトンチッドが香ってくるようだ。詩のフレーズも、倉本さんの思いのたけがいっぱい、心地よく響いてくる。
 そして古木が育んできた悠久の歴史に思いを馳せながら、私たちが開発だといって、〈鎮守の森〉を潰し、地球温暖化を導き、あげくに新型ウイルスの蔓延という事態に至った現在に目を向ける。
7月13日夜、日本テレビのラジオ特番「倉本聰・古木巡礼〜森のささやきが聞こえますか」がオンエアされた。その2時間番組のなかで、倉本さんは今の事態を見ると、「文明の進め方が間違っていた」と語っている。
 
堂場瞬一『沈黙の終わり』(上下・角川春樹事務所)─著者デビュー20年を記念する書下ろし社会派ミステリー。関東近郊で起きた幼女誘拐連続殺人事件が、30年間も隠されてきた。その理由は何か、真相を暴く。
 新鋭とベテラン、正義とプライドをかけた二人の新聞記者が、警察の隠ぺいに抗し粘り強く点と線を追い、遂に大物政治家へと辿り着く。だが官邸詰めの同僚記者から圧力が…。
 それと闘う二人の共有する信念が、今のメディア状況を顧みるとき、きわめて潔く尊い。

矢部太郎『ぼくのお父さん』(新潮社)─全編オールカラー、ほのぼのとした感動の家族マンガ。コロナ禍の重苦しさが吹き飛ぶ。
 6月30日で44歳になった矢部太郎さん。今も東京・東村山の実家に近い築50年の賃貸マンションで暮らしている。
舞台は40年前の東村山、いつも家にいる絵本作家の父・やべみつのりさんとの生活が描かれる。
 「八国山には、よく父とつくしを採りに行きました。ビニール袋にいっぱい詰めて持ち帰り、つくだ煮にして食べました。僕にとって八国山はつくしの名産地です」
 また小学1年生の友達と北山公園でザリガニを取ったり、家族そろって屋根に上がり西武園の花火を眺めたり、1頁8コマ・見開き2頁をめくるたびに、心温まる情景が溢れんばかり。
お父さんだけではない、お母さんのさっちゃんも素晴らしい。「お母さんの床屋さん」「ひょうたんと入院」に描かれる、お母さんの姿も見落とすわけにはいかない。
 子どもを見守りながら、同じ目線でともに遊び、ともに考え、ともに親自身も成長していく。なんとも新鮮な感動に胸が熱くなる。(2021/8/1)
おすすめ本3冊.JPG
posted by JCJ at 06:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする